JP3943399B2 - ヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分 - Google Patents

ヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、神経変性疾患の予防及び/又は治療に有用なヤマブシダケ(Hericium erinaceum)脂溶性抽出成分、該抽出成分を含有する組成物、及び該抽出成分の効果を指標として神経変性疾患の予防及び/又は治療に使用され得る物質を同定するためのスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の高齢化社会において、神経変性疾患患者数の割合は増加傾向にあり、近い将来より深刻な社会問題になることが予想される。これら神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病及びパーキンソン病が知られている。アルツハイマー病等の神経変性疾患は潜伏期間が長く、本人の気付かないうちに症状が進行することもあり、また発症後完治することは現在の医学ではほぼ不可能である。つまり、進行する以前から習慣的に何らかの方法で予防していく道を採ることも、神経変性疾患の場合特に重要であると考えられる。
【0003】
アルツハイマー病及びパーキンソン病等の神経変性疾患は、小胞体ストレスにより神経細胞死が引き起こされることによって発症するものと考えられており、この小胞体ストレスは、これら一部の神経変性疾患において共通のメカニズムと考えられている。これらと同様のアミロイド沈着神経変性疾患の、狂牛病を含むプリオン病の一種であると考えられているクロイツフェルトヤコブ病も小胞体ストレス由来細胞死に起因する疾患である可能性が示唆されている。しかし、現在までに小胞体ストレスの抑制活性を有する物質又は成分は報告されていなかった。
【0004】
一方、天然物から特定の薬理作用のある有用な物質又は成分を探索して創薬に利用することは、一般的に行なわれている手法である。天然物からのそのような有用な物質又は成分の単離は、しばしば、発症メカニズムの解明や新たな治療薬への応用などにもつながるため、このような手法は頻繁に利用されている。この天然物として注目されているものの一つとしてキノコが挙げられる。キノコは、地球上に一万種以上、我が国だけでも2〜3千種あるといわれている。例えば、キノコの一種であるヤマブシダケからは、有用な物質として神経成長因子を誘導するヘリセノンが単離されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、神経変性疾患の予防及び/又は治療を可能にし得る小胞体ストレス抑制活性を有する物質、及び該物質の種々の用途を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を行ない、現在までに神経成長因子の誘導活性が報告されているヤマブシダケに注目し検討を加えた結果、ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分が細胞死誘導抑制活性、特に小胞体ストレス抑制活性を有することを見出し、神経変性疾患の予防及び/又は治療のために使用され得ることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分であって、該成分が神経変性疾患の予防及び/又は治療活性を有することを特徴とする脂溶性抽出成分、並びに該脂溶性抽出成分を有効成分として含有することを特徴とする神経変性疾患の予防及び/又は治療用組成物を提供する。好ましくは、前記神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病及びクロイツフェルトヤコブ病が挙げられる。
【0008】
本発明はまた、ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分であって、該成分が細胞死誘導抑制活性を有することを特徴とする脂溶性抽出成分、及び該脂溶性抽出成分を有効成分として含有する細胞死抑制性組成物を提供する。
【0009】
本発明はさらに、ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分であって、該成分が小胞体ストレス抑制活性を有することを特徴とする脂溶性抽出成分、及び該脂溶性抽出成分を有効成分として含有する小胞体ストレス抑制性組成物を提供する。
【0010】
好ましくは、上記ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分は、85%エタノール、アセトン及びクロロホルムで連続的に抽出することによって得られる。
【0011】
本発明はさらに、小胞体ストレス抑制活性を有する物質のスクリーニング方法であって、少なくとも以下の工程を含むスクリーニング方法を提供する:
a)試験細胞を、小胞体ストレスを誘導する化合物と試験物質とで処理する工程、
