JP3966156B2 - 極低燐ステンレス鋼の溶製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、極低燐ステンレス鋼の溶製方法に係わり、特に、燐含有量が0.010質量%以下の所謂「極低燐ステンレス鋼」を従来より安価で、かつ環境に悪影響を及ぼさずに溶製する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼材の特性に対する要求が益々高まっており、製鋼の各精錬工程では、不純物成分を低減するための負荷が増加している。ステンレス鋼の場合もその例外でなく、とりわけステンレス鋼中の燐は、連続鋳造によって製造される鋳片の中心偏析の要因となり、これを素材として得られるパイプ材の内面欠陥を引き起こす等の問題のため、その低減が必須である。
【0003】
ステンレス鋼の溶製方法としては、1)原料となるスクラップやフェロクロムを電気炉で溶解し、炭素飽和の含クロム溶鉄あるいは炭素濃度1質量%程度の粗溶鋼を製造し、これをAOD(Argon Oxygen Decarburization)炉やVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)装置等で仕上げ脱炭精錬する方法、2)溶銑を装入した転炉にフェロクロムやスクラップを装入して酸素を吹き込んで加熱溶解と粗脱炭精錬して炭素濃度0.1〜1.0質量%程度の粗溶鋼を製造し、これを前記VOD等で仕上げ脱炭精錬する方法、3)溶鋼を装入した転炉に炭材とクロム鉱石を投入し、酸素を吹き込んで溶融還元製錬して炭素飽和に近い含クロム溶鉄を製造し、その含クロム溶鉄を別の転炉に移行してさらに酸素を吹き込み脱炭精錬して炭素濃度0.1〜1.0質量%程度の粗溶鋼に溶製し、これを前記VOD等で仕上げ脱炭精錬する方法等が知られている。
【0004】
これらのうち1)の方法によれば、燐含有量の低いスクラップやフェロクロムを厳選することで極低燐ステンレス鋼を製造可能であるが、そのような原料は極めて高価であるので、コストが著しく高くなるという欠点がある。また、2)の方法では、溶銑を予備処理によって脱燐する一方、燐含有量の低いスクラップやフェロクロムを厳選することで極低燐ステンレス鋼を製造可能であるが、コストが高いことは1)の方法と同じである。
【0005】
そこで、このような高価な低燐原料を使用せずに極低燐ステンレス鋼を製造することを目的として、含クロム溶鉄あるいは含クロム粗溶鋼を脱燐する方法が種々提案された。例えば、アルカリ金属化合物を高濃度で含有するスラグを使用して含クロム溶銑を酸化脱燐する方法(特許文献1参照)、酸化源としてクロム酸化物を混合したフラックスを使用して含クロム溶鉄を酸化脱燐する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
ところで、前記の1)あるいは2)の方法において、上記特許文献1,2のごとき酸化脱燐処理を施すと、必然的に燐の酸化物とクロム酸化物を高濃度で含有するスラグが発生することになる。クロムは、溶製対象であるステンレス鋼の主要な成分元素であるので、スラグ中に損失することは、原料コストを増大することを意味する。そこで、スラグを脱炭精錬炉や電気炉へリサイクルして、脱炭精錬あるいは溶解の末期に通常行われている還元期(アルミやフェロシリコン等の還元剤を使用してスラグ中のクロム酸化物を還元する時期)において還元し、溶鉄あるいは溶鋼に回収することが考えられるが、その際にスラグ中の燐も還元されて溶鉄や溶鋼に移行してしまう。また、アルミやフェロシリコンは高価である上に、スラグの還元によって生成したアルミナやシリカを多量に含有するスラグによって炉の耐火物が溶損する問題があった。
【0007】
しかしながら、このような燐とクロムを高濃度で含有するスラグは、その処理方法が確立していないので、事実上、前記1)あるいは2)の方法に、上記特許文献1及び2のごとき酸化脱燐処理を施して安価に極低燐ステンレス鋼を製造することは行われていなかった。
【0008】
