JP3953289B2 - イオン発生装置及びこれを備えた電気機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧交流の駆動電圧の印加に応じて略同量のプラスイオン及びマイナスイオンを発生させるイオン発生素子を用いてなるイオン発生装置、及びこれを備える電気機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、居住空間の高気密化に伴い、清潔で快適な居住空間を実現するための技術、特に、居住空間内の空気を清浄化する技術の開発が切望されている。このような空気の清浄化には、従来から、対象となる空間内の空気を吸い込み、適宜のフィルタを通して吐き出す循環気流を生ぜしめ、この循環気流中に存在する浮遊物を前記フィルタに逐次捕捉する構成とした空気清浄機が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、この種の空気清浄機においては、浮遊物の除去が、本体内に吸い込まれた空気に対して行われるのみであり、居住空間の全体に清浄化効果を及ばすことが難しく、例えば、室内に配置された家具の裏側、居室の角部等、空気の澱みが生じ易く、清浄化が必要な部位において十分な効果を期待し得ないという問題があり、また、本来の性能を維持するために、フィルタの清掃及び交換が不可欠であり、これらを含む煩雑なメンテナンス作業を強いられるという問題がある。
【0004】
更に、居住空間内の浮遊物には、塵埃、煙粒子等の微粒子と共に、カビ菌、大腸菌等の細菌類が含まれており、前述の如きフィルタを用いた空気清浄機は、前者(微粒子)については有効であり、所定の除去効果が得られるが、人体に有害な後者(細菌類)については、これらが前記フィルタへの捕捉下にて繁殖し、循環気流と共に居住空間内に戻されることから、十分な除去効果が得られないという問題がある。近年においては、抗菌材料製のフィルタを用い、細菌類の除去効果を高めるようにした空気清浄機も実用化されているが、満足すべき性能が得られていないのが実情である。
【0005】
このような問題点を解消すべく本願出願人は、空間内にイオンを放出することにより、該空間内の空気を清浄化するという、新しい発想に基づく清浄化の方法を提案している。この方法は、対象となる空間に気流を放出する通気路の中途にプラスイオン及びマイナスイオンを略同量発生するイオン発生装置を配し、前記気流と共に対象となる空間に放出する構成としたものである。
【0006】
前記プラスイオン及びマイナスイオンは、空気中の水蒸気をプラズマ放電によりイオン化することにより生成されるものであり、水素イオン(H+ )又は酸素イオン(O2 - )の周囲に複数の水分子が付随した形態、所謂、クラスターイオンの形態をなしている。空気中に放出されたこれらのイオンは、浮遊粒子に凝集して相互に化学反応し、活性物質としての過酸化水素H2 O2 又は水酸化ラジカル・OHとなり、浮遊粒子から水素を抜き取る酸化反応を行い、浮遊粒子を不活性化し、また浮遊細菌を殺菌する。
【0007】
以上の如き空気の清浄化は、対象となる空間内に放出され、該空間の全体に拡がるイオンの作用によりなされ、またこれらのイオンは、浮遊細菌に作用してこれらを殺菌し、更には、臭い分子及び有害分子に作用して無臭化及び無害化せしめるから、対象空間の全体に亘って満足すべき清浄化効果が得られる。また、空間内に放出されるクラスターイオンは、自然界に存在する人体に無害なイオンであり、また前記酸化反応によりH2 O(水)に変化するから、これらが環境汚染を引き起こす虞れもない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上の如く空気清浄化のために用いられるイオン発生装置は、浮遊細菌の殺菌作用、悪臭物質の脱臭作用、及び有害物質の無害化作用をなすことから、空気清浄機のみならず、空気調和機、冷蔵庫、掃除機等、気流を取り扱う電気機器全般に適用することが切望されている。
【0009】
