JP3933482B2 - 高周波加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波加熱装置に関し、特に、加熱対象物の温度を制御するよう加熱を行なう高周波加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来から、電子レンジ等において、赤外線センサを用い、加熱室内の被加熱物等の加熱対象物の温度を検知しながら加熱を行なう技術が開示されている。そのような技術に対して、加熱の終了時に、加熱対象物の温度を、正確に目標温度にすることは、常に求められている。
【0003】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、加熱終了後の加熱対象物の温度を正確に制御できる高周波加熱装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面に従った高周波加熱装置は、被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室内の赤外線をキャッチし温度検知を行う赤外線センサと、前記加熱室の底面に設けられ、前記被加熱物が載置される底板と、高周波を発振するマグネトロンと、前記マグネトロンに接続された導波管と、前記導波管を介して供給された前記マグネトロンからの高周波を、前記加熱室の底面から拡散しつつ加熱室内に供給する回転アンテナと、前記底板の下方に配置され、前記回転アンテナを収容するアンテナ収容部と、前記被加熱物が載置されて前記加熱室内に収納されるとともに、裏面に、前記高周波を吸収して発熱する高周波発熱体を配置した加熱皿と、前記加熱室の左右壁面に形成され、前記加熱室内に収容された前記加熱皿を支持するレールと、前記回転アンテナから放射した高周波のうち、前記加熱皿の高周波発熱体に吸収されなかった高周波により前記被加熱物を直接加熱せしめるために、前記高周波発熱体と前記加熱室壁面との間に設けられた、前記高周波発熱体に吸収されなかった高周波を前記加熱皿の上方へ到達させる到達用経路と、前記赤外線センサの検知温度に基づいて前記マグネトロンの駆動を制御する制御部と、を備え、前記回転アンテナは、前記加熱室内に収容された前記加熱皿の高周波発熱体と重なるように配置され、前記制御部は、前記マグネトロンを駆動して前記加熱皿の加熱を開始した後、前記赤外線センサで前記加熱皿の温度を検知し、前記加熱皿の温度が所定の温度だけ上昇するのに要する時間を計時するとともに、前記計時した時間に基づいて前記加熱皿の温度が特定の温度に到達する時間を演算し、前記マグネトロンを前記演算した時間駆動させる予熱処理が実行可能であることを特徴とする。
【0005】
また、本発明のある局面に従った高周波加熱装置は、被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室内の赤外線をキャッチし温度検知を行う赤外線センサと、前記加熱室の底面に設けられ、前記被加熱物が載置される底板と、高周波を発振するマグネトロンと、前記マグネトロンに接続された導波管と、前記導波管を介して供給された前記マグネトロンからの高周波を、前記加熱室の底面から拡散しつつ加熱室内に供給する回転アンテナと、前記底板の下方に配置され、前記回転アンテナを収容するアンテナ収容部と、前記被加熱物が載置されて前記加熱室内に収納されるとともに、裏面に、前記高周波を吸収して発熱する高周波発熱体を配置した加熱皿と、前記加熱室の左右壁面に形成され、前記加熱室内に収容された前記加熱皿を支持するレールと、前記回転アンテナから放射した高周波のうち、前記加熱皿の高周波発熱体に吸収されなかった高周波により前記被加熱物を直接加熱せしめるために、前記高周波発熱体と前記加熱室壁面との間に設けられた、前記高周波発熱体に吸収されなかった高周波を前記加熱皿の上方へ到達させる到達用経路と、前記赤外線センサの検知温度に基づいて前記マグネトロンの駆動を制御する制御部と、を備え、前記回転アンテナは、前記加熱室内に収容された前記加熱皿の高周波発熱体と重なる部分を有し、前記制御部は、前記マグネトロンを駆動して前記加熱皿の加熱を開始した後、前記赤外線センサで前記加熱皿の温度を検知し、前記加熱皿の温度が所定の温度だけ上昇するのに要する時間を計時するとともに、前記計時した時間に基づいて前記加熱皿の温度が特定の温度に到達する時間を演算し、前記マグネトロンを前記演算した時間駆動させる予熱処理が実行可能であることを特徴とする。
【0006】
本発明の高周波加熱装置によると、加熱皿を特定の温度まで上昇させる際に、赤外線センサは、所定の温度だけ上昇することを検知すればよくなる。
【0007】
これにより、赤外線センサの検知する温度の範囲が広げられることを回避できるため、温度検知の精度を向上でき、結果として、加熱対象である加熱皿の温度を正確に制御できる。赤外線センサは、特定の温度までの検知能力を必要とされないため、高周波加熱装置に、特定の温度まで検知する能力を備えた部材を搭載する必要がなくなる。このため、電子レンジのコストダウンを図ることができる。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0046】
[1.電子レンジの構造]
図1は、本発明の一実施の形態の電子レンジの斜視図である。電子レンジ1は、主に、本体とドア3とからなる。本体は、その外郭を外装部4に覆われ、複数の脚8に支持されている。また、本体の前面には、ユーザが、電子レンジ1に各種の情報を入力するための操作パネル6が備えられている。
【0047】
ドア3は、下端を軸として、開閉可能に構成されている。ドア3の上部には、取っ手3Aが備えられている。図2に、操作パネル6の正面図、図3に、ドア3が開状態とされたときの電子レンジ1の正面図を示す。
【0048】
本体2の内部には、本体枠5が備えられている。本体枠5の内部には、加熱室10が設けられている。加熱室10の右側面上部には、孔10Aが形成されている。孔10Aには、加熱室10の外側から、検知経路部材40が接続されている。加熱室10の底面には、底板9が備えられている。
【0049】
ドア3の中央部分には、ドア3が閉状態とされていても加熱室10内部を外部から視認できるように、透明な耐熱ガラス3Bが嵌め込まれている。ドア3の、加熱室10の内側には、本体枠5と接する接触面3Dの外周とドア3本体との隙間を埋める樹脂製のチョークカバー3Cが備えられている。接触面3Dと本体枠5との隙間から漏れる高周波は、チョークカバー3Cで覆われ、ドア3内に形成されたチョーク構造(図示しない)により、加熱室10外への漏洩を防止している。
【0050】
操作パネル6には、液晶パネル等で構成され種々の情報を表示する表示部60と、調整つまみ608と、種々のキーが備えられている。調整つまみ608は、数値等、各種の情報を入力する際に使用される。
【0051】
あたためスタートキー601は、種々の調理を開始させる際に操作される。レンジ焼きキー602は、後述するように、レンジ焼き皿80によって食品を加熱させる際に操作される。お好み温度キー603は、調整つまみ608が操作されて食品を所望の温度にする調理が行なわれる際の、当該所望の温度を入力する際に操作される。
【0052】
また、電子レンジ1では、種々のメニューに従った自動調理が可能であり、キー604,605を操作することにより、その仕上りの強弱を調節できる。グリルキー606は、加熱室10内の食品をヒータ(図示略)で焦げ目付け調理をする際に操作される。脱臭キー607は、加熱室10の脱臭動作を行なわせる際に操作される。
【0053】
電子レンジ1は、加熱室10内に複数段のトレイ(または、後述するレンジ焼き皿80)を載置するように構成することができる。そして、オーブン段調整キー609は、加熱室10内でのオーブン調理を1段で行なうか2段で行なうかを入力するために操作される。発酵キー610は、パンの生地等を発酵させる際に操作される。レンジ出力キー611は、電子レンジ1で発振される高周波の出力を変更する際に操作される。解凍キー613は、冷凍食品の解凍を行なわせる際に操作されるが、2度操作されると、電子レンジ1において、冷凍された刺身の解凍のための調理が実行される。取消キー614は、入力途中のキー操作を取消す際に操作される。
【0054】
電子レンジ1では、加熱室10内に、レンジ焼き皿80(図4参照)を載置できる。そして、加熱室10内には、レンジ焼き皿80を支持するためのレール103,104,106,107が、加熱室10の内側に凸となるように、形成されている。レール103,104、レール106,107は、それぞれ、水平線上につながるように形成されている。
【0055】
レール103,104、レール106,107のそれぞれの間には、凹部101,102が形成されている。凹部101,102は、加熱室10の外側に凸となるように、形成されている。
【0056】
レール103,104,106,107および凹部101,102は、たとえば、加熱室10の壁面を構成する板金を座押しすることにより、形成できる。
【0057】
図4は、レンジ焼き皿80の斜視図である。また、図5、図6は、レンジ焼き皿80の裏面図、正面図であり、図7は、図5のVII−VII線に沿う矢視断面図である。
【0058】
以下、図4〜図7を参照して、レンジ焼き皿80の構成について説明する。
レンジ焼き皿80は、その外周に水平方向に伸びる板体である外周部80Dと、底部80Bとを有する。外周部80Dと底部80Bとは、壁部80Eでつながれている。底部80Bの外縁であって壁部80Eとの接続部分には、底部80Bの全周を囲うように、溝80Aが形成されている。
【0059】
底部80Bの裏面には、高周波発熱体81が蒸着されている。高周波発熱体とは、高周波を吸収することにより発熱する物質であり、導電性材料、より具体的には、酸化スズにモリブデンを添加した導電性材料を挙げることができる。なお、蒸着膜の厚みとしては8×10-8m程度、抵抗率は2〜6(Ω/m)程度が好ましい。なお、図5では、高周波発熱体81の表面が、ハッチングを施されて記載されている。
【0060】
レンジ焼き皿80の裏面の四隅には、それぞれ脚80Cが形成されている。図7に示すように、レンジ焼き皿80では、脚80Cの最下部、底部80Bの最下部(溝80Aの裏面に相当する部分)、高周波発熱体81の最下部の高さは、それぞれ異なり、低い方から順に、Z、Y、Xとなっている。これにより、加熱室10内で高周波発熱体81が加熱され高温となった状態でレンジ焼き皿80が加熱室10外に取出されてテーブル等の載置面に載置される場合でも、当該高周波発熱体81よりも先に、脚80Cまたは底部80Bが当該載置面に接する。これにより、当該載置面に高周波発熱体81から高熱が加えられることを回避できる。レンジ焼き皿80がこのように構成されることにより、たとえレンジ焼き皿80が図3のように開状態にされたドア3上に載置された場合でも、高温の高周波発熱体81がチョークカバー3Cと接して当該チョークカバー3Cが溶解した結果、接触面3Dと本体枠5との隙間が広がることにより、加熱室10内の高周波が漏洩することを回避できる。
【0061】