b)試験細胞を、小胞体ストレスを誘導する化合物とヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分とで処理する工程(ここで該試験細胞及び小胞体ストレスを誘導する化合物は前記工程a)で使用したものと同種である)、並びに
c)前記工程a)及び前記工程b)における試験細胞の生存の程度を測定、比較し、該試験物質が小胞体ストレス抑制活性を有するか否かを決定する工程。
好ましくは、ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分は、小胞体ストレス抑制活性を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本明細書中で用いられる用語「ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分」とは、ヤマブシダケ子実体から有機溶媒で抽出可能な成分であって、特に、小胞体ストレス抑制活性、細胞死誘導抑制活性等の生理活性を有し、神経変性疾患の予防及び/又は治療に有用な成分をいう。上記ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分を抽出するためには、種々の抽出方法が用いられ得る。例えば、上記成分を抽出するために適切な溶媒としては、代表的には、メタノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、フェノール、ヘキサン、ブタノール、イソプロパノール、ベンゼン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。これらの溶媒を単独で用いてもよいし、数種の有機溶媒からなる混合溶媒を用いてもよい。さらに上記の1種からなる溶媒及び混合溶媒を、種々の抽出工程において連続的に使用してもよい。当業者は、使用する溶媒の種類及びその組み合わせ方についても適宜選択することができる。また、抽出に使用する溶媒の量は、使用する溶媒の種類や抽出効率などによって当業者は適宜選択することができる。例えば、抽出の第1の工程において、エタノール、好ましくは85%エタノールが、ヤマブシダケ子実体(乾燥)1重量部に対して5〜20重量部で用いられ、その後に適切な溶媒及び重量比で抽出を繰り返すことにより脂溶性抽出成分を入手することができる。一実施態様において、上記「ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分」は、例えば、ヤマブシダケ子実体を85%エタノール、アセトン及びクロロホルムで連続して抽出した後に得られたクロロホルムをシリカゲルカラムに通すことによって入手可能である。
【0013】
本明細書中で用いられる用語「神経変性疾患」とは、神経細胞がアポトーシス(神経細胞死)を起こし、正常な神経伝達機能が脱落した疾患をいう。「神経変性疾患」としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルトヤコブ病、ハンチントン舞踏病、ピック病、進行性核上性麻痺、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、及びその他の各種痴呆疾患(例えば、ビンスバンガー病、脳血管性痴呆、正常圧水頭症、脳外傷後痴呆、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍)が挙げられるが、好ましくは、アルツハイマー病、パーキンソン病及びクロイツフェルトヤコブ病である。
【0014】
本明細書中で用いられる用語「細胞死誘導」とは、細胞外部からの物理的、化学的刺激により細胞内部に情報が伝わり細胞死が誘導されることをいう。
【0015】
本明細書中で用いられる用語「小胞体ストレス」とは、細胞表面又は細胞外タンパク質の翻訳の場である粗面小胞体における機能異常により、異常構造を持ったタンパク質などが蓄積することにより起こるストレスをいう。
【0016】
本明細書中で用いられる用語「細胞死誘導抑制活性」及び「小胞体ストレス抑制活性」とは、上述した細胞死誘導及び小胞体ストレスをそれぞれ抑制し得る能力をいう。従って「細胞死誘導抑制」又は「小胞体ストレス抑制活性」を有する成分は、細胞死誘導又は小胞体ストレスにより引き起こされる種々の疾患を予防及び/又は治療するために使用され得る。
【0017】