このイオン発生装置は、誘電体を挾んで対向配置された放電電極と誘導電極とを有し、これらの電極間に高圧交流の駆動電圧を印加することによりプラズマ放電を行わせる構成としたイオン発生素子を備えている。このイオン発生素子は、円筒状をなす誘電体の軸心と周面とに前記両電極を配した円筒形、又は平板状をなす誘電体の両面に前記両電極を配した平板形として、コンパクトに構成することができるが、イオン発生装置として動作させる場合、商用電源からの入力電圧を昇圧し、所定の駆動波形を有する前記駆動電圧の発生のために、昇圧手段及び回路基板が必要であり、これらの配設位置を相互に絶縁を保って確保する必要があり、予め組み込みを想定して設計された電気機器以外への適用が難しく、適用範囲が限定されるという問題があった。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、高圧交流の駆動電圧の印加に応じて略同量のプラスイオン及びマイナスイオンを発生させるイオン発生素子を、前記駆動電圧発生のための昇圧手段及び回路基板を含めてユニット化することにより、コンパクトに構成することができ、広範な用途への適用を容易に行わせ得るイオン発生装置を提供し、またこのイオン発生装置を用いてなる電気機器を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るイオン発生装置は、交流の駆動電圧を印加することによりプラスイオン及びマイナスイオンを発生させるイオン発生素子と、該イオン発生素子に印加する駆動電圧を発生する昇圧手段及び回路基板とを備えるイオン発生装置であって、前記昇圧手段の収容室及び前記回路基板の支持部が設けてあり、一部に開口を有する箱体として構成された共通ケースと、該共通ケースの開口を閉塞すべく取り付けられた蓋板とを備え、前記イオン発生素子は、平板状の誘電体を介して対向する放電電極と誘導電極とを有し、前記蓋板に設けた装着部に前記放電電極を外向きとして装着してあり、前記装着部と相対する前記共通ケースの内部に前記昇圧手段の収容室を設け、該収容室と前記装着部との間に前記回路基板の支持部を設けてあることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、一部に開口を有する箱体として構成された共通ケースに、昇圧手段を収容し、回路基板を支持して、この共通ケースの開口を閉塞する蓋板に設けた装着部にイオン発生素子を取付けて、昇圧手段、回路基板及びイオン発生素子をユニット化し、外部電源及び制御回路との接続により使用可能であり、広範な用途において使い勝手の良好なイオン発生装置をコンパクトに構成する。
昇圧手段は、イオン発生素子の装着部と相対する共通ケースの底部に収容し、この昇圧手段とイオン発生素子との間に回路基板を支持する合理的な配置により、イオン発生装置のコンパクト化を図る。
イオン発生素子は、平板状の誘電体を介して対向する放電電極と誘導電極とを備えるコンパクトな構成とし、放電電極の形成側を外向きとして装着して、プラスイオン及びマイナスイオンを効率的に放出する。
【0017】
また、前記共通ケースの外側に、前記昇圧手段に電力を供給するための接続手段を一体に備えることを特徴とし、更に、前記イオン発生素子の装着部は、前記接続手段に対する接続の方向と略平行をなすように配設してあることを特徴とする。
【0018】
この構成においては、外部接続のための接続手段を共通ケースの外側に一体に設け、外部電源及び制御回路との接続を簡易に行わせて使い勝手の向上を図る。また、このような接続手段に対する接続の方向と略平行をなす面にイオン発生素子を装着し、前記接続に際しイオン発生素子の装着面が下となるように載置される虞れを少なくし、イオン発生素子の損傷を防止する。
【0019】
また、前記イオン発生素子の装着部を下として適宜の載置面に載置された状態において、前記イオン発生素子を前記載置面から離間して支持する手段を備えることを特徴とする。
【0020】
この構成においては、外部電源及び制御回路との接続を含む各種機器への組み付けの段階において、イオン発生装置がイオン発生素子の装着部を下向きとして適宜の載置面に載置されたとき、イオン発生素子を載置面から離間させた状態に支持し、前記載置面との接触によるイオン発生素子の損傷を未然に防止する。
【0021】
また、前記イオン発生素子は、前記蓋板を貫通する窓孔を通したリード線により前記回路基板に接続してあること、更に、前記窓孔の周縁に前記リード線を固定する止め部を備えることを夫々特徴とする。
【0022】
この構成においては、イオン発生素子と回路基板とを接続するリード線を蓋板に形成した窓孔に通し、確実な接続を行わせ、更に、前記リード線を止め部に固定することにより、該リード線の取り回しを容易化する。
【0023】
また、前記昇圧手段は、前記収容室内に充填された第1の充填材により絶縁モールドし、また前記回路基板と前記イオン発生素子との間は、両者間に充填された第2の充填材により絶縁モールドしてあることを特徴とし、更に、前記第1の充填材は、前記第2の充填材よりも絶縁耐力に優れ、前記第2の充填材は、前記第1の充填材よりも流動性に優れることを特徴とする。
【0024】
この構成においては、昇圧手段の周囲、及び回路基板とイオン発生素子との間を充填材により夫々絶縁モールドして、高い駆動電圧下での安定した動作を実現する。また、昇圧手段の周囲の充填材は絶縁耐力を重視して選定し、確実な絶縁を実現し、回路基板とイオン発生素子との間の充填材は流動性を重視して選定し、隙間のない確実な充填を可能とする。
