JP3934066B2 - 球状粒子を形成する新規タンパク質、及びそのタンパク質をコードする新規遺伝子 - Google Patents

球状粒子を形成する新規タンパク質、及びそのタンパク質をコードする新規遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、球状粒子(ウイルス様粒子)を構成する新規タンパク質、及びそのタンパク質をコードする新規遺伝子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地球上には大きく分けて3つの生物界、Eukarya(真核生物)、Bacteria(真正細菌)及びArchaea(古細菌、アーキア)が存在し、人間を含めた哺乳類は真核生物の頂点にある。
【0003】
古細菌は、外見の類似から20年ほど以前までは真正細菌に分類されていたけれども、遺伝子の構造解析の結果、真正細菌とは別の生物として認められ、真正細菌と真核生物との中間に位置付けられた。特殊な環境に棲んでいるのが特徴で、超高温や超高塩濃度で生育している。我々が生活しやすい環境と言える条件は、適当な温度、空気、日光、水、食物などが整った条件だが、そのような適当な温度、空気、日光、水、食物などがない条件が、古細菌の生育する条件である。
【0004】
古細菌は、真核生物に近いEuryarchaeotaと真正細菌に近いCrenarchaeotaのサブドメインに分かれる。古細菌のPyrococcus属はEuryarchaeotaに分類される超好熱菌である。Pyrococcus furiosus(以下適宜「P.furiosus」と記す)は、硫黄性火山という極限環境の中で見つかった。酸素が少ない状態で生育する嫌気性の菌であり、70℃〜103℃の高い温度と高いpHで生育する超好熱菌である(非特許文献1参照)。
【0005】
この特異な耐熱機構を研究対象として、超好熱菌P.furiosusは、数多く研究されている。現在までに理解されている耐熱機構の要因は、(1)極限環境の中でDNA(デオキシリボ核酸)の破壊がほとんどなく染色体が完全に維持されていること、(2)DNA修復酵素が関与する系のDNA修復システムが有能であることとされている(非特許文献2参照)。
【0006】
また、応用として、超好熱菌は耐熱性であるために、そのタンパク質も熱安定で変性しにくく結晶化しやすいので、タンパク質実験に有利であると言われている。他にも、超好熱菌P.furiosus由来のDNAポリメラーゼはPolymerase chain reaction(PCR)法で使用するために大量生産されるなど、工業的にも広く利用されている(非特許文献3参照)。
【0007】
ところで、近年の生物科学の急速な発展のおかげで、生命活動に必須な酵素反応、分子認識過程や触媒過程などに関わる重要な機能を持つタンパク質を、X線結晶構造解析法により、原子分解能で研究することが可能になっている。
【0008】
本願発明者は、超分子複合体リボソームによる蛋白質合成機構の解明についての研究を行っており、さらに、その研究において重要な、超好熱菌P.furiosus由来の70Sリボソームの原子構造解析を行った。そして、超好熱菌P.furiosusから高純度の70Sリボソームを抽出して、さらに、70Sリボソームと思われる結晶を得て、その結晶のX線結晶構造解析を行った。なお、そのときの結晶化条件を下記に示す。
(結晶化条件)
方法 ハンギングドロップ蒸気拡散法
バッファー 20mM Tris−HCl
タンパク質 40〜60mg/ml
沈殿剤 MPD
結晶化ドロップ中の沈殿剤濃度 0.5%(w/v)
結晶化リザーバー中の沈殿剤濃度 16%(w/v)
温度 25℃
しかし、その解析の途中で、結晶構造に70Sリボソームにはないシェル構造の存在が確認でき、結晶構造は、シェル構造をもつウイルス様粒子であることが判明した。この事から、上記結晶は、70Sリボソームの結晶ではなくウイルス様粒子の結晶であったことが示された。
【0009】
上記結果は、本願発明者にとって全く予期しないものであった。結晶化用の70Sリボソームサンプルは、SDS−PAGEの結果も活性測定の結果も70Sリボソームのものであったのだが、結晶化されたのはウイルス様粒子だったのである。なお、SDS−PAGEの「SDS」とは、ドデシル硫酸ナトリウム(dodecyl sulfate, sodium salt)のことである。また、SDS−PAGEの「PAGE」とは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(polyacrylamide gel electrophoresis)のことである。
【0010】
上記のように、70Sリボソームの結晶は得られなかった。しかし、この予期しなかった超好熱菌由来のウイルス様粒子は、研究対象として興味深い点がある。一つは、真核生物に近いEuryarchaeotaのウイルスの報告例はまだなく、無論その構造、機能については全く知られていない点である(非特許文献4参照)。また、発明者は、このウイルス様粒子の構造解析を進め、重原子同型置換法によって構造決定を行った。その結果、上記ウイルス様粒子が、180個の殻タンパク質からなるT=3の正20面体の対称を持つ直径約30nmの球状粒子で、殻タンパク質のC末から250残基ほどがウイルス様粒子の骨格に関わっていることを確認した。また、その全体構造が、バクテリオファージHK97のCapsidの構造と類似性のあることが確認できた(非特許文献5参照)。
【0011】
【非特許文献1】
J Biol Chem 264(9) 5070-9(1989)
【0012】
【非特許文献2】
J Bacteriol 177(21) 6316-8(1995)
【0013】
【非特許文献3】
Gene 108(1) 1-6(1991)
【0014】
【非特許文献4】
FEMS Microbiology Reviews 18 225-236(1996)
【0015】
【非特許文献5】
Science 289 2129-2133(2000)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ウイルス様粒子に関して、例えばウイルス様粒子の生化学的な性質などは、上記以外のことはほとんど分かっておらず、ウイルス様粒子(球状粒子)を利用することが極めて困難であるという問題点がある。なお、このウイルス様粒子の利用としては、例えば、熱安定な構造を有するウイルス様粒子の内部に、薬剤、遺伝子等を詰め込むことによる、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)への利用などが挙げられる。
【0017】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ウイルス様粒子(球状粒子)に関する生化学的な性質を解明して、その球状粒子の利用を容易にするために必要な遺伝子とタンパク質とを提供すること、および、これら遺伝子等を利用して得られる球状粒子を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、上記課題に鑑み、上記ウイルス様粒子について鋭意検討した。まず、なぜ超好熱菌にウイルス様粒子が存在したかということを明解し、ウイルス様粒子がどのような働きを持っているのかということについて調べた。そして、結晶化用の70Sリボソームサンプルの中に、ウィルス様粒子は存在するのかどうかを調べ、さらに、ウイルス様粒子の内部に核酸が入っているのかどうかを調べた。さらに、ウイルス様粒子の殻タンパク質と考えられるタンパク質のアミノ酸配列の解析と、DNA塩基配列の解析とを行い、様々な種の類似検索について検討した。その結果、本願発明者は、上記殻タンパク質のアミノ酸配列とそのタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列とを決定して、本願発明を完成させるに至った。
【0019】
本発明の遺伝子は、以下の(a)から(c)のいずれか1つのタンパク質をコードすることを特徴とする。
(a)配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(b)配列番号3に記載のアミノ酸配列のうち、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、集合することによって球状粒子を形成するタンパク質。
(c)配列番号6に記載のアミノ酸配列を有し、集合することによって球状粒子を形成するタンパク質。
【0020】
上記(a)のタンパク質は、P.furiosus由来の、球状粒子(ウイルス様粒子)を構成する殻タンパク質である。上記球状粒子(ウイルス様粒子)は、超好熱菌P.furiosus由来の粒子であり、正20面体対称性を持つ球状殻構造体(PfV)である。この球状粒子の直径は、図1に記載のように、直径30.5nm〜36.3nm(305〜363オングストローム)である。この球状粒子は、180本の単一のポリペプチド鎖(上記(a)のタンパク質)が、非共有結合で会合してできた粒子である。そして、この球状粒子は、超好熱菌P.furiosusという由来からも分かるように、90℃〜100℃といった高温条件下でも安定に存在する。さらに、この球状粒子には、その粒子内に存在する分子、例えばRNA(リボ核酸)などを、上記高温条件下でも安定に存在させる機能がある。
