JP3941392B2 - 原子炉運転方法 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、沸騰水型原子炉(以下、BWRという)の運転方法に関わり、特に原子炉に水素を注入して運転する方法に関する。
背景技術
BWRでは、原子炉圧力容器内の下部の構造材における応力腐食割れ(以下、SCCという)の発生及び進展を抑制するために、水素注入が採用されている。これまで、国内外の数十のプラントで水素注入が実施されている。
水素注入に関する第1の従来技術として、特開平4−274800号公報に、原子炉一次冷却系に水素及びアルカリを注入して、材料の腐食抑制と主蒸気系の線量率の低減を図る技術が記載されている。同公報には、アルカリ注入によって液相のpHがアルカリ性になることにより、放射性窒素の気相への移行割合が減少することも記載されている。
第2の従来技術として、特開平7−287094号公報に、pHが6〜10,溶存酸素濃度(以下、単に酸素濃度という)が150ppb以下の条件で、炉水中に水素及びアルカリを注入して、少ない水素注入量でSCCの発生を抑制する技術が記載されている。同公報には、SCCの抑制効果が得られる範囲として、酸素濃度50ppbの場合pH6〜10,酸素濃度100ppbの場合pH7〜10,酸素濃度150ppbの場合pH8〜9も記載されている。
第3の従来技術として、特開平8−297195号公報に、原子炉冷却水中に水素及びZnを注入し、炉水のpHを7〜9に調整して、原子炉冷却水と接するプラント構成部材の腐食を抑制する技術が記載されている。
第4の従来技術として、特開平9−264988号公報に、ホウ酸等の緩衝剤を炉水中に注入することにより、炉水中の金属部品の亀裂内の高温水のpHを6.0〜8.0の範囲内に変化させて、亀裂の成長を低減する技術が記載されている。
上記第1〜第3の従来技術では、炉水のpHをアルカリ側に調整して水素を注入しているが、これらの制御を実施する時期については、考慮されていない。また、第4の従来技術の場合、炉水のpHの制御を実施する時期については考慮されていないし、水素注入との組み合わせについても考慮されていない。
即ち、上記従来技術の場合、炉水のpHをアルカリ側に調整しつつ水素を注入する際に、これらの制御を実施すべき適切な時期も考慮して、SCCの発生及び進展を効果的に抑制することまではできなかった。
発明の開示
本発明の目的は、炉水のpHをアルカリ側に調整しつつ水素を注入する制御を適切な時期に実施することにより、主蒸気系の線量率を増大させずに、BWRの原子炉構造材のSCCの発生及び進展を効果的に抑制でき、炉水の放射能を低減できる原子炉運転方法を提供することにある。
上記目的を達成するための第1の発明では、沸騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は8.5<pH≦9の範囲内の相対的に高いレベルに制御し、その後停止運転まで7<pH≦8.5の範囲内の相対的に低いレベルに制御すると共に、前記炉水の水素濃度を、前記運転サイクルを通して30〜100ppbの範囲内に制御する。
第2の発明では、沸騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は8.5<pH≦9の範囲内の相対的に高いレベルに制御し、その後停止運転まで7<pH≦8.5の範囲内の相対的に低いレベルに制御すると共に、前記炉水の水素濃度を、定格運転時の短期間を除く前記運転サイクルのほとんどの期間は30〜100ppbの範囲内に制御し、前記定格運転時の短期間には100〜200ppbの範囲内に増大する。
第3の発明では、沸騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルを通して7<pH≦8.5の範囲内に制御すると共に、前記炉水の水素濃度を、定格運転時の短期間を除く前記運転サイクルのほとんどの期間は30〜100ppbの範囲内に制御し、前記定格運転時の短期間には100〜200ppbの範囲内に増大する。
第4の発明では、沸騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は7<pH≦9の範囲内の相対的に高いレベルに制御し、その後停止運転までは前記範囲内の相対的に低いレベルに制御すると共に、前記炉水の水素濃度を、前記運転サイクルを通して30〜100ppbの範囲内に制御する。
第5の発明では、沸騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は7<pH≦9の範囲内の相対的に高いレベルに制御し、その後停止運転までは前記範囲内の相対的に低いレベルに制御すると共に、前記炉水の水素濃度を、定格運転時の短期間を除く前記運転サイクルのほとんどの期間は30〜100ppbの範囲内に制御し、前記定格運転時の短期間には100〜200ppbの範囲内に増大する。
