JP3948914B2 - 液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自発分極を有する液晶物質を用い、スイッチング素子のオン/オフ駆動によって画像を表示する液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のいわゆる情報化社会の進展に伴って、パーソナルコンピュータ,PDA(Personal Digital Assistants)等に代表される電子機器が広く使用されるようになっている。更にこのような電子機器の普及によって、オフィスでも屋外でも使用可能な携帯型の需要が発生しており、それらの小型・軽量化が要望されるようになっている。そのような目的を達成するための手段の一つとして液晶表示装置が広く使用されるようになっている。液晶表示装置は、単に小型・軽量化のみならず、バッテリ駆動される携帯型の電子機器の低消費電力化のためには必要不可欠な技術である。
【0003】
ところで、液晶表示装置は大別すると反射型と透過型とに分類される。反射型液晶表示装置は液晶パネルの前面から入射した光線を液晶パネルの背面で反射させてその反射光で画像を視認させる構成であり、透過型は液晶パネルの背面に備えられた光源(バックライト)からの透過光で画像を視認させる構成である。反射型は環境条件によって反射光量が一定しないため視認性に劣るので、特に、マルチカラーまたはフルカラー表示を行うパーソナルコンピュータ等の表示装置としては一般的に透過型の液晶表示装置が使用されている。
【0004】
一方、現在のカラー液晶表示装置は、使用される液晶物質の面からSTN(Super Twisted Nematic)タイプとTFT−TN(Thin Film Transistor-Twisted Nematic)タイプとに一般的に分類される。STNタイプは製造コストは比較的安価であるが、クロストークが発生し易く、また応答速度が比較的遅いため、動画の表示には適さないという問題がある。一方、TFT−TNタイプは、STNタイプに比して表示品質は高いが、液晶パネルの光透過率が現状では4%程度しかないため高輝度のバックライトが必要になる。このため、TFT−TNタイプではバックライトによる消費電力が大きくなってバッテリ電源を携帯する場合の使用には問題がある。また、カラーフィルタによるカラー表示であるため、1画素を3つの副画素で構成しなければならず、高精細化が困難であって、その表示色純度も十分ではないという問題もある。
【0005】
このような問題を解決するために、本発明者等はフィールド・シーケンシャル方式の液晶表示装置を開発している。このフィールド・シーケンシャル方式の液晶表示装置は、カラーフィルタ方式の液晶表示装置と比べて、副画素を必要としないため、より精度が高い表示が容易に実現可能であり、また、カラーフィルタを使わずに光源の発光色をそのまま表示に利用できるため、表示色純度にも優れる。更に光利用効率も高いので、消費電力が少なくて済むという利点も有している。しかしながら、フィールド・シーケンシャル方式の液晶表示装置を実現するためには、液晶の高速応答性が必須である。そこで、本発明者等は、上述したような優れた利点を有するフィールド・シーケンシャル方式の液晶表示装置、または、カラーフィルタ方式の液晶表示装置の高速応答化を図るべく、従来に比べて100〜1000倍の高速応答を期待できる自発分極を有する強誘電性液晶等の液晶のTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子による駆動を研究開発している。
【0006】
強誘電性液晶は、図11に示すように、電圧印加によってその液晶分子の長軸方向が2θだけ変化する。強誘電性液晶を挟持した液晶パネルを偏光軸が直交した2枚の偏光板で挾み、液晶分子の長軸方向の変化による複屈折を利用して、透過光強度を変化させる。強誘電性液晶をTFT等のスイッチング素子にて駆動した場合に、スイッチング素子を介して画素に注入された(蓄積された)電荷量に応じた自発分極のスイッチングが生じて、透過光強度は変化する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、TFT等のスイッチング素子にて自発分極を有する強誘電性液晶等の液晶を駆動する従来の液晶表示装置にあっては、単位面積あたりの自発分極の大きさをPs、各画素の電極面積をAとした場合に、2Ps・A(自発分極の完全反転に伴う反転電流の総電荷量)を、スイッチング素子を介して各画素に注入される電荷量Q以下としている。即ち、2Ps・A≦Qの条件を満たすように、液晶物質,画素電極,TFT等の設計を行っている。
