JP3955087B2 - 流動性の高いマルチトール粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、流動性の高いマルチトール粉末及びその製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチトール粉末は、マルトースを接触水素化し、粉末化することにより製造される糖アルコールであり、甘味質が砂糖に近く、甘味度も他の糖アルコールに比較して砂糖に近く、口内細菌により資化されにくいので虫歯の原因にならず、ヒトの消化酵素では消化されにくいなどの特徴があるため、糖尿病患者、肥満や虫歯を予防したいと考えている人々に広く利用されている。
【0005】
また、マルチトール結晶などに代表されるマルチトール粉末は、非吸湿性、熱などに対する安定性、インシュリン分泌を促さないことや各種ミネラルの吸収に好ましい影響を与えることなど、各種の有用な機能を有するので、前記の特殊な用途に止まらず、一般の食品や医薬品、化粧品の材料等としても広く利用されつつある。
【0006】
現在流通しているマルチトール粉末は、分蜜法、ブロック粉砕法、ニーダー法などに依って製造されているが、このような方法により製造したマルチトール粉末は流動性が低いという課題がある。
【0007】
マルチトール粉末の流動性が低いことにより、自動化された機械で扱うことが困難であるなどの不都合があり、また、卓上甘味料などの高い流動性が要求される用途には使いにくいという課題もあった。
【0008】
このような課題を改善しようとして、スプレー法やその類似技術によるマルチトール粉末の製造法も提案されている。
【0009】
提案されている技術としては、例えば、特開昭51−32745号公報に紹介されている方法や、特開昭57−134498号公報に紹介されている方法がある。この中、特開昭51−32745号公報に紹介されている方法は、無水まで濃縮した液状マルチトールを噴霧機により、保温雰囲気中に噴出造粒し、固化させることなく冷却撹拌する被覆物質微粉末上に落下混合をさせて、該マルチトール粒子表面に、被覆微粉末を吸着させて固化固定する方法である。
【0010】
また、特開昭57−134498号公報に紹介されている方法は、例えば、組成がソルビトール0.8%、マルチトール92.2%、マルトトリイトール4.6%、マルトテトライトール以上のデキストリンアルコール2.4%からなるマルチトール溶液を80%に濃縮した後、助晶缶にとり、無水結晶マルチトール含有含蜜結晶粉末2%を加えて、50℃からゆっくり撹拌しつつ徐冷し、晶出率35%のマスキットを得、高圧ポンプにて150kg/cm2の圧にて1.5mm口径ノズルより乾燥塔上より噴霧し、これと同時に、85℃の熱風を乾燥塔の上部より送風して底部に設けた移送用金網コンベア上に捕集し、コンベアの下より40℃の温風を送りつつ移動金網コンベア上に捕集した結晶粉末を乾燥塔外に徐々に移動させ、40分を要して取り出す。次に、この取り出した結晶粉末を熟成塔に充填して10時間熟成させ、結晶化と乾燥を完了させ、無水結晶マルチトール含有含蜜結晶粉末を収率92%で得るという方法である。
【0011】
しかし、前記の方法にも依然として解決しなければならない課題が多く残されていたのである。
【0012】
例えば、特開昭51−32745号公報の方法には、得られる粉末が最初は良好な流動性を示すが、粉末が結晶質ではなく、ガラス状で極めて吸湿性の高い粉末であるため、直に吸湿して徐々に流動性を失い、他の物理的な性質も次第に変化してしまうので実用に適さないという課題があった。
【0013】
また、特開昭57−134498号公報に紹介されている方法では、濃度80%に濃縮した後2%の種結晶を加えて温度50℃から徐冷して晶出率35%のマスキットを調製するので、マスキット中の結晶粒子が大きくなりがちで適切な粘度のマスキットが得られない場合があること、従って、安定的に噴霧乾燥操作を続けることが困難になること、また、良好な状態のマスキットが得にくいので得られる粉末の熟成に長時間を要する場合が多く、結晶化度の低い製品が生成しがちであること等の課題が残されていた。
【0014】
