JP3947473B2 - 電子写真感光体、電子写真画像形成方法および電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、電子写真画像形成方法および電子写真装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、ならびにこれを用いる電子写真画像形成方法および電子写真装置に関し、より詳細には、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立可能な電子写真感光体、ならびにこれを用いる電子写真画像形成方法および電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真画像形成方法を用いて画像を形成する複写機、プリンタ、ファクシミリ装置および電子写真製版機などの電子写真装置では、以下のようにして画像を形成する。まず、電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称する)の表面を一様に帯電させ、帯電された感光体の表面に画像情報に応じた露光を施すことによって静電潜像を形成し、形成された静電潜像をトナーなどを含む現像剤で現像して顕像化する。顕像化された画像を、感光体の表面から紙などの被転写体上に転写し、転写された像を定着させることによって画像を形成する。
【0003】
このような電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体は、導電性材料から成る導電性支持体と、導電性支持体上に設けられる感光層とを含んで構成される。感光体の感光層を構成する材料としては、従来から、セレン、硫化カドミウムまたは酸化亜鉛などの無機光導電性材料が知られている。これらの無機光導電性材料を用いた無機系感光体は、暗所で適当な電位に帯電できること、暗所での電荷の逸散が少ないこと、光照射によって速やかに電荷を逸散できることなどの数多くの利点を有する。その反面、種々の欠点も有する。たとえば、セレンを用いたセレン系感光体は、製造する条件が難しく、製造原価が高い。また熱や機械的な衝撃に弱いので、取扱いに注意を要する。硫化カドミウムを用いた硫化カドミウム系感光体および酸化亜鉛を用いた酸化亜鉛系感光体は、湿度の高い環境下で安定した感度を得ることができず、また増感剤として色素を添加した場合には、色素が感光体表面を帯電させる際のコロナ帯電による帯電劣化や露光による光退色を生じるので、長期に渡って安定した特性を提供することができない。また、セレンおよび硫化カドミウムは、人体や環境に対する毒性を有するので、これらを用いた無機系感光体は、使用後には回収され、適切に廃棄される必要がある。
【0004】
このように無機系感光体は多くの欠点を有することから、無機系感光体に代わる感光体として、有機光導電性材料を用いた有機系感光体(Organic
Photoconductor;略称:OPC)が提案されている。たとえば、ポリビニルカルバゾールを始めとする各種有機光導電性ポリマーを用いた感光体がある。しかしながら、これらのポリマーを用いた感光体は、前述の無機光導電性材料を用いた無機系感光体に比べ、感光層の成膜性および軽量性などの点では優れるけれども、感度、耐久性および環境の変化に対する安定性などの点では劣るという欠点を有する。
【0005】
これらの欠点を解消するために種々の研究開発が行われ、感光層に含まれる光導電性材料が担う光導電性機能である電荷発生機能と電荷輸送機能とをそれぞれ別々の物質に分担させた機能分離型感光体が提案されている。機能分離型感光体には、積層型と分散型とがある。積層型の機能分離型感光体では、電荷発生機能を担う電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送機能を担う電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る機能分離型感光層が設けられる。分散型の機能分散型感光体では、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一の層に分散されて成る単層型の感光層が設けられる。このような機能分離型感光体では、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個に選択することができるので、電荷発生物質および電荷輸送物質それぞれの材料選択範囲が広く、帯電特性、感度、残留電位特性、繰返し特性および耐刷性などの電子写真特性が最良になるように物質を組合せることによって、高性能の感光体を提供することができる。また感光層を塗工によって形成することができるので、極めて生産性が高く、安価な感光体を提供することができる。また電荷発生物質を適当に選択することによって、感光体の感光波長域を自在に制御することができる。このように多くの利点を有することから、一般に使用されているほとんどの複写機およびプリンタで機能分離型の有機系感光体が使用されるようになってきている。
【0006】
近年、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置および電子写真製版機などの電子写真装置には、小型化、画像形成速度の高速化および長寿命化が要求されるようになっている。このような電子写真装置では、円筒状または円柱状の導電性支持体の外周面上に感光層を設けた感光体が一般に用いられており、電子写真装置の小型化のためには、感光体の小径化が必要である。しかしながら、径の小さい感光体では、露光位置から現像位置までの距離が短いので、画像形成速度を高速化するために高速で電子写真プロセスを行うと、露光から現像までの時間が短くなり、以下のような問題が生じる。たとえば、応答性の低い感光体、すなわち露光後の表面電位の減衰速度が遅い感光体を用いると、露光によって消去されるべき部分の表面電位が充分に減衰していない状態で現像されることになるので、正規現像の場合には、画像の白地となるべき部分にトナーが付着する地汚れと呼ばれる現象が発生し、反転現像の場合には、画像濃度が低下する。したがって、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させるためには、感光体の応答性の向上が求められる。また、電子写真装置の長寿命化のためには、感光体の長寿命化が求められる。
【0007】
感光体の応答性は、電荷輸送物質の電荷移動度に大きく依存することが知られている。そこで、電荷移動度の高い電荷輸送物質を感光体に使用して応答性を向上させることによって、感光体の小径化と電子写真プロセスの速度向上とを図り、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを実現する技術が提案されている(非特許文献1参照)。また特定の電荷移動度を有する電荷輸送層を備える感光体を用いることによって、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを実現する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
一方、電子写真感光体の帯電性の向上および形成される画像の欠陥の防止などを目的として、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設ける技術がある。好ましい下引き層としては、水溶性ポリビニルアセタール樹脂を含有する下引き層(たとえば、特許文献2参照)、水とアルコールとの混合溶媒に可溶性のポリビニルアセタール樹脂を含有する下引き層(たとえば、特許文献3参照)およびアルコール可溶性ポリアミド樹脂を含有する下引き層(たとえば、特許文献4参照)などが知られている。これらの樹脂を含有する下引き層を備える感光体は、積層型の場合の電荷発生層や電荷輸送層または分散型の場合の単層型の感光層を形成する際に、非水系または非アルコール系の溶媒を使用しても、下地となる下引き層が溶け出さないまたは溶け出しにくいという生産技術上の大きな利点を有する。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−62862号公報
【特許文献2】
特開昭63−178249号公報
【特許文献3】
特開平6−59489号公報
【特許文献4】
特開昭48−47344号公報
【非特許文献1】
白井正治,「レーザ露光用新規OPC技術”IR−ST”」,富士ゼロックステクニカルレポート,第11号,[online],1996年,富士ゼロックス株式会社,[平成14年12月6日検索],インターネット<URL:http://www.fujixerox.co.jp/randd/Tr96/Masaharu_Shirai/M_Shi101J.html>
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2、特許文献3または特許文献4などに記載の感光体に用いられる樹脂は、湿度の低い環境下では体積抵抗が増大するという性質を有するので、これらの樹脂を用いた感光体を、温度が低くかつ湿度の低い環境(以下、このような環境を「低温低湿環境」と称する)下で用いた場合には、残留電位の上昇や応答性の低下が生じ、形成される画像の品質が低下するという問題がある。この低温低湿環境下での画像品質の低下は、感光体を小径化し、高速の電子写真プロセスに用いた場合に、特に顕著に現れる。
【0011】
このような低温低湿環境下における画像品質の低下を抑えるためには、電荷移動度の高い電荷輸送物質を用いて感光体の応答性を向上させることが考えられる。しかしながら、前述の非特許文献1または特許文献1に記載の応答性の高い感光体に用いられる電荷移動度の高い電荷輸送物質を用いても、低温低湿環境下では充分な応答性を得ることはできず、径の小さい感光体を用いて高速で画像を形成した場合には、画像品質が低下する。
【0012】
本発明の目的は、特定の樹脂を含有する下引き層と特定の電荷輸送物質を含有する感光層とを組合せることによって、生産性が高く、かつ低温低湿環境下においても高い応答性を示し、小型で画像形成速度が速く低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現可能な電子写真感光体、ならびにこれを用いる電子写真画像形成方法および電子写真装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性材料から成る導電性支持体と、
前記導電性支持体上に設けられ、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂および水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含有する下引き層と、
前記下引き層上に設けられ、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0014】
【化3】
Figure 0003947473
【0015】
(式中、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
【0016】
本発明に従えば、電子写真感光体の導電性支持体上に設けられる下引き層は、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂および水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含有し、下引き層上に設けられる感光層は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する。導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることによって、導電性支持体から感光層への電荷の注入を防止し、感光層の電荷ブロッキング性を向上させることができるので、感光層の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の部分の表面電荷の減少が抑えられ、画像に点状の欠陥などが発生することを防止することができる。また導電性支持体表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、感光層の成膜性を高めることができる。また感光層の導電性支持体からの剥離を抑え、導電性支持体と感光層との接着性を向上させることができる。また下引き層は、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂および水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含有するので、感光層を形成する際に非水系または非アルコール系の溶媒を用いても、下地となる下引き層は溶け出さないまたは溶け出しにくい。下引き層を非水系または非アルコール系の溶媒に可溶な熱硬化型樹脂で形成する場合、下引き層の形成後に加熱し、下引き層に含有される樹脂を硬化させ、感光層の形成に用いられる非水系または非アルコール系の溶媒に対して不溶性にする必要があるけれども、前述のように、本発明の電子写真感光体に設けられる下引き層は、感光層の形成に非水系または非アルコール系の溶媒を用いても溶け出さないまたは溶け出しにくいので、下引き層の形成後に加熱する必要はない。したがって、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。また、感光層は、前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物を含有するので、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。したがって、電子写真感光体を小型化し、高速の電子写真プロセスに用いた場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することが可能である。このような電子写真感光体を用いることによって、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することができる。
【0017】
また本発明は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする。
【0018】
【化4】
Figure 0003947473
【0019】
(式中、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0020】
本発明に従えば、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物であるので、特に高い電荷移動度を有する。すなわち、感光層は、前記一般式(2)で示される特に高い電荷移動度を有するエナミン化合物を含有するので、低温低湿環境下においてさらに高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。したがって、電子写真装置の画像形成速度をさらに高速化することが可能である。また、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は容易に製造することができるので、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。
【0021】
また本発明は、前記下引き層は、水溶性ポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、下引き層は、水溶性ポリビニルアセタール樹脂を含有するので、感光層を形成する際に非水系溶媒を用いても、下地となる下引き層は溶け出さないまたは溶け出しにくい。下引き層を非水系溶媒に可溶な熱硬化型樹脂で形成する場合、下引き層の形成後に加熱し、下引き層に含有される樹脂を硬化させ、感光層の形成に用いられる非水系溶媒に対して不溶性にする必要があるけれども、前述のように、本発明の電子写真感光体に設けられる下引き層は、感光層の形成に非水系溶媒を用いても溶け出さないまたは溶け出しにくいので、下引き層の形成後に加熱する必要はない。したがって、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。
【0023】
