JP3950038B2 - 旅行時間予測方法,旅行時間予測装置,旅行時間予測プログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,道路リンクごとに一定時間間隔で収集される交通情報を受信し,その交通情報から作成された旅行時間情報を蓄積し,その蓄積された旅行時間情報から将来の旅行時間を予測する技術に関するものであり,特に,蓄積された旅行時間情報の中から雑音成分に相当する旅行時間を検出して除去することにより,より精度の高い旅行時間を予測することを可能にした旅行時間予測方法,旅行時間予測装置,旅行時間予測プログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的な旅行時間予測装置は,一定期間の交通情報を蓄積する交通情報蓄積部に相当する手段と,蓄積された交通情報に含まれる旅行時間情報を解析し,所定の予測手法およびデータマイニング手法に準じて旅行時間を予測するためのルールを作成する旅行時間予測部に相当する手段を備える。
【0003】
例えば,旅行時間を予測する従来の技術として,決定木を利用した予測技術がある(特許文献1「交通状況予測方法,装置,交通状況予測プログラム,および該プログラムを記録した記録媒体」参照)。
【0004】
この従来技術では,蓄積された旅行時間情報をトレーニングデータとして,交通状況を決定する属性情報と交通状況に影響を与える渋滞に関するルールを情報エントロピーに基づく手法で確定および分類し,その情報に基づき交通状況を予測するための決定木を作成し,作成された決定木に従って将来の交通状況を予測する。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−222484号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
旅行時間情報は,全国の道路に設置された様々な計測装置から測定された交通情報をもとに作成されるので,信号の影響や渋滞状況の計測サンプリング間隔に基づく測定誤差などにより,高周波ノイズに相当する雑音成分を含むことがある。つまり,旅行時間情報には,旅行時間が低い状態が続いた後に一瞬だけ旅行時間が大きくなるといった事象が発生し,その後また,ある程度の低い旅行時間の変動幅内に収まっているといったような事例が数多くみうけられる。
【0007】
例えば,図3に示す旅行時間情報において,時刻が8:20における旅行時間だけが非常に大きな値となっているが,このような事象はしばしば起こる。
【0008】
蓄積された雑音成分を含む旅行時間情報を旅行時間予測装置の旅行時間予測部が入力情報として使用して,旅行時間をある一定のルールに基づく処理により予測を行う場合には,旅行時間情報に含まれる雑音成分により,予測のためのルール作りに関して誤差を含むようになる。
【0009】
決定木を利用した旅行時間の予測の例でいえば,蓄積された旅行時間情報をもとに作成されたトレーニングデータに雑音成分が含まれる場合,このトレーニングデータに含まれる雑音成分が,情報エントロピーを算出する際の誤差となる。したがって,作成された決定木も本来あるべき姿の決定木とは異なったものとなり,予測された旅行時間も誤差を含んだものとなる。
【0010】
本発明は,上記問題点の解決を図り,蓄積された過去の旅行時間情報から雑音成分に相当する旅行時間情報を除去・補正し,旅行時間予測部がより正確な情報をもとに旅行時間情報を処理することで,より予測精度の高い旅行時間の予測を可能にすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は,上記目的を達成するため,道路リンクごとに一定時間間隔で収集される交通情報を受信・蓄積し,その蓄積された交通情報に含まれる過去の旅行時間情報と現在の旅行時間情報とから,将来の旅行時間を予測する場合に,予測のための旅行時間情報を蓄積するにあたり,受信した旅行時間情報の中から雑音成分となる旅行時間情報を検出する過程と,旅行時間情報の中から検出された雑音成分を除去した上で蓄積する過程とを有する。