一方、3)のクロム鉱石の溶融還元を行って含クロム溶鉄を製造し、それを脱炭精錬する方法は、原料コストが安価であること、また転炉やVOD装置等で含クロム溶鉄や含クロム溶鋼を脱炭精錬する際に不可避的に発生するクロム酸化物を溶融還元炉にリサイクルすることで安価な還元剤である炭材により、容易に溶鉄中に還元回収できることからクロム損失が僅少であることから近年注目を集めているプロセスである。
【0009】
本発明者は、この3)の方法を利用してこの方法に含クロム溶鉄の脱燐処理を組み合わせることを考えた。すなわち、含クロム溶鉄の脱燐処理によって生成したクロム酸化物を溶融還元にリサイクルするのである。
【0010】
しかしながら、そのような方法でも、スラグ中の燐の酸化物が溶融還元の際にクロムと同時に還元されて溶鉄中に移行するので、リサイクルする前にスラグから燐を除去することが必要である。
【0011】
燐を含有する鉄鋼精錬スラグからの燐の除去技術としては、燐含有スラグと高炉スラグとを混合したものに還元剤を加え、さらに酸素を吹き込んで燐を気相中に揮散させる方法(例えば、特許文献3参照)、スラグを湿式処理して燐酸を回収する方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【0012】
この特許文献3に記載の技術では、高炉スラグとの混合が必須であるが、高炉スラグは土木・建築資材として利用価値の高い資源であり、スラグの脱燐処理に使用するのは経済的でない。また、燐含有スラグには通常鉄分が含まれていることから、高炉スラグによる希釈を行わなければ還元された燐の大部分が同じく還元された鉄中に移行してしまい、気相への除去が十分になされないという問題があった。一方、特許文献4記載の湿式処理による燐の除去は、コストが高く、実用化が難しい。
【0013】
【特許文献1】
特開昭54−28720号公報(第2頁、左欄の24行〜35行)
【特許公報2】
特開昭57−32319号公報(第2頁、右欄の11行〜20行)
【特許文献3】
特開昭55−97408号公報(第1頁、左欄の5行〜14行)
【特許文献4】
特開昭56−22613号公報(第2頁、左欄の20行〜右欄の4行)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、従来より安価な極低燐ステンレス鋼の溶製方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0016】
すなわち、本発明は、転炉型反応容器に装入した溶銑に、クロム鉱石及び炭材を添加すると共に酸素ガスを供給してクロム鉱石を溶融還元製錬し、得られた含クロム溶鉄を別の転炉型反応容器において脱炭精錬して含クロム溶鋼とし、引き続き真空精錬装置にて該含クロム溶鋼の脱炭精錬及び/又は成分調整を行うステンレス溶鋼の溶製方法において、前記含クロム溶鉄を脱炭精錬する前に、該含クロム溶鉄に酸化剤−CaO系フラックスを添加して脱燐処理を行うと共に、そこで発生した脱燐スラグは、次回以降の溶融還元製錬チャージの向け先であるステンレス溶鋼の燐含有量の許容量に応じて、該脱燐スラグを次回以降の溶融還元製錬チャージへリサイクルする操業と、該脱燐スラグに炭材を加えて加熱し、該脱燐スラグから気化脱燐処理をした後に、前記次回以降の溶融還元製錬チャージへリサイクルする操業とを選択的に実施し、スラグ中の酸化クロムを炭素還元してクロム分を含クロム溶鉄中に回収することを特徴とする極低燐ステンレス鋼の溶製方法である。この場合、前記脱燐スラグは、その燐を気化除去する前に、含有する粒鉄を除去したものであると一層良い。
【0017】