また本発明は、前記下引き層は、水とアルコールとの混合溶媒に可溶性のポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする。
【0024】
本発明に従えば、下引き層は、水とアルコールとの混合溶媒に可溶性のポリビニルアセタール樹脂を含有するので、感光層を形成する際に水とアルコールとの混合溶媒系以外の溶媒を用いても、下地となる下引き層は溶け出さないまたは溶け出しにくい。下引き層を水とアルコールとの混合溶媒系以外の溶媒に可溶な熱硬化型樹脂で形成する場合、下引き層の形成後に加熱し、下引き層に含有される樹脂を硬化させ、感光層の形成に用いられる溶媒すなわち水とアルコールとの混合溶媒系以外の溶媒に対して不溶性にする必要があるけれども、前述のように、本発明の電子写真感光体に設けられる下引き層は、感光層の形成に水とアルコールとの混合溶媒系以外の溶媒を用いても溶け出さないまたは溶け出しにくいので、下引き層の形成後に加熱する必要はない。したがって、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。
【0025】
また本発明は、前記下引き層は、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を含有することを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、下引き層は、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を含有するので、感光層を形成する際に非アルコール系溶媒を用いても、下地となる下引き層は溶け出さないまたは溶け出しにくい。下引き層を非アルコール系溶媒に可溶な熱硬化型樹脂で形成する場合、下引き層の形成後に加熱し、下引き層に含有される樹脂を硬化させ、感光層の形成に用いられる非アルコール系溶媒に対して不溶性にする必要があるけれども、前述のように、本発明の電子写真感光体に設けられる下引き層は、感光層の形成に非アルコール系溶媒を用いても溶け出さないまたは溶け出しにくいので、下引き層の形成後に加熱する必要はない。したがって、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。
【0027】
また本発明は、前記下引き層は、さらに酸化チタンを含有することを特徴とする。
【0028】
本発明に従えば、下引き層は、さらに酸化チタンを含有する。このことによって、下引き層への電荷の蓄積を防ぎ、繰返し使用した場合の電子写真感光体の残留電位の上昇を低減することができる。また、下引き層に適度の半導電性を付与することができるので、導電性支持体から感光層への電荷の注入を防ぐとともに、露光によって感光層中に発生する電荷のうち、感光層表面に輸送されるべき電荷と反対極性の電荷を導電性支持体に受渡し、発生した電荷の再結合を防ぐことができる。したがって、感光層の露光されなかった部分の表面電荷の減少を抑えて表面電位を保持し、かつ露光された部分の表面電位を充分に減衰させることができるので、現像に必要な電位ギャップである前述の露光されなかった部分の表面電位と露光された部分の表面電位との差を充分な大きさに確保することが可能となる。
【0029】
また本発明は、前記感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る機能分離型感光層であり、
前記電荷輸送物質は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明に従えば、感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る機能分離型感光層である。このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、電子写真特性に優れるとともに、繰返し使用した場合にも電子写真特性の低下することがなく、繰返し使用時の安定性に優れる耐久性の高い電子写真感光体を得ることができる。
【0031】
また本発明は、前記電荷輸送層は、さらに結着樹脂を含有し、
前記電荷輸送層において、前記電荷輸送物質(A)と前記結着樹脂(B)との比率(A/B)は、重量比で2/3以下であることを特徴とする。
【0032】
本発明に従えば、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質(A)と結着樹脂(B)との比率(A/B)は、重量比で3分の2(2/3)以下である。従来公知の電荷輸送物質を用いた場合、前記比率A/Bを2/3以下とし結着樹脂の比率を高くすると応答性の低下することがあるので、前記比率A/Bは2/3程度である。しかしながら、本発明の電子写真感光体では、前述のように電荷輸送物質は前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物を含むので、応答性を維持したまま、前述のように前記比率A/Bを2/3以下とし、従来公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率で結着樹脂を加えることができる。したがって、応答性を低下させることなく、感光層の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の長寿命化を実現することができる。
【0033】
また本発明は、電子写真感光体を帯電させる工程と、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施し、静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像を現像する工程とを含む電子写真画像形成方法であって、
前記電子写真感光体には、前記本発明の電子写真感光体が用いられることを特徴とする電子写真画像形成方法である。
【0034】
本発明に従えば、電子写真画像形成方法は、電子写真感光体を帯電させる工程と、帯電された電子写真感光体に対して露光を施し、静電潜像を形成する工程と、静電潜像を現像する工程とを含み、前記電子写真感光体には、低温低湿環境下においても高い応答性を示す前記本発明の電子写真感光体が用いられる。このことによって、電子写真感光体に対する露光の開始から現像の終了までの時間を短くした場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することが可能である。
【0035】
また本発明は、前記電子写真感光体に対する露光の開始から前記静電潜像の現像の終了までの時間は、90ミリ秒(90msec)以下であることを特徴とする。
【0036】
本発明に従えば、電子写真感光体に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間は、90ミリ秒(90msec)以下と短いので、高速で画像を形成することが可能である。このように電子写真感光体に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合、低温低湿環境下において、電子写真感光体の応答性が低下し、画像品質の低下することがあるけれども、本発明の電子写真画像形成方法では、前述のように、低温低湿環境下においても高い応答性を示す前記本発明の電子写真感光体が用いられるので、前述のように、電子写真感光体に対する露光の開始から現像の終了までの時間が短い場合であっても、低温低湿環境下などの各種環境下において高品質の画像を提供することができる。
【0037】
また本発明は、前記本発明の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、
露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする電子写真装置である。
【0038】
本発明に従えば、電子写真装置は、低温低湿環境下においても高い応答性を示す前記本発明の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備える。このことによって、露光手段による電子写真感光体に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間を短くした場合、たとえば小型の電子写真感光体を用いて高速で電子写真プロセスを行った場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することが可能である。したがって、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することが可能である。
【0039】
また本発明は、前記本発明の電子写真感光体であって装置本体に回転自在に支持される電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を回転周速Vpで回転駆動させる感光体駆動手段と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、
露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段と、
前記露光手段による露光位置から前記現像手段による現像位置までの前記電子写真感光体の外周面に沿った距離Lを前記回転周速Vpで除した値d(=L/Vp)が90ミリ秒(90msec)以下になるように、前記感光体駆動手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする電子写真装置である。
【0040】
本発明に従えば、電子写真装置は、前記本発明の電子写真感光体であって装置本体に回転自在に支持される電子写真感光体と、前記電子写真感光体を回転周速Vpで回転駆動させる感光体駆動手段と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段と、前記露光手段による露光位置から前記現像手段による現像位置までの前記電子写真感光体の外周面に沿った距離Lを前記回転周速Vpで除した値d(=L/Vp)が90ミリ秒(90msec)以下になるように、前記感光体駆動手段の動作を制御する制御手段とを備える。前記値dは、露光手段による電子写真感光体に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間に略一致する。前述のように、前記制御手段は、前記値dが90msec以下になるように前記感光体駆動手段の動作を制御するので、露光手段による電子写真感光体に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間は短い。すなわち、本発明の電子写真装置は、電子写真プロセスを高速で行うことが可能であるので、画像形成速度の速い電子写真装置を実現することができる。
【0041】
露光手段による露光の開始から現像手段による現像の終了までの時間が短い場合、たとえば前記距離Lの短い小型の電子写真感光体を用いて前記回転周速Vpを大きくし高速で電子写真プロセスを行った場合、低温低湿環境下において、電子写真感光体の応答性が低下し、画像品質の低下することがある。
【0042】
しかしながら、前記本発明の電子写真装置に備わる前記本発明の電子写真感光体は、低温低湿環境下においても高い応答性を示すので、前述のように露光手段による電子写真感光体に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することが可能である。したがって、前述のように、前記本発明の電子写真感光体と、前記値dが90msec以下になるように前記感光体駆動手段の動作を制御する前記制御手段とを備えることによって、画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することが可能である。
【0043】
また本発明は、前記電子写真感光体は、円筒状または円柱状の形状を有し、
前記電子写真感光体の直径は、24mm以上40mm以下であることを特徴とする。
【0044】
本発明に従えば、円筒状または円柱状の形状を有する前記電子写真感光体の直径は、24mm以上40mm以下であるので、電子写真装置を小型化することができる。したがって、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を得ることができる。
【0045】
【発明の実施の形態】
図1(a)は、本発明の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す斜視図である。図1(b)は、電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。電子写真感光体1(以下、単に「感光体」と略称することがある)は、導電性材料から成る円筒状の導電性支持体11と、導電性支持体11の外周面上に設けられる下引き層12と、下引き層12の外周面上に設けられる感光層13とを含んで構成される。すなわち、導電性支持体11と感光層13との間には、下引き層12が設けられる。また感光層13は、電荷発生物質16を含有する電荷発生層14と、電荷輸送物質17を含有する電荷輸送層15とが、下引き層12の外周面上にこの順に積層されて成る機能分離型感光層である。また電荷輸送層15は、電荷輸送物質17を結着させる結着樹脂18をさらに含有する。
【0046】
導電性支持体11を構成する導電性材料には、たとえばアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケルおよびチタンなどの金属、ならびにアルミニウム合金およびステンレス鋼などの合金などの金属材料を用いることができる。また前述の金属および合金などの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂、ナイロン、ポリスチレンなどの高分子材料、ガラスまたは硬質紙などの表面に導電処理を施したもの、たとえば金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したものまたは酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、カーボンブラックなどの導電性物質を適当な結着樹脂と共に塗布したものなどを用いることもできる。なお導電性支持体11の形状は、本実施形態では円筒状であるけれども、これに限定されることなく、円柱状、シート状または無端ベルト状などであってもよい。
【0047】
前述のように、導電性支持体11と感光層13との間には、下引き層12が設けられる。このことによって、導電性支持体11から感光層13への電荷の注入を防止し、感光層13の電荷ブロッキング性を向上させることができるので、感光層13の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の部分の表面電荷の減少が抑えられ、感光体1を用いて形成された画像に点状の欠陥などが発生することを防止することができる。また導電性支持体11表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、感光層13の成膜性を高めることができる。また感光層13の導電性支持体11からの剥離を抑え、導電性支持体11と感光層13との接着性を向上させることができる。
【0048】
下引き層12は、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂および水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を主成分として含有する。したがって、感光層13を形成する際に非水系または非アルコール系の溶媒を用いても、下地となる下引き層12は溶け出さないまたは溶け出しにくい。
【0049】
下引き層12を非水系または非アルコール系の溶媒に可溶な熱硬化型樹脂を主成分として形成する場合、下引き層12の形成後に加熱し、下引き層12に含有される樹脂を硬化させ、感光層13の形成に用いられる非水系または非アルコール系の溶媒に対して不溶性にする必要がある。
【0050】
しかしながら、本実施形態の感光体1に設けられる下引き層12は、前述のように、感光層13を形成する際に非水系または非アルコール系の溶媒を用いても、溶け出さないまたは溶け出しにくいので、下引き層12の形成後に加熱する必要はない。したがって、感光体の生産性を向上させることができる。