【0021】
上記球状粒子は、上記のように、高温条件下において安定であり、粒子内に存在する分子を安定に存在させる機能を有する。それゆえ、例えば、球状粒子の内部に薬剤、遺伝子などを詰め込むことにより、この球状粒子のドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)への利用が期待できる。
【0022】
本発明の遺伝子は、上記殻タンパク質をコードする新規遺伝子である。その結果、球状粒子(ウイルス様粒子)の利用を容易にするための遺伝子を、提供することができる。
【0023】
また、本発明に係る遺伝子としては、例えば、下記(A)〜(F)の遺伝子が挙げられる。これら遺伝子を利用すれば、球状粒子(ウイルス様粒子)の利用が容易になる。
(A)配列番号1に記載の塩基配列を有することを特徴とする遺伝子。
(B)配列番号1に記載の塩基配列のうち、1個若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列を有し、集合することによって球状粒子を形成するタンパク質をコードしていることを特徴とする遺伝子。
(C)上記タンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有していることを特徴とする(B)に記載の遺伝子。
(D)上記タンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列のうち、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有していることを特徴とする(B)に記載の遺伝子。
(E)配列番号4に記載の塩基配列を有し、集合することによって球状粒子を形成するタンパク質をコードしていることを特徴とする遺伝子。
(F)配列番号4に記載の塩基配列のうち、1個若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列を有し、集合することによって球状粒子を形成するタンパク質をコードしていることを特徴とする遺伝子。
【0024】
なお、「1個若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された」とは、公知のDNA組換え技術、点変異導入方法などによって可能な程度の数の塩基が、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたことを意味する。また、「1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法などの公知の変異タンパク質作製法などによって可能な程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたことを意味する。
【0025】
ところで、本発明の「遺伝子」には、DNA及びRNAが含まれる。ここに言うDNAには、もちろん、クローニング、化学合成技術又はそれらの組み合わせで得られるようなDNA(例えばcDNA(相補DNA:complementary DNA)、ゲノムDNAなど)が含まれる。また、DNAは二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖DNAは、センス鎖となるコードDNAであっても、アンチセンス鎖となるアンチコード鎖であってもよい。このアンチセンス鎖は、プローブなどに利用できる。
【0026】
さらに、本発明の「遺伝子」は、上記(a)〜(c)のタンパク質をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列、ベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
【0027】
なお、上記のように、本発明の遺伝子を説明する上で、配列表を用いる場合がある。その配列表においては、説明の便宜上、DNAの塩基配列を示している。しかし、本発明の遺伝子がRNAを指す場合には、配列表に示す塩基の「T(チミン)」を、「U(ウラシル)」に読み替えて解釈するものとする。
【0028】
また、本発明のタンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有することを特徴としている。このタンパク質は、P.furiosus由来の球状粒子(ウイルス様粒子)を構成する殻タンパク質である。このタンパク質が有するアミノ酸配列は、本発明者が初めて決定したアミノ酸配列である。このことについては、下記に示す実施例で詳しく説明する。また、上記のように、本発明のタンパク質をコードする遺伝子は、本発明者が特定した新規遺伝子である。
【0029】
その結果、上記ウイルス様粒子に関する生化学的な性質を解明して、そのウイルス様粒子(球状粒子)の利用を容易にするタンパク質を、提供することができる。
【0030】
さらに、本発明に係るタンパク質としては、下記の(i)〜(ii)が挙げられる。(i)配列番号3に記載のアミノ酸配列のうち、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、集合することによって球状粒子を形成することを特徴とするタンパク質。
(ii)配列番号6に記載のアミノ酸配列を有し、集合することによって球状粒子を形成することを特徴とするタンパク質。
【0031】
上記(ii)のタンパク質は、配列番号3に示すアミノ酸配列の前半100残基を除いた、245アミノ酸残基からなるタンパク質である。この245アミノ酸残基からなる部分は、球状粒子の殻部を構成している部分である。よって、この245アミノ酸残基からなる部分を有するタンパク質は、球状粒子を構成する可能性が極めて高い。前半100残基を除いた245(約250)アミノ酸残基からなる上記タンパク質については、後述の実施例で詳しく説明する。
【0032】
なお、本発明に係るタンパク質は、細胞などから単離精製された状態のものを主に指す。しかし、本発明に係るタンパク質は、タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞に導入して、そのタンパク質を細胞内発現させた状態のものであってもよい。さらに、本発明に係るタンパク質は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドを含むタンパク質としては、例えば、HA、Myc、flagなどのエピトープで標識されたタンパク質などが挙げられる。
【0033】
また、本発明の球状粒子は、上記に記載のタンパク質を有することを特徴としている。
【0034】
本発明の球状粒子を構成するタンパク質は、上記のように、集合することによって、球状粒子(球状殻構造体:PfV)を形成する。さらに、発明者は、そのタンパク質をコードしている遺伝子を特定している。それゆえ、耐熱性を有する球状粒子を、容易に取得することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0036】
(1)本実施の形態の遺伝子について
本実施の形態における遺伝子について説明する。本実施の形態の遺伝子は、超好熱菌P.furiosus由来の遺伝子であり、球状粒子(ウイルス様粒子)を構成するタンパク質をコードしている。
【0037】
本実施の形態における遺伝子の塩基配列の例を、配列番号1及び4に示している。配列番号1の塩基配列を有する遺伝子は、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている。なお、配列番号1の塩基配列と配列番号3に示すアミノ酸配列とを併記したものを、配列番号2に示す。
【0038】
また、配列番号4の塩基配列を有する遺伝子は、配列番号6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている。なお、配列番号4の塩基配列と配列番号6に示すアミノ酸配列とを併記したものを、配列番号5に示す。
【0039】
次に、本実施の形態における遺伝子の取得方法について説明する。本実施の形態の遺伝子を取得する方法は、特に限定されるものではない。例えば、配列表(配列番号1〜2及び4〜5)に記載されている塩基配列のデータとP.furiosusデータベース(http://www.genome.utah.edu/sequence.html)に格納されている塩基配列のデータとに基づいて、種々の方法により、本実施の形態の遺伝子を含むDNA断片を、単離及びクローニングすることができる。
【0040】
