JP3952833B2 - 有機感光体、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やプリンターの分野において用いられる有機感光体、及び該有機感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用感光体はSe、ヒ素、ヒ素/Se合金、CdS、ZnO等の無機感光体から、公害や製造の容易性等の利点に優れる有機感光体に主体が移り、様々な材料を用いた有機感光体が開発されている。
【0003】
近年では電荷発生と電荷輸送の機能を異なる材料に担当させた機能分離型の感光体が主流となっており、なかでも電荷発生層、電荷輸送層を積層した積層型の有機感光体が広く用いられている。
【0004】
また、電子写真プロセスに目を向けると潜像画像形成方式は、ハロゲンランプを光源とするアナログ画像形成とLEDやレーザを光源とするデジタル方式の画像形成に大別される。最近はパソコンのハードコピー用のプリンターとして、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さからデジタル方式の潜像画像形成方式が急激に主流となりつつある。
【0005】
デジタル方式の画像形成では、デジタル電気信号に変換された画像情報を感光体上に静電潜像として書き込む際の光源としてレーザ、特に半導体レーザやLEDが用いられている。
【0006】
これらのレーザ光やLED光の発振波長は、780nmや660nmの近赤外光やそれに近い長波長光である。デジタル的に画像形成を行う際に使用される有機感光体にとって、まず第一に要求される特性としてはこれらの長波長光に対して高感度であることであり、これまで多種多様な材料についてそのような特性を有するか否かの検討がなされてきている。その中でもフタロシアニン顔料は、合成が比較的簡単である上、長波長光に対して高感度を示すものが多い点で、フタロシアニン顔料を用いた有機感光体が、幅広く検討され、実用化されている。
【0007】
なかでも、粉末X線回折スペクトルにてブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料(以後、単にY型チタニルフタロシアニン顔料又はY型とも云う)は高感度な素材として知られ学会報告もされている(織田ら電子写真学会誌,29(3),250(1990)など)。
【0008】
このY型チタニルフタロシアニン顔料をキャリヤ発生物質として用いた場合、環境、特に湿度変動により、帯電特性、感度特性が変化し、環境メモリが発生しやすい。該環境メモリとは温湿度が大きく変動した時に、露光部をトナー画像とする反転現像において、黒帯状の画像欠陥が発生する現象を云う。該湿度変動対策として感光体の電荷発生層に保湿剤としてアルキレンジオールやポリアルキレングリコールあるいは帯電防止剤などが提案されてきた(特開平5−313389号、同5−333577号、同6−118675号)。しかしながら、これらの単なる保湿剤添加では近年のより高画質の追及には答え難く、また大量に加えれば保湿剤といえどもジオール化合物などでは有機絶縁物として作用しやすく、残留電位が上昇するなどの欠点が発生しやすい。また帯電防止剤などでは帯電電位の低下などの副作用が見られる。
【0009】
他方、粉末X線回折スペクトルにてブラッグ角2θが7.5°、28.7°に顕著なピークを有し、その何れか一方が最大ピークであるチタニルフタロシアニン顔料(以後、B型チタニルフタロシアニン顔料又はB型顔料とも云う)は安定した感度を示し且つ合成しやすい電荷発生物質として知られている(特開昭61−239248号等)。
【0010】
しかし、このB型顔料の電荷発生物質を用いて有機感光体を作製した場合、上記環境メモリの黒帯状画像欠陥は改善されるが、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が著しい。そこで、該残電上昇を防止するため、B型顔料を用いると同時に、電荷輸送層の電荷輸送物質の濃度を高くすると、該残電上昇は改善されるが、「白抜け」と云う画像欠陥が発生しやすいという問題が見出されている。この白抜けは反転現像のハーフトーン或いは黒べた画像に現像されない点状或いは線状の画像欠陥をいうが、この現象は有機感光体上への潜像形成時に、像露光部で電荷が消失しない微小部分が発生するためと思われ、反転現像で良く知られる「黒ポチ」と逆の画像欠陥と考えられる。
【0011】
又、上記残電上昇を改善し、B型顔料を用いた感光体の感度を高めるためには、電荷発生層に隣接する中間層の影響が大きいことが見出された。
【0012】
例えば、酸化チタン粒子等を6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂に分散させて中間層を形成する方法は、広く知られている。しかし、このような中間層を用いて、上記残留電位を改善しようとすると高温高湿下で「黒ポチ」画像欠陥が発生しやすく、前記した環境メモリの黒帯状画像欠陥も発生しやすい。
【0013】
本発明者等は上記黒帯状、白抜け、黒ポチ等の画像欠陥を同時に改善し、繰り返し使用に伴う残留電位の増加を防止した電子写真感光体を得るために、従来の感光体技術を総合的に検討し本発明に至った。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、電位安定性の良好な、且つ黒帯状、白抜け、黒ポチ等の画像欠陥を発生しない有機感光体を提供することであり、更に詳しくは黒帯状、白抜け、黒ポチ等の画像欠陥を発生させず、繰り返し使用に伴う残留電位の増加を防止した電位変動が有機感光体、及び該有機感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の目的は以下の構成を有する有機感光体を用いることにより達成される。
【0016】
1.導電性支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層、その上に電荷輸送物質を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、該電荷発生物質がCu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、28.7°に顕著な回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料を含有し、前記電荷輸送層がビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の立体異性体混合物で、且つ該立体異性体混合物中の最大異性体成分の含有率が40〜90質量%である電荷輸送物質を含有し、電荷輸送層のバインダー樹脂のガラス転移点Tgbと電荷輸送層のガラス転移点Tglが、下記関係を満たすことを特徴とする有機感光体。
100℃<Tgl<Tgb (Tgb、Tgl共、単位は℃)
【0017】
2.前記チタニルフタロシアニン顔料がCu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、22.6°、24.5°、25.4°、28.7°に顕著な回折ピークを有し、且つ最大回折ピークが7.5°又は28.7°であることを特徴とする有機感光体。
