JP3940120B2 - 抄紙機のカンバスに対する汚染防止剤の吹付付与方法、及びそれに用いる摺動散布装置 - Google Patents
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Description
そのため、抄紙機のドライパート(乾燥工程)は、抄紙過程の中でも極めて重要な部分に位置付けられている。
そして、複数のドライヤロールを用いる場合には、紙体をその外側からドライヤロールの表面に押し付けて乾燥効率を上げるために、通常、カンバスが備えられる。
カンバスAは、10本前後の一群のドライヤロールRにつき、上下に1枚ずつ設けられ(ダブルカンバスの場合)、カンバスロールKやテンションロールL、カンバスドライヤM等によって支持されて、閉ループを形成する。
紙体Wから蒸発した水蒸気は、通常、ドライヤロールRや上下カンバスA等に囲まれた空間であるドライヤポケット部Dに吐き出され、同部のベンチレーションにより、最終的にドライパートを覆うフードの排気口から排気される。
ベンチレーションは、熱風ロールや熱風ダクト等によりカンバスを貫通して熱風を吹き込むなどして行われるが、カンバスの通気度に左右され易い。
そのため、適切な通気度を有するカンバスが選択されて用いられる。
通気度が適切でないと、バルーニングやブローイング等の現象を生じ、紙体にしわが生じたり紙切れを起こしたりするトラブルにつながる場合がある。
そして、紙粉やピッチ等はカンバスの織りの空隙部分(いわゆるカンバスの)に入り込んで目を詰まらせてカンバスの通気度を下げ、その結果として、紙体の乾燥効率を著しく低下させてしまう。
ここで、カンバスの外面に接するロール類とは、図1でいえば、テンションロールLやカンバスドライヤM等のことであり、カンバスロールKのうちカンバスの外面側にある外側カンバスロールNも含まれる(本明細書ではこれらのカンバスの外面に接するロール類をまとめてアウトロールという)。
そして、紙粉やピッチ等が蓄積してアウトロールの表面上に層状に形成されると、抄紙機を止めて除去しなければならず、製造効率が低下する(特許文献1参照)。
そうなると、カンバスを汚染するだけでなく、今度は、固まりがカンバスの外面から紙体に転移してしまい、紙製品に欠点を生じたり断紙の原因となる。
放置すると、上記のような種々の深刻な問題が発生してしまう。
こうした事態を防止するため、通常、紙粉やピッチ等が紙体からカンバスに転移するのを防止する汚染防止剤が、カンバスに対して付与される。
また、汚染防止剤であるオイルエマルジョンをカンバス上方の液溜容器から回転軸に滴下し、回転軸の遠心力で細かい液滴として飛散させて付与する方法も提案された(特許文献2参照)。
また、吹き飛ばされた液滴が抄紙機の部材等に付着してその表面で大きくなり、液滴となって紙体上に落下(いわゆるボタ落ち)し、紙製品の品質を著しく害することもある。
更に、近年の抄紙機の高速化によりカンバスの表層気流が極めて激しくなっているため、これらの方法では液滴の殆どが巻き上げられて、効果的にカンバス面に付与できないという事態に陥ってしまう。
しかし、こうした方法では、多くの場合、汚染防止剤を多量に塗布してしまうため、汚染防止剤がカンバスの目に詰まり、或いはカンバスが濡れて汚染防止剤が的確にカンバスに付与されずに紙粉等で目詰まりを生じ、結果的に紙体の乾燥効率を著しく低下させてしまった。
そこでは、アウトロール(特にテンションロール)に対して、固定型散布ノズルより散布する方法、摺動型散布ノズルによる方法、及び長尺型散布ノズルによる方法を提示している(特に特許文献1参照)。
この点で、長尺型散布ノズルや摺動型散布ノズルは、ノズルの個数や摺動幅を任意に決めることにより、アウトロールの全面に均一に散布することが可能である。
また、アウトロール両端のカンバスが接しない部分にまで薬剤を散布してしまい、その部分に薬剤が蓄積してトラブルを生じてしまう場合がある。
