JP3976549B2 - 芳香族ビニル系樹脂発泡体及びその製造方法 - Google Patents

芳香族ビニル系樹脂発泡体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境適合性に優れた熱可塑性樹脂である芳香族ビニル系樹脂からなる発泡体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、炎と接した際の溶融滴下、および高温に曝されたときの変形などが飛躍的に改善され、難燃性に優れた芳香族ビニル系樹脂発泡体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂発泡体は優れた断熱性を有している事から、建築材料として住宅等の断熱材に使用されている。そのような合成樹脂発泡体として、例えばスチレン系樹脂発泡体などの芳香族ビニル系樹脂発泡体が挙げられる。
【0003】
芳香族ビニル系樹脂にハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、二酸化炭素などの発泡剤を含有させて、押出発泡成形、ビーズ法発泡成形などの発泡成形方法により発泡体を得ることは既に知られている。
【0004】
このような芳香族ビニル系樹脂発泡体を建築用断熱材として用いる場合、自己消火性などの難燃性が要求され、たとえば、JIS A9511にその燃焼性レベルが規定されている。このような難燃性の要求される芳香族ビニル系樹脂発泡体には一般にハロゲン系難燃剤が含有されている。しかしながら、このようにして得られた芳香族ビニル系樹脂発泡体は自己消火性ではあるものの、燃焼試験時、炎と接した場合には消失あるいは溶融滴下が起こって形態が保持されない。従って燃焼時に形状が保持されることが要望される用途への展開が制約されている。
【0005】
炎と接した場合にある程度形態が保持される樹脂発泡体としては、熱硬化性樹脂発泡体、例えばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂発泡体などが挙げられる。しかしながら、このような発泡体では、溶融滴下が起こらず、形態は保持されるものの、発泡体が脆い、残存ホルムアルデヒドによる居住空間の汚染、さらには熱硬化性樹脂であるがためにリサイクル利用することが非常に困難であるといった環境適合性に問題がある。
【0006】
環境適合性に優れた熱可塑性樹脂押出発泡体としては、例えば、特開2001−200087号においては、熱可塑性樹脂にベントナイトを含有させ、発泡剤に水を用いた熱可塑性樹脂押出発泡体が提案されているが、該発明では特に、耐燃焼性を目的としたものではなく、ましてや、燃焼時の溶融滴下や、高温時の変形防止などを目的としたものでない。さらに、難燃剤を添加するとしても非ハロゲン系の難燃剤を使用することを考慮したものでない。
また、特開平10−60160号には、熱可塑性樹脂100重量部、リン系難燃剤0.5〜50重量部、層状珪酸塩0.01〜20重量部を溶融混練してなる難燃性樹脂組成物であって、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、燃焼時の溶融滴下性を抑制した、難燃性熱可塑性樹脂組成物が提案されている。しかしながら該発明では、射出成形加工を目的としたものであって、発泡体特有の難燃性を考慮したものではなく、発泡体については何ら示唆されておらず、ましてや発泡体が高温に曝された場合の形状保持性については何ら述べられていない。
【0007】
このような問題に鑑み、我々は特願2000−337980号において、スチレン系樹脂100重量部に対して、1)リン系化合物1〜200重量部、および、2)トリアジン骨格含有化合物および/または多価アルコール類を1〜200重量部含有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体を提案した。該発明の発泡体では、JIS A9511に規定する燃焼性試験において自己消火性を発現すると共に、炎と接した場合でも溶融滴下せず炭化することで形状がある程度保持される特徴を有している。しかしながら、炎と接している時間が短いなど、比較的短時間の加熱に対しては有効であったが、例えば、建築基準法に規定される防火性能評価において、例えば、室外側に窯業系外壁材、その内側に芳香族ビニル系樹脂発泡体からなる断熱材、さらに室内側に不燃性あるいは準不燃性を有する板を配置した壁構造のように、発泡体に直接炎が接しないが、外壁材を介して輻射熱によって400℃〜600℃といった高温に長時間曝されるような場合、発泡炭化するものの形状が保持されず、室内側に熱が伝わってしまうという場合があることが判った。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来技術に鑑みてなされたものであり、このように、建築用断熱材料として、炎に短時間接した場合のみならず、高温に長時間曝された場合でもある程度形態が保持されるとともに、揮発性物質の放散が少なく、リサイクル性に優れるといった環境適合性を兼ね備えた断熱材として十分な性能をもつものは未だ見いだされていない。
【0009】
このような状況の下、本発明が解決しようとする課題は、芳香族ビニル系樹脂をベースとし、前記特性を具備した発泡体およびその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、芳香族ビニル系樹脂に膨潤性層状珪酸塩およびリン原子含有化合物および/または窒素原子含有化合物を含有させた発泡体は、高温に曝された場合でも形状がある程度保持されると共に、炎と短時間接した時の溶融滴下性も抑制されて難燃性に優れることを見出し、本発明に至った。そしてこの発泡体は揮発性物質の放散が少なく、かつ、熱可塑性樹脂であることからリサイクル性にもすぐれた建築用断熱材料を提供することを可能とする。特に、ハロゲン系難燃剤を併用せず、非ハロゲン系の発泡剤を使用する場合には、非常に環境適合性に優れた発泡体を提供する。
【0011】
さらに本発明では、特に有機化処理された膨潤性層状珪酸塩を用い、さらに特定の芳香族ビニル系樹脂と組み合わせることにより、膨潤性層状珪酸塩が微細に分散し、更には分子状に分散させることが可能となる。このため比較的少量の膨潤性層状珪酸塩を用いるだけで、加熱時の形状保持性が付与されると共に、発泡体の成形性や断熱性の向上もはかれる。
【0012】
即ち、本発明は、(1)芳香族ビニル系樹脂100重量部に対し、膨潤性層状珪酸塩を0.1〜100重量部とリン原子含有化合物および/またはトリアジン骨格を含有する化合物、ジアゾ化合物、テトラゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の窒素原子含有化合物1〜200重量部と、さらに多価アルコール類1〜200重量部を含有することを特徴とする芳香族ビニル系樹脂発泡体に関する。
【0013】
さらに本発明は()底面間隔が1.6nm以上の膨潤性層状珪酸塩を含有することを特徴とする(1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体に関する。
【0014】
さらに本発明は()粒子厚みが下記式を満足した膨潤性層状珪酸塩を含有することを特徴とする(1)または(2)項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体に関する。
(膨潤性層状珪酸塩の粒子厚みが100nm以下の粒子の数/膨潤性層状珪酸塩の粒子の総数)×100≧20
さらに本発明は(発泡体中における膨潤性層状珪酸塩の(001)面に由来するX線回折ピーク角値が検出されないことを特徴とする(1)〜()項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体に関する。
【0015】
さらに本発明は()芳香族ビニル系樹脂の一部または全部が極性基を含有した化合物単位を重合した樹脂であることを特徴とする(1)〜()項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体に関する。
【0016】
さらに本発明は()膨潤性層状珪酸塩が有機オニウム塩、極性基を有する有機化合物、シラン系化合物から選ばれる1種以上の有機化合物で処理されたものであることを特徴とする(1)〜()項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体に関する。
【0017】
さらに本発明は()リン原子含有化合物がリン原子および窒素原子を含有する化合物であることを特徴とする(1)〜()項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体に関する。
【0019】
さらに本発明は()芳香族ビニル系樹脂に非ハロゲン系発泡剤を含有させて発泡成形することを特徴とする(1)〜()項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる芳香族ビニル系樹脂とは、芳香族ビニル系化合物を重合して得られる重合体、あるいは芳香族ビニル系化合物及びこれらと共重合可能な他の化合物を共重合して得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体である。
【0021】
芳香族ビニル系化合物としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどのメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレンなどのジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン、p−t−ブチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、スチレン−p−グリシジルエーテルなどのスチレン誘導体、およびジビニルベンゼンなどの多官能性芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これら芳香族ビニル系化合物は1種単独、あるいは2種以上併用して用いられる。芳香族ビニル系化合物の中でも、得られた芳香族ビニル系樹脂の成形加工の容易さ等から、スチレンおよびスチレン誘導体が好ましく、特に芳香族ビニル系樹脂の重合の際の反応の容易さ等から好ましくはスチレンである。