また、高周波発熱体81は、図5に示すように、外周部80Dの端部から距離W以上離れ、かつ溝80Aより内側の位置に蒸着されている。高周波を効率良く加熱皿80上の送るために、距離Wは、加熱室10内に供給される高周波の波長をλとした場合、λ/4(波長の1/4)以上とされることが好ましい。つまり、電子レンジ1で、高周波としてマイクロ波が発振される場合には、距離Wは、およそ3cm以上とされることが好ましい。なお、距離Wを5cmとした場合には、マグネトロン12から供給された高周波のうち、約75%〜80%が高周波発熱体81に吸収され、約20%〜25%がレンジ焼き皿80を透過して当該レンジ焼き皿80の上方に送られる。
【0062】
図8は、図1のVIII−VIII線に沿う矢視断面図である。なお、便宜上、図8では一部の部材を省略している。
【0063】
検知経路部材40の一端には、赤外線センサ7が取付けられている。赤外線センサ7は、孔10Aを介して、加熱室10内の赤外線をキャッチする。外装部4の内部には、加熱室10の右下に隣接するように、マグネトロン12が備えられている。また、加熱室10の下方には、マグネトロン12と本体枠5の下部を接続させる導波管19が備えられている。また、本体枠5の底部と底板9の間には、回転アンテナ21が備えられている。導波管19の下方には、アンテナモータ16が備えられている。回転アンテナ21は、軸15でアンテナモータ16と接続され、アンテナモータ16が駆動することにより回転する。
【0064】
加熱室10内では、底板9上に、または、レンジ焼き皿80上に、被加熱物である食品が載置される。レンジ焼き皿80は、レール103,104,106,107上に外周部80Dを支持された状態で、加熱室10内に収容される。
【0065】
マグネトロン12の発振する高周波は、導波管19を介し、回転アンテナ21によって攪拌されつつ、加熱室10内に、当該加熱室10の底面から、供給される。これにより、加熱室10内の食品が加熱される。
【0066】
図8では、加熱室10内に供給された高周波の流れが、白抜きの矢印で示されている。また、矢印の大きさは、高周波の電界強度を模式的に示している。加熱室10内に供給された高周波は、高周波発熱体81に吸収される。これにより、高周波発熱体81が加熱され、当該高周波発熱体81から熱を供給されて、レンジ焼き皿80上の食品が加熱される。なお、この場合の高周波の流れは、図8の高周波発熱体81の下方の大きい矢印で図示されている。
【0067】
また、加熱室10内に供給された高周波は、レンジ焼き皿80の外端縁部を透過して、または、レンジ焼き皿80と凹部101,102の壁面との間を通って、当該レンジ焼き皿80の上方に到達する。これにより、レンジ焼き皿80上の食品は、直接高周波を供給されて加熱される。なお、この場合の高周波の流れは、図8のレンジ焼き皿80の外縁端部の上下に大きい矢印で図示されている。
【0068】
本実施の形態では、加熱室10内のレンジ焼き皿80より下方の部分と、高周波発熱体81の蒸着されていないレンジ焼き皿80の外縁端部(底部80Bの外縁部、外周部80D、壁部80Eを含む部分)、または、凹部101,102とにより、導波管から加熱室内に導入された高周波を高周波発熱体を介さず加熱皿(レンジ焼き皿80)の上方に到達させる到達用経路が構成されている。なお、距離W(図5参照)がλ/4以上とされることにより、到達用経路において高周波の進行方向に交わる方向の寸法が、λ/4以上とされる。
【0069】
また、図8において、レンジ焼き皿80の中央部上方には、熱に変換されず高周波発熱体81を透過した一部の高周波が、小さい矢印で示されている。さらに、加熱室10の上下にはヒータが備えられている(上方にはグリルヒータ51、下方には下ヒータ52)が、図8では省略している。
【0070】
なお、本実施の形態では、レール103,104、レール106,107というように、レンジ焼き皿80を下方から支持するレールが、加熱室10内の右面および左面においてそれぞれ間隔を設けて備えられた複数の部材により構成されている。これにより、レール103とレール104、または、レール106とレール107が、つなげられて、加熱室10内で手前側から奥の方まで伸びる一本のレールとして構成される場合と比較して、加熱室10の内壁面とレンジ焼き皿80の端部との間に隙間が多くなるため、レンジ焼き皿80の上方に高周波を送りやすくなる。
【0071】
また、凹部101内にはマイクロ波拡散用凸部101A,凹部102内にはマイクロ波拡散用凸部102Aが設けられている。凸部101A,102Aは、凹部101,102内を通過する高周波をレンジ焼き皿80の情報に拡散させる機能を有している。
【0072】
[2.電子レンジの電気的構成]
図9に、電子レンジ1の電気的構成を模式的に示す。電子レンジ1は、当該電子レンジ1の動作を全体的に制御する制御回路30を備えている。制御回路30は、マイクロコンピュータを含む。
【0073】
電子レンジ1では、外部の商用電源41からの交流電圧が、整流ブリッジ42で整流された後、チョークコイル43と平滑コンデンサ44とで直流電圧に変換される。整流ブリッジ42,チョークコイル43および平滑コンデンサ44により、商用電源41の交流電圧を整流する整流装置45が構成されている。
【0074】
スイッチング素子46はIGBT(insulator gate bipolar transistor)からなり、そのコレクタ・エミッタ間には並列にフリーホイールダイオード47および共振コンデンサ48が接続されて共振型スイッチング回路が構成されている。高周波トランス54は、一次巻線55,二次巻線56およびヒータ用巻線57を備えている。この高周波トランス54の一次巻線55を介して、入力直流電圧が、スイッチング素子46のコレクタに供給されている。スイッチング素子46は、駆動回路58からの駆動信号によりオン・オフされ、入力直流電圧が周期的にスイッチングされて高周波に変換されるようになっている。スイッチング素子46,フリーホイールダイオード47および共振コンデンサ48により、周波数変換装置49が構成されている。駆動回路58によるスイッチング素子46の駆動タイミングは、制御回路30により制御される。
【0075】
高周波トランス54の二次巻線56には、倍電圧整流用コンデンサ32および倍電圧整流用ダイオード34から構成される倍電圧整流回路が接続され、この倍電圧整流回路で、高周波トランス54の二次巻線56に発生する高周波電圧が倍電圧整流されて、直流高電圧が得られるようになっている。倍電圧整流回路により、マグネトロン12のアノード33とカソード(該カソードを加熱するヒータも兼用、以下ヒータというときもカソードと同符号を用いる)35との間にアノード電力を供給する駆動電源部が構成される。マグネトロン12に供給される電流は、電流トランス37によって検知され、この検知信号は制御回路30に入力される。なお、マグネトロン12はアノード33側がアースになっており、ヒータ用巻線57からのヒータ電圧は、マグネトロン12のヒータ35に供給されている。
【0076】
また、電子レンジ1では、ドアスイッチ3Xが備えられている。ドアスイッチ3Xは、ドア3が開かれると当該回路を開き、ドア3が閉じられると当該回路を閉じる。これにより、ドア3が開かれたときには、商用電源41からマグネトロン12への電力の供給が不可能となる。したがって、ドアスイッチ3Xが備えられていることにより、ドア3が開いているにも拘わらず、マグネトロン21がマイクロ波を発振する事態を回避できる。
【0077】
電子レンジ1は、さらに、加熱室10内の照明となる庫内灯53、および、加熱室10内の温度を検知するオーブンサーミスタ59を備える。制御回路30は、キー入力部601〜614(操作パネル上の調整つまみ608および種々のキー)に対してなされた操作内容、ならびに、赤外線センサ7およびオーブンサーミスタ59の検知出力を入力され、回転アンテナ21の回転動作を制御し、また、表示部60の表示内容を制御する。また、制御回路30は、グリルヒータ51、下ヒータ52、および、庫内灯53の動作を、適宜、リレーを駆動させることにより制御する。
【0078】
[3.電子レンジの加熱室の変形例]
図10に、本実施の形態の電子レンジ1の加熱室10の第1の変形例を示す。なお、図10は、図8の中の、本体枠5およびその周辺部の変形例を示す図に相当する。この変形例における、図8等に示した例からの主な変更点は、加熱室10内のレンジ焼き皿80用のレールが、4段分設けられている点である。
【0079】
図10では、加熱室10に、上から、レール111,112、レール113,114、レール115,116、レール117,118の4段のレールが示されている。そして、図10では、レンジ焼き皿80は、その最上段のレール111,112に外周部80Dを当接させた、加熱室10内で設定される最も高い位置に配置されている状態が、記載されている。
【0080】
図10では、加熱室10内部には、上部に、グリルヒータ51が示され、さらに、ヒータ51の放射する熱が実線の矢印で、マグネトロン12の発振する高周波が破線の矢印で示されている。本変形例でも、図8を用いて説明したように、加熱室10の底面から供給された高周波は、高周波発熱体81に吸収されると共に、レンジ焼き皿80の外縁端部を透過して当該レンジ焼き皿80の上方で導かれる。
【0081】
図10に示したような例では、レンジ焼き皿80上の食品は、高周波発熱体81によって表面を加熱されると共に、高周波を直接吸収することによって中身を加熱され、さらに、グリルヒータ51により加熱されると共に表面に焦げ目をつけることができる。
【0082】
図11は、電子レンジ1の加熱室10の第2の変形例を示す図である。なお、図11は、加熱室10の内部とドア3との位置関係を示すために、電子レンジ1の右側面図であって、本体の右側面を省略した状態を示している。
【0083】
本変形例の加熱室10壁面には、レール103,104の上方に、レール108が形成されている。なお、図11では省略しているが、加熱室10の壁面には、レール108と対向する位置にレール109(図25のレール109と同様)が形成されている。レンジ焼き皿80は、レール108とレール109によって、加熱室10内で支持されることができる。
【0084】
また、本変形例では、レール104の下方であって、加熱室10の奥の方に、凸部121が形成されている。なお、図11では省略しているが、加熱室10の壁面には、凸部121と対向する位置に凸部122(図12および図13を参照)が形成されている。
【0085】
凸部121,122は、加熱室10内に金属製の皿が収納されることがある場合であって、マグネトロン12がマイクロ波を発振する際に、レンジ焼き皿80は載置されても良いが当該金属製の皿は載置されては好ましくない場所に対して、当該場所に、金属製の皿(ホーロー皿100)が載置されたときのみマグネトロン12のマイクロ波の発振を禁止するために、形成されている。なお、本変形例では、このような場所として、底板9上であって底板9から近い距離(1cm以内)にある場所が挙げられる。金属製の皿が底板9に近い距離に載置されたまま、マイクロ波が回転アンテナ21を介して加熱室10に供給されると、回転アンテナ21とホーロー皿100との間で放電が起こり、危険だからである。
【0086】
なお、ホーロー皿100とは、ヒータ(グリルヒータ51、下ヒータ52)によってのみ加熱を行なうオーブン調理の際に、食品が載置される皿であり、板金が琺瑯でコーティングされることにより構成される。
【0087】