ここで、水素注入に伴う再結合反応について説明する。炉水に水素が注入されると、原子炉炉心周りのダウンカマ部で、水素が酸素及び過酸化水素と再結合する。この再結合反応は、放射線照射の作用により生成するOH等の反応性に富むラジカル種が、触媒のように作用することにより速やかに進行する。
この再結合反応により、ダウンカマ部よりも下流の再循環系及び原子炉圧力容器の下部プレナムにおける酸素及び過酸化水素の濃度は低下する。酸素及び過酸化水素の濃度が低下することにより、原子炉構造材の腐食電位(ECP)も低下する。
原子炉内の各部位の水素注入効果はダウンカマ部の水素濃度で決まるため、水素注入量の指標としては、以下の炉心換算水素濃度(ダウンカマ部での水素濃度)[Heffを採用すべきである。
[Heff=(給水の水素濃度)(給水流量)/(炉心流量)
本発明者らは、炉水のpHをアルカリ側に制御することにより、中性の場合に比べて水素注入による再結合反応が促進することを、解析により見出した。この新たな知見を、第9図を用いて説明する。第9図は、炉水の室温pH(以下、単にpHという)を7〜9の範囲内で変えた場合における、給水水素濃度と炉水の実効酸素濃度との関係を求めた解析結果である。
実際に測定される酸素濃度には、元々存在する酸素と過酸化水素の分解により生じた酸素が含まれる。このため、測定可能な酸素濃度として、以下の実効酸素濃度[Oeffを用いる。
[Oeff=(酸素濃度)+(過酸化水素濃度)/2
炉水のpHを制御しない場合、現実のBWRでは炉水のpHはほぼ7である。第9図に示すように、炉水の実効酸素濃度は、給水水素濃度の増加に伴って低下する。pH=8における炉水の実効酸素濃度は、pH=7の場合よりも若干低下する。pH=9における炉水の実効酸素濃度は、特に給水水素濃度が0.3ppm以上になると、pH=7の場合よりも著しく低下する。
これまでの知見から、実効酸素濃度が20ppb以下になると、原子炉構造材であるステンレス鋼のSCCの発生及び進展が抑制される。第9図から、給水水素濃度が0.3ppm以上になれば、実効酸素濃度が20ppb以下になることが解る。pHをパラメータにして調べた結果、8.5<pH≦9の範囲内において、炉水の実効酸素濃度がpH=7の場合よりも著しく低下することが判った。
従って、第1及び第2の発明のように、炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は8.5<pH≦9の範囲内に制御し、その後停止運転まで7<pH≦8.5の範囲内に制御することにより、炉水の実効酸素濃度を効果的に低減し、SCCの発生及び進展を効果的に抑制できる。第4及び第5の発明でも、室温pHの相対的に高いレベル及び相対的に低いレベルを適切に選定することにより、同様な効果が得られる。
この実効酸素濃度の低減効果は、以下の理由による。水素注入による再結合反応としては、以下の反応が生じる。
+2H→2HO (化1)
+H→2HO (化2)
中性の水質(pH=7)では、過酸化水素の再結合反応である化学式2は、酸素の再結合反応である化学式1よりも反応が遅い。このために、水素注入時の炉水中には、低濃度の過酸化水素が存在することになる。
pHをアルカリ側にすると、以下の平衡反応により過酸化水素の右辺への解離が進むために、HO の濃度が増える。
=HO +H (化3)
このとき、HO は以下の反応を介してHOを生成する。
HO +OH→HO+OH (化4)
この反応の反応速度定数は、過酸化水素がOHやHと反応する場合よりも2桁大きい。従って、中性の水質よりもHOの生成が速くなるので、再結合効率が高くなる。
この結果、水素注入とpHの弱アルカリ制御の併用により、炉水での酸素及び過酸化水素と水素との再結合反応が促進され、水素注入単独の場合(pH=7の場合)よりも大きな再結合効果が得られる。この再結合反応の促進効果により、炉水の実効酸素濃度を低くするために必要な水素注入量(水素濃度)を低減できる。
一方、水素注入では、水素注入量の増加に伴い蒸気中への16N(放射性の窒素)の移行量が増加して、主蒸気系の線量率が上昇する。また、炉水の室温pHが高くなり過ぎる(例えば、9以上)と、炉水中の24Naなどの放射性物質量が増大し、これが蒸気に同伴して主蒸気系の線量率を上昇させる。また、このような高いpHの条件下では、燃料被覆管の腐食が加速する可能性もある。
これに対して、第1及び第2の発明のように、炉水の室温pHを弱アルカリ(7<pH≦9)の範囲内で制御することにより、必要な水素注入量(水素濃度)を低減できるので、pHの弱アルカリ制御を併用しない場合よりも主蒸気系の線量率を低減できる。
