JP3936774B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関し、更に詳しくは、複写機、レーザープリンター、レーザーファクシミリなどに好適に使用される電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方法としては、カールソンプロセスやその様々の変形プロセスなどが知られており、複写機やプリンターなどに広く使用されている。この様な電子写真方法に用いられる感光体の中でも、有機系の感光材料を用いたものが、安価、大量生産性、無公害性などをメリットとして、近年使用されてきている。
【0003】
有機系の電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−結着剤に代表される顔料分散型、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られており、特に機能分離型の電子写真感光体が注目されている。
【0004】
この機能分離型の電子写真感光体における静電潜像形成のメ力ニズムは、感光体を帯電したのち光照射すると、光は透明な電荷輸送層を通過して電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され、光を吸収した電荷発生物質は電荷担体を発生し、この電荷担体は電荷輸送層に注入され、帯電によって生じている電界にしたがって電荷輸送層中を移動し、感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。
【0005】
機能分離型の電子写真感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視部から近赤外部に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いることが知られており、かつ有用である。
【0006】
電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、多くの低分子化合物が開発されているが、低分子化合物は単独では成膜性がないため、通常、不活性高分子化合物に分散・混合して用いられる。
しかるに、低分子電荷輸送物質と不活性高分子化合物からなる電荷輸送層は一般に柔らかく、カールソンプロセスにおいては、繰り返し使用による膜削れが生じやすいという欠点がある。また、この構成の電荷輸送層は電荷移動度に限界があり、カールソンプロセスの高速化あるいは小型化の障害となっていた。これは、通常、低分子電荷輸送物質が電荷輸送層において50重量%以下の含有量で使用されることに起因しており、低分子電荷輸送物質の含有量を増すことにより電荷移動度をある程度上げることは可能であるが、低分子電荷輸送物質の含有量を増すと成膜性が劣化し、繰り返し使用による膜削れが大きくなるという欠点がある。
【0007】
このような欠点を改良するために高分子型の電荷輸送物質が注目され、例えば、特開昭50−82056号公報、特開昭51−73888号公報、特開昭54−8527号公報、特開昭54−11737号公報、特開昭56−150749号公報、特開昭57−78402号公報、特開昭63−285552号公報、特開平1−1728号公報及び特開平3−50555号公報などに高分子型の電荷輸送物質が開示されている。
これらの高分子型の電荷輸送物質を用いた場合には、電荷輸送層を高分子化合物だけで構成することができるため、成膜性が良好で機械的強度が強く耐摩耗性に優れた電荷輸送層を得ることができ、繰り返し使用による膜削れを防止することができる。
【0008】
しかしながら、これら高分子電荷輸送物質を用いた電荷輸送層と電荷発生層とを積層してなる感光層を有する機能分離型の電子写真感光体は、低分子電荷輸送物質と不活性高分子化合物からなる電荷輸送層を有する機能分離型の電子写真感光体に比べて光感度が劣っており、特に表面電位の光照射減衰に電界強度依存性があり、光減衰曲線の裾切れが悪いという欠点がある。また、繰り返し使用時における帯電電位の変動も十分とは言えず、更なる安定化が望まれる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題はこのような問題点を解決し、繰り返し使用時の耐摩耗性に優れ、且つ高感度で光減衰曲線の裾切れが良好で、また繰り返し使用時の帯電電位の変動が少なく長期にわたり安定した画像が得られる電子写真感光体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、電荷輸送層がトリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂を主成分とし、少なくとも下記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体によって達成される。
【0011】
【化32】
(式中、Rは低級アルキル基を表し、R′、R″は置換もしくは無置換のメチレン基またはエチレン基を表す。Ar、Ar′は置換もしくは無置換のアリール基を表す。l′は0〜4の整数、m′またはn′は0〜2の整数を表し、m′+n′は2以上の整数であり、l′+m′+n′は6以下の整数である。ベンゼン環の未置換部位は水素原子を表す。)
【0012】
トリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂としては、特開昭64−9964号公報、特開昭64−19049号公報、特開平3−221522号公報、特開平4−11627号公報、特開平6−293827号公報などに記載されているものが使用できるが、特に下記一般式(2)〜(10)で表される高分子化合物が好ましい。
【0013】
【化33】
{式中、R'1、R'2、R'3は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基またはハロゲン原子を表し、R'4は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R1、R2は置換もしくは無置換のアリール基を表す。o、p、qは、それぞれ独立して0〜4の整数を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式(A)で表される2価基を表す。
【化34】
〔式中、R24、R25は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表し、l、mは0〜4の整数を表す。Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す)または下記一般式(B)
【化35】
(式中、aは1〜20の整数を表し、bは1〜2000の整数を表す。R26、R27は置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。)を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕}
【0014】
R'1、R'2、R'3のアルキル基は、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基はさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有しても良い。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
【0015】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0016】
R'4の置換もしくは無置換のアルキル基としては、上記のR'1、R'2、R'3と同様のものが挙げられる。
【0017】
R1、R2のアリール基としては、フェニル基などの芳香族炭化水素基、ナフチル基、ピレニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基などの縮合多環基、ビフェニリル基、ターフェニリル基などの非縮合多環基、チェニル基、ベンゾチェニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基などの複素環基などが挙げられる。