本発明では、次回以降の溶融還元製錬チャージで溶製される含クロム溶鉄が、その向け先としてどのような規格のステンレス溶鋼の原料として使用されるかにまず着目する。そして、その向け先であるステンレス溶鋼の燐含有量の許容量に応じて、今回若しくはそれ以前の脱燐スラグを、該スラグからの気化脱燐を行うことなくリサイクルする操業と、スラグからの気化脱燐を行う操業とを選択的に実施する。その際、次回以降のステンレス鋼が燐含有量の上限値の高い、所謂「高燐仕様のステンレス鋼(例えば、燐含有量の上限値が0.040〜0.020質量%のステンレス鋼等)」である場合には、前記スラグを気化脱燐処理せずに溶融還元製錬にリサイクルしても、得られる含クロム溶鉄が燐含有量の上限を超えることがない。従って、そのような場合は、炭材や酸素を使用するために、それなりの負荷とコストがかかる処理である気化脱燐処理を省略して、スラグ中の酸化クロムの回収を経済的に行えるようになる。また、次回以降のステンレス鋼が燐含有量の上限値の低い、所謂「低燐仕様のステンレス鋼(例えば、燐含有量の上限値が0.020質量%未満のステンレス鋼等)」である場合には、スラグを気化脱燐処理してから溶融還元製錬にリサイクルすることにより、得られる含クロム溶鉄が燐含有量の上限を超えないようにできる。さらに、スラグを気化脱燐する場合には、その前処理としてのスラグ中の粒鉄を除去しておくと、気化脱燐の際に燐が粒鉄中に吸収されることがないので、スラグからの気化脱燐を一層効率良くできるようになる。
その結果、極低燐ステンレス鋼が、従来より安価に溶製できるようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係る極低燐ステンレス溶鋼の溶製方法は、ステンレス溶鋼の素材である含クロム溶鉄を、電気炉ではなく転炉型反応容器でクロム鉱石等の溶融還元で直接溶製してから、別の転炉型反応容器で脱炭すると共に、引き続き真空精錬装置にて仕上げ脱炭精錬及び/又は成分調整を行う技術を対象とする。ここに、転炉型反応容器としては、ガスの上吹きランスと底吹き羽口とを備える所謂「上底吹き転炉が好ましい。そして、脱燐は、溶融還元炉より出湯された後で、且つ脱炭処理前に、取鍋あるいは別途の反応容器内に保持した含クロム溶鉄に酸化剤−CaO系フラックスを添加して不活性ガス等の吹き込みで撹拌し、脱燐処理を行うものである。ここに、酸化剤としては、鉄鉱石、焼結鉱、ミルスケール等の酸化鉄を用いるのが良い。
【0019】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
上記脱燐工程での含クロム溶鉄中燐及びクロムの酸化反応は、メタル/スラグ間で(1)、(2)式のように進行する。
【0021】
2[P]+5[O]=(P2O5) ……(1)
2[Cr]+3[O]=(Cr2O3) ……(2)
ここで、[P]、[Cr]:溶鉄中の燐及びクロム、[O]:溶鉄中の酸素(又は酸素ガス,若しくは酸化鉄からの酸素)、(P2O5)、(CaS):スラグ中のP2O5及びCr2O3、(g)はガス成分であることを示す記号である。
【0022】
この酸化反応で生成したP2O5は、スラグ中で塩基性成分であるCaOやNa2O等と結合し、固定される。また、上記燐及びクロムの酸化反応は、共に吸熱反応であり、低温ほど反応が進行し易い。つまり、(1)式の酸化反応を起こさせる脱燐処理では、(2)式のクロムの酸化が避けられない。
【0023】
そこで、脱燐処理によってスラグ中に移行したクロム分を溶鉄中に回収するには、そのスラグを前記転炉型反応容器へ投入し、下記(3)式のような反応で回収する。ここで、記号Cは、転炉型反応容器に投入した炭材、若しくは溶鉄中の炭素(濃度記号[C])である。この時、同時に(4)式の反応も進行し、所謂「復燐」が進行する。
【0024】
(Cr2O3)+C=2[Cr]+3CO(g) ……(3)
(P2O5)+5C=2[P]+5CO(g) ……(4)
溶融還元製錬を行う転炉型反応容器にリサイクルする前記脱燐スラグから、そこで生じる溶鉄中に復燐すると、この溶融還元製錬で製造された含クロム溶鉄を原料として後工程で脱炭精錬して溶製するステンレス鋼中の燐含有量を高めるので、一般には好ましくない。しかし、本発明者は、ステンレス鋼中にも、燐含有量の上限値の緩やかな鋼種(例えば、上限が0.040質量%)から極めて低い極低燐鋼(例えば、上限が0.010質量%)があることに鑑みて、次回以降の溶融還元製錬チャージで溶製される含クロム溶鉄の向け先であるステンレス溶鋼の燐の許容量に応じて、今回若しくはそれ以前の脱燐スラグを、該スラグからの気化脱燐処理を行うことなくリサイクルする操業と、スラグからの気化脱燐処理を行う操業とを選択的に実施することにした。つまり、次回以降のステンレス鋼が燐含有量の上限値の低い、前記「低燐仕様のステンレス鋼」である場合には、スラグから予め燐を除去してから溶融還元製錬にリサイクルするようにするのである。