【0051】
水溶性樹脂としては、たとえばポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリビニルアセタール樹脂、カゼインまたはポリアクリル酸ナトリウムなどが用いられる。これらの中でも、水溶性ポリビニルアセタール樹脂が好適に用いられる。
【0052】
アルコール可溶性樹脂としては、アルコール可溶性ポリアミド樹脂またはアルコール可溶性ポリビニルブチラール樹脂などのアルコール可溶性ポリビニルアセタール樹脂などが用いられる。これらの中でも、アルコール可溶性ポリアミド樹脂が好適に用いられる。アルコール可溶性ポリアミド樹脂の具体例としては、たとえば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロンおよび2−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにメトキシメチル化ナイロンなどのN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンなどのように、ナイロンを化学的に変性させたものなどを挙げることができる。
【0053】
水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂としては、水とアルコールとの混合溶媒に可溶性のポリビニルアセタール樹脂が好適に用いられる。
【0054】
また、下引き層12は、たとえば酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズおよび酸化インジウムなどの金属酸化物などの微粉末顔料を含有してもよい。これらの金属酸化物を含有することによって、下引き層12への電荷の蓄積を防ぎ、繰返し使用した場合の感光体の残留電位の上昇を低減することができる。また、形成される画像にモアレと呼ばれる干渉縞が発生することを防ぐことができる。前述の金属酸化物の中でも、酸化チタンが好適に用いられる。酸化チタンを含有させることによって、下引き層12に適度の半導電性を付与することができるので、導電性支持体11から感光層13への電荷の注入を防ぐとともに、露光によって感光層13中に発生する電荷のうち、感光層13表面に輸送されるべき電荷と反対極性の電荷を導電性支持体に受渡し、発生した電荷の再結合を防ぐことができる。したがって、感光層13の露光されなかった部分の表面電荷の減少を抑えて表面電位を保持し、かつ露光された部分の表面電位を充分に減衰させることができるので、現像に必要な電位ギャップである前述の露光されなかった部分の表面電位と露光された部分の表面電位との差を充分な大きさに確保することが可能となる。
【0055】
下引き層12は、たとえば、前述の樹脂を適当な溶媒に溶解または分散させて下引き層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の外周面上に塗布することによって形成することができる。下引き層12に前述の金属酸化物などの微粉末顔料を含有させる場合には、前述の樹脂と金属酸化物などの微粉末顔料とを適当な溶媒に溶解または分散させて下引き層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の外周面上に塗布することによって下引き層12を形成することができる。
【0056】
下引き層用塗布液の溶媒には、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶媒、または水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルムおよびトリクロロエタンなどの塩素系溶媒とアルコール類などの混合溶媒が好適に用いられる。
【0057】
前述の樹脂、または前述の樹脂と金属酸化物などの微粉末顔料とを溶媒中に溶解または分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、コロイドミルまたは超音波分散機などを用いる一般的な方法を使用することができる。
【0058】
下引き層用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、スプレイ法、ビード法またはノズル法などの一般的な方法を適用することができる。
【0059】
下引き層12の膜厚は、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上5μm以下である。下引き層12の膜厚が0.1μmより薄いと、実質的に下引き層12として機能しなくなり、導電性支持体11の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体11から感光層13への電荷の注入を防止することができなくなり、感光層13の帯電性の低下が生じる。下引き層12の膜厚を20μmよりも厚くすることは、下引き層12を浸漬塗布法によって形成する場合に、下引き層12の形成が困難になり、下引き層12の機械的強度が低下するとともに、下引き層12上に感光層13を均一に形成することができず、感光体1の感度が低下するので好ましくない。
【0060】
感光層13は、前述のように、光を吸収することによって電荷を発生させる電荷発生物質16を含有する電荷発生層14と、電荷発生物質16で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有する電荷輸送物質17を含有する電荷輸送層15とが積層されて成る機能分離型感光層である。このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、電子写真特性に優れるとともに、繰返し使用した場合にも電子写真特性の低下することがなく、繰返し使用時の安定性に優れる耐久性の高い感光体を得ることができる。
【0061】
電荷発生層14に含有される電荷発生物質16の具体例としては、たとえばクロロダイアンブルーなどのビスアゾ系化合物、ジブロモアンサンスロンなどの多環キノン系化合物、ペリレン系化合物、キナクリドン系化合物、フタロシアニン系化合物およびアズレニウム塩系化合物などを挙げることができる。これらの電荷発生物質は、1種が単独でまたは2種以上が組合わされて使用される。
【0062】
電荷発生層14の形成方法としては、電荷発生物質16を下引き層12の外周面上に真空蒸着する方法、または電荷発生物質16を結着させる結着樹脂を適当な溶媒に溶解または分散させて得られる結着樹脂溶液中に、電荷発生物質16を混合し分散させて電荷発生層用塗布液を調製し、この塗布液を下引き層12の外周面上に塗布する方法などが用いられる。これらの中でも、後者の方法が好適に用いられる。以下、この方法について説明する。
【0063】
電荷発生層用塗布液に用いられる結着樹脂の具体例としては、たとえばメラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂およびポリビニルブチラール樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2種以上を含む共重合体樹脂、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができるけれども、結着樹脂はこれらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂を結着樹脂として使用することができる。これらの樹脂は、1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。
【0064】
電荷発生層用塗布液の溶媒には、たとえば塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、ならびにN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒などの非水系または非アルコール系の溶媒が好適に用いられる。これらの溶媒は、1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。
【0065】
電荷発生物質16と結着樹脂との配合比率は、電荷発生物質16の割合が10重量%〜99重量%の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質16の割合が10重量%未満であると、感度が低下する。電荷発生物質16の割合が99重量%を越えると、電荷発生層14の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質16の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の部分の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。したがって、10重量%〜99重量%とした。
【0066】
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、前述の下引き層用塗布液の塗布方法と同様の方法を用いることができる。
【0067】
電荷発生層14の膜厚は、0.05μm以上5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。電荷発生層14の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感度が低下する。電荷発生層14の膜厚が5.0μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下する。したがって、0.05μm以上5.0μm以下とした。
【0068】
電荷輸送層15は、電荷輸送物質17として、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する。
【0069】
【化5】
Figure 0003947473
【0070】
前記一般式(1)において、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。ArおよびArの具体例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチルおよびビフェニリルなどのアリール基、ならびにフリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリルおよびN−メチルインドリルなどの複素環基を挙げることができる。
【0071】
また前記一般式(1)において、Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Arの具体例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル、ピレニル、ビフェニリル、フェノキシフェニルおよびp−(フェニルチオ)フェニルなどのアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリルおよびN−エチルカルバゾリルなどの複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジルおよび1−ナフチルメチルなどのアラルキル基、ならびにイソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシルおよびシクロペンチルなどのアルキル基を挙げることができる。
【0072】
また前記一般式(1)において、ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArの具体例としては、水素原子以外では、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル、ピレニル、ビフェニリル、フェノキシフェニル、p−(フェニルチオ)フェニルおよびp−スチリルフェニルなどのアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリルおよびN−エチルカルバゾリルなどの複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジルおよび1−ナフチルメチルなどのアラルキル基、ならびにメチル、エチル、トリフルオロメチル、フルオロメチル、イソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルおよび2−チエニルメチルなどのアルキル基を挙げることができる。
【0073】
またArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。ArとArとを結合する原子の具体例としては、酸素原子および硫黄原子などを挙げることができる。ArとArとを結合する原子団の具体例としては、アルキル基を有する窒素原子などの2価の原子団、ならびにメチレン、エチレン、メチルメチレンなどのアルキレン基、ビニレン、プロペニレンなどの不飽和アルキレン基、オキシメチレン(化学式:−O−CH−)などのヘテロ原子を含むアルキレン基およびチオビニレン(化学式:−S−CH=CH−)などのヘテロ原子を含む不飽和アルキレン基などの2価基などを挙げることができる。
【0074】
また前記一般式(1)において、aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。aの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチル、フルオロメチルおよび1−メトキシエチルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどのアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジイソプロピルアミノなどのジアルキルアミノ基、フェニル、トリル、メトキシフェニルおよびナフチルなどのアリール基、ならびにフッ素原子および塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
【0075】
また前記一般式(1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Rの具体例としては、水素原子以外では、フッ素原子および塩素原子などのハロゲン原子、ならびにメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびトリフルオロメチルなどのアルキル基を挙げることができる。
【0076】
また前記一般式(1)において、R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。R,RおよびRの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチルおよび2−チエニルメチルなどのアルキル基、フェニル、トリル、メトキシフェニルおよびナフチルなどのアリール基、フリル、チエニルおよびチアゾリルなどの複素環基、ならびにベンジルおよびp−メトキシベンジルなどのアラルキル基を挙げることができる。
【0077】
また前記一般式(1)において、nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。
【0078】
ただし、前記一般式(1)において、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。
【0079】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、高い電荷移動度を有する。このように高い電荷移動度を有するエナミン化合物を電荷輸送物質17として感光層13に含有させることによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。したがって、電子写真感光体を小型化し、高速の電子写真プロセスに用いた場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することが可能である。このような電子写真感光体を用いることによって、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することができる。