しかも、使用するノズルの種類(例えば1流体ノズルか2流体ノズルか)や散布量、ノズルの摺動速度等を自由に調整することができ、薬液の適量散布に適している。
しかし、2流体ノズルを用いた場合、噴霧された薬液の運動量が小さいため、アウトロールやカンバスの表層気流によりその一部が巻き上げられ、薬液がアウトロールに到達しない場合があった。
そうした場合、掻き乱された気流により薬液の巻き上がりがかえって激しくなり、所定量の付与を行えず、反対に、上記ボタ落ち等の問題が発生してしまう恐れがあった。
こうした汚染を防止するためにカンバスに汚染防止剤が付与されるが、的確に薬剤を付与できないと、カンバスの目を詰まらせたり、カンバスを濡らしたりして、かえって乾燥効率を落とすこととなる。
これらのカンバスは、従来のカンバスと比較して、紙粉等や汚染防止剤で目が詰まり易く、また水分を吸収し易い。
特に、通気度が20000cm3/cm2/分以下のカンバスではこの傾向が顕著であった。
逆に言えば、こうした厳しい環境の中においても、カンバスに対してより確実にしかも適量の汚染防止剤を付与することを可能にする付与方法の開発が、強く求められている。
すなわち、本発明の目的は、カンバスに対して確実に且つ適量の汚染防止剤を付与できる汚染防止剤の吹付付与方法を提供することである。
また、上記吹付付与方法を実現可能な散布ノズル及び摺動散布装置を提供することである。
更には、上記吹付付与方法に用いる汚染防止剤を提供することである。
通気度が高いカンバスのみならず、通気度が低く(例えば20000cm3/cm2/分以下)乾燥し難いカンバスに対して、カンバスに余分な水分を与えることなく汚染防止剤を均一に、確実に且つ適量に付与することができ、より効果的である。
また、本発明の汚染防止剤及び摺動散布装置を用いれば、カンバスに対する紙粉やピッチ等の転移が有効に阻止され、汚染防止効果が発揮される。
図2は、カンバスの外面とアウトロールとの接触開始部位を説明する図である。
図3は、接触開始部位に向けて散布ノズルから汚染防止剤を散布している状態を横から見た概略図である。
ここで、接触開始部位Cとは、閉ループを周回してきたカンバスAの外面がアウトロールBと最初に接触する部位のことであり、図2において斜線が付された部位のことである。
そのため、カンバスAの表面付近では図3の白抜き矢印の方向に表層気流が発生し、また、アウトロールBの表面付近でも図3の点線矢印の方向に表層気流が発生している。
このように吹き付けると、汚染防止剤Tは、カンバスA及びアウトロールBの両表層気流に運ばれて吹き付けられることとなる。
他方ではアウトロールBの表層気流が生じているために、汚染防止剤Tは両方の表層気流により散布状態が集束され、的確に接触開始部位Cに到達することができる。
当然、汚染防止剤Tは広範囲の飛散することはなく効率的に付与される。
この歩留まり低下分をカバーするために、例えば、長尺型散布ノズルによる散布において汚染防止剤Tの散布量を増やすと、希釈水の散布量も多くなり、カンバスを必要以上に濡らしてしまう。
すなわち、散布状態が集束され、汚染防止剤Tを巻き上げられることなく接触開始部位Cに到達させることができるのである。
本発明の汚染防止剤の吹付付与方法は、上記散布ノズルからカンバスの外面とアウトロールとの接触開始部位に向けて汚染防止剤を散布して、アウトロールに汚染防止剤を付着させ、この汚染防止剤がアウトロールからカンバスに転移することを利用して汚染防止剤をカンバスに付与させるというものである。
そのため、カンバスAは高温状態で走行しており、それに接するテンションロールLや外側カンバスロールN(即ちアウトロール)も、常にカンバスAを介してドライヤロールRやカンバスドライヤMから熱が伝達され、高温の状態で回転している。
そして、この油膜の一部が、あたかもローラで壁にペンキを塗布するようにアウトロールからカンバスAの外面全体に転移されることにより、カンバスの外面へのオイル等の均一な付与が達成できる(ペンキローラ効果)。
