JP3933700B2 - 水ベースの反応性ポリマー分散液におけるエポキシシランエマルジョン添加剤組成物およびそれらの製造法 - Google Patents
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Description
従来の有機溶媒ベースのポリマー組成物は、環境汚染、資源の保存、及び安全な作業環境の提供等に関連した様々な問題のために使用されなくなってきた。これに代わって、水溶液または分散液タイプの塗料組成物(coating composition)が代替物として提唱されている。特に、改良された特性(例えば、耐水性や耐溶剤性)が容易に得られることから、反応性ポリマーのエマルジョンと分散液に対して多くの関心が寄せられている。
ポリマー、水性のエマルジョンと分散液(ラテックス)、およびエポキシ樹脂もしくはエポキシコンパウンドを組み合わせて使用することは、当業界においてよく知られている。例えば、Longによる米国特許第4,049,869号は、多孔質無機支持体を保護するのに使用するための、アクリル酸含量の多いラテックス(5〜20重量%)、架橋剤(1〜10%)、および紫外線吸収剤を含んだ組成物を開示している。架橋剤はエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
ラテックス系における添加剤としての水溶性シランも、従来技術において開示されている。例えば、Bredowによる米国特許第5,017,632号は、ポルトランドセメントや金属のための塗料組成物を開示している。この塗料組成物は、一対の貯蔵安定性成分(すなわち、微細粒径の充填剤、エポキシ樹脂、および必要に応じて粗大凝集体を含むドライブレンド;ならびにポリマーラテックス、アミン官能基を有するエポキシ硬化剤、および水溶性のエポキシシランもしくはアミノシランを含むウェットブレンド)を混合して製造される。
Ponsによる米国特許第5,100,955号は、1種以上のオレフィン性不飽和モノマーの付加ポリマー、乳化安定剤および/または乳化剤、ならびに水溶性エポキシシランを含んだ水性分散液をベースとする塗料組成物と接着剤組成物を開示している。水溶性エポキシシランは、付加ポリマーの重合後に加えるのが好ましい。しかしながら、このような組成物の保存寿命はわずか2〜3日である。
Hahnによるヨーロッパ特許第401,496号は、カルボン酸基、アミド基、及びスルホン酸基を含有するエマルジョンコポリマーの分散液をエポキシシランで処理することによる、接着剤としてのシリコン変性プラスチック水性分散液(aqueous silicon-modified plastic dispersions)を開示している。式R1R2R3R4Siで示される水溶性のエポキシシランが開示されており、このときR1は反応性のオキシラン基を有する(シクロ)アルキルであり;R2は(シクロ)アルコキシ、(シクロ)アルキル、アリール、またはアラルキルであり;そしてR3とR4は(シクロ)アルコキシまたはOHである。しかしながら、合成ラテックスの組成は特異的である。さらに、ニートのエポキシシランをポリマーに直接加えている。
こうした塗料技術のほかに、トリアルコキシシランのエマルジョンが防水剤として使われていることが報告されている。例えば、米国特許第4,877,654号と第5,393,330号には、緩衝剤で処理された水性シランエマルジョンが開示されている。米国特許第5,226,954号では、撥水性を付与すべく、アルキルアルコキシシランがノニオン性乳化剤やアニオン性乳化剤で乳化されている。
発明の要約
本発明は、水不溶性もしくは幾分水溶性のエポキシシラン、乳化剤、および活性水素を有する官能基を含有する水分散性もしくは水乳化性の有機ポリマー、を含む保存性の良い組成物を提供する。本発明による、保存性の良い組成物を製造する方法は、(a)乳化剤により水不溶性または幾分水溶性のエポキシシラン化合物を水溶液中に分散させて水性エマルジョンを得る工程、および(b)活性水素を有する官能基を含有する水分散または水乳化した有機ポリマーに前記シランエマルジョンを加える工程、を含む。本発明の他の態様は、物品に反応性の水性分散液を塗被し、そしてこの分散液を硬化させることである。本発明の組成物は、少なくとも約6ヶ月は安定である。さらに、本発明の組成物を使用すると、改良された特性(例えば耐溶剤性、接着性、平滑性、硬度、および表面摩耗抵抗)が達成される。
発明の詳細な説明