【0020】
3.前記ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物が前記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記1又は2に記載の有機感光体。
【0021】
4.前記ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物が前記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記1又は2に記載の有機感光体。
【0022】
5.前記ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物が前記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記1又は2に記載の有機感光体。
【0023】
6.前記ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物が前記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機感光体。
【0024】
7.前記ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物が前記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機感光体。
【0025】
8.前記ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物が前記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機感光体。
【0026】
9.前記ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物が前記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機感光体。
【0027】
10.前記電荷輸送層の主たるバインダー樹脂がポリカーボネートであることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の有機感光体。
【0028】
11.導電性支持体と電荷発生層の間に中間層を有することを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の有機感光体。
【0029】
12.前記中間層がN型半導性微粒子とバインダー樹脂を含有していることを特徴とする前記11記載の有機感光体。
【0030】
13.前記1〜12のいずれか1項に記載の有機感光体を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0031】
14.前記13に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0032】
15.少なくとも前記1〜12のいずれか1項に記載の有機感光体と帯電器、像露光器、現像器、転写器、クリーニング器の少なくとも1つを一体として有しており、画像形成装置に出し入れ可能に構成されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0033】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の有機感光体(以下、単に感光体ともいう)は導電性支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層、その上に電荷輸送物質を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、該電荷発生物質がCu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、28.7°に顕著な回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料(B型チタニルフタロシアニン顔料)を含有し、前記電荷輸送層がビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の立体異性体混合物で、且つ該立体異性体混合物中の最大異性体成分の含有率が40〜90質量%である電荷輸送物質を含有することを特徴とする。
【0034】
本発明の有機感光体は、導電性支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層、その上に電荷輸送物質を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、該電荷発生物質がCu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、22.6°、24.5°、25.4°、28.7°に顕著な回折ピークを有し、且つ最大回折ピークが7.5°又は28.7°にあるチタニルフタロシアニン顔料(該顔料もB型チタニルフタロシアニン顔料に属する)を含有し、前記電荷輸送層がビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の立体異性体混合物で、且つ該立体異性体混合物中の最大異性体成分の含有率が40〜90質量%である電荷輸送物質を含有することを特徴とする。
【0035】
本発明の感光体は上記の構成を有することにより、前記した相反する画像欠陥、即ち黒帯状、白抜け及び黒ポチの画像欠陥の発生を同時に防止し、しかも繰り返し使用に伴う、残留電位の増加を起こさずに、鮮鋭な電子写真画像を作製することができる。
【0036】
即ち、電荷輸送層の電荷輸送物質にビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の立体異性体混合物で、電荷輸送性を有する電荷輸送物質を用い、該電荷輸送層をブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、28.7°に顕著な回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料、或いはブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、22.6°、24.5°、25.4°、28.7°に顕著な回折ピークを有し、且つ最大回折ピークが7.5°又は28.7°にあるチタニルフタロシアニン顔料を含有する電荷発生層上に積層することにより、前記した環境メモリの黒帯状画像欠陥や白抜け、黒ポチ等の画像欠陥が防止され、且つ繰り返し使用に伴う残留電位上昇を防止して、鮮鋭な電子写真画像を生成することのできる感光体が得られる。そして、該立体異性体混合物の最大成分の含有率は40〜90質量%であることが必要である。最大成分の含有率が90質量%より大きいと、電荷輸送物質の分散性が劣化し、カブリの発生や画像濃度の低下の原因となり、鮮鋭性の低下を起こしやすい。一方、40質量%より小さいと、白抜けの発生が増加したり、解像度が低下したり、電子写真特性の安定性も損なわれる。特に、前記最大成分の含有率は45〜80質量%が好ましい。