【0022】
芳香族ビニル系化合物と共重合可能な他の化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、マレイン酸モノエチルエステル等のマレイン酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、酢酸ビニル等のビニル系化合物、ブダジエン、イソプレン等のジエン系化合物あるいはその誘導体、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物、アクリルアミン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、アミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン等のアミノ基含有不飽和化合物、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有不飽和化合物、ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0023】
芳香族ビニル系樹脂は単独あるいは2種以上混合して使用することができる。芳香族ビニル系樹脂を単独で用いる場合には、ポリスチレンホモポリマーが発泡成形性の点から好ましく、また、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸共重合ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体等の極性基を含有する芳香族ビニル系樹脂が得られる発泡体中の膨潤性層状珪酸塩の分散性、加熱時の形状保持性等の点から好ましい。また、2種以上を併用して用いる場合には、ポリスチレンホモポリマーと(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸共重合ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体等の極性基を含有する芳香族ビニル系樹脂から選ばれる1種または2種以上を併用した芳香族ビニル系樹脂、あるいは、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸共重合ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体等の極性基を含有する芳香族ビニル系樹脂から選ばれる2種以上併用した芳香族ビニル系樹脂が好ましく用いられる。
【0024】
本発明で用いられる膨潤性層状珪酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートから成り、該四面体シートと八面体シートが単位層を形成し、単位層単独、層間に陽イオンなどを介して複数個層状に積層して一次粒子を形成、あるいは、一次粒子の凝集体の粒子を形成(二次粒子)し存在しうるものである。また、「膨潤性」とは、水、極性のある有機化合物、極性のある高分子、極性のない有機化合物、極性のない高分子などと接触させた場合、層状珪酸塩の底面間隔が拡大する、あるいは、単位層あるいは単位層が積層した状態でへき開あるいは剥離する特性をいう。ただし、極性のない有機化合物、極性のない高分子、さらに、極性のある有機化合物の種類によっては、膨潤させる場合、層間にある陽イオンを有機オニウムイオンなどの有機カチオンなどで置換する、単位層面と相互作用を有する有機化合物やシラン系化合物で処理するなどの、有機化処理することで膨潤させることが可能となる。
膨潤性層状珪酸塩の例としては、例えば、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などが挙げられる。
【0025】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式(1)
0.20.623410(OH)2・nH2O ・・・・・・・・・(1)
(ただし、XはK、Na、1/2Ca、及び1/2Mgから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、及びAlから成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成されたものである。該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(2)
0.51.023(Z410)(F、OH)2 ・・・・・・・(2)
(ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)で表される、天然または合成されたものである。これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、及び水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記一般式(3)
(Mg,Fe,Al)23(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2)x・nH2
・・・・・・・・・(3)
(ただし、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表されるものが挙げられる。
【0028】
膨潤性層状珪酸塩は単独で用いても良く、2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの内では、得られる発泡体中の分散性の点などからスメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく。さらに好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイトおよび膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、芳香族ビニル系樹脂発泡体の製造時の成形性、加熱時の形状保持性など点から好ましい。
【0029】
膨潤性層状珪酸塩の結晶構造は、c軸方向に規則正しく積み重なった純粋度が高いものが望ましいが、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合った、いわゆる混合層鉱物も使用され得る。
【0030】
膨潤性層状珪酸塩は、有機化処理することにより、芳香族ビニル系樹脂との親和性が高まるので、得られる発泡体中での膨潤性層状珪酸塩の分散性が向上する、膨潤性層状珪酸塩の底面間隔が拡充する、加熱時の形状保持特性改善効果がより一層発揮されうるなど有効である。さらに膨潤性層状珪酸塩の種類、有機化処理の方法、処理剤の種類、芳香族ビニル系樹脂の種類、製造方法等を適宜選択することで、膨潤性層状珪酸塩が単位層あるいは単位層が積層した粒子として細かく分散させることが容易となる。このように分散性が向上することにより、比較的少量の添加量であっても、得られた発泡体の加熱時の形状保持性、さらには発泡体成形性や断熱性の向上などの改善効果がより一層発揮されるうるので好ましい。
【0031】
膨潤性層状珪酸塩を有機化処理する方法は、例えば、有機オニウム塩と接触させて膨潤性層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンを有機オニウムイオンで交換する方法、膨潤性層状珪酸塩と水素結合性の極性基を有する有機化合物と接触させて、該化合物分子の全部あるいは一部を層間に挿入させる方法、膨潤性層状珪酸塩を単位層あるいは単位層が複数個積層した状態に膨潤させた後、シラン系化合物と接触させる方法、あるいはこれらの有機化処理する方法を2種以上組み合わせる方法が挙げられる。
【0032】
膨潤性層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンを有機オニウムイオンで交換する方法は、膨潤性層状珪酸塩と有機オニウムイオンとを公知の方法で反応させることにより製造することができる。有機オニウムイオンを導入するには、該イオンを含有する有機オニウム塩が用いられる。そのような塩としては、後述する有機オニウムイオンと例えば塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、カルボン酸イオン等の陰イオンとの塩が挙げられる。有機オニウムイオンを導入する方法としては、例えば、水、メタノール、エタノールなどの極性を有する有機化合物などの分散媒中に膨潤性層状珪酸塩を添加して膨潤させた後、有機オニウム塩を添加する、あるいは、予め有機オニウムイオンを分散させた水、メタノール、エタノールなどの極性を有する有機化合物などの分散媒中に膨潤性層状珪酸塩を添加して膨潤させて、層状珪酸塩の層間イオンを有機オニウムイオンでイオン交換反応させる方法、あるいは、膨潤性層状珪酸塩に液状あるいは溶融させた有機オニウム塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
【0033】
膨潤性層状珪酸塩に対する有機オニウムイオンの使用量は、芳香族ビニル系樹脂の種類、膨潤性層状珪酸塩の種類、膨潤性層状珪酸塩と芳香族ビニル系樹脂との親和性、膨潤性層状珪酸塩の添加量、膨潤性層状珪酸塩の底面間隔等に応じて適宜調整し得る。従って有機オニウムイオンの使用量は一概に数値で限定されるものではないが、膨潤性層状珪酸塩100重量部に対する有機オニウムイオンの使用量は、好ましくは0.1〜200重量部であり、さらに好ましくは1〜150重量部であり、より好ましくは5〜120重量部であり、最も好ましくは10〜100重量部である。有機オニウムイオンの使用量が0.1重量部未満であると膨潤性層状珪酸塩の分散性など目的とする処理効果が充分でなくなる傾向がある。また、有機オニウムイオンの使用量が200重量部を越えると微分散化効果が変わらない一方で、有機オニウムイオンにより芳香族ビニル系樹脂の優れた特性を損なったり、難燃性の低下を招くこともあるので、200重量部より多く使用する必要はない。
【0034】