特に、起動運転の初期は炉水温度が低く蒸気がほとんど発生していないので、炉水の室温pHを8.5<pH≦9の範囲内の高いレベルにしても、炉水中の放射性物質が蒸気に同伴して主蒸気系に至ることはほとんどない。水素注入による再結合反応の促進効果は、炉水の室温pHを高いレベルにすることによって一段と著しくなる。即ち、主蒸気系の線量率を上昇させずに、再結合反応を効果的に促進して、SCCの発生及び進展を効果的に抑制できる。
また、第2,第3及び第5の発明のように、炉水の水素濃度を、定格運転時の短期間を除く運転サイクルのほとんどの期間は30〜100ppbの範囲内に制御し、定格運転時の短期間には100〜200ppbの範囲内に増大することにより、水素注入による再結合反応を定格運転中の短期間に促進して、SCCの発生及び進展を効果的に抑制できる。
この場合、水素濃度を増大させた短期間の間は、主蒸気系の線量率が上昇するが、この線量率が上昇する区域における工事等をこの短期間を避けて実施することにより容易に対応できる。しかも、この短期間を除くほとんどの期間は水素濃度が低いレベルにあるので、主蒸気系の線量率の上昇は余り問題にはならない。
実際には、水素注入とpHの弱アルカリ制御の併用による主蒸気系の線量率の低減効果があるので、上記短期間を例えば1〜2日程度にすれば、pHの弱アルカリ制御を併用しない場合に比べて、主蒸気系の線量率を低減できる。
以上説明したように、炉水の実効酸素濃度を目標にすることによって水素注入量を減らせるので、現状以上に主蒸気系の線量率を増大させない範囲で、原子炉の運転が可能となる。また、現状と同じ水素注入量で原子炉を運転する場合、炉水中の酸素濃度及び過酸化水素濃度が現状よりも低くなるので、腐食電位の低下量は大きくなる。
次に、腐食電位に対するpHの影響を説明する。酸素及び過酸化水素の還元反応は、以下の化学式5及び6で示される。
+4H+4e→2HO (化5)
+2H+2e→2HO (化6)
何れの式も、左辺にプロトン(H)が関与しているので、pHに対する依存性を持つ。炉水のpHが高くなるとプロトン濃度が減少するので、左辺から右辺への反応は抑制される。このため、水素注入により炉水の実効酸素濃度が低下している条件では、腐食電位の低下量は一段と大きくなる。これからも、上記したSCCの発生及び進展の抑制効果が得られることが解る。
次に、原子炉構造材表面のき裂内部のpHについて説明する。主蒸気系の線量率の増大を抑制するために水素注入量を制限し過ぎると、炉水の実効酸素濃度が高くなり、腐食電位も高くなる。一方で、第10図に示すように、原子炉構造材のき裂部では、き裂の内表面で酸素が消費される。このとき、酸素はき裂の外部からの拡散のみで供給される。従って、き裂開口部からき裂先端部に向かうほど酸素濃度が低下し、き裂先端部では酸素濃度がほぼゼロとなる。このため、き裂先端部での局所的な腐食電位は、き裂開口部に比べて低くなる。
この結果、き裂先端部からき裂開口部に向けて原子炉構造材中を電子(e)が移動し、き裂先端部では電子が欠乏する。この電子を供給するために、き裂先端部では、以下の化学式で示すように、金属(M)がき裂内の水中へ金属イオン(Mn+)として酸化溶解する。また、金属イオンの一部は、水との反応により加水分解して、酸化被膜を形成する。
M→Mn++ne (化7)
n++mHO→M(OH)n−m (化8)
化学式7及び8において、nは金属がイオン化する時に放出する電子のモル数であり、mは金属イオンと水との加水分解の時に反応する水のモル数である。
金属が酸化溶解して水と加水分解する結果、き裂先端部の水中ではプロトン(H)が生成する。これらの金属イオンとプロトンの持つ正電荷に対して電気的中性を保つように、き裂開口部から炉水中のアニオンがき裂先端部に向かって流入する。
炉水中のアニオンとしては、Hと平衡して存在するOHが主体であるが、樹脂等から炉水中に流入したSO 2−,NO 等も存在する。き裂開口部とき裂先端部の電位差により、これらのアニオンがき裂開口部からき裂先端部に流入して濃縮され、き裂先端部のpHが酸性側にシフトする。これがき裂を進展させる原動力と考えられる。
一方、水素注入によって炉水中のOrC 2−などの6価のクロムが3価のクロム(Cr3+)に変った場合、カチオン樹脂の炉水への流入を阻止することによって炉水のpHはほぼ中性になる。更に、炉水を弱アルカリに制御することによって、炉水中には過剰のOHが存在することになる。
この場合、き裂開口部とき裂先端部の電位差によって、き裂開口部からき裂先端部に流入するアニオンはOHのみとなる。このOHの流入によって、き裂先端部のpHはアルカリ側にシフトする。従って、前記した水素注入とpHの弱アルカリ制御の併用により、き裂の進展を効果的に抑制できる。
次に、炉水の放射能の低減効果について説明する。原子炉内で燃料棒表面に析出している放射性クラッドから炉水に溶出する60Co等の放射性物質の溶出速度は、炉水のpHに依存する。炉水のpHとCoの溶出速度との関係を、第11図に示す。同図では、放射性クラッドとして、CoOとCoFeを示している。