このようにカンバスに油膜が形成されることにより、紙体からの紙粉やピッチ等の転移を十分に有効に防止することができるのである。
しかし、本発明によれば、上記のようなペンキローラ効果によりカンバスの表層部分にのみオイル等を転移させることができるため、こうしたカンバスでも何ら支障なく汚染防止剤を付与することが可能となる。
このような汚染防止剤の付与は、複数のノズル口を有する長尺型散布ノズルを用いて行うことができる。
その点、1つの散布ノズルをアウトロールに平行に摺動させながら散布する摺動型散布ノズルでは、汚染防止剤を水で希釈せずに原液のまま散布するため、カンバスの濡れを確実に抑えることができ、好ましい。
しかし、本発明では、上記のような散布ノズル(長尺型散布ノズル又は摺動型散布ノズル)で散布すれば、散布量や摺動速度を変えたり散布ノズルを交換したりすることで、こうした微妙な調整を即座に的確に行うことができる。
また、直接付与された一部の汚染防止剤中の水分は、アウトロールやカンバスドライヤ、ドライヤロール等に接して即座に乾燥される程度のものなので、カンバス表面の油膜形成に影響が生じるほどのものではない。
他のアウトロールに付着したオイルは、ロール表面に油膜を形成する。
このようにして、他のアウトロールでは、カンバスとの間でのオイルのやりとりが平衡に達し、その表面上に油膜が一定の厚さに保たれた状態が続く。
そのため、その分だけ絶えずアウトロールに汚染防止剤を供給し続けなければならないのである。
そして、その結果、全てのアウトロールを紙体由来の紙粉やピッチ等による汚染から守ることができる。
本発明の汚染防止剤の吹付付与方法によれば、従来のように、カンバスやアウトロールの表層気流に抗して汚染防止剤を散布する(図3の破線で示すSa参照)のとは異なり、前述したようにそれらの表層気流を活用する。
即ち、汚染防止剤をそれらの表層気流に乗せて運ばせて接触開始部位に的確に到達させることで、カンバスに対して(アウトロールを介して)確実に且つ適量の汚染防止剤を付与するという課題を解決した。
従来の吹付付与方法(図3のSa参照)は、先述したように、カンバスやアウトロールの表層気流による妨害を受け易く、実際には、テンションロールLのように深く引き込まれた状態にあるアウトロールでしか行えなかった(図4のS5の位置)。
従って、本発明は、どのアウトロールにも適用できるという利点を有する。
また、先述したように、アウトロールに吹き付けされた汚染防止剤(のオイル)は、カンバスを介して他のアウトロールに転移し、油膜を形成してそのアウトロールが汚染されるのを阻止し、更にはカンバスの汚染を防止する。
即ち、本発明の吹付付与方法では、カンバスが紙体から離れて最初に接するアウトロール(図4では外側カンバスロールN)に汚染防止剤を散布するのが、より好ましい。
本発明の汚染防止剤の吹付付与方法においては、長尺型散布ノズルを用いることができるが、先述したように、薬剤を水で数百倍に希釈して使用するため、カンバスを濡らしてしまう場合がある。
その点、摺動型散布ノズルでは、汚染防止剤を水で希釈せずに原液のまま散布できる利点がある。
図5は、摺動散布装置の構成例を示す概略図である。
この構成例では、散布ノズルが2流体ノズルである場合を示す。
摺動散布装置1は、枠体11、左右のボックス部12L及び12R、散布ノズルS、散布ノズルSを固定し摺動(往復移動)させるための移動ベルト13、駆動モータ14、左右のリミットスイッチ15L及び15R等を備える。
散布ノズルSには、汚染防止剤を供給するための液体供給管17及びブロー用のエア供給管18が取り付けられており、それらの下端は支持台13aに嵌入固定される。
チューブ17a及び18aは、移動ベルト13の往復移動に合わせてフレキシブルに形状を変化させて追従する登録商標ケーブルベア19に挿通され、左ボックス部12L内を通って装置外部の薬液タンクやコンプレッサ等(図示しない)に連結される。