【0008】
従来ではこのように、液晶のコーン角2θ(θ:チルト角)を45°以下に設定し、2Ps・A≦Qの条件にて、自発分極を完全反転させて、最大透過光強度を得ている。よって、7V以下の低い印加電圧では、上記条件を満たす自発分極の大きさPsが8nC/cm2 以下と小さくなり、Psをあまり大きくできないために応答性が遅くなり、応答性、特に低温における応答性の点で自発分極の大きさの増大が求められている。また、液晶物質の選択自由度が低いという問題がある。応答性及び選択できる液晶物質の関係から、自発分極が大きい液晶物質を使用した場合には、Qを大きくしなければならず、印加電圧が高くなるという問題がある。また、図12に示すように、自発分極のスイッチングの終わり近傍にあっては、液晶の反転による光学軸の変化が小さいため、印加電圧の増加による透過光強度の変化の割合が小さくなり、最大透過光強度を得るためには高い印加電圧が必要となる。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、大きな自発分極を有する液晶物質を使用でき、その液晶物質への印加電圧を低く抑えることができる液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る液晶表示素子は、対向する2枚の基板間に自発分極を有する液晶物質を有し、前記一方の基板内面に夫々が各画素に対応した複数の電極及びスイッチング素子を設けた液晶表示素子において、前記液晶物質は強誘電性液晶物質であり、ハーフV字特性を示すアナログ階調方式を有しており、表示データの書込み時にあって、前記各スイッチング素子のスイッチングにより前記各画素に注入される最大電荷量が常に0以上であり、かつ、前記液晶物質の自発分極の完全反転に伴う各画素あたりの反転電流の総電荷量より常に小さいことを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る液晶表示素子は、対向する2枚の基板間に自発分極を有する液晶物質を有し、前記一方の基板内面に夫々が各画素に対応した複数の電極及びスイッチング素子を設けた液晶表示素子において、前記液晶物質は強誘電性液晶物質であり、ハーフV字特性を示すアナログ階調方式を有しており、前記各スイッチング素子のスイッチングにより前記各画素に注入される最大電荷量をQ、前記各電極の面積をA、前記自発分極の単位面積あたりの大きさをPsとした場合に、表示データの書込み時にあって、常に、2Ps・A>Q≧0の関係を満たすことを特徴とする。
【0012】
従来では、自発分極の大きさPsが2Ps・A≦Qの条件を満たすように液晶物質等を設計し、電圧印加によって自発分極が完全に反転するように液晶物質を駆動していた。本発明者等は、自発分極を有する液晶物質、特に強誘電性液晶のTFT駆動による挙動を詳細に検討した結果、上記条件とは逆となる、スイッチング素子のスイッチングにより各画素に注入される最大電荷量が液晶物質の自発分極の完全反転に伴う反転電流の総電荷量より小さくなる条件、つまり2Ps・A>Qの条件でも、TFTによる強誘電性液晶の駆動が可能であることを知見した。
【0013】
そこで、第1,第2発明にあっては、スイッチング素子のスイッチングにより各画素に注入される最大電荷量が液晶物質の自発分極の完全反転に伴う反転電流の総電荷量より小さくなる条件、つまり2Ps・A>Qの条件を満たすように、液晶物質等の設計を行い、自発分極を大きくすることにより応答性の向上を図る。また、自発分極を完全反転させない範囲で表示を行うことにより、自発分極のスイッチングの終わり近傍での電圧印加の増加による透過光強度の変化の割合が小さくなる部分を表示に利用しないようにして、印加電圧の低減化を図る。また、液晶物質として強誘電性液晶物質を使用しており、高速な応答性を実現できる。
【0014】
第3発明に係る液晶表示素子は、第1または第2発明において、前記液晶物質のコーン角は45°以上であることを特徴とする。
【0015】