【0080】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、好ましい化合物としては、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物を挙げることができる。
【0081】
【化6】
Figure 0003947473
【0082】
前記一般式(2)において、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。b,cおよびdの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチル、フルオロメチルおよび1−メトキシエチルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどのアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジイソプロピルアミノなどのジアルキルアミノ基、フェニル、トリル、メトキシフェニルおよびナフチルなどのアリール基、ならびにフッ素原子および塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
【0083】
また前記一般式(2)において、Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。
【0084】
前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、特に高い電荷移動度を有する。したがって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物が、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物であることによって、低温低湿環境下においてさらに高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。したがって、電子写真装置の画像形成速度をさらに高速化することが可能である。また、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は容易に製造することができるので、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。
【0085】
また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、特性、原価および生産性などの観点から特に優れた化合物としては、ArおよびArがフェニル基であるものを挙げることができる。その中でも、ArおよびArがフェニル基であり、Arがフェニル基、トリル基、p−メトキシフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基またはチエニル基であり、ArおよびArのうちの少なくともいずれか一方がフェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基、チエニル基またはチアゾリル基であり、R,R,RおよびRが共に水素原子であり、nが1であるものが特に好ましい。
【0086】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の具体例としては、たとえば以下の表1〜表32に示す基を有する例示化合物を挙げることができるけれども、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、これに限定されるものではない。なお、表1〜表32に示す各基は、前記一般式(1)の各基に対応する。たとえば、表1に示す例示化合物No.1は、下記構造式(1−1)で示されるエナミン化合物である。
【0087】
【化7】
Figure 0003947473
【0088】
ただし、ArおよびArが、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成する場合には、ArおよびArの欄に、ArおよびArが結合する炭素−炭素二重結合と、その炭素−炭素二重結合の炭素原子と共にArおよびArが形成する環構造とを合わせて示す。
【0089】
【表1】
Figure 0003947473
【0090】
【表2】
Figure 0003947473
【0091】
【表3】
Figure 0003947473
【0092】
【表4】
Figure 0003947473
【0093】
【表5】
Figure 0003947473
【0094】
【表6】
Figure 0003947473
【0095】
【表7】
Figure 0003947473
【0096】
【表8】
Figure 0003947473
【0097】
【表9】
Figure 0003947473
【0098】
【表10】
Figure 0003947473
【0099】
【表11】
Figure 0003947473
【0100】
【表12】
Figure 0003947473
【0101】
【表13】
Figure 0003947473
【0102】
【表14】
Figure 0003947473
【0103】
【表15】
Figure 0003947473
【0104】
【表16】
Figure 0003947473
【0105】
【表17】
Figure 0003947473
【0106】
【表18】
Figure 0003947473
【0107】
【表19】
Figure 0003947473
【0108】
【表20】
Figure 0003947473
【0109】
【表21】
Figure 0003947473
【0110】
【表22】
Figure 0003947473
【0111】
【表23】
Figure 0003947473
【0112】
【表24】
Figure 0003947473
【0113】
【表25】
Figure 0003947473
【0114】
【表26】
Figure 0003947473
【0115】
【表27】
Figure 0003947473
【0116】
【表28】
Figure 0003947473
【0117】
【表29】
Figure 0003947473
【0118】
【表30】
Figure 0003947473
【0119】
【表31】
Figure 0003947473
【0120】
【表32】
Figure 0003947473
【0121】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0122】
まず、下記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、下記一般式(4)で示される2級アミン化合物との脱水縮合反応を行うことによって、下記一般式(5)で示されるエナミン中間体を製造する。
【0123】
【化8】
Figure 0003947473
【0124】
(式中、Ar,ArおよびRは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0125】
【化9】
Figure 0003947473
【0126】
(式中、Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0127】
【化10】
Figure 0003947473
【0128】
(式中、Ar,Ar,Ar,R,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0129】
この脱水縮合反応は、たとえば以下のように行う。前記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、これと略等モル量の前記一般式(4)で示される2級アミン化合物とを、芳香族系溶媒、アルコール類またはエーテル類などの溶媒に溶解させ、溶液を調製する。用いる溶媒の具体例としては、たとえばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ブタノールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができる。調製した溶液中に、触媒、たとえばp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸またはピリジニュウム−p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を加え、加熱下で反応させる。触媒の添加量は、前記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物に対して、1/10〜1/1000モル当量であることが好ましく、より好ましくは1/25〜1/500モル当量であり、1/50〜1/200モル当量が最適である。反応中、水が副成し反応を妨げるので、生成した水を溶媒と共沸させ系外に取除く。これによって、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体を高収率で製造することができる。
【0130】
次に、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化またはフリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うことによって、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体を製造する。このとき、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うと、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を製造することができ、フリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うと、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を製造することができる。
【0131】
【化11】
Figure 0003947473
【0132】
(式中、Rは、前記一般式(1)において、nが0のときRを示し、nが1,2または3のときRを示す。Ar,Ar,Ar,R,R,R,a,mおよびnは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0133】
ビルスマイヤー反応は、たとえば以下のように行う。N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−Dimethylformamide;略称:DMF)または1,2−ジクロロエタンなどの溶媒中に、オキシ塩化リンとN,N−ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンとN−メチル−N−フェニルホルムアミド、またはオキシ塩化リンとN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、ビルスマイヤー試薬を調製する。調製したビルスマイヤー試薬1.0当量から1.3当量に、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量を加え、60〜110℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を高収率で製造することができる。
【0134】
また、フリーデル−クラフト反応は、たとえば以下のように行う。1,2−ジクロロエタンなどの溶媒中に、塩化アルミニウムと酸塩化物とによって調製した試薬1.0当量から1.3当量と、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量とを加え、−40〜80℃で、2〜8時間撹拌する。このとき、場合によっては加熱する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を高収率で製造することができる。
【0135】
最後に、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体と下記一般式(7−1)または(7−2)で示されるWittig試薬とを塩基性条件下で反応させるWittig−Horner反応を行うことによって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を製造することができる。このとき、下記一般式(7−1)で示されるWittig試薬を用いると、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、nが0であるものを得ることができ、下記一般式(7−2)で示されるWittig試薬を用いると、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、nが1,2または3であるものを得ることができる。
【0136】
【化12】
Figure 0003947473
【0137】
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。ArおよびArは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0138】
【化13】
Figure 0003947473
【0139】
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。nは1〜3の整数を示す。Ar,Ar,R,RおよびRは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0140】
このWittig−Horner反応は、たとえば以下のように行う。トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;略称:THF)、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの溶媒中に、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体1.0当量と、前記一般式(7−1)または(7−2)で示されるWittig試薬1.0〜1.20当量と、カリウムt−ブトキサイド、ナトリウムエトキサイドまたはナトリウムメトキサイドなどの金属アルコキシド塩基1.0〜1.5当量とを加え、室温または30〜60℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。これによって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を高収率で製造することができる。
【0141】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、前述の表1〜表32に示す例示化合物などからなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。
【0142】
また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、他の電荷輸送物質と混合されて使用されてもよい。前記一般式(1)で示されるエナミン化合物に混合されて使用される他の電荷輸送物質としては、たとえば前記一般式(1)で示されるエナミン化合物に類似のエナミン化合物、その他のエナミン化合物、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾールなどの複素環化合物、アニリン系化合物、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン化合物、スチリル化合物、トリフェニルアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物およびスチルベン系化合物、ならびにこれらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有する重合体などの電子供与性物質などを挙げることができる。好ましくは、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物が主成分として含有される混合物を電荷輸送物質17に用いる。