有機オニウムイオンとしては、アンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく用いられる。オニウムイオンとしては、1級オニウム、2級オニウム、3級オニウム、4級オニウムのいずれでも良いが、樹脂中での膨潤性層状珪酸塩の分散性に優れることから、4級ホスホニウムイオン、4級アンモニウムイオン等の4級オニウムイオンが好ましい。これらの有機オニウムイオンは、膨潤性層状珪酸塩の層間に入り込み、底面間隔を拡大させる効果があるため、分子量の大きいイオンが好ましく、特に炭素数6以上のイオンが好ましく用いられる。さらに好ましくは炭素数8以上のイオンである。
【0035】
4級ホスホニウムイオンとしては、ドデシルトリブチルホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、オクタデシルトリブチルホスホニウム、ドデシルトリメチルホスホニウム、ヘキサデシルトリメチルホスホニウム、オクタデシルトリメチルホスホニウム、ジドデシルジブチルホスホニウム、ジヘキサデシルジブチルホスホニウム、ジオクタデシルジブチルホスホニウム、ジドデシルジメチルホスホニウム、ジヘキサデシルジメチルホスホニウム、ジオクタデシルジメチルホスホニウム、ベンジルジブチルドデシルホスホニウム、ドデシルトリフェニルホスホニウム、ヘキサデシルトリフェニルホスホニウム、オクタデシルトリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
【0036】
1級アンモニウムイオンとしては、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、等が挙げられる。
【0037】
2級アンモニウムイオンとしては、メチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム、等が挙げられる。
【0038】
3級アンモニウムイオンとしては、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、等が挙げられる。
【0039】
4級アンモニウムイオンとしてはベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウムなどのトリアルキルメチルアンモニウムイオン、ジアリルジメチルアンモニウム、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムなどのように炭素−炭素二重結合を有するアンモニウムイオン、ジメチルジエタノールアンモニウム、メチルトリエタノールアンモニウムなどのようにOH基を有するアンモニウムイオン、その他ジメチルベンジルフェニルアンモニウムイオン、ベンザルコニウムイオン、ベンゼトニウムイオン、などが挙げられる。
【0040】
また、これらの他にもメラミン、アニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。
これらの有機オニウムイオンは単独で用いても良いが、2種以上併用して使用しても良い。
【0041】
膨潤性層状珪酸塩の層間に水素結合性の極性基を有する有機化合物分子の全部あるいは一部を挿入させる方法としては、例えば、膨潤性層状珪酸塩を水などの分散媒中で膨潤させた後、水素結合性の極性基を有する有機化合物と接触させる方法、膨潤性層状珪酸塩を水素結合性の極性基を有する有機化合物と直接接触させる方法、膨潤性層状珪酸塩を有機オニウムイオンと接触させ、有機オニウムイオン変性膨潤性層状珪酸塩を得た後、水、有機化合物などの分散媒中で膨潤させ、次いで水素結合性の極性基を有する有機化合物と接触させる方法、膨潤性層状珪酸塩を有機オニウムイオンと接触させ、有機オニウムイオン変性膨潤性層状珪酸塩を得た後、水素結合性の極性基を有する有機化合物と直接接触させる方法などが挙げられる。
【0042】
前記水素結合性の極性基を有する化合物とは、主鎖及び/または側鎖に1つ又は2つ以上の水素結合性の極性基を有している化合物をいう。水素結合性の極性基は、化合物の主鎖、側鎖又は末端に結合しており、膨潤性層状珪酸塩の底面間隔をより大きく拡大させることができる点で、特に末端に結合していることが好ましい。水素結合性の極性基とは,分子内で電子が局在しており、電荷の偏りが生じたものをいう。上記極性基としては、例えば,水酸基(OH)、ハロゲン基(F,Cl,Br,I)、カルボキシル基(COOH)、チオール基(SH)、エポキシ基、又は一級、二級、若しくは三級のアミン(NH2 ,NH,N)であるアミノ基が挙げられる。水素結合性の極性基を有する化合物は、例えば、1以上の極性基を有し、かつ、飽和あるいは不飽和の直鎖状又は分岐状の構造を有し、さらに、その主鎖及び/又は側鎖に芳香環を含まない又は含む化合物である。水素結合性の極性基を有する化合物としては、アルコール類、グリコール類、有機カルボン酸、有機カルボン酸塩、一部あるいは全ての末端にOH、COOH、Cl、エポキシ基等の極性基を有するポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類あるいはこれらから誘導される、直鎖状又は分岐状の構造を有し、芳香環を含まない及び/又は芳香環を含む化合物などが挙げられる。
【0043】
水素結合性の極性基を有する有機化合物は、その混合割合が大きくなるに連れて、膨潤性層状珪酸塩の層間を広く拡張する傾向にある。極性基を有する有機化合物の使用量は、芳香族ビニル系樹脂の種類、膨潤性層状珪酸塩の種類、膨潤性層状珪酸塩と芳香族ビニル系樹脂との親和性、膨潤性層状珪酸塩の添加量、膨潤性層状珪酸塩の底面間隔、後述するリン原子含有化合物および/または窒素原子含有化合物の添加量等に応じて適宜調製し得る。従って水素結合性の極性基を有する有機化合物の使用量は一概に数値で限定されるものではないが、膨潤性層状珪酸塩100重量部に対して、10重量部以上であることが好ましいが、多く使用しすぎると難燃性の低下を招く可能性がある。水素結合性の極性基を有する有機化合物は、その極性基により、膨潤性層状珪酸塩と水素結合を形成している。そして、少なくともその一部が膨潤性層状珪酸塩の層間に介入している。
【0044】
さらに、水素結合性の極性基を有する有機化合物に、極性基を有していないあるいは極性の低い有機化合物、オリゴマー又はポリマーを併用してもよい。
【0045】
膨潤性層状珪酸塩を単位層あるいは単位層が積層した状態に膨潤させた後、シラン系化合物で処理する方法としては、例えば、膨潤性層状珪酸塩を水あるいは極性のある有機化合物などの分散媒中で膨潤させた後にシラン系化合物を添加する方法が挙げられる。膨潤性層状珪酸塩を分散媒中で膨潤させることは、該膨潤性層状珪酸塩を該分散媒中で充分に撹拌して分散させる事によりなし得る。このように、膨潤性層状珪酸塩を膨潤させて、凝集状態であったものをばらばらにし、単位層あるいは複数個の単位層が積層した状態で存在させた後にシラン系化合物を添加して撹拌する。
【0046】
シラン系化合物とは、通常一般に用いられる任意のものが使用され得、下記一般式(4)
nSiX4-n ・・・・・・・・・・・・・・(4)
で表されるものである。一般式(4)中のnは0〜3の整数であり、Yは、置換基を有していても良い炭素数1〜25の炭化水素基である。炭素数1〜25の炭化水素基が置換基を有する場合の置換基の例としては、例えばエステル結合で結合している基、エーテル結合で結合している基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、末端にカルボニル基を有する基、アミド基、メルカプト基、スルホニル結合で結合している基、スルフィニル結合で結合している基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、ハロゲン原子および水酸基などが挙げられる。これらの内の1種で置換されていても良く、2種以上で置換されていても良い。
【0047】
Xは加水分解性基および/または水酸基であり、該加水分解性基の例としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、ハロゲン原子よりなる群から選択される1種以上である。一般式(4)中、nまたは4−nが2以上の場合、n個のYまたは4−n個のXはそれぞれ同種でも異種でも良い。炭化水素基とは、直鎖または分岐鎖(すなわち側鎖を有する)の飽和または不飽和の一価または多価の脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基を意味し、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、シクロアルキル基、および、アルキレン基等の多価の炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、及びシクロアルキレン基等が挙げられる。
【0048】
上記一般式(4)において、Yが炭素数1〜25の炭化水素基である場合の例としては、デシルトリメトキシシランの様に直鎖長鎖アルキル基を有するもの、メチルトリメトキシシランの様に低級アルキル基を有するもの、2−ヘキセニルトリメトキシシランの様に不飽和炭化水素基を有するもの、2−エチルヘキシルトリメトキシシランの様に側鎖を有するアルキル基を有するもの、フェニルトリエトキシシランの様にフェニル基を有するもの、3−β−ナフチルプロピルトリメトキシシランの様にナフチル基を有するもの、及びp−ビニルベンジルトリメトキシシランの様にアラルキル基を有するものが挙げられる。
【0049】
Yが炭素数1〜25の炭化水素基の中でも特にビニル基を有する基である場合の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、及びビニルトリアセトキシシランが挙げられる。Yがエステル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがエーテル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン、及び2−エトキシエチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0050】