枠体11には、左右にリミットスイッチ15L及び15Rが設けられており、これらのリミットスイッチにより、散布ノズルSの摺動幅を設定することができる。
そのため、アウトロール両端のカンバスが接しない部分にまで薬剤を散布することを、極力、防止でき、先述した従来例のように、その部分に薬剤が蓄積してトラブルが発生することがない。
そのため、散布ノズルSが摺動する間、汚染防止剤及びブロー用エアを連続的に供給することができ、散布ノズルSは摺動しながら同時に汚染防止剤を散布し続けることができるのである。
次に、散布ノズルについて述べる。
散布ノズルSとしては、通常、1流体ノズル又は2流体ノズルが採用される。
1流体ノズルは、液体に圧力を掛けて噴射するもので、噴射される液体の量が多量であり、液体のインパクト(流速や運動量等)が大きいという特徴がある。
2流体ノズルは、液体をブローエアで押し出して散布するもので、液体の少量散布に適するが、インパクトが比較的小さいという特徴を有する。
この際、2流体ノズルは、種々のものが開発され上市されているが、汚染防止剤の散布量等に基づいて、適宜選択され、或いは設計されることは言うまでもない。
本発明の吹付付与方法は、先述したように、カンバスやアウトロールの表層気流に乗せて汚染防止剤を付与するものであるから、2流体ノズルを用いた場合でも巻き上がりを生じずに十分に汚染防止剤を付与することができる。
しかし、抄紙機の抄速が非常に高速化して、カンバス等の表層気流(図3の白抜き矢印や点線矢印参照)が激しいような場合は、より確実に汚染防止剤をカンバスに到達させるために、散布ノズルとして二次ブロー付き2流体ノズルを用いることができる。
図6(B)中の矢印は、二次ブローエアの流れを示す。
2流体ノズル3は、噴霧ノズル31と、液体注入口32と、エア注入口33とを備える。
また、液体注入口32には液体供給管17(図5参照)が、エア注入口33にはエア供給管18が、それぞれシーリングを介して螺着される。
エアボックス4の底部の二次ブロー用エア注入口43には、図5における支持体16の代わりに、二次ブロー用のエアを供給するための二次ブロー用エア供給管21がシーリングを介して螺着されている。
図示しないが、二次ブロー用エア供給管21が、液体供給管17等と同様、支持台13aに嵌入固定され、チューブと連結し、登録商標ケーブルベアに挿通され、装置外部のコンプレッサ等に連結されることは言うまでもない。
このような構成の二次ブロー付き2流体ノズル2に二次ブロー用エア供給管21から圧搾空気(二次ブロー用エア)を供給すると、圧搾空気は二次ブロー用エア注入口43を通り、空間44を充填し、孔45を通って、気流噴射ノズル42から噴射され、二次ブローEを形成する。
二次ブロー付き2流体ノズル2の噴霧ノズル31から噴霧された汚染防止剤Tに対して気流噴射ノズル42から二次ブローEを噴射すると、汚染防止剤Tがより流速が速い二次ブローEに加速されることが、図7から容易に理解されよう。
このようにして、二次ブロー付き2流体ノズルは、もともとインパクトの弱い2流体ノズルによる液体の噴射を、インパクトの強いものにすることができる。
本発明の汚染防止剤の吹付付与方法に用いられる汚染防止剤としては、ワックスやオイル又はその両方を含むエマルジョンが挙げられる。
ワックスやオイルは、アウトロールの表面で油化して拡散し易く、より効果的な撥水性を有する油膜を形成できるため、離型剤として好ましく用いられる。
また、シリコーンオイルは、カンバスやアウトロールの表面にシリコーンオイル独特の離型性及び撥水性を有する被膜を形成するため、汚染防止剤の主成分として好ましく用いられる。
中でも、ジメチルポリシロキサン系のオイル(通称「ジメチル」)は、種類が非常に多いという特徴があり、カンバスの材質や使用時の温度等の使用条件に合わせて適宜選択して用いることができるため、好ましい。