【0037】
上記のような効果はビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の立体異性体混合物の電荷輸送物質を用いることにより、感光層、例えば電荷輸送層のバインダーと電荷輸送物質の相溶性が良好となり、電荷輸送層の膜質及び電子写真特性が向上することに起因すると思われる。
【0038】
又、本発明の有機感光体は、導電性支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層、その上に電荷輸送物質を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、該電荷発生物質がCu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、28.7°に顕著な回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料を含有し、前記電荷輸送層がビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物を含有し、電荷輸送層のバインダー樹脂のガラス転移点Tgbと電荷輸送層のガラス転移点Tglが、下記関係を満たすことを特徴とする。
【0039】
100℃<Tgl<Tgb (Tgb、Tgl共、単位は℃)
又、本発明の有機感光体は、導電性支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層、その上に電荷輸送物質を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、該電荷発生物質がCu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、22.6°、24.5°、25.4°、28.7°に顕著な回折ピークを有し、且つ最大回折ピークが7.5°又は28.7°にあるチタニルフタロシアニン顔料を含有し、前記電荷輸送層がビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物を含有し、電荷輸送層のバインダー樹脂のガラス転移点Tgbと電荷輸送層のガラス転移点Tglが、下記関係を満たすことを特徴とする。
【0040】
100℃<Tgl<Tgb (Tgb、Tgl共、単位は℃)
本発明の感光体は上記の構成を有することにより、前記した相反する画像欠陥、即ち黒帯状、白抜け及び黒ポチの画像欠陥の発生を同時に防止し、しかも繰り返し使用に伴う、残留電位の増加を起こさずに、鮮鋭な電子写真画像を作製することができる。
【0041】
電荷輸送層のガラス転移点Tglは電荷輸送層の主たる構成成分のバインダー樹脂及び電荷輸送物質、及び電荷輸送物質以外の添加剤が支配要因になっている。勿論、これ以外に残留溶媒濃度の影響はあるが、残留溶媒は有機感光体の帯電特性や感度等の電子写真特性や膜物性に悪影響を与えることが多く、一般に可能な限り除去することが好ましい。又、電荷輸送物質以外の添加剤は電荷輸送物質に比し、添加量が少ないので、その分ガラス転移点Tglに与える影響は限定されるが、電荷輸送層の膜物性を劣化させない為にはその量及び質(ガラス転移点Tglを低下させない化合物)を用いることが必要である。
【0042】
本発明の電荷輸送物質とは電子或いは正孔のドリフト移動度を有する性質を示す化合物、又別の定義としてはTime−Of−Flight法などの電荷輸送能を検知できる公知の方法により電荷輸送に起因する検出電流が得られる化合物を云う。
【0043】
ところで、従来の電荷輸送層は電荷発生層で発生した電荷を感光体表面に輸送する為に大量の電荷輸送物質を電荷輸送層に含有させていた。この為残留溶媒量、他の添加剤の量と質を選択して用いても電荷輸送層のガラス転移点Tglは100℃を超えることは極めて困難であった。
【0044】
本発明では電荷輸送物質の少なくとも1つに、ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物を用い、電荷輸送層中の電荷輸送物質の総モル量を低モル量とし、電荷輸送層のガラス転移点Tglを低下させずに、しかも電荷輸送能が低下しない電荷輸送層の技術を開発し、この技術にB型チタニルフタロシアニン顔料を用いた電荷発生層を組み合わせることにより上記発明を達成した。
【0045】
即ち、本発明は電荷輸送層のガラス転移点Tglを100℃以上に構成し、該電荷輸送層をB型チタニルフタロシアニン顔料を含有する電荷発生層上に設置することにより、黒帯状、白抜け、黒ポチ等の画像欠陥を防止し、且つ繰り返し使用に伴う残留電位の上昇を防止し、鮮鋭な電子写真画像の作製を可能にする感光体が得られる。そして、このような電荷輸送層の物性は電荷輸送層に電荷輸送物質として、立体異性体混合物からなるビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の電荷輸送物質を用い、電荷輸送層に低モル数、例えば電荷輸送層単位質量当たり、2.0×10-4(mol/g)〜6.0×10-4(mol/g)電荷輸送物質を含有させることにより、電荷輸送層のガラス転移点Tglの低下度(バインダー樹脂のガラス転移点Tgbからの低下度)を小さくすることにより達成される。又、電荷輸送層単位質量当たりの上記電荷輸送物質の総モル数が2.0×10-4(mol/g)未満では感度が低下しやすく、画像濃度の低下やカブリの増加を起こしやすい。一方6.0×10-4(mol/g)より多いと、電荷輸送物質の種類にもよるが電荷輸送層のガラス転移点Tglを100℃以上にすることが困難になりやすい。
【0046】
即ち、電荷輸送物質として、ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の立体異性体混合物を用い、電荷輸送物質を低モル量で用いることにより、電荷輸送層の膜物性を低下させず、白抜けや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、しかも良好な電子写真特性を有する有機感光体を達成できる。
【0047】
前記ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の立体異性体混合物は、該異性体混合物中の最大異性体成分の含有率が40〜90質量%であることが好ましい。最大成分の含有率が90質量%より大きいと、電荷輸送物質の分散性が劣化し、カブリの発生や画像濃度の低下の原因となり、鮮鋭性の低下を起こしやすい。一方、40質量%より小さいと、白抜けの発生が増加したり、解像度が低下したり、電子写真特性の安定性も損なわれる。特に、前記最大成分の含有率は45〜80質量%が好ましい。
【0048】
又、該立体異性体の電荷輸送物質の分子量が500以上、1500以下である化合物を用いることが好ましい。分子量が500未満では電子写真特性が低下しやすく、1500より大きいとバインダー樹脂との相溶性が低下しやすく、白抜けや黒ポチ等の画像欠陥を発生させやすい。
【0049】
電荷輸送層のバインダー樹脂としては電子写真特性、膜物性の両面に優れたポリカーボネート樹脂が好ましい。ここでポリカーボネートとはカーボネート構造(−OCOO−)を有する重合体である。