【0025】
その燐の除去手段として、本発明者は、前記特許文献3で示唆された気化脱燐の採用を検討した。
【0026】
その際の反応は、(5)式のようなる。
【0027】
(P2O5)+5C=P2(g)+5CO(g) ……(5)
つまり、スラグ中の燐酸化物は、Cによって還元され、P2ガスとして気化脱燐する。熱力学的にはP2O5に比べCr2O3が酸化物として安定であるので、温度、酸素分圧を適切に調整することで、(5)式による気化脱燐のみを優先的に進行させることが可能である。なお、(5)式の反応する物質は、式の上では(4)式と同じになっているが、(4)式は溶鉄及びスラグの存在下での反応、(5)式は溶鉄が存在しない状態での反応である。
【0028】
ところで、特許文献3記載の気化脱燐は、普通鋼の転炉精錬スラグと高炉スラグとを混合したものを処理対象にしている。普通鋼の転炉精錬スラグには酸化鉄が10〜30質量%と多量に含まれており、これに炭素、珪素、アルミニウム等を加えて還元処理すると、まず酸化鉄の還元が起き、ついで燐酸化物が還元される。還元で生じた燐は、ガスとして気相に移行する一方で、生成した金属鉄にも吸収される。従って、そのような転炉スラグの脱燐では、気化脱燐だけでなく、燐が鉄中に吸収される現象が避けられず、スラグを溶融還元炉にリサイクルすると、そこで生じる溶鉄中に燐が移行するという問題があった。特許文献3の技術では、転炉スラグとほぼ同量の、多量の高炉スラグを混合した上で気化脱燐させるので、意図せずに転炉スラグ中の酸化鉄分を希釈しており、酸化鉄の還元には不利な条件が生じ、気化脱燐比率が高くなったと推測される。
【0029】
しかしながら、特許文献3の出願当時と比べ現在では、高炉スラグは廃棄物でなく、土木・建築資材として利用価値の高い資源と位置づけられているので、それを転炉スラグの希釈に使用するのは経済的に不利である。つまり、特許文献3記載の技術による転炉スラグの気化脱燐を、本願発明の対象である含クロム溶鉄を脱燐処理した際に発生するスラグの脱燐に適用することは好ましくない。また、含クロム溶鉄を脱燐した際に発生するスラグは、高融点のクロム酸化物を多量に含むので、気化脱燐する温度の下では、固相比率が高くて反応性に乏しいので、高炉スラグを添加して希釈し、低融点化しなければ、気化脱燐反応を効率的に行わせることが難しいと予測された。
【0030】
しかしながら、発明者は、このような含クロムで高燐含有量のスラグであっても、もし気化脱燐が可能ならば、クロム分の回収に非常に有益であると考え、あえて気化脱燐の利用に挑戦することにした。
【0031】
まず、発明者は、含クロム溶鉄の脱燐実験を行った。フラックスには、転炉型反応容器への脱燐スラグのリサイクルを前提に、CaO−CaF2−FetO系とした。実験装置は、図1に示すように、含クロム溶鉄1を保持する炭素ルツボ2に、撹拌用の不活性ガス3を吹き込むランス4を配置したものである。実験条件は、表1に一括して示す。
【0032】
【表1】
【0033】
この実験で得られた含クロム溶鉄及びスラグの組成を表2に示す。[Cr]:16質量%の含クロム溶鉄に対し、[P]≦100ppmの極低燐化が可能であることを確認した。
【0034】
【表2】
【0035】
引き続いて、この実験で得られた燐を多量に含有するスラグからの気化脱燐実験を行った。最初に、そのスラグは、100メッシュアンダーに粉砕してから、含有する粒鉄を磁選により予め除去した。そして、該スラグに炭材を混合し、図2に示す実験装置で気化脱燐を行った。その実験装置は、回転する円筒状容器5と装入物(スラグと炭材の混合したもの)6を加熱するガス・バーナ7(燃料:コークスス炉ガス)を備えたものである。実験条件は、表3に一括して示す。
【0036】
【表3】
【0037】
実験結果の一例を表4に示す。スラグ:炭材=1:2、コークス炉ガスの燃焼により容器内雰囲気の温度を1200℃以上にすると、前記スラグから脱燐率50%以上で脱燐ができ、1450℃では、90%以上の脱燐が達成された。なお、この気化脱燐では、スラグ中のクロム酸化物は還元されなかった。