【0018】
上述のアリール基は以下に示す基を置換基として有していてもよい。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)アルキル基:上記のR'1、R'2、R'3のアルキル基として示したものと同様のものが挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR41):R41は上記(2)で示したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
(4)アリールオキシ基:アリール基としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有しても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。
(5)置換メルカプト基またはアリールメルカプト基:具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基などが挙げられる。
(6)アルキル置換アミノ基:アルキル基は上記(2)で示したアルキル基を表わす。具体的にはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−プロピルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基などが挙げられる。
(7)アシル基:具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0019】
Xは下記一般式(1′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(1′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0020】
【化36】
【0021】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
l,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4‐ジメタノール等の環状脂肪族ジオールなどが挙げられる。
【0022】
また、芳香環を有するジオールとしては、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′‐ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルオキシド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0023】
次に、一般式(2)で表される高分子化合物を示す。
【化37】
〔式中、R3、R4は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar1、Ar2、Ar3は同一または異なるアリレン基を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0024】
R3、R4のアリール基としては、フェニル基などの芳香族炭化水素基、ナフチル基、ピレニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基などの縮合多環基、チェニル基、ベンゾチェニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基などの複素環基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、または下記一般式(イ)で示される非縮合多環基などが挙げられる。
【0025】
【化38】
〔式中、Wは、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−および下記一般式(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)で示す2価基を表す。
【化39】
(式中、cは1〜12の整数を表し、d、e、fは1〜3の整数表す。)〕
【0026】
また、Ar1、Ar2、Ar3のアリレン基としては、R3、R4で示したアリール基の2価の基が挙げられる。R3、R4のアリール基、Ar1、Ar2、Ar3のアリレン基は以下に示す基を置換基として有してもよい。また、これらの置換基は上記一般式(イ)、(ニ)、(ホ)におけるR31、R32、R33の具体例でもある。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)アルキル基:好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基はさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有しても良い。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR41):R41は上記(2)で示したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
(4)アリールオキシ基:アリール基としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有しても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。
(5)置換メルカプト基またはアリールメルカプト基:具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基などが挙げられる。
(6)一般式−N(R42)(R43)で表される置換アミノ基。
(式中、R42及びR43は各々独立に上記(2)で示したアルキル基、または上記R3、R4で示したアリール基を表し、好ましいアリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基またはナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有しても良い。またアリール基上の炭素原子と共同で環を形成しても良い。具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N、N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基などが挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、またはメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基またはアルキレンジチオ基など。
【0027】
Xは下記一般式(2′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(2′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0028】
【化40】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0029】
次に、一般式(3)で表される高分子化合物を示す。
【化41】
〔式中、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar4、Ar5、Ar6は同一または異なるアリレン基を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0030】
R5、R6のアリール基としては、フェニル基などの芳香族炭化水素基、ナフチル基、ピレニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基などの縮合多環基、ビフェニリル基、ターフェニリル基などの非縮合多環基、チェニル基、ベンゾチェニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基などの複素環基などが挙げられる。