【0050】
ポリカーボネート樹脂は樹脂構造、分子量等でガラス転移点Tgbが変化するが、市販のポリカーボネート樹脂では、大凡160〜200℃の範囲にある。このことからポリカーボネートを電荷輸送層のバインダー樹脂とした場合は電荷輸送物質や他の添加剤による電荷輸送層のガラス転移点の低下度(バインダー樹脂からの)は60〜100℃以下にすることが必要である。
【0051】
尚、本発明の主たるバインダー樹脂とは電荷輸送層中の全バインダー樹脂に対して50質量%以上の含有量を云う。
【0052】
本発明のビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物とはアニリンの窒素原子に同一化学構造のアリールエテニルフェニル基を2個有する化合物群を云うが、好ましくは前記一般式(1)で示される化合物であり、好ましくは一般式(2)〜一般式(6)のように、アニリン基のオルト或いはパラ位にアルキル基又はアルコキシ基を有するものが好ましい。
【0053】
又、立体異性体混合物の電荷輸送物質とは同一の化学構造式を有する電荷輸送物質の化合物がその中の原子又は原子団の立体配置を異にすることによって起こる異性構造を持つものを云う。
【0054】
以下に、本発明の好ましいビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の例を挙げるが、本発明は下記の化合物例に限定されない。又、これらの化合物はいずれも立体異性体構造を持つことができる。
【0055】
【化8】
【0056】
【化9】
【0057】
【化10】
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
【化17】
【0065】
【化18】
【0066】
又、立体異性体構造を有する電荷輸送物質の分子量は500以上、1500以下が好ましい。このような高分子量の電荷輸送物質を用いることにより、電荷輸送層の膜質の向上を図ることができ、前記した本発明の効果をより顕著にすることができる。
【0067】
本発明のガラス転移点の測定方法について記載する
本発明のガラス転移点の測定は、測定試料を約1.0mgをアルミパンに入れ、蓋をして秤量を行う。これを熱流束示差走査熱量計DSC−50(島津製作所社製)にて、20℃からスタート、3℃/分の昇温温度で220℃まで測定を行った。
【0068】
測定試料としては、電荷輸送層のバインダー樹脂のガラス転移点をTgbはバインダー樹脂そのものを試料として用い、電荷輸送層のガラス転移点Tglは感光体から電荷輸送層を剥離した試料を用いて測定する。
【0069】
次に、本発明の有機感光体の層構成について記載する。
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0070】
本発明の有機感光体は電荷発生物質として、前記B型チタニルフタロシアニン顔料を用いることを特徴とする。該B型チタニルフタロシアニン顔料はオキシチタニウムフタロシアニンとも云われ、化学式としては下記構造式で表される。
【0071】
【化19】
【0072】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、nは0〜1の数を示す。前記Xが塩素原子の場合nは0〜0.5が好ましく、0〜0.1がより好ましい。)
前記ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、28.7°に顕著な回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料(且つ、7.5°又は28.7°が最大ピークである)の製造方法は特開平1−239248号、同1−217050号等に開示されており、これらの開示された製造方法を用いて作製することができ、これらの製造方法で作製したチタニルフタロシアニン顔料は、例えば図1に示したようなブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、28.7°に顕著な回折ピークを有するX線回折スペクトルを示す。図1のチタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルは上記7.5°に最大回折ピークを有し、他に、ブラッグ角(2θ±0.2°)10.3°、12.3°、16.3°、18.4°、22.6°、24.5°、25.4°、28.7°にも明瞭な回折ピークを示している。尚、該チタニルフタロシアニン顔料の分散粒径を小さくしていくと、低角度の7.5°のピークは小さくなり、最大回折ピークが28.7°になる。
【0073】
上記の電荷発生物質を含有する有機感光体の層構成は、導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層の感光層等から構成される。導電性支持体と電荷発生層の間に中間層を設ける方がより好ましい。又、これらの各層は1層がら構成されてもよいし、2層以上から構成されてもよい。
【0074】
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0075】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0076】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0077】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0078】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0079】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0080】
又、本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0081】
又、本発明に好ましく用いられる中間層は疎水化表面処理をしたN型半導性微粒子をバインダー中に分散した中間層が挙げられる。例えばシリカ・アルミナ処理及びシラン化合物で表面処理した平均粒径が0.01〜1μmの酸化チタンをポリアミド樹脂中に分散した中間層が挙げられる。このような中間層の膜厚は、1〜20μmが好ましい。
【0082】
N型半導性微粒子とは、導電性キャリアを電子とする性質をもつ微粒子を示す。すなわち、導電性キャリアを電子とする性質とは、該N型半導性微粒子を絶縁性バインダーに含有させることにより、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性を示さない性質を有するものをいう。
【0083】
前記N型半導性微粒子は、具体的には酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の微粒子が挙げられるが、本発明では、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
【0084】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の平均粒径は、数平均一次粒径において10nm以上500nm以下の範囲のものが好ましく、より好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは、15nm〜50nmである。