本発明は、(I)水不溶性もしくは幾分水溶性のエポキシシラン;(II)乳化剤;(III)水;および(IV)活性水素を有する官能基を含有する水分散性もしくは水乳化性のポリマー;を含む安定なエポキシシラン含有組成物、ならびに前記組成物の製造法を提供する。さらに、成分(I)〜(III)を含むエポキシシランエマルジョンが調製されていて、このエマルジョンを使用するときに成分(IV)を加える、という二液系も提供される。さらに、追加の成分(V)(例えば、触媒やpH緩衝剤)を加えることもできる。上記組成物を製造する上で重要なのはシラン(I)と乳化剤(II)である。
本発明は、貯蔵中に種を生じたりゲル化したりすることのない、高度に安定なエポキシシラン含有組成物を提供する。これらの組成物は、一般には少なくとも2〜3週間安定であり、さらに好ましくは2〜3ヶ月にわたって安定である。実際、20重量%未満のエポキシシランを含有する組成物は6ヶ月以上の貯蔵に耐える。この点は、2〜3週間後に接着性等の特性が失われるか、あるいはゲル化することさえある従来技術のシラン/ポリマー組成物と比較して有利である。
(I) シラン
本発明において使用するための水不溶性もしくは幾分水溶性のエポキシ官能性シランはR1 aR2 bSi(OR3)4-a-bという一般式で表され、このときR1はエポキシ置換のアルキル基またはアラルキル基であって、前記アルキルは4〜30個の炭素原子を有してよく、R3は、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、アリール基、またはアラルキル基であり、R2は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、アリール基、またはアラルキル基であり、そしてa+bが1、2、または3であるという条件にて、aは1〜3であり、bは0〜2である。各R基は、環式であっても、枝分かれ鎖状であっても、あるいは直鎖状であってもよい。水不溶性または幾分水溶性のシランとしては、水中0.1〜8.0重量%の溶解度を有するシランが含まれる。好ましいのは水不溶性のエポキシシランである。しかしながら、特に水溶性シランはこれらのシランから除外される。なぜなら、このようなシランを使用して製造された組成物は、長期間(すなわち、周囲条件にて2〜3日以上)にわたって安定ではないからである。
好ましいエポキシ官能性シランとしては、
があり、このとき
Rは(CH2)mであって、mは0〜6の値を有し;
R2は、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、アリール基、またはアラルキル基であって、前記基のそれぞれが1〜10個の炭素原子を有し;
R3は、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、アリール基、またはアラルキル基であって、前記基のそれぞれが2〜10個の炭素原子を有し;
R4、R5、R6、またはR7はそれぞれ、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり;
R8は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜10個の炭素原子を有するアラルキル基もしくはアリール基であり;
R9は、
であって、nは0、1、または2の値を有し;
c、d、およびeは、それぞれ0または1の値を有し;そして
fは、0、1、または2の値を有する。
さらに詳細に言えば、R2は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソブチル基、およびオクチル基)、アルケニルニ基(例えば、ビニル基やアリル基)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、およびナフチル基)、およびアラルキル基(例えば、ベンジル基や2−フェニルエチル基)等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基、ならびに上記炭化水素基中の炭素原子の1つ以上を、イオウや酸素を含めた種々の原子および/または基で置き換えることによって得られる、および/または上記炭化水素中の水素原子の1つ以上を、ハロゲン原子、エポキシ基、メタクリルオキシ基、アクリルオキシ基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、およびポリオキシアルキレン基を含めた(これらに限定されない)種々の基で置き換えることによって得られる置換された基を示している。