具体的に言えば、本実施の形態の遺伝子は、PCR等の増幅手段を用いれば、容易に得ることができる。まず、配列表に記載のDNA配列とP.furiosusデータベースに格納されているデータとを比較して、得たいタンパク質をコードしている領域が増幅されるように、5’側及び3’側の非翻訳領域の配列(又はその相補配列)の中から、それぞれプライマーを調製する。次に、これらプライマーと、鋳型としてのP.furiosusのDNA(ゲノムDNA、cDNA等)とを用いてPCRを行えば、両プライマー間に挟まれるDNAが増幅される。これにより、本実施の形態の遺伝子を含むDNA断片を、大量に取得することができる。
【0041】
なお、配列番号1又は配列番号4に記載の塩基配列のうち、1個若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列を取得する方法としては、例えば、部位特異的突然変異誘発法(Hashimoto-Gotoh,Gene 152,271-275(1995)他)、トランスポゾンの挿入による突然変異、PCR法等を利用することが挙げられる。
【0042】
(2)本実施の形態のタンパク質及び球状粒子について
本実施の形態のタンパク質は、球状粒子(ウイルス様粒子)を構成する殻タンパク質である。また、本実施の形態の球状粒子は、180本の単一のポリペプチド鎖(つまり本実施の形態のタンパク質)が、非共有結合で会合してできた粒子である。
【0043】
次に、本実施の形態におけるタンパク質の取得方法について説明する。本実施の形態におけるタンパク質の取得方法は、特に限定されるものではない。例えば、まず、本実施の形態の遺伝子を、周知の方法で宿主に組み入れる。なお、ここで言う宿主としては、例えば、微生物(大腸菌、酵母など)、動物細胞などが挙げられる。次に、組み入れた遺伝子を発現させて、その遺伝子がコードするタンパク質を取得及び精製すれば、本実施の形態のタンパク質を容易に取得することができる。
【0044】
なお、本実施の形態の遺伝子を宿主に組み入れる場合には、ホスト細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に係る遺伝子を各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。
【0045】
また、上記発現ベクターをホスト細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
【0046】
本実施の形態の遺伝子がホスト細胞に導入されたか否か、さらにはホスト細胞中で確実に発現しているか否かを確認するために、各種マーカーを用いてもよい。例えば、ホスト細胞中で欠失している遺伝子をマーカーとして用い、このマーカーと本実施の形態の遺伝子とを含むプラスミド等を発現ベクターとしてホスト細胞に導入する。これによってマーカー遺伝子の発現から本実施の形態の遺伝子の導入を確認することができる。あるいは、本発明に係るタンパク質を融合タンパク質として発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明に係るタンパク質をGFP融合タンパク質として発現させてもよい。
【0047】
なお、上記のように、宿主に外来遺伝子を導入する場合、外来遺伝子の組換え領域に宿主内で機能するプロモーターを組み入れた発現ベクター及び宿主には様々なものがあるので、目的に応じたものを選択すればよい。産生されたタンパク質を取り出す方法は、用いた宿主、タンパク質の性質によって異なるが、例えばタグの利用等により、比較的容易に目的のタンパク質を精製することが可能である。
【0048】
また、変異タンパク質を作製する方法についても、特に限定されるものではない。例えば、部位特異的突然変異誘発法(Hashimoto-Gotoh,Gene 152,271-275(1995)他)、PCR法等を利用して塩基配列に点変異を導入し、変異タンパク質を作製してもよい。あるいは、トランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの、周知の変異タンパク質作製法を用いてもよい。このように、上述の方法で取得された遺伝子の塩基配列に、1またはそれ以上の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されるように改変を加えれば、容易に変異タンパク質を作製することができる。さらに、変異タンパク質の作製には、市販のキット(例えば、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit ストラタジーン社製)を利用してもよい。
【0049】
さらには、本発明のタンパク質、またはその部分ペプチドを抗原として抗体を作製することもできる。抗体の作製方法は特に限定されるものではなく、公知の方法によりポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を作製すればよい。公知の方法としては、例えば、文献(Harlowらの「Antibodies : A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988))、岩崎らの「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA,講談社(1991)」」に記載の方法が挙げられる。こうして作製した抗体は、本発明のタンパク質の検出に有効である。
【0050】
(3)本実施の形態の球状粒子について
本実施の形態の球状粒子は、超好熱菌P.furiosus由来の粒子であり、上記タンパク質より構成されている。
【0051】
次に、本実施の形態における球状粒子の取得方法について説明する。下記の実施例で詳しく述べるが、P.furiosusの培養し、菌体を破砕して、遠心分離と疎水性クロマトグラフィーとによって、球状粒子を得ることができる。
【0052】
上記取得方法は、P.furiosusの培養による方法である。しかし、本実施の形態の遺伝子を利用してタンパク質を合成し、その合成したタンパク質を集合させることによっても、球状粒子を取得することができる。例えば、大腸菌などを用いた大量発現系により本実施の形態のタンパク質を合成すれば、自己会合により、容易に高次構造を形成させることができる。
【0053】
(4)有用性
本実施の形態の遺伝子、タンパク質、及び球状粒子、は、超好熱菌P.furiosus由来の粒子である。また、本実施の形態の球状粒子は、本実施の形態のタンパク質(タンパク質粒子)180個を集合させることによって、製造することができる。
【0054】
超好熱菌P.furiosus由来であることからも分かるように、本実施の形態の球状粒子(球状殻構造体:PfV)は、90℃〜100℃といった高温条件下でも安定に存在する。さらに、この球状粒子には、その粒子内に存在する分子、例えばRNAなどを、上記高温条件下でも安定に存在させる機能がある。
【0055】
例えば、球状粒子の内部に薬剤、遺伝子などを詰め込むなどにより、本実施の形態の球状粒子を、DDS(ドラッグデリバリーシステム)の基材として利用することが可能である。さらに、本実施の形態における球状粒子の利用としては、例えば、高温条件下において、球状粒子の内部に詰め込んだ物を安定に保存する耐熱性カプセルとしての利用、ケージ化合物としての利用などが挙げられる。そして、球状粒子の粒子内に存在する分子を熱から保護する機能を利用すれば、ナノレベルの大きさの分子のプロテクターへの応用も考えられる。
【0056】
上記DDSへの利用や保存カプセルとしての利用において、複数のタンパク質の非共有結合により球状粒子が構成されていることも、球状粒子の利用価値を高める要因となり得る。例えば、適当な条件下(例えば、塩濃度を上げた条件下)において、球状粒子を容易に解離させることも可能であると考えられるからである。
【0057】
また、本実施の形態における球状粒子の立体構造に基づいて、例えば、ポリペプチド鎖の任意の領域に分子を特異的に結合させることにより、目的分子を球状粒子の内部に閉じ込めるといったことも容易であると考えられる。さらに、球状粒子の外側に適当な修飾を行うことにより、粒子全体の性質を容易に制御することが可能である。そして、配列番号3に示すアミノ酸配列における、前半100残基と後半約250残基との役割の相違が分かっていることは、上記のように立体構造に基づいて球状粒子の利用を考えるという側面において、貴重な情報である。なお、エピトープ又は特異的結合機能の付加も可能であるため、本実施の形態の球状粒子は、様々な用途に利用できると考えられる。
【0058】
さらに、本実施の形態のタンパク質をコードする遺伝子が特定されていることから、球状粒子を構成するタンパク質を改変又は修飾することは容易である。つまり、改変又は修飾されたそのタンパク質を利用することも、容易である。さらに、特定の部位のアミノ酸を変異又は修飾することにより、立体構造特異的に機能を制御することも容易である。
【0059】
従来の合成高分子を用いた類似の構造体とは異なり、ポリペプチド鎖を用いた球状粒子は、サブユニット間、形成された球殻構造間、あるいはターゲット分子間との相互作用の特異性が高く、その利用価値は高いと考えられる。