【0085】
数平均一次粒径の値が前記範囲内にあるN型半導性微粒子を用いた中間層は層内での分散を緻密なものとすることができ、十分な電位安定性、及び黒ポチ発生防止機能を有する。
【0086】
前記N型半導性微粒子の数平均一次粒径は、例えば酸化チタンの場合、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定される。
【0087】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状のN型半導性微粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型のものが最も良い。
【0088】
本発明のN型半導性微粒子に行われる疎水化表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物による表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理であり、最後に反応性有機ケイ素化合物の表面処理を行うことが好ましい。
【0089】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とはN型半導性微粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0090】
この様に、酸化チタン粒子の様なN型半導性微粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、N型半導性微粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理されたN型半導性微粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等のN型半導性微粒子の分散性が良好となり、電子写真特性、特に繰り返し使用時の残留電位の安定性、更に黒ポチ、環境メモリ等の改善効果を増大させることができる。
【0091】
電荷発生層
電荷発生層には前記したB型チタニルフタロシアニン顔料を電荷発生物質(CGM)として含有する。このB型チタニルフタロシアニン顔料以外にも、必要により他の電荷発生物質を用いてもよい。例えば他のフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを併用いることができが、本発明の効果を十分に確保するためには、B型チタニルフタロシアニン顔料を電荷発生物質全体の50質量%以上とすることが好ましい。
【0092】
その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0093】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)として立体異性体混合物を用い、且つCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0094】
電荷輸送物質(CTM)としては前記した立体異性体混合物の電荷輸送物質の他に公知の電荷輸送物質を併用して用いることもできる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを併用して、用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0095】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0096】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。又電荷輸送層が表面層となる感光体の場合は、機械的摩耗に強いポリカーボネートが好ましく、このようなポリカーボネートとしては平均分子量が2,000,000〜25,000のポリカーボネートが好ましい。ここで平均分子量は数平均分子量、重量平均分子量、及び粘度平均分子量のいずれのものでもよい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0097】
又、電荷輸送層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0098】
【化20】
【0099】
【化21】
【0100】
【化22】
【0101】
【化23】
【0102】
電荷輸送層は2層以上の層構成にしてもよい。この場合は表面の電荷輸送層に保護層として機能を付加し、クリーニングブレード等との耐摩耗特性を強化した層構成が好ましい。
【0103】
中間層、感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0104】
本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお前記スプレー塗布については例えば特開平3−90250号及び特開平3−269238号公報に詳細に記載され、前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0105】
次に、本発明の画像形成装置について説明する。
図3は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【0106】
図3に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0107】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0108】
ここで本発明の反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0109】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0110】
現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図3のように現像位置上部に設けて行う。
【0111】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0112】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0113】
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図3では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
【0114】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0115】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0116】
本発明の有機電子写真感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0117】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。文中の「部」は質量部を表す。