図12,図13は、図11に示した電子レンジ1の本体部分の、凸部121,122が存在する高さでの、横断面を模式的に示す図である。
【0088】
まず、図12を参照して、レンジ焼き皿80が底板9上に載置された場合、凸部121,122は、レンジ焼き皿80の角と加熱室10の壁面との間に位置する。つまり、レンジ焼き皿80は、加熱室10内に、凸部121,122の存在する高さと同じ高さであっても、収納可能とされる。
【0089】
一方、図13を参照して、上記した金属製の皿であるホーロー皿100が底板9上に載置された場合、当該ホーロー皿100は、その角が凸部121,122と当接するとそれ以上加熱室10の奥には進めない形状とされている。つまり、ホーロー皿80は、加熱室10内では、凸部121,122の存在する高さと同じ高さでは、収納されない。そして、このような場合、図11に示すように、ホーロー皿100によりドア3が閉じることを阻害される。ドア3が閉じなければ、上述したように、ドアスイッチ3Xが図9に示した回路を開くため、マグネトロン12がマイクロ波を発振することができない。
【0090】
つまり、本変形例では、凸部121,122が形成されること、および、レンジ焼き皿80とホーロー皿100とで角の形状が異なることから、加熱室10内で、凸部121,122と同じ高さに、レンジ焼き皿80は収納できでも、ホーロー皿100は収納できないよう、構成されている。なお、レンジ焼き皿80は、加熱室10内のどの高さに収容されようとも、図11のホーロー皿100のように凸部121,122に遮られて奥まで収容されることができなくなることはない。
【0091】
また、図12に示すように、レンジ焼き皿80は、加熱室10内に、奥行き方向にL1の寸法を有し、幅方向にL2(>L1)の寸法を有した状態で、収納される。
【0092】
さらに、加熱室10の最前部10Xに対して、距離Kだけ隙間を有している。これにより、レンジ焼き皿80が加熱室10内に収納されて、ドア3が閉じられた場合でも、レンジ焼き皿80とドア3の間には距離K以上の隙間が生じることになる。したがって、ドア3が閉じられた状態でも、レンジ焼き皿80より下方の空気やマイクロ波が、レンジ焼き皿80の上方に送られやすい。
【0093】
この変形例では、凸部121,122が形成されることにより、加熱室10内でマグネトロン12にマイクロ波を発振させる際に、レンジ焼き皿80は設置可能であるが、ホーロー皿100は設置不可能である場所が存在することになった。つまり、凸部121,122により、本発明の第2の凸部が構成されている。
【0094】
また、加熱室10を、レンジ焼き皿80がマイクロ波を発振させる際に好ましくない場所に設置された場合に、マグネトロン12のマイクロ波の発振を回避するよう、構成することもできる。このような変形例(第3の変形例)を、図14〜図16を参照しつつ説明する。
【0095】
図14は、図11と同様の部材が省略された、電子レンジ1の右側面図である。本変形例では、図12に示した変形例における凸部121,122が、加熱室10において手前側に移動した、凸部121A,122A(図15参照)と変更されている。図15および図16は、図14の電子レンジ1の本体部分の、凸部121A,122Aが存在する高さでの、横断面を模式的に示す図である。
【0096】
図15を参照して、凸部121A,122Aが、凸部121,122(図12参照)よりも加熱室10内で手前側に位置することにより、凸部121A,122Aと同じ高さでレンジ焼き皿80を収納させようとすると、凸部121A,122Aに遮られて、レンジ焼き皿80が加熱室10の奥まで入りきらず、ドア3が閉じるのを阻害する。なお、この変形例では、ホーロー皿100についても、凸部121A,122Aと同じ高さで収納させようとすると、凸部121A,122Aに遮られて、加熱室10の奥まで入りきらず、ドア3が閉じるのを阻害する。
【0097】
なお、上述したように、レンジ焼き皿80では、L1<L2であるため、図16に示すように、図15に示した状態からレンジ焼き皿80を90°回転させることにより、レンジ焼き皿80は、凸部121A,122Aに当接することなく、加熱室10内に入る。したがって、このような場合のために、加熱室10内の後面には、凸部123,124が形成されることが好ましい。これにより、レンジ焼き皿80が好ましくない高さに収納された状態で、ドア3が閉じられ、加熱室10内にマイクロ波が供給されることを、確実に回避できる。
【0098】
なお、加熱室10の奥行き方向の寸法は、図12から「L1+K」となる。したがって、図16に示した状態で、レンジ焼き皿80によりドア3が閉じるのを阻害するために、凸部123,124は、加熱室10の後面から「L1+K−L2」よりも長い距離だけ突出している必要がある。
【0099】
次に、電子レンジ1の、第4の変形例について説明する。本変形例では、図17に示すように、回転アンテナ21の外周に、反射板501〜504(501,502については図19参照)が備えられている。図17は、図8の断面図に相当する断面図である。
【0100】
本変形例では、後述するように、回転アンテナ21の外周に、反射板501〜504が備えられることにより、回転アンテナ21を介して加熱室10の底面から加熱室10に供給されるマイクロ波が、加熱室10の壁面付近に流れることを抑制し、効率良く、高周波発熱体81に吸収される。これにより、レンジ焼き皿80上では、図18に示すように、加熱むらがなくなる。
【0101】
図18は、マグネトロン12に3分間マイクロ波を発振させた際の、レンジ焼き皿80上の温度分布を示す図であり、(A)は、反射板501〜504が備えられた場合、(B)は、反射板501〜504が備えられていない場合をそれぞれ示す。
【0102】
図18(B)では、レンジ焼き皿80の四隅には300℃近い高温に達した部分があるのに対し、レンジ焼き皿80の中央付近は100℃程度までしか上昇していない。これに対し、図18(A)では、レンジ焼き皿80の中央部分と四隅にやや高温の部分が見られるが、ほぼ全域が150℃以上、また、多くの部分が175℃以上となっている。つまり、反射板501〜504が設けられることにより、レンジ焼き皿80上の加熱むらが解消される。
【0103】
次に、反射板501〜504の構造等について、図19および図20を参照して、詳細に説明する。図19は、図17の、F−F線に沿う矢視断面図であり、図20は、反射板501の斜視図である。
【0104】
加熱室10の下部には、底板9を収容する底板収容部92と、底板収容部92の下方に位置し回転アンテナ21を収容するアンテナ収容部91とが備えられている。アンテナ収容部91の、マイクロ波の進行方向に交わる面(図19に示したF−F線に沿う断面を含む面)についての形状は、図19に示すように、四角形の角が丸められた形状とされている。
【0105】
反射板501は、断面がL字型の板状形状を有し、反射板502〜504も同様の構造を有している。反射板501〜504は、マイクロ波を反射する材料からなる。また、反射板501〜504は、そのような材料をコーティングされることにより構成されてもよい。
【0106】
反射板501〜504は、上記した四角形の丸められた角部分と回転アンテナ21との間に、配置されている。反射板501〜504の配置された場所は、回転アンテナ21の端面と、アンテナ収容部91の壁面との距離が最も長い場所を含む。なお、回転アンテナ21の端面と、アンテナ収容部91の壁面との距離について、最も長いものの一例が図19内のQ1であり、最も短いものの一例が図19内のQ2である。そして、反射板501〜504がこのような場所に配置されることにより、回転アンテナ21を介して加熱室10内に供給されるマイクロ波が、加熱室10の壁面付近に拡散することを防ぐことができる。これにより、図18を用いて説明したように、加熱室10の壁面部分に多くマイクロ波が供給されることを抑制し、レンジ焼き皿80上の加熱むらを抑制できる。
【0107】
なお、反射板501〜504は、回転アンテナ21よりも、マイクロ波の進行方向について先まで延在している。具体的には、図17において、マイクロ波の進行方向は上方向と考えられ、かつ、反射板501〜504の高さはH1、回転アンテナ21の高さはH2(<H1)となり、反射板501〜504は回転アンテナ21よりも高い場所まで存在している。これにより、反射板501は、確実に、回転アンテナ21を介して加熱室10に導かれるマイクロ波を、横方向への拡散を抑制し、上方に導くことができる。
【0108】
なお、反射板501〜504を設ける代わりに、アンテナ収容部91の壁面の構造を図21または図22に示すように変更することも考えられる。
【0109】
図21では、アンテナ収容部91の断面が円とされている。また、図22では、アンテナ収容部91の断面が多角形(八角形)とされている。このように、アンテナ収容部91の断面が円または多角形とされることにより、回転アンテナ21の端面とアンテナ収容部91の壁面との距離を、より縮め、回転アンテナ21を介して供給されるマイクロ波が加熱室10の壁面付近に多く進行することを回避できる。
【0110】
また、反射板501〜504が備えられ、さらに、回転アンテナ21の周囲に下ヒータ52が備えられた場合の変形例について図23および図24を参照して説明する。図23は図17の変形例に相当し、図24は図19の変形例に相当する。下ヒータ52は、アンテナ収容部91内で、固定部材52Aにより固定されている。
【0111】
そして、図23および図24に示すように、反射板501〜504は、回転アンテナ21の外側であって、下ヒータ52の内側に備えられる。これにより、反射板501〜504が備えられた部分では、回転アンテナ21を介して加熱室10に供給されるマイクロ波が、下ヒータ52で拡散される前に、反射板501〜504によって、上方に送られる。これにより、マイクロ波が、より正確に、送るべき方向に送られる。
【0112】
次に、レンジ焼き皿80の加熱室10内での高さが変更可能な場合に、レンジ焼き皿80の高さに合わせたモードでマイクロ波加熱を行なう変形例について説明する。
【0113】
図25は、電子レンジ1が、加熱室10でレンジ焼き皿80を上下2段に収納可能とされる、第5の変形例を示す図であり、上記の本実施の形態の電子レンジ1の図8に相当する図である。
【0114】
加熱室10には、レンジ焼き皿80を支持するために、レール103,104,106,107の上方に、レール108,109を備えている。レール109は、レール108(図11に示したものと同じ)と左右対象の形状を有している。本変形例では、レンジ焼き皿80は、レール103,104,106,107に支持されることにより(図25において実線で示す状態)、下段に収納され、レール108,109に支持されることにより(図25において破線で示す状態)、上段に収納される。なお、図25中の寸法HC(アンテナ収容部91の底面から回転アンテナ21までの距離)は10mmとされ、寸法HB(回転アンテナ21から底板9までの距離)は15mmとされ、寸法HA(底板9から下段に設置されたレンジ焼き皿80までの距離)はマイクロ波の波長の1/8の長さとされている。
【0115】
マイクロ波による加熱が行なわれる際、レンジ焼き皿80における加熱モードは、底板9(前記加熱室内で被加熱物を載置できる最も低い面)からの距離によって異なる。