R3は、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、およびn−デシル等のアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、ならびにシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル等の環式基である。R2に対する適切な枝分かれ鎖状炭化水素基は、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、イソブチル、sec−アミル、および4−メチル−2−ペンチル等のアルキル基である。代表的なアルコキシアルキル基は、n−ブトキシエチルやメトキシプロピルである。代表的なアリール基はフェニルであり、代表的なアラルキル基はベンジルやエチルフェニルである。
R4、R5、R6、またはR7は、水素原子、または1〜6個の炭素原子を有する一価の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、およびイソブチル基等のアルキル基;例えば、ビニル基やアリル基等のアルケニル基;ならびに例えばフェニル基等のアリール基)である。これらの炭化水素基は、水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子およびシアノやエポキシを含めた官能基で置き換わっていてもよい。
本発明にしたがって使用されるエポキシ官能性シランの例としては、BristonとLefortによるフランス特許第1,526,231号に記載のシランがある(但し、これらに限定されない)。特定の例は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、4−(メチルジエトキシシリル)−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリ(イソブトキシ)シラン、3−(2,3−エポキシブトキシ)プロピルトリエトキシシラン、および[2.2.1]ビシクロヘプタン−2,3−エポキシ−5−(2−トリエトキシシリル)エチルである。
シランは、組成物〔(I)〜(IV)〕総重量の0.1〜30重量%にて存在する。好ましい濃度は組成物総重量の約0.1〜10%である。成分(I)〜(III)を含むエポキシシランエマルジョン前駆体を作製する場合、シランは0.1〜60重量%にて存在する。
(II) 乳化剤
本発明において使用するための乳化剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との混合物、およびノニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤との混合物がある。ノニオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどがある。アニオン界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、硫酸アルキルエステル塩、ベンゼンスルホン酸アルキル、リン酸アルキル、硫酸アルキルアリルエステル塩、およびポリオキシエチレンリン酸アルキルエステルなどがある。カチオン界面活性剤の例としては、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、長鎖アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、及びジ(長鎖アルキル)ジメチルアンモニウム塩等の第四アンモニウム塩がある。本発明において有用な他の界面活性剤は、“McCutcheon's Vol.2:Functional Materials, North American Edition(The Manufacturing Confectioner Publishing Co., Glen Rock)1994”(本文献を参照のこと)に記載の界面活性剤である。
乳化剤は、(I)〜(IV)を含んだ組成物全体の重量を基準として0.05〜30重量%の範囲で存在しなければならず、組成物全体の0.2〜20重量%の範囲で存在するのが好ましい。エポキシシランエマルジョン前駆体においては、乳化剤は、エポキシシラン(I)の0.1〜50重量%にて存在しなければならない。
界面活性剤の適切なHLB(親水親油バランス)は、乳化される特定のエポキシシランのHLBに対応するよう選定される。ある物質に対する最適HLBを選定する方法は当業者によく知られており、ICIアメリカズ社(ICI Americas Inc.)による“The HLB Systems”に説明されている。
