JP3944240B2 - アデノ関連ウイルスdnaのインビトロパッケージング - Google Patents

アデノ関連ウイルスdnaのインビトロパッケージング Download PDF

Info

Publication number
JP3944240B2
JP3944240B2 JP50162197A JP50162197A JP3944240B2 JP 3944240 B2 JP3944240 B2 JP 3944240B2 JP 50162197 A JP50162197 A JP 50162197A JP 50162197 A JP50162197 A JP 50162197A JP 3944240 B2 JP3944240 B2 JP 3944240B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aav
dna
extract
packaging
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP50162197A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11512923A (ja
Inventor
ツォー,シャオフイ
ムジッカ,ニコラス
ゾロツキン,サーゲイ
ニ,テイファ
Original Assignee
リサーチ ファウンデーション オブ ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク アット ストニー ブルック
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by リサーチ ファウンデーション オブ ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク アット ストニー ブルック filed Critical リサーチ ファウンデーション オブ ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク アット ストニー ブルック
Publication of JPH11512923A publication Critical patent/JPH11512923A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3944240B2 publication Critical patent/JP3944240B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/85Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for animal cells
    • C12N15/86Viral vectors
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K48/00Medicinal preparations containing genetic material which is inserted into cells of the living body to treat genetic diseases; Gene therapy
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2750/00MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA ssDNA viruses
    • C12N2750/00011Details
    • C12N2750/14011Parvoviridae
    • C12N2750/14111Dependovirus, e.g. adenoassociated viruses
    • C12N2750/14141Use of virus, viral particle or viral elements as a vector
    • C12N2750/14143Use of virus, viral particle or viral elements as a vector viral genome or elements thereof as genetic vector