【0118】
実施例1(参考例)
合成例1(例示化合物T20の合成例)
【0119】
【化24】
【0120】
上記式で表される化合物10gをオキシ塩化リン32gに溶解させ、50℃まで加熱しジメチルホルムアミド22mlを少しずつ滴下した(発熱し40〜70℃になる)。反応液を90℃前後にコントロールしながら、15時間撹拌した。40℃まで放冷した後、余分なオキシ塩化リンを十分に加水分解し析出した結晶をろ別し、水で懸濁して洗浄し、洗液が中性になるまで洗浄を繰り返し下記構造式で表されるビスホルミル化合物9.25g(77%)を得た。
【0121】
【化25】
【0122】
上記得られたビスホルミル化合物2gと、下記構造式で表されるホスホネート化合物4.3gをジメチルホルムアミド20mlに溶解した。反応液を20℃前後に保ちながら、ナトリウムメトキシド1.0gを少しずつ添加した(発熱有り)。4時間撹拌後、水30mlを加え常法により精製処理を行って黄色結晶3.3g(81%)を得た。この黄色結晶を、元素分析及び質量分析を行ったところ、下記表1のような結果となり例示化合物T20であることが確認された。
【0123】
【化26】
【0124】
元素分析(C53H49N)
【0125】
【表1】
【0126】
質量分析(C53H49N)
Mw(計算値)=699
Mw+(実測値)=699
上記の合成で得られたT20の化合物をT20−1とする。このT20−1は下記液体クロマトグラフィ(HPCL)の測定結果cis−cis/cis−trans/trans−trans混合比が1.1/2.2/1.0であった。尚、T20cis−cis、T20trans−trans、T20cis−transの構造式を下記に示す。
【0127】
液体クロマトグラフィの測定条件
測定機:島津LC6A(島津製作所製)
カラム:CLC−SIL(島津製作所製)
検出波長:290nm
移動相:n−ヘキサン/ジオキサン=10〜500/1
移動相の流速:約1ml/min
サンプル(T20)溶媒:n−ヘキサン/ジオキサン=10/1
サンプル(T20):3mg/溶媒10ml
【0128】
【化27】
【0129】
上記で得られたT20−1を液体クロマトグラフィを用いてcis−cis体、cis−trans体、trans−trans体に分離した化合物も得た。これらcis−cis体のT20をT20c−c、cis−trans体のT20をT20c−t、trans−trans体のT20をT20t−tとする。T20−1とT20c−c、T20c−t、T20t−tの4つの化合物を用い、混合比を変えて、表2に示す如くcis−cis/cis−trans/trans−transの混合比を持つT20−2〜T20−6の化合物を作製した。
【0130】
酸化チタン、ポリアミド樹脂、メタノールを同一容器中に加え超音波ホモジナイザーを用いて分散し、中間層用の塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、4μmの乾燥膜厚で中間層を設けた。
【0131】
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0132】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質(T20−1) 225部
ポリカーボネート(粘度平均分子量:20,000) 300部
酸化防止剤(例示化合物1−3) 6部
ジクロロメタン 2000部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚24μmの電荷輸送層を形成し、感光体1を作製した。
【0133】
感光体2〜9の作製
感光体1で用いた電荷輸送物質(T20−1)をT20−2〜T20−6、T20c−c、T20c−t、T20t−tに代え、異性体混合比を表2のように変えた以外は感光体1と同様にして感光体2〜9を作製した。
【0134】
感光体10の作製
感光体1で用いた電荷輸送物質(T20−1)を下記化学構造の電荷輸送物質T101に代えた以外は同様にして感光体10を作製した。
【0135】
【化28】
【0136】
感光体11の作製
感光体1で用いた電荷発生層のB型チタニルフタロシアニン顔料をY型チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルにてブラッグ角2θで、27.2±0.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料:図2)に代えた以外は感光体1と同様にして感光体11を作製した。
【0137】
【表2】
【0138】
評価
評価機としてコニカ社製デジタル複写機Konica7075(コロナ帯電、レーザ露光、反転現像、静電転写、爪分離、ブレードクリーニング、クリーニング補助ブラシローラー採用プロセスを有する)を用い、該複写機に感光体1〜11を搭載し評価した。クリーニング性及び画像評価は、画素率が7%の文字画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4中性紙にコピーして行った。環境条件は厳しい条件の高温高湿環境:HH環境(30℃、80%RH)と低温低湿環境:LL環境(10℃、20%RH)の両方で、それぞれ連続1万枚コピー、計2万枚のコピーを行いハーフトーン、ベタ白画像、ベタ黒画像を作製し下記の評価を行った。
【0139】
評価基準
画像濃度(マクベス社製RD−918を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。初期及び各1万枚コピー後の画像で評価した。)
◎:黒ベタ画像が1.2以上
○:黒ベタ画像が1.2未満〜1.0
×:黒ベタ画像が1.0未満
カブリ(初期及び各1万枚コピー後のベタ白画像を目視で判定)
◎:両方の環境条件下のコピーを通してカブリの発生なし
○:どちらか一方の環境下で濃度0.01〜0.02のカブリが発生
×:どちらか一方の環境下で濃度0.03以上のカブリが発生
画像欠陥評価
環境メモリ:上記高温高湿環境(30℃、80%RH)で1万枚コピー後、上記Konica 7075複写機を同条件下に24hr放置し、その後低湿低温下(LL:10℃、20%RH)に置き、30分後、コピーした。オリジナル画像で0.4の濃度のハーフトーン画像を0.4の濃度にコピー、コピー画像の濃度差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)で判定
A:ΔHDが0.05以下(良好)
B:ΔHDが0.05より大で0.1未満(実用上問題なし)
C:ΔHDが0.1以上(実用上問題あり)
黒ポチ(上記各1万枚コピー後、更にベタ白のコピー画像100枚を作製して評価)
黒ポチについては、周期性が感光体の周期と一致し、目視できる黒ポチが、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0140】
A:0.4mm以上の黒ポチ頻度:全ての複写画像が3個/A4以下(良好)B:0.4mm以上の黒ポチ頻度:4個/A4以上、10個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