【0116】
そして、基本的には、食品を載置されたレンジ焼き皿80は、底板9から、マイクロ波の波長の1/8以上離れた位置に収納されるのが好ましい。これにより、レンジ焼き皿80上における加熱むらを抑えることができる。
【0117】
また、回転アンテナ21の回転を停止させて、所定時間加熱室10にマイクロ波が供給された際のレンジ焼き皿80上の温度分布として、図26に、レンジ焼き皿80が上段に収納された場合のものを、図27に、レンジ焼き皿80が下段に収納された場合のものを示す。なお、図26と図27では、レンジ焼き皿80の収納位置以外は、すべて同じ状態でマイクロ波の供給が行なわれている。また、図26および図27では、温度帯毎に異なるハッチングが施されている。
【0118】
図26では、レンジ焼き皿80の中央部分が主に加熱され、その周囲との温度差が目立つのに対し、図27では、中央部分付近が比較的温度が高くなっているものの、図26と比較して、大きく、加熱むらが抑えられている。
【0119】
そして、本変形例では、レンジ焼き皿80が上段に収納された場合、回転アンテナ21を予め定められた停止位置で停止させてマイクロ波の供給を行なうことにより、加熱むらを抑えている。つまり、本変形例では、レンジ焼き皿80の収納される位置に応じた位置で回転アンテナ21の回転を停止させることにより、レンジ焼き皿80の収納される位置に応じて当該レンジ焼き皿80上で加熱むらが生じないようにマイクロ波を供給するモードを変更している。
【0120】
回転アンテナ21の回転の停止位置に応じて、加熱室10内でのマイクロ波の供給されるモードが変化するのは、回転アンテナ21の構造に起因する。図28に、回転アンテナ21の平面図を示す。
【0121】
回転アンテナ21は、金属からなる円盤であるが、その複数箇所がくりぬかれた構造を有している。中央部分の孔210が、軸15に嵌め込まれ、回転中心とされている。また、回転アンテナ21には、孔210から短冊状に伸びる第1の部分211が備えられている。第1の部分211は、その幅W1が35mmとされていることから、第1の部分211上を矢印M方向に進むマイクロ波の漏れが極力抑えられている。なお、第1の部分211の長さW2は65mmとされている。これにより、第1の部分211のM方向の先端および領域213から、比較的強くマイクロ波を放出できる。
【0122】
また、回転アンテナ21には、孔210から第1の部分211と反対側に扇状の切抜きがなされている。なお、孔210から切抜き部分までの距離W3は45mmとされていることから、領域212A,212Bからのマイクロ波の放出が抑えられている。扇状の切抜きの中央部には第2の部分212が、回転アンテナ21の中央部分と外周部分とをつなぐ橋のように存在している。これにより、回転アンテナ21の外周部分からのマイクロ波の放出が促進される。
【0123】
回転アンテナ21が上記のように構成されるため、回転アンテナ21の停止位置に応じて、加熱室10でマイクロ波が供給されるモードが変化し、これにより、レンジ焼き皿80における加熱モードが変化する。
【0124】
加熱室10内では、レンジ焼き皿80は下段に収納されることが好ましい。しかしながら、調理メニューによっては、たとえば、加熱室10の上部に備えられたグリルヒータ51による加熱とマイクロ波による加熱とを組合せた調理が行なわれる場合等、上段に収納される場合がある。そして、本変形例では、調理メニューに応じて、レンジ焼き皿80の収納位置を表示部60に表示することによりユーザに指示し、そして、当該収納位置に応じた停止位置で回転アンテナ21を停止させてマイクロ波を供給している。たとえば、下段にレンジ焼き皿80が載置される調理メニューでは図29のように回転アンテナ21を停止させてマイクロ波を供給し、下段にレンジ焼き皿80が載置される調理メニューでは図30のように回転アンテナ21を図29の状態から時計方向に90°回転させた状態で停止させてマイクロ波を供給する。
【0125】
[4.レンジ焼き皿の変形例]
次に、本実施の形態の電子レンジ1におけるレンジ焼き皿80の変形例について説明する。まず、第6の変形例について説明する。
【0126】
上記した第5の変形例等で示したように、電子レンジ1では、レンジ焼き皿80が加熱室10内で収納される高さを変更可能とされている。また、図26および図27を用いて説明したように、レンジ焼き皿80の収納される高さが変更されると、レンジ焼き皿80における温度分布が変化する。このような、レンジ焼き皿80の収納される高さに応じて高周波発熱体81を蒸着させる面積を変化させることにより、レンジ焼き皿80における温度分布の変化を抑えることができる。具体的には、レンジ焼き皿80において高周波発熱体81が蒸着される面積(以下、蒸着面積と記述)は、レンジ焼き皿80の収納される高さ(底板9との距離)が加熱室10に供給されるマイクロ波の波長の1/8となる場合には、回転アンテナ21の水平方向の面積と同じ面積とされることが好ましい。
【0127】
また、レンジ焼き皿80の収納される高さがマイクロ波の波長の1/8よりも高くなるほど、当該蒸着面積は回転アンテナ21の水平方向の面積よりも大きくなる(図31参照)ことが好ましく、1/8よりも低くなるほど、当該蒸着面積は回転アンテナ21の水平方向の面積よりも小さくなる(図32参照)ことが好ましい。
【0128】
なお、図31および図32は、本変形例におけるレンジ焼き皿80の裏面図である。また、図31では、回転アンテナ21の位置は、高周波発熱体81と重なっており、一点破線ANで示され、白く塗りつぶされている。図31では、高周波発熱体81の存在面積(上記した蒸着面積)は、回転アンテナ21の面積よりも大きくなっている。一方、図32では、回転アンテナ21の位置は、一点破線ANで示され、高周波発熱体81と重なる部分は高周波発熱体81を示すハッチングで塗りつぶされている。図32では、高周波発熱体81の存在面積は、回転アンテナ21の面積よりも小さくなっている。
【0129】
次に、本実施の形態の第7の変形例を説明する。図33は、本変形例のレンジ焼き皿80の裏面図である。また、図34は、図33のE−E線に沿う矢視断面図である。本変形例のレンジ焼き皿80では、裏面に深さ5mm程度の凹凸が形成され、当該裏面の凹凸に沿うように高周波発熱体81Aが蒸着されている。また、表面には、裏面の凹凸における凸部分に対応する場所にのみ、高周波発熱体81B〜81Gが蒸着されている。表面に食品が載置されることにより、お好み焼き等一般的に鉄板で調理されるような食品に適した調理が実現できる。なお、図34では、高周波発熱体81B〜81Gが蒸着されている面にも凹凸があるように見えるが、高周波発熱体81A〜81Gの蒸着膜の厚みは、高周波発熱体81と同様に、8×10-8m程度とされるため、実際に使用される際に凹凸はほとんど認識されない。
【0130】
また、図35に、図34のレンジ焼き皿80の表裏をひっくり返した状態を示す。図35に示す状態では、凹凸のある面(高周波発熱体81Aが蒸着された面)に食品が載置される。凹凸のある面に食品が載置されることにより、焼肉等、脂ものの加熱調理に適した調理が実現できる。食品自体は凹凸の凸部分で支持され、加熱の際に食品から出る脂は、食品から凹凸の凹部分に溜まり分離されるからである。
【0131】
また、レンジ焼き皿80の凹凸のある面の反対の面では、凹凸における凸部分に対応する場所にのみ高周波発熱体81B〜81Gが蒸着されているのは、凹凸のある面では食品と接する凸部分のみが高温となる必要があるからである。つまり、無駄な部分に高周波発熱体が蒸着されるのが回避されているとともに、高温となる必要のない場所が高温となることも回避されている。
【0132】
以上説明したように、レンジ焼き皿80の表裏で異なるパターンで高周波発熱体が蒸着されることにより、レンジ焼き皿80の表裏で異なる態様の調理が可能となる。
【0133】
また、本実施の形態では、高周波発熱体81,81A〜81Gの抵抗率は、その厚みを調整することにより、2〜6(Ω/m)程度とされるのが好ましい。このことを、図36を参照して説明する。図36は、レンジ焼き皿80において高周波発熱体として酸化スズにモリブデンを添加した導電性材料が使用された際に、加熱室10にマイクロ波が供給されたときの、高周波発熱体の抵抗率と、レンジ焼き皿80が反射する電界強度および透過する電界強度との関係を示す図である。
【0134】
図36から、高周波発熱体の抵抗率が2〜6(Ω/m)程度のとき、レンジ焼き皿80が反射するマイクロ波の電界強度とレンジ焼き皿80が透過するマイクロ波の電界強度とが同量となる。したがって、このようなときに、レンジ焼き皿80を用いた加熱調理が効率的なものとなる。
【0135】
[5.電子レンジにおける加熱調理処理の一例]
図37〜図53を参照して、本実施の形態の電子レンジ1における加熱調理処理を説明する。まず、加熱調理処理のフローチャートである図37および図38に基づいて説明する。
【0136】
制御回路30は、S1で、初期設定を行なった後、S2で、レンジ焼き皿80によって食品を加熱させる調理であって予熱温度と調理時間を手動で入力する、手動のレンジ焼き調理が選択されたか否かを判断する。なお、この判断は、具体的には、レンジ焼きキー602が所定時間内に2回押されたか否かを判断することによりなされる。そして、手動のレンジ焼き調理が選択されたと判断すると、S3で、ユーザが調整つまみ608を用いて入力したように予熱温度と調理時間を設定し、処理をS5に進める。なお、レンジ焼き調理では、マグネトロン12によるマイクロ波加熱に対して、2つのステージが設定されている。この2つのステージを、第1ステージ、第2ステージと呼ぶ。そして、S3では、入力された調理時間を予め定められた態様で処理することにより、第1ステージと第2ステージのそれぞれの調理時間が設定される。なお、第1ステージから第2ステージに移行するとき、後述するように、一旦ブザー報知がなされ、ユーザに対して、レンジ焼き皿80上の食品を裏返すよう、指示がなされる。
【0137】
一方、S2で手動のレンジ焼き調理が選択されなかったと判断すると、S4で、レンジ焼き皿80によって食品を加熱させる調理であって予熱温度と調理時間が自動的に決定される、自動のレンジ焼き調理が選択されたか否かを判断する。なお、この判断は、具体的には、レンジ焼きキー602が所定時間内に1回だけ押されたか否かを判断することによりなされる。そして、自動のレンジ焼き調理が選択されたと判断すると、そのまま、処理をS5に進める。なお、S4で、自動のレンジ焼き調理が選択されなかったと判断すると、処理をS12に進める。
【0138】
なお、自動のレンジ焼き調理が選択された際にS3での予熱温度と調理時間の設定が省略されるのは、自動のレンジ焼き調理では予熱温度と調理時間とが予め定められているからである。
【0139】
S5では、制御回路30は、加熱スタートのための操作(あたためスタートキー601の押圧)がなされるのを待って、処理をS6に進める。
【0140】
S6では、制御回路30は、マグネトロン12の駆動を開始し、そして、S7で、予熱処理を行なう。これにより、レンジ焼き皿80の高周波発熱体81(81A〜81G)が加熱され、レンジ焼き皿80に予熱が与えられる。
【0141】