【0038】
【表4】
【0039】
このように、クロム酸化物を含有し、固相比率の高いスラグであっても、意外にも気化脱燐で燐を確実に、しかも何ら支障を生じることなく除去できることが確認できた。このように、クロム酸化物を含有するスラグの場合には、高炉スラグを混合しなくても気化脱燐が可能な理由は定かでないが、次のように推測される。
【0040】
まず、クロム酸化物は、普通鋼の転炉精錬で生じるスラグ中に含まれる酸化鉄に比し、安定で還元され難いこと、また融点が高いため、気化脱燐時の温度では固相で存在する。そのため、クロム酸化物は、反応性が低く、一層還元し難くなっていると考えられる。つまり、スラグ中の燐が吸収される金属相が生成しないために、炭材で還元されて生成した燐は、気相中に移行するしか行き場がなく、それによって気化脱燐が十分に起きると考えられる。また、スラグ中の粒鉄分を予め除去しておくと、粒鉄に吸収される燐も少なく、一層気化脱燐に有利な条件が発現したものと推察される。このような現象は、従来は全く知られ、また予想されてもいなかったことであり、本発明者が実際にクロム酸化物を含むスラグを炭材と共に加熱処理する実験を行って、初めて確認できた新規な知見である。
【0041】
そこで、発明者は、この知見を要件に本発明を完成させたのである。また、本発明では、脱燐処理の対象は、転炉型反応容器でクロム鉱石を溶融還元して得た含クロム溶鉄が好ましいが、該容器でステンレス鋼スクラップを溶解したり、または該容器で得た含クロム溶鉄を素材とし、外部加熱式のスクラップ溶解可能な貯銑炉にてステンレス鋼スクラップを溶解した含クロム溶鉄等、ステンレス鋼を溶製するクロム源となる含クロム溶鉄であれば、いかなるプロセスで製造されたものでも良い。さらに、本発明では、気化脱燐を行うスラグは、含クロム溶鉄の脱燐後、まだ高温状態にあるものでも、ヤードで常温まで冷却されたものであっても良い。加えて、本発明では、転炉型反応容器へ装入する溶銑は、予め溶銑予備処理工程で脱燐されていることが好ましい。その後の燐除去に対する負荷が軽減されるからである。
【0042】
【実施例】
トピード・カーでのフラックス・インジェクション法で予め燐濃度を0.010質量%にまで脱燐された溶銑に、スクラップ、クロム鉱石、炭材等を投入し、クロム鉱石を溶融還元する転炉型反応容器、そこで得た含クロム溶鉄を、CaO−FeO系フラックスの添加と、不活性ガスの吹き込みで脱燐する取鍋方式の脱燐装置、脱燐後の含クロム溶鉄を酸素ガスの吹錬で脱炭する上底吹き転炉、転炉出鋼後のステンレス溶鋼に各種合金を添加して成分調整を行うVOD方式の真空脱ガス装置を順次配置したステンレス鋼の溶製工程で、極低燐ステンレス鋼を溶製した。
【0043】
その際、前記含クロム溶鉄の脱燐には、図3に示すように、収容能力180tの溶銑装入鍋8を利用し、フラックス9は、ホッパ10より投入管11を経て添加した。含クロム溶鉄1の撹拌には、ランス4を介してアルゴン・ガス3を用いた。脱燐処理の条件を表5に一括して示す。また、脱燐処理前後の溶鉄の成分を表6に示す。生成したスラグは、1mmアンダーに粉砕し、物理的選別と磁力により鉄分を除いた。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
一方、この脱燐処理で生成したスラグからの気化脱燐は、製鉄所内に既設のCガス内燃式のロタリーキルンで行い、気化した燐を含むガスは、バグ・フィルタ方式の集塵装置にて捕集した後、環境問題が生じないように通水して燐化合物を除去してから大気へ放出した。気化脱燐の処理条件を表7に示す。処理前後のスラグ組成を表8に示す。該スラグからの気化脱燐率は、70%以上であった。この気化脱燐処理後のスラグを、次回以降のクロム鉱石の溶融還元を行う際に、前記転炉型反応容器へリサイクルし、含クロム溶鉄の溶製に利用した。その結果、スラグからのクロム回収率は平均で90%、スラグから含クロム溶鉄への復燐率は15%であった。