第11図に示すように、Coの溶出速度は、炉水の室温pHが酸性側では大きく、アルカリ側になるほど急激に低下することが解る。従って、炉水の室温pHを弱アルカリに制御することにより、炉水の放射能を低減することができる。この結果、原子炉の線量率を低減できる。
更に、第11図に示すように、ジルカロイの腐食速度は、炉水の室温pHが9よりも高くなると、pH=7の場合に比べて高くなる。本発明の場合、炉水の室温pHを弱アルカリ(7<pH≦9)の範囲内で制御することにより、ジルカロイ製の燃料被覆管の腐食を、pH=7の場合と同程度に抑制できる。
発明を実施するための最良の形態
(第1実施例)
第1図〜第3図を用いて、本発明を沸騰水型原子炉(BWR)に適用した第1実施例を説明する。第1図は、起動運転時から水素を炉水中に注入しているBWRに本発明を適用した第1実施例の原子炉運転方法を示す図である。第2図は、第1実施例の原子炉運転方法を適用するBWRの一次冷却系の系統図である。第3図は、炉水のNa濃度とpHとの関係を求めた解析結果を示す図である。
第2図に示すように、BWRの一次冷却系は、復水系1,給水系2,原子炉圧力容器3,再循環系4,主蒸気系5,タービン6,復水器7及び炉浄化系17などから構成される。復水器7には、オフガス系28が接続されている。
復水系1には、復水ポンプ8及び復水脱塩器9が設置されている。オフガス系28には、蒸気抽出器27及び再結合器30が設置されている。酸素注入装置29が、オフガス系28の復水器7と蒸気抽出器27の間の配管に接続されている。
給水系2には、低圧給水加熱器10,高圧給水加熱器11及び給水ポンプ12が設置されている。水素注入装置24が、給水系2の低圧給水加熱器10と給水ポンプ12の間の配管に接続されている。給水の水質を測定するための水質測定装置20が、高圧給水加熱器11と原子炉圧力容器3の間の配管に、サンプリング配管19を介して接続されている。
炉浄化系17には、熱交換器17a,炉浄化系ポンプ17b及び炉浄化系脱塩器18が設置されている。水素注入装置24a及びアルカリ注入装置32が、炉浄化系17のうち給水系2に直接接続されている配管に接続されている。
炉水の腐食電位を測定するための腐食電位(ECP)センサ25が、ボトムドレン16に設置されている。ECP以外の炉水の水質を測定するための水質測定装置20a及び20bが、ボトムドレン16のサンプリング配管22及び炉浄化系17のサンプリング配管21にそれぞれ接続されている。
主蒸気系5にも、サンプリング配管23を介して水質測定装置20cが接続されている。水質測定装置20cは、蒸気を凝縮して生成した凝縮水の水質を測定するためのものである。主蒸気系5には、主蒸気系の線量率を測定するための線量率モニタ26も設置されている。
上記構成を備えたBWRプラントでは、原子炉の炉心13で炉水が沸騰して生成した蒸気が、主蒸気系5を通ってタービン6を駆動し、電力を発生する。タービン6を出た蒸気は復水器7で凝縮され、この凝縮水が復水として復水系1を流れる。この復水は、低圧給水加熱器10,給水ポンプ12及び高圧給水加熱器11を通って、給水として給水系2から原子炉圧力容器3に戻る。炉水は、再循環ポンプ4aによって再循環系4を循環される。
蒸気にならなかった大部分の炉水は、原子炉圧力容器3の上部で蒸気と分離され、炉心13の周囲のダウンカマ14を通って原子炉圧力容器3の下方に流れる。この炉水は、再循環系4に流入し、再循環ポンプ4aによって再び炉心13に戻される。蒸気の生成により減少した炉水の分量が、給水の供給により補充される。
炉水を浄化するために、再循環系4と原子炉下部プレナム15のボトムドレン16から炉水の一部が抜かれ、炉浄化系17に送られる。炉浄化系17では、炉水中の不純物イオンが炉浄化系脱塩器18により除去される。炉浄化系脱塩器18によって浄化された炉水は、給水と混合され、原子炉圧力容器3に戻される。
給水の水質(溶存酸素濃度,溶存水素濃度,pH,導電率など)は、サンプリング配管19から採取した給水を減圧及び冷却して、水質測定装置20によりオンラインで測定される。炉水の水質は、サンプリング配管21及び22から採取した炉水を減圧及び冷却して、水質測定装置20b及び20aによりオンラインで測定される。炉水の場合、ECPセンサ25によってそのECPも測定されるので、酸素濃度と過酸化水素濃度の両方を定量することができる。
主蒸気系5では、サンプリング配管23から抽出した蒸気を凝縮し、この凝縮水を減圧及び冷却して、その水質が水質測定装置20cによりオンラインで測定される。以上説明したように、水質測定装置20,20a〜20cは、水を減圧及び冷却することにより、室温〜約50℃の温度,1〜約5気圧の圧力の条件下で水質を測定している。