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Description

謝 辞
本発明は部分的にNational Institute of General Medical Science(RO1GM3572302)およびNational Heart, Blood, and Lung Institute(RO1 HL/DK50257)からの助成金によって支援された。米国政府は、本発明に関する権利を享受し得る。
序 論
技術分野
本発明は、特定の哺乳類形質導入ベクター、ならびにインビトロでカプシド形成された哺乳類形質導入ベクターの産生および使用方法に関する。
背 景
アデノ関連ウイルス(AAV)は、パルボウイルス科に属する(Muzyczka, N., Current Topics in Microbiology and Immunology 158:97-129 1992)。パルボウイルスビリオンは、3つの構造タンパク質と、直線状の1本鎖(ss)DNAゲノムとによって構成される。粒子は、正12面体対称性を有し、18〜26nmの直径を有する。AAVの5つの血清型が同定されているが、最も広く特徴付けられているのはAAV−2である。AAV−2の完全なヌクレオチド配列が報告されているが(Srivastavaら、J. Virol. 45:555-564 1983)、これは4680個の塩基を有する。このAAVゲノムは、145個の塩基からなる末端逆方向反復(terminal inverted repeats)(TR)を有する。
変異研究によって、AAVゲノム中少なくとも3つの領域が同定されている。rep領域は、AAV DNAの複製および/またはレスキューに必要な4つのタンパク質をコードする。Repタンパク質は、4つの重複するポリペプチド、即ちRep78、Rep68、Rep52およびRep40で構成される。cap領域は、AAVカプシドタンパク質をコードすると思われ、これらの領域における変異体は、DNAの複製を行うことができるが、感染性粒子は形成しない。変異研究によって、DNAの複製には逆方向末端反復がシスで必要であることが分かっている。
AAVの3つのカプシドタンパク質、即ちVP1、VP2およびVP3は、90、72および62kDaの分子量を有し、1:1:10の比率でビリオン中に存在する。遺伝子研究によって、VP2およびVP3はそれら自身によって子孫DNAをカプシド形成し得ることが分かっている(Hermonatら1984 J. Virol. 51:329-333; Tratschinら1984 J. Virol. 51:611-619)。しかし、カプシドタンパク質の完全補体を有するものに比べて、VP1を欠くビリオン粒子は感染性が低い。AAV、B19および昆虫細胞中で発現するアリューシャン病ウィルスのものを含むパルボウイルス構造タンパク質は、空のカプシドにアセンブル可能である(Ruffingら1992 J. Virol. 66:6922-6930, 1992; Brownら1991 J. Virol. 65:2702-2706; Christensenら1993 J. Virol. 67:229-238)。核の蓄積(nuclear accumulation)およびその後の粒子アセンブリを効率的に行うためにはサブユニットが複合体を形成しなければならないことが、AAVカプシドタンパク質の細胞下分布に関する結果によって示唆されている(Wistubaら1995、印刷中)。
AAVは、組込みプロウィルスとして、あるいは溶解性感染によって繁殖され得る(Atchisonら1965 Science 149:754-756; Hogganら1972 Proceedings of the Fourth Lepetite Colloquium, Cocoyac, Mexico, North-Holland, Amsterdam, pp. 243-249)。潜伏感染を形成する能力は、AAVのライフサイクルの一部であるように思われる。特別な状況下以外において(Yacobsonら1987 J. Virol. 61:972-981; Schlehoferら1986 Virology 152:l10-117; Yalkinogluら1988 Cancer Res. 48:3123-3125)、AAVは、生産的ウィルス感染を開始するためのヘルパーウィルスの存在を必要とする。ヘルペス科またはアデノウイルス科のいずれかのメンバーは、必要なヘルパー機能を提供でき(Atchisonら1965 Science 149:754-756; Melnick 1965 J. Bacteriol 90:271-274; McPherson 1985 Virology 147:217-222)、また、ワクシニアウィルスは少なくとも部分的なヘルパー機能を提供することができる(Schlehoferら1986 Virology 152:l10-l17)。ヘルパーウィルスが存在しない場合、AAVは子孫を全く産生せず、代わりに、宿主染色体に組み込まれてプロウィルスを形成する(Hogganら1972; Bernsら1975 Virology 68:556-560; Handaら1977 Virology 82:84-92; Cheungら1980 J. Virol. 33:739-748)。希に例外もあるが、AAVプロウィルスは安定なようである。しかし、AAVプロウィルスを有する細胞株が、後にヘルパーウィルスに重複感染した場合、AAVゲノムは切除されて通常の生産的感染を経る(Hogganら1972; Cheungら1980 J. Virol. 33:739-748)。後にレスキューされ得る潜伏感染を確立するこの能力は、ヘルパーウィルスが存在しない場合にAAVの生存を確実にするメカニズムであるように思われる。
感染性AAVビリオンのインビトロアセンブリには、パッケージされたDNA上における逆方向末端反復の存在が必要であり、これは、インビボでのパッケージングのシグナルがTR配列内にあることを示唆している(Samulskiら1989 J. Virol. 63:3822-3828; McLaughlinら1988 J. Virol. 62:1963-1973)。野生型AAVの110%を越えるゲノムの大きさは、低いカプシド形成効率につながる。インビボにおけるAAVアセンブリに関する動力学的な研究によって、完全な粒子が現れる前に空のカプシドが産生されることが明らかになった(MyersおよびCarter 1980 J. Virol. 102:71-82)。随伴性のDNA複製(concomitant DNA replication)が無い場合に、予備形成したカプシド内に子孫DNAをパッケージすることが提案されている。また、アリューシャン病ウィルスDNAのパッケージングモデルによれば、カプシド形成は、子孫DNAと空のウィルスカプシドとの相互作用、その後の置換合成、そしてDNAの最終的パッケージングによって開始されることが示唆される(WillwandおよびKaaden 1980 J. Virol. 64:1598-1605。
ウィルス形質導入ベクターとしてのAAVの使用は、HermonatおよびMuzyczka(Proc. Natl Acad. Sci. 81:6466-6470 1984)によって初めて実証された。マップ位置52と92との間において、AAVカプシド遺伝子を欠失させてベクターdl52−91を作り、SV40制御下における細菌性ネオマイシン耐性遺伝子を挿入した。アデノウィルスに感染させておいたヒト細胞内に組換えプラスミドをトランスフェクトすることによって、dl52−91/ネオウィルスストックを得た。野生型cap遺伝子を有するプラスミドで同時トランスフェクトすることによって、欠けているカプシドタンパク質を供給した。この方法により、106までの感染単位/mlを有するdl51−91/ネオウィルスストックを生成した(Hermonatら1984 J. Virol., 51:329-333)。これらのストックの形質導入頻度は、野生型ウィルスの組込み頻度、0.5%〜5.0%とほぼ同じであった(Laughlinら1986 J. Virol. 60:515-524(1986); Handaら1977 Virology 82:84-92)。AAV TR配列および変化量の非反復AAV配列を有する他のAAVベクターは、外来DNAをヒト細胞内に効率的に形質導入できることが実証されている(McLaughlinら1988 J. Virol. 62:1963-1973; Samulskiら1987 J. Virol. 61:3096-3101; Samulskiら1989 J. Virol. 63:3822-3828)。
rAAV形質導入ベクターを使用する際の困難点の1つは、組換えウィルスストックを増殖させるために必要とされる煩雑な手順である。組換えストックの増殖には、AAVおよびヘルパーウィルス遺伝子両方が存在する必要があり、産生される組換えウィルスストックはしばしば、混入物としてアデノウィルスおよび野生型AAVウィルス粒子の両方を有する。トランスのAAV Repおよびcap遺伝子産物を供給するための野生型AAV感染性プラスミドを使用すると、許容不可能に高いレベルの野生型AAVウィルス、即ち約10:1の野生型対組換え体比率を有するストックが産生される(HermonatおよびMuzyczka 1984; McLaughlinら1988; Tratschinら1985 Mol. Cell Biol. 5:3251:3260; Lebkowskiら1988 Mol. Cell Biol. 8:3988-3996; Vincentら1988 Vaccine 90:353-359)。理由は明らかではないが、野生型ウィルスの増幅に対する強い選好性がある。野生型AAVウィルスを用いた相補性によって組換えウィルスストックを増幅させる場合にも同じことが言える。
関連文献
組換えストックにおける野生型AAVウィルスのレベルを低減するべく、いくつかの方策が試されている。HermonatおよびMuzyczka(1984)は、λバクテリオファージDNAの2.5kbフラグメントを野生型AAVプラスミドの非必須領域内に挿入することによって、組換えゲノムins96λ/Mを産生した。これは、トランスにおいてAAV遺伝子産物の全てを複製および供給し得たが、それ自身が大き過ぎてパッケージできなかった。105〜106/mlの組換え力価を得ることができたが、ストックには5%〜10%レベルの野生型ウィルスが混入していた(HermonatおよびMuzyczka 1984 Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 91:6466-6470; McLaughlinら1988 J. Virol. 62:1963-1973)。明らかに、混入野生型AAVウィルスは、相補ヘルパープラスミドins96λ/MとAAVベクター配列との間の組換えの結果であった。いくつかの研究所は、末端反復の一部を欠き、あるいはrep変異を含み、それ故に、パッケージ不可能な相補AAVプラスミドの使用を試みている。(Tratschinら1985 Mol. Cell Biol. 5:3251-3260; Lebkowskiら1988 Mol. Cell Biol. 8:3988-3996。この方法によっても、相当なレベルの野生型混入(1%〜50%)が生じるが、これは、おそらく、rAAVおよび相補プラスミドの重複部分の相同な組換えに起因する。さらに、この組換えストックの力価は少ない(102〜103/ml)。
Samulskiら(1989)は、組換えAAVゲノムと相補ヘルパーAAVプラスミドとの間に相同配列が無い相補プラスミド(pAAV/Ad)を構築した。このプラスミドは、アデノウィルス5末端反復を側面に有するAAVコード配列で構成されていた。明らかに、これらのアデノウィルス末端は、通常アデノウィルスDNA複製に用いられるメカニズムによって、アデノウィルス感染細胞内へのトランスフェクションの後に、相補AAVプラスミドに制限された増幅を受けさせた。pAAV/Ad相補プラスミドは、104〜105/mlの組換えウィルス力価を生じ、検出可能な野生型AAVの混入が全く無かった(Samulskiら1989 J. Virol. 63:3822-3828)。
Vincentら(Vaccine 90:353-359 1990)は、末端反復を欠くAAVゲノムの組込みコピーを有するいくつかのHeLa細胞株を単離した。末端反復が無いことによって、細胞がアデノウィルスに重複感染した際の、組込みAAV配列のレスキューおよびパッケージングが防がれた。これらの株の中の1つ(HA25a)は、103〜104/mlの力価を有する組換えストックを生成することが可能であった。明らかに、産生されたウィルスの力価が少なかったのは、パッケージング細胞株内における野生型AAV遺伝子のコピー数が少なかったためであった。Mendelsonら(Virology 166:154-165 1988)もまた、構成的にAAV Repタンパク質を発現する細胞株をいくつか単離した。