S7の予熱処理が終了すると、制御回路30は、S8で、マグネトロン12の駆動を停止し、予熱処理が終了したことをブザー等により報知する。そして、S9で、加熱スタートのための操作を待って、処理をS10に進める。なお、S8における予熱処理の終了の際には、レンジ焼き皿80が高温である旨の報知もなされる。レンジ焼き皿80は比較的短時間で高温となるため、ユーザに、レンジ焼き皿80が高温であることを十分に認識させるためである。
【0142】
S10で、制御回路30は、レンジ焼き調理処理を実行し、それが終了すると、S11でそれを報知して、S2に処理を戻す。
【0143】
一方、S12で、制御回路30は、グリルヒータ51とレンジ焼き皿80とによって食品を加熱させる調理であって調理時間が手動で入力される、手動の両面焼き調理が選択されたか否かを判断する。なお、この判断は、具体的には、グリルキー606が所定時間内に2回押されたか否かを判断することによりなされる。そして、手動の両面焼き調理が選択されたと判断すると、S13で、ユーザが調整つまみ608を用いて入力したように調理時間を設定し、処理をS19に進める。なお、手動の両面焼き調理および後述する両面焼き調理では、マグネトロン12によるマイクロ波加熱である第1ステージと、グリルヒータ51による加熱である第2ステージという、2つのステージが設定されている。
【0144】
一方、S12で手動のレンジ焼き調理が選択されなかったと判断すると、S14で、グリルヒータ51とレンジ焼き皿80とによって食品を加熱させる調理であって調理時間が自動的に決定される、自動の両面焼き調理が選択されたか否かを判断する。なお、この判断は、具体的には、グリルキー606が所定時間内に1回だけ押されたか否かを判断することによりなされる。そして、自動の両面焼き調理が選択されたと判断すると、S15で、調理コースに対応した調理時間(第1ステージ、第2ステージ、それぞれの調理時間)を読み出して設定し、S19に処理を進める。なお、調理コースとは、自動の両面焼き調理が選択された後に、ユーザが、操作パネル6において調整つまみ608を回転させて選択した調理コース番号に対応するコースである。
【0145】
S19では、制御回路30は、加熱スタートのための操作(あたためスタートキー601の押圧)がなされるのを待って、処理をS20に進める。
【0146】
S20では、制御回路30は、S13またはS15で設定された調理時間から予熱時間を算出し、S21に処理を進める。なお、予熱時間の算出は、予め定められた態様に従って行なわれる。なお、予熱時間は、調理時間が5分未満であれば予熱時間は3分、調理時間が5分以上10分未満であれば予熱時間は5分というように、調理時間が長くなるほど長くなるように算出される。
【0147】
S21では、制御回路30は、マグネトロン12の駆動を開始し、そして、S22で、予熱時間が経過したと判断すると、S23で、マグネトロン12の駆動を停止し、S24で、予熱処理が終了したことをブザー等により報知する。そして、S25で、加熱スタートのための操作を待って、処理をS26に進める。
【0148】
S26で、制御回路30は、両面焼き調理処理を実行し、それが終了すると、S27でそれを報知して、S2に処理を戻す。
【0149】
一方、S16で、制御回路30は、その他の調理が選択されたか否かを判断する。その他の調理とは、たとえば、解凍キー613が押されることによる解凍調理である。そして、そのような調理が選択されたと判断すると、S17で、ユーザが入力したように調理時間を設定し、S18で、当該調理時間だけ調理を行なった後、処理をS2に戻す。一方、S16でそのようなその他の調理が選択されていないと判断すると、そのままS2に処理を戻す。
【0150】
次に、図39〜図50を参照して、予熱処理について説明する。図39は、S7の予熱処理のサブルーチンのフローチャートである。
【0151】
予熱処理では、制御回路30は、まず、S701で、カウンタtのカウントをスタートさせる。
【0152】
次に、S702で、出力設定A処理を実行する。出力設定A処理の内容を、図40を参照して説明する。
【0153】
出力設定A処理では、制御回路30は、まず、S7020で、インバータ(周波数変換回路49)の温度Tiを検知する。
【0154】
次に、S7021で、後述するタイマtaがカウント中であるか否かを判断する。なお、タイマtaとは、後述する予熱制御A処理において、Tcave(その検知温度が予熱制御における対象とされる赤外線素子の検知した、走査範囲内での平均温度)がTcave1(所定の温度)からTcave2(Tcave1よりも高い所定の温度)まで変化するのに要する時間を計測するためのタイマである。そして、タイマtaがカウント中であれば、処理をS7025に進め、カウント中でなければ、処理をS7022に進める。
【0155】
S7022では、制御回路30は、S7020で検知したTiが所定の値Ti1未満であるか否かを判断する。そして、TiがTi1未満であれば、処理をS7023に進め、そうでなければ、処理をS7025に進める。
【0156】
S7025では、S7020で検知したTiが所定の値Ti2(>Ti1)未満であるか否かを判断する。そして、Ti2未満であれば、処理をS7026に進め、そうでなければ、処理をS7028に進める。
【0157】
処理がS7023に進められると、制御回路30は、マグネトロン12の出力PをP1とし、さらに、S7024で、最大予熱時間tmaxをtmax1として、リターンする。最大予熱時間とは、予熱処理が開始されてからこの時間が経過すると、そのときの赤外線センサ7の検知温度等に関係なく、予熱処理が終了される時間である。
【0158】
処理がS7026に進められると、制御回路30は、マグネトロン12の出力PをP2とし、さらに、S7027で、最大予熱時間tmaxをtmax2として、リターンする。
【0159】
処理がS7028に進められると、制御回路30は、マグネトロン12の出力PをP3とし、さらに、S7029で、最大予熱時間tmaxをtmax3として、リターンする。
【0160】
なお、マグネトロン12の出力については、P1>P2>P3である。したがって、電子レンジ1においてマグネトロン12が駆動した際に最も温度上昇が大きいと考えられるインバータの温度が高いほど、マグネトロン12の出力は抑えられる。
【0161】
また、taがカウント中でなければ、「Ti<Ti1の場合」にはマグネトロン12の出力はP1とされ、「Ti1≦Ti<Ti2以上の場合」マグネトロン12の出力はP2とされる。一方、taがカウント中であれば、両方の場合とも、マグネトロン12の出力はP2とされる。このことから、本実施の形態では、taがカウント中であれば、taがカウント中でないときよりも、マグネトロン12の出力の変更の条件が緩められ、なるべくマグネトロン12の出力を変更しないように設定されている。
【0162】
また、最大予熱時間のtmax1〜tmax3はそれぞれ異なった値とすることができる。これにより、本実施の形態では、最大予熱時間を、マグネトロン12の出力に応じて決定できることになる。
【0163】
再度、図39を参照して、S702の出力設定A処理の次に、制御回路30は、S703で、オーブンサーミスタ59に、加熱室10内の温度Tthを検知させ、さらに、予熱保持出力Pxを算出する。予熱保持出力Pxは、S3等で設定された予熱温度xの関数f(x)に従って求められる。なお、f(x)は、予め定められたものである。なお、Pxはレンジ焼き皿80の温度を保持するための出力であるため、Px≪P3<P2<P1である。
【0164】
次に、制御回路30は、S704で、皿の温度検知処理を実行する。皿の温度検知処理の詳細な内容を、図41を参照して説明する。
【0165】
皿の温度検知処理で、制御回路30は、まず、S7041で、赤外線センサ7の各赤外線検知素子を、初期位置に移動させる。ここで、赤外線センサ7内の赤外線検知素子による温度検知のエリアについて説明する。
【0166】
本実施の形態の赤外線センサ7は、8個の赤外線検知素子を備えている。そして、8個の各素子を素子n(n=1〜8)とした場合、素子nの温度検知エリアARnは、図42に示すように、レンジ焼き皿80上のAR1〜AR8として示すことができる。なお、図42では、レンジ焼き皿80上において、左右方向にA〜Hの8本の線を引き、奥行き方向に0〜15の16本の線を引いた場合の8×16個の交点が示されており、AR1〜AR8には、それぞれ、奥行き方向の16個の点が含まれている。そして、赤外線センサ7では、素子nが、それぞれ、AR1〜AR8に含まれ奥行き方向に並ぶ16個の点の温度を順に検知するよう、走査が行なわれる。そして、S7041における初期位置とは、たとえば、各素子についての、奥行き方向の0の線上の温度を検知する位置とされる。
【0167】
再度図41を参照して、次に、制御回路30は、S7042で、赤外線センサ7を、各素子がAR1〜AR8の各エリア内の16点で温度を検知するよう、走査させる。
【0168】
次に、制御回路30は、S7043で、赤外線センサ7の各素子の、S7042の16点の温度検知における、平均温度であるTdnaveと、最高温度であるTnmaxとを算出する。
【0169】
そして、S7044で、8個の赤外線検出素子の中で、予熱制御の対象となる素子が既に決定されているか否かを判断する。なお、この決定は、後述するSA7、SA13、または、SA14で行なわれる。そして、既に決定されていれば、S7045で、当該対象となっている素子の、検出した各点での温度の平均(Tcave)を算出して、リターンする。一方、まだそのような素子が決定されていなければ、そのままリターンする。
【0170】
再度、図39を参照して、S704の処理の後、制御回路30は、S705で、直前に実行された皿の温度検知処理において検知されたTdnaveを、Tdnave0(「n」には8個の赤外線検出素子の中のいずれかを認識するための数字が入れられるためTd1ave0〜Td8ave0が存在し、「0」は初回走査の意味)として記憶する。
【0171】
次に、制御回路30は、S706で、S703において検知されたTthが所定の値Tth1未満であるか否かを判断し、Tth1未満であれば処理をS707に進め、Tth1以上であれば処理をS708に進める。
【0172】
S707で、制御回路30は、Tdnave0の最大値が所定の値Tdave1未満であるか否かを判断し、Tdave1未満である場合には処理をS709に進め、Tdave1以上である場合には処理をS710に進める。
【0173】
一方、S708で、制御回路30は、Tdnave0の最大値が所定の値Tdave2未満であるか否かを判断し、Tdave2未満である場合には処理をS711に進め、Tdave1以上である場合には処理をS712に進める。
【0174】
そして、制御回路30は、S709,S710,S711,S712で、それぞれ、予熱制御A処理,予熱制御B処理,予熱制御C処理,予熱制御D処理を実行し、リターンする。
【0175】
図43を参照しつつ、予熱制御A処理の内容について説明する。
予熱制御A処理では、まず、制御回路30は、SA1で、現在電子レンジ1において運転されている調理メニューが、加熱室10内で下段(図25参照)に収納されるメニューであるか否かを判断する。なお、電子レンジ1では、調理メニューごとに、ユーザに対して、レンジ焼き皿80を収納するべき段を提示することができる。そして、下段に収納されるメニューである場合には、処理をSA2に進め、上段に収納されるべきメニューである場合には、処理をSA14に進める。