【0143】
電荷輸送層15は、以上に述べた電荷輸送物質17が結着樹脂18に結着された形で形成される。電荷輸送層15は、たとえば、結着樹脂18を前述の電荷発生層用塗布液に用いられる溶媒と同様の溶媒に溶解または分散させて得られる結着樹脂溶液中に、電荷輸送物質17を溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液を前述の下引き層用塗布液の塗布方法と同様の方法を用いて電荷発生層14の外周面上に塗布することによって形成することができる。
【0144】
結着樹脂18には、前述の電荷発生層用塗布液に用いられる結着樹脂と同様の樹脂を用いることができる。これらの中でも、電荷輸送物質17との相溶性に優れるものが好適に使用される。具体例としては、たとえばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂などの樹脂などを挙げることができる。また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂を使用してもよい。これらの樹脂は、単独で使用されてもよく、また2種以上混合されて使用されてもよい。前述した樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので、これらを結着樹脂18に用いることが特に好ましい。
【0145】
電荷輸送層15における電荷輸送物質17(A)と結着樹脂18(B)との比率(A/B)は、感光層13の耐刷性向上の観点から、重量比で3分の2(2/3)以下であることが好ましい。従来公知の電荷輸送物質を用いた場合、前記比率A/Bを2/3以下とし結着樹脂18の比率を高くすると応答性の低下することがあるので、前記比率A/Bは2/3程度である。しかしながら、本実施形態の電子写真感光体1では、前述のように、電荷輸送物質17は前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物を含むので、応答性を維持したまま、前述のように前記比率A/Bを2/3以下とし、従来公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率で結着樹脂18を加えることができる。したがって、応答性を低下させることなく、感光層13の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の長寿命化を実現することができる。なお、前記比率A/Bが2/3を超え結着樹脂18の比率が低くなりすぎると、結着樹脂18の比率が高いときに比べて、感光層13の耐刷性が低下する。
【0146】
また前記比率A/Bは、浸漬塗布法によって電荷輸送層15を形成する場合には、重量比で3分の1(1/3)以上であることが好ましい。前記比率A/Bが1/3未満であり結着樹脂18の比率が高くなりすぎると、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶媒の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層15に白濁が発生する。
【0147】
電荷輸送層15の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層15の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。電荷輸送層15の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下する。したがって、5μm以上50μm以下とした。
【0148】
以上に述べたように、本実施形態では、感光層13は、下引き層12の外周面上に、電荷発生層14および電荷輸送層15がこの順に積層された構成であるけれども、これに限定されることなく、電荷輸送層15および電荷発生層14の順に下引き層12の外周面上に積層された構成であってもよい。
【0149】
図2は、本発明の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施形態の電子写真感光体2は、実施の第1形態の電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0150】
電子写真感光体2において注目すべきは、感光層130が、電荷発生物質16と電荷輸送物質17とを含有する単一の層から成る単層型の感光層であることである。
【0151】
感光層130は、電荷発生物質16および電荷輸送物質17が結着樹脂18に結着された形で形成される。感光層130は、たとえば、前述の電荷発生物質16と前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質17と結着樹脂18とを、前述の適当な溶媒に溶解または分散させて感光層用塗布液を調製し、この塗布液を前述の下引き層用塗布液の塗布方法と同様の方法を用いて下引き層12の外周面上に塗布することによって形成することができる。
【0152】
感光層130における電荷輸送物質17(A’)と結着樹脂18(B’)との比率(A’/B’)は、前述の電荷輸送層15における電荷輸送物質17(A)と結着樹脂18(B)との比率(A/B)と同様に、重量比で2/3以下であることが好ましい。これによって、感光層130の耐刷性を向上させることができる。また、浸漬塗布法によって感光層130を形成する場合には、前記比率A’/B’は重量比で1/3以上であることが好ましい。
【0153】
感光層130の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。感光層130の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。感光層130の膜厚が50μmを超えると、生産性が低下する。したがって、5μm以上50μm以下とした。
【0154】
本実施形態の電子写真感光体2は、前述の実施の第1形態の電子写真感光体1と同様に、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂および水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を主成分として含有する下引き層12と、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層130とを有する。したがって、実施の第1形態と同様に、生産性が高く、かつ低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。またこのような電子写真感光体を用いることによって、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することができる。
【0155】
以上に述べた実施の第1形態の電子写真感光体1に設けられる感光層13および実施の第2形態の電子写真感光体2に設けられる感光層130の外周面上には、感光層13または感光層130の表面を保護するために、保護層を設けてもよい。保護層には、たとえば熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂などから成る層が用いられる。保護層は、紫外線防止剤、酸化防止剤、金属酸化物などの無機材料、有機金属化合物または電子受容性物質などを含有してもよい。
【0156】
感光層13,130および保護層には、必要に応じて二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステルおよび塩素化パラフィンなどの可塑剤を含有させてもよい。可塑剤を含有させることによって、感光層13,130または保護層の加工性を向上させることができる。また感光層13,130または保護層に可撓性を付与し、機械的特性を改良することができる。
また感光層13,130および保護層には、シリコーン樹脂などのレベリング剤を含有させてもよい。レベリング剤を含有させることによって、表面平滑性を向上させることができる。
【0157】
本発明の実施の第3の形態である電子写真装置として、以下では前述の実施の第1形態の電子写真感光体1(感光体1)を備える電子写真装置100を例示する。図3は、電子写真装置100の構成を簡略化して示す側面配置図である。
【0158】
電子写真装置100は、図示しない装置本体に回転自在に支持される感光体1と、感光体1を回転軸線44まわりに矢符41方向に回転駆動させる感光体駆動手段37と、感光体駆動手段37の動作を制御する制御手段38とを備える。感光体駆動手段37は、たとえば動力源としてモータを備え、モータからの動力を図示しない歯車を介して感光体1の芯体を構成する支持体に伝えることによって、感光体1を回転周速Vpで回転駆動させる。
【0159】
さらに感光体1の周囲には、帯電器32と、露光手段30と、現像器33と、転写帯電器34と、クリーナ36と、図示しない除電器とが、矢符41で示される感光体1の回転方向に沿ってこの順序で設けられる。
【0160】
帯電器32は、感光体1の外周面43を所定の電位に帯電させる帯電手段である。帯電器32は、接触式および非接触式のいずれであってもよい。
【0161】
露光手段30は、たとえば半導体レーザなどを光源として備え、光源から出力されるレーザビームなどの光31を帯電器32と現像器33との間に位置する感光体1の外周面43に照射することによって、帯電された感光体1の外周面43に対して画像情報に応じた露光を施す。
【0162】
現像器33は、露光によって感光体1の外周面43に形成される静電潜像を現像剤によって現像する現像手段であり、感光体1に対向して設けられ感光体1の外周面43にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持するとともにその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0163】
転写帯電器34は、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される転写紙51に、トナーと逆極性の電荷を与えることによって、現像されたトナー画像を転写させる転写手段である。
【0164】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面43に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面43に残留するトナーを前記外周面43から剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。
【0165】
また、感光体1と転写帯電器34との間を通過した後の転写紙51が搬送される方向には、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
【0166】
感光体1の直径は、24mm以上40mm以下であることが好ましい。これによって、電子写真装置100を小型化することができる。
【0167】
本発明の実施の一形態である電子写真画像形成方法は、電子写真感光体を帯電させる工程と、帯電された電子写真感光体に対して露光を施し、静電潜像を形成する工程と、静電潜像を現像する工程とを含み、前記電子写真感光体には、前述の本発明の実施の一形態である電子写真感光体が用いられることを特徴とする。この電子写真画像形成方法は、本実施形態の電子写真装置100によって実行される。
【0168】
電子写真装置100の動作について説明する。まず、感光体1が感光体駆動手段37によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段30からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の外周面43が正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、露光手段30から感光体1の外周面43に対して光31が照射される。光源からの光31は、主走査方向である感光体1の長手方向に繰返し走査される。感光体1を回転させ、光源からの光31を繰返し走査することによって、感光体1の外周面43に対して画像情報に応じた露光が施される。この露光によって、光31が照射された部分の表面電荷が除去され、光31が照射された部分の電位と光31が照射されなかった部分の電位とに差異が生じ、感光体1の外周面43に静電潜像が形成される。次いで、光源からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33の現像ローラ33aから、静電潜像の形成された感光体1の外周面43にトナーが供給されることによって、静電潜像が現像され、感光体1の外周面43にトナー画像が形成される。
【0169】
また、感光体1への露光と同期して、転写紙51が、感光体1と現像器33よりも回転方向下流側に設けられる転写帯電器34との間に、図示しない搬送手段によって矢符42方向から供給される。
【0170】
感光体1と転写帯電器34と間に転写紙51が供給されると、転写帯電器34はトナーと逆極性の電荷を転写紙51に与える。これによって、感光体1の外周面43に形成されたトナー画像が、転写紙51上に転写される。
【0171】
転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面43上に残留するトナーは、転写帯電器34よりもさらに回転方向下流側であって帯電器32よりも回転方向上流側に設けられるクリーナ36のクリーニングブレード36aによって感光体1の外周面43から剥離され、回収用ケーシング36b内に回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の外周面43の電荷は、図示しない除電器によって除去され、感光体1の外周面43上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転され、再度感光体1の帯電から始まる一連の動作が繰返される。
【0172】
一方、トナー画像が転写された転写紙51は図示しない搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧される。これによって、転写紙51上のトナー画像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、図示しない搬送手段によって電子写真装置100の外部へ排紙される。以上のようにして、連続的に画像が形成される。
【0173】
このとき、制御手段38は、露光手段30による露光位置45から現像手段である現像器33による現像位置46までの感光体1の外周面43に沿った距離Lを回転周速Vpで除した値d(=L/Vp)が90ミリ秒(90msec)以下になるように、感光体駆動手段37の動作を制御する。前記値dは、露光手段30による感光体1に対する露光の開始から現像器33による静電潜像の現像の終了までの時間に略一致する。したがって、露光手段30による感光体1に対する露光の開始から現像器33による静電潜像の現像の終了までの時間は、90msec以下と短い。すなわち、本実施形態の電子写真装置100は、電子写真プロセスを高速で行うことが可能であるので、画像形成速度の速い電子写真装置を実現することができる。
【0174】
露光手段30による露光の開始から現像器33による現像の終了までの時間が短い場合、たとえば前述のように感光体1の直径が24mm以上40mm以下であるような前記距離Lの短い小型の感光体を用いて回転周速Vpを大きくし、高速で電子写真プロセスを行った場合、低温低湿環境下において、感光体の応答性が低下し、画像品質の低下することがある。
【0175】