Yがエポキシ基で置換されている基である場合の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがアミノ基で置換されている基である場合の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−アニリノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが末端にカルボニル基を有する基で置換されている基である場合の例としては、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがメルカプト基で置換されている基である場合の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがハロゲン原子で置換されている基である場合の例としては、γ−クロロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0051】
Yがスルホニル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−フェニルスルホニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがスルフィニル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−フェニルスルフィニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがニトロ基で置換されている基である場合の例としては、γ−ニトロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトロソ基で置換されている基である場合の例としては、γ−ニトロソプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトリル基で置換されている基である場合の例としては、γ−シアノエチルトリエトキシシランおよびγ−シアノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0052】
Yがカルボキシル基で置換されている基である場合の例としては、γ−(4−カルボキシフェニル)プロピルトリメトキシシランが挙げられる。前記以外にYが水酸基を有する基であるシラン系化合物もまた使用し得る。その様な例としては、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノ−3−プロピルトリエトキシシランが挙げられる。水酸基はまたシラノール基(SiOH)の形であり得る。シラン系化合物の置換体、または誘導体もまた使用し得る。これらのシラン系化合物は、単独、又は2種以上組み合わせて使用され得る。
【0053】
膨潤性層状珪酸塩に導入されたシラン系化合物がさらに水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、あるいはビニル基などの様な反応活性な官能基を有している場合、この様な反応活性基と反応できる化合物を更に添加して、この化合物をこの反応活性基と反応させることも可能である。この様にして膨潤性層状珪酸塩に導入されたシラン系化合物の官能基鎖の鎖長を長くしたり、極性を変えることができる。この場合、添加される化合物としては上記のシラン系化合物自体も用いられ得るが、それらに限定されることなく、目的に応じて任意の化合物が用いられ得、例えば、エポキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物基含有化合物、及び水酸基含有化合物等が挙げられる。
【0054】
シラン系化合物の使用量は、芳香族ビニル系樹脂の種類、膨潤性層状珪酸塩の種類、膨潤性層状珪酸塩と芳香族ビニル系樹脂との親和性、膨潤性層状珪酸塩の添加量、膨潤性層状珪酸塩の底面間隔、後述するリン原子含有化合物および/または窒素原子含有化合物の添加量等に応じて適宜調製し得る。必要であるならば、異種の官能基を有する複数種のシラン系化合物を併用し得る。従ってシラン系化合物の使用量は一概に数値で限定されるものではないが、膨潤性層状珪酸塩100重量部に対して、0.1〜200重量部であり、好ましくは0.2から150重量部であり、より好ましくは0.3から120重量部であり、更に好ましくは0.5から100重量部である。シラン系化合物の量が0.1重量部未満であると膨潤性層状珪酸塩の分散性など目的とする処理効果が充分でなくなる傾向がある。200重量部以上では効果が変わらないと共に、難燃性の低下を招く場合もあるので、200重量部より多く添加する必要はない。
【0055】
有機化処理された膨潤性層状珪酸塩を製造する際に分散媒を用いた場合、分散媒中で膨潤させたまま用いることも可能であり、あるいは、分散媒を除去して有機化処理された膨潤性層状珪酸塩を取り出した後、用いることも可能である。さらには、分散媒を用いなかった場合、そのまま直接用いることが可能であり、あるいは、分散媒中で膨潤させて用いることも可能である。さらには、該分散媒を必要に応じて、発泡剤としても活用することができる。
【0056】
有機化処理された膨潤性層状珪酸塩に用いられる膨潤性層状珪酸塩としては、モンモリロナイト、合成スメクタイト、膨潤性フッ素雲母が加熱時の形状保持性などの点から好ましく、有機化処理する方法としては有機オニウムイオンで処理する方法が芳香族ビニル系樹脂への分散性の点から好ましい。さらに、ジアルキル(C14〜18)メチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンで処理されたモンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母が加熱時の形状保持性などの点から特に好ましく、ジアルキル(C14〜18)メチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンで処理された膨潤性フッ素雲母が比較的少量の添加で加熱時の形状保持性の効果が発現される点で好ましい。
【0057】
本発明の芳香族ビニル系樹脂発泡体中における膨潤性層状珪酸塩の一部または全ての底面間隔が1.6nm以上であることが、膨潤性層状珪酸塩と芳香族ビニル系樹脂との親和性、加熱時の形状保持性および該特性を発現するための添加量が底面間隔が1.6nm未満の膨潤性層状珪酸塩に比べ低減できる可能性があるなどの点から好ましい。さらに好ましくは、2nm以上、特に好ましくは、2.5nm以上である。ここでいう底面間隔とは、膨潤性層状珪酸塩の結晶構造において、単位層の底面からc軸方向に次の単位層の底面までの距離のことである。該底面間隔は小角X線回折法(SAXS)などで確認し得る。すなわち、膨潤性層状珪酸塩の(001)面に由来するX線回折ピーク角値をSAXSで測定し、Braggの式に当てはめて算出することにより底面間隔を求める。
【0058】
層状珪酸塩化合物の底面間隔およびX線回折測定については、例えば「粘土ハンドブック」(日本粘土学会編:技報堂出版)などに記載されている。膨潤性層状珪酸塩が膨潤し、底面間隔が約4〜5nm以上となった場合、さらには単位層あるいは単位層に近い形、すなわち実質上分子状に分散した場合、膨潤性層状珪酸塩の(001)面に由来するX線回折ピーク角値は読みとり困難あるいは検出されなくなる。従って、膨潤性層状珪酸塩が分子状に分散していることは、膨潤性層状珪酸塩の(001)面に由来するX線回折ピーク角値が検出されないことでも確認される。
【0059】
芳香族ビニル系樹脂発泡体中の膨潤性層状珪酸塩の底面間隔を1.6nm以上とするためには、例えば、予め前記の如く有機化処理を行い、底面間隔を1.6nm以上とした膨潤性層状珪酸塩を用いる方法、芳香族ビニル系樹脂の一部又は全部に極性基を含有した芳香族ビニル系樹脂を用いる方法、膨潤性層状珪酸塩を分散媒により膨潤させた後、芳香族ビニル系樹脂に添加し溶融混練する方法、芳香族ビニル系樹脂を合成する際に膨潤性層状珪酸塩を添加する方法、さらには、これらを組み合わせる方法等が挙げられる。
【0060】
本発明の芳香族ビニル系樹脂発泡体では、発泡体中における膨潤性層状珪酸塩の粒子の厚みが下記式を満足することが、下記式を満足しない場合に比べ、比較的少量の膨潤性層状珪酸塩を添加した場合でも加熱時の形状保持性の効果が発現される点で好ましい。下記式は発泡体中に分散する膨潤性層状珪酸塩の粒子の内、厚みが100nm以下の粒子の割合を表し、値が高いほど膨潤性層状珪酸塩が細かく分散していることを示している。
【0061】
(膨潤性層状珪酸塩の粒子厚みが100nm以下の粒子の数/膨潤性層状珪酸塩の粒子の総数)×100≧20
ここで層状珪酸塩の粒子の厚みとは、膨潤性層状珪酸塩が単位層あるいは単位層が複数個積層した状態で分散したときの粒子の縦、横、高さの寸法の内、最も短い寸法をいう。即ち、前記粒子を板状に見なした場合の厚みに相当する。
【0062】
膨潤性層状珪酸塩の粒子の厚みは、透過型電子顕微鏡などを用いて、発泡体中の粒子の分散状態を撮影し、定規などを用いて計測して求めることができる。
【0063】
膨潤性層状珪酸塩の粒子厚みが100nm以下の粒子の数の割合は、20以上、好ましくは30以上、さらに好ましくは50以上である。
【0064】
さらに、本発明の芳香族ビニル系樹脂発泡体において、膨潤性層状珪酸塩が実質上分子状に分散していることが、比較的少量の膨潤性層状珪酸塩を用いることで加熱時の形状保持性の向上がはかれ、強度特性も付与され、断熱性の向上もはかれる点で特に好ましい。ここで、膨潤性層状珪酸塩が実質上、分子状に分散しているとは、該層状珪酸塩が単位層あるいは単位層が複数個積層しているが単位層に近い状態で分散していることを言う。膨潤性層状珪酸塩が実質上、分子状に分散していることは、膨潤性層状珪酸塩の(001)面に由来するX線回折ピーク角値が検出されないこと、あるいは、透過型電子顕微鏡などを用いて、発泡体中の粒子の分散状態を撮影し、粒子の厚みが用いた膨潤性層状珪酸塩の単位層あるいは単位層に近い厚みであることを計測することで確認されうる。
【0065】