【0060】
【実施例】
本発明の実施例を下記に示す。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0061】
(実施例1 ウイルス様粒子の分離及び精製)
まず、結晶構造で見られたウイルス様粒子が、結晶化前のリボソームサンプルの中に存在するのかどうかを検証するために、上記サンプルをさらに精製し、リボソームとウイルス様粒子との分離を試みた。
【0062】
P.furiosus由来70Sリボソームの結晶化用サンプルの入手及び精製は、以下のように行った。まず、P.furiosusを培養した。P.furiosusの培養は、98℃で行い、O.D.(550nm)が約0.7となったときに集菌した。その後、洗浄溶液で菌体を洗った。
【0063】
次に、石英砂の入った乳鉢で菌体を破砕し、遠心分離(8000rpm、20分)後、上清を得た。その上清を、さらに遠心分離(18000rpm、1時間)し、再度、上清を得た。次に、その上清を遠心分離(40000rpm、3時間)して、沈殿を得た。
【0064】
次に、上記沈殿を塩化カリウムバッファーに溶解させて、その溶解液を、スクロース不連続密度勾配遠心分離(1.6Mスクロース、40000rpm、20時間)にかけた。そのスクロース不連続密度勾配遠心分離により得られた沈殿は、再度バッファーに溶解させた後、ピューロマイシンバッファーで反応させた。その反応の後、グリセロール不連続密度勾配遠心分離(25%(v/v)グリセロール、40000rpm、15時間)で沈殿を得ることにより、70Sリボソームの結晶化用サンプルを得た。なお、上記操作により、96リットルの培地から、70Sリボソームの結晶化用サンプルを、約300mg得た。
【0065】
次に、上記操作で得られた70Sリボソームの結晶化用サンプルにウイルス様粒子が混入しているかどうかを調べるために、その結晶化用サンプルを、さらに疎水性クロマトグラフィーにかけた。この疎水性クロマトグラフィーでは、高イオン強度下において、タンパク質の疎水結合が強くなることを利用している。具体的に言えば、まず、濃い硫酸アンモニウムの存在下において、タンパク質をカラムに吸着させる。そして、塩濃度が下降するように調製されている溶出グラジエントを用いて、タンパク質をカラムから溶出させる。
【0066】
次に、その疎水性クロマトグラフィーの方法について説明する。まず、上記方法により得たリボソーム結晶化用サンプルに、硫酸アンモニウム濃度を終濃度1.7Mになるまで加えた。次に、遠心分離(1000rpm、10分間)により、変性物を除去した。
【0067】
次に、担体TSKgel Butyl−トヨパール650(東ソー社製)を、カラム体積の2倍の平衡化バッファー300mlで平衡化した後、タンパク質溶液を吸着させた。そして、50ml平衡化バッファーで洗浄した後に、溶出バッファー150mlと平衡化バッファー150mlとの直線型濃度勾配(硫酸アンモニウム濃度1.5Mから0M)の逆相クロマトグラフィーによって溶出を行った。取得した溶出液は、フラクションコレクターにかけ、SDS−PAGEを行った。なお、分画サイズは、1本あたり5mlとした。
【0068】
上記平衡化バッファーの組成は、Tris−HCl pH7.5(20mM)、塩化アンモニウム(75mM)、塩化マグネシウム(30mM)、塩化カリウム(0.2M)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸:ethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid)(0.25mM)、メルカプトエタノール(5mM)、硫酸アンモニウム(1.5M)とした。上記溶出バッファーの組成は、Tris−HCl pH7.5(20mM)、塩化アンモニウム(75mM)、塩化マグネシウム(30mM)、塩化カリウム(0.2M)、EDTA(0.25mM)、メルカプトエタノール(5mM)とした。なお、濃度の単位である「M」は、mol/lを示すものとする。なお、上記「Tris」は、(トリスヒドロキシメチルアミノメタン:tris(hydroxymethyl)aminomethane)のことである。
【0069】
上記疎水性クロマトグラフィーにおける、溶出分画番号と吸光度との関係を示すグラフを図2に示す。また、溶出分画液をSDS−PAGEにかけたときの結果を、図3に示す。
【0070】
図3に示すように、溶出分画液をSDS−PAGEにかけたところ、ウイルス様粒子のコートプロテインと考えられる40kDaのメインバンドが先に現れ(分画番号54〜62)、後からリボソームのリボソームタンパク質と考えられる多数のバンド(分画番号70〜78)が続いている。このことは、疎水性カラムクロマトグラフィーの操作により、リボソームとウイルス様粒子が分離したことを示している。よって、ウイルス様粒子と考えられる分画番号54〜62のサンプルを濃縮し、カラムで分けたサンプルとした。
【0071】
(実施例2 ウイルス様粒子の形態)
実施例1における疎水性カラムクロマトグラフィーで分けた40kDaのサンプルが、結晶と同じウイルス様粒子である事を確認するために、以下の実験を行った。まず、結晶化前のサンプル、カラムクロマトグラフィーで分けたサンプル、結晶溶解液のサンプルの3つを用意し、SDS−PAGEと電子顕微鏡で確認をした。なお、結晶溶解液は、ハンギングドロップ蒸気拡散法により析出した結晶を、エッペンドルフチューブに集め、ガラス棒でつぶし、沈殿剤を抜いたバッファーで溶解したものである。
【0072】
上記3つのサンプルをSDS−PAGEで確認した結果を、図4に示す。なお、図4において、レーン1は分子量マーカー、レーン2は結晶化前のサンプル、レーン3は疎水性カラムクロマトグラフィーで分けたサンプル、レーン4は結晶溶解液の結果を示している。
【0073】
図4によれば、結晶化前のサンプル(レーン2)は、多数のリボソームタンパク質のバンドが確認できる。結晶溶解液(レーン4)は、カラムクロマトグラフィーで分離したサンプル(レーン3)と同様、ウイルス様粒子の殻タンパク質と考えられる40kDaのバンドが現れている。
【0074】
また、上記3つのサンプルの電子顕微鏡観察は、次のように行った。まず、3つのサンプルを10秒間電子顕微鏡用のマイクログリッドにのせ、過量のサンプルを紙で吸収した。次に、ネガティブ染色用の2%(w/v)の酢酸ウラニル溶液を、グリッドに1分間乗せた。この酢酸ウラニル溶液は、電子散乱能の強い重金属原子が試料の表面を被い、繊細な隙間に浸透する結果、微細構造が明瞭に染め出されるために加えている。過量の溶液を紙で吸収し風乾した後、グリッドを電子顕微鏡に取り付けて観察した。
【0075】
この電子顕微鏡による観察結果を、図5〜7に示す。なお、図5は結晶化前のサンプルの観察結果を、図6は疎水性カラムクロマトグラフィーで分けたサンプルの観察結果を、図7は結晶溶解液のサンプルの観察結果を示している。図5に示すように、結晶化前のサンプルでは、多数のリボソーム粒子を観察することができた。そして、一部、ウイルス様粒子も観察できた。それに対して、図6及び図7に示すように、カラムクロマトグラフィーで分けたサンプル及び結晶溶解液のサンプルの顕微鏡観察では、直径約30nmの粒子(ウイルス様粒子)を、多数観察できた。
【0076】
上記結果は、P.furiosusの培養から70Sリボソームを精製した結晶化前のサンプルを、さらに疎水性クロマトグラフィーにかけると、結晶化しなくともウイルス様粒子のみを精製することができることを示している。
【0077】
これらの実験結果から、結晶化前のサンプルには多量のリボソーム粒子の中に少量のウイルス様粒子が混入されており、結晶化すると、その少量のウイルス様粒子が結晶となって析出したことが理解できた。そもそも、タンパク質の結晶化はそのタンパク質が高純度に存在していなくては結晶化しないことが周知の事実として言われているが、今回の例では完全に異なる結果が得られたと言えよう。
【0078】
今回の例と同様に、リボソームの結晶化を目指し結晶を析出させたけれども、リボソーム自身ではなく他のタンパク質が結晶化したことを、以前にも確認していた。このように偶然の結晶化が起こった背景として、リボソームの親水性が高いという性質があると思われる。結晶化に使う沈殿剤であるPEG(ポリエチレングリコール)のようなタンパク質の溶解度を下げる役割を、リボソームが果たしていると考えられる。
【0079】
また、ウイルス様粒子の形態としては、X線構造解析の結果から、粒子の直径が約30nmということが判明していた。このウイルス様粒子を電子顕微鏡で見た結果、粒子直径は一致していたことが確認できた。
【0080】
現在、既存のウイルスは、細菌ウイルス(バクテリオファージ)、動物ウイルス、植物ウイルスの3つに分類できる。このウイルス様粒子が、P.furiosusを宿主として感染している成熟したウイルスと仮定すると、まず細菌ウイルスに分類できる。
【0081】