【0031】
また、Ar4、Ar5、Ar6のアリレン基としては、R5、R6で示したアリール基の2価の基が挙げられる。R5、R6のアリール基、Ar4、Ar5、Ar6のアリレン基は以下に示す基を置換基として有してもよい。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)アルキル基:好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基はさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有しても良い。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR41):R41は上記(2)で示したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
(4)アリールオキシ基:アリール基としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有しても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。
(5)置換メルカプト基またはアリールメルカプト基:具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基などが挙げられる。
(6)アルキル置換アミノ基:アルキル基は上記(2)で示したアルキル基を表わす。具体的にはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−プロピルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基などが挙げられる。
(7)アシル基:具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0032】
Xは下記一般式(3′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(3′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0033】
【化42】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0034】
次に、一般式(4)で表される高分子化合物を示す。
【化43】
〔式中、R7、R8は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar7、Ar8、Ar9は同一または異なるアリレン基を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。rは1〜5の整数を表す。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0035】
R7、R8のアリール基の具体例としては、一般式(3)の説明においてR5、R6のアリール基の具体例として例示したものを挙げることができ、Ar7、Ar8、Ar9のアリレン基の具体例としては、それらアリール基の2価の基を挙げることができる。また、これらアリール基またはアリレン基における置換基の具体例としては、一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したものを挙げることができる。
【0036】
Xは下記一般式(4′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(4′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0037】
【化44】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0038】
次に、一般式(5)で表される高分子化合物を示す。
【化45】
〔式中、R9、R10は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar10、Ar11、Ar12は同一または異なるアリレン基を表す。X1、X2は置換もしくは無置換のエチレン基または置換もしくは無置換のビニレン基を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0039】
R9、R10のアリール基の具体例としては、一般式(3)の説明においてR5、R6のアリール基の具体例として例示したものを挙げることができ、Ar10、Ar11、Ar12のアリレン基の具体例としては、それらアリール基の2価の基を挙げることができる。また、これらアリール基またはアリレン基における置換基の具体例としては、一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したものを挙げることができる。
【0040】
X1、X2のエチレン基またはビニレン基における置換基としては、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、一般式(3)の説明においてR5、R6のアリール基の具体例として例示したアリール基、あるいは一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したアルキル基などが挙げられる。
【0041】
Xは下記一般式(5′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(5′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0042】
【化46】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0043】
次に、一般式(6)で表される高分子化合物を示す。
【化47】
〔式中、R11、R12、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一または異なるアリレン基を表す。Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子またはビニレン基を表し、同一であっても異なっていてもよい。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0044】
R11、R12、R13、R14のアリール基の具体例としては、一般式(3)の説明においてR5、R6のアリール基の具体例として例示したものを挙げることができ、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16のアリレン基の具体例としては、それらアリール基の2価の基を挙げることができる。また、これらアリール基またはアリレン基における置換基の具体例としては、一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したものを挙げることができる。
【0045】
Y1、Y2、Y3のアルキレン基としては、一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したアルキル基より誘導される2価の基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、ジフルオロメチレン基、ヒドロキシエチレン基、シアノエチレン基、メトキシエチレン基、フェニルメチレン基、4−メチルフェニルメチレン基、2,2−プロピレン基、2,2−ブチレン基、ジフェニルメチレン基などを挙げることができる。
シクロアルキレン基としては、1,1−シクロペンチレン基、1,1−シクロヘキシレン基、1,1−シクロオクチレン基などを挙げることができる。
また、アルキレンエーテル基としては、ジメチレンエーテル基、ジエチレンエーテル基、エチレンメチレンエーテル基、ビス(トリエチレン)エーテル基、ポリテトラメチレンエーテル基などが挙げられる。
【0046】