【0025】
また、前記支持部に支持された前記回路基板の実装部品を受容すべく、前記昇圧手段の収容室に並設された受容室と、該受容室と前記収容室との間を前記第1及び第2の充填材の侵入不可に隔絶する隔壁を備えることを特徴とする。
【0026】
この構成においては、回路基板の実装部品を昇圧手段の収容室に並設された室に受容させ、回路基板とイオン発生素子との間の離隔距離を削減し、一層のコンパクト化を実現する。また、受容室内部に受容された回路基板の実装部品への充填材の作用を隔壁により阻止し、充填材の固化収縮により実装部品に応力が加わることを防止する。
【0027】
また、前記プラスイオンは、H+ (H2 O)m (mは自然数)であり、前記マイナスイオンは、O2 - (H2 O)n (nは自然数)であることを特徴とする。
【0028】
この構成においては、イオン発生素子が、複数のH2 O分子により囲まれたクラスターイオンを発生し、これらが送出される空間内の浮遊粒子を不活性化し、浮遊細菌を殺菌して、良好な清浄化を実現する。
【0029】
また本発明に係る電気機器は、空気流が通気する通気路を備える電気機器において、前記通気路の中途に、前記空気流に前記イオン発生素子の装着部が対面するように配設された前述した構成のイオン発生装置を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、空気調和機、空気清浄機、冷蔵庫、掃除機等、空気流の通気路を備える電気機器に、コンパクトに構成され、使い勝手の良好なイオン発生装置を、前記通気路に面して取付け、夫々の通気路内の空気、及び通気路を経て空気流が送出される空間を清浄化する。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係るイオン発生装置の第1の実施の形態を示す分解斜視図、図2は、図1に示すイオン発生装置のイオン発生素子の取付け側から見た外観斜視図、図3は、図1に示すイオン発生装置の図2と逆側から見た外観斜視図であり、図1に示す如く本発明に係るイオン発生装置Aは、平板形をなすイオン発生素子1、昇圧コイル(昇圧手段)2及び回路基板3と、これらを一括して保持する共通ケース4と、前記イオン発生素子1を保持して共通ケース4を閉塞する蓋板5とを備えてなる。
【0032】
図4は、イオン発生素子1の外観斜視図、図5は、イオン発生素子1の平面図であり、図6は、図5のVI−VI線による拡大断面図、図7は、図5の VII−VII 線による拡大断面図であり、まず、これらの図を用いてイオン発生素子1の構造について説明する。
【0033】
イオン発生素子1は、厚さ方向に積層された下板11及び上板12を相互に一体化させてなる誘電体基板10の一面に、図4及び図5に示すようにグリッド状をなす放電電極13を形成し、前記下板11及び上板12の間に、図5に示すように前記放電電極13と対向するように面状の誘導電極14を埋設し、更に、図6及び図7に示すように前記放電電極13の上部を、誘電体製の保護層15により被覆して構成さてている。
【0034】
誘電体基板10を構成する下板11及び上板12は、前記保護層15と共に、ポリイミド、エポキシ等の樹脂材料、又はアルミナ、結晶化ガラス、フォルステライト、ステアタイト等のセラミックス材料を用いることができるが、耐熱性及び強度面において優位なセラミックス材料、特に、アルミナを使用するのが望ましい。
【0035】
放電電極13及び誘導電極14は、電極形成のために通常用いられる金属材料により形成することができるが、前記誘電体基板10及び保護層15をセラミックス材料製とする場合、これらの焼成温度に耐えるために、タングステン、モリブデン等の高融点の金属材料製とするのが望ましい。
【0036】
以上の如きイオン発生素子1は、例えば、アルミナシートからなる下板11の表面にタングステン材料のパターン印刷により誘導電極14を形成し、次いで、この形成面全体を覆うようにアルミナシートからなる上板12を載置して圧着し、この上板12の表面に、同じくタングステン材料のパターン印刷により放電電極13を形成する。更に、放電電極13の形成域全体を覆うようにアルミナ製の保護層15をコーティングにより形成し、最後に、これらを1400〜1600℃なる非酸化性雰囲気下にて焼成して構成される。
【0037】
図6に示す如く放電電極13は、前記上板12及び下板11を貫通する電極接点16により、また誘導電極14は、前記下板11を貫通する電極接点17により、誘電体基板10の裏面に夫々連通させてあり、放電電極13と誘導電極14との間には、前記電極接点16,17を介して高圧交流の駆動電圧が印加されるようになしてある。なお、前記電極接点16,17は、夫々の電極13,14の形成過程において、対応する位置に形成されたスルーホール内に電極材料を充填せしめることにより一体に形成することができる。