細菌ウイルスの形態は、頭部と尾部をもつ形態と尾部をもたない頭部をもつ形態があり、このウイルス様粒子は、電子顕微鏡で見る限り、尾部は存在せず、細菌ウイルスの分類でE型(Levivirus)を表す。図8に、細菌ウイルスの形態を示す。図8に示すように、細菌ウイルスの形態は、A型〜F型に分類することができ、E型はRNAを持つ。
【0082】
しかし、現在明らかにされているE型の他のバクテリオファージは、直径が25nm以下もので、全て殻タンパク質の分子量が約14000である(Bacteriological reviews 31 230-311(1967))。ウイルス様粒子の殻タンパク質の分子量は、40kDaと非常に大きい事から、この分類にあてはまらなく、発見したウイルス様粒子に特に類似したウイルスはないといえる。ただし、発明者が構造解析した上でモデル分子としたバクテリオファージHK97は、尾部をもつDNAウイルス(A型)で、頭部分が直径60nmと大きい粒子である。しかし、殻タンパク質の一つの構造や粒子の外殻部分が薄い特徴的な構造などは、バクテリオファージHK97とウイルス様粒子とは類似している。
【0083】
以上の事から、発明者が発見したウイルス様粒子は、形態上からでも既知のウイルスの分類にあてはまらず、真核生物に近いEuryarchaeotaの初めてのウイルスである可能性がある。このため、詳細な生化学的解明が必要であるので、まず、ウイルス様粒子を構成する殻タンパク質のアミノ酸配列を決定し、さらに、他種との相同性について比較を行った。
【0084】
(実施例3 殻タンパク質のアミノ酸配列の解析)
ウイルス様粒子の生化学的性質を検証するために、ウイルス様粒子を構成する殻タンパク質のアミノ酸配列の解析、さらにDNA塩基配列の解析を行った。
【0085】
4−1 アミノ酸配列における部分配列の決定
ウイルス様粒子の殻タンパク質と考えられる40kDaのタンパク質の生理機能を解析する上で必要となるものが、構造上の情報である。目的タンパク質の全アミノ酸配列と全塩基配列とを決定することによって、他種タンパク質との相同性をもとに生理機能を大まかに推測することができる。タンパク質の立体構造解析においても、得られた電子密度に目的タンパク質のアミノ酸側鎖構造を1残基ずつフィットさせるので、アミノ酸配列の情報は欠かせない情報である。
【0086】
実際にアミノ酸配列を決定するには、部分的なアミノ酸配列をまず決定し、その情報に基づいてcDNAをクローニングし、その塩基配列から全アミノ酸配列を演繹する方法が定法となっている。発明者はこの方法に従い、まず部分アミノ酸配列を決定するために、プロテインシークエンサーを使用したN末シーケンス法と質量分析器を使用したマススペクトル法とを行った。
【0087】
ここで、プロテインシークエンサーを用いたN末シーケンス法について、簡単に説明する。プロテインシークエンサーの原理は、タンパク質のN末端アミノ基にPITC(イソチオシアン酸フェニル:phenyl isothiocyanate)をカップリング反応させ、N末端アミノ酸をトリフルオロ酢酸で切り出すEdman分解を利用したものである。そして、順次、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離同定し、この反応を繰り返すことでN末端からのアミノ酸配列(10〜20残基)が決定されるというものである。
【0088】
それでは、プロテインシークエンサーを用いたN末シーケンス法の操作について説明する。結晶の溶解液のSDS−PAGEを行った後、そのゲルと前処理したPVDF膜をろ紙にはさんで、セミブロッティング装置に取り付けた。次に、定電流(0.5mA/cm2)を60分間流して、タンパク質をPVDF膜に転写させた。次に、転写後のPVDF膜をCBB染色液で染色して、プロテインシークエンサーにセットし、解析を行った。なお、上記PVDF膜の「PVDF」とは、ポリビニリジンフルオライドのことである。
【0089】
上記部分アミノ酸配列の解析の結果、MLKIXPXLIXYDKPL(Xは解析不能)という、15残基中12残基のN末端の部分アミノ酸配列を同定することができた。図9は、5残基目(Xを含めると6残基目)のP(プロリン)が見つかったときの、N末シークエンス法によるHPLCの結果を示している。
【0090】
次に、質量分析法による部分配列の決定について説明する。具体的には、SDS−PAGEで分離した約40KDaのバンドを、質量分析法によって解析した。
【0091】
タンパク質やそのペプチドなどの正確な分子量を測定する質量分析は、アミノ酸配列の分析に利用することもできる。質量分析計は、VoygerTMElite XL(PerSeptive Biosystems社製)を用いた。試料をイオン化するイオン源には、レーザー照射によって励起されたマトリックス分子からのエネルギーによって二次元的にイオン化するMALDI法を取り入れた。質量分析には、TOFMSと呼ばれる飛行時間型を用いた。このTOFMSを用いることによって、準安定イオンを読み取り、アミノ酸配列の分析も可能にしている。
【0092】
操作は、まず、SDS−PAGEを行った後の目的タンパク質部分のゲルをメスで切り取り、洗浄した後、ジスルフィド結合を切断するため、還元アルキル化をした。そして、リシルエンドペプチダーゼによる酵素消化を行い、ゲル部分からトリフルオロ酢酸とアセトニトリル溶液とを用いて、消化ペプチドの抽出をして、脱塩した。得られた消化ペプチドサンプルをマトリックス分子の溶液と混合し、質量分析計にセットして、解析を行った。その解析結果を図10に示す。
【0093】
上記解析で得られたアミノ酸配列分析の結果は、種々のタンパク質のアミノ酸データベースで検索し、さらに解析値との詳細な検討を行った。この結果、特徴的な部分ペプチドが解析され、P.furiosusデータベース(http://www.genome.utah.edu/sequence.html)にある2つのタンパク質PF1191とPF1192に合致した(図11参照)。
【0094】
図11には、PF1192の96アミノ酸残基と、PF1191の261アミノ酸残基とを示している。そして、太字かつ斜体(図中「太斜」と記す)で示しさらに下線を引いている箇所は、N末シークエンス法で得られた結果及びマススペクトル法で得られた結果という両方の結果と、P.furiosusデータベースにあるアミノ酸残基とが一致した箇所を示している。また、太字で示す箇所は、マススペクトル法で得られた結果と、P.furiosusデータベースにあるアミノ酸残基とが一致した箇所を示している。
【0095】
データベースにあるPF1192のN末端配列(15アミノ酸残基)は、図11にあるように「MLSINPTLINRDKPY」である。一方、N末シークエンス法で得られた結果は、上記のように「MLKIXPXLIXYDKPL」である。これらを比較すれば、1〜2番目、4番目、6番目、8〜9番目、12〜14番目の計9残基が一致している。そして、一致していない6残基(3番目、5番目、7番目、10〜11番目及び15番目)については、N末シークエンス法で得られた結果について、若干、解釈にあいまいな点があった。そのため、HPLCの結果を考慮しつつ再度検討したところ、N末シークエンス法の結果は、HPLCの結果と矛盾しないデータであることが分かった。その結果、N末シークエンス法による結果及びマススペクトル法による結果は、一致すると結論づけた。このことから、ウイルス様粒子の殻タンパク質は、P.furiosusのPF1191及びPF1192のタンパク質であるという結果となった。
【0096】
この実験結果は、当初、解析上の誤りであると思われた。なぜなら、約40kDaのバンド部分を抽出したにもかかわらず、2つのタンパク質と合致したからである。
【0097】
しかしながら、下記に示す(1)(2)の理由により、単に誤った結果であるとは言い切れなかった。
(1)2つの96残基と261残基のタンパク質の予想分子量である約12kDa、28kDaを足し合わせると、目的の約40kDaになる。
(2)膨大な数のデータベースで見つかった2つのタンパク質は、DNAの配列上すぐ隣同士であった。
【0098】
上記(1)及び(2)の2点から推測すると、タンパク質が発現するRNAの翻訳過程で翻訳の誤りが起こり、この2つのタンパク質の中間にあたるRNAの1塩基が読みとばされ、この1つのタンパク質が生まれたという仮説が考えられた。そのため、さらに実験を続けた。
【0099】
(実施例4 DNA塩基配列及びアミノ酸配列の確定)
タンパク質の発現には、(I)DNAの複製、(II)RNAへの転写、(III)RNAからタンパク質への翻訳、という3つの過程がある。翻訳過程では、RNAの塩基配列が順に3つずつ読まれ、この塩基のトリプレットが1つのアミノ酸に対応し、タンパク質が合成される。したがって、タンパク質のアミノ酸配列は、遺伝子の塩基配列で決定される。さらに、遺伝子の塩基配列が決定できれば、アミノ酸配列は確定する。
【0100】