変性シリコーンオイルには、その置換基により、例えば、アミノ変性、エポキシ変性、アルコキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性等の種々の変性タイプがある。
例えば、側鎖型アミノ変性シリコーンオイルは、アクリル板に付着させてティッシュペーパーで拭き取る実験を行うと、ジメチル(一回拭けばほとんど拭き取られる)よりも拭き取り難い(通常一回の拭き取りでは拭き取れず油膜が残る)という特性をもつ。
これは、側鎖の極性を有する有機官能基が金属板等と強く引き合い、金属板等の表面に対して投錨効果を発揮するためと考えられている。
また、そうした特性のため、先述したようにオイルが紙体に転移して除去される量も少なくなるため、汚染防止剤の付与量をより少量にすることが可能となる利点もある。
また、変性シリコーンオイルはその強い粘着性により、汚染防止剤の付与開始直後からカンバスに的確に付着し、即座にアウトロールに油膜を形成するため、汚染防止効果の発現(いわゆる立ち上がり)が非常に速いという利点もある。
本発明は、これらの実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
汚染防止剤(エマルジョン)は、以下のように調製した。
(変性)シリコーンオイル又はひまし油 10重量%
乳化剤〔エマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ノニオン系)〕 2重量%
水 88重量%
計 100重量%
抄紙機:ウルトラフォーマー(株式会社小林製作所製)
抄造銘柄:ライナー
坪量:160g/m2
抄速:650m/分
紙幅:4m
カンバス幅:4.5m
なお、使用したカンバスの通気度は16000cm3/cm2/分である。
アウトロールは、図4に示したように、カンバスの上流側から外側カンバスロールN、テンションロールL、カンバスドライヤMの順に配置した。
図5に示した摺動散布装置(散布ノズルは2流体ノズル)を用い、汚染防止剤の散布量を5cm3/分とし、摺動速度、散布位置(図4のS1〜S6)、及びシリコーンオイルの種類を変えて、実働14日間散布した。
因みに、図4において、S1、S2、S3は本発明におけるカンバスの外面とアウトロールとの接触開始部位に向けて散布する場合を示し、S4、S5はアウトロールに散布する従来の散布位置、S6はカンバスの外面に直接散布する場合をそれぞれ示す。
参考までに計算式を示す。
(計算式)5cm3/分×0.1×1.0g/cm3÷(650m/分×4.0m)
=0.5g/分÷2600m2/分
=500mg/分÷2600m2/分
=0.19mg/m2
結果を〔表1〕に示す。
表1において、摺動速度は散布ノズルの摺動速度を示す。
また、N、L、Mは、それぞれ図4における外側カンバスロールN、テンションロールL、カンバスドライヤMを表す。
◎:カンバス又はアウトロールに汚れ(紙粉やピッチ等)が確認できない
○:カンバス又はアウトロールに汚れがごく僅かに付着している
△:カンバス又はアウトロールに汚れが付着している
×:カンバスの目が詰まっている、又はアウトロールに層状に汚れが形成されている。
本発明における散布方法では散布ノズルの摺動速度が1.5m/分以上が好ましい。
すなわち、実施例1〜3,実施例8,実施例4、実施例9に示すように、図4のS1の位置で散布ノズルの摺動速度を変えてジメチルシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン系オイル)を散布した場合を比較すると、摺動速度が小さくなるにつれてカンバス等に汚れが付着するようになることが分かる。
また、摺動速度が2.0m/分より小さいと、カンバス等に小さな汚れの固まりができ始めていることが分かる。