成分(II)〜(IV)から得られる反応性ポリマーエマルジョンはエポキシシランエマルジョン前駆体を加える前に作製されるので、これらの組成物前駆体を作製する際に上記タイプの乳化剤を使用することができる。この場合も、乳化される特定の反応性ポリマーのHLBに対応すべく適切なHLBが選定されるよう乳化剤が選定される(但し、反応性ポリマーを乳化するよう選定される乳化剤は、エポキシシランエマルジョン前駆体を作製するのに使用される乳化剤に対して相溶性がある)。反応性ポリマーエマルジョン前駆体においては、乳化剤は、反応性ポリマーの1〜50重量%の量にて存在しなければならない。
(III) 水
水は、組成物全体(I)〜(IV)の29.85〜99.75重量%の量にて存在してよい。ポリマーなしでシランエマルジョン前駆体を作製する場合は、約39〜99.75%の水が存在しなければならない。
(IV) ポリマー
本発明の反応性ポリマーは、活性水素を、好ましくはカルボキシル基の形で有するポリマーである。このようなポリマーの代表的なものは、末端もしくは側鎖のカルボキシル基(−COOH)を含むポリマーであり、このときカルボキシル基の一部が、中和された塩の形(例えば、−COOK)であってもよい。これらの反応性ポリマーは500〜108g/モルの分子量を有する。好ましい反応性ポリマーは、カルボン酸基を、1〜780(好ましくは10〜280)の酸価(ASTM D669にしたがって測定)を有するに足る量にて含有する。ポリマーは、乳化剤を含まない形の分散液として加えてもよいし、あるいは乳化剤を含んだ形のエマルジョンとして加えてもよい。
本発明において使用できる反応性ポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンプロピレンコポリマー、ウレタン、エポキシポリマー、ポリスチレン、およびウレタンアクリルポリマーのカルボン酸変性ポリマーがある。さらに、アクリルホモポリマー、ビニルアクリルポリマー、メタクリルポリマー、スチレンアクリルコポリマー、およびポリエステルも有用である。これらの反応性ポリマーは、ヒドロキシル、アミド、ビニル、およびハロゲンを含めた他の有機官能基をさらに含有してもよく、これらのポリマーも反応性ポリマーの範囲内と考えられる。
本発明にしたがって使用できる好ましい反応性ポリマーの特定の例としては、JONCRYLR554,JONCRYL554,JONCRYL77,JONCRYL95,及びSCX2500〔いずれもウィスコンシン州ラシンのSCジョンソンポリマー社(SC Johnson Polymer)から市販〕等の、市販のスチレンアクリルエマルジョンポリマーがある。本発明において使用することのできる市販の好ましい反応性ポリマー物質の他の特定の例としては、NEOCRYLRアクリルエマルジョン、NEOREZR水搬送ウレタンポリマー(water-borne urethane polymer)、およびNEOPACR水搬送ウレタンアクリルコポリマー(マサチューセッツ州ウィルミントンのゼネカレジン社から市販)、ならびにUCARRアクリルラテックスとUCARRビニルアクリルラテックス(コネチカット州ダンバリーのユニオンカーバイド社から市販)などがある。
本発明においては、乳化剤を含有していないポリマー分散液も使用することができる。ポリマーは、組成物全体の0.1〜70重量%の量にて存在しなければならない。
(V) 任意の成分
本発明の組成物はさらに、架橋剤(例えば、メチロール化および/またはアルコキシ化された尿素樹脂やメラミン樹脂、エポキシ樹脂、アジリジン、およびカルボジイミド等)を含有してもよい。このような架橋剤は、貯蔵中に組成物を不安定にしない限り、組成物全体の0.1〜20重量%の量にて存在することができる。
本発明の組成物は、硬化状態を調節するために、加水分解安定性で水溶性/乳化性/分散性の硬化触媒を必要に応じて含んでもよい。このような触媒の例としては、有機チタネート、有機スズ、キレート化チタン化合物、キレート化アルミニウム化合物、キレート化ジルコニウム化合物、およびこれらの組合せ物などがある。キレート化チタネートの例としては、ジヒドロキシビス[2−ヒドロキシプロパナート(2−)−O1,O2](2−)チタネート、混合チタンオルトエステル錯体、アセチルアセトナートキレート、ビス[エチル−3−オキソブタノラート−O1,O3]ビス(2−プロパノラート)チタン、イソプロポキシ(トリエタノールアミナート)チタン、およびチタンのアルカノールアミン錯体などがある。有機スズ触媒の例としては、FOMREZRUL-1,UL-22,およびUL-32(コネチカット州グリーンウィッチのウィトコ社から市販)、ならびにジブチル錫ビス(1−チオグリセロール)などがある。
触媒は、反応性ポリマー成分(IV)の重量を基準として0.01〜20%(好ましくは0.1〜10部)の量にて使用することができる。