つまり、従来の流動性の高いマルチトール粉末の製造、中でも噴霧乾燥法による製造は、他の糖類や糖アルコール類に比べて困難であり、何れも適切な条件で行われておらず、従って、連続的な製造が出来なかったり、その方法によって得られた製品の性質に課題が残されていたりして、それらの方法により得られる製品が市場に出ることは無かったので、前述の課題を解決することが望まれていたのである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、前述の課題を解決するため、鋭意検討した結果、従来より流通しているマルチトール粉末の製造方法によると個々の粉末の粒子が鋭角端の多い不定形であることが流動性に関与していることに着目し、更に、マルチトール粉末の製造方法の中でも噴霧乾燥法による製造技術において、最も大切な技術が良好な状態のマスキットを調製する方法にあることを見出し、その調製方法を厳しく限定したのち水分が残った状態まで噴霧乾燥して熟成させることにより、物理的性質の安定した流動性の高いマルチトール粉末を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明の課題を解決するための手段は、下記の通りである。
【0018】
第一のマルチトール粉末に関する本発明は、温度25℃、湿度50%の雰囲気下で2日間保存したのちに、粒径が20〜50メッシュの粉末の安息角が25〜37°の性質を示す流動性の高いマルチトール粉末である。
【0019】
また、マルチトール粉末に関する他の本発明は、1)マルチトール純度85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液から、懸濁結晶量10〜50重量%のマルチトールマスキットを調製する第一工程、2)第一工程で得られたマルチトールマスキットを送風温30〜80℃に調節した噴霧乾燥機に導入して噴霧乾燥し、水分2〜7重量%のマルチトール粉末を得る第二工程、3)第二工程で得られた粉末を温度25〜65℃にて熟成したのち乾燥する第三工程、の3工程を逐次的に経由することにより製造された流動性の高いマルチトール粉末である。
【0020】
さらにまた、マルチトール粉末に関する他の本発明は、1)マルチトール純度85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液から、懸濁結晶量10〜50重量%のマルチトールマスキットを調製する第一工程、2)第一工程で得られたマルチトールマスキットを送風温30〜80℃に調節した噴霧乾燥機に導入して噴霧乾燥し、水分2〜7重量%のマルチトール粉末を得る第二工程、3)第二工程で得られた粉末を温度25〜65℃にて熟成したのち乾燥する第三工程、の3工程を逐次的に経由することにより製造され、温度25℃、湿度50%の雰囲気下で2日間保存したのちに、粒径が20〜50メッシュの粉末の安息角が25〜37°の性質を示す流動性の高いマルチトール粉末である。
【0021】
第二の本発明は、流動性の高いマルチトール粉末を製造する方法において、
1)マルチトール純度が85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液から、必要に応じて種結晶を加え、懸濁結晶量10〜50重量%のマルチトールマスキットを調製する第一工程、2)第一工程で得られたマルチトールマスキットを送風温30〜80℃に調節した噴霧乾燥機に導入して噴霧乾燥し、水分2〜7重量%のマルチトール粉末を得る第二工程、3)第二工程で得られた粉末を温度25〜65℃にて熟成したのち乾燥する第三工程、の3工程を逐次的に経由することを特徴とする流動性の高いマルチトール粉末の製造方法である。
【0022】
また、第三の本発明は、第一工程が、マルチトール純度85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液を温度0〜40℃の範囲まで冷却して過飽和状態にし、撹拌又は揺動等の刺激を与えて微結晶を生成させることによりマルチトールマスキットを調製する方法である、前記第二の発明に記載の流動性の高いマルチトール粉末の製造方法である。
【0023】
また、第四の本発明は、第一工程が、マルチトール純度85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液を温度0〜40℃の範囲まで冷却して過飽和状態にし、種結晶を添加して撹拌しながら微結晶を生成させることによりマルチトールマスキットを調製する方法である、前記第二の発明に記載の流動性の高いマルチトール粉末の製造方法である。
【0024】
また、第五の本発明は、第一工程および第二工程が連続的な工程である前記第二〜第四の発明の何れか1つに記載の流動性の高いマルチトール粉末の製造方法である。
【0025】
本発明に用いるマルチトール水溶液は、本発明の条件のもとで良好な状態のマルチトールマスキットを生成する品質が要求されるが、澱粉液化液を通常の糖化条件で調製した高純度マルトースを還元して得たマルチトール純度が85〜99.9%で固形分濃度が70〜90%、更に好ましくは73〜80%、最も好ましくは75〜78%の水溶液であれば、おおむね本発明に要求される品質を満足する。
【0026】