芳香族ビニル系樹脂発泡体中の膨潤性層状珪酸塩の粒子厚みを100nm以下、更には実質上分子上に分散させる方法としては、例えば、予め前記の如く有機化処理を行った膨潤性層状珪酸塩を用い、より好ましくは、溶融混練時に高い剪断力を与える方法、芳香族ビニル系樹脂の一部又は全部に極性基を含有した芳香族ビニル系樹脂を用い、より好ましくは、溶融混練時に高い剪断力を与える方法、芳香族ビニル系樹脂の一部又は全部に極性基を含有した芳香族ビニル系樹脂と予め前記の如く有機化処理を行った膨潤性層状珪酸塩を組合せ溶融混練する方法、膨潤性層状珪酸塩を分散媒により粒子厚み100nm以下に膨潤させた後、芳香族ビニル系樹脂に添加し溶融混練する方法、芳香族ビニル系樹脂を合成する際に好ましくは有機化処理した膨潤性層状珪酸塩を添加する方法、さらには、これらを組み合わせた方法等が挙げられる。
【0066】
芳香族ビニル系樹脂発泡体中における膨潤性層状珪酸塩の含有量は、芳香族ビニル系樹脂発泡体中の芳香族ビニル系樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部であり、好ましくは、0.5〜80重量部、さらに好ましくは、1〜60重量部である。膨潤性層状珪酸塩の含有量が0.1重量部未満の場合、加熱時の形状保持性の向上効果が見られず、100重量部を越えると発泡体の成形性、得られる発泡体の靭性などが低下する傾向にあるため好ましくない。ここで膨潤性層状珪酸塩の含有量は、得られた芳香族ビニル系樹脂発泡体を例えば650℃で2時間加熱するなどして灰化させ有機物を除去して、残存した膨潤性層状珪酸塩の重量を測定する方法、芳香族ビニル系樹脂発泡体を芳香族ビニル系樹脂および必要により膨潤性層状珪酸塩以外の添加剤を溶解させることが可能な溶媒で溶かした後、ろ別、遠心分離するなどして膨潤性層状珪酸塩を取り出し、更に必要に応じて灰化し、その重量を測定する方法などで確認されうる。
【0067】
本発明においては、加熱時の形状保持性および難燃性を付与する目的で、次に述べるごとき非ハロゲン系の化合物が使用される。すなわち、本発明で用いられるリン原子含有化合物とは、分子中にリン原子を含有する化合物をいう。その具体例としては、三酸化リン、四酸化リン、五酸化リンなどのリン酸化物、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン酸化合物、モノアンモニウムホスフェート、ジアンモニウムホスフェート、アンモニウムポリホスフェートなどのリン酸アンモニウム塩、メラミンモノホスフェート、メラミンジホスフェート、メラミンポリホスフェートなどのリン酸メラミン塩、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどのリン酸金属塩などのリン酸塩類、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの脂肪族系リン酸エステル類、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどの芳香族系リン酸エステル類、下記の一般式(5)で表されるリン酸エステル基を2以上有するリン酸エステル類、
【0068】
【化1】
Figure 0003976549
(式中、R1はレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等の残基、R2はフェニル基、トリル基、キシリル基などであり、同一でも異なっていてもよい、nは1以上の整数である)
【0069】
一般式(5)で表されるリン酸エステル類としては、レゾルシノール・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノール・ビス(ジキシレニルホスフェート)、レゾルシノール・ビス(ジクレジルホスフェート)、ハイドロキノン・ビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、ハイドロキノン・ビス(ジクレジルホスフェート)、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA・ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)などの芳香族系ジ(リン酸エステル)類(前記一般式1において、n=1のもの)、ポリ(レゾルシノール・フェニルホスフェート)、ポリ(レゾルシノール・クレジルホスフェート)、ポリ(レゾルシノール・キシレニルホスフェート)、ポリ(ハイドロキノン・フェニルホスフェート)、ポリ(ハイドロキノン・クレジルホスフェート)、ポリ(ハイドロキノン・キシレニルホスフェート)、ポリ(ビスフェノールA・フェニルホスフェート)、ポリ(ビスフェノールA・クレジルホスフェート)、ポリ(ビスフェノールA・キシレニルホスフェート)などの芳香族系ポリ(リン酸エステル)類(前記一般式1においてnが2以上のもの)などのリン酸エステル類、ホスファゼン、ポリホスファゼンなどのホスファゼン類、リン酸アミン類、リン酸アミド類などが挙げられる。
【0070】
該リン系化合物が粒子状、粉体状、板状、針状などの固体形状であった場合にはメラミン樹脂、フェノール樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などから選ばれる1種以上の化合物など表面被覆あるいは表面処理できる化合物で表面処理されたものであってもよい。
【0071】
該リン系化合物では、燃焼時の形状保持の観点から、アンモニウムホスフェート、アンモニウムポリホスフェート、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェートなどのリン酸塩、ホスファゼン、ポリホスファゼンなどのホスファゼン類などのリン原子および窒素原子を含有する化合物が好ましい。さらに、リン酸塩類では表面処理されたリン酸塩類がより好ましい。
【0072】
本発明で用いられる窒素原子を含有する化合物とは、分子中に窒素原子を含有する化合物をいい、その具体例としては、炭素原子と窒素原子からなるトリアジン構造を有する化合物であり、具体的にはメラミン、メチロールメラミン類などのメラミン誘導体、シアヌル酸、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、イソシアヌル酸、メチルイソシアヌレート、N,N’−ジエチルイソシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのシアヌル酸、イソシアヌル酸またはその誘導体、メラミンシアヌレートなどのメラミン(誘導体)と(イソ)シアヌル酸(誘導体)との塩などが挙げられる。
【0073】
さらには、ジアゾ化合物、テトラゾールグアニジン塩、テトラゾールピペラジン塩、テトラゾールアンモニウム塩等のテトラゾールアミン塩類、また、テトラゾールナトリウム塩、テトラゾールマンガン塩等のテトラゾール金属塩類などのテトラゾール化合物、例えば5,5’−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5’−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5’−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5’−ビステトラゾールピペラジン塩が挙げられる。
【0074】
窒素原子含有化合物では、燃焼時の形状保持の観点から、トリアジン骨格含有化合物が好ましく、具体的にはメラミン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミンシアヌレートなどが好ましい。
【0075】
本発明では、リン原子含有化合物または窒素原子含有化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物が用いられるが、加熱時の形状保持性の向上の観点から、リン原子含有化合物と窒素原子含有化合物の両者ともを、それぞれ1種または2種以上併用して用いることが好ましい。
【0076】
リン原子含有化合物または窒素原子含有化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物の含有量は、芳香族ビニル系樹脂100重量部に対して、1〜200重量部であり、好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは10〜120重量部である。該化合物が1重量部未満では自己消火性効果が見られず、200重量部を越えると発泡体の成形性が困難となるため好ましくない。
【0077】
さらに本発明では、燃焼時および加熱時の形状保持性の効果をより一層高める目的で、多価アルコール類が併用して用いられる。多価アルコール類は、1分子中に2個以上の水酸基を含有する化合物であって、その具体例としては、モノペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどのペンタエリスリトール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体などのグリコール類、グリセリン、レゾルシノール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。多価アルコール類では、燃焼時の形状保持の観点から、モノペンタエリスリトールが好ましい。
【0078】
多価アルコール類の含有量は、芳香族ビニル系樹脂100重量部に対して、1〜200重量部であり、好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは10〜120重量部である。含有量が1重量部未満では自己消火性効果が見られず、200重量部を越えると発泡体の成形性が困難となるため好ましくない。
【0079】
本発明では、リン原子含有化合物と多価アルコール類のいずれもを、それぞれ1種又は2種以上併用して用いること、窒素原子含有化合物と多価アルコール類のいずれもを、それぞれ1種又は2種以上併用して用いること、リン原子含有化合物、窒素原子含有化合物および多価アルコール類のいずれもを、それぞれ1種又は2種以上併用して用いることができるが、リン原子含有化合物、窒素原子含有化合物および多価アルコール類のいずれもを、それぞれ1種又は2種以上併用して用いることがより好ましい。
【0080】