組成物全体としてのpHが組成物の加水分解安定性に影響を及ぼすことがある。組成物の高いアルカリ性または高い酸性が、エポキシシランのアルコキシシリル基の加水分解と縮合を触媒する。組成物のpHが中性(pH=7)に近づくほど、エマルジョンの安定性が良くなる。したがって、組成物全体のpHの好ましい範囲は5.5〜8.5である。pHを調節するのに使用できる物質は、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、および対応するカリウム塩を含めた有機もしくは無機緩衝剤である。
組み込むことのできる他の任意の成分は、当業界において普通に知られていて一般的に使用されているような充填剤、チキソトロープ、顔料、可塑剤、凝集剤、殺生物剤、および殺真菌剤である。
製造法と使用法
本発明のエポキシシランエマルジョン前駆体は、先ず乳化剤(II)とエポキシ官能性シラン(I)とを混合することによって作製する。水(III)を加え、混合物を攪拌して白色の乳状エマルジョンを得る。必要に応じて、エマルジョンのpHを7.0±1.5に調節する。
このエポキシシランエマルジョン前駆体を、反応性ポリマー(IV)または反応性ポリマーエマルジョン〔成分(II)〜(IV)〕に加えて、安定な組成物を得る。これらの成分を混合するのに使用される方法は重要なポイントではなく、普通に使用されるいかなる低剪断装置(例えば、ブレード攪拌機や櫂形攪拌機)も適切である。任意の成分(V)はどの段階で加えてもよいが、幾つかの場合では触媒は最後に加えなければならない。
本発明のエマルジョンは、二成分系〔すなわち、成分(I)〜(III)と成分(IV)〕として使用することができ、この場合は使用前に短時間混合する。しかしながら、一成分系として使用すべく混合しても充分な安定性を有する。成分(I)〜(IV)を含んだ組成物は、均一な水性分散液または水性エマルジョンを形成する。これら組成物の用途の多くは、周囲条件下での乾燥、あるいは高温での乾燥(例えばべーキング)を必要とする。こうして得られる乾燥した物質は、優れた耐溶剤性、耐薬品性、硬度、表面摩耗抵抗、接着性、耐水性、耐久性、または耐候性を有する。
本発明にしたがって製造される組成物は、工業用・建築用の塗料、シーラント、木材用塗料、接着剤、およびマスチックとして(すなわち、一般にポリマーが使用される用途において)使用することができる。本発明の組成物は、例えば織布プリント用ペーストとして、耐クロッキング性を有する色彩堅牢用途をもたらす。木材用塗料においては、本発明の組成物は、歪み抵抗、表面摩耗抵抗、および貯蔵時におけるラテックス表面間のブロッキング抵抗を付与する。建築用塗料に関しては、本発明の組成物は、耐スクラビング性および他の改良された特性を付与する。シーラントにおいては、本発明の組成物は無機表面への接着性を付与する。当業者にとっては明らかなことであるが、本発明の組成物は、塗料、シーラント、接着剤、石工事用シーラー、ガラス繊維用のバインダーとサイズ剤、インキ、および他の水搬送ポリマー系等の多くの用途を有する。
実施例1. 5%の界面活性を含んだβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン(シランA)の40%エマルジョンの作製
3.85gのSPANR60界面活性剤(ICIアメリカズ社)と3.36gのTWEENR40界面活性剤(ICIアメリカズ社)を温水浴中で一緒に混合加熱して溶融し、これをビーカーに加えた。60.0gのシランAを加え、機械的攪拌機で混合物を攪拌した。82.5gの水を加え、混合物を約5分間激しく攪拌して、40重量%のシランAを含有する白色の安定なエマルジョンを得た。
実施例2. 5%の界面活性剤を含んだシランAの20%エマルジョンの作製
3.5gのSPANR60と1.5gのTWEENR40界面活性剤を温水浴中で一緒に混合加熱して溶融し、これをビーカーに加えた。20.0gのシランAを加え、機械的攪拌機で混合物を攪拌した。75.0gの水を加え、混合物を約5分間激しく攪拌して、20重量%のシランAを含有する白色の安定なエマルジョンを得た。
実施例3. 8%の界面活性剤を含んだシランAの40%エマルジョンの作製
2.18gのSPANR80界面活性剤(ICIアメリカ)と2.22gのTWEENR40界面活性剤を一緒に混合し、これをビーカーに加えた。この界面活性剤混合物に22.0gのシランAを加え、機械的攪拌機で混合物を攪拌した。28.6gの水を加え、混合物を約5分間激しく攪拌して、40重量%のシランAを含有する白色の安定なエマルジョンを得た。
実施例4. 10%の界面活性剤を含んだシランAの40%エマルジョンの作製
2.73gのSPANR80と2.77gのTWEENR40を一緒に混合し、これをビーカーに加えた。この界面活性剤混合物に22.0gのシランAを加え、機械的攪拌機で混合物を攪拌した。27.5gの水を加え、混合物を約5分間激しく攪拌して、40重量%のシランAを含有する白色の安定なエマルジョンを得た。