しかし、一般に、糖組成中のマルトトリイトールやマルトテトライトールが少ない場合にはマルチトールの結晶化が阻害されない傾向があるので、結晶化度が高く、性質の安定な製品を得るためには、マルチトール水溶液中の重合度が3や4の成分は少ないほうが好ましい。
【0027】
マルチトール水溶液中のマルチトール純度が85%未満の場合には噴霧乾燥後に得られる粉末製品の性質が不安定な場合が多く、マルチトール水溶液中のマルチトール純度が99.9%を超える場合には本発明に係る方法に記載される条件以外でも粉末を調製することが可能であり、噴霧乾燥後に良好な品質を得られることが多いが、そのマルチトール純度の高い水溶液を調製するコストが極めて高くなりがちなので経済的に不利な場合が多い。
【0028】
また、マルチトール水溶液の固形分濃度は、配管中を輸送することが可能なマルチトールマスキットを調製し、且つ本発明の条件範囲で噴霧乾燥した場合に生成する粉末が噴霧乾燥機底部において水分2〜7%にするうえで、70〜90%の範囲が好ましいが、この固形分濃度が70%未満の場合にはマスキット中の適切な懸濁結晶量を確保するために強く冷却する必要があって経済的に不利であるなどの不都合があり、また、90%を超える場合にはマスキットの配管中での輸送やマスキットの貯槽での扱い、その貯槽からの輸送が困難になることなどの不都合がある。
【0029】
本発明の中で言う懸濁結晶量とは、マスキットの総重量に対する懸濁している固体結晶の重量の割合を百分率で表わしたものを指す。
【0030】
本発明に係る第一工程でマルチトールマスキットを調製する際には、上記に説明した純度のマルチトール水溶液を固形分濃度70〜90%に調整した後、急速に冷却してマルチトールの微細な結晶を生成させるが、冷却する温度としては0〜45℃、更に好ましくは5〜40℃が挙げらる。
【0031】
この際に結晶の生成を促進させる意味でマルチトール水溶液を揺動したり、撹拌したりすることが有利であり、更に強く結晶の生成を促進させるために微細なマルチトール結晶粉末を添加することも有利に採用することができるが、生成したマスキット中の懸濁結晶量が多すぎたり、生成した結晶が大きすぎたりした場合には、マスキットの粘度が高くなって取り扱いが困難になることがあるので、その場合にはマルチトール水溶液や水を加えて懸濁結晶量を調節することも有利に採用することができる。
【0032】
本発明に係る第一工程におけるマルチトールマスキットの懸濁結晶量は、取り扱いが容易であることと、本発明の効果を得るうえで、つまり、安定な噴霧乾燥条件を得ることや、品質の安定した粉末製品を得ることなどの効果を得るためには、10〜50%が好ましいが、20〜45%が更に好ましく、35〜40%が最も好ましい。
【0033】
本発明に係る第一工程で得られたマルチトールマスキットは、本発明に係る第二工程において送風温30〜80℃の範囲に調節した噴霧乾燥機で水分2〜7%まで乾燥するが、噴霧乾燥機底部に落下した粉末中にこの範囲の水分を残すことが、意外なことに、その後の工程を経て品質の安定な製品を得るうえで極めて重要である。
【0034】
このとき、噴霧乾燥の際の送風温が30℃未満の場合には十分な乾燥が達成できず、80℃を超える場合には乾燥は速やかに進むが噴霧乾燥機の器壁に溶融状態のマルチトール層が形成されることが多いので好ましくない。
【0035】
通常、糖類を噴霧乾燥する場合には、噴霧乾燥機底部に落下した粉末中に殆ど水分を残さず、その後の熟成工程や乾燥も必要に応じて採用する程度の簡単な処理にするが、予想外なことに、マルチトールにそのような従来の方法を適用しても良好な製品が得られない。
【0036】
噴霧乾燥機底部で捕集される粉末の水分が2%未満である場合は、その後の工程中を経て得られる流動性の高いマルチトール粉末の結晶化度が低くなる傾向があり、貯蔵中に粒子の形が変形して流動性が低下したり、吸湿性が高くなることがことがあるので良好な品質の粉末が得られず、水分が7%を超える場合には、第三工程でベトつきが残るなどのために取り扱いが困難になるので好ましくない。
【0037】
更に、本発明に係る第三工程では、第二工程で得られた粉末を温度25〜65℃の範囲に調整して熟成したのち乾燥するが、熟成する時の温度が25℃未満の場合や65℃を超える場合には何れも結晶化が十分に進行せず、吸湿性などの製品の品質に悪影響を及ぼすことが多いので好ましくない。
【0038】
また、マルチトールが溶融しない程度の温度や湿度であれば乾燥の方法や条件に格別の制約は無いが、本発明の製品の優れた性質を確保するためには、ロータリーキルン式や回転釜のような方式の機器で水分を1%以下にすることが有利に採用できる。
【0039】
【実施例】
【0040】