以下、第1図を用いて第1実施例の運転方法を説明する。第1図で、横軸は原子炉の運転時間を示し、縦軸は炉水の温度,pH(室温pH)及び水素濃度、並びに原子炉出力を示す。運転時間は、1つの運転サイクル期間に対する相対値で示している。1つの運転サイクルは、起動運転,定格運転及び停止運転からなる。定格運転時間は、起動運転及び停止運転の時間に比べて十分に長いので、第1図では一部を省略して示している。炉水の温度及び水素濃度、並びに原子炉出力は、定格運転時の値に対する相対値で示している。
起動運転では、原子力発電所内の電源などの設備,計測制御系,原子炉核計装装置及び原子炉制御装置のチェック,原子炉一次冷却系及びタービン設備系の運転準備,制御棒駆動装置の運転,再循環ポンプの運転などを実施する。本実施例では、この起動運転の時期から炉水中へアルカリを注入することによって、炉水のpHをアルカリ側に制御する。
起動運転の初期には、水素注入装置24aから炉浄化系17に水素を連続して注入し、炉水の水素濃度が30〜100ppb程度の範囲となるように、バルブ34aの開度(水素の注入量)を調整する。また、アルカリ注入装置32から炉浄化系17にアルカリを連続して注入し、炉水のpHが約9となるようにバルブ35の開度(アルカリの注入量)を調整する。炉水の水素濃度及びpHは、水質測定装置20a又は20bを用いて測定する。
アルカリ注入装置32からは、NaOH,KOH,LiOHなどのアルカリ溶液を注入する。起動運転時には給水系2が停止している場合があるので、炉浄化系17が好適な注入点となる。バルブ35の開度の調整は、運転員による手動調整,炉水の温度を入力とする自動調整、又は手動と自動を組み合わせた半自動調整の何れでも良い。
この状態において、再循環ポンプ4aを用いて再循環系4を低流量(定格運転時の約20%の流量)で運転し、制御棒(図示せず)を炉心13から引き抜いて原子炉の臨界条件を達成する。炉水温度が上昇を開始した時点で、バルブ35を閉じて炉水へのアルカリの注入を停止して炉水のpHを9から下げる。これにより、炉水温度の上昇による原子炉構造材への高アルカリの影響を減少することができる。尚、pHを低下させる場合、バルブ35の開度を小さくして炉水へのアルカリの注入量を徐々に減少させても良い。
その後、炉水温度と原子炉圧力は、燃料の核加熱によって上昇し、定格運転状態に到達する。炉水中のアルカリは、この時点で定格運転時と同じ弱アルカリのレベル(pH=8)まで低下するように調整される。以降、炉水のpHは約8に保たれる。更に、タービンの起動,発電機の併入などの一連の起動シーケンスを実施した後、原子炉出力を上昇して定格出力に到達させる。この時点で、起動運転が完了する。
定格運転時には、炉水のpHは弱アルカリである約8に保たれる。このために、復水脱塩器9又は炉浄化系脱塩器18のカチオン樹脂の一部を、通常のH型からNa型などのアルカリ型に変えたものを用いる。この脱塩器によって給水又は炉水中のカチオンを除去する際に、給水又は炉水中にNaイオンなどのカチオンをリークさせ、この濃度を調整することによって炉水のpHを弱アルカリに制御する。アルカリ型のカチオン樹脂(イオン交換樹脂)としては、K型,Li型,NH 型なども用いることができる。
また、給水系2が運転を開始した後は、バルブ34aを閉じると共にバルブ34を開いて、水素注入装置24から給水系2への連続した水素注入を開始する。この際、炉水の水素濃度が起動運転時とほぼ同じになるように、バルブ34の開度(水素の注入量)を調整する。このためには、水素の注入量(流量)の給水流量に対する比率を一定に調整すれば良い。
ここで、アルカリによって炉水のpHを制御する方法の一例を説明する。第3図は、炉水のNa濃度とpHとの関係を求めた解析結果を示す図である。同図は、炉水中にNa以外の不純物が存在しない場合における結果である。同図に示すように、Na濃度が低い(0.1〜1ppb)場合、pHは水の解離で生成するHイオンの濃度で決まり、7でほぼ一定である。Na濃度が1ppbよりも高くなるとpHは緩やかに上昇し、Na濃度が約20ppbでpHは約8となり、Na濃度が約250ppbでpHは約9となる。
従って、炉水のNa濃度が約250ppbとなるように、アルカリ注入装置32からのNaの注入量を調整することにより、炉水のpHを約9に制御できる。また、炉水のNa濃度が約20ppbとなるように、復水脱塩器9又は炉浄化系脱塩器18からリークするNaの量を調整することにより、炉水のpHを約8に制御できる。
これは以下の理由による。即ち、Naは炉水に溶けている状態で強電解質であるため、水和して当量のOHイオンを生成する。この影響により水の解離平衡がアルカリ側にずれるので、炉水のpHが変化する。
停止運転時には、制御棒を炉心13に挿入して原子炉出力を降下させ、所定値まで原子炉出力が下がった時点で、発電機を解列する。その後、炉水温度と原子炉圧力が十分に下がってから、バルブ34を閉じて停止運転を終了する。