Xは下記一般式(6′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(6′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0047】
【化48】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0048】
次に、一般式(7)で表される高分子化合物を示す。
【化49】
〔式中、R15、R16は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R15とR16は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一または異なるアリレン基を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0049】
R15、R16のアリール基の具体例としては、一般式(3)の説明においてR5、R6のアリール基の具体例として例示したものを挙げることができ、またR15とR16が環を形成する場合としては、9−フルオリニデン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンなどを挙げることができる。
【0050】
Ar17、Ar18、Ar19のアリレン基の具体例としては、それらアリール基の2価の基を挙げることができる。また、これらアリール基またはアリレン基における置換基の具体例としては、一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したものを挙げることができる。
【0051】
Xは下記一般式(7′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(7′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0052】
【化50】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0053】
次に、一般式(8)で表される高分子化合物を示す。
【化51】
〔式中、R17は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一または異なるアリレン基を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0054】
R17のアリール基の具体例としては、一般式(3)の説明においてR5、R6のアリール基の具体例として例示したものを挙げることができ、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23のアリレン基の具体例としては、それらアリール基の2価の基を挙げることができる。また、これらアリール基またはアリレン基における置換基の具体例としては、一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したものを挙げることができる。
【0055】
Xは下記一般式(8′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(8′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0056】
【化52】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0057】
次に、一般式(9)で表される高分子化合物を示す。
【化53】
〔式中、R18、R19、R20、R21は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一または異なるアリレン基を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0058】
R18、R19、R20、R21のアリール基の具体例としては、一般式(3)の説明においてR5、R6のアリール基の具体例として例示したものを挙げることができ、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28のアリレン基の具体例としては、それらアリール基の2価の基を挙げることができる。また、これらアリール基またはアリレン基における置換基の具体例としては、一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したものを挙げることができる。
【0059】
Xは下記一般式(9′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(9′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0060】
【化54】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0061】
次に、一般式(10)でで表される高分子化合物を示す。
【化55】
〔式中、R22、R23は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar29、Ar30、Ar31は同一または異なるアリレン基を表す。k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。Xは前記一般式(1)に記載されたものと同様の基を表す。〕
【0062】
R22、R23のアリール基の具体例としては、一般式(3)の説明においてR5、R6のアリール基の具体例として例示したものを挙げることができ、Ar29、Ar30、Ar31のアリレン基の具体例としては、それらアリール基の2価の基を挙げることができる。また、これらアリール基またはアリレン基における置換基の具体例としては、一般式(3)の説明においてアリール基またはアリレン基における置換基として例示したものを挙げることができる。
【0063】
Xは下記一般式(10′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物をホスゲン法、エステル交換法等を用い重合するときに、下記一般式(C)のジオール化合物を併用することにより主鎖中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂はランダム共重合体、又はブロック共重合体となる。また、Xは下記一般式(10′)のトリアリールアミノ基を有するジオール化合物と下記一般式(C)から誘導されるビスクロロホーメートとの重合反応によっても繰り返し単位中に導入される。この場合、製造されるポリカーボネートは交互共重合体となる。
【0064】
【化56】
一般式(C)のジオール化合物の具体例としては、前記一般式(1)の説明において例示したものを挙げることができる。
【0065】
【発明の実施の形態】
次に、本発明をさらに詳細に説明する。まず下記一般式(a)で表される化合物から説明を進める。
【化57】
(式中、Rは低級アルキル基を表し、R′、R″は置換もしくは無置換のメチレン基またはエチレン基を表す。Ar、Ar′は置換もしくは無置換のアリール基を表す。l′は0〜4の整数、m′またはn′は0〜2の整数を表し、m′+n′は2以上の整数であり、l′+m′+n′は6以下の整数である。ベンゼン環の未置換部位は水素原子を表す。)
【0066】
一般式(a)におけるRの低級アルキル基としては、炭素数1〜6の低級アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基などが挙げられる。また、R′、R″のメチレン基またはエチレン基における置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられる。R′、R″は同一でも異なっていてもよい。Ar、Ar′のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、その置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、Ar、Ar′は同一でも異なっていてもよい。