以下に、実施例、比較例、試験例を掲げて更に具体的に本発明の内容を説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に制限されるものではない。
【0041】
また、以下の例において、%は特に断らない限り重量%を表わすものとする。
【0042】
(実施例1)
【0043】
<第一工程>
マルチトール純度が94.5%の水溶液を固形分濃度75%に濃縮してから温度100℃まで加熱した後、マスキット調製槽に入れて、撹拌しながら30分間で15℃迄冷却し、マルチトール水溶液の固形分に対して2%の微細なマルチトール結晶粉末を添加し、毎分10回転のゆっくりとした速度で5時間撹拌し、結晶量35%のマスキットを得た。
【0044】
<第二工程>
第一工程で得たマルチトールマスキットを、15℃に保温しながら、直径8mのアトマイザー式の噴霧乾燥機に導入し、導入する風温を70℃にして噴霧乾燥して粉末を得た。
【0045】
排風温度と噴霧乾燥機底部に落下した粉末の温度は40℃、水分は5%であった。
【0046】
<第三工程>
第二工程で得られた粉末をバンド冷却機に入れ、温度40℃にて5時間熟成させて、側面の温度を100℃に調節したロータリーキルンタイプの乾燥機に1時間滞留させて乾燥し、本発明に係る流動性の高いマルチトールを得た。
【0047】
得られた製品の水分は0.3%、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角は31°であった。
【0048】
(実施例2)
【0049】
<第一工程>
実施例1と同じマルチトール水溶液を固形分濃度86%に濃縮してマスキット調製槽に入れ、毎分10回転の速度で撹拌しながら温度120℃まで加熱した後、120分間で20℃まで冷却し、マルチトール水溶液の固形分に対して2%の微細なマルチトール結晶粉末を添加し、温度を20℃に保持しながら5時間撹拌を続けた後、濃度50%に調整した実施例1と同じマルチトール水溶液を加えて全体の濃度が76%になるように調節し、更に撹拌を5時間続けて結晶量37%のマスキットを得た。
【0050】
<第二工程>
第一工程で得たマルチトールマスキットを20℃に保温しながら噴霧乾燥機に導入し、他の条件は実施例1と同様に噴霧乾燥し、噴霧乾燥機底部に落下したときに水分4.9%の粉末を得た。
【0051】
<第三工程>
第二工程で得られた粉末を実施例1と同様にして熟成、乾燥し、水分0.3%、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角29°の、本発明に係る流動性の高いマルチトール粉末を得た。
【0052】
(実施例3)
【0053】
第一工程におけるマスキットの濃度調整を水を用いて行った他は実施例2と同様に第一、第二、第三工程を行い、第一工程後に懸濁結晶量39%のマルチトールマスキットを、第二工程で噴霧乾燥機底部に落下したときに水分4.7%の粉末を、第三工程で水分0.3%、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角28°の、本発明に係る流動性の高いマルチトール粉末をそれぞれ得た。
【0054】
(実施例4)
【0055】
<第一工程>
マルチトール純度が89.5%の水溶液を固形分濃度78%に濃縮してから温度100℃まで加熱した後、マスキット調製槽に入れて、撹拌しながら30分間で15℃迄冷却し、マルチトール水溶液の固形分に対して3%の微細なマルチトール結晶粉末を添加し、毎分10回転のゆっくりとした速度で30時間撹拌し、結晶量34%のマスキットを得た。
【0056】
<第二工程>
第一工程で得たマルチトールマスキットを、15℃に保温しながら、直径8mのアトマイザー式の噴霧乾燥機に導入し、導入する風温を70℃にして噴霧乾燥して粉末を得た。
【0057】
排風温度と噴霧乾燥機底部に落下した粉末の温度は40℃、水分は5.1%であった。
【0058】
<第三工程>
第二工程で得られた粉末をバンド冷却機に入れ、温度40℃にて10時間熟成させて、側面の温度を95℃に調節したロータリーキルンタイプの乾燥機に1時間滞留させて乾燥し、本発明に係る流動性の高いマルチトールを得た。
【0059】
得られた製品の水分は0.4%であり、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角は33°であった。
【0060】
(実施例5)
【0061】
<第一工程>
マルチトール純度が89.5%の水溶液を固形分濃度87%に濃縮してから温度100℃まで加熱した後、マスキット調製槽に入れて、撹拌しながら30分間で15℃迄冷却し、マルチトール水溶液の固形分に対して3%の微細なマルチトール結晶粉末を添加し、毎分10回転のゆっくりとした速度で10時間撹拌しながらマルチトールの微細結晶を析出させ、その後水を加えて全体の固形分濃度が76%になるように調節して更に10時間撹拌し、結晶量28%のマスキットを得た。