【0038】
図4及び図5に示す如く、放電電極13がグリッド状の電極としてあるのは、前記駆動電圧の印加に伴って発生するイオン量を可及的に増大させるためである。また図5に示す如く誘導電極14は、放電電極13と中心を合わせて形成され、該放電電極13よりも長さ及び幅が夫々小さい帯状電極としてあり、この形状もまたイオン量の増大に寄与する。
【0039】
例えば、共に約0.45mmの厚さを有する下板11及び上板12を重ねて形成された約15mm×37mm×0.9 mmなるサイズの誘電体基板10の表面に、0.25mmの線幅を 0.8mmピッチにて縦横に並べ、約10.4mm×28mmなる大きさを有するグリッド状の放電電極13を形成する一方、下板11と上板12との間に、約6mm×24mmなる大きさを有する面状の誘導電極14を形成し、これらの間に、略 4.6kV(ピーク値)、 22kHzなる周波数を有する高圧交流の駆動電圧を印加したところ、両電極13,14間に発生するプラズマ放電の作用により、イオン発生素子1から25cm離れた位置において、夫々20万個/ccを超えるプラスイオン及びマイナスイオンが発生することが確かめられた。このイオン発生量は、一般的な大きさの居室用の空気清浄機として機能させるために十分な量である。
【0040】
なおイオン発生量は、イオン発生素子1のサイズを大とすることによって増加すると共に、駆動電圧を高くすることによっても増加する。但し、駆動電圧を高くした場合、オゾンの発生量が合わせて増大するため、駆動電圧を過度に高めることは望ましくない。
【0041】
また、放電電極13及び誘導電極14の形状、並びにこれらの間に介在する誘電体(上板12)の大きさ及び厚さは、以上の実施の形態に限らず、適宜に変更することができ、イオン発生素子1は、板状の誘電体を介して対向する放電電極及び誘導電極を備え、全体として平板形状をなすものであればよい。
【0042】
以上の如きイオン発生素子1を用いてなる本発明に係るイオン発生装置Aは、前述の如く、昇圧コイル2、回路基板3、共通ケース4、及び蓋板5を備えている。昇圧コイル2は、図1に示す如く、樹脂製ケースの一側に、一対の高圧端子20、20及び一対の入力端子22,22を突設した構成となっている。
【0043】
回路基板3は、その一面(図1における下面)にイオン発生素子1の駆動波形発生のための回路が形成され、コンデンサ、半導体等の回路部品30,30…(1つのみ図示)が実装された基板であり、長手方向の一側には、前記昇圧コイル2の高圧端子20,20及び入力端子22,22の接続のための4つの接続孔31,31…と、前記イオン発生素子1の接続のための接続部32とが、下面に形成された駆動波形の発生回路に対応させて設けてあり、また前記接続孔31,31…の形成位置の内側を表裏に貫通する窓孔33が形成されている。更に回路基板3の他側には、外部接続用の4本の接続ピン34が前記一面側に突設されている。
【0044】
共通ケース4は、一側の全面に前記回路基板3の差し込みが可能な矩形の開口を備え、他側に半円形断面の底部を備える箱体であり、該底部は、長手方向と略直交するように横架された所定高さの隔壁40により、コイル収容室41と回路部品受容室42とに分割されている。また共通ケース4の内面には、前記隔壁40の上縁と一致する高さ位置に、全周に亘って内向きに張り出して前記回路基板3の支持部となる支持縁43が設けてあり、更に共通ケース4の開口部周縁には、対向する長辺の相互に離隔した各2か所に、前記蓋板5係合用の凹所44,44…(片側のみ図示)が形成されている。
【0045】
蓋板5は、樹脂材料製の平板であり、その長手方向一側には、イオン発生素子1に対応する矩形形状の凹所50が設けてあり、該凹所50には、イオン発生素子1の前記放電電極接点16及び誘導電極接点17の形成位置に夫々対応するように、表裏に貫通する長円形の窓孔51,51が形成されている。また、蓋板5の長手方向他側には、表裏に貫通する矩形の窓孔52が形成されており、更に、蓋板5の幅方向両側縁には、前記共通ケース4の開口部周縁に形成された前記凹所44,44…の夫々に対応する位置に係止爪53,53…(片側のみ図示)が形成されている。
【0046】
以上の如く構成された蓋板5は、前記凹所50にイオン発生素子1を嵌め込み、これを一体に保持させることができる。イオン発生素子1の固定は、凹所50の底面への接着、凹所50の周囲に設けた図示しない係止爪によるイオン発生素子1周縁の係合等、適宜の手段により実現することができる。
