JP3963795B2 - トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、電子印刷、静電記録等の画像記録において使用される、アゾ顔料を用いたトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フルカラーまたはモノカラーの電子写真、静電写真、静電記録等に使用される画像記録用着色剤としては、油溶性染料、分散性染料、チオインジコ系顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン顔料等の縮合多環系顔料が知られている。しかしながら、上記顔料は製造コストが高く、着色力も劣り、また、上記染料では耐光性が劣る等の問題があり、トナー用着色剤として十分に満足できるものではなかった。
【0003】
これらの問題を解決すべくアゾ系顔料が着目され、開発が進められてきた。例えば、特開昭62−296167号公報にはモノアゾ系顔料をトナー用途に使用する技術が、特開昭59−165069号公報や特開平5−19536号公報にはナフトール系アゾ顔料をトナー用途に使用する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、近年画像記録の高解像度化など高性能化が進むにつれてトナーに使用する着色剤は顔料構造による選別から、高度に粒子設計、顔料設計された顔料へと開発が移りつつある。例えば、特開平11−272014号公報にはナフトール系アゾ顔料のピグメントレッド238、同147について顔料の累積体積分布による平均粒度を規定した顔料の使用についての記載がある。しかし、粒度のみを規定しても顔料の凝集が強く、凝集を抑制するためには特定構造の活性剤の使用が必要であり、このような活性剤の使用はトナーの製造範囲を著しく制限し、トナーにおいて必要な特性である透明性や着色力をも低下させてしまう。さらに、特開平10−239904号公報には、有機顔料粒子の形状と粒子径をソルトミリング工程により改良した有機顔料の使用が記載されている。
【0005】
しかし、これらの顔料を重合法トナーに用いた場合には、着色剤分散液や重合後に着色剤が凝集し、トナーにおいて必要な透明性や着色力が不十分であった。さらには水溶性無機塩を使用したソルトミリング工程によるコストアップや環境負荷も生じ、工業的にも著しく不利となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、透明で着色力が有り、その他トナーに要求される性能をバランス良く満たすトナーを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定純度のアゾ顔料を用いることで従来からの問題点が解決され、解像性ならびに着色力等に優れた性能を有するトナーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、少なくとも乳化されたバインダー樹脂粒子と、水を主体とする分散媒 に分散されたC.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147およびC.I.ピグメントレッド269から選ばれ且つ純度が90%以上の顔料の分散体との混合物を凝集させる工程を経て製造されたことを特徴とするトナーである。
【0009】
上記の顔料純度を有するアゾ顔料は、従来慣用のアゾ顔料と比べ、トナーの製造において良好な分散性及び分散安定性を有し、トナーが透明で着色力が有り、その他トナーに要求される条件をバランス良く満たすトナー用着色剤として有用である。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に発明の実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のトナー用アゾ顔料は、純度が90%以上であることが特徴である。アゾ顔料としてC.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147およびC.I.ピグメントレッド269から選ばれる。
【0011】
本発明のトナー用アゾ顔料は、顔料純度が90%以上である。一方、従来の各種用途で使用されているアゾ顔料は、顔料中に残留ジアゾ成分、残留カップラー成分、合成途中に発生する副反応物、分解物等を多量に含んでいる。これら有機不純物が、トナーの製造において様々な問題を引き起こす要因となっていることを本発明者らは突き止めた。
【0012】
例えば、凝集法トナーでは、顔料中に含まれている残留カップラー成分が、着色剤分散液や着色剤を含んだ重合後のポリマーが凝集を引き起こすため、トナー中の顔料濃度を低下させていた。また、顔料合成途中に発生する分解物が、凝集法では凝集工程を阻害して粒度分布を広げたり、トナーの帯電安定性等を悪化させるなど、トナー特性を損なわせていた。従って、アゾ顔料を含むトナーが良好なトナー特性を発現するためには、アゾ顔料が含有する上記の各種有機不純物を減少させる必要性がある。
【0013】
本発明者らは、アゾ顔料が、その製造工程中に、非水溶性溶剤または水溶性溶剤を一部添加する工程、または、前記溶剤にてアゾ顔料を洗浄する工程を含むと、製造されたアゾ顔料中に含まれている残留ジアゾ成分、残留カップラー成分、合成途中に発生する副反応物、分解物、重合物等の顔料以外の多くの有機不純物が、水相から、より溶解度の高い溶剤相に移行し、アゾ顔料中の有機不純物の総量が減少し、結果としてアゾ顔料が高い顔料純度を有し、該顔料を含むトナーが高い透明性、着色力等のトナー特性に優れていることを見出した。これらの効果が得られるには、顔料純度は90%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上である。
【0014】