【0067】
以下に一般式(a)で表される化合物の具体例を表1〜表10に示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】
【0078】
次に、本発明の電子写真感光体の構成を図面によって説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体1の上に電荷発生層2と電荷輸送層3との積層からなる感光層4が設けられている。
図2は、他の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、導電性支持体1と感光層4の間に中間層5が設けられている。
図3は、別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、感光層4の上に保護層6が設けられている。
図4は、さらに別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、導電性支持体1と感光層4の間に中間層5が設けられ、感光層4の上に保護層6が設けられている。
【0079】
導電性支持体1としては、体積抵抗1×1010Ωcm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、銅、銀、金、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングによりフィルム状もしくは円筒状のプラスチックまたは紙などに被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらをD.I.、I.I.、押し出し、引き抜き等の工法で素管化したのち切削、超仕上げ、研磨等で表面処理した管などを使用することができる。
【0080】
電荷発生層2は、電荷発生物質を主成分とする層であり、電荷発生物質としては、無機系の電荷発生物質あるいは有機系の電荷発生物質のいずれも用いることができる。
【0081】
無機系の電荷発生物質としては、結晶セレン、アモルファスセレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素等のセレン化合物やアモルファスシリコンなどが挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0082】
一方、有機系の電荷発生物質としては、公知の電荷発生物質を用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリツク酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0083】
電荷発生層2には、必要に応じてバインダー樹脂を用いることができ、バインダー樹脂としては、例えばポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらは単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0084】
電荷発生層2を形成する方法としては、大別すると、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが挙げられる。
真空薄膜作製法としては、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法などが挙げられ、上述した無機系あるいは有機系の電荷発生物質を用いて電荷発生層を良好に形成することができる。
また、キャスティング法によって電荷発生層を形成するには、上述した無機系あるいは有機系の電荷発生物質を、必要によりバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布し乾燥させればよい。塗布方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法などを用いることができる。
【0085】
このようにして形成される電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、特に0.05〜2μmが好ましい。
【0086】
電荷輸送層3はトリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂を主成分とし、さらに少なくとも前記一般式(a)で表される化合物を含有してなる層であり、トリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂の含有量としては、電荷輸送層の総構成材料100重量部に対し30重量部以上が好ましく、特に50重量部以上が好ましい。
また、電荷輸送層における前記一般式(a)で表される化合物の含有量としては、トリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂100重量部に対し0.01〜60重量部が好ましく、特に0.1〜40重量部が好ましい。
【0087】
電荷輸送層を形成するには、トリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂と前記一般式(a)で表される化合物を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレン、シクロヘキサノンなどに溶解あるいは分散し、その溶液あるいは分散液を電荷発生層上に塗布し乾燥させればよい。
【0088】
電荷輸送層には、必要によりレベリング剤などを添加することもできるし、また必要に応じて、バインダー樹脂を併用することも可能である。
【0089】
必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
バインダー樹脂の使用量は、トリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂100重量部に対して100重量部以下が適当である。
【0090】
レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、電荷輸送層中の高分子成分100重量部に対して1重量部以下が適当である。
【0091】
また、電荷輸送層には低分子の電荷輸送物質を併用することが可能である。
低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがあり、電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、3,5−ジメチル−3′,5′−ジターシヤリーブチル−4,4′−ジフェノキノンなどの公知の電子受容性物質が挙げられる。
【0092】
また、正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導休、インデン誘導体、ブタジエン誘導体など公知の電子供与性物質が挙げられる。
【0093】
低分子電荷輸送物質の使用量としては、電荷輸送層中の高分子成分100重量部に対して50重量部以下が適当である。
【0094】
このようにして形成される電荷輸送層の厚さは、5〜100μmが好ましく、特に10〜50μm程度が適当である。
【0095】
本発明の電子写真感光体においては、導電性支持体と感光層との間に中間層を設けることができる。
中間層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤でもって塗布することを考えると、一般の有機溶剤にたいして耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
【0096】
また、中間層にはモアレ防止、残留電位の低減などのために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末を加えてもよい。これらの中間層は、前述の電荷発生層や電荷輸送層の形成のように適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