本発明において用いられる発泡剤に特に制限はないが、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンなどに例示される飽和炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどに例示されるエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンに例示されるケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールに例示されるアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルに例示されるカルボン酸エステル類、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、塩化メチル、塩化エチルなどに例示される有機発泡剤、トリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)、クロロジフルオロメタン(R22)、テトラクロロジフルオロエタン(R112)、ジクロロフルオロエタン(R141b)、クロロジフルオロエタン(R142b)、ジフルオロエタン(R152a)、HFC−245fa、HFC−236ea、HFC−245ca、HCFC−225caなどに例示されるフロン系発泡剤、水、二酸化炭素、窒素、空気などに例示される無機発泡剤などが挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0081】
これらの中でも、次に記す非ハロゲン系発泡剤を使用することにより、本発明の発泡体の環境適合性を更に向上させることができるため望ましい。すなわち、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンなどに例示される飽和炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどに例示されるエーテル類、 N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチルN,N’−ジニトロソテレフタールアミド、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジドアゾジカルボンアミド、 p−トルエンスルホニルヒドラジン、アゾビスホルムアミド、ジエチルアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル 、p−トルエンスルホニルヒドラジン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、3,3’−ジスルホヒドラジドジフェニルスルフォンなどの有機化学発泡剤、水、二酸化炭素、窒素、空気、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸アルミニウム、炭酸亜鉛、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、その他の炭酸塩、その他の炭酸水素塩、などに例示される無機発泡剤などの非ハロゲン系発泡剤が環境適合性の観点で好ましい。
【0082】
本発明の芳香族ビニル系樹脂発泡体の製造のために、添加される発泡剤の量としては、発泡倍率の設定値などに応じて適宜変えればよい。通常、発泡倍率20〜40倍程度であれば発泡剤の合計量を該芳香族ビニル系樹脂100重量部に対して2〜20重量部とするのが好ましい。発泡倍率が極小さくて良い場合は、発泡剤の添加量が2重量部未満でも充分である。逆に発泡倍率が100倍といった大きな場合は、20重量部を越えて添加する場合もあるが、この場合、過剰な発泡剤量のため発泡体中にボイドなどの不良を生じることに注意しなければならない。
【0083】
また本発明においては、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲でシリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有させることができる。
【0084】
さらに本発明においては、更に優れた難燃性を付与する目的で、上記以外のリン系難燃剤、窒素系難燃剤、ケイ素系難燃剤、金属水酸化物、イオウ系難燃剤、アンチモン化合物、ホウ素化合物など種々の難燃剤を用いることができる。
【0085】
本発明は、基本的には、非ハロゲン系難燃剤を用いて環境適合性を高めることを本来の目的とするので、リン原子含有化合物および/または窒素原子含有化合物等の非ハロゲン系難燃剤を多く使用した場合には、ハロゲン系難燃剤を必要としないが、より高度な難燃性を要求するときには、既述の非ハロゲン系難燃剤に加えて次の如きハロゲン系難燃剤を補助的に追加使用することができる。
【0086】
例えば、ハロゲン系難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素の臭素化物、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの芳香族化合物の臭素化物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などの臭素化ビスフェノール類およびその誘導体、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、テトラブロモフタレーロジオール、テトラブロモフタレートエステル、テトラブロモフタレートジソジウム、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、ペンタブロモフェノール、ブロモフェノキシエタノール、臭素化フェノール(ノボラック型)、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、ビニルブロマイド、トリブロモフェノール、ジブロモフェノール、ジブロモメタクレゾール、ジブロモネオペンチルグリコール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、臭素化アクリル系樹脂などの臭素系芳香族化合物、塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、テトラクロロ無水フタル酸、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環状化合物、などが挙げられる。
【0087】
本発明の芳香族ビニル系樹脂発泡体の製造方法としては、例えば、芳香族ビニル系樹脂、膨潤性層状珪酸塩、発泡剤およびリン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、多価アルコール類、必要によりその他の化合物などの添加剤を押出機等の混練機を用いて溶融混練した後、押出発泡成形する方法、同様に溶融混練して発泡性組成物を得た後、必要に応じてビーズ状、板状、シート状など形態を付与し、再び加熱して発泡させ発泡体を得る方法、芳香族ビニル系樹脂、膨潤性層状珪酸塩、および添加剤を押出機等の混練機を用いて溶融混練し、途中から発泡剤を注入して押出発泡成形する方法、芳香族ビニル系樹脂、膨潤性層状珪酸塩、および添加剤を押出機等の混練機を用いて溶融混練し樹脂組成物を得た後、再び溶融混練し、途中から発泡剤を注入して押出発泡成形する方法、同様に溶融混練して樹脂組成物を得た後、必要に応じてビーズ状、板状、シート状など形態を付与し、次いで発泡剤を含浸させた後、再び加熱して発泡させて発泡体を得る方法等が挙げられる。
【0088】
更に、芳香族ビニル系化合物および必要に応じて他の化合物を重合させて芳香族ビニル系樹脂を製造する際に、膨潤性層状珪酸塩、発泡剤および添加剤を添加し、発泡性組成物とした後、必要に応じてビーズ状、板状、シート状など形態を付与し、再び加熱して発泡させ発泡体を得る方法、同様に芳香族ビニル系樹脂を製造する際に、膨潤性層状珪酸塩、および添加剤を添加し、樹脂組成物とした後、必要に応じてビーズ状、板状、シート状など形態を付与し、次いで発泡剤を含浸させた後、再び加熱して発泡させ発泡体を得る方法などが挙げられる。これらのうち押出発泡成形が最も好ましい実施態様として推奨される。
【0089】
膨潤性層状珪酸塩の分散性の点から、芳香族ビニル系樹脂、膨潤性層状珪酸塩、および必要により発泡剤、添加剤を押出機等の混練機を用いて溶融混練し(発泡性)樹脂組成物を得、次いで発泡させる方法、および、芳香族ビニル系化合物および必要に応じて他の化合物を重合させて芳香族ビニル系樹脂を製造する際に、膨潤性層状珪酸塩、および必要により発泡剤、添加剤を添加し、(発泡性)樹脂組成物を得、次いで発泡させる方法が好ましい。
【0090】
押出機等の混練機を用いて溶融混練する場合、膨潤性層状珪酸塩を添加する方法としては、予め芳香族ビニル系樹脂とドライブレンドしておく方法、膨潤性層状珪酸塩を混練の途中から添加する方法、予め膨潤性層状珪酸塩を水、有機化合物などの分散媒中に分散させ、次いで芳香族ビニル系樹脂とブレンドする方法、予め膨潤性層状珪酸塩を水、有機化合物などの分散媒中に分散させ、混練の途中から添加する方法などが挙げられる。予め膨潤性層状珪酸塩を水、有機化合物などの分散媒中に分散させる場合には、混練の途中、最後あるいは混練後に水、有機化合物などの分散媒を除去することが好ましいが、水、有機化合物などの分散媒を発泡剤としても用いる場合はこの限りではない。さらに、芳香族ビニル系樹脂と膨潤性層状珪酸塩を予め溶融混練する方法として、例えば、特開平9−217012号公報などでも提案されている。
【0091】
芳香族ビニル系樹脂を製造する際に膨潤性層状珪酸塩を添加する方法としては、予め芳香族ビニル系化合物、および/または、必要に応じて他の化合物中に分散させる方法、予め膨潤性層状珪酸塩を水、有機化合物などの分散媒中に分散させ重合の前、始め、途中、重合後の任意の段階に添加する方法、膨潤性層状珪酸塩を直接重合の前、始め、途中、重合後の任意の段階に添加する方法などが挙げられる。さらに、芳香族ビニル系樹脂を製造する際に膨潤性層状珪酸塩を添加する方法としては、特開昭63−215775号公報などでも提案されている。
【0092】
【実施例】
次に本発明の芳香族ビニル系樹脂発泡体およびその製造方法を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0093】