顔料純度は、一般的な方法として、該顔料に含まれる各種有機不純物を有機溶剤で抽出し、有機不純物が除去された顔料の重量を計量することで測定できる。有機溶剤としては、顔料を溶解せず、残留ジアゾ成分、残留カップラー成分、合成途中に発生する副反応物、分解物、重合物等を選択的に溶解できる非水溶性溶剤または水溶性溶剤が使用される。
【0015】
本発明で使用する非水溶性溶剤または水溶性溶剤は、置換されていても良く、炭化水素類、アミン類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、酸類、可塑剤類等が挙げられる。具体的には、トルエン、キシレン、スチレン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、ニトロベンゼン、牛脂アミン、トリエチルアミン、メタノール、プロピルアルコール、ブタノール、フェノール、ナフトール、テトラヒドロフラン、ジエチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、メチルブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ギ酸、酢酸、オレイン酸、ヒマシ油等が挙げられる。これらのなかではエーテル類、アルコール類が好ましく、より好ましくはメタノールである。
【0016】
アゾ顔料を非水溶性溶剤または水溶性溶剤にて洗浄したり、アゾ顔料に前記溶剤を一部添加するには、例えば、顔料プレスケーキ、乾燥後の塊状顔料、あるいは粉砕後の顔料粉末を上記溶剤または上記溶剤を含む水溶液中に分散させる方法がある。さらに、カップリング後の顔料スラリーやカップリング前のジアゾ成分またはカップリング成分または必要ならば別に備えた水溶液中に上記溶剤または上記溶剤を含む水溶液やエマルジョンを予め添加してカップリング反応を行い、顔料スラリーをろ過する方法等もある。尚、上記洗浄方法、添加方法はすべてのアゾ顔料に適用でき、公知のアゾ顔料の製造方法すべてに適用できる。
【0017】
尚、本発明で使用する非水溶性溶剤または水溶性溶剤は単独で使用しても、2つ以上の溶剤を組み合わせて使用しても良く、必要により、適当な界面活性剤と共にエマルジョンとして使用しても良い。さらに、使用する非水溶性溶剤または水溶性溶剤の種類および使用量ならびに界面活性剤等の助剤の併用は、トナーの諸物性が損なわれない範囲であれば、特に制限はない。
【0018】
本発明のトナーは、凝集法で製造することができる。これらの方法は公知の方法が使用でき、特に制限されない。その際、着色剤としての本発明の純度が90%以上のアゾ顔料は、色相等を調整するために他の着色剤と任意に混合することもできる。
【0019】
凝集法により本発明のトナーを得るには、バインダー樹脂等の乳化液に、本発明のアゾ顔料を含む着色剤、必要ならば、さらに帯電制御剤、ワックス、分散剤等と混合し、水を主体とした分散媒で分散後、これを添加し、温度、pH等を制御または凝集剤を添加することによりこれらとバインダー樹脂とを凝集させる工程を経てトナーを製造する。本発明の純度を制御した顔料は、主に水を主体とした分散媒への分散が容易で分散安定性があり、透明性と着色力の高いトナーが得られる。
【0020】
本発明のトナーに適したバインダー樹脂(結着樹脂)としては、公知のバインダー樹脂がいずれも使用でき、特に制限されない。凝集法トナーの製造におけるバインダー樹脂を構成する重合性単量体も同様である。バインダー樹脂の製造に使用される重合性単量体としては、例えば、スチレンあるいはスチレン誘導体、メタアクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、オレフィン類、ハロゲン系ビニル類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、ビニル化合物類、アクリル酸、メタクリル酸等があり、これらは単独あるいは組み合わせて使用することができる。これらの重合性単量体は、ラジカル重合開始剤、例えば、アゾ系またはジアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、過硫酸塩系重合開始剤、過酸化水素等を用いて重合することができる。
【0021】
トナーの帯電制御は、バインダー樹脂、着色剤自体で行っても良いが、必要に応じて帯電制御剤を併用しても良い。本発明のトナーに適した帯電制御も同様に公知のものが全て使用できる。例えば正帯電制御剤として第4アンモニウム塩等が、負帯電制御剤としてサリチル酸系金属錯体等を用いることができる。
【0022】
本発明に使用されるワックス類としては、オレフィン系ワックスがあり、好ましくは低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィンワックス、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、シリコン等がある。これら以外の成分として上記樹脂と着色剤を主成分とするトナー粒子に対して無機微粒子や有機微粒子等で構成される内添剤または外添加剤を添加したものであってもよい。
【0023】
本発明のトナーとしては、例えば、磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合等が挙げられるが、いずれのトナーにおいても高純度アゾ顔料使用による前記の効果が奏される。
【0024】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
参考例1
3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド100g(0.41モル)を水1500gに分散させ、氷を加えて0〜5℃に設定し、35%塩酸水溶液120g(1.15モル)を加えて10分攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム29g(0.42モル)を水に溶解後添加し、60分間攪拌した後、スルファミン酸4g(0.04モル)を加えて亜硝酸を消去した。さらに、酢酸ソーダ100g(0.74モル)、90%酢酸150g(2.24モル)を添加し、ジアゾニウム塩溶液とした。