【0047】
なお蓋板5には、前記凹所50の周縁部の4隅に、円形断面を有する短寸の脚突起55,55…が突設されている。これらの脚突起55,55…は、蓋板5がイオン発生素子1の保持面を下として載置されたとき、この載置面とイオン発生素子1との間に所定の隙間を確保し、該イオン発生素子1の損傷を防ぐ支持脚としての作用をなす。この作用は、イオン発生素子1の厚さよりも大なる深さを有して前記凹所50を形成し、該凹所50の周縁を支持脚として利用することによっても達成することができる。
【0048】
図8は、イオン発生素子1を保持させた蓋板5の裏面側からの斜視図である。前述した如く凹所50に形成された窓孔51,51は、イオン発生素子1の裏面における放電電極接点16及び誘導電極接点17の露出部に対応しており、イオン発生素子1は、これらの電極接点16,17に各別に溶着されたリード線 16a,17aにより回路基板3に接続される。窓孔51,51の周縁には、幅方向に各一対の鉤状突起54,54が突設されており、前記リード線 16a,17aは、これらの鉤状突起54に係止され、幅方向に距離を隔てて前記窓孔52の形成側に導かれており、後述の如く回路基板3との接続に供されている。
【0049】
このように窓孔51,51の周縁に設けた鉤状突起54,54…は、リード線 16a,17aの止め部としての作用をなすから、これらのリード線 16a,17a間に十分な絶縁距離を保つことができ、回路基板3との接続に際しての取り回しを容易に行わせることができる。
【0050】
本発明に係るイオン発生装置Aは、以上の如く構成された昇圧コイル2、回路基板3、及び共通ケース4と、イオン発生素子1が固着された蓋板5とを以下の如く組み付けて構成される。
【0051】
まず昇圧コイル2を、共通ケース4の底部に設けたコイル収容室41内に前記高圧端子20、グランド端子21及び入力端子22,22の突出側を上向きとして挿入し、コイル収容室41に充填材18を、真空引きにより気泡の混入を防ぎつつ充填して絶縁モールドする。充填材18としては、エポキシ樹脂等の絶縁耐力に優れた樹脂材料を用いるのが望ましい。また充填材18の一部は、昇圧コイル2の挿入に先立ってコイル収容室41に充填しておけば、昇圧コイル2の挿入時にこれの外側を良好にモールドすることができ、気泡の混入による絶縁不良の発生を有効に回避することが可能となる。また充填材18の充填は、コイル収容室41に対してのみ行い、隔壁40を介して隣接する回路部品受容室42内に漏れ出さないようにする。
【0052】
その後、充填材18の乾燥固化を待ち、共通ケース4の内部に上側開口部を経て回路基板3を挿入する。この挿入は、回路部品30,30…の実装面を下に向け、コイル収容室41に固着された昇圧コイル2の上方に、該昇圧コイル2との接続のための4つの接続孔31,31…を位置合わせし、回路基板3の下面が前記隔壁40及び支持縁43に突き当たるまで行われる。この挿入の後、前記接続孔31,31…から突出する前記高圧端子20、グランド端子21及び入力端子22,22の先端を、回路基板3の上面から該当位置に溶着する。
【0053】
この溶着により回路基板3は、前記支持縁43及び前記隔壁40の上縁により下側から支えられ、前記充填材18により固定された昇圧コイル2により、前記高圧端子20、グランド端子21及び入力端子22,22を支持脚として固定される。このとき回路基板3に実装された回路部品30,30…は、前記コイル収容室41に並設された回路部品受容室42に受容され、また同側の一縁に突設された4本の接続ピン34,34…は、該当位置に設けた開口を経て共通ケース4の外部に突出せしめられ、外部電源及び外部制御回路との接続用の接続端子45,46(図3参照)を構成する。なお、接続端子45,46における各2本の接続ピン34,34の並設間隔は、接続ミスの発生を回避すべく互いに異ならせてある。
【0054】
このように回路基板3の取付けを終えた後、前述の如くイオン発生素子1を保持させてなる蓋板5を取付ける。この取付けは、長手方向一側に開設された窓孔52を共通ケース4内に先に固定された回路基板3に開設された窓孔33の形成位置に合わせ、イオン発生素子1の保持面を上向きとして前記共通ケース4の上側開口部に蓋板5を位置合わせし、まず、前述の如く蓋板5の裏面に沿わせたイオン発生素子1のリード線 16a,17aを前記回路基板3の上面に設けた接続部32,32に各別に溶着した後、前記蓋板5を共通ケース4の上側開口部に嵌め込むことにより行われる。このとき、蓋板5の両側縁に設けた係止爪53,53…が撓み変形し、共通ケース4の開口部周縁に設けた対応する凹所44,44…に弾性復帰により係合せしめられ、該蓋板5は、前記基板3の上面から適長離隔した位置に、前記共通ケース4の開口部を覆うように取付けられる。
