JP3962905B2 - ダイナミックダンパー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防振技術に係るダンパーに係り、更に詳しくは回転軸の中空部に装着されるシャフト内挿型のダイナミックダンパーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車のプロペラシャフトにおいては、エンジンのトルク変動、ユニバーサルジョイントとの交角による回転二次、シャフトのアンバランスによる回転一次等を起振源として、低回転域ではシャフトとセンターベアリングサポートによるこじり・曲げ振動(一般的には15〜20Hz程度)、高回転域ではシャフトの曲げ振動(一般的に100〜200Hz程度)がそれぞれ発生している。
【0003】
これに対して従来は、例えば図4に示すように、シャフト51の内部に径方向に効果のあるダイナミックダンパー52を装着し、主に高回転域のシャフト曲げ振動の低減を行なっている(特開2000−283138公報参照)。図上符号53は取付環(アウターリング)、54はゴム状弾性体、55はマス(インナーウエイト)である。
【0004】
しかしながらこの場合、このダイナミックダンパー52一つでは低回転域のシャフト曲げ振動を低減することができず、よって高回転域および低回転域の双方で効果を発揮するにはダンパーアイテムが二つ必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑みて、プロペラシャフト等の回転軸の中空部に装着されるシャフト内挿型のダイナミックダンパーにおいて、ダンパー一つで高回転域および低回転域の双方で防振効果を発揮することができるダイナミックダンパーを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるダイナミックダンパーは、回転軸の中空部に装着されるダイナミックダンパーにおいて、周方向に複数に分割されたマスと、前記回転軸の低速回転時に前記マスを前記回転軸の中央寄りに保持して低速域共振系のバネとして作用するとともに前記回転軸の高速回転時に前記マスを遠心力により径方向外方へ向けて移動自在に保持するゴム状弾性材製の第一弾性体と、前記マスの外周側に配置されて前記マスが遠心力により径方向外方へ向けて移動したときに前記回転軸側に当接して高速域共振系のバネとして作用するゴム状弾性材製の第二弾性体とを有し、前記マスの分割体とこの分割体を保持する前記第一弾性体の抱持部とは、前記分割体の外周面の一部のみにて互いに加硫接着され、他の部分は非接着とされていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の請求項2によるダイナミックダンパーは、上記した請求項1のダイナミックダンパーにおいて、第一弾性体と第二弾性体とが一体成形されていることを特徴とするものである。
【0008】
上記構成を備えた本発明の請求項1によるダイナミックダンパーにおいては、回転軸の低速回転時と高速回転時とで共振系の固有振動数が以下のように切り替えられる。
【0009】
すなわち先ず、低速回転時においては、第一弾性体が共振系のバネとして作用するとともに、周方向に複数に分割されたマスが全体として共振系のマスとして作用し、第一弾性体のバネ定数を小さく設定する等により共振系の固有振動数を低く設定する。したがって、共振系の固有振動数を15〜20Hz程度に設定することにより、プロペラシャフトとセンターベアリングサポートによる曲げ振動を低減させることが可能となる。
【0010】
また、高速回転域においては、第二弾性体が共振系のバネとして作用するとともに、周方向に複数に分割されたマスがそれぞれ共振系のマスとして作用し、第二弾性体のバネ定数を大きく設定する等により共振系の固有振動数を高く設定する。したがって、共振系の固有振動数を100〜200Hz程度に設定することにより、プロペラシャフト自体の曲げ振動を低減させることが可能となる。
【0011】
尚、請求項2に記載したように、第一弾性体と第二弾性体とは両者を一体成形するようにしても良く、この場合は、両者の形状を異ならせる等してバネ定数を調整する。
【0012】
また、本件出願には、以下の技術的事項が含まれる。
【0013】
すなわち、上記目的を達成するため、本件出願が提案する一のダイナミックダンパーは、管の中に用いられるダイナミックダンパーで、管の回転により共振周波数が変化し、2つの異なる周波数で効果を発揮するものである。
【0014】