この程度の復燐率であれば、以降の前記脱燐工程での脱燐に悪影響を及ぼすことがないので、前記リサイクルは安定して継続可能である。なお、脱燐後の含クロム溶鉄は、転炉での脱炭、VOD真空脱ガス槽での成分調整を行い、極低燐ステンレス鋼とされた。得られた極低燐ステンレス鋼の組成を表9に示すが、燐の含有量は、0.0060質量%と目標値を満足していた。また、当該チャージの次のチャージでは、その脱燐処理で生成したスラグを気化脱燐することなく、クロム鉱石の溶融還元用の転炉型反応容器にリサイクルした。リサイクルされた該脱燐スラグの組成は、表8の気化脱燐処理前スラグと同一であった。リサイクルしたスラグから含クロム溶鉄へのクロムの回収率は、平均で92%であった。さらに、該スラグからのクロム溶鉄への復燐率は85%であった。その後、得られた含クロム溶鉄は、転炉での脱炭、VOD真空脱ガス槽での成分調整が行われ、燐含有率の上限が0.020質量%の一般仕様のステンレス溶鋼とされた。そのステンレス溶鋼の組成を表10に示すが、燐含有量は0.016質量%であり、この鋼種の燐含有量の規制を満足するものであった。
【0047】
なお、本発明では、目標の炭素含有量に応じては、VOD真空脱ガス槽で仕上げ脱炭を行っても良い。
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
このように、含クロム溶鉄の脱燐処理と、その脱燐で発生した高燐スラグからの気化脱燐処理、溶融還元炉への気化脱燐後のスラグ・リサイクルを組み合わせることによって、[P]≦0.010質量%のステンレス鋼の溶製が可能となった。なお、気化脱燐されたスラグのリサイクルをした溶融還元炉で発生したスラグは、(T.Cr)≦0.2質量%であり、問題なく路盤材としての処理が可能であった。また、溶銑装入鍋や溶融還元炉等の耐火物寿命は、従来と同等であった。
【0053】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、脱炭精錬以降で復燐を生じることなく、スラグ中のクロム分が回収できるようになる。一方、燐濃度の成分許容値が高いステンレス鋼の溶製に対しては、安価に脱燐スラグを未処理のままリサイクルすることで十分である。その結果、極低燐ステンレス鋼が、従来より安価、且つ環境に悪影響を与えることなく溶製できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】含クロム溶鉄の脱燐実験を実施した装置の縦断面図である。
【図2】燐含有スラグからの気化脱燐実験に用いた装置の縦断面図である。
【図3】本発明の実施で利用した脱燐装置を示す縦断面図ある。
【符号の説明】
1 含クロム溶鉄
2 炭素ルツボ
3 不活性ガス(アルゴン・ガス、窒素ガス等)
4 ランス
5 円筒状容器
6 装入物
7 ガスバーナ
8 溶銑装入鍋
9 フラックス
10 ホッパ
11 投入管
12 スラグ
Claims (2)
- 転炉型反応容器に装入した溶銑に、クロム鉱石及び炭材を添加すると共に酸素ガスを供給してクロム鉱石を溶融還元製錬し、得られた含クロム溶鉄を別の転炉型反応容器において脱炭精錬して含クロム溶鋼とし、引き続き真空精錬装置にて該含クロム溶鋼の脱炭精錬及び/又は成分調整を行うステンレス溶鋼の溶製方法において、
前記含クロム溶鉄を脱炭精錬する前に、該含クロム溶鉄に酸化剤−CaO系フラックスを添加して脱燐処理を行うと共に、そこで発生した脱燐スラグは、次回以降の溶融還元製錬チャージの向け先であるステンレス溶鋼の燐含有量の許容量に応じて、該脱燐スラグを次回以降の溶融還元製錬チャージへリサイクルする操業と、該脱燐スラグに炭材を加えて加熱し、その気化脱燐処理をした後に、前記次回以降の溶融還元製錬チャージへリサイクルする操業とを選択的に実施し、スラグ中の酸化クロムを炭素還元してクロム分を含クロム溶鉄中に回収することを特徴とする極低燐ステンレス鋼の溶製方法。 - 前記脱燐スラグは、その燐を気化除去する前に、含有する粒鉄を除去したものであることを特徴とする請求項1記載の極低燐ステンレス鋼の溶製方法。
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