【0055】
この取付け後、前記蓋板5に開設された窓孔52を経て充填材19を導入し、該充填材19を前記基板3との間の空間に充填せしめ、該基板3とイオン発生素子1との間を絶縁モールドし、この充填材19の乾燥固化を待って本発明に係るイオン発生装置Aが、図2及び図3に示す如く構成される。
【0056】
前記充填材19としては、前記窓孔52からの充填を確実に行わせるべく、ウレタン樹脂等、流動性に優れた樹脂を用いるのが望ましい。なお充填材19の一部は、前記窓孔52の下位置に開口する基板3の窓孔33を経て前記昇圧コイル2が収容されたコイル収容室41の上部にも充填され、前記充填材18による絶縁を補助する作用をなす。またこのとき充填材19は、コイル収容室41に並設された回路部品受容室42にも侵入しようとするが、この侵入は、両室41,42間の隔壁40により阻止される。従って、回路部品受容室42に受容されている前記基板3の実装部品には、充填材19の固化時の収縮に伴うストレスが加わることがなく、断線、脱落等の不具合の発生を防止することができる。
【0057】
一方、充填材19の収縮に伴うストレスは、蓋板5の下面に引き出されたイオン発生素子1のリード線 16a,17aにも加わるが、これらのリード線 16a,17aは、前述の如く、引き出し用の窓孔51,51の周縁に設けた鉤状突起54,54…に係止されているため、イオン発生素子1及び基板3への溶着部に前記ストレスによる影響は及ばず、確実な接続状態を維持することができる。
【0058】
このように構成されたイオン発生装置Aは、昇圧コイル2及び回路基板3を内蔵する共通ケース4の外側にイオン発生素子1を取り付けてなるコンパクトな構成であり、前記接続端子45,46を前記外部電源及び外部制御回路に接続することによりイオン発生動作を行わせることができ、空気の清浄化を必要とする各種の電気機器に容易に組み込んで使用することができる。前記電気機器としては、空気清浄機、空気調和器等、外部に送り出す空気の清浄化が要求される機器が含まれることは言うまでもなく、冷蔵庫等、内部(庫内)を循環する空気の清浄化が必要な電気機器、また掃除機等、外部に排出する空気の清浄化が切望される電気機器も含まれ、広範囲の電気機器に対して使用することができる。
【0059】
図9は、本発明に係るイオン発生装置の空気調和機(エアコンディショナー)への使用例を示す側断面図、図10は、同じく空気清浄機への使用例を示す正面断面図である。
【0060】
図9に示す如く空気調和機6は、本体ハウジング60の前面(図における左面)上部に、多数のスリット又は孔が開設された前パネル61により開閉自在に覆われた吸込口62を開設し、同じく前面下部に吹出口63を開設して、これらの吸込口62及び吹出口63を連絡すべく本体ハウジング60の内部に湾曲形成された通気路の中途に熱交換器64と送風ファン65とを並設してなり、送風ファン65の回転により前記吸込口62から空気を吸込み、熱交換器64との接触により冷却又は加熱して、前記吹出口63から図中に白抜矢符にて示す如く吹き出す構成となっている。
【0061】
このような空気調和機6において、本発明に係るイオン発生装置Aは、吹出口62の内奥側に位置させ、前記イオン発生素子1の装着面が前記通気路の内部の空気流に対面するように取付けてある。この取付けの後、共通ケース4外部の接続端子45,46(図3参照)を外部電源及び空気調和機6の制御回路を接続すれば、イオン発生装置Aは、吹出口63から吹き出される空気中の水蒸気をプラズマ放電によりイオン化し、略同量のプラスイオンとマイナスイオンとが生成されて送り出される。
【0062】
ここで、前記プラスイオンは、水素イオン(H+ )の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンであり、H+ (H2 O)m (mは自然数)として表される。またマイナスイオンは、酸素イオン(O2 - )の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンであり、O2 - (H2 O)n (nは自然数)として表される。これらのプラスイオン及びマイナスイオンは、吹出口63から送出された後、前述の如く、送出空間内の浮遊物(粒子、細菌)に凝集して相互に化学反応し、活性物質としての過酸化水素H2 O2 又は水酸化ラジカル・OHとなり、酸化反応により浮遊粒子を不活性化し、また浮遊細菌を殺菌する作用をなすから、空気調和機6が設置された居室の内部を清浄化することができる。
【0063】