ChejanovskyおよびCarter(Virology 171:239-147 1989)は、AAV Rep遺伝子内におけるアンバー変異体(pNTC3)の単離を報告している。この変異は、誘導可能ヒトセリンtRNAアンバーサプレッサーを有するサル細胞株上でそれを増殖させることによって効率的に抑制することができた。得られたウィルス力価は107〜108/ml(同じサルの株で得られる野生型力価の約10%)であったが、アンバー変異の復帰頻度は約10-5であり、従って、許容不可能なレベルのwtAAVの混入を生じた。
rAAVストックを増殖させる現在の方法は、HermonatおよびMuzyczka(1984)によって考案され、Samulskiら(1989)によって記載されているpAAV/Adを用いて、あるいは、AAVまたはアデノウィルス末端配列を有しないヘルパーAAVプラスミドを用いて改変されたものである。これらの方法は、約106/mlのrAAV力価を生成し、そして依然として、検出可能な量のwtAAVを含有し得る。さらに、この方法によって調製されるrAAVは、顕著なアデノウィルス混入、ならびに、宿主細胞株内に存在する外因性ウィルスの混入を含む。これらの困難点の全ては、AAVのインビトロパッケージング系を開発することによって解決され得る。Mollaら(Science 254:1647-1651, 1991)がRNAウィルスであるポリオウィルスのインビトロパッケージング系を報告しているものの、哺乳類DNAウィルスのインビトロパッケージング系が記載されていない。
発明の要旨
本発明の目的は、インビトロ反応においてDNA基質をパッケージして、哺乳類細胞に形質導入し得るアデノ関連ウイルス(AAV)粒子を産生する方法を提供することである。本発明の別の目的は、形質導入し得るAAV粒子内にDNA基質をインビトロパッケージするのに有用な無細胞抽出物を産生する方法を提供することである。インビトロパッケージされるAAV粒子、ならびに哺乳類細胞の形質導入においてそれを使用する方法も提供される。
以下においてすぐに明らかになるように、本発明の上記および他の目的は、インビトロにおいてDNA基質をAAVカプシド内にパッケージすることによりパッケージされたDNA基質を受容哺乳類細胞に導入し得るウィルス粒子あるいは組換えウィルス粒子を産生し、結果的に、受容細胞内で基質DNAあるいは基質DNAの一部を発現あるいは機能させる方法を提供することによって達成される。具体的には、本発明の方法は、(a)AAV複製を許容する哺乳類細胞培養物を、AAVカプシドおよびRep遺伝子コード配列を持つdAAVベクターでトランスフェクトする工程と、(b)上記細胞培養物をヘルパーウィルスに感染させる工程と、(c)上記トランスフェクトされた細胞培養物から抽出物を調製する工程と、(d)上記抽出物をDNA基質と合わせる工程と、(e)上記基質DNAのパッケージングを促進する条件下で上記抽出物をインキュベートする工程とを包含する。より特定の実施形態において、本発明の方法は、上記パッケージされた抽出物を高い温度で加熱する工程をさらに包含し、そして必要に応じて、上記パッケージされた抽出物をクロロホルムで抽出する工程を包含する。
他の実施形態において、本発明は、受容哺乳類細胞に形質導入し得るインビトロパッケージされたAAV粒子を提供する。このような実施形態の1つにおいて、AAV粒子内にパッケージされた基質DNAは、インビボパッケージング方法によって作られる以前のrAAVベクターの大きさおよび配列という典型的制約によって制限されない。
本発明はまた、インビトロでパッケージされたAAV粒子を用いて基質DNAを受容哺乳類細胞に移入する方法、ならびに、基質DNAのAAV粒子内へのインビトロパッケージングを行い得る組成物を調製する方法を提供する。
本発明をよりよく理解できるように、以下の定義を示す。
ヘルパーウィルス:アデノウィルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バールウイルス、あるいはワクシニアウイルス等の、適切な真核細胞内に感染したときに生産的AAV感染を生じさせるウィルス。
ヘルパーAAV DNA:AAV複製および/またはインビトロパッケージングに不可欠な機能を欠く組換えAAVに対して、トランスでAAV機能を提供するために用いられるAAV DNA配列。
rAAV:組換えAAV;AAV配列の一部、通常最低でも逆方向末端反復あるいはWO9413788に記載される2重D配列(double-D sequences)、および一部の外来(即ち、非AAV)DNAを有するDNA分子。
dAAV:欠損AAV;本願の目的において、dAAVはAAVのRepおよびカプシドコード領域を有するが、インタクトな逆方向末端反復を欠いているので、これらをインビボでパッケージすることはできない。
AAV粒子:インビボあるいはインビトロでDNAをAAVカプシド内にパッケージすることによって産生される感染性粒子であり、パッケージされたDNAはwtAAVゲノムでもrAAVでもよい。
AAV(TRLacZ):パッケージされたDNAがTRLacZ(CMVプロモーターの制御下におけるAAV末端反復およびLacZコード配列)を有するAAV粒子。
形質導入:細胞内で遺伝子が発現されるように、ウィルス粒子を用いた遺伝子の細胞への移入(transfer)。
トランスフェクション:他のあらゆる物理的あるいは化学的方法を用いたDNAの細胞への移入。
【図面の簡単な説明】
以下に示す具体的な実施形態の詳細な説明を参照し、本出願書類の一部をなす図面と合わせて考慮することによって、本発明がよりよく理解されるであろう。
図1:pTRLacZ、pAB11、野生型AAV、pIM45およびdl63−87/45の図。pTRLacZおよびpAB11における特定の制限エンドヌクレアーゼの切断部位を示す。これらの制限フラグメントは、表IIに記載されるインビトロパッケージング実験で基質として使用される。この図には、dl63−87/45におけるカプシド遺伝子の欠失位置も図示されている。pTRLacZおよびpAB11(Goodmanら、1994 Blood 84:1492-1500)は、CMV初期プロモーターおよびSV40初期ポリアデニル化シグナル(図示せず)の制御下においてLacZコード配列を有するrAAVプラスミドである。pAB11は、CMV配列とLacZ遺伝子との接合部近傍のPstI部位を欠いている点、ならびにLacZコード配列内に核局在化シグナルを有する点でpTRLacZとは異なる。両プラスミドともに、145bpの逆方向反復配列以上のAAV配列を持っていない。dl63−87/45には、点線で示す領域の欠失がある。pIM45あるいはdl63−87/45のどちらも、pTRLacZあるいはpAB11と相同な配列を全く持っていない。pIM45あるいはdl63−87/45のどちらも、AAV TR配列を全く持っていない。
図2:インビトロパッケージング細胞抽出物のウェスタン分析。アデノウィルスのみに感染させた、あるいはアデノウィルスに感染させ、かつdl63−87/45またはpIM45プラスミドDNAでトランスフェクトした293細胞から、実施例1に記載されるように抽出物を調製した。pIM45+Ad抽出物由来のRepタンパク質の部分的な枯渇は、タンパク質G−ビーズ(protein G-beads)に結合したマウスモノクローナル抗Rep78/68抗体とともに抽出物をインキュベートすることによって達成された。10μlの各抽出物を、ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、ニトロセルラー膜に移入し、そして、4つのRepタンパク質を全て認識する抗Repマウスモノクローナル抗体あるいは3つのカプシドタンパク質を全て認識するモルモットポリクローナル抗カプシド抗体(右パネル)を用いて、Repタンパク質(左パネル)についてプローブした。
図3:インビトロでパッケージされたpTRLacZウィルスおよびインビボでパッケージされた野生型AAVの塩化セシウム密度勾配遠心分離。インビトロでパッケージされたpTRLacZウィルスおよびインビボで産生された野生型AAVウィルスを、実施例3に記載の平行塩化セシウム密度勾配で遠心分離した。pTRLacZ(黒丸)ウィルスは、β−ガラクトシダーゼ染色法によって力価測定し、野生型AAV(白丸)は、感染性センターアッセイ(infectious center assay)によって力価測定した。両ウィルス調製物とも、55℃で30分間加熱したが、クロロホルムでの抽出は行わなかった。
図4:インビボでパッケージされたwtAAVおよびインビトロでパッケージされたAAV(TRLacZ)のショ糖勾配遠心分離。CsCl勾配からのピーク画分を、15〜30%のショ糖勾配で沈澱させた。このウィルスを、図3のように力価測定した。pTRLacZ(黒丸)、wtAAV(白丸)、−X−屈折率。
具体的な実施形態の説明
組換えAAVベクターには、それをヒト遺伝子治療の有力な候補にする特徴がいくつかある。第1に、5kbのクローニング容量により、様々なcDNAに対応することができる。第2に、ヒト細胞内における形質導入の頻度は高い。これまでのところ、AAV形質導入に対して耐性を示したヒトの細胞株あるいは組織はない。第3に、ヒトあるいは動物集団のいずれにおいても、AAVに関連する疾患はない。さらに、一般に、rAAVベクターは、増殖するためには、2つの異なるヘルパーウィルスゲノムを必要とするので、AAVベクターの自然伝染(natural spread)には固有の限界がある。さらに、プロウィルス細胞がアデノウィルスに重複感染した場合、野生型AAVゲノムも供給されない限り、Rep-AAVプロウィルスがDNAの複製を行うことができない(McLaughlinら1988 J. Virol. 62:1963-1973(1988))。ワクチン接種によって、AAVプロウィルスを持つ固体をアデノウィルス感染から守ることができる。第4に、AAVプロウィルスは安定なようである。第5に、Rep遺伝子が存在しない場合、AAV末端反復は転写的に中立なようである。従って、外来遺伝子をそれら自身のエンハンサーおよびプロモーターエレメントの制御下において有することが不可欠である場合、AAVベクターは有用であり得る。最後に、AAVベクターに関する重複感染免疫性は存在しない。細胞株は、いくつかの異なるAAVベクターを用いて、複数回形質導入され得る(Lebkowskiら1988 Mol. Cell Biol. 8:3988-3996; McLaughlinら1988 J. Virol. 62:1963-1973)。
組換えAAV(rAAV)ベクターの感染性ウィルスストックの産生を行う以前の方法では、生産的感染の途中に、インビボでのrAAVゲノムのパッケージングを採用していた。rAAVの生産的感染およびインビボパッケージングには、アデノウィルスのようなヘルパーウィルス、ならびにrAAVゲノムから欠失した必須AAV機能を用いた相補性が必要である。結果的に、インビボで産生されたrAAVウィルスストックは、相当なレベルのヘルパーウィルスおよび野生型(wt)AAVを有し得る。さらに、インビボでパッケージされたrAAV粒子の力価は、典型的に、wtAAVについて得られるものよりも大幅に少ない。また、細胞培養物内で調製されたAAVベクターは全て、外来性のウィルスの混入を受け易く、この外来性のウィルスは、rAAVを増殖させるために使用される細胞内に存在し得る。
本発明は、インビトロにおけるrAAVゲノムのパッケージング方法を提供することによりこれらの困難点を克服する。インビトロとは、細胞内環境以外で起こることを意味する。rAAVゲノムが存在する唯一のDNAであり、それ故に、インビトロでパッケージされたrAAVウィルスストックへのwtAAVあるいはヘルパーウィルスの混入が排除される条件下において、インビトロでのパッケージングを行うことができる。さらに、実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、wtAAVゲノムよりも少なくとも2倍大きく且つ基質DNA上のAAV TR配列の存在を必要としない、基質DNAの形質導入可能なAAV粒子の産生を可能にする。