第3発明にあっては、液晶物質のコーン角を45°以上にしており、より良好な特性を得ることができる。コーン角を45°以上にすることにより、図13に示すような印加電圧−透過光強度の関係において極大値が存在する。この極大値を呈する液晶物質のスイッチング角度は略45°である。よって、液晶物質のコーン角を45°以上として、透過光強度が略0から略最大となる領域にて表示を行うことが好ましい。この際、2Ps・A≦Qを満たして液晶物質のコーン角を45°とした従来の液晶表示素子に比べて、2Ps・A>Qを満たして液晶物質のコーン角を45°以上とした本発明の液晶表示素子では、自発分極のスイッチングの終わり近傍での電圧印加の増加による透過光強度の変化の割合が小さくなる部分を表示に利用しないので、印加電圧の低減化を図れる。
【0018】
第4発明に係る液晶表示素子は、第1〜第3発明の何れかにおいて、前記スイッチング素子の前記液晶物質駆動電極側に蓄積付加容量を具備することを特徴とする。
【0019】
第4発明にあっては、スイッチング素子の液晶物質駆動電極側に蓄積付加容量を具備しており、最大電荷量Qを大きくでき、これに伴って自発分極の単位面積あたりの大きさPsも大きくできる。
【0020】
第5発明に係る液晶表示素子は、第1〜第4発明の何れかにおいて、駆動時の前記液晶物質の光学軸の変化が45°以下であることを特徴とする。
【0021】
第5発明にあっては、液晶物質の駆動時における光学軸の変化を45°以下にする。よって、安定した液晶物質の駆動を行える。
【0022】
第6発明に係る液晶表示素子は、第1〜第4発明の何れかにおいて、前記液晶物質の光透過率が最大となるときの前記液晶物質への印加電圧をVとした場合、0〜±Vの印加電圧範囲にて前記液晶物質の駆動を行うようにしたことを特徴とする。
【0023】
第6発明にあっては、印加電圧を0〜Vまたは−V〜0(V:光透過率が最大となるときの印加電圧)の範囲にて液晶物質を駆動する。よって、安定した液晶物質の駆動を行える。
【0026】
第7発明に係る液晶表示素子は、第1〜第6発明の何れかにおいて、3原色を発光する光源を有するバックライトを備えており、前記スイッチング素子のオン/オフ駆動に同期して前記光源の発光色を時分割的に切換えることによって、カラー表示を行うべくなしてあることを特徴とする。
【0027】
第7発明にあっては、3原色を発光する光源を有するバックライトを備えており、スイッチング素子のオン/オフ駆動に同期してバックライトの発光色を時分割的に切換えることにより、フィールド・シーケンシャル方式にてカラー表示を行うことができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0029】
図1は本発明による液晶表示装置の回路構成を示すブロック図、図2はその液晶パネル及びバックライトの模式的断面図、図3は液晶表示装置の全体の構成例を示す模式図、図4は液晶パネルのセル構成例を示す図、並びに、図5はバックライトの光源であるLEDアレイの構成例を示す図である。
【0030】
図2及び図3に示されているように、液晶パネル21は上層(表面)側から下層(背面)側に、偏光フィルム1,ガラス基板2,共通電極3,ガラス基板4,偏光フィルム5をこの順に積層して構成されており、ガラス基板4の共通電極3側の面にはマトリクス状に配列された画素電極(ピクセル電極)40,40…が形成されている。
【0031】
これら共通電極3及び画素電極40,40…間には後述するデータドライバ32及びスキャンドライバ33等よりなる駆動部50が接続されている。データドライバ32は、信号線42を介してTFT(Thin Film Transistor)41と接続されており、スキャンドライバ33は、走査線43を介してTFT41と接続されている。TFT41はデータドライバ32及びスキャンドライバ33によりオン/オフ制御される。また個々の画素電極40,40…は、TFT41によりオン/オフ制御される。そのため、信号線42及びTFT41を介して与えられるデータドライバ32からの信号により、個々の画素の透過光強度が制御される。なお、図4に示すように、各画素に注入される電荷量を大きくするべく、液晶セルCLCと並列に蓄積付加容量CS をTFT41に接続させておく構成(後述の実施例2)も可能である。
【0032】
ガラス基板4上の画素電極40,40…の上面には配向膜12が、共通電極3の下面には配向膜11が夫々配置され、これらの配向膜11,12間に液晶物質が充填されて液晶層13が形成される。なお、14は液晶層13の層厚を保持するためのスペーサである。
【0033】