実施例5. 8%の界面活性剤を含んだγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(シランB)の40%エマルジョンの作製
1.93gのSPANR60界面活性剤(ICIアメリカズ社)と2.87gのMyrjRR52S界面活性剤(ICIアメリカズ社)をビーカー中で一緒に混合し、温水浴で加熱してこれらの固体物質を溶融させた。24.0gのシランBを加え、機械的攪拌機で混合物を攪拌した。31.2gの水を加え、混合物を約30分間激しく攪拌して、40重量%のシランBを含有する白色のエマルジョンを得た。得られたエポキシシランエマルジョンは準安定であり、1ヶ月以内にゲル化した。
実施例6. 6%の界面活性剤を含んだγ−グリシドキシプロピルトリ−(イソブトキシ)シラン(シランD)の40%エマルジョンの作製
2.72gのSPANR60界面活性剤と1.18gのTWEENR40をビーカー中で一緒に混合し、温水浴で加熱してこれらの固体物質を溶融させた。26.0gのシランDを加え、バーハート・ミキサー(Barhart Mixer)で20分攪拌した。35.1gの水を加え、混合物を約30分間攪拌して、40重量%のシランDを含有する白色の安定なエマルジョンを得た。
実施例7. 6%の界面活性剤を含んだβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリ−(イソブトキシ)シラン(シランE)の40%エマルジョンの作製
2.36gのSPANR60と1.04gのTWEENR40をビーカー中で一緒に混合し、温水浴で加熱してこれらの固体物質を溶融させた。26.0gのシランEを加え、機械的攪拌機で混合物を10分攪拌した。35.1gの水を加え、混合物を約10分激しく攪拌した。Giv-Gard DXN(Givaudan-Roure)(保存剤)を加えた。
実施例8〜33. 安定なエポキシシラン含有組成物の作製
実施例1〜7に記載の手順にしたがって作製した種々の量のエポキシシランエマルジョン前駆体(すなわち、成分I〜III)を、種々の量の酸変性ポリマー分散液(成分III〜IV)もしくはエマルジョン(成分II〜IV)に加えることによって、安定なエポキシシラン含有組成物を作製した。エポキシシランエマルジョン前駆体と酸変性ポリマー分散液もしくはエマルジョンとの混合物を約10分攪拌した。安定なエポキシシラン含有組成物の各成分の説明と量が表1に記載されている。
比較例I〜XLIV.
種々の量のエポキシシランA〜EおよびZと、種々の量の市販の酸変性ポリマー分散液もしくはエマルジョンとを混合することによって、エポキシシラン酸変性ポリマー分散液もしくはエマルジョンを比較例として作製した(シランの定義に関しては表1を参照のこと)。アルキルシランU〜Wおよびジエポキシ樹脂Xを使用した比較例は、実施例1〜7に記載の手順に類似の手順にしたがってアルキルシランまたはジエポキシ樹脂のエマルジョンを作製し、次いで種々の量のアルキルシランエマルジョンまたはジエポキシ樹脂エマルジョンと、種々の量の市販の酸変性ポリマー分散液またはエマルジョンとを混合することによって作製した。例えば、ジエポキシ樹脂エマルジョン前駆体は、2.44gのSPANR60と0.91gのMYRJR52Sをビーカー中に仕込むことによって作製した。攪拌しながら温水浴中で加熱することによって、固体を溶融させた。混合物に18.2gの水を加え、激しく攪拌した。3.5gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ユニオンカーバイドERL-4221)を加え、混合物を激しく攪拌して粘稠なペーストを得た。28.7gの水を加え、15分攪拌を続けて白色のエマルジョンを得た。各比較例の説明と量が表1に記載されている。
実施例34〜84. 貯蔵寿命安定性
酸変性ポリマー分散液またはエマルジョンを含有する安定なエポキシシランエマルジョン(成分I〜IV)と比較例の貯蔵寿命安定性(shelf life stability)を、作製後の種々の時間における組成物の粘度を測定することによって調べた。粘度は、組成物を含有している瓶を前後に傾けて流動性を観察することによって、あるいはブルックフィールド粘度計を使用して25℃での組成物の粘度を測定することによって調べた。組成物の安定性を表IIに示す。
これらの実施例から、組成物のpHがほぼ中性であれば、酸変性ポリマーを含有する安定なエポキシエマルジョン(成分I〜IV)は、12週間以上の期間にわたって貯蔵安定性が良好であることがわかる。例えば実施例27は、10重量%のシランAとUCARラテックス100を含有し、pH=6においては、室温にて12週間貯蔵後に1300cPの粘度を有する。比較例XXXIIIとXXXVの組成物(単に、10%のシランAとUCARラテックス100とを混合しただけ)は、それぞれ実施例38と39において示されているように粘度の増大を示した。比較例XXXIIIは、室温で12週間貯蔵後において、粘度が3000cPに増大した。比較例XXXVは12週間以内にゲル化した。
エポキシエマルジョンの貯蔵寿命が長いことは、最終用途において特性を保持する上で重要なことである。例えば、実施例24に記載の組成物は、12週間にわたって安定であり、実施例67に示すように乾燥すると、平滑な表面を有するフィルムを形成した。比較例XXVIIIは、12週間後において粘度の変化を示さなかったが、実施例68に示すように低品質のフィルムを生成した。このフィルムは、亀裂の入った表面とフィッシュアイを有していた。表面欠陥の原因は、エポキシシランが加水分解および縮合してミクロゲルやオイルを形成することにあった。
組成物のpHは、組成物の安定性に顕著な影響を及ぼすことがある。例えば、実施例22に記載の組成物は粘度が徐々に増大し、実施例75に示すように最終的には24週間後にゲル化した。粘度が増大したのは、組成物がアルカリ性であったためである。組成物のpHは8.6であった。これらの組成物は、長い可使時間が必要とされる場合は、二成分系として使用するのが有用である。
実施例32の安定性は、実施例53に示すように良くないことがわかった。シランBは水に対して幾分水溶性であり、シランのこうした水溶性により、安定なエポキシエマルジョン前駆体の作製が困難となる。実施例3に記載のエポキシシランエマルジョン前駆体は、1ヶ月以内にゲル化した。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基を変えることによってシランBの水溶性を低下させることにより、エポキシシランエマルジョン前駆体の安定性を大幅に改良することができた。例えば、実施例6に記載のシランエマルジョン前駆体は安定であった。シランDは水に対して不溶性であることに留意しなければならない。
実施例85〜11. 耐溶剤性
酸変性ポリマーを含有する安定なエポキシシランエマルジョンを使用すると、キャストしたフィルムの耐溶剤性が改良される。耐溶剤性は、メチルエチルケトン(MEK)ダブルラブ(double rubs)によって決定した。この試験は、ASTM D 4752-87にしたがって行った。フィルムは、23℃で50%相対湿度にて7日間キュアーするか、あるいは121℃で20分キュアーし、次いで23℃で50%相対湿度にて7日間キュアーした。耐溶剤性の結果を表IIIに示す。
本発明の組成物からキャストされたフィルムの耐溶剤性は、酸変性ポリマー単独からキャストしたフィルムより大幅に良好であった。例えば、実施例16にて説明されていて実施例90にて示されている組成物からキャストし、121℃で20分キュアーしたフィルムのMEKダブルラブの数は130ラブであった。実施例91に示されているように、比較例III(JONCRYL77のフィルム)はMEKの11ラブしか耐えなかった。シランAとJONCRYL77との単なる混合物(比較例VIII)は34ラブしか耐えなかった。幾つかの場合においては、エポキシシランとポリマーとの単なるブレンド(例えば比較例XI)は、実施例94に示されているような耐溶剤性フィルムを生成するが、これらの組成物の貯蔵寿命は良くない。例えば、実施例56に示されているように、比較例XIは2週間でゲル化した。
実施例112〜115. 表面摩耗抵抗
本発明の組成物をフィルムとしてキャストすると、得られたフィルムは改良された表面摩耗抵抗を有する。AATCC摩擦試験機〔アトラス・エレクトリック・デバイス社(Atlas Electric Devices Company),モデルCM-5〕を使用して表面摩耗抵抗を測定した。ドロー・ダウン・バー(draw down bar)を使用して、ボンデライト処理した冷間圧延鋼板中にフィルムをキャストし、121℃にて20分、次いで23℃にて50%相対湿度で7日間キュアーした。光沢度は、ASTM D523にしたがって測定した。これらフィルムの表面摩擦抵抗の結果を表IVに示す。本発明の組成物からキャストしたフィルムでは、新たに作製し6ヶ月エージングした組成物(実施例112と113)に対する表面摩耗抵抗が、比較例XLIVとIV(実施例114と115)からの組成物と比較して改良されていることがわかった。