前述したように、炉水温度が低い起動運転の初期は、定格運転時に比較して高いpHが許容される。この起動運転の初期から水素を炉水中に注入すれば、原子炉内で蒸気が発生していないため、注入した水素が原子炉の外部へ逃げることはない。このため、前の運転サイクルから炉心13に装荷されている燃料から放出される弱いガンマ(γ)線の作用により、炉水中の酸素及び過酸化水素と水素との再結合反応が促進される。
本実施例の場合、起動運転の初期はpH=9に制御し、その後はpH=8に制御することにより、前述したように、上記再結合反応は促進される。従って、主蒸気系の線量率を増大せずに、炉水中の溶存酸素濃度(実効酸素濃度)を効果的に低下させて、原子炉構造材のSCCの発生及び進展を効果的に抑制できる。
また、炉水を弱アルカリに制御することにより、原子炉構造材表面のき裂の内外電位差(き裂開口部とき裂先端部の電位差)が小さくなり、アルカリがき裂内に蓄積される。この結果、き裂先端部のpHをアルカリ側にシフトできるので、原子炉構造材のき裂の進展を効果的に抑制できる。更に、炉水の弱アルカリ制御により、前述したように、炉水の放射能を低減できる。
尚、本実施例では、炉水のpHを起動運転の途中で9から8に下げた例を説明したが、これに限定されるものではない。即ち、7<pH≦9の範囲内において、起動運転の初期に8.5<pH≦9を維持し、起動運転の途中で7<pH≦8.5のレベルまでpHを下げ、その後pHをこのレベルに維持すれば良い。
また、本実施例では、炉水の水素濃度を30〜100ppbの範囲で制御したが、好ましくは、この範囲を30〜65ppbとすることにより、主蒸気系の線量率をより低減できる。また、ECPセンサなどの炉水の水質を測定するためのセンサは、可能であれば原子炉圧力容器3内に設置した方が好ましい。
(第2実施例)
次に、第4図〜第6図を用いて、本発明をBWRに適用した第2実施例を説明する。第4図は、起動運転時から水素を炉水中に注入しているBWRに本発明を適用した第2実施例の原子炉運転方法を示す図である。第5図は、第2実施例の原子炉運転方法を適用するBWRの一次冷却系の系統図である。第6図は、第2実施例の運転方法における炉水とき裂先端部のpHの時間変化を模式的に示す図である。
第5図に示す一次冷却系の構成はほとんどが第2図の第1実施例と同じであり、第1実施例と異なる点は、水素注入装置24から給水系2に注入する水素注入量の制御手段である。その他の構成は第2図と同じであるので、ここでは説明を省略する。第5図において、31は水素を貯えるためのアキュミュレータで、後述する短期の水素注入量の増大に使用される。
第4図に示す原子炉運転方法はほとんどが第1図の第1実施例と同じであり、第1実施例と異なる点は、定格運転中に炉水の水素濃度を短期間だけ増大させることである。その他の手順は第1図と同じであるので、ここでは説明を省略する。
第4図に示すように、本実施例では、定格運転中に炉水のpHを約8に維持した状態で、炉水の水素濃度を短期間だけ増大させる。この短期間としては、例えば1〜2日程度の期間にすれば良い。この期間の水素濃度は、例えば100〜200ppb程度の範囲まで増大させれば良い。この水素濃度の増大は、次のようにして行う。
バルブ34を開いて水素注入装置24から給水系2に水素を連続して注入する(以下、連続水素注入という)前に、水素注入装置24と給水系2の間に設けたアキュミュレータ31に予め所定量(以下、過剰水素量という)の水素を貯える。炉水の水素濃度を増大させる時点で、アキュミュレータ31に貯えられた水素を給水系2に短期間(以下、過剰水素供給期間という)だけ放出することにより、水素の注入量を一時的に増加させる。
この時、ECPセンサ25によって測定した炉水のECPに基づいて、連続水素注入前に、予め必要な過剰水素量及び過剰水素供給期間を決めておく。これにより、アルカリをき裂先端部に確実に浸透させるために最適な量及び期間の条件を満たすように、水素注入量を制御することができる。
尚、予め十分な量の水素をアキュミュレータ31に蓄積しておけば、例えば水電解による水素発生装置の水素発生量の上限値が連続水素注入時の水素注入量に設定されていても、十分に対応できる。
このように炉水のpHを弱アルカリに維持した状態で、炉水への水素注入量を短期間だけ増大させる(以下、短期の高水素注入運転という)ことにより、炉水のECPを大幅に低減できる。但し、過剰水素量は、き裂開口部のECPがき裂先端部とほぼ同じ約−500mVvsSHE(定格運転時)となる量に設定する。ここで、〔mVvsSHE〕は標準水素電極電位に対する相対的な電位を意味する。
き裂開口部のECPは炉水のECPとみなせる。従って、予め水素注入装置24からの水素注入量と炉水のECPとの関係を求めておけば、この関係に基づいて上記過剰水素量の設定を行うことができる。
