JP3960241B2 - 二次電池の残存容量推定装置、二次電池の残存容量推定方法、および二次電池の残存容量推定方法による処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体 - Google Patents
二次電池の残存容量推定装置、二次電池の残存容量推定方法、および二次電池の残存容量推定方法による処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、二次電池の残存容量推定装置、二次電池の残存容量推定方法、および二次電池の残存容量推定方法による処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関し、特に、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される二次電池の残存容量推定装置、二次電池の残存容量推定方法、および二次電池の残存容量推定方法による処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境に配慮した自動車として、電気自動車(Electric Vehicle、以下「EV」とも称する。)、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle、以下「HV」とも称する。)が注目されている。EVやHVは、搭載された二次電池をエネルギー源としてモータを駆動して走行する。
【0003】
EVやHVに用いられる二次電池としては、エネルギー密度、出力特性、サイクル寿命特性などの基本特性に優れたニッケル水素電池やリチウム電池などが実用化されている。そして、このような二次電池を車両走行用モータのエネルギー源として用いる場合、二次電池の残存容量(State of Charge、以下「SOC」とも称する。)を正確に推定することは、二次電池での走行可能距離を算出したり、二次電池の過放電を防止するために重要である。
【0004】
図27は、SOCと二次電池の開放電圧(Open Circuit Voltage、以下「OCV」とも称する。)との関係を示した図である。
【0005】
図27を参照して、SOCとOCVとの間には一定の相関関係があるため、この関係を用いてOCVからSOCを算出することができる。すなわち、電圧センサによって電池電圧を検出し、その検出された電池電圧から算出されるOCVに基づいてSOCを算出することができる。
【0006】
ここで、上記のOCVは、二次電池の充放電電流が0A(アンペア)のときの電圧であり、電池内部に生じる分極の影響を除いた開放端子間電圧である。すなわち、OCVは、電池内部に生じる分極の影響によって、電圧センサにより検出される電池電圧の値と必ずしも一致しない。電圧センサによって検出される電池電圧VとOCVとの関係は、一般に、下記(1)式で表わされる。
【0007】
電池電圧V=OCV+VR+VDYN …(1)
ここで、VRは電池の内部抵抗による電圧降下分を表わし、VDYNは分極電圧を表わす。
【0008】
電圧VRは、充放電電流に依存し、端子を開放した状態では0である。一方、分極電圧VDYNは、そのときの充放電状態、電流量、温度などに依存する。また、開放端状態で二次電池が放置されると、分極電圧VDYNは、時間の経過とともにその値が減少し、十分な時間の経過後には0となる。分極電圧VDYNが0のときの開放端状態での電池電圧Vは、OCVと一致する。
【0009】
上述のように、SOCを求めるには、OCVを求める必要があり、OCVを求めるには、特に、分極電圧VDYNを正確に推定する必要がある。そして、図27に示したように、二次電池の使用電圧付近(12セルの組電池として15V付近)では、OCVの変化に対するSOCの変化量が大きい。したがって、分極電圧VDYNを正確に推定することは、SOCの推定精度の向上に大きく寄与する。
【0010】
図28は、分極電圧の推移を説明するための図である。図28を参照して、縦軸および横軸は、それぞれ分極電圧および時間を表わし、温度は一定とする。時刻T1〜T2およびT3〜T4の期間は、EVまたはHVの走行中であり、二次電池の充放電が行なわれている期間である。時刻T2〜T3およびT4以降の期間は、EVまたはHVを使用していない期間であり、二次電池は、負荷と切離されて開放端状態にある(以下、このような期間を「不使用期間」とも称する。)。
【0011】
二次電池の充電が継続すると、分極電圧は正の方向に増大する(以下、分極電圧が正のときを「充電分極」とも称する。)。一方、二次電池の放電が継続すると、分極電圧は負の方向に増大する(以下、分極電圧が負のときを「放電分極」とも称する。)。そして、不使用期間になると、そのときに発生している分極電圧は、直ちに解消せず、徐々に減少しながら0へと向かう。
【0012】
上述のように、分極電圧は、充放電電流や温度に依存し、また、充放電の履歴にも依存するところ、車両走行中であれば、予め導出しておいた分極電圧モデルを用いて制御装置により算出することができる。しかしながら、不使用期間中は、車両の電源がOFFされるため、その間の分極電圧の変化を制御装置によって演算することができない。
【0013】
この問題に対して、特開2001−272444号公報に開示されたSOC推定装置は、不使用期間を計時するタイマーを備え、計時された不使用期間が所定の設定期間内の場合には、OCVまたはSOCに対して不使用期間の長さに応じた補正を行ない、計時された不使用期間が所定の設定期間よりも長いときは、分極は消滅したものと判断している。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−272444号公報
【0015】
【特許文献2】
特開平8−160113号公報
【0016】
【特許文献3】
特開平10−164764号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特開2001−272444号公報に記載された装置は、不使用期間の長さに応じて分極電圧を補正するため、不使用期間後のSOCを精度よく算出することができるが、不使用期間を計時するためのタイマーを備える必要がある。しかしながら、このように別途タイマーを備えることは、制御装置のコストの増加を招く。
【0018】
一方、タイマーを備えず、不使用期間開始前の分極電圧を記憶しておき、不使用期間終了後にその記憶していた分極電圧を用いるとすると、不使用期間が短い場合には、分極電圧の変化も小さいからSOCの推定精度は大きくは劣化しないが、不使用期間が長い場合には、分極電圧が解消するので、記憶していた分極電圧の値が大きかった場合には、SOCの推定値に大きな誤差が生じる。
【0019】
また、タイマーを備えず、不使用期間終了後の分極電圧を常に0にすると、不使用期間が長い場合は、分極電圧も実際に解消しているので問題ないが、不使用期間が短い場合には、分極電圧が残存するため、不使用期間前の分極電圧が大きかった場合には、SOCの推定精度が大きく劣化する。