本発明の方法においては、欠損AAV(dAAV)ベクターでトランスフェクトし、ヘルパーウィルスに感染させた宿主細胞からパッケージング成分細胞抽出物(PCCE)を調製する。dAAVベクターは、AAVからのRepおよびカプシド遺伝子コード配列を有するが、逆方向末端反復配列を全く欠いている。ヘルパーウィルスの感染が有る場合、AAV Repおよびカプシドタンパク質が産生されるが、dAAV DNAは複製あるいはパッケージされない。選択されたベクターがAAV Repおよびカプシド遺伝子を発現させることができ且つパッケージされ得ない限り、数あるdAAVベクターのどれを用いてもよい。このようなdAAVベクターは、当該技術分野において周知であり、ここではこれ以上詳細には説明しない(例えば、Samulskiら1989を参照)。好ましくは、dAAVベクターはpIM45である(McCartyらJ. Virol. 65:2936-2945 1991)。ヘルパーウィルスは、哺乳類細胞においてAAVの生産的ウィルス感染を促進することが知られている数あるウィルスのいずれであってもよい。ヘルペス科あるいはアデノウィルス科のいずれかのメンバーでも、必要なヘルパーウィルス機能を提供することができる。いくつかの条件下では、ワクチニアウィルスがヘルパーウィルスとして有用であり得る。好ましくは、ヘルパーウィルスはアデノウィルスであり、最も好ましくは、ヘルパーウィルスはアデノウィルス5である。PCCEの調製に有用な宿主細胞には、AAV複製を許容するあらゆる哺乳類細胞が含まれ、これには、HeLa細胞あるいはヒト293細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。特に有用なのは、ヘルパーウィルスに感染させたヒト細胞株である。好ましくは、このPCCEの調製に使用される細胞株は、ヒト293細胞である(Grahamら、1977 J. Gen. Virol. 36:59-72)。
PCCEの調製は、当該技術分野において周知の手順によって、宿主細胞株を、dAAVベクターでトランスフェクトし、そして、ヘルパーウィルスに感染させることによって行われる。トランスフェクションは、DEAE−デキストラン法(McCutchenおよびPagano, 1968, J. Natl. Cancer Inst. 41:351-357)、リン酸カルシウム法(Grahamら1973, J. Virol. 33:739-748)、または、これらに限定はされないがマイクロインジェクション、リポフェクション、およびエレクトロポレーションを含む、当該分野で公知の任意の方法によって実施され得る。トランスフェクションは、ヘルパーウィルス感染細胞を用いて行うことができ、または、ウィルス感染と同時にあるいはその前に行うことができる。ヘルパーウィルスの感染は、従来の方法によって行われる。アデノウィルスをヘルパーウィルスとして用いる場合、望ましい感染多重度は5から10の間であり得る。トランスフェクションに使用されるdAAVベクター(および/または他のベクター)の量は、細胞106個あたりDNA約0.2〜10μgであるが、異なるDNA構築物および細胞型によって変動し得る。
典型的に、PCCEの調製を行う際には、約60%のコンフルーエンシーに増殖させた宿主細胞を、150mmプレートあたり約20μgのdAAVでトランスフェクトし、そして、約5から10の感染多重度でヘルパーウィルスに感染させる。感染/トランスフェクト後の細胞を、感染/トランスフェクションから約48時間〜数日後に収集し、これを先ず冷リン酸緩衝食塩水で洗浄し、その後、冷低張液で洗浄する。洗浄された細胞を、遠心分離によって収集し、少量の低張液中で再懸濁し、そして、4℃でインキュベートする。これらの細胞を、例えば静かな(dounce)ホモゲナイゼーションによって破裂し、NaCl濃度を0.2Mにまで高める。4℃でのインキュベーションの後、遠心分離によって懸濁液を清澄にし、上清を保存緩衝液に透析し、そして、低温、好ましくは−80℃で保存する。巨大分子の低温保存に適した保存緩衝液は、当該技術分野においては周知であり、典型的には、グリセロールのような凍結防止剤を緩衝液中に含有する。好ましくは、保存緩衝液は20mMのTrisCl(pH7.4)、0.1mMのEDTA、25mMのNaCl、10%のグリセロールおよび1mMのDTTである。
PCCEは、上記の方法によって最も簡便に調製されるが、例えば、ヘルパーウィルスに感染した細胞から調製した細胞抽出物に精製AAV Repおよびカプシドタンパク質を添加するか、あるいは、Repおよび/またはcapタンパク質を構成的に発現する宿主細胞を用いる等の他の方法によって適切なPCCEが調製され得ることは明らかである。(例えば、Yangら1994 J. Virol. 68:4847)。あるいは、抽出物中に存在するパッケージングに必須な細胞成分を、標準的な生化学的な技法によって単離し、これを精製されたAAV Repおよびカプシドタンパク質と再結合させて完全なパッケージング抽出物を提供することが可能である。
本発明のインビトロパッケージ方法は、PCCEと適切なDNA基質を合わせ、そしてパッケージングを促進する条件下でインキュベートすることによって行われる。パッケージングを促進する条件には、適切な濃度のMgCl2、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、リボヌクレオチド三リン酸、ATPを再生する系および緩衝液が含まれる。必要に応じて、インキュベーション工程の後で、PCCE内に存在し得るヘルパーウィルスを全て不活性化するために、インビトロでパッケージされたウィルス粒子を加熱し得る。熱処理によって、インビトロでパッケージされた粒子に非特異的に結合し得る細胞タンパク質も全て不活性化される。(インビボで産生されたAAVビリオンと同様に)インビトロでパッケージされたAAV粒子は熱に安定である。本発明の方法の1つの実施形態においては、熱処理したインビトロパッケージ粒子をクロロホルムで抽出する。本発明の第2の実施形態においては、このクロロホルム抽出を省略する。
典型的に、本発明のインビトロパッケージングのインキュベーションは以下のように行われる。約7mMのMgCl2と、約30mMのヘペス緩衝液(pH7.5)と、約0.5mMのジチオスレイトールあるいは類似の還元剤と、それぞれ約0.1mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPと、約4mMのATPと、それぞれ約0.2mMのCTP、UTPおよびGTPと、約40mMのクレアチンリン酸、約37.5μg/mlのクレアチンキナーゼと、約0.1〜100μg/mlの基質DNAとでPCCEのアリコート(最終反応溶液の約0.5容量)を調製する。反応物を37℃で、時間インキュベートする。これらの条件の改変例のいくつかが許容的且つ適切であり、また、それを、得られた感染性粒子の歩留まりをアッセイすることによって容易に決定することができることは、当業者には明らかである。AAV粒子に非特異的に結合し得る外来性の細胞タンパク質を全て除去するために、そして、残留ヘルパーウィルスを全て不活性化するために、インキュベーションの後で反応産物を任意に加熱し得る。典型的に、約55℃、約30分間の加熱で十分である。クロロホルム耐性粒子の産生が望まれる場合、熱処理反応物をクロロホルムで数回抽出する。クロロホルム抽出を省略した場合は概して、パッケージされた特定の基質DNAに依存して、クロロホルム感受性粒子とクロロホルム耐性粒子の混合物が産生される。
本発明のインビトロパッケージング法は、2種類のインビトロでパッケージされたAAV粒子、即ち、クロロホルム耐性粒子(CRP)およびクロロホルム感受性粒子(CSP)を産生するのに有用である。本発明のCRPおよびCSPは共に、パッケージされた基質DNAを受容細胞に移入することができる。これらは、インビトロパッケージング反応における基質DNAの構造的な要件、およびショ糖勾配沈澱速度によって決定される大きさにおいて互いに異なる。CRPおよびCSPは、CSPを調製する場合にクロロホルム抽出工程が省略される以外は、上記本発明のインビトロパッケージング法に従って同一の方法で調製される。
塩化セシウム勾配遠心分離によって測定される密度、ならびにクロロホルム、熱あるいはDNaseIを用いた処理に対する耐性を含むいくつかの基準において、クロロホルム耐性粒子はインビボでパッケージされたAAV粒子と同じである。CRPを産生する場合、基質DNAは、wtAAVのゲノムサイズの約120%よりも大きくなってはならない。好ましくは、基質DNAは、wtAAVゲノムの大きさの50%〜110%の間であり、最も好ましくは、基質DNAは、wtAAVゲノムの大きさの80%〜105%の間である。さらに、CRP産生用の基質は、インタクトなAAV逆方向末端反復配列あるいはWO9413788に記載される2重D配列を有する。最適には、CRP産生用の基質DNAは、1本鎖または2本鎖のいずれかの複製型(RF)DNAである。本発明のインビトロパッケージング法の基質として使用されるRF−rAAVは、当該技術分野において周知の技術を用いて産生することができる(例えば、Hermonatら1984; Snyderら1990 J. Virol. 64:6204-6213; およびHongら1994 J. Virol. 68:2011-2015を参照)。典型的に、RF−rAAVは、AAV複製を許容する哺乳類宿主細胞を、rAAVプラスミドDNAおよびアデノウィルスのようなヘルパーウィルスで同時トランスフェクトすることによって調製される。トランスフェクションは、上記と同様の手順によって行われる。rAAV上に存在する特定のAAV配列に応じて、要求性のAAV遺伝子を有するがTR配列を欠いているAAVヘルパープラスミドを用いてトランスフェクトすることによって、AAV複製およびパッケージング機能に不可欠な欠けているAAV機能をトランスで提供することができる。好ましくは、wtAAV RFを形成する組換えの可能性を低くするために、上記AAVヘルパープラスミドおよびrAAVは、共通の配列を持たない。最も好ましくは、上記ヘルパーAAVプラスミドは、pIM45である(McCarty 1991)。他のヘルパーAAVプラスミド、例えば、AAV TRあるいはpHIVrep(Antoniら1991 J. Virol. 65:396-404)の代わりにアデノウィルス5末端配列を有するpAAV/Ad(Samulskiら1989)もまた適切である。RF−rAAV DNAは、改変型Hirt手順(J. Mol. Biol. 26:365-369 1967)のような、当該技術分野において周知の手順によって、トランスフェクトした細胞から単離することができる。これらの手順によって単離されたDNAには、他の細胞成分およびウィルス成分を実質的に含有しない。RF−rAAVは、化学的にあるいは酵素学的に合成することもでき(Snyderら1993 J. Virol. 67:6096-6104を参照)、あるいは、AAV TRを有し且つ細菌内で増殖した(progated)円形プラスミドから作ることもできる(Hongら1994を参照)。
本発明のCSPの産生において、基質DNAは、大きさによって、あるいはAAV TR配列の有無によって制限されない。wtAAVゲノムの大きさの最大2倍までのインビトロパッケージ基質DNAは、効率的に、受容哺乳類細胞に移入されその中で発現する。CSP産生用の基質DNAの大きさは、大型のDNAを破損することなく操作する能力によってのみ限定される。CSP産生用の基質DNAは、wtAAVゲノムの大きさの50%〜500%の間であり得る。好ましくは、CSP産生用の基質DNAは、wtAAVゲノムの大きさの100%〜200%の間である。CSP産生用の基質DNAはいかなるAAV配列を含む必要もない。具体的には、この基質DNAはAAV TR配列を含む必要はない。しかし、AAV TR配列を含めることは、形質導入後の移入された基質DNAの効率的な組込みおよびレスキューに有用であり得る。最後に、CSP産生用の基質DNAはAAV RFの形をとる必要はない。直線状あるいは円形のプラスミドDNAは、CSP産生用の基質DNAとして適している。適切な基質には、化学的にあるいは酵素学的に合成されたDNAが含まれる。