バックライト22は、液晶パネル21の下層(背面)側に位置し、発光領域を構成する導光及び光拡散板6の端面に臨ませた状態でLEDアレイ7が備えられている。このLEDアレイ7は図5に示されているように、導光及び光拡散板6と対向する面に3原色、即ち赤(R),緑(G),青(B)の各色を発光するLEDが順次的且つ反復して配列されている。そして、後述するフィールド・シーケンシャル方式における赤,緑,青の各サブフレームにおいて、赤,緑,青のLEDを夫々発光させる。導光及び光拡散板6はこのLEDアレイ7の各LEDから発光される光を自身の表面全体に導光すると共に上面へ拡散することにより、発光領域として機能する。
【0034】
図1において、30は、外部の例えばパーソナルコンピュータから表示データDDが入力され、入力された表示データDDを記憶する画像メモリ部であり、31は、同じくパーソナルコンピュータから同期信号SYNが入力され、制御信号CS及びデータ反転制御信号DCSを生成する制御信号発生回路である。画像メモリ部30からは画素データPDが、制御信号発生回路31からはデータ反転制御信号DCSが、夫々データ反転回路36へ出力される。データ反転回路36は、データ反転制御信号DCSに従って、入力された画素データPDを反転させた逆画素データ#PDを生成する。
【0035】
また制御信号発生回路31からは制御信号CSが、基準電圧発生回路34,データドライバ32,スキャンドライバ33及びバックライト制御回路35へ夫々出力される。基準電圧発生回路34は、基準電圧VR1及びVR2を生成し、生成した基準電圧VR1をデータドライバ32へ、基準電圧VR2をスキャンドライバ33へ夫々出力する。データドライバ32は、データ反転回路36を介して画像メモリ部30から受けた画素データPDまたは逆画素データ#PDに基づいて、画素電極40の信号線42に対して信号を出力する。この信号の出力に同期して、スキャンドライバ33は、画素電極40の走査線43をライン毎に順次的に走査する。またバックライト制御回路35は、駆動電圧をバックライト22に与えバックライト22のLEDアレイ7が有している赤,緑,青の各色のLEDを時分割して夫々発光させる。
【0036】
次に、本発明の液晶表示装置の動作について説明する。画像メモリ部30には液晶パネル21により表示されるべき赤,緑,青の各色毎の表示データDDが、パーソナルコンピュータから与えられる。画像メモリ部30は、この表示データDDを一旦記憶した後、制御信号発生回路31から出力される制御信号CSを受け付けた際に、各画素単位のデータである画素データPDを出力する。画像データDDが画像メモリ部30に与えられる際、制御信号発生回路31に同期信号SYNが与えられ、制御信号発生回路31は同期信号SYNが入力された場合に制御信号CS及びデータ反転制御信号DCSを生成し出力する。画像メモリ部30から出力された画素データPDは、データ反転回路36に与えられる。
【0037】
データ反転回路36は、制御信号発生回路31から出力されるデータ反転制御信号DCSがLレベルの場合は画素データPDをそのまま通過させ、一方データ反転制御信号DCSがHレベルの場合は逆画素データ#PDを生成し出力する。従って、制御信号発生回路31では、データ書込み走査時はデータ反転制御信号DCSをLレベルとし、データ消去走査時はデータ反転制御信号DCSをHレベルに設定する。
【0038】
制御信号発生回路31で発生された制御信号CSは、データドライバ32と、スキャンドライバ33と、基準電圧発生回路34と、バックライト制御回路35とに与えられる。基準電圧発生回路34は、制御信号CSを受けた場合に基準電圧VR1及びVR2を生成し、生成した基準電圧VR1をデータドライバ32へ、基準電圧VR2をスキャンドライバ33へ夫々出力する。
【0039】
データドライバ32は、制御信号CSを受けた場合に、データ反転回路36を介して画像メモリ部30から出力された画素データPDまたは逆画素データ#PDに基づいて、画素電極40の信号線42に対して信号を出力する。スキャンドライバ33は、制御信号CSを受けた場合に、画素電極40の走査線43をライン毎に順次的に走査する。データドライバ32からの信号の出力及びスキャンドライバ33の走査に従ってTFT41が駆動し、画素電極40が電圧印加され、画素の透過光強度が制御される。
【0040】
バックライト制御回路35は、制御信号CSを受けた場合に駆動電圧をバックライト22に与えてバックライト22のLEDアレイ7が有している赤,緑,青の各色のLEDを時分割して夫々発光させる。
【0041】