構造としては、マスが複数に分割され、その分割されたマスはゴムで包み込まれており、マスを包んでいるゴムの軸方向両端からテーパー状に広がるゴム部を備えている。ゴム部によりマスは管の中央に支持され、ゴム部の片側に管にダイナミックダンパーを固定するためのスリーブを設けている。また、マスの外周部にゴム突起を設け、マスの外周側の一部とゴムを加硫接着している。
【0015】
低回転域では、ゴム部をバネ、マス全体をマスとするバネ−マス系による固有振動数をもつ構造であり、ゴム部のバネを小さくすることにより15〜20Hz程度の周波数に設定する。これによりプロペラシャフトとセンターベアリングサポートによる曲げ振動を低減させる。
【0016】
また、高回転域では、マスが遠心力で包み込んでいるゴムを引き伸ばし、ゴム突起がシャフト内部に押し当てられる構造となる。この場合、ゴム突起をバネとし、それぞれのマスによる固有振動数を有するバネ−マス系となり、ゴム突起のバネの設定により100〜200Hz程度の周波数に設定する。これによりプロペラシャフト自体の曲げ振動を低減させる。
【0017】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係るダイナミックダンパーを示しており、同図(A)はその断面図、同図(B)は同図(A)におけるA−A線断面図(端面図)をそれぞれ示している。
【0019】
当該実施例に係るダイナミックダンパー1は、以下のように構成されている。
【0020】
すなわち先ず、当該ダイナミックダンパー1を装着するプロペラシャフト11の中空部12の軸芯位置に配置される質量体としてのマス2が設けられており、このマス2は全体に円柱形を呈するものが円周方向に4つに分割された形状に形成されている。またこのマス2はゴム状弾性材製の第一弾性体3の抱持部4によって抱持されており、かつ同じく第一弾性体3の支持脚部5によって上記したようにプロペラシャフト11の中空部12の軸芯位置に保持されている。
【0021】
第一弾性体3の抱持部4は、マス2を包み込む形状に形成されており、すなわちマス2の外周側に配置される円筒形の外周筒部4aと、マス2の軸方向両側にそれぞれ配置される円板形の端面部4cとを一体に有している。またこの外周筒部4aおよび端面部4bの内側には抱持部4の内部を四つの空間4dに仕切る仕切り部4cが軸方向からこれを見て十字形に一体成形されており、四つの空間4dのそれぞれにマス2の分割体2aが一つずつ収容されている。マス2の分割体2aと抱持部4とは分割体2aの外周面の一部(軸方向長さxの範囲および円周方向長さyの範囲)においてのみ互いに加硫接着されており、他の部分は非接着とされている。
【0022】
第一弾性体3の支持脚部5は、抱持部4の軸方向両側にそれぞれ一体成形されており、それぞれテーパー状(円錐面状)の支持部(ゴム部)5aと円筒状の着座部5bとを一体に有している。着座部5bはプロペラシャフト11の内周に所定の圧入代をもって圧入されるよう寸法設定されており、かつ軸方向一方の着座部5bには金属等剛材製の取付環(スリーブ)6が加硫接着されている。
【0023】
上記抱持部4および支持脚部5を一体に備えた第一弾性体3は、プロペラシャフト11の低速回転時にマス2の各分割体2aをプロペラシャフト11の軸芯位置寄りに保持して低速域共振系のバネとして作用し、かつプロペラシャフト11の高速回転時にマス2の各分割体2aを遠心力により径方向外方へ向けて移動自在に保持する。
【0024】
また、マス2の各分割体2aの外周側において、抱持部4には第二弾性体(ゴム突起)7が径方向外方へ向けて突出する突起状のものとして一体成形されており、この第二弾性体7は、マス2の各分割体2aが遠心力により径方向外方へ向けて移動したときにプロペラシャフト11の内周面に当接して高速域共振系のバネとして作用する。
【0025】
上記構成のダイナミックダンパー1は、以下のように作動する。
【0026】
すなわち先ず、プロペラシャフト11の低速回転時においては、図1に示したように第一弾性体3がその支持脚部5の支持部5aにおいて低速域共振系のバネとして作用するとともに、円周方向に四つに分割されたマス2が全体として低速域共振系のマスとして作用し、このバネおよびマスの組合せによる低速域共振系が構成される。したがって、この低速域共振系の固有振動数を15〜20Hz程度に設定することにより、プロペラシャフト11とセンターベアリングサポートによる曲げ振動を低減させることができる。
【0027】