本発明のインビトロパッケージング法に使用される特定の基質DNAの性質は、受容細胞に移入しようとする特定の遺伝子あるいは他のDNA配列に主に依存する。基質DNAは、特定の遺伝子、コード配列、プロモーター、あるいは、上記以外のDNA配列のいずれにも限定されない。哺乳類受容体内で発現あるいは機能することができるあらゆる遺伝子あるいは他の組換えDNAが、基質DNAに適切に含まれ得る。(当該技術分野において、マーカー、レコーダー、あるいはレポーター遺伝子として知られている)容易に検出可能な産物を有する遺伝子を、基質DNAの一部として取り込むことが望ましい場合もあるが、本発明はこのような構築物に限定されない。容易に検出可能なレポーター遺伝子は、腫瘍化あるいは非腫瘍化産物を産生し得る。腫瘍化レポーター遺伝子は、使用可能ではあるが、その発癌性のためにあまり望ましくない。非腫瘍化レポーター遺伝子は、そのほんの一部を挙げると、β−ガラクトシダーゼ、ネオマイシンホスホロトランスフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、ルシフェラーゼ、β−グルクロニダーゼ、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼを含むが、これらに限定はされない。インビボでパッケージされたAAV粒子を用いて移入されたDNAの例の一部には、SV40初期プロモーターの制御下における細菌性ネオマイシンホスホロトランスフェラーゼ遺伝子(HermonatおよびMuzyczka 1984)、AAVp40プロモーターの制御下における細菌性クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(Tratschinら1984 Mol. Cell Biol. 4:2072-2081)、ヒトβ−グロビンc−DNA(Ohiら1990 Gene 89:279-282)、およびヒト甲状腺刺激ホルモン(Wondisfordら1988, Mol. Endocrinol. 2:32-39)が含まれる。本発明の方法との組合わせにおいて有用な他の遺伝子あるいはコード配列は、GM−CSF、G−CSF、M−CSFのようなサイトカイン、IL−2、IL−3、IL−7、IL−13のようなインターロイキン、NGF、CNTF、BDNFのような神経成長因子および神経栄養因子、チロシンヒドロラーゼ、ドパデカルボキシラーゼ、第XIII因子および第IX因子である。上記および類似のDNAが、インビトロでパッケージされたAAV粒子を用いた移入に適している。さらに、インビボでパッケージされたAAV粒子の場合に可能な大きさよりも大きい基質DNAを用いて本発明のCSPを調製することができるので、本発明の方法によって移入され得る遺伝子あるいは他のDNA配列の大きさについての制限は比較的少ない。
インビトロでパッケージされたAAV粒子の力価は、インビボで生成されたウィルスストックの組換えAAVウィルス力価を決定する際に一般に用いられる方法によって決定され得る。選択される特定の方法は、その基質DNAが持つ特定の遺伝子あるいは他のDNAに依存する。例えば、基質DNAがβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ)を持つ場合、上記力価は、形質導入体中のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の発現の頻度を測定することによって推定され得る。あるいは、rAAV力価は全て感染性センターアッセイによって決定され得る(McLaughlinら1988)。ウィルス粒子力価は、ドットブロットアッセイによって、あるいは当該技術分野において周知の方法を用いて分光光度的に決定され得る。典型的には、本発明のインビトロパッケージング法は、少なくとも105/mlの感染性ウィルス力価を提供する。これに対応して、粒子力価は少なくとも107/mlである(AAV感染性比は典型的に100:1である)。
本発明のインビトロでパッケージされたAAV粒子は、インビボでパッケージされたAAV粒子を用いた形質導入のために用いられる方法と同じ方法で受容哺乳類細胞の形質導入に用いられ得る。形質導入とは、基質DNAの受容細胞への移入、およびその中における発現あるいは機能を意図したものである。このような形質導入手順は当該技術分野において周知である(例えば、McLaughlinら1988; HermonatおよびMuzyczka 1984; Tratschinら1985を参照)。典型的に、受容哺乳類細胞を、ヘルパーウィルス無しで、インビトロでパッケージされたAAV粒子に感染させ得、特に、パッケージされた基質DNAはAAV TR配列を有し、この結果、プロウィルスが形成される。これは、特に、例えば動物などの生活体の形質導入の場合に、選択されるべき方法である。あるいは、上記受容哺乳類細胞を、インビトロでパッケージされたAAV粒子およびヘルパーウィルスに同時感染させる。
上記受容哺乳類細胞は、AAVによる感染を受けやすいいかなる特定の哺乳類細胞でもあり得、ヒト、ウサギ、サル、マウス、ウシ、イヌ、およびサルを含むがこれらに限定はされない。受容哺乳類細胞は、1次細胞、確立された細胞株、器官性組織(organized tissue)および生体を含む。AAVは、例えば、マウスおよび霊長類の脳細胞ならびにマウス、霊長類およびウサギの肺細胞を形質導入できることが分かっている。
上記工程の具体的な例を、以下の実施例に示す。しかし、多数の改変例が可能であること、ならびに、これらの実施例が説明の便宜上示されているに過ぎず、そのように明記される場合を除いては本発明を限定するものではないことが当業者には明らかである。
実施例
実施例1:AAVパッケージング成分(PCCE)を含む細胞抽出物の調製
材料:リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、クレアチンリン酸、クレアチンリン酸キナーゼ、およびアフィジコリンをSigmaあるいはPharmaciaから購入した。タンパク質G−セファロースはPharmaciaから入手した。抗Repモノクローナル抗体、抗rep52/40および抗rep78/68の腹水調製物(HunterおよびSamulski 1992, J. Virol. 66:317-324)は、Rockland Incによって調製され、そして使用前にはタンパク質Gセファロース上で精製された。ウェスタン検出キットECLをAmershamから購入し、製造業者の指示に従って使用した。モルモット抗AAVカプシドタンパク質ポリクローナル抗体は、Dr. R.J. Samulski(University of North Carolina)によって提供された。カチオン性リポソームを、記載(Gao 1991 Biochem. Biophys. Res. Comm. 179:280-285)に従って調製および使用した。制限エンドヌクレアーゼは、New England BioLabsから購入した。
熱不活性化子ウシ血清および抗生物質を含むDMEM培地中に293細胞を維持した(Grahamら1977 J. Gen. Virol. 36:59-72)。100継代未満を経た細胞のみを使用し、そしてトランスフェクションあるいは感染の1日前にこれらの細胞をプレートした。(ATCCから得た)アデノウィルス5を従来の方法によって調製した。pIM45に改名されたpIM29+45(McCartyら1991 J. Virol. 65:2936-2945)をApaIを用いて消化し、得られたより大きなフラグメントを再連結することによって、プラスミドdl63−87/45を構築した。プラスミドpIM45は、AAVコード配列を全て有するが、AAV末端反復を欠いている。プラスミドdl63−87/45は、(pIM45に対して)1103塩基の欠失をカプシドコード領域内に有し、これがフレームシフト変異を引き起こす(図1参照)。
細胞抽出物の調製:コンフルーエンシー約60%の293細胞からなる150mmのプレート10枚を、カチオン性リポソームを用いてプレート毎に20μgのプラスミドDNAでトフンスフェクトし(Gao 1991)、そして感染多重度(MOI)5でアデノウィルス5に感染させた。これらの細胞を、感染から48時間後に収集し、20mlの冷リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、その後、10mlの冷低張緩衝液(20mMのヘペス(pH7.4)、5mMのKCl、1.5mMのMgCl2、1mMのDTT)で洗浄した。細胞懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットを、最終容量4.8mlの低張緩衝液中で再懸濁し、氷上で10分間インキュベートした。細胞懸濁液を静かにホモゲナイズし(タイプBの内筒で20ストローク)、そして、5MのNaClを0.2ml加えて、NaCl濃度を0.2Mにまで高めた。懸濁液を氷上で1時間インキュベートし、そして、15,000×gの遠心分離を20分間行うことによって抽出物を清澄にした。20mMのTrisCl(pH7.4)、0.1mMのEDTA、25mMのNaCl、10%のグリセロール、1mMのDTTを含有する緩衝液に対して透析を行った後、抽出物を−80℃で保存した。
AAVパッケージング抽出物は、アデノウィルスに感染させ、かつpIM45あるいは陰性コントロールプラスミドdl63−87/45でトランスフェクトした細胞から調製した。これまでの研究により、プラスミドdl63−87/45中での変異は、パッケージングには完全に欠損であるが、AAV DNA複製には実行可能であることが実証されている(HermonatおよびMuzyczka 1984)。最後に、アデノウィルスのみに感染させた細胞からも抽出物が作られた。
上記抽出物のサンプルに対してウェスタン分析を行った。それぞれ10マイクロリットルの細胞抽出物を、8〜14%のポリアクリルアミド勾配ゲル上で電気泳動した。タンパク質をニトロセルロース膜に移入し、Repおよびカプシドタンパク質を、それぞれ、抗Repモノクローナル抗体、抗rep52/40およびモルモット抗カプシドポリクローナル抗体を用いて検出した。製造業者のプロトコルに従ってECLキットを使用して、10個のウェスタンブロットを可視化した。
予想通り、pIM45由来の抽出物は、全てのAAVコードタンパク質、即ち非構造的タンパク質Rep78、Rep68、Rep52、Rep40、と3つのAAVカプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3とを有していた(図2)。対照的に、dl63−87/45に感染した細胞から調製した抽出物は、検出可能なレベルのAAVカプシドタンパク質を有していなかったが、通常レベルのRepタンパク質を有していた。dl63−87/45抽出物中に切形カプシドタンパク質が存在しなかったことは、おそらく、タンパク質の不安定性もしくは抗体認識に必要なエピトープが存在しなかったことのいずれかに起因するものであった。アデノウィルスのみに感染した細胞から調製した抽出物は、Repタンパク質もカプシドタンパク質も有していなかった。
実施例2:パッケージング反応用DNA基質の調製
(好意により、Dr. R.J. Samulski, University of North Carolinaによって提供された)プラスミドpTRLacZおよびpAB11は、サイトメガロウイルス(CMV)即時初期プロモーターの制御下においてE.coli β−ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ)を有する組換えAAVベクターである(図1)。この2つのプラスミドは、pAB11が内的Pst1部位(internal Pstl site)を欠き、そのLacZ遺伝子のコード配列内に核局在化シグナルを有する点においてのみ互いに異なる。
pTRLacZは、HindIII末端においてpBS−CMV(Pharmaciaより入手)由来の0.9KBのBamHI/HindIII CMVプロモーターフラグメントに連結され、かつ、pTRのBglII部位にクローニングされる、pCH110(Pharmaciaより入手)由来のLacZコード領域を有する、3.7KBのBamHI/HindIIIフラグメントを含む。
pTRは、以下のような段階的な連結によって構築した。プラスミドdl3−94(McLaughlinら1988)由来の左AAV TRを持つ160bpのPstI/BglIIフラグメントを1270bpAd2フラグメント(スタッファーフラグメント)に連結させた。得られた1430bpのフラグメントを、SV40初期ポリアデニル化シグナルの配列を有する50bpの合成DNAフラグメントに、BamHIおよびBglII適合性末端で連結させた。得られた1480bpのフラグメントを、左AAV TRを有する160bpのPstI/BglIIフラグメントの別のコピーに連結させた。得られた1640bpのフラグメントをPstIで消化し、ゲル精製し、そして、pBR322のPstI部位に連結させた。
2つの理由から、パッケージング実験用にpTRLacZを選択した。第1に、あらゆる混入野生型AAVウィルスから容易に区別可能である。第2に、インビトロパッケージング反応の効率を測定する容易な方法を提供した。これは、インビトロ反応の産物を細胞に付与し、その後、感染した細胞をβ−ガラクトシダーゼ活性に対して染色することによって行われた。
pTRLacZ複製型DNAの調製のために、293細胞を、カチオン性リポソームを用いて、100mmのプレート毎に10μgのpIM45およびpTRLacZ DNA(3:1)で同時トランスフェクトし、そして、5MOIでアデノウィルスに感染させた。レスキューされ複製されたAAV(TRlacZ)DNAを、Hirt(J. Mol. Biol. 26:365-369 1967)の方法を用いて、48時間後に抽出した。アガロースゲル中での電気泳動および臭化エチジウムを用いた染色の後で、AAVプラスミドDNAの既知量と比較することによって、AAV(TRlacZ)DNAの濃度を決定した。
実施例3:基質DNAのインビトロパッケージング