この液晶表示装置における表示制御は、図6に示すフィールド・シーケンシャル方式のタイムチャートに従って行う。図6(a)はバックライト22の各色のLEDの発光タイミング、図6(b)は液晶パネル21の各ラインの走査タイミング、図6(c)は液晶パネル21の発色状態を夫々示す。この例では、1秒間に60フレームの表示を行う。従って、1フレームの期間は1/60秒になり、この1フレームの期間を1/180秒ずつの3サブフレームに分割する。
【0042】
そして、第1番目から第3番目までの夫々のサブフレームにおいて、図6(a)に示すように赤,緑,青のLEDを夫々順次発光させる。このような各色の順次発光に同期して液晶パネル21の各画素をライン単位でスイッチングすることによりカラー表示を行う。なおこの例では、第1番目のサブフレームにおいて赤を、第2番目のサブフレームにおいて緑を、第3番目のサブフレームにおいて青を夫々発光させるようにしているが、この各色の順序はこの赤,緑,青の順に限らず、他の順序であっても良い。
【0043】
一方、図6(b)に示すとおり、液晶パネル21に対しては赤,緑,青の各色のサブフレーム中にデータ走査を2度行う。但し、1回目の走査(データ書込み走査)の開始タイミング(第1ラインへのタイミング)が各サブフレームの開始タイミングと一致するように、また2回目の走査(データ消去走査)の終了タイミング(最終ラインへのタイミング)が各サブフレームの終了タイミングと一致するようにタイミングを調整する。
【0044】
データ書込み走査にあっては、液晶パネル21の各画素には画素データPDに応じた電圧が供給され、透過率の調整が行われる。これによって、フルカラー表示が可能となる。またデータ消去走査にあっては、データ書込み走査時と同電圧で逆極性の電圧が液晶パネル21の各画素に供給され、液晶パネル21の各画素の表示が消去され、液晶への直流成分の印加が防止される。
【0045】
以上のようにして、本発明の液晶表示装置にてフィールド・シーケンシャル方式のカラー表示を行っている。
【0046】
(実施例1)
図2及び図3に示されているような実施例1の液晶パネル21を以下のようにして作製した。画素電極40,40…(画素数:640×480,電極面積A:6×10-5cm2 ,対角:3.2インチ)を有するTFT基板と共通電極3を有するガラス基板2とを洗浄した後、ポリイミドを塗布して200℃で1時間焼成することにより、約200Åのポリイミド膜を配向膜11,12として成膜した。
【0047】
更に、これらの配向膜11,12をレーヨン製の布でラビングし、両者間に平均粒径1.6μmのシリカ製のスペーサ14でギャップを保持した状態で重ね合わせて空パネルを作製した。この空パネルの配向膜11,12間に本発明の仕様に基づく強誘電性液晶物質を封入して液晶層13とした。封入した強誘電性液晶物質の自発分極の大きさPsは11nC/cm2 、コーン角2θは58°であった。作製したパネルをクロスニコル状態の2枚の偏光フィルム1,5で、液晶層13の強誘電性液晶分子が一方に傾いた場合に暗状態になるようにして挟んで液晶パネル21とした。
【0048】
このようにして作製した液晶パネル21の各画素にTFT41のスイッチングを介して電圧を印加した場合の電圧−透過光強度の特性を図7のグラフに表す。透過光強度は、印加電圧が7Vである場合に極大を示した。よって、0〜7Vまたは−7〜0Vの印加電圧の範囲での駆動が適している。7Vの電圧を印加した場合にTFT41のスイッチングを介して各画素に注入された電荷量Qは1.26pCと計算された。自発分極の大きさPsが11nC/cm2 、画素電極40の面積Aが6×10-5cm2 であるので、2Ps・A=1.32pCとなり、2Ps・A>Qを満たしている。
【0049】
また、印加電圧を7Vとした場合に、強誘電性液晶物質の応答によって流れた電流の総電荷量は1.01pCと測定されて、上記1.26pCより少なかった。また、印加電圧が7Vである場合の応答時間は、250μsであった。
【0050】
このような実施例1の液晶パネル21を、上述したバックライト22と組み合わせて、図1に示す回路構成にてフィールド・シーケンシャル方式にて、カラー表示を行った。この際、液晶への印加電圧を0〜±7Vの範囲とした。その結果、明るくて色純度に優れた高品質の表示を実現することができた。
【0051】
(実施例2)
図2,図3及び図4に示されているような実施例2の液晶パネル21を以下のようにして作製した。画素電極40,40…(画素数:640×480,電極面積A:6×10-5cm2 ,蓄積付加容量:0.2pF,対角:3.2インチ)を有するTFT基板と共通電極3を有するガラス基板2とを洗浄した後、ポリイミドを塗布して200℃で1時間焼成することにより、約200Åのポリイミド膜を配向膜11,12として成膜した。