しかしながら、本実施形態の電子写真装置100に備わる感光体1は、前述のように、前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物を含有する感光層13を有し、低温低湿環境下においても高い応答性を示すので、前述のように露光手段30による感光体1に対する露光の開始から現像器33による静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することが可能である。
【0176】
したがって、画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することが可能である。
【0177】
以上に述べたように、本実施形態の電子写真装置100は、実施の第1形態の電子写真感光体1を備えるけれども、これに限定されることなく、実施の第2形態の電子写真感光体2を備えてもよい。
【0178】
また感光体1の周囲には、帯電器32、露光手段30および現像器33がそれぞれ1つずつ設けられるけれども、これに限定されることなく、現像器33と転写帯電器34との間に、さらに第2の帯電手段、第2の露光手段および第2の現像手段を設けてもよい。これによって、帯電器32、露光手段30および現像器33によって一色目のトナー画像を形成し、現像器33と転写帯電器34との間に設けられる第2の帯電手段、第2の露光手段および第2の現像手段によって一色目と異なる色のトナー画像を形成することができるので、転写紙51上に多色画像を形成することができる。
【0179】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するけれども、本発明はこれに限定されるものではない。
【0180】
[製造例]
(製造例1)例示化合物No.1の製造
(製造例1−1)エナミン中間体の製造
トルエン100mlに、下記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)と、下記構造式(9)で示されるジフェニルアセトアルデヒド20.6g(1.05当量)と、DL−10−カンファースルホン酸0.23g(0.01当量)とを加えて加熱し、副生した水をトルエンと共沸させて系外に取除きながら、6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を10分の1(1/10)程度に濃縮し、激しく撹拌しているヘキサン100ml中に徐々に滴下し、結晶を生成させた。生成した結晶を濾別し、冷エタノールで洗浄することによって、淡黄色粉末状化合物36.2gを得た。
【0181】
【化14】
Figure 0003947473
【0182】
【化15】
Figure 0003947473
【0183】
得られた化合物を液体クロマトグラフィー−質量分析法(Liquid
Chromatography−Mass Spectrometry;略称:LC−MS)で分析した結果、下記構造式(10)で示されるエナミン中間体(分子量の計算値:411.20)にプロトンが付加した分子イオン(M+H)に相当するピークが412.5に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(10)で示されるエナミン中間体であることが判った(収率:88%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン中間体の純度は99.5%であることが判った。
【0184】
【化16】
Figure 0003947473
【0185】
以上のように、前記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミンと前記構造式(9)で示されるジフェニルアセトアルデヒドとの脱水縮合反応を行うことによって、前記構造式(10)で示されるエナミン中間体を得ることができた。
【0186】
(製造例1−2)エナミン−アルデヒド中間体の製造
無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100ml中に、氷冷下、オキシ塩化リン9.2g(1.2当量)を徐々に加え、約30分間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、製造例1−1で得られた前記構造式(10)で示されるエナミン中間体20.6g(1.0当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を80℃まで上げ、80℃を保つように加熱しながら3時間攪拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷やした4規定(4N)−水酸化ナトリウム水溶液800ml中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿を濾別し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶媒で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物20.4gを得た。
【0187】
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、下記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体(分子量の計算値:439.19)にプロトンが付加した分子イオン(M+H)に相当するピークが440.5に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体であることが判った(収率:93%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン−アルデヒド中間体の純度は99.7%であることが判った。
【0188】
【化17】
Figure 0003947473
【0189】
以上のように、前記構造式(10)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うことによって、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体を得ることができた。
【0190】
(製造例1−3)例示化合物No.1の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体8.8g(1.0当量)と、下記構造式(12)で示されるジエチルシンナミルホスホネート6.1g(1.2当量)とを、無水DMF80mlに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド2.8g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶10.1gを得た。
【0191】
【化18】
Figure 0003947473
【0192】
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物(分子量の計算値:539.26)にプロトンが付加した分子イオン(M+H)に相当するピークが540.5に観測された。また得られた結晶の重クロロホルム(化学式:CDCl)中における核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;略称:NMR)スペクトルを測定したところ、例示化合物No.1のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。図4は、製造例1−3の生成物のH−NMRスペクトルであり、図5は、図4に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。図6は、製造例1−3の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルであり、図7は、図6に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。図8は、製造例1−3の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルであり、図9は、図8に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。なお、図4〜図9において、横軸は化学シフト値δ(ppm)を示す。また図4および図5において、シグナルと横軸との間に記載されている値は、図4の参照符500で示されるシグナルの積分値を3としたときの各シグナルの相対的な積分値である。LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた結晶は、例示化合物No.1のエナミン化合物であることが判った(収率:94%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.1のエナミン化合物の純度は99.8%であることが判った。
【0193】
以上のように、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体と、Wittig試薬である前記構造式(12)で示されるジエチルシンナミルホスホネートとのWittig−Horner反応を行うことによって、表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物を得ることができた。
【0194】
(製造例2)例示化合物No.61の製造
前記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)に代えて、N−(p−メトキシフェニル)−α−ナフチルアミン4.9g(1.0当量)を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、脱水縮合反応によるエナミン中間体の製造(収率:94%)およびビルスマイヤー反応によるエナミン−アルデヒド中間体の製造(収率:85%)を行い、さらにWittig−Horner反応を行うことによって、黄色粉末状化合物7.9gを得た。なお、各反応において使用した試薬と基質との当量関係は、製造例1で使用した試薬と基質との当量関係と同様である。
【0195】
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、目的とする表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物(分子量の計算値:555.26)にプロトンが付加した分子イオン(M+H)に相当するピークが556.7に観測された。また得られた化合物の重クロロホルム(CDCl)中におけるNMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.61のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。図10は、製造例2の生成物のH−NMRスペクトルであり、図11は、図10に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。図12は、製造例2の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルであり、図13は、図12に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。図14は、製造例2の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルであり、図15は、図14に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。なお、図10〜図15において、横軸は化学シフト値δ(ppm)を示す。また図10および図11において、シグナルと横軸との間に記載されている値は、図10の参照符501で示されるシグナルの積分値を3としたときの各シグナルの相対的な積分値である。LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた化合物は、例示化合物No.61のエナミン化合物であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.61のエナミン化合物の純度は99.0%であることが判った。
【0196】
以上のように、脱水縮合反応、ビルスマイヤー反応およびWittig−Horner反応の3段階の反応を行うことによって、3段階収率73.5%で、表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物を得ることができた。
【0197】
(製造例3)例示化合物No.46の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)と、下記構造式(13)で示されるWittig試薬1.53g(1.2当量)とを、無水DMF15mlに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド0.71g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶2.37gを得た。
【0198】
【化19】
Figure 0003947473
【0199】
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物(分子量の計算値:565.28)にプロトンが付加した分子イオン(M+H)に相当するピークが566.4に観測されたことから、得られた結晶は、例示化合物No.46のエナミン化合物であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.46のエナミン化合物の純度は、99.8%であることが判った。
【0200】
以上のように、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体と前記構造式(13)で示されるWittig試薬とのWittig−Horner反応を行うことによって、表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物を得ることができた。
【0201】
(比較製造例1)下記構造式(14)で示される化合物の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)を無水THF15mlに溶解させ、その溶液中に、アリルブロマイドと金属マグネシウムとから調製したグリニヤール試薬であるアリルマグネシウムブロマイドのTHF溶液(モル濃度:1.0mol/l)5.23ml(1.15当量)を0℃で徐々に加えた。0℃で0.5時間撹拌した後、薄層クロマトグラフィーによって反応の進行状況を確認したところ、明確な反応生成物は確認できず、複数の生成物が確認された。常法により、後処理、抽出、濃縮を行った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、反応混合物の分離、精製を行った。
【0202】
しかしながら、目的とする下記構造式(14)で示される化合物を得ることはできなかった。
【0203】
【化20】
Figure 0003947473
【0204】
[電荷輸送物質の特性評価]
電荷輸送物質の電荷輸送層中における電荷移動度を測定するために、以下のようにして試料を作製した。
【0205】
(試料1)
電荷発生物質である下記構造式(15)で示されるアゾ化合物1重量部を、THF99重量部にフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製:PKHH)1重量部を溶解させた樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで2時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、導電性支持体である、表面にアルミニウムが蒸着された膜厚80μmのポリエステルフィルム上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0206】
【化21】
Figure 0003947473
【0207】