【0176】
SA2で、制御回路30は、最新のTnmaxの最大値が所定の値Tnmax1未満であるか否かを判断し、Tnmax1未満である場合には処理をSA3に進め、Tnmax1以上である場合にはSA13に処理を進める。
【0177】
SA3で、制御回路30は、出力確認処理を実行する。ここで、図44を参照して、出力確認処理の内容を説明する。
【0178】
出力確認処理では、制御回路30は、まずSE1で、出力設定A処理を実行する。出力設定A処理は、図40を用いて説明した処理である。
【0179】
次に、制御回路30は、直前に実行された出力設定A処理においてマグネトロン12の出力Pに変更があったか否かを判断し、変更がなければそのままリターンする。一方、変更があれば、処理をSE3に進める。
【0180】
SE3で、制御回路30は、変更後の出力がP3であるか否かを判断し、P3である場合にはそのままリターンし、P3以外に変更された場合には処理をSE4に進める。
【0181】
SE4では、制御回路30は、予熱時間tnが既に決定されているか否かを判断する。そして、決定されている場合にはSE5に処理を進め、まだ決定されていない場合にはそのままリターンする。
【0182】
SE5では、制御回路30は、予熱時間tnを、マグネトロン12の出力の変更に応じて変更し、リターンする。なお、変更後の予熱時間tn(tn[変更後])は、具体的には、式(1)に従い、変更前後のマグネトロン12の出力、、変更前の予熱時間tn(tn[変更前])、および、S701でカウントを開始したタイマtのカウント値を用いて算出される。
【0183】
【数1】
【0184】
再度図43を参照して、SA3における出力確認処理が終了すると、次に、制御回路30は、SA4で、皿の温度検知処理を実行する。皿の温度検知処理とは、図41を用いて説明した処理である。
【0185】
次に、制御回路30は、SA5で、エラー検知処理を実行する。
ここで、図45を参照して、エラー検知処理の内容を説明する。
【0186】
エラー検知処理では、制御回路30は、まず、SF1で、S701でカウントを開始したタイマtのカウント値が所定の値te1であるか否かを判断する。そして、te1である場合にはSF2に処理を進め、そうでなければ、SF6に処理を進める。
【0187】
SF2で、制御回路30は、マグネトロン12の出力PがP1であるか否かを判断する。そして、P1である場合には処理をSF3に進め、P1でない場合には処理をSF4に進める。
【0188】
SF4で、制御回路30は、マグネトロン12の出力PがP2であるか否かを判断する。そして、P2である場合には処理をSF5に進め、P2でない場合にはそのままリターンする。
【0189】
SF3では、レンジ焼き皿80における温度上昇値ΔT1,ΔT2に対する電子レンジ1においてエラーが生じていると判断するための閾値をそれぞれTa,Tbと設定し、処理をSF11に進める。また、SF5では、上記の温度上昇値ΔT1,ΔT2に対する閾値をそれぞれTc,Tdと設定し、処理をSF11に進める。つまり、ここでは、マグネトロン12の出力に応じて、エラーの判断の基準とされる、レンジ焼き皿80における温度上昇値に対する閾値を異なった値とすることができる。
【0190】
一方、SF6では、タイマtのカウント値が所定の値te2であるか否かを判断する。そして、te2である場合にはSF7に処理を進め、そうでなければ、そのままリターンする。
【0191】
SF6で、制御回路30は、マグネトロン12の出力PがP1であるか否かを判断する。そして、P1である場合には処理をSF8に進め、P1でない場合には処理をSF9に進める。
【0192】
SF9で、制御回路30は、マグネトロン12の出力PがP2であるか否かを判断する。そして、P2である場合には処理をSF10に進め、P2でない場合にはそのままリターンする。
【0193】
SF8では、レンジ焼き皿80における温度上昇値ΔT1,ΔT2に対する電子レンジ1においてエラーが生じていると判断するための閾値をそれぞれTe,Tfと設定し、処理をSF11に進める。また、SF10では、上記の温度上昇値ΔT1,ΔT2に対する閾値をそれぞれTg,Thと設定し、処理をSF11に進める。つまり、ここでも、マグネトロン12の出力に応じて、エラーの判断の基準とされる、レンジ焼き皿80における温度上昇値に対する閾値を異なった値とすることができる。また、SF3,SF5の処理と比較すると、このエラー検知処理では、処理の行なわれる時間(te1またはte2)によって、異なった閾値が設定される。
【0194】
SF11で、制御回路30は、「Tnmax−Tnmax0」の最大値がΔT1未満であるか否かを判断する。なお、「Tnmax−Tnmax0」とは、各赤外線検出素子の検知温度の最大値の、初回検知の最大値からの上昇値である。また、「Tnmax−Tnmax0」の最大値とは、8個の素子の各上昇値の中の最大値である。
【0195】
そして、「Tnmax−Tnmax0」の最大値がΔT1未満であれば、SF15でエラー報知を行なって予熱処理を中止する。これにより、たとえば、レンジ焼き皿80の温度上昇値が予想される範囲よりも小さい場合、または、赤外線センサ7の各素子が正常に温度を検知できない場合に、予熱処理が中止させることができる。
【0196】
一方、「Tnmax−Tnmax0」の最大値がΔT1以上である場合には、制御回路30は、SF12に処理を進める。
【0197】
SF12では、制御回路30は、電子レンジ1において運転されている調理メニューが、レンジ焼き皿80を加熱室10の下段に収納するメニューであるか否かを判断する。そして、下段に収納するメニューであれば、処理をSF13に進め、上段に収納するメニューであれば、処理をSF14に進める。
【0198】
S13では、制御回路30は、「Tnmax−Tnmax0」の最小値が、ΔT2未満であるか否かを判断する。そして、「Tnmax−Tnmax0」の最小値がΔT2未満であれば、SF15でエラー報知を行なって、予熱処理を中止し、ΔT2以上であればそのままリターンする。
【0199】
一方、S14では、制御回路30は、「Tnmax−Tnmax0」の最小値が、ΔT2以上であるか否かを判断する。そして、「Tnmax−Tnmax0」の最小値がΔT2以上であれば、SF15でエラー報知を行なって予熱処理を中止し、ΔT2未満であればそのままリターンする。
【0200】
以上説明したSF12〜SF14の処理では、レンジ焼き皿80の収納される高さに応じて、エラーとされる判断の態様が異なっている。これは、図46に示すように、レンジ焼き皿80の収納される高さが異なると、レンジ焼き皿80上で、赤外線センサ7の各赤外線検出素子の視野範囲QAに含まれる面積が異なるからである。なお、図46(A)は、レンジ焼き皿80が上段に収納された状態を示し、図46(B)は、レンジ焼き皿80が下段に収納された状態を示す。レンジ焼き皿80が、図46(B)に示すように下段に収納されると、レンジ焼き皿80のほぼ全域が視野範囲QAに含まれるが、図46(A)に示すように上段に収納されると、レンジ焼き皿80において視野範囲QAに含まれない領域が多くなる。そして、SF14では、赤外線検出素子の検知温度が十分上昇しているか否かを判断することにより、赤外線検出素子による温度検知がレンジ焼き皿80の温度上昇に追随できるか否かを判断している。そして、追随できないと判断すると、エラー報知を行なって、予熱処理を終了させる。
【0201】
なお、電子レンジ1では、加熱室10内でレンジ焼き皿80が収納される高さに応じて、赤外線センサ7の角度を変更する等して、各赤外線検出素子の走査範囲を変更することが好ましい。また、電子レンジ1で調理メニューごとに好ましいレンジ焼き皿80の収納の高さが設定される場合、このような走査範囲の変更は、選択された調理メニューに応じて行なわれることになる。また、上記したエラー検知処理では、レンジ焼き皿80の収納位置が、赤外線検出素子の走査範囲に応じたものでない場合には、赤外線検出素子による温度検知がレンジ焼き皿80の温度上昇に追随できないとして、エラー報知が行なわれる。つまり、エラー検知処理では、上記の走査範囲の変更がなされることにより、レンジ焼き皿80の収納されている高さを検知でき、レンジ焼き皿80が調理メニューごとに好ましいとされる高さに収納されていない場合にも、エラー報知を行なえることになる。なお、このような場合にもエラー報知が行なわれることから、エラー報知には、レンジ焼き皿80の収納位置に誤りがあるかもしれない旨をユーザに認識させることが必要である。
【0202】
また、エラー検知処理では、温度上昇の度合いが所定の度合いでない場合、エラー報知を行なうことになる。なお、加熱室10内に収納される皿の材質によって、温度上昇の態様が変化する。つまり、エラー検知処理では、レンジ焼き皿80の収納位置のみでなく、レンジ焼き皿80の材質が正常であるか、つまり、レンジ焼き皿80と他の皿と間違って加熱室10内に収納されていないかどうかも、エラー報知の対象となる。
【0203】
また、レンジ焼き皿80の一部分にのみ高周波発熱体81が蒸着されている場合には、赤外線検出素子の走査範囲を、当該高周波発熱体81の蒸着されている領域のみとすることが好ましい。これにより、温度検知の必要のない場所に対しての温度検出が省略されるため、赤外線センサ7による温度検知が効率的に行なえる。
【0204】
また、温度検知の必要のない場所に対しての温度検出を省略するという観点から、赤外線検出素子の走査範囲は、調理メニューに応じて変更されることが好ましい。たとえば、煮込み調理を実行する場合には、加熱室10の中央部分のみを走査するようにしたり、加熱開始時に加熱室10の全体の温度検知を行なうことにより食品の載置位置を決定し、当該載置位置のみを走査するようにしたり、ユーザにより食品の載置位置を入力させ、当該載置位置のみを走査するようにしたりする。
【0205】
再度、図43を参照して、SA5のエラー検知処理において、予熱処理が中止されなければ、制御回路30は、SA6で、最新のTnmaxの最大値が所定の値Tnmax2以上であるか否かを判断し、Tnmax2以上となれば処理をSA7に進め、Tnmax2未満である場合にはSA3に処理を戻す。
【0206】
SA7で、制御回路30は、8個の赤外線検出素子について「Tnmax−Tdnave0」を算出し、その大きさの上位2個、下位2個を除いた、4個の赤外線検出素子を、予熱制御の対象素子として、処理をSA8に進める。
【0207】
一方、制御回路30は、SA13では、8個の赤外線検出素子の中で、デフォルトAとして定められる素子を、予熱制御の対象素子として、処理をSA8に進める。これにより、たとえば、レンジ焼き皿80が最初から高温である等によって、予熱制御の対象素子を決定するのが困難な場合に、予め定められた素子が予熱制御の対象素子とされる。
【0208】
また、制御回路30は、SA14では、8個の赤外線検出素子の中で、デフォルトBとして定められる素子を、予熱制御の対象素子として、処理をSA8に進める。これにより、図46(A)に示したように、レンジ焼き皿80が赤外線検出素子の視野範囲QAに入りにくい場合に適当と考えられる素子が、予熱制御の対象素子とされる。