以下に示す実施例、比較例の方法で得られた発泡体の特性として、発泡体密度、自己消火性、燃焼時の溶融変形・溶融滴下状況、高温加熱時の形状変化状況を下記の方法に従って調べた。
って評価した。
1)発泡体密度(kg/m3):発泡体密度は、次の式:発泡体密度(g/cm3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3)に基づいて求め、単位を(kg/m3)に換算して示した。
2)自己消火性:製造後14日経過した発泡体を用い、JIS A9511に規定の燃焼性評価における測定方法Aに準じて燃焼性試験を行い、下記の基準に従い判定した。
○:炎を離した後、すぐ消炎あるいは若干燃焼したが自己消火した。
△:炎を離した後、ある程度は燃焼したが自己消火し、試験片は残存した。
×:炎を離した後、自己消火せず試験片全体が燃焼してしまった。
【0094】
3)燃焼時の溶融変形、溶融滴下状況(形状保持性):2)と同様にして燃焼性試験を行い、消炎後の状態を目視にて観察し下記の基準に従い判定した。
○:溶融滴下せず、炭化あるいは発泡炭状になり、形状をほぼ維持あるいは変形するものの収縮は見られない。
△:溶融滴下せず、炭化あるいは発泡炭状になるが、収縮が見られた。
×:溶融滴下して試験片が残存しなかった。
【0095】
4)高温加熱時の形状変化状況(形状保持特性):得られた発泡体から50×50×10mmの試験片を切り出し、500℃に保った電気炉内で5分間加熱した後の状態を目視にて観察し下記の基準に従い判定した。
◎:残存物は若干収縮あるいは膨張したが、ほぼ元の形状を維持していた。
○:残存物は収縮あるいは膨張するが、ほぼ元の形状の相似形に近い形で残存していた。
△:残存物は大きく収縮あるいは膨張するもののある程度形状を維持した。
×:溶融してしまい形状が崩れてしまうあるいは残存物が無かった。
ただし、例えば△〜○と評価した場合は、△と○の中間の判定であったことを示している。
【0096】
5)膨潤性層状珪酸塩の底面間隔(nm):X線発生装置(理学電機(株)製、RU−200B)を用い、ターゲットCuKα線、Niフィルター、電圧40kV、電流200mA、走査角2θ=0.2〜16.0°、ステップ角=0.02°の測定条件で小角X線回折ピーク角値を測定し、底面間隔を、小角X線回折ピーク角値をBraggの式に代入して算出した。ただし、小角X線ピーク角値の確認が困難である場合は、膨潤性層状珪酸塩が膨潤し、ピーク角値が確認困難なまで分散したか、あるいは十分に膨潤し、実質的に分子状に分散したこととなる。
【0097】
6)膨潤性層状珪酸塩の分散状態および粒子厚み(nm):厚み50〜100μmの超薄切片を用いた。透過型電子顕微鏡(日本電子JEM−1200EX)を用い、加速電圧80kVで倍率4万〜100万倍で膨潤性層状珪酸塩の分散状態を観察撮影した。TEM写真において、100個以上の分散粒子が存在する領域を選択し、粒子数、粒子厚みを、目盛り付きの定規を用いた計測した。得られた結果を、下記式に当てはめ、粒子厚みが100nm以下の粒子割合を求めた。
粒子厚みが100nm以下の粒子割合=(膨潤性層状珪酸塩の粒子厚みが100nm以下の粒子の数/膨潤性層状珪酸塩の粒子の総数)×100
【0098】
下記に示した原材料を用いて実施例・比較例の方法で評価した。
芳香族ビニル系樹脂
・樹脂1:ポリスチレンホモポリマー:新日鐵化学(株)製エスチレンG−17(メルトインデックス=3.1)
・樹脂2:スチレン−メタクリル酸共重合体:エー・アンド・エム スチレン(株)製スタイロンG9001(メタクリル酸共重合割合は8wt%)
・樹脂3:スチレン−無水マレイン酸共重合体:ARCO Chemical Japan製ダイラークD232
・樹脂4:スチレン−アクリロニトリル共重合体:東洋スチレン(株)製トーヨーAS AS−61NT
【0099】
膨潤性層状珪酸塩
・珪酸塩1:モンモリロナイト:クニミネ工業(株)製クニピアF:底面間隔=1.2nm
・珪酸塩2:膨潤性フッ素雲母:コープケミカル(株)製ソマシフME−100:底面間隔=1.0nm
・珪酸塩3:有機化処理モンモリロナイト:サザンクレープロダクツ製Cloisite20A(ジアルキル(C14〜18)メチルアンモニウムイオンで処理したモンモリロナイト:処理量は約38重量%):底面間隔=2.4nm
・珪酸塩4:有機化処理膨潤性フッ素雲母:コープケミカル(株)製MAE−120(ジアルキル(C14〜18)メチルアンモニウムイオンで処理した膨潤性フッ素雲母:処理量は約38重量%):底面間隔=3.1nm
・珪酸塩5:有機化処理モンモリロナイト:製造例1で製造した
・珪酸塩6:有機化処理膨潤性フッ素雲母:製造例2で製造した
【0100】
リン原子含有化合物
・TPP:トリフェニルホスフェート:大八化学工業(株)製TPP
・APP:ポリリン酸アンモニウム:チッソ(株)製テラージュC60
窒素原子含有化合物
・MC:メラミンシアヌレート:日産化学工業(株)製MC−440
・メラミン:メラミン:和光純薬工業(株)製試薬
多価アルコール類
・PER:モノペンタエリスリトール:三菱瓦斯化学(株)製ペンタエリスリトール
【0101】
難燃剤
・HBCD:ヘキサブロムシクロドデカン:ALBEMARLE CORPORATION製
発泡剤
・イソブタン:三井化学(株)製
・ジメチルエーテル:三井化学(株)製
・HCFC142b:1−クロロ1,1−ジフルオロエタン:ダイキン工業(株)製
【0102】
製造例1
イオン交換水3500gにモンモリロナイト125gを加え、湿式ミル(日本精機(株)製)を用いて5000rpmにて5分間撹拌し混合した。次いでフェニルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製LS2750)35gを加え、さらに1時間撹拌して処理した。得られたシラン系化合物処理モンモリロナイト分散液を120℃で24時間乾燥して水を除去し、次いで粉砕して有機化処理モンモリロナイト粒子を得た。得られた有機化処理モンモリロナイトの底面間隔は2.4nmであった。また、有機化処理モンモリロナイトを650℃にて2時間加熱した後の重量の加熱前の重量に対する割合は、80重量%であり、モンモリロナイトが80重量%含有されていることが確認された。
【0103】
製造例2
イオン交換水3500gに膨潤性フッ素雲母125gを加え、湿式ミル(日本精機(株)製)を用いて5000rpmにて5分間撹拌し混合した。次いでビスフェノールA共重合ポリエチレングリコール(三洋化成(株)製BPE−180)13gを加え、さらに1時間撹拌して処理した。得られたシラン系化合物処理モンモリロナイト分散液を120℃で24時間乾燥して水を除去し、次いで粉砕して有機化処理処理膨潤性フッ素雲母粒子を得た。得られた有機化処理膨潤性フッ素雲母の底面間隔は1.9nmであった。また、有機化処理膨潤性フッ素雲母を650℃にて2時間加熱した後の重量の加熱前の重量に対する割合は、90重量%であり、膨潤性フッ素雲母が90重量%含有されていることが確認された。
【0104】
(実施例1)
芳香族ビニル系樹脂として、樹脂1(ポリスチレンホモポリマー)100重量部に対して、珪酸塩1(モンモリロナイト)30重量部、APP(ポリリン酸アンモニウム)50重量部、タルク0.3重量部、ステアリン酸バリウム0.2重量部をドライブレンドした後、30mmφ同方向回転ニ軸押出機(L/D=30)を用いて溶融混練し樹脂組成物を得た。
【0105】
得られた樹脂組成物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約40kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給し、200℃に加熱して溶融混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面吐出口のあるダイスより大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。このとき発泡剤として、イソブタンを該樹脂1、100重量部に対して4部、ジメチルエーテルを2部からなる発泡剤を、それぞれ別のラインから、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の先端ダイスと反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0106】
(実施例2〜17)
前記に示す芳香族ビニル系樹脂、膨潤性層状珪酸塩、リン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、多価アルコール類、および、発泡剤を用い、表1に示した組成にて、実施例1と同様にして樹脂組成物および発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表1に示す。
(比較例1および2)
表1に示した組成にて、実施例1と同様にして樹脂組成物および発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0107】
実施例1〜17と比較例1および2を比較して判るように、本発明の膨潤性層状珪酸塩を含有した芳香族ビニル系樹脂発泡体は高温で加熱した際の形状保持性にも優れていることが判る。
【0108】
実施例1および3と実施例2、4、5、7および9を比較して判るように、リン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、多価アルコール類を組み合わせることにより、自己消火性、燃焼時の形状保持性、加熱時の形状保持性を向上させることができ、特に3種共を併用することで、その合計重量部が比較的少量にて効果が発現されることが判る。
【0109】
実施例6、7および9と実施例13〜16を比較して判るように、極性基を有する芳香族ビニル系樹脂を用いた方が、ポリスチレンホモポリマーに比べ、加熱時の形状保持性が向上することが判る。実施例6および13における膨潤性層状珪酸塩の分散状態を観察した結果、実施例6では粒子厚みが100nm以下の粒子割合は1であったのに対し、実施例13では15と実施例6より高い値であった。
【0110】
実施例7と実施例17を比較して判るように、リン原子含有化合物として、リン原子と窒素原子を含有するポリリン酸アンモニウムを用いた方が、加熱時の形状保持性に優れることが判る。