【0062】
<第二工程>
第一工程で得たマルチトールマスキットを、15℃に保温しながら、直径8mのアトマイザー式の噴霧乾燥機に導入し、導入する風温を70℃にして噴霧乾燥して粉末を得た。
【0063】
排風温度と噴霧乾燥機底部に落下した粉末の温度は40℃、水分は5.0%であった。
【0064】
<第三工程>
第二工程で得られた粉末をバンド冷却機に入れ、温度40℃にて10時間熟成させて、側面の温度を95℃に調節したロータリーキルンタイプの乾燥機に1時間滞留させて乾燥し、本発明に係る流動性の高いマルチトールを得た。
【0065】
得られた製品の水分は0.3%であり、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角は32°であった。
【0066】
(実施例6)
【0067】
第一工程におけるマスキットの濃度調整を水を用い、各工程への導入と排出の物量をバランスさせて、実施例5の条件を連続的に実施して、それぞれ第一、第二、第三工程を行い、第二工程で噴霧乾燥機底部に落下したときに水分4.8%の粉末を、第三工程で水分0.3%、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角30°の、本発明に係る流動性の高いマルチトール粉末をそれぞれ得た。
【0068】
【比較例】
【0069】
(比較例1)
【0070】
マルチトール純度が82%の水溶液を固形分濃度88%に濃縮してから温度100℃まで加熱した後、マスキット調製槽に入れて、撹拌しながら30分間で15℃迄冷却し、マルチトール水溶液の固形分に対して3%の微細なマルチトール結晶粉末を添加し、毎分10回転のゆっくりとした速度で10時間撹拌しながらマルチトールの微細結晶を析出させ、その後水を加えて全体の固形分濃度が76%になるように調節して更に10時間撹拌し、結晶量5%のマルチトールマスキットを得た。
【0071】
<第二工程>
第一工程で得たマルチトールマスキットを、15℃に保温しながら、直径8mのアトマイザー式の噴霧乾燥機に導入し、導入する風温を70℃にして噴霧乾燥操作を行ったが、乾燥機の器壁にマルチトールのガラス状粒子が付着してしまい、連続的な操作は不可能であったため、断続的に操作し、器壁に付着した粒子を掻き落とし、回収して粉末を得た。
【0072】
排風温度と回収した粉末の温度は40℃、水分は8.0%であった。
【0073】
<第三工程>
第二工程で得られた粉末をバンド冷却機に入れ、温度40℃にて10時間熟成させて、側面の温度を95℃に調節したロータリーキルンタイプの乾燥機に1時間滞留させて乾燥し、マルチトール粉末(比較品1)を得た。
【0074】
得られた粉末の水分は1.6%であり、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角は43°であった。
【0075】
(比較例2)
【0076】
<第一工程>
マルチトール純度が89.5%の水溶液を固形分濃度93%に濃縮してから温度120℃まで加熱した後、マスキット調製槽に入れて、撹拌しながら30分間で20℃迄冷却し、マルチトール水溶液の固形分に対して2%の微細なマルチトール結晶粉末を添加し、毎分10回転のゆっくりとした速度で15分間撹拌したところ、全体が固化してしまい、その後の第二工程、第三工程の操作が不可能になった。
【0077】
(比較例3)
【0078】
<第一工程>
マルチトール純度が94.5%の水溶液を固形分濃度65%に濃縮してから温度100℃まで加熱した後、マスキット調製槽に入れて、撹拌しながら30分間で10℃迄冷却し、マルチトール水溶液の固形分に対して2%の微細なマルチトール結晶粉末を添加し、毎分10回転のゆっくりとした速度で5時間撹拌しながらマルチトールの微細結晶を析出させた結果、結晶量7%のマルチトールマスキットを得た。
【0079】
<第二工程>
第一工程で得たマルチトールマスキットを、10℃に保温しながら、直径8mのアトマイザー式の噴霧乾燥機に導入し、導入する風温を75℃にして噴霧乾燥操作を行ったが、乾燥機の器壁にマルチトールのガラス状粒子が付着してしまい、連続的な操作は不可能であったため、断続的に操作し、器壁に付着した粒子を掻き落とし、回収してマルチトール粉末を得た。
【0080】
排風温度と回収した粉末の温度は40℃、水分は7.6%であった。
【0081】
<第三工程>