上記に、遺伝子の塩基配列が決定できればアミノ酸配列は確定する、と記載した。しかし、原理的には、どこから翻訳が始まるかによって、RNAの配列は3通りの読み枠で翻訳でき、3つのタンパク質が合成されることになる(図12参照)。このように、原理的には、3通りの読み枠とその読み枠による3つのタンパク質の合成とが考えられるけれども、ほとんどの場合、途中で終止コドンが入るなどの理由により、機能をもつタンパク質が合成できるのは1通りだけであると言われている。
【0101】
翻訳の過程を説明すれば、上記のようになる。しかし、翻訳の過程において何らかの原因で、RNAの1塩基を読みとばされる、又は1塩基を2回読むことが起きて、フレームシフトの現象が起こることもある。
【0102】
そこで、上記2つのタンパク質の間にあるRNA部分の1塩基が読みとばされたことによって、+1のフレームシフトの現象が起こっていると考えた(図13及び図14参照)。また、そのフレームシフトは、2つのタンパク質が重なる250〜290塩基あたりで起こっていると予測した。
【0103】
一方、データベースに保存されているデータに誤りがある、という可能性もある。そこで、P.furiosusのDNAの全塩基配列を確認した。具体的には、P.furiosusの菌からゲノムDNAを採取し、採取したゲノムDNAから目的部分の塩基配列を読むことにした(図15参照)。
【0104】
P.furiosusの菌からゲノムDNAを採取する操作は、次のように行った。まず、5mlの菌(P.furiosus)を集菌し、ProteinaseKが入ったDNA抽出バッファーで穏やかに混合した。次に、37℃で1時間インキュベート後、NaCl、CTAB/NaCl溶液を混合し、さらにインキュベート(65℃、10分間)した。次に、フェノール・クロロホルム処理をし、エタノールにより沈殿物(ゲノムDNA)を得た。なお、上記「CTAB」とは、cetyltrimethylammonium bromideの略である。
【0105】
次に、上記ゲノムDNAを用いて、部分DNAの増幅を行った。具体的には、フレームシフトがあると思われる部分の遺伝子を含むDNA断片を、PCR(Polymerase chain reaction)法により増幅した。
【0106】
ここで、PCR法の原理について、簡単に説明する。PCR法の原理は、下記の3段階からなるDNA合成反応を、繰り返して行うことにある。
(段階1)加熱して変性することにより、鋳型となるDNAを1本鎖にする。
(段階2)増幅したいDNA鎖の両端に相補的な2種類のオリゴヌクレオチドプライマー(以下、適宜「プライマー」と記す)を、反応系に過剰に加えた状態で温度を下げる。この操作により、プライマーが、鋳型のDNA鎖と相補的な部分と2本鎖を形成する。
(段階3)段階2の状態で合成基質のdNTP(デオキシリボヌクレオチド3リン酸)とDNAポリメラーゼとを作用させる。この操作により、プライマーが2本鎖を形成した部分から、DNAの相補鎖が合成される。
【0107】
なお、1サイクル目で合成されたDNAは、次の反応の鋳型となる。それゆえ、次のサイクル以降において、DNAは連鎖反応的に合成される。そして、30サイクルの反応後には、莫大なDNA分子が得られることとなる。
【0108】
次に、具体的な操作方法について説明する。まず、下記に示す反応液を混合した。次に、それをサーマルサイクラーにセットし、DNAを増幅させた。鋳型のDNAは、抽出したP.furiosusのゲノムDNAを用いた。プライマーは、データベース上にあるP.furiosusの塩基配列をもとに、得られるDNAがフレームシフト部分を含む約240塩基になるように作製した。なお、この反応(PCR)には、Takara TaqTM(宝酒造社製)を用いた。
【0109】
上記PCR反応における反応液の組成は、ゲノムDNA(1μl)、プライマー(1μl)、LATaq(1μl)、バッファー(5μl)、dNTP(5μl)、及びH2O(36μl)である。また、上記PCR反応に用いたプライマーを下記に示す。
(プライマー)
5' AAGGGAGGAGAAGGCTCACG 3'
3' TTCTCGTTACTGGCAAGTGC 5'
上記PCR反応における温度条件を、下記ステップ1〜5に示す。なお、PCR反応の温度条件は、ステップ1からスタートして、ステップ2〜4を30サイクル行った後、ステップ5に進んだ。
ステップ1 95℃(2分)
ステップ2 94℃(30秒)
ステップ3 55℃(1分)
ステップ4 72℃(2分)
ステップ5 72℃(10分)
上記の操作により得られたPCR産物は、0.7%アガロースゲルで電気泳動にかけられた。その結果を図16に示す。図16に示すように、目的部分である約230〜240塩基の部分を有するDNAの増幅を、電気泳動により確認した。
【0110】
次に、増幅したDNAの塩基配列の確認を行った。その確認には、DNAシークエンサーを用いた。DNAシークエンサーは、PCRで増殖した4色の蛍光で標識されたDNAフラグメントを、4色の波長で解析する。蛍光標識された目的のDNAフラグメントは、プライマーと蛍光試薬とを加え、PCRをすることにより作製される。本実施例では、BigDye-Terminator Cycle Sequencing kit(Applied Biosystems社製)を用い、DNAの塩基配列の確認を行った。
【0111】
DNAの塩基配列の確認をするためのPCRにおける反応液の組成は、Premix(4μl)、バッファー(4μl)、プライマー(3.2pmol)、鋳型DNA(300ng)である。また、そのPCRの反応条件(温度条件)は、下記のステップ1〜3(25サイクル)である。
ステップ1 96℃(20秒)
ステップ2 50℃(10秒)
ステップ3 60℃(4分)
次に、エタノールを用いた沈殿によって、PCR産物を得た。そしてTemplate Suppression Reagentを加えて95℃に2分間加熱した後、氷上で冷やした。そして、DNAシークエンサー(ABI PRISM(登録商標) 310 Gentetic Analyzer(Applied Biosystems社製))にセットして、解析を行った。
【0112】
上記確認により得られたDNAの塩基配列とデータベースにある塩基配列とを一塩基ずつ比較することにより、データベースの塩基配列の1つ(271番目の塩基「c」)が欠落していることを確認した(図17参照)。これは、データベースに格納されているP.furiosusの遺伝子のデータが、間違いであったことを示している。つまり、翻訳の途中でフレームシフトが行われているのではなく、データベースのデータの方が1塩基余分にあるため、本来なら1つのタンパク質が、データベース上では2つのタンパク質が存在するものとして解釈されていたのである(図18参照)。図18には、修正した塩基配列と対応するアミノ酸配列の一部とを記載している。なお、太字で示されている「TELKGGFEEV」は、P.furiosusデータベースにあるタンパク質PF1192を示している。また、太字かつ斜字で示されている「KELTGIEAH」は、P.furiosusデータベースにあるタンパク質PF1191を示している。
【0113】
上記のように、データベースのデータと実際のDNAの塩基配列との間には違いがあることが分かった。よって、プライマーの設計を変えて、殻タンパク質をコードする全1038塩基をクローニングし、塩基配列を確認した。
【0114】
なお、塩基配列の確認は、まず、P.furiosusのゲノムDNAからPCRで目的部分を増幅させて、目的部分の配列の増幅を電気泳動で確認した。そして、増幅させたものをベクター(pTA)に組み込んだ後、DNAの塩基配列を確認した。
【0115】
上記PCRの反応液は、ゲノムDNA(1μl)、バッファー(5μl)、プライマー(1μl)、dNTP(5μl)、LATaq(1μl)、Mgバッファー(5μl)である。上記PCRに用いた反応条件(温度条件)は、下記ステップ1〜5に示す。なお、そのPCR反応の反応条件は、ステップ1からスタートして、ステップ2〜4を30サイクル行った後、ステップ5に進んだ。
ステップ1 95℃(2分)
ステップ2 94℃(30秒)
ステップ3 56℃(1分)
ステップ4 72℃(2分)
ステップ5 72℃(10分)
また、上記PCR反応に用いたプライマーを下記に示す。
(プライマー)
N: 5' GATCCATATGCTCTCAATAAATCC 3'
C: 5' ATGCACATATGGCCGTGAAC 3'
また、上記のように、pTAベクターに組み込んだ後に、塩基配列を確認した。その塩基配列の確認(シーケンス)時におけるPCR反応は、DNAの長さが1000塩基を超えるため、プライマーは2つに分け、さらに、相補鎖の塩基配列の確認も行った。このプライマーの設計においては、pTAのベクターのインサート前後を、プライマーN及びCとした。そして、目的部分のおおよそ半分くらいに位置するDNAを、プライマーM1及びM2とした。つまり、プライマーN及びM1とプライマーC及びM2との計4つのプライマーを用いて、塩基配列の確認を行った。それらプライマーを下記に示す。
(プライマー)
N: 5’ GATCCATATGCTCTCAATAA 3’