【0052】
更に、これらの配向膜11,12をレーヨン製の布でラビングし、両者間に平均粒径1.6μmのシリカ製のスペーサ14でギャップを保持した状態で重ね合わせて空パネルを作製した。この空パネルの配向膜11,12間に本発明の仕様に基づく強誘電性液晶物質を封入して液晶層13とした。封入した強誘電性液晶物質の自発分極の大きさPsは21nC/cm2 、コーン角2θは66°であった。作製したパネルをクロスニコル状態の2枚の偏光フィルム1,5で、液晶層13の強誘電性液晶分子が一方に傾いた場合に暗状態になるようにして挟んで液晶パネル21とした。
【0053】
このようにして作製した液晶パネル21の各画素にTFT41のスイッチングを介して電圧を印加した場合の印加電圧−透過光強度の特性を図8のグラフに表す。透過光強度は、印加電圧が6Vである場合に極大を示した。よって、0〜6Vまたは−6〜0Vの印加電圧の範囲での駆動が適している。6Vの電圧を印加した場合にTFT41のスイッチングを介して各画素に注入された電荷量Qは蓄積容量の分も含めて2.28pCと計算された。自発分極の大きさPsが21nC/cm2 、画素電極40の面積Aが6×10-5cm2 であるので、2Ps・A=2.52pCとなり、2Ps・A>Qを満たしている。
【0054】
また、印加電圧を6Vとした場合に、強誘電性液晶物質の応答によって流れた電流の総電荷量は1.71pCと測定されて、上記2.28pCより少なかった。また、印加電圧が6Vである場合の応答時間は、140μsであった。
【0055】
このような実施例2の液晶パネル21を、上述したバックライト22と組み合わせて、図1に示す回路構成にてフィールド・シーケンシャル方式にて、カラー表示を行った。この際、液晶への印加電圧を0〜±6Vの範囲とした。その結果、明るくて色純度に優れた高品質の表示を実現することができた。
【0056】
(比較例1)
配向膜11,12間に従来仕様の強誘電性液晶物質を封入する点以外は実施例1と全く同様にして、液晶パネル21を作製した。封入した強誘電性液晶物質の自発分極の大きさPsは10nC/cm2 、コーン角2θは40°であった。作製したパネルをクロスニコル状態の2枚の偏光フィルム1,5で、液晶層13の強誘電性液晶分子が一方に傾いた場合に暗状態になるようにして挟んで液晶パネル21とした。
【0057】
このようにして作製した液晶パネル21の各画素にTFT41のスイッチングを介して電圧を印加した場合の印加電圧−透過光強度の特性を図9のグラフに表す。透過光強度が極大を示すような部分は存在せず、10Vと高い印加電圧にて最大の透過光強度が得られている。また、その透過光強度の最大値も実施例1,2の極大値に比べて小さい。
【0058】
10Vの電圧を印加した場合にTFT41のスイッチングを介して各画素に注入された電荷量Qは1.80pCと計算された。自発分極の大きさPsが10nC/cm2 、画素電極40の面積Aが6×10-5cm2 であるので、2Ps・A=1.20pCとなり、2Ps・A≦Qを満たしている。また、印加電圧が10Vである場合の応答時間は、240μsであった。
【0059】
(比較例2)
配向膜11,12間に従来仕様の強誘電性液晶物質を封入する点以外は実施例1と全く同様にして、液晶パネル21を作製した。封入した強誘電性液晶物質の自発分極の大きさPsは5nC/cm2 、コーン角2θは38°であった。作製したパネルをクロスニコル状態の2枚の偏光フィルム1,5で、液晶層13の強誘電性液晶分子が一方に傾いた場合に暗状態になるようにして挟んで液晶パネル21とした。
【0060】
このようにして作製した液晶パネル21の各画素にTFT41のスイッチングを介して電圧を印加した場合の印加電圧−透過光強度の特性を図10のグラフに表す。透過光強度が極大を示すような部分は存在せず、7Vと低い印加電圧にて最大の透過光強度が得られている。しかし、その透過光強度の最大値は実施例1,2の極大値に比べて小さい。
【0061】
7Vの電圧を印加した場合にTFT41のスイッチングを介して各画素に注入された電荷量Qは1.26pCと計算された。自発分極の大きさPsが5nC/cm2 、画素電極40の面積Aが6×10-5cm2 であるので、2Ps・A=0.60pCとなり、2Ps・A≦Qを満たしている。また、印加電圧が7Vである場合の応答時間は、510μsと長かった。