次に、電荷輸送物質である表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物8重量部と、ポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製:C−1400)10重量部とをTHF80重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚10μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、電荷移動度測定用試料を作製した。
【0208】
(試料2〜6)
電荷輸送物質に、例示化合物No.1に代えて、表1に示す例示化合物No.3、表9に示す例示化合物No.61、表16に示す例示化合物No.106、表21に示す例示化合物No.146または表26に示す例示化合物No.177を用いる以外は、試料1と同様にして、5種類の電荷移動度測定用試料を作製した。
【0209】
(比較試料1)
電荷輸送物質に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(16)で示される比較化合物Aを用いる以外は、試料1と同様にして、電荷移動度測定用試料を作製した。
【0210】
【化22】
Figure 0003947473
【0211】
(比較試料2)
電荷輸送物質に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(17)で示される比較化合物Bを用いる以外は、試料1と同様にして、電荷移動度測定用試料を作製した。
【0212】
【化23】
Figure 0003947473
【0213】
(比較試料3)
電荷輸送物質に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(18)で示される比較化合物Cを用いる以外は、試料1と同様にして、電荷移動度測定用試料を作製した。
【0214】
【化24】
Figure 0003947473
【0215】
(比較試料4)
電荷輸送物質に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(19)で示される比較化合物Dを用いる以外は、試料1と同様にして、電荷移動度測定用試料を作製した。
【0216】
【化25】
Figure 0003947473
【0217】
<電荷移動度の測定>
以上のようにして得られた試料1〜6および比較試料1〜4の各電荷移動度測定用試料について、電荷輸送層の表面に金を蒸着し、室温、減圧下で、飛行時間(Time−of−Flight)法によって、電荷輸送物質の電荷輸送層中における電荷移動度を測定した。測定結果を表33に示す。なお、表33に示す電荷移動度の値は、電界強度が2.5×10V/cmのときの値である。
【0218】
【表33】
Figure 0003947473
【0219】
試料1〜6と比較試料4との比較から、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、従来公知の電荷輸送物質である比較化合物Dなどのトリフェニルアミンダイマー(Triphenylamine dimer;略称:TPD)に比べ、2桁以上高い電荷移動度を有することが判った。
【0220】
また試料1〜6と比較試料1,3との比較から、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)においてエナミンの官能基に含まれる窒素原子に結合するナフチレン基が、他のアリレン基に置換された化合物に相当する比較化合物Aおよび比較化合物Cに比べ、1桁以上高い電荷移動度を有することが判った。
【0221】
また試料1〜6と比較試料2との比較から、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)においてnが0でありかつArが複素環基以外の基である化合物に相当する比較化合物Bに比べ、1桁以上高い電荷移動度を有することが判った。
【0222】
また試料1〜3,6と試料5との比較から、前記一般式(1)においてArがナフチル基である化合物の方が、Arがナフチル基でない化合物よりも高い電荷移動度を有することが判った。
【0223】
[実施例]
(実施例1)
(実施例1−1)
表34に示す材料をペイントシェーカで10時間分散し、下引き層用塗布液を調製した。得られた下引き層用塗布液を、導電性支持体11である直径30mm、長さ340mmのアルミニウム製円筒状支持体の外周面上に膜厚を調製しながら浸漬塗布し、膜厚が1μmの下引き層12を形成した。なお、下引き層12の形成後には、熱処理を行わなかった。
【0224】
【表34】
Figure 0003947473
【0225】
次に、表35に示す材料をペイントシェーカで2時間分散し、電荷発生層用塗布液を調製した。得られた電荷発生層用塗布液を、先に形成した下引き層12の外周面上に浸漬塗布した後、120℃で10分間乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層14を形成した。
【0226】
【表35】
Figure 0003947473
【0227】
次に、表36に示す材料を撹拌して溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層14の外周面上に浸漬塗布した後、110℃で60分間乾燥し、膜厚25μmの電荷輸送層15を形成した。
【0228】
【表36】
Figure 0003947473
【0229】
以上のようにして、本発明の要件を満足する図1に示す構成の円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0230】
(実施例1−2)
実施例1−1において、導電性支持体11に、アルミニウム製円筒状支持体に代えて、厚み0.2mmのアルミニウム板を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、本発明の要件を満足するシート状の電子写真感光体を作製した。
【0231】
(実施例2)
実施例1において、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、表1に示す例示化合物No.1を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。
【0232】
(実施例3)
実施例1において、表36に示す電荷輸送層用塗布液の例示化合物No.61の使用量を5重量部とし、ポリカーボネート樹脂の使用量を10重量部とする以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。
【0233】
(実施例4)
実施例1において、表36に示す電荷輸送層用塗布液の例示化合物No.61の使用量を7重量部とし、ポリカーボネート樹脂の使用量を8重量部とする以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。
【0234】
(実施例5)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、表37に示す材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。作製する際、本実施例においても、実施例1と同様に、下引き層12の形成後には、熱処理を行わなかった。なお、表37に示す水溶性ポリビニルアセタール樹脂である積水化学工業株式会社製のエスレックKW−1は、実際には水溶液であるけれども、表37では、固形分の重量のみを示す。
【0235】
【表37】
Figure 0003947473
【0236】
(実施例6)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、表38に示す材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。作製する際、本実施例においても、実施例1と同様に、下引き層12の形成後には、熱処理を行わなかった。なお、表38に示す水とアルコールとの混合溶媒に可溶性のポリビニルアセタール樹脂である積水化学工業株式会社製のエスレックKX−1は、実際には水とアルコールとの混合溶媒溶液であるけれども、表38では、固形分の重量のみを示す。
【0237】
【表38】
Figure 0003947473
【0238】
(比較例1)
実施例1において、下引き層12を形成せずに、アルミニウム製円筒状支持体の外周面上またはアルミニウム板上に電荷発生層14および電荷輸送層15を形成する以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。
【0239】
(比較例2)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、表39に示す材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。ただし、本比較例では、下引き層12に熱硬化型樹脂であるアルキッド樹脂およびメラミン樹脂を使用しているので、実施例1と異なり、下引き層12の形成後に150℃で30分間熱処理を行い、樹脂を硬化させた。
【0240】
【表39】
Figure 0003947473
【0241】
(比較例3)
実施例1において、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、下記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。
【0242】
【化26】
Figure 0003947473
【0243】
(比較例4)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、前述の表37に示す材料を用い、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。作製する際、本比較例においても、実施例1と同様に、下引き層12の形成後には、熱処理を行わなかった。
【0244】
(比較例5)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、前述の表38に示す材料を用い、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。作製する際、本比較例においても、実施例1と同様に、下引き層12の形成後には、熱処理を行わなかった。
【0245】
(比較例6)
実施例1において、下引き層12を形成せずに、アルミニウム製円筒状支持体の外周面上またはアルミニウム板上に電荷発生層14および電荷輸送層15を形成し、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。
【0246】
(比較例7)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、前述の表39に示す材料を用い、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。ただし、本比較例では、下引き層12に熱硬化型樹脂であるアルキッド樹脂およびメラミン樹脂を使用しているので、実施例1と異なり、下引き層12の形成後に150℃で30分間熱処理を行い、樹脂を硬化させた。
【0247】
(比較例8)
実施例1において、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(16)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。
【0248】
(比較例9)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、前述の表37に示す材料を用い、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(16)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。作製する際、本比較例においても、実施例1と同様に、下引き層12の形成後には、熱処理を行わなかった。
【0249】
(比較例10)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、前述の表38に示す材料を用い、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(16)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。作製する際、本比較例においても、実施例1と同様に、下引き層12の形成後には、熱処理を行わなかった。
【0250】
(比較例11)
実施例1において、下引き層12を形成せずに、アルミニウム製円筒状支持体の外周面上またはアルミニウム板上に電荷発生層14および電荷輸送層15を形成し、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(16)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。
【0251】
(比較例12)
実施例1において、下引き層用塗布液に、表34に示す材料に代えて、前述の表39に示す材料を用い、表36に示す電荷輸送層用塗布液の材料に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(16)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない円筒状およびシート状の2種類の電子写真感光体を作製した。ただし、本比較例では、下引き層12に熱硬化型樹脂であるアルキッド樹脂およびメラミン樹脂を使用しているので、実施例1と異なり、下引き層12の形成後に150℃で30分間熱処理を行い、樹脂を硬化させた。
【0252】
<評価1>
以上の実施例1〜6および比較例1〜12で作製した各電子写真感光体について、感度および感光体を用いて形成される画像の品質を評価した。
【0253】
(感度)
感度の評価は、シート状の電子写真感光体を用い、試料を載置した回転円盤を回転させながら帯電と測定とを交互に行うダイナミック法によって以下のように行った。静電複写紙試験装置(株式会社川口電機製作所製:EPA−8200)を使用し、試料を載置した回転円盤を毎分1100回転の回転速度で回転させながら、感光層表面をマイナス(−)600Vに帯電した後、帯電された感光層表面に対して波長780nmの単色光を強度1μW/cmで照射し、感光層表面の電位を初期の帯電電位であるマイナス(−)600Vからマイナス(−)300Vに半減させるために必要なエネルギを半減露光量E1/2(μJ/cm)として測定し、感光体の感度の評価指標とした。
【0254】
(画像品質)
感光体を用いて形成される画像の品質の評価は、円筒状の電子写真感光体を用いて以下のように行った。レーザを露光光源とする市販のレーザビームプリンタ(シャープ株式会社製:DM4501)を正規現像ができるように、また感光体への露光光量と感光体の回転周速とを変化させることができるように改造して得られた装置に、実施例1〜6および比較例1〜12で作製した各感光体をそれぞれ搭載し、記録紙上に画像を形成した。このとき、感光体の回転周速を変化させることによって、感光体に対する露光の開始から現像の終了までの時間を50ミリ秒(50msec)、90ミリ秒(msec)または130ミリ秒(msec)に調整し、各設定時間で画像を形成した。得られた画像を目視観察し、画像の品質を評価した。ただし、画像に地汚れの発生が認められた場合には、露光光量を増加させて再度画像を形成し、得られた画像の品質を評価した。露光光量を増加させることによって、地汚れが発生しなくなった場合には画質が良好であると評価し、地汚れは発生しているけれどもその程度が露光光量を増加させる前よりも改善された場合には、再度露光光量を増加させて画像を形成した。これを地汚れの程度が改善されなくなるまで繰返し、最終的に得られた画像の品質を評価結果とした。なお、以上の評価は、温度25℃、相対湿度(Relative Humidity)55%(55%RH)の常温常湿環境下と、温度5℃、相対湿度20%(20%RH)の低温低湿環境下とにおいて行った。