C: 5’ ATGCACATATGGCCGTGAA 3’
M1: 5’ GAAGAAGAAATTCTATGTGG 3’
M2: 5’ CCACATAGAATTTCTTCTTC 3’
また、塩基配列の確認時におけるPCR反応の反応条件(温度条件)を、下記のステップ1〜ステップ3に示す。なお、このPCR反応の反応条件は、ステップ1〜3を25サイクル行った。
ステップ1 96℃(20秒)
ステップ2 50℃(10秒)
ステップ3 60℃(4分)
塩基配列の確認時におけるPCR反応の反応液は、DNAを組み込んだ環状DNA(4μl)、バッファー(4μl)、プライマー(4μl)、H2O(6μl)である。
【0116】
その結果、他の配列は、データベースと同様の配列であった。以上のことから、ウイルス様粒子の殻タンパク質の全塩基配列と全アミノ酸配列とを確定した。それら全塩基配列と全アミノ酸配列とを図19に示す。なお、ウイルス様粒子の殻タンパク質の全アミノ酸配列は、配列表の配列番号3にも示している。さらに、その殻タンパク質の全アミノ酸配列をコードする全塩基配列は、配列表の配列番号1にも示している。なお、配列番号2に示す配列は、配列番号1に示す塩基配列と配列番号3のアミノ酸配列とを併記した配列である。
【0117】
当初、ウイルス様粒子は、外来種由来のものであると考えていたので、アミノ酸配列、塩基配列のデータベースで合致するものがあればP.furiosusのデータベースではなく、他のウイルスのデータベースに合致することを想定していた。もしくは、まだ発見されていない新種のウイルスならば、データベースにも登録されていないはずで、検索合致はないであろうと考えていた。
【0118】
しかし、上記結果によれば、ウイルス様粒子の由来はP.furiosus自身の種にあることが判明した。これは、ウイルス様粒子を構成する殻タンパク質のアミノ酸配列が、P.furiosusの遺伝子上でコードされているという、新たな事実であった。すなわち、このウイルス様粒子は、もともとP.furiosus内で発現されている可能性がある。
【0119】
(実施例5 アミノ酸配列の相同性)
次に、このウイルス様粒子がどのような働きをもって宿主であるP.furiosusに存在しているのか、及び、ウイルス様粒子は他の生物種に存在するのかについて、決定したアミノ酸配列の相同性から検証した。
【0120】
相同性(ホモロジー)とは、共通の祖先遺伝子から種分化や遺伝子重複によって分岐してきた子孫遺伝子あるいはその産物に見られる類似性のことである。また、特定の塩基配列又はアミノ酸配列(問い合わせ配列)を、データベースに登録されている全ての配列と比較して類似配列を探すことを、ホモロジー検索という。そのホモロジー検索において、既知のタンパク質のアミノ酸配列との有意な類似性(約20%以上)が検出された場合には、同様の構造・機能を持つものと考えられる。
【0121】
まず、Web上のClustalW 配列解析(http://clustalw.genome.ad.jp)を用いて、構造の類似性があるバクテリオファージHK97殻タンパク質とのマルチプルアライメントを行うことにより、配列の解析を行った(Nucleic Acids Res 22 4673-4680.(1994)参照)。そして、40kDaのタンパク質(ウイルス様粒子を構成する殻タンパク質)のアミノ酸配列と類似したタンパク質があるかどうかを、FASTAデータベース(http://www.fasta.genome.ad.jp)を用いて調べた(Proc Natl Acad Sci U S A 85(8)2444-8(1988)参照)。
【0122】
上記マルチプルアライメントによる配列の解析によれば、バクテリオファージHK97との類似性は、19%であった。また、FASTAデータベースを用いた調査により見つかった類似性が高いと考えられるタンパク質は、次の表1に示す4つのタンパク質(表中の2番〜5番のタンパク質)、つまり類似性が20%以上のタンパク質である。
【0123】
【表1】
Figure 0003934066
【0124】
表1の2番及び3番に示すSulfolobus属のタンパク質では、アミノ酸配列の長さ(アミノ酸残基数)がほとんど変わらず(約340アミノ酸残基)、類似性は約30%であった。表1の4番及び5番に示すタンパク質は、同じPyrococcus属のタンパク質であり、タンパク質の長さが101残基と短いものの、50%以上という高い類似性を示した。なお、上記4種以外のタンパク質は、タンパク質の長さが異なり、類似性も20%を切るので、相同性があるとは言えないと判断した。
【0125】
図20には、表1の2番に示すSulfolobus tokodaii ST 0992のアミノ酸配列と、P.furiosusのアミノ酸配列との比較結果を示している。表1に示すように類似性は30%であるが、図20によれば、前半部分の類似性のほうが、後半部分の類似性よりも高いことが分かる。
【0126】
なお、図20と後述の図21とにおいて、相同性を示す記号として、「*」と「:」と「.」と「 」(空白)とを用いている。「*」は、生物種間において、完全にアミノ酸配列が保存されていることを示している。「:」は、生物種間において、性質が非常に近いアミノ酸残基間の変異が起きていることを示している。「.」は、生物種間において、性質が近いアミノ酸残基間の変異が起きていることを示している。「 」(空白)は、生物種間において、「:」及び「.」で表すことができない変異が起きていることを示している。
【0127】
バクテリオファージHK97の場合は、立体構造が類似している部分があるので、類似性は相当高いと予想された。しかし、実際は、表1に示すように、アミノ酸配列の類似性が19%とそれほど高くなかった。このことから、殻タンパク質は、それほど類似性がなくとも、ウイルス様粒子となる可能性が十分にあるということが推測される。
【0128】
相同性配列で見つかった4つのタンパク質(表1における番号2〜5のタンパク質)は、いずれも機能未知なタンパク質である。表1の番号2〜3に示すタンパク質の種であるSulfolobus属は、Crenarchaeota(古細菌のサブドメインの一つ)に分類される好酸性好熱菌で、100℃以上でも生育する超好熱菌ではなく、P.furiosusと近い関係ではない。しかし、この目的のタンパク質(表1の番号2〜3に示すタンパク質)の類似性は、全体の約30%の類似性をもつ。この数字は、表1に示すように、HK97の殻タンパク質との類似性より高い。さらに、表1の番号2〜3に示すタンパク質のアミノ酸残基数は、どちらも、発明者の解析したウイルス様粒子を構成する殻タンパク質のアミノ酸の数(345残基)に極めて近い。このことから、表1の番号2〜3に示すタンパク質は、P.furiosusの殻タンパク質と同じ機能・構造をもつタンパク質であることが推測され、この発明者の解析したウイルス様粒子が、Sulfolobus属にも存在する可能性もあるといえる。
【0129】
表1の番号4〜5に示すタンパク質の種であるPyrococcus abyssiとPyrococcus horikoshiiは、P.furiosusと同じPyrococcus属で、菌の生育条件も似ており、各々のタンパク質の類似性も非常に高い。この類似検索で見つかったタンパク質は、どちらも101残基であり、発明者の発見したウイルス様粒子を構成するタンパク質の345残基と異なっている。しかし、N末から前半約100残基の部分に限り、類似性が50%を超えているという結果であった。図21には、P.furiosusの殻タンパク質のアミノ酸配列と、Pyrococcus horikoshii PH1734のアミノ酸配列との相同性を示しており、53%の類似性があることが分かる。Pyrococcus属で後半約250残基の類似性の高い部分が存在しないことは、進化の過程上で何らかの原因で淘汰され、失われた可能性があるといえよう。
【0130】
また、解析したウイルス様粒子の立体構造の結果とこの相同性検索の結果とから、ウイルス様粒子を構成する殻タンパク質の前半部分と後半部分とが、まるで異なるタンパク質であるかのように、機能・構造が分離されていると考えられる。このように考えられるのは、次の理由による。
【0131】
(理由1:構造上の理由)ウイルス様粒子のモノマー構造において、ウイルス様粒子の殻部を構成している部分は、後半の約250残基だけであり、前半のN末から100残基ほどは、粒子の内部にありタンパク質構造がゆらいでいると考えられる。そのため、前半の100残基は電子密度図で確認できていない。図22は、ウイルス様粒子のモノマー構造を示しており、後半の250残基のリボン図で前半の100残基は確認できないことを示している。
【0132】
(理由2:相同性検索結果による理由)相同性の検索において、Sulfolobus属のタンパク質のアミノ酸配列との比較を注意深く見ると、前半100残基の配列の類似性が37%で、後半250残基の配列の類似性は20%であり、前半と後半との相同性が異なっている。さらに、P.abysii及びP.horikoshiiは、表1に記載したように、前半100残基の配列の類似性が50%を超えているけれども、後半250残基の類似配列はない。つまり、類似性からも、前半と後半とが分離されている。
【0133】
よって、後半の250残基部分が、ウイルス様粒子の殻部を構成している部分であって、前半の100残基部分は、ウイルス内部で核酸などを認識している機能部分である可能性が強い。このことから、同じPyrococcus属でも、P.furiosus由来のタンパク質だけがウイルス様粒子となり、前半100残基部分のタンパク質しかないP.abysii及びP.horikoshii由来のタンパク質では粒子とならないことが考えられる。
(実施例6 大腸菌を用いた発現系)
この熱安定のウイルス様粒子の応用として、大腸菌を用いた発現系を構築した。まず、発現ベクターとしてpET9及びpET11を、ホストとしてBL211(DE3)pLysS及びBL21(DE3)Codon+を用いて、ウイルス様粒子を構成するタンパク質を発現させた。次に、SDS−PAGEにより、目的タンパク質の発現を確認した。さらに、タンパク質を遠心分離により精製した。その精製は、まず、超音波により細胞を破砕後、加熱処理(80℃、1時間)を行った。次に、Sephadex200によるゲルろ過後、スクロース不連続密度勾配遠心分離(40−10%、20000rpm、10時間)により、タンパク質を精製した。そして、タンパク質の精製後、電子顕微鏡により、球殻構造の形成を確認した。
【0134】
なお、大腸菌を用いた発現系の条件下でも、球殻構造が形成していることを確認している。その条件とは、Tris-HCl(pH7.5)(20mM)、グリセロール(10%)、EDTA(5mM)、NaCl(100mM)である。
【0135】
このように、大腸菌を用いて殻タンパク質を発現することと、球殻構造が形成することとを確認した。これは、本発明の遺伝子及びタンパク質を用いれば、ウイルス様粒子(球状粒子)を大量に生産できるという可能性を示すものである。
【0136】
上記実施例1〜6により、次のことが言える。
(1)ウイルス様粒子は、直径30nmである。
(2)ウイルス様粒子は、超好熱菌P.furiosusの中に共生しながら存在している。
(3)ウイルス様粒子の殻タンパク質は、2つの機能、構造をもっている。
(4)大腸菌を用いた発現系により、球状構造を形成させることができる。
【0137】
また、相同性検索から、Sulfolobus属の2種で同様なウイルス様粒子が存在する可能性があり、同じPyrococcus属の中においては、P.furiosus由来のものだけがウイルス様粒子となることが予想される。そのため、ウイルス様粒子は、進化の上でも興味深い対象であることが分かった。
【0138】
【発明の効果】
本発明の遺伝子は、以上のように、球状粒子を構成するタンパク質をコードしている。それゆえ、この遺伝子により、球状粒子を構成するタンパク質を容易に合成して、さらに、そのタンパク質を利用して、ウイルス様粒子(球状粒子)を容易に製造することができる、という効果を奏する。
【0139】
また、本発明のタンパク質は、以上のように、集合することによって球状粒子を形成するタンパク質である。さらに、そのタンパク質をコードしている遺伝子は特定されている。それゆえ、球状粒子(ウイルス様粒子)の製造及び利用が容易になるという効果を奏する。
【0140】
また、本発明の球状粒子は、上記タンパク質を有することを特徴としている。それゆえ、上記タンパク質を集合させるといった方法により、容易に球状粒子を製造して利用することができるという効果を奏する。
【0141】
【配列表】
Figure 0003934066
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【図面の簡単な説明】
【図1】構造解析により得られた、ウイルス様粒子(球状粒子)の構造を示す模式図及び断面図である。
【図2】本発明の実施例の疎水性クロマトグラフィーにおける、溶出分画番号と吸光度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例の疎水性クロマトグラフィーで得られた溶出分画液を、SDS−PAGEにかけたときの結果を示す模式図である。
【図4】結晶化前のサンプル、カラムクロマトグラフィーで分けたサンプル、及び結晶溶解液のサンプルの3つを、SDS−PAGEにかけたときの結果を示す模式図である。
【図5】結晶化前のサンプルの観察結果を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】疎水性カラムクロマトグラフィーで分けたサンプルの観察結果を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】結晶溶解液のサンプルの観察結果を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】細菌ウイルスの形態を説明する説明図である。
【図9】部分アミノ酸配列の解析の結果、5残基目のP(プロリン)が見つかったときの、N末シークエンス法のHPLCの結果を示す模式図である。
【図10】SDS−PAGEを行った後の目的タンパク質を、質量分析計で解析した結果を示す模式図である。
【図11】 P.furiosusデータベースで見つかったタンパク質(PF1191及びPF1192)のアミノ酸配列を示す模式図である。
【図12】タンパク質合成における可能な3通りの読み枠を示す模式図である。
【図13】本発明の実施例において、データベースのデータ及び解析結果をもとに、目的部分の塩基配列と対応するアミノ酸配列とを示した模式図である。
【図14】図13の続きを示す模式図である。
【図15】 P.furiosusのゲノムDNAからPCRで目的DNAを増幅させ、目的アミノ酸配列を読むことを示す模式図である。
【図16】データベース上にあるP.furiosusの塩基配列をもとに、得られるDNAがフレームシフト部分を含む約240塩基になるように作製したプライマーと、P.furiosusのゲノムDNAとを用いてPCRを行い、そのPCR産物を電気泳動にかけたときの結果を示す模式図である。
【図17】解析により得られたDNAの塩基配列と、データベースにある塩基配列とを一塩基ずつ比較したときの結果を示す模式図である。
【図18】修正した塩基配列と対応するアミノ酸配列の一部とを併記して、2つのタンパク質(PF1191及びPF1192)がつながることを説明する説明図である。
【図19】修正した1038塩基の全塩基配列と、それに対応する345残基の全アミノ酸配列とを示す図である。
【図20】 Sulfolobus tokodaii ST 0992のアミノ酸配列とP.furiosusのアミノ酸配列との相同性を示す模式図である。
【図21】 P.furiosusの殻タンパク質のアミノ酸配列と、Pyrococcus horikoshii PH1734のアミノ酸配列との相同性を示す模式図である。
【図22】ウイルス様粒子のモノマー構造(ウイルス様粒子の殻タンパク質の構造)を示す立体構造図である。

Claims (7)

  1. 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードすることを特徴とする遺伝子。
    (a)配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (b)配列番号3に記載のアミノ酸配列のうち、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、集合することによって球状粒子を形成するタンパク質。
  2. 配列番号1に記載の塩基配列からなることを特徴とする遺伝子。
  3. 配列番号1に記載の塩基配列のうち、1個若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列からなり
    集合することによって球状粒子を形成するタンパク質をコードしていることを特徴とする遺伝子。
  4. 上記タンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子。
  5. 上記タンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列のうち、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子。
  6. 配列番号3に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とするタンパク質。
  7. 配列番号3に記載のアミノ酸配列のうち、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり
    集合することによって球状粒子を形成することを特徴とするタンパク質。
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