【0020】
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、分極電圧の推移を考慮してSOCを推定し、かつ、低コストの二次電池の残存容量推定装置を提供することである。
【0021】
また、この発明の別の目的は、分極の影響を考慮して高精度にSOCを推定する二次電池の残存容量推定方法を提供することである。
【0022】
さらに、この発明の別の目的は、分極の影響を考慮して高精度にSOCを推定する二次電池の残存容量推定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
この発明によれば、二次電池の残存容量推定装置は、二次電池の不使用期間に生じた二次電池の電圧変化量および二次電池の動作時における二次電池の第1の分極電圧に基づいて不使用期間終了後の二次電池の動作開始時における二次電池の第2の分極電圧を算出し、第2の分極電圧を用いて動作開始時における二次電池の残存容量を算出する演算部を備える。
【0024】
好ましくは、第1の分極電圧は、二次電池の動作終了時における分極電圧である。
【0025】
好ましくは、二次電池の残存容量推定装置は、二次電池の端子間に発生する電池電圧を検出する電圧検出部と、二次電池の動作終了時に電圧検出部によって検出される第1の電池電圧と第1の分極電圧とを記憶する記憶部とをさらに備え、演算部は、記憶部に記憶された第1の電池電圧と動作開始時に電圧検出部によって検出される第2の電池電圧との電圧差、および記憶部に記憶された第1の分極電圧に基づいて第2の分極電圧を算出する。
【0026】
好ましくは、演算部は、電圧差の絶対値が所定値よりも小さいとき、第2の分極電圧の値を第1の分極電圧の値とする。
【0027】
好ましくは、演算部は、電圧差の絶対値が所定値以上のとき、第2の分極電圧の値を0とする。
【0028】
好ましくは、演算部は、第1または第2の条件が成立するとき、第2の分極電圧の値を第1の分極電圧と電圧差との差分値とし、第1の条件は、第1の分極電圧が正値であって、電圧差が0以上、かつ、所定値以下のときであり、第2の条件は、第1の分極電圧が0以下であって、電圧差が0以下、かつ、所定値以上のときである。
【0029】
好ましくは、演算部は、第1または第2の条件が成立するとき、第2の分極電圧を0とし、第1の条件は、第1の分極電圧が正値であって、電圧差が0以上、かつ、所定値よりも大きいときであり、第2の条件は、第1の分極電圧が0以下であり、かつ、電圧差が正値のときである。
【0030】
好ましくは、演算部は、二次電池の異常の有無を判定する判定部を含み、判定部は、第1または第2の条件が成立するとき、二次電池を異常と判定し、第1の条件は、第1の分極電圧が正値であり、かつ、電圧差が負値のときであり、第2の条件は、第1の分極電圧が0以下であって、電圧差が0以下、かつ、所定値よりも小さいときである。
【0031】
好ましくは、二次電池の残存容量推定装置は、二次電池の端子間に発生する電池電圧を検出する電圧検出部と、二次電池の動作終了時における二次電池の開放電圧と第1の分極電圧とを記憶する記憶部とをさらに備え、演算部は、動作開始時に電圧検出部によって検出される第2の電池電圧と記憶部に記憶された開放電圧との電圧差、および記憶部に記憶された第1の分極電圧に基づいて第2の分極電圧を算出する。
【0032】
好ましくは、演算部は、第1または第2の条件が成立するとき、第2の分極電圧の値を電圧差の値とし、第1の条件は、第1の分極電圧が正値であって、電圧差が0以上、かつ、所定値以下のときであり、第2の条件は、第1の分極電圧が0以下であって、電圧差が0以下、かつ、所定値以上のときである。
【0033】
好ましくは、演算部は、第1または第2の条件が成立するとき、第2の分極電圧を0とし、第1の条件は、第1の分極電圧が正値であり、かつ、電圧差が負値のときであり、第2の条件は、第1の分極電圧が0以下であって、電圧差が0以下、かつ、所定値よりも小さいときである。
【0034】
好ましくは、演算部は、二次電池の異常の有無を判定する判定部を含み、判定部は、第1または第2の条件が成立するとき、二次電池を異常と判定し、第1の条件は、第1の分極電圧が正値であって、電圧差が0以上、かつ、所定値よりも大きいときであり、第2の条件は、第1の分極電圧が0以下であり、かつ、電圧差が正値のときである。
【0035】
好ましくは、所定値は、第1の分極電圧の値である。
好ましくは、二次電池は、電気自動車またはハイブリッド自動車に搭載され、不使用期間は、電気自動車またはハイブリッド自動車の不使用期間である。
【0036】
また、この発明によれば、二次電池の残存容量推定方法は、二次電池の動作終了時に二次電池の端子間に発生する第1の電池電圧を検出する第1のステップと、二次電池の不使用期間終了後の動作開始時に端子間に発生する第2の電池電圧を検出する第2のステップと、第1および第2の電池電圧の電圧差を算出する第3のステップと、電圧差および動作終了時おける二次電池の第1の分極電圧に基づいて動作開始時における二次電池の第2の分極電圧を算出する第4のステップと、第2の分極電圧を用いて動作開始時における二次電池の残存容量を算出する第5のステップとを備える。
【0037】
好ましくは、第4のステップは、第1の分極電圧が正値であって、電圧差が0以上、かつ、所定値以下のとき、第2の分極電圧の値を第1の分極電圧と電圧差との差分値とする第1のサブステップと、第1の分極電圧が0以下であって、電圧差が0以下、かつ、所定値以上のとき、第2の分極電圧の値を差分値とする第2のサブステップとを含む。
【0038】
好ましくは、第4のステップは、第1の分極電圧が正値であって、電圧差が0以上、かつ、所定値よりも大きいとき、第2の分極電圧を0とする第1のサブステップと、第1の分極電圧が0以下であり、かつ、電圧差が正値のとき、第2の分極電圧を0とする第2のサブステップとを含む。
【0039】
好ましくは、二次電池の残存容量推定方法は、第1の分極電圧が正値であり、かつ、電圧差が負値のとき、二次電池を異常と判定する第6のステップと、第1の分極電圧が0以下であって、電圧差が0以下、かつ、所定値よりも小さいとき、二次電池を異常と判定する第7のステップとをさらに備える。
【0040】
また、この発明によれば、二次電池の残存容量推定方法は、二次電池の不使用期間終了後の動作開始時に二次電池の端子間に発生する電池電圧を検出する第1のステップと、電池電圧と二次電池の動作終了時における二次電池の開放電圧との電圧差を算出する第2のステップと、電圧差および動作終了時における二次電池の第1の分極電圧に基づいて動作開始時における二次電池の第2の分極電圧を算出する第3のステップと、第2の分極電圧を用いて動作開始時における二次電池の残存容量を算出する第4のステップとを備える。