完全なインビトロパッケージング反応物は30ul中に、30mMのヘペス(pH7.5)と、7mMのMgCl2と、0.5mMのDTTと、それぞれ0.1mMのdATP、dGTP、dCTPおよびdTTPと、4mMのATPと、それぞれ0.2mMのCTP、GTPおよびUTPと、40mMのクレアチンリン酸と、37.5μg/mlのクレアチンホスホキナーゼと、0.17μg/mlのpTRLacZ RF DNAと、実施例1の15ulの細胞抽出物(PCCE)とを有していた。反応物を、37℃で4時間インキュベートした。反応産物を次に、55℃で30分間インキュベートし、そして、他に指示されない限りにおいて、クロロホルムで2回抽出した。pTRLacZ RFの代わりに他のDNA基質を用いて、さらなるインビトロパッケージング反応を行った(表II)。
インビトロパッケージング反応の効率を、パッケージされたウィルスのアリコートで細胞を感染させることによって評価した。パッケージング反応の産物を、ウェル当たり5×104個の細胞を有する96ウェルプレートの293細胞に加えた。この細胞をアデノウィルス5に同時感染させて、AAV導入遺伝子の一過性発現を高め、そして、感染から48時間後に、記載されているように(Dhawanら1991 Science 254:1509-1512)、X−galを用いて、細胞をβ−ガラクトシダーゼに対して染色した。
野生型AAVの力価を、感染性センターアッセイによって決定した(McLaughlinら1988)。ウィルスストックのアリコートを用いて、ウェルあたり細胞5×104個の密度の96ウェルプレートの293細胞を感染させた。これらの細胞を、アデノウィルス5を用いてMOI5で同時感染させた。37℃での30時間のインキュベーションの後に、細胞をトリプシン処理し、濾過デバイスを有するナイロン膜上に移した。0.5NのNaOHおよび1.5MのNaClを含有する溶液で飽和させた3MMペーパー上で、膜を3分間湿らせた。膜がブロットされて乾燥した後に、この工程をもう一度繰り返した。膜を、1MのTrisCl(pH7.5)、1.5MのNaClで中性化し、そして、マイクロ波中で5分間加熱した。膜を、野生型AAVプローブでハイブリダイズした。プローブにハイブリダイズする膜上のスポットのそれぞれが、AAVによって溶菌的に感染した細胞1個を表していた。
pTRLacZ DNAをpIM45およびアデノウィルスでトランスフェクトした細胞から得た粗抽出物と共にインキュベートすると、反応産物で処理された細胞の相当数がLacZ遺伝子を発現できた(表I)。このことは、dl63−87/45とアデノウィルスとでトランスフェクトした細胞、あるいは、アデノウィルスのみに感染させた細胞由来の抽出物とともにインキュベートした反応産物については言えなかった。dl63−87/45抽出物は(pIM45抽出物と比較して)カプシドタンパク質のみを欠いていたので、TRLacZ DNAの移入および発現を、AAVカプシドタンパク質を必要とするなんらかのプロセスによって促進した。pTRLacZベクターの以前の研究によって、β−ガラクトシダーゼ活性に対して染色することによって得たウィルス力価が、感染性センターアッセイによって決定した感染性ウィルスの力価の約20分の1の少なさであることが示唆されていた。従って、インビトロパッケージング反応の産物から得たβ−ガラクトシダーゼ形質導入の頻度は、反応混合液1ml当たり、105個もの感染性ウィルスが合成されていたことを示唆した。粒子対感染性の比を100:1と仮定すると、これは、反応物1ml当たり107個のAAV組換え粒子の産生を表す。
実施例4:インビトロでパッケージされたAAV(TRlacZ)粒子の密度の決定
ウィルス粒子の密度は、その粒子のタンパク質およびDNA含有量の関数であるので、我々は、インビトロでパッケージされたAAV(TRlacZ)粒子の密度は野生型AAVウィルスと区別不可能であると予測した。AAVビリオン粒子の密度を塩化セシウム勾配遠心分離法によって決定した。インビトロでパッケージされたAAV(TRlacZ)を4mlの塩化セシウム溶液に加え、最終的な屈折率を1.3720とした。この溶液をSW50.1ローター中、40krpmで、20時間、4℃で遠心分離した。インビボでパッケージされた野生型AAVを平行CsCl勾配で行った。勾配の一番上から200マイクロリットルの画分を取り出して、各画分の屈折率を決定した。その後、画分をPBSに対して透析し、野生型AAV、あるいはAAV(TRlacZ)の力価を、それぞれ、感染性センターアッセイによって、あるいはβ−ガラクトシダーゼ活性に対して染色することによって決定した。
インビトロで合成した粒子は、本物の野生型AAVと同じ密度を有していた。pTRLacZゲノムは、野生型AAVゲノムに近い大きさ(野生型AAVの104%)であった。図3に示されるように、両方の種類の粒子はともに単一の活性ピークを生じ、この2種類の粒子の密度は事実上同じであった。野生型およびβgal粒子はともに、1.38g/mlの密度と等価な1.3698のピーク屈折率を有していた。
実施例5:インビトロパッケージング基質DNAの構造的要件
インビトロパッケージング反応がインタクトな末端反復を必要としたかどうかを決定するために、末端反復中に欠失を含むかあるいは各末端反復に付いた付加的な配列を有する基質とともに、(実施例2に記載したように調製した)1本鎖および2本鎖RF基質を用いた(表II)。プラスミドの末端反復あるいはベクター配列内で切断されたがCMVおよびLacZ配列をインタクトに残したいくつかの制限酵素の中の1つを用いて、pTRLacZプラスミドDNAあるいはpAB11DNAを消化することによって、上記改変基質を生成した(図1)。さらに、我々は、反応の産物についてクロロホルム抽出の影響を調べた。
産物をクロロホルム抽出すると、完全な末端反復を有するインビボ由来のRF基質のみが効率的にパッケージされた(表II、dsおよびssRF DNA)。1本鎖ゲノムはAAV粒子内にパッケージされるにもかかわらず、1本鎖(ss)RF AAV(TRLacZ)DNAに対する選好性は見られなかった。末端反復の端部に付いたプラスミドベクター配列を有する基質(BamHI基質)は、23個だけの付加的な塩基がpTRLacZゲノムの各端部に付いたもの(PstI基質)でさえも、効率的にパッケージされなかった(表IIおよび図1)。β−ガラクトシダーゼ遺伝子を培養細胞に移入する効率が約8分の1の低さであった。同様に、145bpの末端反復の末端から欠失した46bpを有する基質(SmaI基質)あるいは121bpを有する基質(MscI基質)も、パッケージされにくかった。
これとは対照的に、β−gal移入活性について試験する前にクロロホルムで処理をしなかったインビトロ反応産物は異なる挙動を見せた(表II)。先ず、この産物は、クロロホルム抽出産物について見られたものの約2倍の移入活性量を有していたが、このことは、β−gal移入活性の相当量がクロロホルム中で安定ではない粒子に起因したことを示唆する。さらに、付加的なβ−gal移入活性は、大部分が、DNA基質の大きさに不感受性であった。BamHIを用いて消化したプラスミド基質は、野生型AAVゲノムの大きさの約2倍であったが、それでも効率的に移入された。驚いたことに、付加的なβ−gal移入活性は、インタクトなAAV末端反復配列を必要とせず、MscIあるいはSmaIによって消化された基質は効率的に移入された。最後に、クロロホルム感受性β−gal移入産物はDNaseIによる消化に対して感受性を有していた。
実施例6:Repタンパク質および特定の補因子の要件
インビトロでのAAV DNA複製には、Rep78あるいはRep68の存在が必要であり(Imら1989 J. Virol. 63:3095-3104; Imら1990 Cell 61:447-457; Snyderら1993 J. Virol. 67:6090-6104)、AAV DNA合成はアフィジコリンによって阻害される。Rep78あるいはRep68がインビトロパッケージングに必要であるかどうかを決定するために、タンパク質−Gセファロースビーズに結合した抗78/68モノクローナル抗体を用いた抽出物の免疫沈降によって、パッケージング抽出物からRepタンパク質を枯渇させた(HarlowおよびLane 1988, in Antibodies: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, pp. 522-523)。Repタンパク質を免疫沈降させるために、3容量の細胞抽出物を、1容量の抗Rep78/68−タンパク質Gビーズとともに、4℃で1時間揺らしながら2回インキュベートした。この手順は、抽出物中のカプシドタンパク質の濃度に重大な影響を及ぼすことなく、Rep78および68濃度を約10分の1に低減させることに成功した(図2)。抗Rep78/68抗体によって認識されなかったRep52および−40もまた、おそらくより大きなRepタンパク質との相互作用によって部分的に枯渇した。枯渇した抽出物をパッケージング活性について試験したところ、その活性が、完全な抽出物に比べて大幅に(約4分の1)低減していたことがわかった(表III)。10μg/mlのアフィジコリンを完全な抽出物を有する反応産物に加えることによって、活性が約9分の1に低減した。最後に、枯渇した抽出物にアフィジコリンを加えることによって、パッケージング活性がさらに、約20分の1に低減した。我々はまた、低減したRep濃度およびアフィジコリン処理の条件下においてDNA合成のレベルを測定し、そしてDNA合成のレベルが、インビトロパッケージングのレベルとほぼ同程度に低減したことを見出した(データは示していない)。これらの結果によって、1つ以上のRepタンパク質の存在および活性DNA合成がインビトロのAAVパッケージングに必要であったことが示される。
二価カチオンMg++およびATPは、パッケージング活性に不可欠であることが分かった(表IV)。このことはCRPあるいはCSPのどちらについても言えた。Mgイオンの省略によりパッケージング活性が完全に除去され、一方、ATPあるいはATP再生系、クレアチンリン酸およびクレアチンホスホキナーゼの省略によりパッケージング反応が激しく阻害された(約20分の1)。ATPあるいは上記再生系がない場合に見られる残留活性は、おそらく、無細胞パッケージング抽出物が相当な量のATPを有していた事実を反映している。AAV DNA複製にはMgおよびATPの両方が必要であるので、これらの補因子に対する必要は意外なことではない。このことはまた、おそらく、4つのデオキシヌクレオシド三リン酸を反応物から省略したときに見られた活性の穏やかな減少(約40%)を説明する。やはり、デオキシヌクレオシド三リン酸はDNA複製に不可欠であるが、無細胞パッケージング抽出物は、これらのヌクレオチドを相当量有していたようである。この反応は、部分的に、他の3つのリボヌクレオシド三リン酸、UTP、CTPおよびGTPの有無にも依存する。
実施例7:wtAAVおよびインビトロでパッケージされたAAV(TRLacZ)のショ糖勾配遠心分離
15%〜30%(wt/wt)のショ糖の直線状勾配を、10mMのTrisCl(pH8.8)中で調製した。CsCl勾配からのピーク画分を、PBSに対して透析し、100ulに調整し、そしてショ糖勾配の上にのせた。この勾配を2.5時間、20℃、110,000gで遠心分離した。画分を収集し、PBSに対して透析し、そして、CsCl勾配について記載したように、wtAAVあるいはAAV(LacZ)について分析した。
概ね、2つの粒子調製物の沈澱プロファイルは類似していた。両者とも、成熟110S AAV粒子の位置において沈澱した種を有していた。さらに、両調製物ともに、比較的低いあるいは比較的高い沈澱係数で沈澱した材料を有していた。分子量が比較的大きい種は、1つよりも多いAAVウィルス粒子からなる集合体であると思われる。分子量が比較的小さい種は、MyersおよびCarterによってインビボで同定されたものに類似のパッケージング中間体であり得る。本グループはAAVパッケージング中の潜在的な中間体を報告しており、これは、成熟AAVウィルス粒子と密度はほぼ同じであるが、そのショ糖勾配における沈澱係数は、成熟粒子の110Sに対して66Sである。MyersおよびCarterによって報告された66S粒子は、完全なAAVゲノムを有するようであり、そしてDNaseIに対して感受性を有していた。
Figure 0003944240
Figure 0003944240
Figure 0003944240
Figure 0003944240
本明細書において言及されている刊行物および特許出願の全ては、各刊行物または特許出願が具体的且つ個別に参考として援用されているのと同程度に、参考として本明細書に援用される。
これで本発明を完全に記載したが、添付の請求の範囲の主旨あるいは範囲から逸脱することなく本発明に対して多数の変更および改変を行うことが可能であることは当業者には明らかである。