つまり、アウトロールの表面のうち、汚染防止剤の散布を受けていない部分では次々と油膜が剥離し、カンバスはアウトロールのその部分からオイルの供給を有効に受けられず、カンバスの表面にも有効に油膜が形成できない。
そのため、紙体からの紙粉やピッチ等の転移を許してしまい、その紙粉等がカンバスによって運ばれて他のアウトロールにも転移して汚染される。
このようなことから散布ノズルの摺動速度はキャンバス等の汚れ防止に影響することが理解できる。
この傾向は、ジメチルの代わりに側鎖型アミノ変性シリコーンオイルを用いた場合(実施例4及び実施例9)でも同様である。
しかし、実施例3と実施例4(及び実施例8と実施例9)を比較して分かるように、変性シリコーンオイルを用いた場合の方が、同じ摺動速度でジメチルの場合より、汚染防止効果は良好であり、改善が見られる。
汚染防止剤の散布位置を、S1(実施例1)、S2(実施例5)、S3(実施例6)、S4(比較例1)、S5(比較例2)、S6(比較例3)と変えた場合を比較すると、本発明の吹付付与方法によって散布したS1〜S3では汚染防止効果は良好であった。
S4での汚染防止効果がほとんど確認されないのは、このカンバスの表層気流による激しい巻き上げのため、外側カンバスロールNに十分な量の汚染防止剤が到達していなかったためと考えられる。
上記のS4の場合と比較した場合、巻き上げの量が少量であった分、良好な結果が得られている。
しかし、S2で散布した実施例5と比較した場合、汚染防止効果は十分とは言えず、上記のように巻き上げられた結果、テンションロールLに到達する量が減り、必要量に達しなかったようである。
この際、汚染防止剤は、激しく巻き上げられていた。
表1には示さないが、ジメチルの代わりに側鎖型アミノ変性シリコーンオイルのエマルジョンを用いた場合も、結果は同様であった。
つまり、カンバスに直接散布したのでは、汚染防止剤(オイル及び水等)がカンバスに到達してもその場で吸収されてしまい、面方向に拡散しない。
また、アウトロールには有効な油膜が形成されないため、カンバスから紙粉等が次々と転移して蓄積されてしまうと考えられる。
実施例1、実施例5、及び実施例6は、本発明の吹付付与方法による汚染防止剤の散布位置のみ変えた場合である。
この結果から分かるのは、
(1)汚染防止剤が散布されたアウトロールには油膜が形成され、その下流のアウトロールにもカンバスを介してオイルが運ばれ、有効に油膜を形成する、
(2)しかし、汚染防止剤が散布されるアウトロールの上流側にあるアウトロールは、紙粉やピッチ等で僅かに汚れる場合がある、
ということである。
また、(2)については、カンバスが紙体に圧接されると、先述したように、オイルの一部が紙体に転移するため、その直後に位置するアウトロール(上記の上流側のアウトロール)に転移するオイルの量が少なくなり、汚染防止効果が多少低下してしまうためと考えられる。
こうした紙粉等は、通常は、カンバスが周回するうちカンバスから紙体に転移して戻りカンバス等が汚染されることはないが、一部は上記のように汚染防止効果が若干低下したアウトロールに転移してトラップされるため、アウトロールが僅かに汚れると考えられる。
また、実施例3と実施例4とを比較しても分かるように、変性シリコーンオイルを用いれば、より効果的である。
汚染防止剤の主成分としてひまし油を使用した場合(実施例7)も、ジメチルシリコーンオイルを用いた場合(実施例1)と同様に、カンバスやアウトロールに汚れ(紙粉やピッチ等)が確認されず、良好な結果が得られた。
これは、ジメチルや側鎖型アミノ変性シリコーンオイルの場合と同様に、ひまし油もカンバスやアウトロールの表面に定着して有効に油膜を形成し、紙粉やピッチ等の転移を効果的に阻止するためと考えられる。
最後にカンバスの通気度について述べる。
従来の散布方法においては、既に述べたように、通気度が20000cm3/cm2/分以下のカンバスでは、紙粉や汚染防止剤のオイル等でカンバスの目詰まりが頻繁に生じ、又は余分な水分を吸収して濡れ易い傾向があった。