第二工程で得られた粉末をバンド冷却機に入れ、温度40℃にて10時間熟成させて、側面の温度を95℃に調節したロータリーキルンタイプの乾燥機に1時間滞留させて乾燥し、マルチトール粉末(比較品3)を得た。
【0082】
得られた粉末の水分は1.4%であり、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角は39°であった。
【0083】
(比較例4)
【0084】
実施例1の第一工程で得られたマルチトールマスキットを、風温を85℃、噴霧乾燥機の底部に落下した粉末の水分0.5%になるように調節して噴霧乾燥した後、実施例1と同様に熟成、乾燥して、水分0.1%、20〜50メッシュの範囲に分級した粉末の安息角が31°のマルチトール粉末を得た(比較品4)。
【0085】
【試験例】
【0086】
実施例1〜6で得られた製品と比較例1、3、4で得られた比較品の20〜50メッシュに分級した粉末を25℃、湿度50%の雰囲気に2日間保存した後安息角を測定した結果を、表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【発明の効果】
【0089】
以上に説明したように、本発明に係る流動性の高いマルチトール粉末は、粒径が20〜50メッシュの粉末の安息角で表わせば、25〜37°の範囲になる性質を有するが、このように高い流動性と低い吸湿性を有することにより、粉末の輸送や自動化が容易になり、従来用いることの困難であった卓上甘味料等の用途にも採用可能である。
【0090】
更に、本発明は各工程を厳密に管理する方法であって、繁雑な工程の追加などが無いので経済的に優れた方法を提供するものであり、本発明を実施することにより、微細なマルチトール結晶が懸濁した取り扱いの容易なマルチトールマスキットを調製することが可能になり、その結果、輸送や操作中にマスキットが固化することなく、効率が高く連続的な噴霧乾燥操作を安定的に実施することが可能になり、また、本発明に係る噴霧乾燥操作と熟成、乾燥操作によって得られる製品の品質についても、結晶化度が高いことから、低い吸湿性が得られ、その結果、保存後も流動性を失うことが無いという優れた性質を持っている。
Claims (6)
- 1)マルチトール純度85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液から、懸濁結晶量10〜50重量%のマルチトールマスキットを調製する第一工程、
2)第一工程で得られたマルチトールマスキットを送風温30〜80℃に調節した噴霧乾燥機に導入して噴霧乾燥し、水分2〜7重量%のマルチトール粉末を得る第二工程、
3)第二工程で得られた粉末を温度25〜65℃にて熟成したのち乾燥する第三工程、
の3工程を逐次的に経由することにより製造された、流動性の高い結晶性マルチトール粉末。 - 温度25℃、湿度50%の雰囲気下で2日間保存したのちに、粒径が20〜50メッシュの粉末の安息角が25〜37°の性質を示す、請求項1記載の流動性の高い結晶性マルチトール粉末。
- 流動性の高いマルチトール粉末を製造する方法において、
1)マルチトール純度が85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液から、懸濁結晶量10〜50重量%のマルチトールマスキットを調製する第一工程、
2)第一工程で得られたマルチトールマスキットを送風温30〜80℃に調節した噴霧乾燥機に導入して噴霧乾燥し、水分2〜7重量%のマルチトール粉末を得る第二工程、
3)第二工程で得られた粉末を温度25〜65℃にて熟成したのち乾燥する第三工程、
の3工程を逐次的に経由することを特徴とする流動性の高い結晶性マルチトール粉末の製造方法。 - 第一工程が、マルチトール純度85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液を温度0〜40℃の範囲まで冷却して過飽和状態にし、攪拌又は揺動等の刺激を与えて微結晶を生成させることによりマルチトールマスキットを調製する方法である、請求項3記載の流動性の高い結晶性マルチトール粉末の製造方法。
- 第一工程が、マルチトール純度85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液を温度0〜40℃の範囲まで冷却して過飽和状態にし、種結晶を添加して攪拌しながら微結晶を生成させることによりマルチトールマスキットを調製する方法である、請求項3記載の流動性の高い結晶性マルチトール粉末の製造方法。
- 第一工程および第二工程が連続的な工程である請求項3〜5の何れか一つに記載の流動性の高い結晶性マルチトール粉末の製造方法。
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