【0041】
好ましくは、第3のステップは、第1の分極電圧が正値であって、電圧差が0以上、かつ、所定値以下のとき、第2の分極電圧の値を電圧差の値とする第1のサブステップと、第1の分極電圧が0以下であって、電圧差が0以下、かつ、所定値以上のとき、第2の分極電圧の値を電圧差の値とする第2のサブステップとを含む。
【0042】
好ましくは、第3のステップは、第1の分極電圧が正値であり、かつ、電圧差が負値のとき、第2の分極電圧を0とする第1のサブステップと、第1の分極電圧が0以下であって、電圧差が0以下、かつ、所定値よりも小さいとき、第2の分極電圧を0とする第2のサブステップとを含む。
【0043】
好ましくは、二次電池の残存容量推定方法は、第1の分極電圧が正値であって、電圧差が0以上、かつ、所定値よりも大きいとき、二次電池を異常と判定する第5のステップと、第1の分極電圧が0以下であり、かつ、電圧差が正値のとき、二次電池を異常と判定する第6のステップとをさらに備える。
【0044】
好ましくは、所定値は、第1の分極電圧の値である。
また、この発明によれば、記録媒体は、上記のいずれかの二次電池の残存容量推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録する。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0046】
[実施の形態1]
図1は、この発明による残存容量推定装置を実現する電池ECU(Electronic Control Unit)を含む車両パワーユニットの構成を概略的に示す全体ブロック図である。
【0047】
図1を参照して、パワーユニット10は、二次電池12と、電池ECU14と、電圧センサ16と、電流センサ18と、温度センサ20と、イグニッションスイッチ22とを備える。電池ECU14は、CPU(Central Processing Unit)32と、RAM(Random Access Memory)34と、ROM(Read Only Memory)36と、入出力インターフェース38と、バス40とを含む。
【0048】
二次電池12は、ニッケル水素電池であって、図示されないリレーを介して電源端子が車両パワーケーブルと接続され、車両の駆動モータや補機電装品等に電力を供給する。
【0049】
電圧センサ16は、二次電池12の電池電圧を検出して電池ECU14の入出力インターフェース38へ出力する。電流センサ18は、二次電池12の充放電電流を検出して入出力インターフェース38へ出力する。温度センサ20は、二次電池の温度を検出して入出力インターフェース38へ出力する。イグニッションスイッチ22は、このパワーユニット10が搭載される車両の電源スイッチであり、入出力インターフェース38と接続される。
【0050】
CPU32は、電圧センサ16、電流センサ18および温度センサ20から入出力インターフェース38およびバス40を介してそれぞれ二次電池の電池電圧、充放電電流および温度を受け、上記の(1)式に基づいてOCVを算出する。ここで、(1)式における電圧VRおよび分極電圧VDYNは、予めモデル化され、そのモデル式がROM36に記憶される。電圧VRは、電流に依存する関数である。分極電圧VDYNは、電流および温度に依存する関数であって、電流実績および温度実績を用いて前回演算値から算出される。ここで、上述したように、分極電圧は、二次電池の不使用期間中に変化するので、不使用期間終了後(車両の動作開始時)、不使用期間前の前回演算値に基づいて分極電圧の初期値が算出される。そして、CPU32は、OCVを算出すると、ROM36に予め記憶されたOCV−SOCマップを用いて、算出したOCVからSOCを算出する。
【0051】
また、CPU32は、電流センサ18から入出力インターフェース38およびバス40を介して受ける電流値を積算することによってもSOCを算出する。電流の積算によって算出されるSOCと上記(1)式に基づいて算出されるSOCとの位置付けについては、上記(1)式に基づいてパワーユニット10の起動後のSOC初期値が算出され、その初期値に電流を積算することによって、電流の充放電に伴なうSOCの変化が算出される。また、上記(1)式に基づいて算出されるSOCは、所定のチェックポイント(SOCが所定量に達したとき)におけるSOCの基準値としても用いられる。
【0052】
RAM34は、CPU32が演算を行なう際に用いるワークメモリである。ROM36は、不揮発性メモリであって、たとえば、フラッシュメモリなどである。ROM36は、OCVの演算に必要な各モデル式、OCV−SOCマップ、および後述する電圧差の判定値ΔVCなどを記憶する。入出力インターフェース38は、電池ECU14と外部とのインターフェースを行なう。バス40は、CPU32、RAM34、ROM36および入出力インターフェース38を接続し、各装置間におけるデータ伝送を行なう。
【0053】
なお、上記において、電圧センサ16は「電圧検出部」を構成し、CPU32は「演算部」を構成し、ROM36は「記憶部」を構成する。
【0054】
図2,図3は、この実施の形態1における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。図2は、不使用期間が短期間の場合を示した図であり、図3は、不使用期間が長期間の場合を示した図である。
【0055】
図2を参照して、時刻T1〜T2の期間は、二次電池12の不使用期間であり、二次電池12は、開放端状態である。時刻T1前において、電池電圧および分極電圧は、それぞれV1,VDYNであるとする。不使用期間T1〜T2が短期間であり、時刻T2における電池電圧V2と不使用期間前の電池電圧V1との電圧差ΔVは小さい。
【0056】
そこで、電圧差ΔVの絶対値が所定の判定値ΔVCよりも小さいとき、分極電圧は、解消していないものと考え、不使用期間後の時刻T2における分極電圧は、不使用期間前の分極電圧VDYNとする。したがって、不使用期間後のOCVは、V2−VDYNとなり、OCV−SOVマップを用いてこのOCVからSOCが算出される。
【0057】
図3を参照して、この場合は、不使用期間T1〜T2が長期間であり、時刻T2における電池電圧V2と不使用期間前の電池電圧V1との電圧差ΔVが大きい。そこで、電圧差ΔVの絶対値が所定の判定値ΔVC以上のとき、分極電圧は、解消したものと考え、不使用期間後の時刻T2における分極電圧は0とする。したがって、不使用期間後のOCVはV2となり、OCV−SOVマップを用いてこのOCVからSOCが算出される。
【0058】
図4,図5は、実施の形態1における電池ECUによる残存容量推定処理のフローチャートである。
【0059】