図10に示す如く空気清浄機7は、本体ハウジング70の内奥部にフィルタ71により覆われた吸込口が設けられており、フィルタ71の内奥側に送風ファン(図示せず)が設置されている。フィルタ71の前方には渦巻き形の通気路72が形成され、本体ハウジング70の上部に形成された吹出口73に連通させてあり、送風ファンの回転により吸込口から空気を吸込み、該空気に含まれる浮遊物をフィルタ71により捕捉し、渦巻き形の通気路72を通気させ、前記吹出口73から送り出す構成となしてある。
【0064】
このような空気清浄機7において、本発明に係るイオン発生装置Aは、通気路72の周壁の一部に、該通気路72内を流れる空気流に前記イオン発生素子1の装着面が対面するように取付けてある。この取付けの後、共通ケース4外部の接続端子45,46(図3参照)を外部電源及び空気清浄機7の制御回路を接続すれば、イオン発生装置Aは、通気路72内を流れる空気中の水蒸気をプラズマ放電によりイオン化し、略同量のプラスイオンとマイナスイオンとを生成する動作をなし、これらのイオンは、前記空気と共に吹出口73から送り出され、前述の如く、送出空間内の浮遊粒子を不活性化し、また浮遊細菌を殺菌する作用をなす。従って、前記フィルタ71による塵埃の捕捉との相乗作用により、空気清浄機7が設置された居室の内部を清浄化することができる。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明に係るイオン発生装置においては、昇圧手段を収容し、回路基板を支持する箱形の共通ケースの開口を閉塞する蓋板に設けた装着部にイオン発生素子を装着して、昇圧手段、回路基板及びイオン発生素子をユニット化したから、コンパクトな構成とすることができ、外部電源及び制御回路との接続により、広範な用途に簡易に使用することが可能となる。また、蓋板に装着したイオン発生素子と相対する共通ケースの底部に昇圧手段を収容し、この昇圧手段とイオン発生素子との間に回路基板を支持する合理的な配置を採用したから、一層のコンパクト化を達成することができる。更に、平板状をなすイオン発生素子を用い、蓋板に設けた装着部に放電電極の形成側を外向きとして装着したから、プラスイオン及びマイナスイオンを効率的に放出させることができる。
【0075】
また共通ケースの外側に外部接続のための接続手段を一体に設けたから、外部電源及び制御回路との接続が容易となり、種々の用途において良好な使い勝手にて用いることができ、また、このような接続手段に対する接続の方向と略平行をなす面にイオン発生素子の装着部を設けたから、接続端子の接続作業をイオン発生素子の装着部を下向きとせずに無理なく行わせることができ、イオン発生素子の損傷を未然に防止することができる。
【0076】
またイオン発生素子の装着部を下とした載置状態において、載置面から離間して支持する手段を備えたから、外部電源及び制御回路との接続を含む組み付けの段階において、イオン発生素子の装着部を下向きとした誤った載置がなされたとき、この載置面との接触によるイオン発生素子の損傷を未然に防止することができる。
【0077】
また前記蓋板にイオン発生素子と回路基板とを接続するリード線を通す窓孔を設け、該窓孔の周縁にリード線の止め部を設けたから、イオン発生素子と回路基板との接続を、リード線の取り回しに煩わされることなく容易に行わせることができ、確実な接続が可能となる。
【0078】
また、昇圧手段の周囲及び回路基板とイオン発生素子との間を充填材により絶縁モールドしたから、高圧の駆動電圧下での相互間を良好に絶縁し、安定した動作が可能となる上、昇圧手段の周囲に充填する第1の充填材は絶縁耐力を重視して選定し、回路基板とイオン発生素子との間の第2の充填材は流動性を重視して選定したから、良好な絶縁性能を得ることができる。
【0079】
また、回路基板の実装部品を昇圧手段の収容室に並設された室に受容させたから、前記実装部品の存在に邪魔されることなく回路基板とイオン発生素子との間の離隔距離を削減することができ、一層のコンパクト化を達成することができ、更に、実装部品の受容室と昇圧手段の収容室とを隔壁により隔絶したから、絶縁モールド用の充填材が受容室内に入り込むことがなく、該充填材の固化収縮に伴って前記実装部品に応力が加わる虞れがなく、損傷又は脱落の発生を未然に防止し、歩留りの向上を図ることができる。
【0080】
また、イオン発生素子が発生するプラスイオン及びマイナスイオンが、複数のH2 O分子により囲まれたクラスターイオンであるから、これらのイオンが送出される空間の浮遊粒子を不活性化し、浮遊細菌を殺菌して、前記空間を良好に清浄化することができる。
【0081】