C:0.4mm以上の黒ポチ頻度:11個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
白抜け(上記各1万枚コピー後、更にハーフトーン画像100枚を作製して評価)
白抜けの評価は、周期性が感光体の周期と一致し、目視できる白抜けが、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0141】
A:0.4mm以上の白抜け頻度:全ての複写画像が3個/A4以下
B:0.4mm以上の白抜け頻度:4個/A4以上、19個/A4以下
が1枚以上発生
C:0.4mm以上の白抜け頻度:20個/A4以上が1枚以上発生
解像度(文字画像の判別容易性で判定)
上記各1万枚のコピー後に、3ポイント、5ポイントの文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
【0142】
◎:3ポイント、5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能
○:3ポイントは一部判読不能、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能
×:3ポイントは殆ど判読不能、5ポイントも一部あるいは全部が判読不能
その他評価条件
尚、上記デジタル複写機Konica7075を用いたその他の評価条件は下記の条件に設定した。
【0143】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
露光部電位を−50Vにする露光量に設定。
【0144】
現像条件
DCバイアス;−550V
現像剤は、フェライトをコアとして絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアとスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と本発明の低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーの現像剤を使用。
【0145】
転写条件
転写極;コロナ帯電方式
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性34%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧20(N/m)となるように重り荷重方式で当接した。
【0146】
評価結果を表3に示した。
【0147】
【表3】
【0149】
実施例2(参考例)
合成例2(例示化合物T50の合成例)
【0150】
【化29】
【0151】
上記式で表される化合物10gをオキシ塩化リン34gに溶解させ、50℃まで加熱しジメチルホルムアミド23mlを少しずつ滴下した(発熱し40〜70℃になる)。反応液を90℃前後にコントロールしながら、15時間撹拌した。40℃まで放冷した後、余分なオキシ塩化リンを十分に加水分解し析出した結晶をろ別し、水で懸濁して洗浄し、洗液が中性になるまで洗浄を繰り返し下記構造式で表されるビスホルミル化合物9.43g(78%)を得た。
【0152】
【化30】
【0153】
上記得られたビスホルミル化合物2gと、下記構造式で表されるホスホネート化合物4.3gをジメチルホルムアミド20mlに溶解した。反応液を20℃前後に保ちながら、ナトリウムメトキシド1.0gを少しずつ添加した(発熱有り)。4時間撹拌後、水30mlを加え常法により精製処理を行って黄色結晶3.3g(81%)を得た。この黄色結晶を、元素分析及び質量分析を行ったところ、下記表4のような結果となり例示化合物T50であることが確認された。
【0154】
【化31】
【0155】
元素分析(C40H39N)
【0156】
【表4】
【0157】
質量分析(C40H39N)
Mw(計算値)=533
Mw+(実測値)=533
上記の合成で得られたT50の化合物をT50−1とする。このT50−1は前記液体クロマトグラフィ(HPCL)の測定結果cis−cis/cis−trans/trans−trans混合比が1.2/2.0/1.0であった。尚、T50cis−cis、T50trans−trans、T50cis−transの構造式を下記に示す。
【0158】
【化32】
【0159】
上記で得られたT50−1を液体クロマトグラフィを用いてcis−cis体、cis−trans体、trans−trans体に分離した化合物も得た。これらcis−cis体のT50をT50c−c、cis−trans体のT50をT50c−t、trans−trans体のT50をT50t−tとする。T50−1とT50c−c、T50c−t、T50t−tの4つの化合物を用い、混合比を変えて、表5に示す如くcis−cis/cis−trans/trans−transの混合比を持つT50−2〜50−6の化合物を作製した。
【0160】
感光体12〜20の作製
感光体1で用いた電荷輸送物質(T20−1)をT50−1〜T50−6、T50c−c、T50c−t、T50t−tに代え、異性体混合比を表5のように変えた以外は感光体1と同様にして感光体12〜20を作製した。
【0161】
感光体21の作製
感光体1で用いた電荷発生層のB型チタニルフタロシアニン顔料をY型チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルにてブラッグ角2θで、27.2±0.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)に、電荷輸送物質(T20−1)をT50−1代えた以外は感光体1と同様にして感光体21を作製した。
【0162】
【表5】
【0163】
上記感光体12〜21を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0164】
【表6】
【0166】
実施例3(請求項1に対応した実施例)
感光体22の作製
〈中間層〉
酸化チタンSMT500SAS(1回目:シリカ・アルミナ処理、2回目:
メチルハイドロジェンポリシロキサン処理:テイカ社製) 300g
ポリアミド樹脂 CM8000(東レ社製) 100g
メタノール 1000g
酸化チタン、ポリアミド樹脂、メタノールを同一容器中に加え超音波ホモジナイザーを用いて分散し、中間層用の塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、4μmの乾燥膜厚で中間層を設けた。
【0167】
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0168】
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、その後100℃、60分間の乾燥を行い、残留溶媒量を0.1質量%以下にし、乾燥膜厚24μmの電荷輸送層を形成して感光体22を作製した。尚、感光体22の電荷輸送層の固形分は電荷輸送物質、ポリカーボネートZ、及び酸化防止剤の合計量:536gであり、電荷輸送物質230gのモル数は0.329molであるので、単位質量当たりの電荷輸送物質のモル数は6.1×10-4mol/gである。
【0169】
【化33】
【0170】
感光体23〜27の作製