図4を参照して、CPU32は、イグニッションスイッチ22から入出力インターフェース38を介してスイッチOFFの信号を受けると(ステップS10)、二次電池12と車両パワーケーブルを接続するリレーをOFFする(ステップS20)。続いて、CPU32は、電圧センサ16によって検出される電池電圧V1および分極電圧VDYNをバス40を介してROM36へ出力し(ステップS30)、ROM36は、それらの値を記憶する。そして、電池電圧V1および分極電圧VDYNがROM36に書込まれた後、パワーユニット10の電源がOFFされる。
【0060】
図5を参照して、イグニッションスイッチ22がONされると(ステップS110)、CPU32は、ROM36に記憶された電池電圧V1および分極電圧VDYNをROM36からRAM34に読込む(ステップS120)。また、CPU32は、電圧センサ16によって検出される電池電圧V2を入出力インターフェース38を介して取得してRAM34へ書込み(ステップS130)、電池電圧V1,V2の電圧差ΔVを算出する(ステップS140)。
【0061】
そして、CPU32は、ROM36に記憶された判定値ΔVCをROM36からRAM34に読込み、電圧差ΔVの絶対値を判定値ΔVCと比較する(ステップS150)。CPU32は、電圧差ΔVの絶対値が判定値ΔVCよりも小さいと判断すると、分極電圧初期値VDYN_INIを不使用期間前の分極電圧VDYNとする(ステップS160)。一方、CPU32は、ステップS150において電圧差ΔVの絶対値が判定値ΔVC以上であると判断すると、分極電圧初期値VDYN_INIを0とする(ステップS170)。
【0062】
CPU32は、分極電圧初期値VDYN_INIを算出すると、その算出した分極電圧初期値VDYN_INIおよび電池電圧V2を用いてOCVを算出する(ステップS180)。具体的には、OCVは、上記(1)式に基づいてOCV=V2−VDYN_INIによって算出される。そして、CPU32は、ROM36からRAM34へOCV−SOCマップを読込み、算出したOCVからSOCを算出する(ステップS190)。
【0063】
なお、上記の判定値ΔVCは、予め定められる固定値であってもよいし、不使用期間前の分極電圧VDYNに応じた値であってもよい。
【0064】
また、上記においては、不使用期間前の電圧検出は、リレーOFF後としたが、リレーOFF前であってもよい。その場合は、検出電圧から電圧VRを引いた値を上記の電池電圧V1とすればよい。
【0065】
以上のように、実施の形態1によれば、不使用期間前後の二次電池の電圧差に基づいて不使用期間後の分極電圧の有無を推定するようにしたので、不使用期間を計時するタイマーを備える必要がなく、低コストでSOCを推定することができる。
【0066】
[実施の形態2]
実施の形態1では、不使用期間前後における電池電圧の電圧差に基づいて、分極電圧を不使用期間直前の値とするか0とするかのいずれかとした。実施の形態2では、上記電圧差を用いて不使用期間後の分極電圧を演算により算出する。これによって、OCVの推定精度が向上し、その結果、SOCの推定精度が向上する。
【0067】
実施の形態2によるパワーユニットの構成は、実施の形態1によるパワーユニット10の構成と同じである。
【0068】
図6〜図9は、実施の形態2における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。図6〜図9においては、いずれも不使用期間前の分極電圧VDYNが正の値、すなわち充電分極の場合について示される。また、いずれの図においても、時刻T1〜T2の期間が不使用期間に該当する。
【0069】
図6を参照して、不使用期間前の電池電圧V1と不使用期間後の電池電圧V2との電圧差ΔVは、分極電圧の減少によって生じたものと考え、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは、不使用期間前の分極電圧VDYNから電圧差ΔVを引いた値とする。したがって、不使用期間後のOCVは、V2−VDYN_INIとなり、OCV−SOVマップを用いてこのOCVからSOCが算出される。
【0070】
しかしながら、図7を参照して、電圧差ΔVが不使用期間前の分極電圧VDYNよりも大きいときは、分極電圧は解消したうえでさらに二次電池の自己放電が生じたものと考え、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは0とする。したがって、不使用期間後のOCVは、V2となり、OCV−SOVマップを用いてこのOCVからSOCが算出される。
【0071】
一方、図8を参照して、電圧差ΔVが負の値であるときは、通常では考えられないケースであり、何らかの異常が発生していると考えられる。この場合は、種々の対応が考えられる。図8においては、不使用期間前の分極電圧が正しいものと仮定し、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは、VDYNとしている。一方、図9では、不使用期間前のOCVが正しいものと仮定し、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは、VDYN−ΔVとしている。また、特に図示しないが、分極電圧VDYN_INIを0にリセットしてもよい。
【0072】
図10〜図12も、実施の形態2における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。図10〜図12においては、いずれも不使用期間前の分極電圧VDYNが負の値、すなわち放電分極の場合について示される。また、いずれの図においても、時刻T1〜T2の期間が不使用期間に該当する。
【0073】
図10を参照して、不使用期間前の電池電圧V1と不使用期間後の電池電圧V2との電圧差ΔVは、分極電圧の減少によって生じたものと考え、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは、不使用期間前の分極電圧VDYNから電圧差ΔVを引いた値とする。したがって、不使用期間後のOCVは、V2−VDYN_INIとなり、OCV−SOVマップを用いてこのOCVからSOCが算出される。
【0074】
しかしながら、図11を参照して、電圧差ΔVが正の値であるときは、分極電圧は解消したうえでさらに二次電池の自己放電が生じたものと考え、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは0とする。したがって、不使用期間後のOCVは、V2となり、OCV−SOVマップを用いてこのOCVからSOCが算出される。
【0075】
一方、図12を参照して、電圧差ΔVが負の値であるが、電圧差ΔVが不使用期間前の分極電圧VDYNよりも小さいときは、通常では考えられないケースであり、何らかの異常が発生していると考えられる。この場合、分極電圧VDYN_INIは、0にリセットされる。
【0076】
図13〜図15は、実施の形態2における電池ECUによる残存容量推定方法のフローチャートである。イグニッションスイッチ22がOFFされるときの不使用期間直前の動作は、図4に示した実施の形態1の処理フローと同じである。