また本発明においては、空気調和機、空気清浄機、冷蔵庫、掃除機等の空気流の通気路を備える電気機器に、以上の如く構成されたイオン発生装置をイオン発生素子の装着部が空気流に対面するように取付けたから、前記イオン発生素子が発生するイオンを前記空気流と共に送出され、この送出空間を良好に清浄化することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るイオン発生装置の第1の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】 図1に示すイオン発生装置のイオン発生素子の取付け側から見た外観斜視図である。
【図3】 図1に示すイオン発生装置の図2と逆側から見た外観斜視図である。
【図4】 イオン発生素子の外観斜視図である。
【図5】 イオン発生素子の平面図である。
【図6】 図5のVI−VI線による拡大断面図である。
【図7】 図5の VII−VII 線による拡大断面図である。
【図8】 イオン発生素子を保持させた蓋板の裏面側からの斜視図である。
【図9】 本発明に係るイオン発生装置の空気調和機への使用例を示す側断面図である。
【図10】 本発明に係るイオン発生装置の空気清浄機への使用例を示す正面断面図である。
【符号の説明】
1 イオン発生素子
2 昇圧コイル(昇圧手段)
3 回路基板
4 共通ケース
5 蓋板
6 空気調和機
7 空気清浄機
10 誘電体基板
13 放電電極
14 誘導電極
18 (第1の)充填材
19 (第2の)充填材
41 コイル収容室
42 回路部品受容室
43 支持縁
45,46 接続端子
Claims (11)
- 交流の駆動電圧を印加することによりプラスイオン及びマイナスイオンを発生させるイオン発生素子と、該イオン発生素子に印加する駆動電圧を発生する昇圧手段及び回路基板とを備えるイオン発生装置であって、
前記昇圧手段の収容室及び前記回路基板の支持部が設けてあり、一部に開口を有する箱体として構成された共通ケースと、該共通ケースの開口を閉塞すべく取り付けられた蓋板とを備え、
前記イオン発生素子は、平板状の誘電体を介して対向する放電電極と誘導電極とを有し、前記蓋板に設けた装着部に前記放電電極を外向きとして装着してあり、前記装着部と相対する前記共通ケースの内部に前記昇圧手段の収容室を設け、該収容室と前記装着部との間に前記回路基板の支持部を設けてあることを特徴とするイオン発生装置。 - 前記共通ケースの外側に、前記昇圧手段に電力を供給するための接続手段を一体に備える請求項1記載のイオン発生装置。
- 前記イオン発生素子の装着部は、前記接続手段に対する接続の方向と略平行をなすように配設してある請求項2記載のイオン発生装置。
- 前記イオン発生素子の装着部を下として適宜の載置面に載置された状態において、前記イオン発生素子を前記載置面から離間して支持する手段を備える請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のイオン発生装置。
- 前記イオン発生素子は、前記蓋板を貫通する窓孔を通したリード線により前記回路基板に接続してある請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のイオン発生装置。
- 前記窓孔の周縁に前記リード線を固定する止め部を備える請求項5記載のイオン発生装置。
- 前記昇圧手段は、前記収容室内に充填された第1の充填材により絶縁モールドし、また前記回路基板と前記イオン発生素子との間は、両者間に充填された第2の充填材により絶縁モールドしてある請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のイオン発生装置。
- 前記第1の充填材は、前記第2の充填材よりも絶縁耐力に優れ、前記第2の充填材は、前記第1の充填材よりも流動性に優れる請求項7記載のイオン発生装置。
- 前記支持部に支持された前記回路基板の実装部品を受容すべく、前記昇圧手段の収容室に並設された受容室と、該受容室と前記収容室との間を前記第1及び第2の充填材の侵入不可に隔絶する隔壁とを備える請求項7又は請求項8記載のイオン発生装置。
- 前記プラスイオンは、H+ (H2 O)m (mは自然数)であり、前記マイナスイオンは、O 2 - (H 2 O) n (nは自然数)である請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のイオン発生装置。
- 空気流が通気する通気路を備える電気機器において、前記通気路の中途に、前記空気流に前記イオン発生素子の装着部が対面するように配設された請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のイオン発生装置を備えることを特徴とする電気機器。
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