本明細書中で用いられる用語「組成物」とは、特定の物質を有効成分として含有するものであって、例えば、「神経変性疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物」は、有効成分としてヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分を含有し、神経変性疾患の予防及び/又は治療効果を奏する。このような医薬組成物は、有効成分としてのヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分を、経口又は非経口適用に適した有機又は無機の担体もしくは賦形剤との混合物として含有する固体、半固体又は液体形態の医薬製剤の形で使用できる。該有効成分は、例えば、散剤、錠剤、ペレット剤、カプセル剤、坐剤、液剤、乳濁液、懸濁液、エアロゾル剤、スプレー剤、その他の使用に適した形態用の、通常の、無毒性で、医薬として許容しうる担体と混ぜ合わせることができる。更に、必要ならば、助剤、安定剤、増粘剤等を使用してもよい。これらの担体、賦形剤は、必要に応じて無菌化処理を施したものを使用してもよく、また製剤化した後に無菌化処理を行なうこともできる。有効成分であるヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分の治療上有効な用量は、抽出成分の精製度や、処置すべき個々の患者の年齢及び疾患の種類、重篤度によっても相違し、またそれらに依存して決定される。
【0018】
ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分はまた、健康食品としても提供され得る。アルツハイマー病等の神経変性疾患は、その発症リスクが遺伝的素因に深く関与していることが知られており、例えば、そのような遺伝的素因を保有する人は、上記脂溶性抽出成分を含有する健康食品を日常的に摂取することでその発症リスクを低下させることができると考えられる。このような健康食品は、上記脂溶性抽出成分のみではなく、例えば、他の有効成分をさらに含有することでさらなる効果が期待される。
【0019】
本発明はまた、小胞体ストレス抑制活性を有する物質のスクリーニング方法を提供する。上記スクリーニング方法は、a)試験細胞を、小胞体ストレスを誘導する化合物と試験物質とで処理する工程、b)試験細胞を、小胞体ストレスを誘導する化合物とヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分とで処理する工程(ここで該試験細胞及び小胞体ストレスを誘導する化合物は前記工程a)で使用したものと同種である)、並びにc)前記工程a)及び前記工程b)における試験細胞の生存の程度を測定、比較し、該試験物質が小胞体ストレスを有するか否かを決定する工程を包含する。
【0020】
上記「試験細胞」としては、小胞体ストレス抑制活性を有する物質をスクリーニングするために使用され得る細胞であって小胞体ストレスが誘導され得る細胞であれば特に限定されないが、例えば、哺乳動物、好ましくはヒト由来の任意の細胞株又は初代培養細胞、より好ましくは神経系細胞株が挙げられる。本発明において好ましい神経系細胞株としては、PC−12、Neuro2a、CHP−126、GOTO−P3、LA−N−5、SK−N−SH、TNB−1、C−1300が挙げられるが、PC−12細胞が特に好ましい。
【0021】
上記「小胞体ストレスを誘導する化合物」とは、任意の細胞において小胞体ストレスを誘導可能な化合物をいう。上記「小胞体ストレスを誘導する化合物」としては、例えば、ツニカマイシン、1−デオキシノジリマイシン、ブロモコンズリトール、オーストラリンが挙げられるが、ツニカマイシンが特に好ましい。
【0022】
上記「試験物質」とは、上記スクリーニング方法において、小胞体ストレス抑制活性を有するか否かの判定が求められる化合物であれば特に限定されず、既知のものであっても新規のものであっても構わない。本発明のスクリーニング方法においてスクリーニングされる「試験物質」としては、核酸、タンパク質、ペプチド、脂質、糖類、低分子化合物等の任意の天然化合物及び合成化合物を選択可能である。
【0023】
また本発明のスクリーニング方法において「処理」するとは、試験細胞を、小胞体ストレスを誘導する化合物と、試験物質又はヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分とともに培養培地中でインキュベートすることをいう。試験物質又はヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分は、好ましくは、小胞体ストレスを誘導する化合物と同時又はそれよりも前に試験細胞を含む培養培地中に添加されるが、小胞体ストレスを誘導する化合物よりも後に試験細胞を含む培養培地中に添加されてもよい。添加の順序は使用する試験細胞の種類、小胞体ストレスを誘導する化合物の種類や活性、試験物質の種類に応じて適宜設定される。また、小胞体ストレスを誘導する化合物及び試験物質の処理時間及び使用量も同様に、それらの活性や種類、用いる試験細胞の種類に応じて当業者は適宜選択することができる。なお、上記スクリーニング方法において、工程a)及びb)で使用される試験細胞及び小胞体ストレスを誘導する化合物は、適切に比較がなされるために「同種」であることが必要とされる。「同種」とは、スクリーニング工程a)及びb)において同じ種類の細胞が使用されることを示し、例えば、工程a)でPC−12細胞が使用される場合には、工程b)でもPC−12細胞が使用される。