【0012】
前記雑音成分となる旅行時間情報を検出する過程では,指定されたパラメータによって定められる雑音成分として検出すべき旅行時間情報を特定する条件に従って雑音成分を検出する。
【0013】
また,前記雑音成分となる旅行時間情報を検出する過程では,少なくとも,着目時刻における旅行時間と前時刻における旅行時間との差が,ある閾値より大きく,かつ後時刻における旅行時間と着目時刻における旅行時間との差が,ある閾値より大きいという第1の条件と,前記二つの旅行時間の差の正負の符号が一致しないという第2の条件とを満たす場合に,その着目時刻の旅行時間を雑音成分として検出する。このとき,前記指定されたパラメータによって,前記閾値を定める。
【0014】
さらに,前記旅行時間情報の中から検出された雑音成分を除去したうえで,旅行時間の予測に用いるための旅行時間情報を蓄積する過程では,雑音成分として検出された着目時刻における旅行時間を,前後の時刻および当該着目時刻における旅行時間に基づいて旅行時間を補正することにより旅行時間情報に含まれる雑音成分を除去して保存する。このように補正すれば,さらに良好な結果が得られる。
【0015】
以上の各処理過程により実現される本発明の旅行時間予測方法は,コンピュータとソフトウェアプログラムとで実現できるものであり,そのプログラムは,コンピュータが読み取り可能な可搬媒体メモリ,半導体メモリ等の適当な記録媒体に格納して提供したり,ネットワークを介して提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0017】
〔実施の形態1〕
図1は,本発明の実施の形態1における旅行時間予測装置の例を示す図である。本実施の形態1における旅行時間予測装置10は,旅行時間情報受信蓄積部11と,旅行時間情報蓄積データベース12と,旅行時間情報処理部13と,旅行時間予測部14とを備える。
【0018】
旅行時間情報受信蓄積部11は,道路交通情報センタ20から送られてくる交通情報を,旅行時間の時系列情報である旅行時間情報として旅行時間情報蓄積データベース12に保存する。
【0019】
図2は,本実施の形態1における交通情報の例を示す図である。この図の例は時刻ごとの交通情報の例であり,各道路リンクに対応付けて,その時点の旅行時間と,各渋滞区間の渋滞情報(渋滞始点位置,渋滞長,渋滞度)とが記録されている。ここで,渋滞始点位置としては,例えば,道路リンク終端からの距離が用いられ,また,渋滞度としては,例えば,「1=渋滞なし,2=混雑,3=渋滞,4=大渋滞」といったような渋滞の程度を表す数値が用いられる。
【0020】
図3は,本実施の形態1における旅行時間情報の例を示す図である。図3に示す旅行時間情報は,図2に示すような交通情報から,ある道路リンクについて各時刻の旅行時間を抽出し,その時刻と旅行時間とを対応付けて時系列に並べたものである。図3において,時刻が8:20のときだけ旅行時間が特に大きな値を示しており,これは旅行時間の雑音成分と考えられる。なお,旅行時間情報の形態は,図3の例に限定されるわけではなく,他の形態でもよい。
【0021】
旅行時間情報処理部13は,蓄積された旅行時間情報を旅行時間情報蓄積データベース12から取得し,旅行時間情報に含まれる高周波の雑音成分を認識処理することによって検出し,その雑音成分を除去および補正する。
【0022】
雑音成分を除去・補正した旅行時間情報は,図3に示す旅行時間情報と同じフォーマットで,目的のファイルに旅行時間情報蓄積データベース12として書き出す。必要に応じて,雑音成分を除去・補正する前の旅行時間情報と異なるファイルに書き出してもかまわないし,同じファイル(元の旅行時間情報蓄積データベース12のファイル)を書き換えてもかまわない。
【0023】
旅行時間情報処理部13における処理の流れについて,具体的に説明する。以下の説明において,旅行時間情報におけるi(1,2,…)は,各時刻と旅行時間との組み合わせごとに時刻の早い順に振られた番号を示す。i番目の時刻をT(i)とし,時刻T(i)における旅行時間をJt(i)とする。