【0077】
図13を参照して、不使用期間終了後の処理フローは、図5に示した実施の形態1の処理フローにおいて、ステップS150〜S170に代えてステップS210を備える。CPU32は、ステップS140において電圧差ΔVを算出すると、分極電圧初期値算出処理を実行する(ステップS210)。そして、CPU32は、分極電圧初期値算出処理によって分極電圧初期値VDYN_INIを算出すると、ステップS180へ進み、OCVを算出する。
【0078】
図14は、図13に示した分極電圧初期値算出処理の第1のフローチャートである。
【0079】
図14を参照して、CPU32は、まず、ROM36からRAM34に読込んだ不使用期間前の分極電圧VDYNの符号を確認する(ステップS220)。分極電圧VDYNが0以下のとき、CPU32は、分極が放電分極であると判断して、後述する図15に示すステップS280へ進む。
【0080】
一方、分極電圧VDYNが正のとき、CPU32は、分極が充電分極であると判断してステップS230へ進み、図13に示したステップS140で算出した電圧差ΔVの符号を確認する(ステップS230)。電圧差ΔVが負のとき、CPU32は、異常なケースであると判断し、分極電圧初期値VDYN_INIを不使用期間前のVDYNとする(ステップS270)。
【0081】
一方、ステップS230において電圧差ΔVが0以上のとき、CPU32は、電圧差ΔVと分極電圧VDYNとの大きさを比較する(ステップS240)。電圧差ΔVが分極電圧VDYN以下のとき、CPU32は、不使用期間中に分極電圧が電圧差ΔVだけ減少したものと判断し、分極電圧初期値VDYN_INIをVDYN−ΔVとする(ステップS250)。
【0082】
ステップS240において電圧差ΔVが分極電圧VDYNよりも大きいとき、CPU32は、不使用期間中に分極電圧が解消し、さらに自己放電があったものと判断し、分極電圧初期値VDYN_INIを0とする(ステップS260)。
【0083】
図15は、図13に示した分極電圧初期値算出処理の第2のフローチャートである。
【0084】
図15を参照して、CPU32は、電圧差ΔVの符号を確認する(ステップS280)。電圧差ΔVが正のとき、CPU32は、不使用期間中に分極電圧は解消し、さらに自己放電があったものと判断し、分極電圧初期値VDYN_INIを0とする(ステップS320)。
【0085】
一方、ステップS280において電圧差ΔVが0以下のとき、CPU32は、電圧差ΔVと分極電圧VDYNとの大きさを比較する(ステップS290)。電圧差ΔVが分極電圧VDYN以上のとき、CPU32は、不使用期間中に分極電圧が電圧差ΔVだけ減少したものと判断し、分極電圧初期値VDYN_INIをVDYN−ΔVとする(ステップS300)。
ステップS290において電圧差ΔVが分極電圧VDYNよりも小さいとき、CPU32は、異常なケースであると判断し、分極電圧初期値VDYN_INIを0とする(ステップS310)。
【0086】
なお、上述したように、ステップS270において、異常時の分極電圧初期値VDYN_INIは、VDYN−ΔVあるいは0としてもよい。
【0087】
また、不使用期間前の電圧検出は、リレーOFF前であってもよく、リレーON時の検出電圧から電圧VRを引いた値を上記の電池電圧V1としてもよい。
【0088】
以上のように、実施の形態2によれば、不使用期間前後の二次電池の電圧差を用いて不使用期間後の分極電圧を演算により算出するようにしたので、不使用期間を計時するタイマーを備える必要がなく、低コストでSOCを推定することができる。さらに、OCVの推定精度が向上し、その結果、SOCの推定精度が向上する。
【0089】
[実施の形態3]
実施の形態2では、不使用期間前後における電池電圧の電圧差を用いて不使用期間後の分極電圧を演算し、それに基づいてOCVおよびSOCを算出した。実施の形態3では、不使用期間前の電圧にOCVが用いられる。
【0090】
この不使用期間前のOCVは、不使用期間前に電圧センサによって検出された電池電圧と分極電圧とに基づいて、上記の(1)式を用いて算出することができる。また、OCVは、OCV−SOCマップを用いて不使用期間前のSOCから逆算することもできる。前者の場合は、実質的には、実施の形態2の場合と同じである。一方、後者の場合は、電流の積算によって継続して算出してきたSOCからOCVを算出するため、不使用期間前後のSOCの連続性が保たれる。いずれのOCVを採用するかは、設計段階で決定してもよいし、製品段階で切替可能としてもよい。
【0091】
実施の形態3によるパワーユニットの構成は、実施の形態1によるパワーユニット10の構成と同じである。
【0092】
図16〜図19は、実施の形態3における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。図16〜図19においては、いずれも不使用期間前の分極電圧VDYNが正の値、すなわち充電分極の場合について示される。また、いずれの図においても、時刻T1〜T2の期間が不使用期間に該当する。
【0093】
図16を参照して、不使用期間後の電池電圧V2と不使用期間前の開放電圧OCV1との電圧差ΔVは、分極によるものと考え、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは、電圧差ΔVとする。したがって、不使用期間後の開放電圧OCV2は、V2−VDYN_INI=V2−ΔVとなり、OCV−SOVマップを用いてこのOCV2からSOCが算出される。
【0094】
しかしながら、図17を参照して、電圧差ΔVが負のときは、分極電圧は解消したうえでさらに二次電池の自己放電が生じたものと考え、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは0とする。したがって、不使用期間後の開放電圧OCV2は、V2となり、OCV−SOVマップを用いてこのOCV2からSOCが算出される。
【0095】
一方、図18を参照して、電圧差ΔVが不使用期間前の分極電圧VDYNよりも大きいときは、通常では考えられないケースであり、何らかの異常が発生していると考えられる。この場合は、種々の対応が考えられる。図18においては、不使用期間前の分極電圧が正しいものと仮定し、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは、VDYNとする。一方、図19では、不使用期間前のOCV1が正しいものと仮定し、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは、ΔVとしている。また、特に図示しないが、分極電圧VDYN_INIを0にリセットしてもよい。
【0096】
図20〜図22も、実施の形態3における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。図20〜図22においては、いずれも不使用期間前の分極電圧VDYNが負の値、すなわち放電分極の場合について示される。また、いずれの図においても、時刻T1〜T2の期間が不使用期間に該当する。
【0097】
図20を参照して、電池電圧V2と開放電圧OCV1との電圧差ΔVは、分極によるものと考え、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは、電圧差ΔVとする。したがって、不使用期間後の開放電圧OCV2は、V2−VDYN_INI=V2−ΔVとなり、OCV−SOVマップを用いてこのOCV2からSOCが算出される。
【0098】
しかしながら、図21を参照して、電圧差ΔVが不使用期間前の分極電圧VDYNよりも小さいときは、分極電圧は解消したうえでさらに二次電池の自己放電が生じたものと考え、不使用期間後の分極電圧VDYN_INIは0とする。したがって、不使用期間後の開放電圧OCV2は、V2となり、OCV−SOVマップを用いてこのOCV2からSOCが算出される。
【0099】
一方、図22を参照して、電圧差ΔVが正のときは、通常では考えられないケースであり、何らかの異常が発生していると考えられる。この場合、分極電圧VDYN_INIは0にリセットされる。
【0100】
図23〜図26は、実施の形態3における電池ECUによる残存容量推定方法のフローチャートである。
【0101】
図23を参照して、不使用期間前の処理フローは、図4に示した実施の形態1の処理フローにおいて、ステップS30に代えてステップS40を備える。CPU32は、ステップS20において二次電池12と車両パワーケーブルを接続するリレーをOFFすると、開放電圧OCV1および分極電圧VDYNをバス40を介してROM36へ出力し(ステップS40)、ROM36は、それらの値を記憶する。
【0102】
図24を参照して、イグニッションスイッチ22がONされると(ステップS410)、CPU32は、ROM36に記憶された開放電圧OCV1および分極電圧VDYNをROM36からRAM34に読込む(ステップS420)。また、CPU32は、電圧センサ16によって検出される電池電圧V2を入出力インターフェース38を介して取得してRAM34へ書込み(ステップS430)、電池電圧V2と開放電圧OCV1との電圧差ΔVを算出する(ステップS440)。
【0103】
CPU32は、電圧差ΔVを算出すると、分極電圧初期値算出処理を実行する(ステップS450)。そして、CPU32は、分極電圧初期値算出処理によって分極電圧初期値VDYN_INIを算出すると、その算出した分極電圧初期値VDYN_INIおよび電池電圧V2を用いてOCVを算出する(ステップS460)。そして、CPU32は、ROM36からRAM34へOCV−SOCマップを読込み、算出したOCVからSOCを算出する(ステップS470)。
【0104】
図25は、図24に示した分極電圧初期値算出処理の第1のフローチャートである。
【0105】
図25を参照して、CPU32は、ROM36からRAM34に読込んだ不使用期間前の分極電圧VDYNの符号を確認する(ステップS480)。分極電圧VDYNが0以下のとき、CPU32は、分極が放電分極であるとして、後述する図26に示すステップS540へ進む。
【0106】
一方、分極電圧VDYNが正のとき、CPU32は、分極が充電分極であるとしてステップS490へ進み、図24で示したステップS440で算出した電圧差ΔVの符号を確認する(ステップS490)。電圧差ΔVが負のとき、CPU32は、不使用期間中に分極電圧が解消し、さらに自己放電があったものと判断し、分極電圧初期値VDYN_INIを0とする(ステップS530)。
【0107】
一方、ステップS490において電圧差ΔVが0以上のとき、CPU32は、電圧差ΔVと分極電圧VDYNとの大きさを比較する(ステップS500)。電圧差ΔVが分極電圧VDYN以下のとき、CPU32は、電圧差ΔVを分極によるものと判断し、分極電圧初期値VDYN_INIをΔVとする(ステップS510)。
【0108】
ステップS500において電圧差ΔVが分極電圧VDYNよりも大きいとき、CPU32は、異常なケースであると判断し、分極電圧初期値VDYN_INIを不使用期間前のVDYNとする(ステップS520)。
【0109】
図26は、図24に示した分極電圧初期値算出処理の第2のフローチャートである。
【0110】
図26を参照して、CPU32は、電圧差ΔVの符号を確認する(ステップS540)。電圧差ΔVが正のとき、CPU32は、異常なケースであると判断し、分極電圧初期値VDYN_INIを0とする(ステップS580)。
【0111】
一方、ステップS540において電圧差ΔVが0以下のとき、CPU32は、電圧差ΔVと分極電圧VDYNとの大きさを比較する(ステップS550)。電圧差ΔVが分極電圧VDYN以上のとき、CPU32は、電圧差ΔVを分極によるものと判断し、分極電圧初期値VDYN_INIをΔVとする(ステップS560)。
【0112】
ステップS550において電圧差ΔVが分極電圧VDYNよりも小さいとき、CPU32は、不使用期間中に分極電圧は解消し、さらに自己放電があったものと判断し、分極電圧初期値VDYN_INIを0とする(ステップS570)。
【0113】
なお、上述したように、ステップS520において、分極電圧初期値VDYN_INIは、ΔVあるいは0としてもよい。
【0114】
また、不使用期間前の開放電圧OCV1の算出時点は、リレーON時であってもよい。
【0115】
以上のように、実施の形態3によっても、不使用期間前後の電圧差に基づいて不使用期間後の分極電圧を演算により算出するようにしたので、不使用期間を計時するタイマーを備える必要がなく、低コストでSOCを推定することができる。さらに、OCVの推定精度が向上し、したがって、SOCの推定精度が向上する。
【0116】
なお、上記においては、二次電池12は、ニッケル水素電池としたが、二次電池12は、ニッケル水素電池に限られることはなく、たとえば、リチウム電池などであってもよい。
【0117】
また、上記の実施の形態1〜3におけるフローチャートの各ステップは、ROM36に記録され、CPU32は、上記の各ステップを備えるプログラムをROM36から読出し、その読出したプログラムを実行して上記のフローチャートに従ってSOCを演算する。したがって、ROM36は、上記フローチャートにおけるCPU32の各ステップを備えるプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に相当する。
【0118】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0119】
【発明の効果】
この発明によれば、不使用期間前後の二次電池の電圧差に基づいて不使用期間後の分極電圧を算出するようにしたので、不使用期間を計時するタイマーを備える必要がなく、低コストでSOCを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による残存容量推定装置を実現する電池ECUを含む車両パワーユニットの構成を概略的に示す全体ブロック図である。
【図2】 不使用期間が短期間の場合の実施の形態1における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図3】 不使用期間が長期間の場合の実施の形態1における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図4】 実施の形態1における電池ECUによる残存容量推定方法の第1のフローチャートである。
【図5】 実施の形態1における電池ECUによる残存容量推定方法の第2のフローチャートである。
【図6】 充電分極が存在し、かつ、不使用期間が短期間の場合の実施の形態2における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図7】 充電分極が存在し、かつ、不使用期間が長期間の場合の実施の形態2における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図8】 充電分極が存在し、かつ、異常時の実施の形態2における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図9】 充電分極が存在し、かつ、異常時の実施の形態2における残存容量推定演算のその他の考え方を説明する図である。
【図10】 放電分極が存在し、かつ、不使用期間が短期間の場合の実施の形態2における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図11】 放電分極が存在し、かつ、不使用期間が長期間の場合の実施の形態2における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図12】 放電分極が存在し、かつ、異常時の実施の形態2における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図13】 実施の形態2における電池ECUによる残存容量推定方法の第1のフローチャートである。
【図14】 実施の形態2における電池ECUによる残存容量推定方法の第2のフローチャートである。
【図15】 実施の形態2における電池ECUによる残存容量推定方法の第3のフローチャートである。
【図16】 充電分極が存在し、かつ、不使用期間が短期間の場合の実施の形態3における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図17】 充電分極が存在し、かつ、不使用期間が長期間の場合の実施の形態3における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図18】 充電分極が存在し、かつ、異常時の実施の形態3における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図19】 充電分極が存在し、かつ、異常時の実施の形態3における残存容量推定演算のその他の考え方を説明する図である。
【図20】 放電分極が存在し、かつ、不使用期間が短期間の場合の実施の形態3における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図21】 放電分極が存在し、かつ、不使用期間が長期間の場合の実施の形態3における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図22】 放電分極が存在し、かつ、異常時の実施の形態3における残存容量推定演算の考え方を説明する図である。
【図23】 実施の形態3における電池ECUによる残存容量推定方法の第1のフローチャートである。
【図24】 実施の形態3における電池ECUによる残存容量推定方法の第2のフローチャートである。
【図25】 実施の形態3における電池ECUによる残存容量推定方法の第3のフローチャートである。
【図26】 実施の形態3における電池ECUによる残存容量推定方法の第4のフローチャートである。
【図27】 SOCとOCVとの関係を示した図である。
【図28】 分極電圧の推移を説明するための図である。
【符号の説明】
10 パワーユニット、12 二次電池、14 電池ECU、16 電圧センサ、18 電流センサ、20 温度センサ、22 イグニッションスイッチ、32 CPU、34 RAM、36 ROM、38 入出力インターフェース、40 バス。
Claims (23)
- 二次電池の端子間に発生する電池電圧を検出する電圧検出部と、
前記二次電池の動作終了時に前記電圧検出部によって検出される第1の電池電圧と前記二次電池の動作時における前記二次電池の第1の分極電圧とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1の電池電圧と前記二次電池の不使用期間終了後の動作開始時に前記電圧検出部によって検出される第2の電池電圧との電圧差、および前記記憶部に記憶された前記第1の分極電圧に基づいて前記動作開始時における前記二次電池の第2の分極電圧を算出し、前記第2の分極電圧を用いて前記動作開始時における前記二次電池の残存容量を算出する演算部とを備える二次電池の残存容量推定装置。 - 前記第1の分極電圧は、前記二次電池の動作終了時における分極電圧である、請求項1に記載の二次電池の残存容量推定装置。
- 前記演算部は、前記電圧差の絶対値が所定値よりも小さいとき、前記第2の分極電圧の値を前記第1の分極電圧の値とする、請求項1または請求項2に記載の二次電池の残存容量推定装置。
- 前記演算部は、前記電圧差の絶対値が所定値以上のとき、前記第2の分極電圧の値を0とする、請求項1または請求項2に記載の二次電池の残存容量推定装置。
- 前記演算部は、第1または第2の条件が成立するとき、前記第2の分極電圧の値を前記第1の分極電圧と前記電圧差との差分値とし、
前記第1の条件は、前記第1の分極電圧が正値であって、前記電圧差が0以上、かつ、所定値以下のときであり、
前記第2の条件は、前記第1の分極電圧が0以下であって、前記電圧差が0以下、かつ、所定値以上のときである、請求項1または請求項2に記載の二次電池の残存容量推定装置。 - 前記演算部は、第1または第2の条件が成立するとき、前記第2の分極電圧を0とし、
前記第1の条件は、前記第1の分極電圧が正値であって、前記電圧差が0以上、かつ、所定値よりも大きいときであり、
前記第2の条件は、前記第1の分極電圧が0以下であり、かつ、前記電圧差が正値のときである、請求項1または請求項2に記載の二次電池の残存容量推定装置。 - 前記演算部は、前記二次電池の異常の有無を判定する判定部を含み、