本願発明では、そのようなことが解消され、寧ろ、この通気度の範囲でより優れた効果を発揮できる。
そのことを検証するために、先述した実施例における抄紙条件のカンバス(すなわち16000cm3/cm2/分)とは異なった25000cm3/cm2を有するカンバスを使い、他の条件は同じで、実働14日間の散布実験を行った。
なお、散布位置はテンションロールLにおけるS2(実施例10)とS5(比較例4)で行った。
その結果を〔表2〕に示す。
そのため、繊細な薄紙の製造には好適である。
例えば、本発明においては、主に2流体ノズルについて述べたが、場合によっては1流体ノズルを用いることも当然可能である。
更に、テンションロール等を含めてカンバスロールを全てインナ側(内側)に設けたタイプのカンバス(インナロール型)では、例えば、カンバスの外側からカンバスロールを押し付けるようにすれば、本発明を実施することができる。
11…枠体
12L…左ボックス部
12R…右ボックス部
13…移動ベルト
13a…支持台
14…駆動モータ
15L…左リミットスイッチ
15R…右リミットスイッチ
16…支持体
17…液体供給管
18…エア供給管
17a、18a…チューブ
19…登録商標ケーブルベア
2…二次ブロー付き2流体ノズル
21…二次ブロー用エア供給管
3…2流体ノズル
31…噴霧ノズル
32…液体注入口
33…エア注入口
4…エアボックス
41…側壁
42…気流噴射ノズル
43…二次ブロー用エア注入口
44…空間
45…孔
A…カンバス
B…アウトロール
C…接触開始部位
D…ドライヤポケット部
E…二次ブロー
K…カンバスロール
L…テンションロール
M…カンバスドライヤ
N…外側カンバスロール
R…ドライヤロール
S…散布ノズル
Sa…従来の散布位置
S1、S2、S3、S4、S5、S6…散布位置
T…汚染防止剤
W…紙体
Claims (7)
- 抄紙機において紙体の乾燥に用いられるカンバスに対して汚染防止剤を付与する汚染防止剤の付与方法であって、カンバスの外面とアウトロールとの接触開始部位に向けて散布ノズルから汚染防止剤を散布し、該汚染防止剤をカンバス及びアウトロールの両表層気流により運ばれて収束された状態で前記接触開始部位に吹き付けてアウトロールに汚染防止剤を付着させ、該アウトロールを介してカンバスに汚染防止剤を転移させて付与することを特徴とする汚染防止剤の吹付付与方法。
- 前記アウトロールは、カンバスが紙体から離れて最初に接するアウトロールであること
を特徴とする、請求項1記載の汚染防止剤の吹付付与方法。 - 前記散布ノズルを、カンバスのアウトロールの回転軸に平行に摺動させながら汚染防止
剤を散布することを特徴とする、請求項1記載の汚染防止剤の吹付付与方法。 - 前記カンバスは、通気度が20000cm3/cm2/分以下のカンバスであることを
特徴とする、請求項1記載の汚染防止剤の吹付付与方法。 - 請求項3記載の汚染防止剤の吹付付与方法に用いる散布ノズルを備えた摺動散布装置であって、該散布ノズルが2流体ノズルであることを特徴とする摺動散布装置。
- 請求項3記載の汚染防止剤の吹付付与方法に用いる散布ノズルを備えた摺動散布装置であって、前記散布ノズルが、液体を噴霧するための2流体ノズルと、気流を噴射するための気流噴射ノズルとを備え、該2流体ノズルから噴霧された液体に対して該気流噴射ノズ
ルから気流を噴射し、噴霧された液体を該気流で加速して吹き付ける二次ブロー付き2流
体ノズルであることを特徴とする摺動散布装置。 - 前記摺動散布装置は、リミットスイッチで設定された摺動幅に基づいて散布ノズルを摺
動させるものであることを特徴とする、請求項5又は6記載の摺動散布装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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