さらに、中間層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。
【0097】
この他に、中間層にはA12O3を陽極酸化によって設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)などの有機物や、SiO、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法によってて設けたものも良好に使用できる。中間層の膜厚としては5μm以下が適当である。
【0098】
また、本発明における電子写真感光体には、感光層を保護する目的で、感光層の上に保護層が設けられることもある。これに使用される材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、AS樹脂、AB樹脂、BS樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上させる目的で、ポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂およびこれら樹脂に酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したものなどを添加することもできる。
【0099】
保護層の形成法としては、通常の塗布法が採用される。保護層の厚さとしては、0.5〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作製法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料も保護層として用いることができる。
【0100】
さらに、本発明における電子写真感光体には、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度の低下、残留電位の上昇を防止する目的で、電荷発生層、電荷輸送層、中間層あるいは保護層などに酸化防止剤を添加することができる。
特に、酸化防止剤を電荷輸送層に添加することにより、感度の低下や残留電位の上昇をより良く防止することができる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール系化合物、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール系化合物、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロール類などの高分子フェノール系化合物、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどのパラフェニレンジアミン類、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどのハイドロキノン類、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3′−チオジプロピオネートなどの有機硫黄化合物類、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフインなどの有機燐化合物類が挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品として容易に入手できる。
酸化防止剤の添加量としては、電荷輸送層などの高分子成分100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましい。
【0101】
【作用】
本発明によれば、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、電荷輸送層に主成分としてトリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂を含有させ、さらに少なくとも前記一般式(a)で表される化合物を含有させることにより、繰り返し使用時の耐摩耗性に優れ、且つ高感度で光減衰曲線の裾切れが良好で、また繰り返し使用時の帯電電位の変動が少なく長期にわたり安定した画像が得られる電子写真感光体が達成される。このような効果が達成される理由は現在明確でないが、次のような作用によると考えられる。
【0102】
従来の低分子電荷輸送材料を高分子樹脂バインダー中に50%程度分散させた電荷輸送層は、繰り返し使用における膜削れが生じやすいと言う欠点があり、これにより感光体の帯電電位の低下、異常画像の発生が問題となっている。これに対し、本発明の電荷輸送層はトリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂からなる高分子電荷輸送材料を主成分として用いることにより、全高分子化合物からなる層に近い強度を有しており、このため繰り返し使用における膜削れが低減されている。
また、本発明の構成により高感度化、光減衰曲線の裾切れが良好となる理由としては、次のように考えられる。従来の電子写真感光体の電荷輸送層に含有されている低分子電荷輸送材料は、自らがカチオンラジカルになることにより正孔を移動させており、この中性分子からカチオンラジカルになるときに立体構造上の変化が生じている。本発明に用いられている高分子電荷輸送材料の場合、電荷輸送を請け負うユニットが高分子鎖中に結合されているため、前記したような構造変化にはより大きなエネルギーが必要とされる。このため高分子電荷輸送材料を用いた感光体では、低電界状態において電荷移動が遅くなり、結果として光減衰の裾切れ低下、低感度が招かれる。本発明では、高分子電荷輸送材料からなる電荷輸送層に、前記一般式(a)で表される化合物を含有させることにより、電荷輸送層に可塑化効果を生じ、高分子電荷輸送材料の熱運動性が向上する。これに伴い、高分子鎖中の電荷輸送を請け負うユニット(トリアリールアミノ基)の構造変化に必要なエネルギーが低下し、低電界状態での電荷移動が上昇し光減衰の裾切れの改善、感度向上が達成されたと推測される。
また、本発明の効果として、繰り返し使用時の帯電電位の変動が抑制されることがある。電子写真プロセスにおいては、一般的に帯電、転写、紙の分離時にコロナ放電に起因するオゾンガスが発生している。このオゾンガスが繰り返し使用時に感光体内に浸透し、帯電性を徐々に低下させることが知られており、この問題を解決するために従来の感光体では酸化防止剤の添加、ガス浸透性を抑える物質の添加、保護膜による表面被覆などが試みられている。本発明においては高分子電荷輸送材料からなる電荷輸送層に、前記一般式(a)で表される化合物を含有させることにより、電荷輸送層中へのガスの浸透性が低下し、繰り返し使用時の帯電電位の変動が抑えられたと考えられる。
【0103】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0104】
実施例1
アルミニウム板上に、メタノールとブタノールとの混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000、東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥させて厚さ0.3μmの中間層を設けた。ついで電荷発生物質として下記構造式で表されるビスアゾ化合物をシクロヘキサノンとメチルエチルケトンとの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液を中間層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥させて厚さ約1μmの電荷発生層を形成した。
【化58】
【0105】
次に、下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−1)100重量部と下記構造式で表される添加化合物(I−12)20重量部とをジクロロメタンに溶解し、この溶液を電荷発生層上にドクターブレードで塗布し自然乾燥させ、ついで120℃で20分間乾燥させて厚さ約20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作成した。