【0062】
なお、上述した例では、自発分極を有する液晶物質として強誘電性液晶を使用したが、反強誘電性液晶を用いるようにしても良いことは勿論であり、強誘電性液晶としては単安定型,双安定型のどちらでも良い。
【0063】
また、上述した例では、RGB個別の光源を用いたフィールド・シーケンシャル方式にてカラー表示を行うようにしたが、RGBを切換えて発光できる単一の光源を用いることも可能であり、更に、カラーフィルタを用いてカラー表示を行うような構成であっても、本発明を同様に適用できることは勿論である。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、スイッチング素子のスイッチングにより各画素に注入される最大電荷量が,液晶物質の自発分極の完全反転に伴う各画素あたりの反転電流の総電荷量より小さくなる条件、つまり2Ps・A>Qの条件を満たすようにしたので、、大きな自発分極を有する液晶物質を使用することができ、また、高速応答及び低電圧駆動の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶表示装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】液晶パネル及びバックライトの模式的断面図である。
【図3】液晶表示装置の全体の構成例を示す模式図である。
【図4】液晶パネルのセル構成例を示す図である。
【図5】LEDアレイの構成例を示す図である。
【図6】液晶表示装置の表示制御を示すタイムチャートである。
【図7】実施例1による印加電圧−透過光強度特性を示すグラフである。
【図8】実施例2による印加電圧−透過光強度特性を示すグラフである。
【図9】比較例1による印加電圧−透過光強度特性を示すグラフである。
【図10】比較例2による印加電圧−透過光強度特性を示すグラフである。
【図11】強誘電性液晶パネルにおける液晶分子の配列状態を示す図である。
【図12】従来の液晶表示装置による印加電圧−透過光強度特性を示すグラフである。
【図13】本発明の液晶表示装置による印加電圧−透過光強度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
13 液晶層
22 バックライト
21 液晶パネル
40 画素電極
41 TFT
CS 蓄積付加容量
Claims (7)
- 対向する2枚の基板間に自発分極を有する液晶物質を有し、前記一方の基板内面に夫々が各画素に対応した複数の電極及びスイッチング素子を設けた液晶表示素子において、前記液晶物質は強誘電性液晶物質であり、ハーフV字特性を示すアナログ階調方式を有しており、表示データの書込み時にあって、前記各スイッチング素子のスイッチングにより前記各画素に注入される最大電荷量が常に0以上であり、かつ、前記液晶物質の自発分極の完全反転に伴う各画素あたりの反転電流の総電荷量より常に小さいことを特徴とする液晶表示素子。
- 対向する2枚の基板間に自発分極を有する液晶物質を有し、前記一方の基板内面に夫々が各画素に対応した複数の電極及びスイッチング素子を設けた液晶表示素子において、前記液晶物質は強誘電性液晶物質であり、ハーフV字特性を示すアナログ階調方式を有しており、前記各スイッチング素子のスイッチングにより前記各画素に注入される最大電荷量をQ、前記各電極の面積をA、前記自発分極の単位面積あたりの大きさをPsとした場合に、表示データの書込み時にあって、常に、2Ps・A>Q≧0の関係を満たすことを特徴とする液晶表示素子。
- 前記液晶物質のコーン角は45°以上である請求項1または2記載の液晶表示素子。
- 前記スイッチング素子の前記液晶物質駆動電極側に蓄積付加容量を具備する請求項1〜3の何れかに記載の液晶表示素子。
- 駆動時の前記液晶物質の光学軸の変化が45°以下である請求項1〜4の何れかに記載の液晶表示素子。
- 前記液晶物質の光透過率が最大となるときの前記液晶物質への印加電圧をVとした場合、0〜±Vの印加電圧範囲にて前記液晶物質の駆動を行うようにした請求項1〜4の何れかに記載の液晶表示素子。
- 3原色を発光する光源を有するバックライトを備えており、前記スイッチング素子のオン/オフ駆動に同期して前記光源の発光色を時分割的に切換えることによって、カラー表示を行うべくなしてある請求項1〜6の何れかに記載の液晶表示素子。
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