以上の評価結果を表40に示す。
【0255】
【表40】
Figure 0003947473
【0256】
実施例1〜6と比較例1,6,11との比較から、下引き層を有しない比較例1,6,11の感光体が搭載された装置によって形成された画像には、導電性支持体からの電荷の注入による点状の画像欠陥が発生するけれども、下引き層を有する実施例1〜6の感光体が搭載された装置によって形成された画像には、点状欠陥が発生しないことが判る。
【0257】
また実施例1〜6と比較例2との比較から、下引き層に水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂または水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂を用いた実施例1〜6の感光体と、下引き層に水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂および水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂以外の樹脂を用いた比較例2の感光体とは、同程度の感度で、また形成される画像の品質も共に良好であるけれども、実施例1〜6の感光体の方が、下引き層の形成後に熱処理をする必要がないので、比較例2の感光体よりも生産性が高いことが判る。
【0258】
また実施例1〜6と比較例3〜5との比較から、電荷輸送物質に前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用いて作製された実施例1〜6の感光体の方が、電荷輸送物質に前記構造式(20)で示される比較化合物Eを用いて作製された比較例3〜5の感光体よりも、半減露光量E1/2が小さく、感度に優れることが判った。また実施例1〜6の感光体の方が、比較例3〜5の感光体よりも、応答性に優れ、高速で画像を形成する場合や低温低湿環境下で画像を形成する場合にも、高品質の画像を提供することができることが判る。
【0259】
また実施例1〜6と比較例8〜10との比較から、電荷輸送物質に前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用いて作製された実施例1〜6の感光体と、電荷輸送物質に前記構造式(16)で示される比較化合物Aを用いて作製された感光体とは、同程度の感度を有するけれども、実施例1〜6の感光体の方が、比較例8〜10の感光体よりも、低温低湿環境下における応答性に優れ、低温低湿環境下において高速で画像を形成する場合にも、高品質の画像を提供することができることが判る。
【0260】
以上のように、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂および水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含有する下引き層と、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを組合せることによって、生産性が高く、かつ低温低湿環境下においても高い応答性を示し、小型で画像形成速度が速く低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現可能な電子写真感光体を得ることができた。
【0261】
<評価2>
実施例1,3および4で作製した各電子写真感光体について、感光層の耐刷性を評価した。耐刷性の評価は、円筒状の感光体を用い、以下のように行った。レーザを露光光源とする市販のレーザビームプリンタ(シャープ株式会社製:DM4501)を改造して得られた装置に、実施例1,3および4で作製した各感光体をそれぞれ搭載し、記録紙上に画像を形成した。得られた画像を目視観察し、画像の品質を評価した。これを初期の画像品質とした。次に、初期の画像品質の評価に用いた画像を含めて5万枚の画像形成を行った後、さらに画像形成を行い、得られた画像を目視観察し、画像の品質を評価した。評価結果を表41に示す。
【0262】
【表41】
Figure 0003947473
【0263】
実施例1,3と実施例4との比較から、電荷輸送層における電荷輸送物質(A)と結着樹脂(B)との比率(A/B)が重量比で2/3以下である実施例1,3の感光体を搭載した装置では、5万枚の画像形成後も良好な品質の画像を提供することができるのに対し、前記比率A/Bが7/8であり、2/3を越え結着樹脂の比率が低い実施例4の感光体を搭載した装置では、5万枚の画像形成後の画像に、感光層の膜削れに起因する地汚れが発生することが判る。また前述の表40に示すように、前記比率A/Bが2/3以下である実施例1,3の感光体は高い応答性を示す。
【0264】
以上のように、電荷輸送物質に前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用い、電荷輸送物質(A)と結着樹脂(B)との比率(A/B)を重量比で2/3以下とすることによって、応答性を低下させることなく、感光層の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の長寿命化を実現することができた。
【0265】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、下引き層は特定の樹脂を含有し、感光層は特定の構造を有する電荷移動度の高いエナミン化合物を含有するので、生産性が高く、かつ低温低湿環境下においても高い応答性を示し、小型で画像形成速度が速く低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現可能な電子写真感光体を提供することができる。
【0266】
また本発明によれば、感光層は特に高い電荷移動度を有するエナミン化合物を含有するので、低温低湿環境下においてさらに高い応答性を示す電子写真感光体を提供することができ、電子写真装置の画像形成速度をさらに高速化することが可能である。
【0267】
また本発明によれば、下引き層はさらに酸化チタンを含有するので、下引き層への電荷の蓄積を防ぎ、繰返し使用した場合の電子写真感光体の残留電位の上昇を低減することができるとともに、下引き層に適度の半導電性を付与することができ、感光層の露光されなかった部分の表面電荷の減少を抑えて表面電位を保持し、かつ露光された部分の表面電位を充分に減衰させ、現像に必要な電位ギャップである前述の露光されなかった部分の表面電位と露光された部分の表面電位との差を充分な大きさに確保することが可能となる。
【0268】
また本発明によれば、感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、特定の構造を有する電荷移動度の高いエナミン化合物を含む電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る機能分離型感光層であるので、電子写真特性に優れるとともに、繰返し使用した場合にも電子写真特性の低下することがなく、繰返し使用時の安定性に優れる耐久性の高い電子写真感光体を得ることができる。
【0269】
また本発明によれば、電荷輸送物質は特定の構造を有する電荷移動度の高いエナミン化合物を含むので、応答性を維持したまま、従来公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率で結着樹脂を加えることができ、応答性を低下させることなく、感光層の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の長寿命化を実現することができる。
【0270】
また本発明によれば、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体が用いられるので、電子写真感光体に対する露光の開始から現像の終了までの時間を短くした場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することが可能である。
【0271】
また本発明によれば、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を備えるので、画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することが可能である。
【0272】
また本発明によれば、電子写真装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す斜視図である。図1(b)は、電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図2】本発明の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図3】図3は、電子写真装置100の構成を簡略化して示す側面配置図である。
【図4】製造例1−3の生成物のH−NMRスペクトルである。
【図5】図4に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。
【図6】製造例1−3の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルである。
【図7】図6に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図8】製造例1−3の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルである。
【図9】図8に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図10】製造例2の生成物のH−NMRスペクトルである。
【図11】図10に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。
【図12】製造例2の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルである。
【図13】図12に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図14】製造例2の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルである。
【図15】図14に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【符号の説明】
1,2 電子写真感光体
11 導電性支持体
12 下引き層
13,130 感光層
14 電荷発生層
15 電荷輸送層
16 電荷発生物質
17 電荷輸送物質
18 結着樹脂
30 露光手段
31 光
32 帯電器
33 現像器
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写帯電器
35 定着器
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーナ
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 感光体駆動手段
38 制御手段
45 露光位置
46 現像位置
51 転写紙
100 電子写真装置

Claims (13)

  1. 導電性材料から成る導電性支持体と、
    前記導電性支持体上に設けられ、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂および水とアルコールとの混合溶媒に可溶性の樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含有する下引き層と、
    前記下引き層上に設けられ、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを有することを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 0003947473
    (式中、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
  2. 前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
    Figure 0003947473
    (式中、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
  3. 前記下引き層は、水溶性ポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2記載の電子写真感光体。
  4. 前記下引き層は、水とアルコールとの混合溶媒に可溶性のポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2記載の電子写真感光体。
  5. 前記下引き層は、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2記載の電子写真感光体。
  6. 前記下引き層は、さらに酸化チタンを含有することを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  7. 前記感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る機能分離型感光層であり、
    前記電荷輸送物質は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  8. 前記電荷輸送層は、さらに結着樹脂を含有し、
    前記電荷輸送層において、前記電荷輸送物質(A)と前記結着樹脂(B)との比率(A/B)は、重量比で2/3以下であることを特徴とする請求項7記載の電子写真感光体。
  9. 電子写真感光体を帯電させる工程と、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施し、静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像を現像する工程とを含む電子写真画像形成方法であって、
    前記電子写真感光体には、請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真感光体が用いられることを特徴とする電子写真画像形成方法。
  10. 前記電子写真感光体に対する露光の開始から前記静電潜像の現像の終了までの時間は、90ミリ秒(90msec)以下であることを特徴とする請求項9記載の電子写真画像形成方法。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、
    露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする電子写真装置。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真感光体であって装置本体に回転自在に支持される電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を回転周速Vpで回転駆動させる感光体駆動手段と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、
    露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段と、
    前記露光手段による露光位置から前記現像手段による現像位置までの前記電子写真感光体の外周面に沿った距離Lを前記回転周速Vpで除した値d(=L/Vp)が90ミリ秒(90msec)以下になるように、前記感光体駆動手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする電子写真装置。
  13. 前記電子写真感光体は、円筒状または円柱状の形状を有し、前記電子写真感光体の直径は、24mm以上40mm以下であることを特徴とする請求項12記載の電子写真装置。
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