【化59】
【0106】
実施例2
実施例1における添加化合物(I−12)を下記構造式で表される添加化合物(I−34)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化60】
【0107】
実施例3
実施例1における添加化合物(I−12)を下記構造式で表される添加化合物(I−70)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0108】
【化61】
【0109】
実施例4
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−2)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化62】
【0110】
実施例5
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−3)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化63】
【0111】
実施例6
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−4)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化64】
【0112】
実施例7
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−5)に代え、添加化合物(I−12)を下記構造式で表される添加化合物(I−52)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化65】
【0113】
実施例8
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−6)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化66】
【0114】
実施例9
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−7)に代え、添加化合物(I−12)を実施例2の添加化合物(I−34)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化67】
【0115】
実施例10
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−8)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化68】
【0116】
実施例11
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−9)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化69】
【0117】
実施例12
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−10)に代え、添加化合物(I−12)を実施例3の添加化合物(I−70)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化70】
【0118】
実施例13
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−11)に代え、添加化合物(I−12)を実施例7の添加化合物(I−52)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化71】
【0119】
実施例14
実施例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−12)に代えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化72】
【0120】
比較例1
実施例1において、ポリカーボネート樹脂(Pc−1)100重量部をジクロロメタンに溶解し、この溶液を電荷発生層上にドクターブレードで塗布し自然乾燥させ、ついで120℃で20分間乾燥させて厚さ約20μmの電荷輸送層〔化合物(I−12)が添加されていない電荷輸送層〕を形成した以外は実施例1と同様にして比較例1の電子写真感光体を作成した。
【0121】
比較例2〜12
比較例1におけるポリカーボネート樹脂(Pc−1)を上記実施例において示したPc−2〜Pc−12のそれぞれに代えた以外は比較例1と同様にして比較例2〜12の電子写真感光体を作成した。
【0122】
このようにして得られた実施例1〜実施例14の電子写真感光体、および比較例1〜比較例12の電子写真感光体について、静電複写紙試験装置(川口電機製作所製、SP428型)を用い、暗所で感光体に−6KVのコロナ放電を行い、表面電位が−800Vになったところで感光体表面に照度10ルックスのタングステンランプ光を照射し、表面電位が−80Vになるのに必要な露光量E1/10(lux・sec)を測定した。その結果を表11に示す。
【0123】
【表11】
表11から明らかなように、トリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂を主成分とし、少なくとも前記一般式(a)で表される化合物を含有させた電荷輸送層を有する実施例の電子写真感光体は、前記一般式(a)で表される化合物を含有していない電荷輸送層を有する比較例の電子写真感光体に比べ、高感度であり、特に光減曲線の裾切れが良好である。
【0124】
実施例15
メタノールとブタノールとの混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000、東レ社製)溶液を用い、浸漬塗布法によりアルミ素管上に厚さ0.3μmの中間層を設けた。ついで実施例1におけるビスアゾ化合物をシクロヘキサノンとメチルエチルケトンとの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液を用いて浸漬塗布法により中間層上に厚さ0.5μmの電荷発生層を形成した。 次に、下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−13)100重量部と実施例1の添加化合物(I−12)20重量部とをジクロロメタンに溶解し、この溶液を浸漬塗布法により電荷発生層上に塗布し自然乾燥させ、ついで120℃で20分間乾燥させて厚さ約30μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作成した。
【化73】
【0125】
実施例16
実施例15におけるポリカーボネート樹脂(Pc−13)を下記繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(Pc−14)に代え、添加化合物(I−12)を実施例7の添加化合物(I−52)に代えた以外は実施例31と同様にして電子写真感光体を作成した。
【化74】
【0126】
比較例13
実施例15と同様にしてアルミ素管上に中間層および電荷発生層を形成し、電荷発生層上にポリカーボネート樹脂(C−1400、帝人化成社製)100重量部および下記構造式の低分子電荷輸送物質90重量を含有する厚さ約30μmの電荷輸送層を形成し、比較例の電子写真感光体を作成した。
【化75】
【0127】
このようにして得られた実施例15、実施例16、比較例13の電子写真感光体を電子写真複写機(FT−2700、リコー社製)に搭載し、A4縦長サイズ5万枚の複写を行った後、感光体の摩耗量(電荷輸送層の膜厚減少量)を測定した。その結果を表12に示す。
【0128】
【表12】
【0129】
表12から明らかなように、トリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂を主成分とし、少なくとも前記一般式(a)で表される化合物を含有させた電荷輸送層を有する実施例の電子写真感光体は、低分子電荷輸送物質を含有させた電荷輸送層を有する比較例の電子写真感光体に比べ、繰り返し使用時における耐摩耗性に優れているものである。