また、プロペラシャフト11の高速回転域においては、比較的大きな遠心力が作用するため、図2に示すようにマス2の各分割体2aが径方向外方へ向けて移動し、第二弾性体7をプロペラシャフト11の内周面に押し付ける。したがってこの場合は、第二弾性体7が高速域共振系のバネとして作用するとともに、円周方向に四つに分割されたマス2の分割体2aがそれぞれ高速域共振系のマスとして作用し、このバネおよびマスの組合せによる高速域共振系が構成される。したがって、この高速域共振系の固有振動数を100〜200Hz程度に設定することにより、プロペラシャフト11自体の曲げ振動を低減させることができる。
【0028】
以上のように、上記構成のダイナミックダンパー1はプロペラシャフト11の低速回転時と高速回転時とで共振系の固有振動数を自動的に切り替えるものであって、これにより、一つのダイナミックダンパー1で低速回転域および高速回転域の双方でそれぞれ適切な防振効果を発揮することができる。
【0029】
尚、上記ダイナミックダンパー1においては、プロペラシャフト回転数と径方向のマス部振動伝達率との関係が図3のグラフ図のようになると考えられる。
【0030】
また、上記ダイナミックダンパー1に対しては、更に以下の構成を付加するようにしても良い。
【0031】
すなわち、第一弾性体3における支持脚部5の支持部5aにスリット窓(図示せず)を設ける。スリット窓は複数を円周方向に並べて設ける。これにより、支持部5aが弾性変形するときに発生する引っ張り応力が低減されるため、図2に示したように分割体2aが径方向に移動するときに環状の支持部5aが広がり易くなる。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0033】
すなわち、上記構成を備えた本発明の請求項1によるダイナミックダンパーにおいては、回転軸の低速回転時と高速回転時とで共振系の固有振動数が自動的に切り替えられるために、一つのダイナミックダンパーで低速回転域および高速回転域の双方でそれぞれ適切な防振効果を発揮することができる。
【0034】
またこれに加えて、上記構成を備えた請求項2によるダイナミックダンパーにおいては、第一弾性体および第二弾性体が互いに一体成形されるために、弾性体の加硫成形工程を一回分で済ませることができ、よって上記したように低速回転域および高速回転域の双方でそれぞれ適切な防振効果を発揮するダイナミックダンパーを比較的容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るダイナミックダンパーの軸停止時および低速回転時の状態を示す図で、(A)は同ダイナミックダンパーの断面図、(B)は同図(A)におけるA−A線断面図
【図2】同ダイナミックダンパーの軸高速回転時の状態を示す図で、(A)は同ダイナミックダンパーの断面図、(B)は同図(A)におけるB−B線断面図
【図3】同ダイナミックダンパーにおけるプロペラシャフト回転数とダンパー径方向伝達率との関係を示すグラフ図
【図4】従来例に係るダイナミックダンパーの断面図
【符号の説明】
1 ダイナミックダンパー
2 マス
2a 分割体
3 第一弾性体
4 抱持部
4a 外周筒部
4b 端面部
4c 仕切り部
4d 空間
5 支持脚部
5a 支持部
5b 着座部
6 取付環
7 第二弾性体
11 プロペラシャフト(回転軸)
12 中空部
Claims (2)
- 回転軸(11)の中空部(12)に装着されるダイナミックダンパー(1)において、
周方向に複数に分割されたマス(2)と、
前記回転軸(11)の低速回転時に前記マス(2)を前記回転軸(11)の中央寄りに保持して低速域共振系のバネとして作用するとともに前記回転軸(11)の高速回転時に前記マス(2)を遠心力により径方向外方へ向けて移動自在に保持するゴム状弾性材製の第一弾性体(3)と、
前記マス(2)の外周側に配置されて前記マス(2)が遠心力により径方向外方へ向けて移動したときに前記回転軸(11)側に当接して高速域共振系のバネとして作用するゴム状弾性材製の第二弾性体(7)とを有し、
前記マス(2)の分割体(2a)とこの分割体(2a)を保持する前記第一弾性体(3)の抱持部(4)とは、前記分割体(2a)の外周面の一部のみにて互いに加硫接着され、他の部分は非接着とされていることを特徴とするダイナミックダンパー。 - 請求項1のダイナミックダンパーにおいて、
第一弾性体(3)と第二弾性体(7)とが一体成形されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
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