(実施例21〜29)
前記に示す芳香族ビニル系樹脂、膨潤性層状珪酸塩、リン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、多価アルコール類、および、発泡剤を用い、表1に示した組成にて、実施例1と同様にして樹脂組成物および発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0111】
実施例6、7および9と実施例18〜20を比較して判るように、有機化処理した膨潤性層状珪酸塩を用いた方が、処理していない膨潤性層状珪酸塩を用いた場合に比べ加熱時の形状保持性が向上することが判る。ただし、実施例18では、モンモリロナイトの実質含有量は芳香族ビニル系樹脂100重量部に対して5重量部、実施例19では膨潤性フッ素雲母の実質含有量は芳香族ビニル系樹脂100重量部に対して10重量部、実施例20では30重量部である。さらに、実施例6、7、9におけるモンモリロナイトあるいは膨潤性フッ素雲母の底面間隔はそれぞれ、1.2nm、1.2nm、1.0nmであったのに対して、実施例18、19、20ではそれぞれ、2.3nm、3.0nm、3.0nmであった。また、実施例6、7、9における粒子厚みが100nm以下の粒子割合はいずれも1であったのに対して、実施例18、19、20ではそれぞれ、31、25、27であった。
【0112】
実施例18および19と実施例21および22と比較して判るように、極性基を有する芳香族ビニル系樹脂と有機化処理した膨潤性層状珪酸塩を組合せた方が、加熱時の形状保持性が向上することが判る。実施例21、22では、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母の底面間隔を測定した結果、ごくわずかにそれぞれ2.4nm、3.1nmの底面間隔を示すX線回折ピーク角値が観察された。分散状態を観察した結果、粒子厚みが100nm以下の粒子割合はそれぞれ、81、90であった。さらには粒子厚みが100nm以下の粒子の多くは、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母の単位層厚みあるいは約2〜20層積み重なった場合に相当する厚みであった。
【0113】
実施例23〜25、27〜29でも、実施例21、22と同様の膨潤性層状珪酸塩の分散状態であり、ごくわずかにそれぞれ珪酸塩3を用いた場合では2.4nm、珪酸塩4では3.1nm、珪酸塩5では2.4nmの底面間隔を示すX線回折ピーク角値が観察され、粒子厚みが100nm以下の粒子割合は、いずれも75以上であった。また、実施例26では、底面間隔が1.9nmを示すX線回折ピーク角値が観察され、粒子厚みが100nm以下の粒子割合は32であった。
【0114】
(実施例30)
芳香族ビニル系樹脂として、樹脂1(ポリスチレンホモポリマー)を用い、ニーダーに樹脂1(ポリスチレンホモポリマー)100重量部を仕込み、水100重量%に珪酸塩1(モンモリロナイト)を10重量%を分散させた溶液を徐々に添加しながら混練し、最終的に該溶液を50重量部添加した。得られた樹脂組成物を粉砕した後、30mmφ同方向回転ニ軸押出機(L/D=30)を用いて溶融混練した。次いで、得られた樹脂組成物を乾燥した後、樹脂1を100重量部に対して、APP(ポリリン酸アンモニウム)25重量部、MC(メラミンシアヌレート)10重量部、PER(モノぺエンタエリスリトール)25重量部、タルク0.3重量部、ステアリン酸バリウム0.2重量部になるようにドライブレンドした後、再び30mmφ同方向回転ニ軸押出機(L/D=30)を用いて溶融混練し樹脂組成物を得た。
【0115】
得られた樹脂組成物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約40kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給し、200℃に加熱して溶融混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面吐出口のあるダイスより大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。このとき発泡剤として、イソブタンを該樹脂1100重量部に対して4部、ジメチルエーテルを2部からなる発泡剤を、それぞれ別のラインから、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の先端ダイスと反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0116】
底面間隔を測定した結果、1.2nmを示すX線回折ピーク角値が観察され、粒子厚みが100nm以下の粒子割合は50であった。
【0117】
実施例6と比較して、加熱時の形状保持性が向上していることが判る。
(実施例31)
芳香族ビニル系樹脂として、樹脂1(ポリスチレンホモポリマー)100重量部に対して珪酸塩4(有機化処理した膨潤性フッ素雲母)16重量部をドライブレンドした後、30mmφ同方向回転ニ軸押出機(L/D=30)を用いて溶融混練した。得られた樹脂組成物を乾燥した後、再び、30mmφ同方向回転ニ軸押出機(L/D=30)を用いて溶融混練し、これをもう二度繰り返した。次いで、樹脂1を100重量部に対して、APP(ポリリン酸アンモニウム)25重量部、MC(メラミンシアヌレート)10重量部、PER(モノぺエンタエリスリトール)25重量部、タルク0.3重量部、ステアリン酸バリウム0.2重量部になるようにドライブレンドした後、再び30mmφ同方向回転ニ軸押出機(L/D=30)を用いて溶融混練し樹脂組成物を得た。
【0118】
得られた樹脂組成物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約40kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給し、200℃に加熱して溶融混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面吐出口のあるダイスより大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。このとき発泡剤として、イソブタンを該樹脂1100重量部に対して4部、ジメチルエーテルを2部からなる発泡剤を、それぞれ別のラインから、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の先端ダイスと反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0119】
底面間隔を測定した結果、3.0nmを示すX線回折ピーク角値が観察され、粒子厚みが100nm以下の粒子割合は40であった。
【0120】
実施例19と比較して、加熱時の形状保持性が向上していることが判る。
(実施例32)
樹脂1を樹脂2(スチレン−メタクリル酸共重合体)にした以外は実施例31と同様にして芳香族ビニル系樹脂発泡体を得た。
【0121】
底面間隔を測定した結果、X線回折ピーク角値が観察されなかった。また、粒子厚みが100nm以下の粒子割合は100であり、膨潤性フッ素雲母がほぼ分子状に分散していることが観察された。
【0122】
実施例22と比較して、加熱時の形状保持性が向上していることが判る。
【0123】
【表1】
Figure 0003976549
【0124】
【表2】
Figure 0003976549
【0125】
【発明の効果】
本発明によれば、環境適合性に優れた熱可塑性樹脂である芳香族ビニル系樹脂からなる発泡体及びその製造方法であって、炎と接した際の溶融滴下、および高温に曝されたときの変形などが飛躍的に改善され、難燃性に優れた芳香族ビニル系樹脂発泡体が得られる。

Claims (8)

  1. 芳香族ビニル系樹脂100重量部に対し、膨潤性層状珪酸塩0.1〜100重量部とリン原子含有化合物および/または、トリアジン骨格を含有する化合物、ジアゾ化合物、テトラゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の窒素原子含有化合物1〜200重量部と、さらに多価アルコール類1〜200重量部を含有することを特徴とする芳香族ビニル系樹脂発泡体。
  2. 底面間隔が1.6nm以上の膨潤性層状珪酸塩を含有することを特徴とする請求項項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体。
  3. 粒子厚みが下記式を満足した膨潤性層状珪酸塩を含有することを特徴とする請求項1または2項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体。
    (膨潤性層状珪酸塩の粒子厚みが100nm以下の粒子の数/膨潤性層状珪酸塩の粒子の総数)×100≧20
  4. 発泡体中における膨潤性層状珪酸塩の(001)面に由来するX線回折ピーク角値が検出されないことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体。
  5. 芳香族ビニル系樹脂の一部または全部が極性基を含有した化合物単位を重合した樹脂であることを特徴とする請求項1〜項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体。
  6. 膨潤性層状珪酸塩が有機オニウム塩、極性基を有する有機化合物、シラン系化合物から選ばれる1種以上の有機化合物で処理されたものであることを特徴とする請求項1〜項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体。
  7. リン原子含有化合物がリン原子および窒素原子を含有する化合物であることを特徴とする請求項1〜項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体。
  8. 芳香族ビニル系樹脂に非ハロゲン系発泡剤を含有させて発泡成形することを特徴とする請求項1〜項のいずれか1項記載の芳香族ビニル系樹脂発泡体の製造方法。
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