【0209】
SA8では、制御回路30は、出力確認処理(図44参照)を実行した後、SA9で皿の温度検知処理(図41参照)を実行し、SA10でエラー検知処理(図45参照)を実行する。
【0210】
そして、SA10のエラー検知処理において、予熱処理が中止されなければ、制御回路30は、SA11で、Tcave(予熱制御の対象素子の検知した、走査範囲内での平均温度)がTcave1(所定の温度)に達したか否かを判断する。そして、制御回路30は、TcaveがTcave1に達するまで、SA8〜SA10の処理を繰り返し、TcaveがTcave1に達すると、処理をSA12に進める。
【0211】
SA12では、タイマtaのカウントをスタートさせ、処理をSA15に進める。
【0212】
SA15では、制御回路30は、出力確認処理(図44参照)を実行した後、SA 16で皿の温度検知処理(図41参照)を実行し、SA17でエラー検知処理(図45参照)を実行する。
【0213】
そして、SA17のエラー検知処理において、予熱処理が中止されなければ、制御回路30は、SA18で、TcaveがTcave2(所定の温度)に達したか否かを判断する。そして、制御回路30は、TcaveがTcave2に達するまで、SA15〜SA17の処理を繰り返し、TcaveがTcave2に達すると、SA19でタイマtaのカウントを終了させ、予熱時間t1を決定して、処理をSA20に進める。なお、予熱時間t1は、予熱温度xとタイマtaのカウント値の関数f2(x,ta)から求められる。なお、関数f2(x,ta)は、予め定められたものである。
【0214】
なお、本実施の形態では、予熱時間t1が、関数f2(x,ta)に基づいて求められることにより、赤外線検出素子に、予熱温度xという高温まで温度検知をさせる必要がなく、電子レンジ1のコストダウンを図ることができる。なお、予熱温度xとtaのカウント値に基づいて、t1を決定できる理由について、図47を用いて説明する。
【0215】
図47は、Tcaveの、予熱処理開始からの時間変化を示す図である。なお、図47中のTMは、赤外線検出素子が温度検知を行なえる上限の温度であり、xは予熱温度である。また、Tcaveは、実線で示されたように変化する。
【0216】
予熱処理が開始されると、TcaveはTMまで上昇した後、それ以上レンジ焼き皿80の温度が上昇しても、Tcaveで一定となる。そして、Tcave1からTcave2に伸びる線の延長線(一点破線で記載)を想定することにより、レンジ焼き皿80が予熱温度xに至る時間t1が想定できる。なお、x,TM,Tcave2,Tcave1のそれぞれの一例としては、たとえば、200℃,140℃,110℃,70℃が挙げられる。
【0217】
再度、図43を参照して、SA19の処理の後、制御回路30は、SA20で、出力確認処理(図44参照)を実行した後、S21で、S701でカウントを開始したタイマtのカウント値を判断し、当該カウント値が予熱時間t1または最大予熱時間tmaxに達するまでSA20の処理を実行し、当該カウント値が予熱時間t1または最大予熱時間tmaxに達するとリターンする。
【0218】
次に、S710における予熱制御B処理(図39)の詳細について、図48を参照して、説明する。
【0219】
予熱制御B処理では、制御回路30は、まずSB1で、予熱時間t2を予熱温度xの関数であるf3(x)とし、SB2で、マグネトロン12の出力を、S703で設定された予熱保持出力Pxとし、SB3で、出力設定B処理を実行する。ここで、出力設定B処理の詳細について、図49を参照して説明する。
【0220】
出力設定B処理では、制御回路30は、まずSG1で、インバータの温度Tiを検知し、SG2で、TiがTi2(所定の温度)未満であるか否かを判断する。そして、TiがTi2未満であれば、そのままリターンし、TiがTi2以上であれば、SG3で、マグネトロン12の出力PをP3とし、予熱時間tnをtmax3として、リターンする。
【0221】
再度図48を参照して、SB3の処理の後、制御回路30は、S703でカウントを開始したタイマtのカウント値が予熱時間t2に達したか否かを判断する。そして、タイマtのカウント値が予熱時間t2に達するまで、SB3の出力設定B処理を実行し、タイマtのカウント値が予熱時間t2に達すると、リターンする。
【0222】
以上説明した予熱制御B処理は、図39に示したように、オーブンサーミスタ59により検出される加熱室10の温度が比較的低温であり、かつ、レンジ焼き皿80が比較的高温であるときに実行されるため、予熱処理においてマグネトロン12の出力を低くし、レンジ焼き皿80の温度が自然に収束するのを待つような内容となっている。
【0223】
次に、S711で実行される予熱制御C処理の詳細な内容について、図50を参照して説明する。なお、予熱制御C処理は、図39に示したように、加熱室10の温度が比較的高温であり、かつ、レンジ焼き皿80の温度が比較的低温である場合に実行される処理である。予熱制御C処理では、制御回路30は、まずSC1で、予熱時間t3を、予熱温度xとオーブンサーミスタ59で検出される加熱室10の温度の関数f4(x,Tth)に基づいて設定し、SC2で、出力確認処理(図44参照)を実行する。そして、SC3で、タイマtのカウント値が予熱時間t3に達するまで、SC2の処理を繰返し、タイマtのカウント値が予熱時間t3に達するとリターンする。
【0224】
表1に、関数f4(x,Tth)の一例を部分的に示す。
【0225】
【表1】
【0226】
f4(x,Tth)は、予熱温度帯毎に予熱時間を定義している。また、f4(x,Tth)は、オーブンサーミスタ59の検知温度Tthについて、所定の閾値を用いて「Tth(低)」「Tth(高)」の二つの温度域を定義し、当該温度域毎に予熱時間を定義している。
【0227】
次に、S712で実行される予熱制御D処理の詳細を、図51を参照して、説明する。
【0228】
予熱制御D処理では、制御回路30は、まずSD1で、予熱時間t4を予熱温度xの関数であるf5(x)に従って設定し、SD2で、マグネトロン12の出力をP2とし、SD3で、出力設定B処理(図49参照)を実行する。そして、SD4で、タイマtのカウント値が予熱時間t4に達するまで、SD3の処理を繰返し、タイマtのカウント値が予熱時間t4に達するとリターンする。
【0229】
以上説明した予熱処理では、最大予熱時間が設定されることから、たとえ、赤外線検出素子に不具合が生じても、自動的に、予熱処理は終了される。また、予熱制御の対象となる素子の個数は、8個の赤外線検出素子の中の4個とされたが、これに限定されない。
【0230】
また、本実施の形態の予熱処理では、S706で、オーブンサーミスタ59の検知した加熱室10の温度が所定の温度を越えると判断された場合には、予熱制御C処理または予熱制御D処理で、予め定められた時間だけマグネトロン12を駆動させる制御がなされる。また、S706で、オーブンサーミスタ59の検知した加熱室10の温度が所定の温度未満であると判断された場合には、S707で、赤外線センサ7の赤外線検出素子の検出出力に応じた処理の選択がなされている。また、予熱制御A処理〜予熱制御D処理への分岐には、オーブンサーミスタ59の検知温度が条件とされており、また、予熱制御A処理〜予熱制御D処理のそれぞれでは、マグネトロン12の出力が決定されている。たとえば、予熱制御D処理に移行すると、インバータの温度がTi2以上とならなければ、マグネトロン12の出力はP2とされる。これにより、本実施の形態では、加熱室10の温度も、マグネトロン12の出力を決定する要因とされていることになる。
【0231】
また、本実施の形態の予熱処理では、S707やS708で、Tdnave0(赤外線センサ7の8個の赤外線検出素子がマグネトロン12による加熱開始後、最初に加熱室10内の温度検知のための走査を行なった際に検知した温度の平均値)の最大値を所定の値(Tdave1またはTdave2)と比較し、その結果に応じて、S709〜S712で、予熱制御A〜予熱制御Dにおいて異なった予熱時間を設定している。つまり、マグネトロン12が高周波を発振してから所定のタイミングにおけるレンジ焼き皿80の温度に応じて、予熱時間を決定していることになる。なお、S707またはS708で判断対象となる温度は、Tdnave0の最大値の代わりに、マグネトロン12が高周波を発振する直前の温度であっても良い。
【0232】
次に、S10のレンジ焼き調理処理(図37参照)の詳細について、図52を参照して説明する。
【0233】
レンジ焼き調理処理では、制御回路30は、まずS101で、マグネトロン12の駆動を開始し、S102で、第1ステージの調理時間が経過するのを待つ。そして、第1ステージの調理時間が経過すると、S103で、マグネトロン12の駆動を停止し、第1ステージが終了した旨をブザー等で報知する。この際、上記したように、レンジ焼き皿80上の食品を裏返す旨の指示を表示部60等で提示する。
【0234】
そして、制御回路30は、S104で、加熱スタートのための操作がなされるのを待って、処理をS105でマグネトロン12の駆動を再開する。
【0235】
そして、制御回路30は、S106で、第2ステージの調理時間が経過するのを待ち、第2ステージの調理時間が経過すると、S107で、マグネトロン12の駆動を停止させ、リターンする。
【0236】
以上説明したレンジ焼き調理処理では、食品を裏返した後の調理である第2ステージの調理時間は、食品の仕上りを良くするため、裏返す前の調理である第1ステージの調理時間よりも短くされることが好ましい。
【0237】
また、S105でマグネトロン12の駆動が再開された直後、つまり、第2ステージの調理が開始された直後は、一時的に、マグネトロン12の出力を高くすることが好ましい。S103〜S104の処理中は、マグネトロン12が一時的に停止されるため、加熱室10やレンジ焼き皿80の温度が低下していると考えられるからである。
【0238】
また、レンジ焼き調理処理および両面焼き調理処理の実行中でも、マグネトロン12の出力は、予熱処理と同様に、インバータの温度が高温となった場合等に低下させることができる。なお、第1ステージにおいてマグネトロン12の出力が低下された場合には、当該出力の低下を補うべく、第2ステージの調理時間を長くすることが好ましい。
【0239】
また、電子レンジ1が、インバータの温度が高温となった場合等にマグネトロン12の出力を低下させるように構成されており、かつ、当該出力を低下させるための条件が成立した場合でも、調理時間の残りが少ない場合には、当該出力の低下を行なわないようにしてもよい。
【0240】
次に、S26の両面焼き調理処理(図38参照)の詳細を、図53を参照して説明する。
【0241】
両面焼き調理処理では、制御回路30は、まずS261で、マグネトロン12を駆動させ、S262で、現在、手動の両面焼き調理が選択されているのか否かを判断する。そして、手動の両面焼き調理が選択されていると判断すると、S263で、S13で設定した調理時間に基づいて、第1ステージの調理時間と第2ステージの調理時間とを、予め定められた態様に従って決定し、処理をS264に進める。一方、S262で、手動の両面焼き調理が選択されていないと判断すると、直接、処理をS264に進める。