感光体22で用いた電荷輸送物質(T20−1)の量を表7のように変えた以外は感光体22と同様にして感光体23〜27を作製した。
【0171】
感光体28の作製
感光体22で用いた電荷発生層のB型チタニルフタロシアニン顔料をY型チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルにてブラッグ角2θで、27.2±0.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)に代えた以外は感光体22と同様にして感光体28を作製した。
【0172】
【表7】
【0173】
評価
評価は実施例1と同じ方法で行った。
【0174】
評価結果を表8に示した。
【0175】
【表8】
【0176】
表8から明らかなように電荷輸送層に立体異性体混合物の最大異性体成分の含有率が40〜90質量%の範囲にある電荷輸送物質を含有し、電荷輸送層のTglが100℃より高い122〜161℃の感光体24〜27は、環境メモリ、黒ポチ及び白抜け等の画像欠陥の発生も少なく、感光体27(電荷輸送物質の濃度が低く、画像濃度が低下している)を除いて、画像濃度、カブリ、解像度等の画像特性が良好であり、全ての特性がバランスを持って改善されている。一方、電荷輸送層のTglが75℃、89℃の本発明外の感光体22及び23では白抜け発生が増加し、解像力も低下している。又、Y型チタニルフタロシアニン顔料を電荷発生物質として用いた感光体28は環境メモリ、解像度の劣化が著しい。
【0177】
実施例4(請求項1に対応した実施例)
感光体29〜41の作製
感光体22で用いた電荷輸送物質の種類とその量を表9のように変えた以外は感光体22と同様にして感光体29〜41を作製した。
【0178】
感光体42の作製
感光体22で用いた電荷発生層のB型チタニルフタロシアニン顔料をY型チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルにてブラッグ角2θで、27.2±0.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)に代え、電荷輸送物質の種類とその量を表9のようにした以外は感光体22と同様にして感光体42を作製した。
【0179】
【表9】
【0180】
上記感光体29〜42を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表10に示す。
【0181】
【表10】
【0182】
表10から明らかなように、電荷輸送層に立体異性体混合物のの最大異性体成分の含有率が40〜90質量%の範囲にある電荷輸送物質を含有し、電荷輸送層のTglが100℃より高い感光体29〜33は、画像濃度、カブリ、解像度等の画像特性が良好であり、環境メモリ、黒ポチ及び白抜け等の画像欠陥の発生も少なく全ての特性がバランスを持って改善されている。一方、電荷輸送層のTglは115℃、113℃、117℃と100℃より高くても、電荷輸送物質が立体異性体混合物ではない感光体34、35、36は画像濃度の低下が大きく、解像度が劣化している。又、電荷輸送物質が立体異性体混合物であっても、電荷輸送層のTglが100℃より低い感光体37〜41も白抜け発生が増加し、解像度が劣化している。又、Y型チタニルフタロシアニン顔料を電荷発生物質として用いた感光体42は環境メモリ、解像度の劣化が著しい。
【0183】
【発明の効果】
実施例からも明らかなように、本発明の構成を有する有機感光体を用いることにより、環境メモリ、白抜けや黒ポチが発生せず、鮮鋭な電子写真画像を得ることができる。又該有機感光体を用いた良好な電子写真画像を達成できる画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】7.5°、28.7°に顕著な回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを示す。
【図2】27.2±0.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを示す。
【図3】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543,544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
Claims (15)
- 導電性支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層、その上に電荷輸送物質を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、該電荷発生物質がCu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、28.7°に顕著な回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料を含有し、前記電荷輸送層がビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の立体異性体混合物で、且つ該立体異性体混合物中の最大異性体成分の含有率が40〜90質量%である電荷輸送物質を含有し、電荷輸送層のバインダー樹脂のガラス転移点Tgbと電荷輸送層のガラス転移点Tglが、下記関係を満たすことを特徴とする有機感光体。
100℃<Tgl<Tgb (Tgb、Tgl共、単位は℃) - 前記チタニルフタロシアニン顔料がCu−Kα特性X線によるX線回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、22.6°、24.5°、25.4°、28.7°に顕著な回折ピークを有し、且つ最大回折ピークが7.5°又は28.7°であることを特徴とする有機感光体。
- 前記電荷輸送層の主たるバインダー樹脂がポリカーボネートであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機感光体。
- 導電性支持体と電荷発生層の間に中間層を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機感光体。
- 前記中間層がN型半導性微粒子とバインダー樹脂を含有していることを特徴とする請求項11記載の有機感光体。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機感光体を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
- 請求項13に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
- 少なくとも請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機感光体と帯電器、像露光器、現像器、転写器、クリーニング器の少なくとも1つを一体として有しており、画像形成装置に出し入れ可能に構成されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
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