【0130】
実施例17
φ100mmのアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、30μmの電荷輸送層を形成して、本発明の電子写真感光体を作成した。
【0131】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4部
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 200部
【0132】
〔電荷発生層用塗工液〕
オキソチタニュウムフタロシアニン顔料 3部
ブチラール樹脂(XYHL、UCC社製) 2部
テトラヒドロフラン 120部
【0133】
〔電荷輸送層用塗工液〕
【化76】
I−12 1部
ジクロロメタン 110部
【0134】
実施例18
実施例17の電荷輸送層におけるポリカーボネート樹脂(Pc−15)をPc−2のポリカーボネート樹脂に、添加化合物I−12をI−70にそれぞれ変えた以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0135】
実施例19
実施例17の電荷輸送層におけるポリカーボネート樹脂(Pc−15)を下記構造のポリカーボネート樹脂(Pc−16)に、添加化合物I−12をI−70にそれぞれ変え、以下の塗工液により塗布した以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0136】
〔電荷輸送層用塗工液〕
【化77】
I−52 2部
ジクロロメタン 110部
【0137】
比較例14
実施例17の電荷輸送層に添加化合物(I−12)を加えないこと以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0138】
比較例15
実施例18の電荷輸送層に添加化合物(I−70)を加えないこと以外は、実施例18と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0139】
比較例16
実施例19の電荷輸送層に添加化合物(I−52)を加えないこと以外は、実施例19と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0140】
このようにして得られた実施例17〜実施例19、比較例14〜比較例16の電子写真感光体を電子写真複写機(imagio DA355 リコー社製)に搭載し、初期感光体表面の帯電電位(Vd)を−850Vに設定し、A4縦長サイズ10万枚の複写を行った後の感光体表面の帯電電位変化ΔVdを測定した。その結果を表13に示す。
【0141】
【表13】
【0142】
表13から明らかなように、トリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂を主成分とする電荷輸送層に本発明の添加化合物を含有させることにより、無添加の感光体に比べ繰り返し使用時における帯電電位の変動が抑制される。
【0143】
【発明の効果】
本発明によれば、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、電荷輸送層に主成分としてトリアリールアミノ基を主鎖または側鎖に有するポリカーボネート樹脂を含有させ、さらに少なくとも前記一般式(a)で表される化合物を含有させることにより、繰り返し使用時における耐摩耗性に優れ、且つ高感度で光減衰曲線の裾切れが良好で、また繰り返し使用時の帯電電位の変動が少なく長期にわたり安定した画像が得られる電子写真感光体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の他の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明のさらに別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 感光層
5 中間層
6 保護層
Claims (9)
- 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(2)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも下記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R 24 とR 25 、R 26 とR 27 はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕}
- 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(3)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも上記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕} - 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(4)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも上記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕} - 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(5)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも上記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕} - 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(6)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも上記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕} - 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(7)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも上記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕} - 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(8)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも上記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕} - 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(9)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも上記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕} - 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が積層されてなる電子写真感光体において、
電荷輸送層が下記一般式(10)で表される高分子化合物を主成分とし、少なくとも上記一般式(a)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
を表す。R24とR25、R26とR27はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕}
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