【0026】
これとは別に、N−(4−クロロ−2,5−ジメトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボキシアミド153g(0.43モル)を水1500g、苛性ソーダ50g(1.25モル)と共に90℃で溶解した後、水を追加して20℃としてカップラー溶液とした。
【0027】
このカップラー溶液を20℃以下に設定した上記ジアゾニウム塩溶液に添加し、カップリング反応を行い、1時間攪拌した。得られた顔料スラリーを90℃で加熱処理をした後、ろ過、水洗を行い、顔料純分20%の顔料ペースト1220g(0.40モル)を得た。この顔料ペースト1220gを2000gのメタノール中に分散させ、2時間攪拌した後、ろ過、水洗を行い100℃で乾燥し、アゾ顔料(ピグメントレッド(PR)146)240gを得た。
【0028】
乾燥した顔料2.00gをメタノール400mlに分散させ、顔料以外の有機不純物を室温にて2時間抽出した。抽出後の顔料をメタノール100mlにて洗浄後、残った顔料を100℃にて乾燥し、抽出前後の重量差にて顔料純度を求めた(他の参考例および比較例においても同様)。結果を表1に示す。
【0029】
比較例1
メタノール洗浄を行わない以外は参考例1と同様にしてアゾ顔料(PR146)を製造した。顔料の純度を表1に示す。
【0030】
参考例2
3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド100g(0.41モル)を水1500gに分散させ、氷を加えて0〜5℃に設定し、35%塩酸水溶液120g(1.15モル)を加えて10分攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム29g(0.42モル)を水に溶解後添加し、60分間攪拌した後、スルファミン酸4g(0.04モル)を加えて亜硝酸を消去した。さらに、酢酸ソーダ100g(0.74モル)、90%酢酸150g(2.24モル)を添加し、ジクロルベンゼン24gと界面活性剤(花王社製エマルゲン911)2gを混合し、これに水を注入攪拌してエマルジョンとした後添加し、ジアゾニウム塩溶液とした。
【0031】
これとは別に、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボキシアミド139g(0.42モル)を水1500g、苛性ソーダ50g(1.25モル)と共に90℃で溶解後、水を追加して20℃とし、カップラー溶液とした。
【0032】
このカップラー溶液を20℃以下に設定した上記ジアゾニウム塩溶液に添加し、カップリング反応を行い、1時間攪拌した。得られた顔料スラリーを90℃で加熱処理をした後、ろ過、水洗を行い、100℃で乾燥し、アゾ顔料(PR269)232g(0.40モル)を得た。このアゾ顔料の純度を表1に示す。
【0033】
比較例2
ジクロルベンゼンと界面活性剤を使用しない以外は参考例2と同様にしてアゾ顔料(PR269)を製造した。得られたアゾ顔料の純度を表1に示す。
【0034】
【0035】
実施例1および2、比較例3および4(凝集法トナー)
参考例1および2、比較例1および2の各アゾ顔料を用い、下記の方法による凝集法トナーを作製した。
(1)着色剤分散液の製造
各アゾ顔料20gのそれぞれにイオン交換水80g、アルキルベンゼンスルホン酸塩3gを添加し、機械式分散機にて分散処理して各顔料の着色分散液を得た。
【0036】
(2)ポリマー乳化液の製造
反応器にエステルワックスエマルジョン330g(固形分として)、イオン交換水13Kgを入れ90℃に昇温し、アルキルベンゼンスルホン酸塩3g、スチレン2.5Kg、n−ブチルアクリレート650g、メタクリル酸170g、8%過酸化水素水溶液330g、8%アスコルビン酸水溶液330gを添加した。90℃で7時間反応を継続してポリマー乳化液を得た。
【0037】
(3)トナーの製造
ポリマー乳化液150gに着色剤分散液9.5gを注入し混合攪拌した。この中に0.5%の硫酸アルミ溶液40gを攪拌しながら注入する。60℃に昇温し、2時間攪拌を継続し、ろ過、洗浄、乾燥し凝集法トナーを得た。
【0038】
〔トナーの評価〕
上記各実施例、比較例で得られたトナーのそれぞれ50gに疎水性シリカ0.3gを外添し、電子写真プリンターで以下の方法で評価を行った。また、重合トナー法においては着色剤の分散性と分散液の安定性も併せて評価した。評価結果を表2に示す。
【0039】
評価方法
(1)透明性10
ベタ画像をOHPシート上にプリントし、画像の透明性を観察した。
(2)着色力
ベタ画像をOHPシート上にプリントし、画像の着色力を観察した。
【0040】
(3)分散性
分散媒への顔料の分散性を観察した。
(4)分散液安定性
顔料の凝集や沈降が無く、経時で安定した分散状態を有するか否かを観察した。
【0041】
表2に示す通り、顔料純度が低い比較例では凝集法トナー製造において分散性、分散液安定性が悪く、透明性と着色力も劣る。
【0042】
【発明の効果】
本発明のアゾ顔料を使用することにより、トナーの製造において良好な分散性及び分散安定性を有し、トナーが透明で着色力が有り、その他トナーに要求される性能をバランス良く満たし、且つ工業的にも有利なトナーを提供することができる。
Claims (1)
- 少なくとも乳化されたバインダー樹脂粒子と、水を主体とする分散媒に分散されたC.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147およびC.I.ピグメントレッド269から選ばれ且つ純度が90%以上の顔料の分散体との混合物を凝集させる工程を経て製造されたことを特徴とするトナー。
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