【0024】
本実施の形態1では,雑音成分の検出および補正のためのパラメータとして,あらかじめ指定されたα,βの2つのパラメータを用いる。これらのパラメータを,状況もしくはシステムに応じて適宜入力して指定することができる入力手段を設けることもできる。
【0025】
パラメータαは,雑音成分を検出する際に使用するパラメータであり,これは前後の時刻の旅行時間の差が指定された旅行時間より大きい場合に雑音成分とする旅行時間の変動の大きさを示すパラメータである。例えば,現時刻T(i)の旅行時間と前時刻T(i−1)の旅行時間との差および現時刻T(i)の旅行時間と後時刻T(i+1)(またはT(i+j),j≧2のこともある)の旅行時間との差が指定された差より大きい場合に,現時刻T(i)の旅行時間Jt(i)を雑音成分とみなすが,パラメータαは,このための旅行時間の変動の大きさに対するパラメータである。パラメータαによる雑音成分の検出について,図4を用いて説明する。
【0026】
図4は,本実施の形態1における雑音成分の検出を説明する図である。本実施の形態1おける基本的な雑音成分の検出方法として,図4に示すように,Jt(i)をJt(i−1)およびJt(i+1)と比較する方法を用いる。この方法では,Jt(i)−Jt(i−1)およびJt(i+1)−Jt(i)の値の正負が逆であり,かつ絶対値|Jt(i)−Jt(i−1)|および|Jt(i+1)−Jt(i)|の値がともに所定の期間の旅行時間(この例では日中の旅行時間)の分散値Vのα倍以上であった場合に,Jt(i)を高周波の雑音成分として認識する。本実施の形態1では,道路リンクごとの分散値Vにパラメータαを掛けたものを閾値として用いているが,これに限定されず,例えば標準偏差ρにパラメータαを掛けたものを閾値として用いてもよい。
【0027】
また,パラメータβは,指定した期間(例えば,β=4のときは,Jt(i−1),Jt(i),Jt(i+1),Jt(i+2)の期間)よりも短い期間の変動を雑音成分とするための変動期間に対するパラメータである。すなわち,変動期間がβ−2より長い場合には,その期間を雑音成分とはみなさない。本実施の形態1では,パラメータβの値は3以上の整数値である。
【0028】
例えば,β=3の場合,Jt(i−1)=10[s],Jt(i)=40[s],Jt(i+1)=12[s]であれば,Jt(i)だけが特に大きな値を示しているので,これを雑音成分として認識する。しかし,Jt(i−1)=10[s],Jt(i)=40[s],Jt(i+1)=40[s],Jt(i+2)=12[s] と続く場合には,β=3であれば,Jt(i),Jt(i+1)を雑音成分とはみなさない。
【0029】
もし,Jt(i−1)=10[s],Jt(i)=40[s],Jt(i+1)=40[s],Jt(i+2)=12[s] と続く場合に,β=4であれば,旅行時間が40秒である変動期間の持続時間が(β−2)ステップ以内であるので,Jt(i)は雑音成分と認識される。このとき,Jt(i+1)も雑音成分と認識される。
【0030】
また,Jt(i−1)=10[s],Jt(i)=40[s],Jt(i+1)=40[s],Jt(i+2)=40[s] ,Jt(i+3)=12[s] と続く場合,Jt(i)〜Jt(i+2)の3ステップに渡って連続して大きな値になっており,β=5であればJt(i)が雑音成分として認識されるが,β=3,β=4では,Jt(i)が雑音成分として認識されない。
【0031】
図5は,本実施の形態1における旅行時間情報処理フローチャート(1)である。旅行時間情報処理部13は,まず,指定されたパラメータαおよびパラメータβを読み込み,時刻をポイントする変数iをi=2に初期化し,パラメータβの期間における雑音成分の持続を調べるための変数tempβをtempβ=3に初期化する(ステップS10)。処理対象の旅行時間情報における旅行時間の分散値Vが既知でない場合には(ステップS11),蓄積された旅行時間情報から所定の期間の旅行時間を取得し,その分散値Vを求める(ステップS12)。既知であれば,以下の処理でその既知の分散値Vを用いる。
【0032】
次に,変数iの値からすべての時刻について旅行時間情報を処理したか否かを判定し(ステップS13),時刻の最後まで処理したならばステップS21へ進む。時刻が最後でない場合には,蓄積された旅行時間情報(旅行時間情報蓄積データベース12)の時刻T(i−1)番目の旅行時間からβステップ分の旅行時間を読み込む(ステップS14)。ただし,βステップ分の旅行時間のうち,すでに読み込まれている旅行時間のデータがあれば,その読み込みは省略することができる。
【0033】
次に,β≧tempβであるか否かを判定し(ステップS15),β≧tempβであれば,Jt(i−1),Jt(i),Jt(i+tempβ−2),パラメータα,分散値Vを引数とする雑音成分認識関数を用いて雑音成分認識処理を行う(ステップS16)。雑音成分認識処理の詳細については,後述する。
【0034】
雑音成分認識処理の結果により雑音成分であると認識されなければ(ステップS17),tempβを+1インクリメントし(ステップS18),ステップS15へ戻る。雑音成分認識処理の結果により雑音成分であると認識されたならば,Jt(i−1),Jt(i),…,Jt(i+tempβ−2)の値を用いて,Jt(i),…,Jt(i+tempβ−3)の値を補完する(ステップS19)。その後,iを+1インクリメントし,またtempβをtempβ=3に戻し,ステップS13の処理へ戻る。
【0035】
ステップS15においてβ≧tempβでなければ,ステップS20へ進み,同様に処理を繰り返す。ステップS13において,時刻が最後になり,処理対象の旅行時間情報が終了したら,雑音成分が補完された旅行時間情報をファイルに書き出し(ステップS21),処理を終了する。
【0036】
ここで,ステップS19における補完では,例えば,Jt(i)が雑音成分であったとき,その雑音成分Jt(i)を,Jt(i−1)とJt(i+tempβ−2)により所定のルールに従い補完する。平均をとって補完してもかまわないし,Jt(i)←{Jt(i)×2+Jt(i−1)+Jt(i+tempβ−2)}/4といったJt(i−1),Jt(i),Jt(i+tempβ−2)からなる式により補完してもかまわない。
【0037】
例えばβ=3で,Jt(i)が雑音成分と認識されたとき,Jt(i)は,
{Jt(i)+Jt(i−1)+Jt(i+1)}/3,または,
{Jt(i)×2+Jt(i−1)+Jt(i+1)}/4
というような値に補正される。
【0038】
雑音成分認識処理について詳しく説明する。例えば,β=3の場合,Jt(i−1),Jt(i),Jt(i+1)の3ステップの連続した時刻にまたがる範囲において雑音成分の認識を行う。β=4の場合には,上記β=3の場合と同様に,まず,Jt(i−1),Jt(i),Jt(i+1)の3ステップに渡る範囲にて,雑音成分の認識を行う。その際,雑音成分の認識は,Jt(i)−Jt(i−1)およびJt(i+1)−Jt(i)の2値について,値の正負や絶対値から雑音成分かどうかを判別することにより行う。次に,Jt(i−1)とJt(i+1)間に雑音成分がない場合には,Jt(i)−Jt(i−1)とJt(i+2)−Jt(i)の2値において同様の雑音成分の認識を行う。このときに,これら2値の関係から,雑音成分が存在すると認識された場合には,雑音成分はJt(i)およびJt(i+1)に渡るものと判断し,Jt(i)とJt(i+1)の値を補完する。
【0039】
また,β=5の場合も同様に,Jt(i)−Jt(i−1)とJt(i+1)−Jt(i)の2値間で雑音成分の認識を行った後,雑音成分がないと認識された場合には,Jt(i)−Jt(i−1)とJt(i+2)−Jt(i)の2値間で雑音成分の認識を行い,さらに雑音成分がないと認識された場合には,Jt(i)−Jt(i−1)とJt(i+3)−Jt(i)の2値間で雑音成分の認識を行う。Jt(i)−Jt(i−1)とJt(i+3)−Jt(i)の2値間で雑音成分が認識された場合,その間のJt(i),Jt(i+1),Jt(i+2)が雑音成分であると判断し,これらの値をJt(i−1)およびJt(i+3)の値により所定のルール(補正式)で補完する。