前記判定部は、第1または第2の条件が成立するとき、前記二次電池を異常と判定し、
前記第1の条件は、前記第1の分極電圧が正値であり、かつ、前記電圧差が負値のときであり、
前記第2の条件は、前記第1の分極電圧が0以下であって、前記電圧差が0以下、かつ、所定値よりも小さいときである、請求項1または請求項2に記載の二次電池の残存容量推定装置。 - 二次電池の端子間に発生する電池電圧を検出する電圧検出部と、
前記二次電池の動作終了時における前記二次電池の開放電圧と前記二次電池の動作時における前記二次電池の第1の分極電圧とを記憶する記憶部と、
前記二次電池の不使用期間終了後の動作開始時に前記電圧検出部によって検出される第2の電池電圧と前記記憶部に記憶された前記開放電圧との電圧差、および前記記憶部に記憶された前記第1の分極電圧に基づいて前記動作開始時における前記二次電池の第2の分極電圧を算出し、前記第2の分極電圧を用いて前記動作開始時における前記二次電池の残存容量を算出する演算部とを備える二次電池の残存容量推定装置。 - 前記演算部は、第1または第2の条件が成立するとき、前記第2の分極電圧の値を前記電圧差の値とし、
前記第1の条件は、前記第1の分極電圧が正値であって、前記電圧差が0以上、かつ、所定値以下のときであり、
前記第2の条件は、前記第1の分極電圧が0以下であって、前記電圧差が0以下、かつ、所定値以上のときである、請求項8に記載の二次電池の残存容量推定装置。 - 前記演算部は、第1または第2の条件が成立するとき、前記第2の分極電圧を0とし、
前記第1の条件は、前記第1の分極電圧が正値であり、かつ、前記電圧差が負値のときであり、
前記第2の条件は、前記第1の分極電圧が0以下であって、前記電圧差が0以下、かつ、所定値よりも小さいときである、請求項8に記載の二次電池の残存容量推定装置。 - 前記演算部は、前記二次電池の異常の有無を判定する判定部を含み、
前記判定部は、第1または第2の条件が成立するとき、前記二次電池を異常と判定し、
前記第1の条件は、前記第1の分極電圧が正値であって、前記電圧差が0以上、かつ、所定値よりも大きいときであり、
前記第2の条件は、前記第1の分極電圧が0以下であり、かつ、前記電圧差が正値のときである、請求項8に記載の二次電池の残存容量推定装置。 - 前記所定値は、前記第1の分極電圧の値である、請求項5から請求項7および請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の二次電池の残存容量推定装置。
- 前記二次電池は、電気自動車またはハイブリッド自動車に搭載され、
前記不使用期間は、前記電気自動車または前記ハイブリッド自動車の不使用期間である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の二次電池の残存容量推定装置。 - 二次電池の動作終了時に前記二次電池の端子間に発生する第1の電池電圧を検出する第1のステップと、
前記二次電池の不使用期間終了後の動作開始時に前記端子間に発生する第2の電池電圧を検出する第2のステップと、
前記第1および第2の電池電圧の電圧差を算出する第3のステップと、
前記電圧差および前記動作終了時おける前記二次電池の第1の分極電圧に基づいて前記動作開始時における前記二次電池の第2の分極電圧を算出する第4のステップと、
前記第2の分極電圧を用いて前記動作開始時における前記二次電池の残存容量を算出する第5のステップとを備える、二次電池の残存容量推定方法。 - 前記第4のステップは、
前記第1の分極電圧が正値であって、前記電圧差が0以上、かつ、所定値以下のとき、前記第2の分極電圧の値を前記第1の分極電圧と前記電圧差との差分値とする第1のサブステップと、
前記第1の分極電圧が0以下であって、前記電圧差が0以下、かつ、所定値以上のとき、前記第2の分極電圧の値を前記差分値とする第2のサブステップとを含む、請求項14に記載の二次電池の残存容量推定方法。 - 前記第4のステップは、
前記第1の分極電圧が正値であって、前記電圧差が0以上、かつ、所定値よりも大きいとき、前記第2の分極電圧を0とする第1のサブステップと、
前記第1の分極電圧が0以下であり、かつ、前記電圧差が正値のとき、前記第2の分極電圧を0とする第2のサブステップとを含む、請求項14に記載の二次電池の残存容量推定方法。 - 前記第1の分極電圧が正値であり、かつ、前記電圧差が負値のとき、前記二次電池を異常と判定する第6のステップと、
前記第1の分極電圧が0以下であって、前記電圧差が0以下、かつ、所定値よりも小さいとき、前記二次電池を異常と判定する第7のステップとをさらに備える、請求項14に記載の二次電池の残存容量推定方法。 - 二次電池の不使用期間終了後の動作開始時に前記二次電池の端子間に発生する電池電圧を検出する第1のステップと、
前記電池電圧と前記二次電池の動作終了時における前記二次電池の開放電圧との電圧差を算出する第2のステップと、
前記電圧差および前記動作終了時における前記二次電池の第1の分極電圧に基づいて前記動作開始時における前記二次電池の第2の分極電圧を算出する第3のステップと、
前記第2の分極電圧を用いて前記動作開始時における前記二次電池の残存容量を算出する第4のステップとを備える、二次電池の残存容量推定方法。 - 前記第3のステップは、
前記第1の分極電圧が正値であって、前記電圧差が0以上、かつ、所定値以下のとき、前記第2の分極電圧の値を前記電圧差の値とする第1のサブステップと、
前記第1の分極電圧が0以下であって、前記電圧差が0以下、かつ、所定値以上のとき、前記第2の分極電圧の値を前記電圧差の値とする第2のサブステップとを含む、請求項18に記載の二次電池の残存容量推定方法。 - 前記第3のステップは、
前記第1の分極電圧が正値であり、かつ、前記電圧差が負値のとき、前記第2の分極電圧を0とする第1のサブステップと、
前記第1の分極電圧が0以下であって、前記電圧差が0以下、かつ、所定値よりも小さいとき、前記第2の分極電圧を0とする第2のサブステップとを含む、請求項18に記載の二次電池の残存容量推定方法。 - 前記第1の分極電圧が正値であって、前記電圧差が0以上、かつ、所定値よりも大きいとき、前記二次電池を異常と判定する第5のステップと、
前記第1の分極電圧が0以下であり、かつ、前記電圧差が正値のとき、前記二次電池を異常と判定する第6のステップとをさらに備える、請求項18に記載の二次電池の残存容量推定方法。 - 前記所定値は、前記第1の分極電圧の値である、請求項15から請求項17および請求項19から請求項21のいずれか1項に記載の二次電池の残存容量推定方法。
- 請求項14から請求項22のいずれか1項に記載の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
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