上記したようにき裂開口部とき裂先端部のECPをほぼ等しくすることによって、濃度拡散によるアルカリ金属イオン又はカチオンのき裂先端部への移動を促進して、き裂先端部を弱アルカリにできる。その後、水素注入量を連続水素注入時の最適値に戻すことにより、起動運転時の高アルカリ運転と同等の効果を期待することができる。
第6図に、本実施例の原子炉運転方法における炉水及びき裂先端部のpHの時間変化を模式的に示す。同図で、横軸は原子炉の運転時間を示し、縦軸は原子炉出力と炉水及びき裂先端部のpHを示す。原子炉の運転時間及び原子炉出力は、第4図と同じ相対値で示している。
第6図のように、起動運転初期の高アルカリ運転時には、炉水のpH及びき裂先端部のpHは、約9で等しい。起動運転の後半から定格運転にかけては、炉水のpHは約8に維持されるが、き裂先端部のpHは次第に減少して8よりも低くなる。定格運転中に、短期の高水素注入運転を実施することにより、き裂先端部のpHは上昇して炉水のpHと同じ約8になる。
本実施例でも、第1実施例と同様な効果が得られる。更に、本実施例では、定格運転時に炉水のpHを弱アルカリに保つことにより、起動運転時にき裂内に蓄積されたアルカリがき裂から抜け難くできる。また、定格運転中の短期間に炉水の水素濃度を増大させることによって、より多くのアルカリをき裂内に蓄積できるので、き裂の進展をより確実に抑制できる。
更に、ボトムドレン16にDCB(Double Cantilever Beam)センサ等の亀裂進展速度センサを設置して、炉水中における材料のき裂進展速度を監視すれば、き裂先端部のpHが低下してきたとき(き裂進展速度が所定値よりも大きくなったとき)に、上記した短期の高水素注入運転を実施して、き裂先端部へのアルカリ供給を適切に行うことができる。
尚、本実施例のように定格運転時のある短期間に水素注入量を増大させると、この期間の主蒸気系5の線量率は上昇する。これに対しては、例えば原子力発電所内で線量率が上昇する区域における工事等をこの期間を避けて実施することにより、容易に対応できる。また、上記した短期の高水素注入運転に対しては、ガストレーラの増設や、水素発生装置による水素発生量の増大などで対応することも可能である。
(第3実施例)
次に、第7図及び第8図を用いて、本発明をBWRに適用した第3実施例を説明する。第7図は、起動運転時から水素を炉水中に注入しているBWRに本発明を適用した第3実施例の原子炉運転方法を示す図である。第8図は、第3実施例の原子炉運転方法を適用するBWRの一次冷却系の系統図である。
第8図に示す一次冷却系は、第5図の第2実施例において、炉浄化系17に接続されている水素注入装置24a及びアルカリ注入装置32を削除し、ボトムドレン16にDCBセンサ33を追加した構成になっている。その他の構成は第5図と同じであるので、ここでは説明を省略する。
第7図に示す原子炉運転方法は、第4図の第2実施例において、炉水のpHを運転サイクルを通して弱アルカリである約8に維持するものである。即ち、本実施例では、起動運転時に高アルカリ運転を行わず、定格運転時に短期の高水素注入運転を実施する。その他の手順は基本的に第4図と同じであるので、ここでは説明を省略する。
本実施例の場合、炉水への水素注入装置が給水系2のみに接続されているため、起動運転時における水素注入方法が、第1及び第2実施例とは異なる。即ち、本実施例では、起動運転時から水素注入装置24を用いて給水系2に水素を連続して注入し、炉水の水素濃度が30〜100ppb程度の範囲となるように、バルブ34の開度(水素の注入量)を調整する。
更に、本実施例では、ボトムドレン16に設置したDCBセンサを用いて炉水中における材料のき裂進展速度を監視し、き裂先端部のpHが低下してきたとき(き裂進展速度が所定値よりも大きくなったとき)に、短期の高水素注入運転を実施する。これにより、き裂先端部へのアルカリ供給を適切に行うことができる。
本実施例によれば、定格運転中に短期の高水素注入運転を実施することにより、水素注入による再結合反応を定格運転中の短期間に促進できる。従って、主蒸気系の線量率を増大せずに、炉水中の溶存酸素濃度(実効酸素濃度)を効果的に低下させて、原子炉構造材のSCCの発生及び進展を効果的に抑制できる。
また、炉水を弱アルカリに制御することにより、き裂先端部のpHをアルカリ側にシフトできるので、原子炉構造材のき裂の進展を効果的に抑制できる。更に、炉水の弱アルカリ制御により、炉水の放射能を低減できる。
尚、本実施例でも、好ましくは、炉水の水素濃度を30〜65ppbの範囲内に制御することにより、主蒸気系の線量率をより低減できる。また、ECPセンサやDCBセンサなどの炉水の水質を測定するためのセンサは、可能であれば原子炉圧力容器3内に設置した方が好ましい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、BWRに本発明を適用した第1実施例の原子炉運転方法を示す図である。