116〜125.硬度−本発明の組成物から流延された塗膜は、硬度が増加したと同時に、表Vで示されたように、光沢度などの他の塗膜特性および密着性を維持した。鉛筆硬度は、ASTM D 3363-74にしたがって測定された。光沢度は、ASTM−D 523にしたがって測定された。横断テープ密着性は、ASTM 3359-90にしたがって測定された。Eコート鋼パネルに対する塗膜の湿潤密着性は、米連邦標準試験法141Bの方法6301にしたがって測定された。塗膜は、ドローバーを用いて製造された。乾燥塗膜厚みは2ミルであった。塗膜は、121℃で20分間および23℃および50%相対湿度で7日間硬化させた。
本発明の組成物の有用性の印象的な例を、充填剤入りラテックスシーラントについて示す。シーラント配合物は表VIで示される。シーラントは、UCARラテックスポリマー105およびTRITON X-405を混合容器中に入れ且つ5分間撹拌することによって製造された。NUOCEPT 95防腐剤、TRITON X-405界面活性剤および水の溶液を混合容器に加え且つ5分間撹拌した。エチレングリコール、TEMOL 850分散助剤、ASE 60増粘剤、KTPPトリポリリン酸カリウムおよびSANTICISER 160可塑剤を加え且つ高速混合プロペラを用いて混合した。ミネラルスピリット、前駆体エポキシシランエマルジョンまたはシリコーン添加剤および水酸化アンモニウムを加え且つスパチュラを用いて混合した。MOLTINI PLANAMAXミキサーを用いて混合物を窒素雰囲気下で20分間撹拌した。TiO2およびDMDEE(2,2−ジモルホリノジエチルエーテル)触媒を加え且つ5分間混合した。その混合物を減圧下で5分間ガス抜きした。シーラントをプラスチックシーラントチューブ中で貯蔵した。
シーラントを、環境室中において23℃および50%相対湿度で3週間並びに周囲条件で1週間硬化させた。硬化したシーラントの物理的性質は、ASTM D 412C(伸び率%、引張強さおよび弾性率)、ASTM 624(引裂強さ)、C-661(ショアーA硬度)およびC-794(剥離密着性)にしたがって測定された。
シーラントを50℃で4週間加熱老化させた。シーラントの物理的性質を表VIで報告する。本発明の組成物は、充填剤入りアクリルラテックス中に充分に配合された場合(実施例129)、特に、50℃で4週間老化させた後に、優れた密着性を有すると同時に、高い伸び率および低い弾性率を維持した。比較例126〜28、130〜31は、加熱老化後に不十分な密着性を有するかまたは伸び率%を劇的に減少させた。
実施例1.実施例1で製造された前駆体エポキシシランエマルジョン
W=アミルトリエトキシシラン(シランは、40グラムのアミルトリエトキシシラン、4.11グラムのスパン60および3.87グラムのトゥイーン40、および52グラムの水を混合することによって製造されたエマルジョンとして加えられた。)
Claims (8)
- 乳化剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、リン酸アルキル、アルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、第四アンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩及びジアルキジメチルアンモニウム塩からなる群より選択される請求項1に記載のエマルジョン。
- (I)エポキシシランが0.1〜30重量%で存在し、
(II)乳化剤が0.05〜30重量%で存在し、
(III)水が29.85〜99.75重量%で存在し、及び
(IV)活性水素を含む官能基を含有するポリマーが0.1〜70重量%で存在する、請求項1に記載のエマルジョン。 - 更にpH緩衝液を含む請求項3に記載のエマルジョン。
- 更に硬化触媒を含む請求項3に記載のエマルジョン。
- ポリマーがカルボン酸側鎖を有する請求項3に記載のエマルジョン。
- (I)水溶性または僅かに水溶性の下式のエポキシシラン0.05〜30重量%;
(式中、Rは(CH2)mであり、但し、mは0〜6の値を有し;
R2は、アルキル基、アルコキシで置換されたアルキル、アリールもしくはアラルキル基であり、前記基はそれぞれ、1〜10個の炭素原子を有し;
R3は、アルキル基、アルコキシで置換されたアルキル、アリールもしくはアラルキル基であり、前記基はそれぞれ、2〜10個の炭素原子を有し;
nは、0,1または2の値を有する)
(II)乳化剤0.05〜30重量%;(III)水29.85〜99.75重量%;及び(IV)活性水素を含む官能基を含有するポリマー0.1〜70重量%;を含むエマルジョンを一緒に混合することを含むコーティングまたはシーラントを製造する方法。 - 請求項3のエマルジョンから作られるコーティング。
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