【0024】
また本発明のスクリーニング方法における試験細胞の「生存の程度」(生存率)は、MTT(3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド)アッセイ、ニュートラルレッド法、トリパンブルー法等の当該分野で公知の生細胞定量法によって「測定」される。この「測定」から得られた値を「比較」することにより、試験物質が小胞体ストレス抑制活性を有するか否かを「決定」することができる。具体的には、試験物質添加時と未添加時の「生存の程度」を比較し、有意に生存の程度を高めた物質を小胞体ストレス抑制活性を有する物質とし、好ましくはヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分(特に小胞体ストレス抑制活性を有する該抽出成分)添加時に得られる「生存の程度」と同程度かあるいはそれよりも高い値を示す物質を選択する。
【0025】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の特定の実施例に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
(実施例1:ヤマブシダケ子実体の分画)
ヤマブシダケ子実体360gを85%エタノールで抽出し、減圧下で濃縮した。濃縮物をアセトンで抽出し減圧下で濃縮した後に、クロロホルムで再度抽出してクロロホルム層を分離した。このクロロホルム層をシリカゲルカラム(シリカゲル60N、WAKO製)にかけて、抽出画分(図1中、HE1〜HE14と示される)を得た。ヤマブシダケ抽出についての概要を図1に示す。
【0027】
(実施例2:ヤマブシダケ抽出画分の神経系細胞死誘導抑制活性の測定)
神経系細胞のモデルとしてPC−12細胞(理研 細胞開発銀行、Cell No.RCB0009)を使用した。培養培地は、10%ウマ血清、5%ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地を使用し、CO2濃度は5%であった。また細胞死を誘導するためにアミロイドβ 1−40を使用した。アミロイドβ 1−40は、アルツハイマー病患者の脳に見られる老人斑を構成する主なペプチドである。老人斑を構成する主なペプチドとして他にもアミロイドβ 1−42が知られ、これらのペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質が限定分解されることにより生じる。またこれらのペプチドは神経細胞に細胞死を誘導することが確認されており、神経変性疾患の原因の一つであると言われている。そこで各ヤマブシダケ抽出画分の細胞死誘導抑制活性を決定するために、PC−12細胞を10μMアミロイド−β 1−40及びヤマブシダケ抽出画分の存在下で37℃ 48時間培養した。細胞の生存率を、一般的に用いられている生細胞定量法のMTT(同仁化学製)を用いるMTTアッセイ(黄色結晶であるMTTは生細胞に取り込まれると還元され、青色結晶となり、570nmに特異的吸収を示す)により定量した。上記培養の終了後に、細胞を250μg/mlのMTT存在下でさらに3時間培養し、20% SDS及び50% ジメチルホルムアミドを含む反応停止液中で反応を停止させ、次いで生成物と細胞とを可溶化した。その後、570nmでの吸光度を測定し、細胞の生存率を決定した。なお、コントロールとしては、PC−12細胞をアミロイド−β 1−40の非存在下で培養したものを使用した。これから得られた値を100%として細胞生存率を比較した。結果を図2に示す。図2の結果から、ヤマブシダケ抽出画分6及び9〜14が、アミロイド−β 1−40による細胞死誘導を抑制することが示された。
【0028】
(実施例3:ヤマブシダケ抽出画分の酸化ストレス抑制の測定)
上記実施例2で示された神経細胞死の抑制メカニズムについてさらに検討を行なうことにした。細胞死抑制のメカニズムとして酸化ストレス抑制に注目し、酸化ストレスのモデルとして一酸化窒素(NO)ドナーであるニトロプルシドナトリウム(WAKO製)を用いて上記実施例2と同様に実験を行なった。PC−12細胞を50μMニトロプルシドナトリウム及びヤマブシダケ抽出画分の存在下37℃で24時間培養し、細胞の生存率を実施例2と同様にMTTアッセイによって測定することによって各画分の細胞死誘導抑制活性を決定した。なお、コントロールとしては、PC−12細胞をNO非存在下で培養したものを使用し、これから得られた値を100%として細胞生存率を比較した。結果を図3に示す。図3の結果から、ヤマブシダケ抽出画分1〜12がNOによる細胞死誘導を抑制することが示された。
【0029】
(実施例4:ヤマブシダケ抽出画分の小胞体ストレス抑制活性の測定)