第2図は、第1実施例の原子炉運転方法を適用するBWRの一次冷却系の系統図である。
第3図は、炉水のNa濃度とpHとの関係を求めた解析結果を示す図である。
第4図は、BWRに本発明を適用した第2実施例の原子炉運転方法を示す図である。
第5図は、第2実施例の原子炉運転方法を適用するBWRの一次冷却系の系統図である。
第6図は、第2実施例の運転方法における炉水とき裂先端部のpHの時間変化を模式的に示す図である。
第7図は、BWRに本発明を適用した第3実施例の原子炉運転方法を示す図である。
第8図は、第3実施例の原子炉運転方法を適用するBWRの一次冷却系の系統図である。
第9図は、給水水素濃度と炉水の実効酸素濃度との関係を求めた解析結果を示す図である。
第10図は、き裂内部のpHの説明図である。
第11図は、炉水のpHとCoの溶出速度との関係を示す図である。

Claims (9)

  1. 沸騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、
    前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は8.5<pH≦9 の範囲内の相対的に高いレベルに制御し、その後停止運転まで7<pH≦8.5 の範囲内の相対的に低いレベルに制御すると共に、
    前記炉水の水素濃度を、前記運転サイクルを通して30〜100ppb の範囲内に制御することを特徴とする原子炉運転方法。
  2. 沸騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、
    前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は8.5<pH≦9 の範囲内の相対的に高いレベルに制御し、その後停止運転まで7<pH≦8.5 の範囲内の相対的に低いレベルに制御すると共に、
    前記起動運転後の定格運転中における前記炉水の水素濃度を、30〜100ppb の範囲内に制御し、その後100〜200ppbの範囲内に増大させ、その後30〜100 ppb の範囲内に制御することを特徴とする原子炉運転方法。
  3. 請求項1又は2において、前記起動運転中に前記炉水の温度を上昇させるとともに、前記炉水温度が上昇を開始した時点で、前記炉水の室温pHを前記高いレベルから前記低いレベルに低下させることを特徴とする原子炉運転方法。
  4. 請求項1乃至3の何れかにおいて、水に溶解したときにアルカリ性を示す溶液又は気体を原子炉一次冷却系に注入することにより、前記炉水の室温pHを前記高いレベルに制御することを特徴とする原子炉運転方法。
  5. 請求項1乃至4の何れかにおいて、復水系又は炉浄化系の脱塩器にアルカリ基型のカチオン樹脂を用い、該カチオン樹脂から漏洩する陽イオンの濃度を調整することにより、前記炉水の室温pHを7<pH≦8.5 の範囲内に制御することを特徴とする原子炉運転方法。
  6. 請求項1乃至5の何れかにおいて、前記30〜100ppbの範囲内で制御される炉水の水素濃度は、30〜65ppbの範囲内に制御されることを特徴とする原子炉運転方法。
  7. 請求項2において、前記炉水中又はそのサンプリング配管に設置したき裂進展速度センサでモニタしたき裂進展速度が所定値よりも大きくなった時に、前記炉水の水素濃度を増大することを特徴とする原子炉運転方法。
  8. 騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、
    前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は7<pH≦9の範囲内で相対的に高いレベルに制御し、前記起動運転の初期の経過後から停止運転までは前記7<pH≦9の範囲内で前記高いレベルよりも低いレベルに制御すると共に、
    前記炉水の水素濃度を、前記運転サイクルを通して30〜100ppb の範囲内に制御することを特徴とする原子炉運転方法。
  9. 騰水型原子炉の炉水のpHをアルカリ側に制御し且つ該炉水中に水素を注入して前記原子炉を運転する原子炉運転方法において、
    前記炉水の室温pHを、1つの運転サイクルの起動運転の初期は7<pH≦9の範囲内で相対的に高いレベルに制御し、前記起動運転の初期の経過後から停止運転までは前記7<pH≦9の範囲内で前記高いレベルよりも低いレベルに制御すると共に、
    前記起動運転後の定格運転中における前記炉水の水素濃度を、30〜100ppb の範囲内に制御し、その後100〜200ppbの範囲内に増大させ、その後30〜100 ppb の範囲内に制御することを特徴とする原子炉運転方法。
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