【0040】
図6は,本実施の形態1における雑音成分認識処理フローチャートである。図6の雑音成分認識処理は,図5のステップS16で用いられた雑音成分認識関数による処理である。まず,雑音成分認識関数は,引数として,Jt(i−1),Jt(i),Jt(i+tempβ−2),パラメータα,分散値Vを受け取る(ステップS30)。
【0041】
{Jt(i)−Jt(i−1)}×{Jt(i+tempβ−2)−Jt(i)}≦0が成り立つか否かを判定し(ステップS31),成り立たなければ,雑音成分ではないとの戻り値を返し(ステップS32),処理を終了する。
【0042】
ステップS31において,条件が成り立てば,|Jt(i)−Jt(i−1)|>αVかつ|Jt(i+tempβ−2)−Jt(i)|>αVが成り立つか否かを判定し(ステップS33),成り立たなければ,雑音成分ではないとの戻り値を返し(ステップS32),処理を終了する。
【0043】
ステップS33において,条件が成り立てば,雑音成分であるとの戻り値を返し(ステップS34),処理を終了する。
【0044】
図7は,本実施の形態1における旅行時間情報処理フローチャート(2)である。図5に示した旅行時間情報処理フローチャートでは,前時刻の旅行時間のフィルタリングによってノイズ(雑音成分)が消去された結果が,そのまま次の時刻のフィルタリングのための情報となっているが,図7に示す旅行時間情報処理フローチャートでは,前時刻のフィルタリングによる処理結果を,次の雑音成分の認識処理に反映させずに,次の時刻の処理を進めるようにしている。
【0045】
図7に示す旅行時間情報処理部13の処理において,前述した図5の処理と異なるのは,図5のステップS19の代わりに図7のステップS49において,Jt(i−1),Jt(i),…,Jt(i+tempβ−2)の補完値を一時記憶領域に時刻情報とともに記憶しておく点と,図5のステップS21の前に,図7のステップS51において,一時記憶領域の時刻情報と補完値をもとに旅行時間を補完し,ステップS52により補完された旅行時間情報を目的のファイルに書き出す点である。他の部分については,図5で説明した処理と同様である。
【0046】
旅行時間予測部14は,雑音成分が除去された旅行時間情報に従って,将来の旅行時間を予測する。決定木を作成するためのプログラムは,入力情報として,現在および過去の旅行時間情報蓄積データベース12から,フィルタリングされた旅行時間情報を旅行時間時系列データとして読み込み,決定木作成用のトレーニングデータを作成し,そのデータをもとに決定木を作成する。決定木作成方法については,例えば,文献「J.Rossquinlan,"C4.5: Programs for machine learning(Morgan Kaufmann Series in Machine Learning)",Morgan Kaufmann Publishers」に詳しい。
【0047】
図8に示す旅行時間予測部14の構成例に従って,旅行時間予測部14の処理をさらに詳しく説明する。本実施の形態1における旅行時間予測部14は,決定木作成用データ作成部141と,決定木作成部142と,予測部143と,予測情報要求部144とを備える。
【0048】
旅行時間予測部14において,決定木作成用データ作成部141は,旅行時間情報蓄積データベース12から,フィルタリングされた旅行時間情報を旅行時間時系列データ145として読み込む。このとき,旅行時間情報に付随する曜日,時刻,五・十日であるか否か,雨量などの情報である属性情報時系列データ146を同時に読み込む。これらのデータをもとに,決定木作成用データ作成部141は,予測先時刻ごとに決定木作成用データ147を作成する。
【0049】
ここで,決定木作成用データ147は,属性情報および旅行時間と予測先時刻における旅行時間をCSV(comma-separated value )化したものである。例えば,属性値に曜日,時刻をとり,現在の旅行時間から30分先の旅行時間を予測する場合における決定木作成用データ147は,曜日,時刻,旅行時間,30分先の旅行時間を時系列化したCSVファイルとなる。
【0050】
決定木作成部142は,決定木作成用データ147を読み込み,その決定木作成用データ147から予測のためのルールを抽出し,決定木データ148として保存する。ここで,決定木データ148の作成には,前述の特開2002−222484号公報(交通状況予測方法,装置,交通状況予測プログラム,および該プログラムを記録した記録媒体)に示されている方法などを用いればよい。
【0051】
予測部143は,予測情報要求部144から,どのリンクの何分先の予測値が必要なのかのリクエストを受け,それに応じて該当する決定木データ148を読み込む。読み込んだ決定木データ148に記述されている属性情報に従って,現在の属性情報と比較し,旅行時間予測データ149を得る。
【0052】
〔実施の形態2〕
本発明における実施の形態2について説明する。本実施の形態2において,前述の実施の形態1と異なるのは,旅行時間情報処理部13にて行う処理であり,それ以外の部分については実施の形態1と同じである。本実施の形態2は,前述の実施の形態1のような雑音成分認識処理を行わず,全時刻の旅行時間に雑音成分が含まれるものとして,前後の旅行時間情報から補正することにより,該当時刻における旅行時間の雑音成分を除去するものである。
【0053】
図9は,本実施の形態2における旅行時間情報処理フローチャートである。旅行時間情報処理部13は,まず,時刻をポイントする変数iをi=2に初期化する(ステップS60)。次に,最後の時刻まで処理が終了したかどうかを判定し(ステップS61),処理が終了したならば,ステップS65へ進む。
【0054】
処理済み旅行時間の時刻が最後でなければ,蓄積された旅行時間情報の時刻T(i−1)番目からβステップ(βは与えられたパラメータ)分の旅行時間Jt(i−1),Jt(i),…,Jt(i+β−2)を読み込み(ステップS62),Jt(i)の値を所定の補正式に基づき補正する(ステップS63)。次に,iを+1インクリメントし(ステップS64),ステップS61に戻って最後の時刻になるまで処理を繰り返す。
【0055】
最後の時刻まで処理が終了したならば,ステップS63において雑音成分が補完された旅行時間情報をファイルに書き出し(ステップS65),処理を終了する。
【0056】
ステップS63で用いる補正式としては,例えばβ=3の場合,
Jt(i)={Jt(i−1)+Jt(i)+Jt(i+1)}/3
という式を用いたり,
Jt(i)={Jt(i−1)+Jt(i)×2+Jt(i+1)}/4
という式などを用いることができる。
【0057】
β=4の場合には,例えば,
Jt(i)={Jt(i−1)+Jt(i)+Jt(i+1)+Jt(i+2)}/4
という式を用いたり,
Jt(i)={Jt(i−1)+Jt(i)×2+Jt(i+1)+Jt(i+2)}/5
という式などを用いることができる。これらの補正式は一例であり,雑音成分の統計的な解析により適切な補正式を決定または選択することは設計的事項である。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明を用いることにより,蓄積された過去の旅行時間情報から,雑音成分に相当する旅行時間情報を除去し,旅行時間予測部がより正確な情報をもとに旅行時間情報を処理することで,より予測精度の高い旅行時間予測方法を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における旅行時間予測装置の例を示す図である。
【図2】本実施の形態1における交通情報の例を示す図である。
【図3】本実施の形態1における旅行時間情報の例を示す図である。