神経細胞死の一因として小胞体ストレスが報告されていることから、上記ヤマブシダケ抽出画分が小胞体ストレス抑制活性を有するか否かについて検討した。小胞体ストレスは、小胞体内糖鎖生合成阻害剤であるツニカマイシンで処理することにより誘導した。0.25μMツニカマイシン(WAKO製)及びヤマブシダケ抽出画分の存在下24時間37℃で細胞死誘導を行い、細胞の生存率を実施例2と同様にMTTアッセイによって測定し、各画分の細胞死誘導抑制活性を決定した。なお、コントロールとしては、PC−12細胞をツニカマイシン非存在下で培養したものを使用し、これから得られた値を100%として細胞生存率を比較した。結果を図4に示す。図4の結果から、ヤマブシダケ抽出画分9〜11、13及び14がツニカマイシンによる細胞死誘導を抑制することが示された。
【0030】
(実施例5:ヤマブシダケ抽出画分の小胞体ストレス抑制活性の用量依存性試験)
上記実施例4で細胞死誘導を抑制した画分のうち画分9、10、13、14についてさらに実験を行なった。実施例4と同様に0.25μMツニカマイシンの存在下24時間37℃で細胞死誘導を行い、細胞の生存率をMTTアッセイによって測定し、各画分の細胞死誘導抑制活性を決定した。なお、MTTアッセイにおいて使用するプレート中の各ヤマブシダケ抽出画分の含量を、それぞれ2.5μg/100μl、5μg/100μl、10μg/100μl、50μg/100μlと変えて実験を行なった。なお、コントロールとしては、PC−12細胞をツニカマイシン非存在下で培養したものを使用し、これから得られた値を100%として細胞生存率を比較した。結果を図5に示す。図5の結果から、ヤマブシダケ抽出画分9、10、13、14のうち特に画分9、10が、用量依存性の様式で小胞体ストレスによる細胞死誘導を抑制することが示された。
【0031】
【発明の効果】
ヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分は、優れた小胞体ストレス抑制活性、細胞死誘導抑制活性を有することから、小胞体ストレスや細胞死に起因する種々の疾患、特に神経変性疾患の予防及び/又は治療に有用である。又、本発明の脂溶性抽出成分は、天然物、特に食用可能なキノコ由来であって、安全に使用することができ、医薬のみならず習慣的健康食品として各種疾患の予防にも用いることができる。さらにこのヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分は、神経細胞死のメカニズムを解明するツールとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾燥ヤマブシダケ子実体からの抽出の概要を示す図である。図1に示される各抽出画分(HE−1〜HE−14)の下に記載されているmg数は、各画分の乾燥重量を示す。
【図2】アミロイドβ 1−40毒性に対するヤマブシダケ由来画分の効果を示す図である。
【図3】NO毒性に対するヤマブシダケ由来画分の効果を示す図である。
【図4】ツニカマイシン毒性に対するヤマブシダケ由来画分の効果を示す図である。
【図5】ツニカマイシン毒性に対するヤマブシダケ由来画分の効果の用量依存性を示す図である。

Claims (8)

  1. ヤマブシダケの子実体を、エタノール、アセトン及びクロロホルムで連続的に抽出することによって得られる脂溶性抽出成分を有効成分として含有する細胞死誘導抑制性組成物。
  2. エタノールとして、85%エタノールを用いる請求項1に記載の細胞死誘導抑制性組成物。
  3. ヤマブシダケの子実体を、エタノール、アセトン及びクロロホルムで連続的に抽出することによって得られる脂溶性抽出成分を有効成分として含有する酸化ストレス抑制性組成物。
  4. エタノールとして、85%エタノールを用いる請求項3に記載の酸化ストレス抑制性組成物。
  5. ヤマブシダケの子実体を、エタノール、アセトン及びクロロホルムで連続的に抽出することによって得られる脂溶性抽出成分を有効成分として含有する小胞体ストレス抑制性組成物。
  6. エタノールとして、85%エタノールを用いる請求項5に記載の小胞体ストレス抑制性組成物。
  7. 小胞体ストレス抑制活性を有する物質のスクリーニング方法であって、少なくとも以下の工程を含むスクリーニング方法:
    a)試験細胞を、小胞体ストレスを誘導する化合物で処理する工程、
    b)試験細胞を、小胞体ストレスを誘導する化合物と、ヤマブシダケの子実体を、エタノール、アセトン及びクロロホルムで連続的に抽出することによって得られるヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分とで処理する工程(ここで該試験細胞及び小胞体ストレスを誘導する化合物は前記工程a)で使用したものと同種である)、並びに
    c)前記工程a)及び前記工程b)における試験細胞の生存の程度を測定、比較し、該ヤマブシダケ由来脂溶性抽出成分が小胞体ストレス抑制活性を有するか否かを決定する工程。
  8. エタノールとして、85%エタノールを用いる、請求項に記載の方法。
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