Claims (13)

  1. 質導入し得るAAV粒子内にDNA基質をインビトロパッケージするために有用な無細胞抽出物を産生するための方法であって、
    (a)AAV複製を許容する哺乳類宿主細胞培養物を、AAV由来のカプシド遺伝子コード配列およびRep遺伝子コード配列を含むが逆方向末端反復配列を全て欠くdAAVベクターでトランスフェクトする工程と、
    (b)該宿主細胞培養物を、哺乳類類細胞においてAAVの生産的ウィルス感染を促進することが公知であるヘルパーウィルスに感染させる工程と、
    (c)該トランスフェクション工程および該感染工程の後に、該トランスフェクトされた細胞培養物から該細胞のホモゲナイゼーションによって無細胞抽出物を調製する工程と
    を包含し、
    該インビトロパッケージングは、細胞内環境以外で起こる、方法。
  2. DNA基質を無細胞抽出物と合わせるための方法であって、
    a.請求項1に記載の方法によって該無細胞抽出物を産生する工程と、
    b.該抽出物をDNA基質と合わせる工程と、
    を包含する、方法。
  3. DNA基質をパッケージングするための方法であって、
    a.請求項1に記載の方法によって抽出物を産生する工程と、
    b.該抽出物をDNA基質と合わせる工程と、
    c.工程(b)において得られた抽出物を、DNA基質のパッケージングを促進する条件下でインキュベートする工程と、
    を包含する、方法。
  4. 前記インキュベーション工程の後に、前記ヘルパーウィルスを不活性化するのに十分な温度で十分な時間前記抽出物を加熱する工程をさらに包含する、請求項に記載の方法。
  5. 前記加熱工程の後に、前記抽出物をクロロホルムで抽出する工程をさらに包含する、請求項に記載の方法。
  6. 前記DNA基質がAAV末端反復配列を有する、請求項に記載の方法。
  7. 前記DNA基質が、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、IL−2、IL−3、IL−7、IL−13、NGF、CNTF、BDNF、チロシンヒドロラーゼ、ドパデカルボキシラーゼ、XIII因子およびIX因子からなる群より選択される1つ以上の遺伝子またはコード配列を含む、請求項に記載の方法。
  8. 前記dAAVベクターがpIM45である、請求項1〜7のうちのいずれかに記載の方法。
  9. 前記ヘルパーウィルスがアデノウィルスである、請求項1〜8のうちのいずれかに記載の方法。
  10. 前記ヘルパーウィルスがアデノウィルス5である、請求項に記載の方法。
  11. 前記哺乳類宿主細胞培養物がヒト細胞培養物である、請求項1〜10のうちのいずれかに記載の方法。
  12. 前記哺乳類宿主細胞培養物がヒト293細胞である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記パッケージングを促進する条件が、
    約7mMのMgCl2と、それぞれ約0.1mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPと、約4mMのATPと、それぞれ約0.2mMのCTP、UTPおよびGTPと、約40mMのクレアチンリン酸と、約37.5μg/mlのクレアチンホスホキナーゼと、約0.10〜100μg/mlの基質DNAと、約0.5容量の前記抽出物と、約30mMのpH約7.5のヘペス緩衝液とを含む、請求項に記載の方法。
JP50162197A 1995-06-07 1996-06-05 アデノ関連ウイルスdnaのインビトロパッケージング Expired - Fee Related JP3944240B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US08/476,018 US5688675A (en) 1995-06-07 1995-06-07 In vitro packaging of adeno-associated virus DNA
US08/476,018 1995-06-07
PCT/US1996/009263 WO1996040270A1 (en) 1995-06-07 1996-06-05 In vitro packaging of adeno-associated virus dna