【図4】本実施の形態1における雑音成分の検出を説明する図である。
【図5】本実施の形態1における旅行時間情報処理フローチャート(1)である。
【図6】本実施の形態1における雑音成分認識処理フローチャートである。
【図7】本実施の形態1における旅行時間情報処理フローチャート(2)である。
【図8】本実施の形態1における旅行時間予測部の構成例を示す図である。
【図9】本実施の形態2における旅行時間情報処理フローチャートである。
【符号の説明】
10 旅行時間予測装置
11 旅行時間情報受信蓄積部
12 旅行時間情報蓄積データベース
13 旅行時間情報処理部
14 旅行時間予測部
20 道路交通情報センタ
Claims (5)
- 道路リンクごとに所定の時間間隔で収集される交通情報を蓄積し,蓄積された交通情報に含まれる旅行時間情報から,将来の旅行時間を予測する旅行時間予測方法であって,
予測のための旅行時間情報を蓄積するにあたり,前記交通情報に含まれる旅行時間情報の中から,指定されたパラメータによって定められる雑音成分として検出すべき旅行時間情報を特定する条件に従って雑音成分となる旅行時間情報を検出する過程と,
旅行時間情報の中から検出された雑音成分を除去したうえで,旅行時間の予測に用いるための旅行時間情報を蓄積する過程とを有し,
前記雑音成分となる旅行時間情報を検出する過程では,少なくとも,検出対象となっている着目時刻における旅行時間と前時刻における旅行時間との差が,ある閾値より大きく,かつ後時刻における旅行時間と着目時刻における旅行時間との差が,ある閾値より大きいという第1の条件と,前記二つの旅行時間の差の正負の符号が一致しないという第2の条件とを満たす場合に,その着目時刻の旅行時間を雑音成分とみなし,
前記指定されたパラメータを,前記閾値を定めるためのパラメータとして用いる
ことを特徴とする旅行時間予測方法。 - 請求項1記載の旅行時間予測方法において,
前記旅行時間情報の中から検出された雑音成分を除去したうえで,旅行時間の予測に用いるための旅行時間情報を蓄積する過程では,雑音成分として検出された着目時刻における旅行時間を,前後の時刻および当該着目時刻における旅行時間に基づいて旅行時間を補正することにより旅行時間情報に含まれる雑音成分を除去して保存する
ことを特徴とする旅行時間予測方法。 - 道路リンクごとに所定の時間間隔で収集される交通情報を蓄積し,蓄積された交通情報に含まれる旅行時間情報から,将来の旅行時間を予測する旅行時間予測装置であって,
予測のための旅行時間情報を蓄積するにあたり,前記交通情報に含まれる旅行時間情報の中から,指定されたパラメータによって定められる雑音成分として検出すべき旅行時間情報を特定する条件に従って雑音成分となる旅行時間情報を検出し,旅行時間情報の中から検出された雑音成分を除去する手段と,
旅行時間の予測に用いるための前記雑音成分が除去された旅行時間情報を蓄積する手段と,
前記蓄積された旅行時間情報を用いて予測先時刻の旅行時間を予測する手段とを備え,
前記雑音成分を除去する手段は,前記雑音成分の検出にあたって,少なくとも,検出対象となっている着目時刻における旅行時間と前時刻における旅行時間との差が,ある閾値より大きく,かつ後時刻における旅行時間と着目時刻における旅行時間との差が,ある閾値より大きいという第1の条件と,前記二つの旅行時間の差の正負の符号が一致しないという第2の条件とを満たす場合に,その着目時刻の旅行時間を雑音成分とみなし,前記指定されたパラメータを,前記閾値を定めるためのパラメータとして用いる手段である
ことを特徴とする旅行時間予測装置。 - 請求項1または請求項2に記載された旅行時間予測方法を,コンピュータに実行させるための旅行時間予測プログラム。
- 請求項4記載の旅行時間予測プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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