【0242】
S263において、第1ステージの調理時間と第2ステージの調理時間が自動的に決定されることにより、ユーザは、全体の調理時間を入れるだけで、電子レンジ1に、適切な両面焼き調理処理を実行させることができる。
【0243】
S264では、第1ステージの調理時間が経過するのを待って、処理をS265に進める。S265では、マグネトロン12の駆動を停止し、続けて、グリルヒータ51の駆動を開始する。そして、S267で、第2ステージの調理時間が経過するのを待って、処理をS268に進める。
【0244】
S268では、グリルヒータ51の駆動を停止し、リターンする。
以上説明した両面焼き調理では、レンジ焼き皿80上の食品は、上面にはグリルヒータ51により焦げ目を付けられ、また、下面にはレンジ焼き皿80の高周波発熱体81により焦げ目が付けられ、さらに、食品内部は高周波により加熱されることにより、より短時間の加熱が実現できるのである。なお、マグネトロン12とグリルヒータ51とを同時に駆動すればなお良いが、一般家庭のコンセントの最大容量(ブレーカ容量が15〜20A)の制限により、前述の実施の形態のように高周波加熱とヒータ加熱とを別々に実行し調理を実現している。
【0245】
電子レンジ1の加熱室10に、図10,図17等に示したようにレンジ焼き皿80の設置位置が複数の段の中から選択できる場合であって、両面焼き調理のように、グリルヒータ51によって食品の表面に焦げ目を付ける調理においては、レンジ焼き皿80は、図10に示すように、食品がグリルヒータ51に最も近くなるような位置に設置されることが好ましい。そして、制御回路30は、このようにレンジ焼き皿80の設置位置を指示する旨を、表示部60に表示することができる。
【0246】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態である電子レンジの斜視図である。
【図2】 図1の操作パネルの正面図である。
【図3】 図1の電子レンジのドアが開状態とされた状態の正面図である。
【図4】 図1の電子レンジの加熱室内に設置されるレンジ焼き皿の斜視図である。
【図5】 図4のレンジ焼き皿の裏面図である。
【図6】 図4のレンジ焼き皿の正面図である。
【図7】 図5のVII−VII線に沿う矢視断面図である。
【図8】 図1のVIII−VIII線に沿う矢視断面図である。
【図9】 図1の電子レンジの電気的構成を模式的に示す図である。
【図10】 図1の電子レンジの加熱室の第1の変形例を示す図である。
【図11】 図1の電子レンジの加熱室の第2の変形例を示す図である。
【図12】 図11の電子レンジの本体部分の、凸部が存在する高さでの、横断面を模式的に示す図である。
【図13】 図11の電子レンジの本体部分の、凸部が存在する高さでの、横断面を模式的に示す図である。
【図14】 図1の電子レンジの加熱室の第3の変形例を示す図である。
【図15】 図14の電子レンジの本体部分の、凸部が存在する高さでの、横断面を模式的に示す図である。
【図16】 図14の電子レンジの本体部分の、凸部が存在する高さでの、横断面を模式的に示す図である。
【図17】 図1の電子レンジの第4の変形例を説明するための図である。
【図18】 図17の他の変形例の効果を説明するための図である。
【図19】 図17のF−F線に沿う矢視断面図である。
【図20】 図17の反射板の斜視図である。
【図21】 図17のさらなる変形例を示す図である。
【図22】 図17のさらなる変形例を示す図である。
【図23】 図17のさらなる変形例を示す図である。
【図24】 図17のさらなる変形例を示す図である。
【図25】 図1の電子レンジの第5の変形例を示す図である。
【図26】 図25の電子レンジにおいて、上段に収納されたレンジ焼き皿上の温度分布を示す図である。
【図27】 図25の電子レンジにおいて、下段に収納されたレンジ焼き皿上の温度分布を示す図である。
【図28】 図25の電子レンジの回転アンテナの平面図である。
【図29】 図25の電子レンジにおける回転アンテナの停止方向の一例を示す図である。
【図30】 図25の電子レンジにおける回転アンテナの停止方向の一例を示す図である。
【図31】 図1の電子レンジの第6の変形例のレンジ焼き皿の裏面図である。
【図32】 図1の電子レンジの第6の変形例のレンジ焼き皿の裏面図である。
【図33】 図1の電子レンジの第7の変形例のレンジ焼き皿の裏面図である。
【図34】 図33のE−E線に沿う矢視断面図である。
【図35】 図34のレンジ焼き皿の表裏をひっくり返した状態を示す図である。
【図36】 本実施の形態において、加熱室にマイクロ波が供給されたときの、高周波発熱体の抵抗率と、レンジ焼き皿が反射する電界強度および透過する電界強度との関係を示す図である。
【図37】 本実施の形態の電子レンジにおける加熱調理処理のフローチャートである。
【図38】 本実施の形態の電子レンジにおける加熱調理処理のフローチャートである。
【図39】 図37の予熱処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図40】 図39の出力設定A処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図41】 図39の皿の温度検知処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図42】 本実施の形態の赤外線センサの各素子の温度検知範囲を説明するための図である。
【図43】 図39の予熱制御A処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図44】 図43の出力確認処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図45】 図43のエラー検知処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図46】 レンジ焼き皿の収納される高さに応じた、レンジ焼き皿上の、赤外線検出素子の視野範囲に含まれる面積の変化を説明するための図である。
【図47】 電子レンジ1における、Tcaveの、予熱処理開始からの時間変化を示す図である。
【図48】 図39の予熱制御B処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図49】 図48の出力設定B処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図50】 図39の予熱制御C処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図51】 図39の予熱制御D処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図52】 図37のレンジ焼き調理処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図53】 図38の両面焼き調理処理のサブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
1 電子レンジ、5 本体枠、6 操作パネル、7 赤外線センサ、9 底板、10 加熱室、12 マグネトロン、19 導波管、40 検知経路部材、59 オーブンサーミスタ、80 レンジ焼き皿、81 高周波発熱体、101,102 凹部、103,104,106,107,111〜118 レール。
Claims (2)
- 被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室内の赤外線をキャッチし温度検知を行う赤外線センサと、前記加熱室の底面に設けられ、前記被加熱物が載置される底板と、高周波を発振するマグネトロンと、前記マグネトロンに接続された導波管と、前記導波管を介して供給された前記マグネトロンからの高周波を、前記加熱室の底面から拡散しつつ加熱室内に供給する回転アンテナと、前記底板の下方に配置され、前記回転アンテナを収容するアンテナ収容部と、前記被加熱物が載置されて前記加熱室内に収納されるとともに、裏面に、前記高周波を吸収して発熱する高周波発熱体を配置した加熱皿と、前記加熱室の左右壁面に形成され、前記加熱室内に収容された前記加熱皿を支持するレールと、前記回転アンテナから放射した高周波のうち、前記加熱皿の高周波発熱体に吸収されなかった高周波により前記被加熱物を直接加熱せしめるために、前記高周波発熱体と前記加熱室壁面との間に設けられた、前記高周波発熱体に吸収されなかった高周波を前記加熱皿の上方へ到達させる到達用経路と、前記赤外線センサの検知温度に基づいて前記マグネトロンの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記回転アンテナは、前記加熱室内に収容された前記加熱皿の高周波発熱体と重なるように配置され、
前記制御部は、
前記マグネトロンを駆動して前記加熱皿の加熱を開始した後、前記赤外線センサで前記加熱皿の温度を検知し、前記加熱皿の温度が所定の温度だけ上昇するのに要する時間を計時するとともに、前記計時した時間に基づいて前記加熱皿の温度が特定の温度に到達する時間を演算し、前記マグネトロンを前記演算した時間駆動させる予熱処理が実行可能であることを特徴とする高周波加熱装置。 - 被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室内の赤外線をキャッチし温度検知を行う赤外線センサと、前記加熱室の底面に設けられ、前記被加熱物が載置される底板と、高周波を発振するマグネトロンと、前記マグネトロンに接続された導波管と、前記導波管を介して供給された前記マグネトロンからの高周波を、前記加熱室の底面から拡散しつつ加熱室内に供給する回転アンテナと、前記底板の下方に配置され、前記回転アンテナを収容するアンテナ収容部と、前記被加熱物が載置されて前記加熱室内に収納されるとともに、裏面に、前記高周波を吸収して発熱する高周波発熱体を配置した加熱皿と、前記加熱室の左右壁面に形成され、前記加熱室内に収容された前記加熱皿を支持するレールと、前記回転アンテナから放射した高周波のうち、前記加熱皿の高周波発熱体に吸収されなかった高周波により前記被加熱物を直接加熱せしめるために、前記高周波発熱体と前記加熱室壁面との間に設けられた、前記高周波発熱体に吸収されなかった高周波を前記加熱皿の上方へ到達させる到達用経路と、前記赤外線センサの検知温度に基づいて前記マグネトロンの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記回転アンテナは、前記加熱室内に収容された前記加熱皿の高周波発熱体と重なる部分を有し、
前記制御部は、
前記マグネトロンを駆動して前記加熱皿の加熱を開始した後、前記赤外線センサで前記加熱皿の温度を検知し、前記加熱皿の温度が所定の温度だけ上昇するのに要する時間を計時するとともに、前記計時した時間に基づいて前記加熱皿の温度が特定の温度に到達する時間を演算し、前記マグネトロンを前記演算した時間駆動させる予熱処理が実行可能であることを特徴とする高周波加熱装置。
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