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11512923A JPH11512923A (ja) 1999-11-09
JP3944240B2 true JP3944240B2 (ja) 2007-07-11

Family

ID=23890161

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP50162197A Expired - Fee Related JP3944240B2 (ja) 1995-06-07 1996-06-05 アデノ関連ウイルスdnaのインビトロパッケージング

Country Status (8)

Country Link
US (1) US5688675A (ja)
EP (1) EP0836484B1 (ja)
JP (1) JP3944240B2 (ja)
AT (1) ATE336588T1 (ja)
AU (1) AU706266B2 (ja)
CA (1) CA2222534A1 (ja)
DE (1) DE69636456T2 (ja)
WO (1) WO1996040270A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20020037867A1 (en) * 1999-02-26 2002-03-28 James M. Wilson Method for recombinant adeno-associated virus-directed gene therapy
CA2571159A1 (en) * 2004-06-18 2006-03-30 The University Of Montana Aav mediated gene delivery to cochlear cells
WO2012144446A1 (ja) 2011-04-18 2012-10-26 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 薬剤送達粒子及びその製造方法
PT3535388T (pt) * 2016-11-04 2023-06-27 Takeda Pharmaceuticals Co Métodos de purificação de vírus adeno-associados

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4797368A (en) * 1985-03-15 1989-01-10 The United States Of America As Represented By The Department Of Health And Human Services Adeno-associated virus as eukaryotic expression vector
US5139941A (en) * 1985-10-31 1992-08-18 University Of Florida Research Foundation, Inc. AAV transduction vectors

Also Published As

Publication number Publication date
EP0836484A4 (en) 2002-03-27
ATE336588T1 (de) 2006-09-15
AU706266B2 (en) 1999-06-10
EP0836484B1 (en) 2006-08-16
DE69636456D1 (de) 2006-09-28
EP0836484A1 (en) 1998-04-22
JPH11512923A (ja) 1999-11-09
US5688675A (en) 1997-11-18
WO1996040270A1 (en) 1996-12-19
AU6094796A (en) 1996-12-30
DE69636456T2 (de) 2007-04-19
CA2222534A1 (en) 1996-12-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5688676A (en) In vitro packaging of adeno-associated virus DNA
US5741683A (en) In vitro packaging of adeno-associated virus DNA
US5677158A (en) In vitro packaging of adeno-associated virus DNA
US5622856A (en) High efficiency helper system for AAV vector production
US7439065B2 (en) Helper virus-free AAV production
Chiorini et al. Cloning and characterization of adeno-associated virus type 5
US6040183A (en) Helper virus-free AAV production
Zhou et al. In vitro packaging of adeno-associated virus DNA
US6541258B2 (en) AAV split-packaging genes and cell lines comprising such genes for use in the production of recombinant AAV vectors
JP4108746B2 (ja) ヘルパーウイルスを含まないaav産生
CA2228269C (en) High efficiency helper system for aav vector production
WO1998027204A9 (en) Aav split-packaging genes and cell lines comprising such genes for use in the production of recombinant aav vectors
EP1015619A1 (en) Methods and cell line useful for production of recombinant adeno-associated viruses
JP2004508041A (ja) 組換え型アデノ随伴ウイルス(rAAV)をパッケージングする親細胞、それらの生成方法、およびその使用
Su et al. Differential suppression of the tumorigenicity of HeLa and SiHa cells by adeno-associated virus
JP3944240B2 (ja) アデノ関連ウイルスdnaのインビトロパッケージング
Conway Herpes simplex virus type I based systems for the large scale production of recombinant adeno-associated virus type 2 vectors

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060328

A524 Written submission of copy of amendment under article 19 pct

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A524

Effective date: 20060627

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070313

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070409

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees