JP3928992B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング(以下、MRIという)装置において静磁場の均一化を図る方法に関し、特に被写体の置かれた状態で所定の体積部分の静磁場を迅速に均一化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRIの代表的な画像構成方法である2D或いは3Dフーリエ変換法では、空間的に一様な、一定方向(これをz方向とする)を向いた静磁場内に被写体を置き、この被写体の核スピンを高周波パルスの印加により横平面(x,y平面)へ倒し、その後所定の組合せの傾斜磁場を印加することにより、核スピンの位相(基準方向、例えばy軸方向からの方位角)に空間的位置に応じた分布を生じさせて信号を計測する。
【0003】
しかし、静磁場が均一でない場合にはこれによる位相回転が生じ、これにより偽像,位置歪み等が発生し画質は劣化する。静磁場不均一は、第1に静磁場発生磁石の装置的限界により生じ、更に生体自体が組織毎に僅かに異なる透磁率をもつため、被写体内部の静磁場には分布が生じることにより生じる。
【0004】
MRIでは、このようなアーチファクトを低減する上でシミング(静磁場均一化)が重要であり、特に、生体に起因する静磁場不均一の補正(以下、生体シミングと記す)は、被写体毎に行う必要があるため、処理が短時間に完了しなければならない。
【0005】
一般的に生体シミングは、被写体内の透磁率分布により誘起される静磁場分布を予めMRIの手法により計測し、これに基づいて補正シム電流を計算し、シムコイルにこの電流を流して不均一と逆向きの磁場を発生させることにより静磁場分布を平坦化する。本撮像はこのシミングの下で行う。
【0006】
生体内の静磁場分布を計測する方法としては、磁化の展開時間が異なる2枚の複素画像から被写体内の静磁場分布を得る方法(特開平4−288136号および米国特許5,168,232)や、特定の化学シフトを抑制した上で画像を計測することにより、静磁場分布を化学シフトと分離して得る方法(特公平6−44904号公報)がグローバーらにより提案されている。これらの方法はいずれもRFスピンエコーの発生時刻と傾斜磁場エコーの発生時刻とを異ならせることにより、静磁場分布による位相分布が信号に生じるようにし、この位相分布から静磁場分布を得るものである。
【0007】
静磁場分布計測は本撮像に先立つ予備撮像として患者毎に実施するため、これを高速化する方法として、単一の励起で位相分布画像を得る方法(例えば、「肺及び心臓における動的磁場変化およびEPI幾何学的歪み」(Dynamic Field Changes and EPI Geometric Distortions in the Chest and Heart)S.Kanayama, S.Kuhara and K. Satoh, Proceedings of the Society of Magnetic Resonance,746(1995))も提案されている。
【0008】
これらの位相分布から静磁場分布を得る手法としては、EPI法やFSE法を用いればスライス内の静磁場分布計測は例えば数秒程度の短時間で行うことができる。また画像マトリクスを通常画像並み、例えば34ないし128程度に比較的大きくできる。従ってスライス内の静磁場分布を計測するには有効な方法といえる。
【0009】
しかし、3次元体積内の静磁場分布を得るためには厚さ方向の位相エンコードの反復が必要になるため、厚さ方向のマトリクスを通常画像並みに大きくとると、短時間計測の利点は失われてしまう。逆に厚さ方向のマトリクスを小さく取ると、スライス内のマトリクスのみを大きくとる意義が薄れる。また、位相を用いることに付随する問題として、位相アンラップの問題がある。これはピクセル間で2πラジアン以上の位相差が生じた場合、主値を如何に見いだすかという問題であり、煩雑な処理が必要になる。
【0010】
位相を用いない静磁場分布計測法としては、ケミカルシフトを用いる方法がある。これは3D/4D−ケミカルシフトイメージング(CSI:Chemical Shift Imaging)法によりマルチピクセルあるいはボクセルのスペクトルを計測し、水プロトン等の特定の分子のスペクトル線の周波数から直接局所の磁場強度を得る方法である。スペクトルの周波数から、局所の静磁場強度が式(1)によって求められる。
【数1】
Figure 0003928992
この静磁場分布計測法は、ピクセルの静磁場強度や静磁場均一度を元に、水以外のスペクトル位置を修正するのに適用されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、3D/4D−CSI法を生体シミングの予備撮像として適用する場合、計測に長時間を要するという欠点がある。例えば3次元体積の計測には、位相エンコードの反復ループが3重になるため、マトリクス数の3乗回の励起が必要になる。一例として反復時間(TR)を1秒とし、マトリクスを16×16×16とすると1秒×16×16×16=約68分が必要になる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では静磁場分布測定およびシム電流決定を含む生体シミングにおいて、静磁場分布測定方法として、3次元高速MRスペクトロスコピックイメージング法(MR Spectroscopic Imaing:以下MRSIという)法を採用する(P.Mansfieldによる論文「NMRにおける化学シフトの空間マッピング」(Spatial Mapping of the Chemical Shift in NMR)、マグネティック レゾナンス イン メディスン(Magn. Reson. Med.)1,370-386(1984)や松井らによる論文「高速高空間分解能NMRスペクトロスコピー」(High-Speed Spatially Resolved High-Resolution NMR Spectroscoy)、J.Am.Chem.Soc.,107,2817-2818(1985)を参照のこと)。また、シム電流を決定するに際し、静磁場分布の展開を2次項までとする。これにより、実用的で迅速な静磁場均一化方法を提供する。
【0013】
即ち、本発明の磁気共鳴イメージング装置は、静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記静磁場の不均一をその空間成分毎に補正するシミング手段と、前記静磁場空間のスライス方向、位相エンコード方向、及びリードアウト方向にそれぞれスライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びリードアウト傾斜磁場の各傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、前記静磁場空間に配置された被検体を組成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を誘起するための高周波磁場を発生する高周波磁場発生手段と、前記被検体からの核磁気共鳴により生ずるエコー信号を受信する受信手段と、前記受信された核磁気共鳴信号から前記被検体の画像を再構成する信号処理手段と、所定のパルスシーケンスに基づいて前記傾斜磁場発生手段と前記高周波磁場発生手段と前記受信手段と前記信号処理手段を制御する計測制御手段とを備え、
前記計測制御手段は、前記高周波磁場の照射により前記被検体の所望の体積部分を励起し、次いで所定の静磁場不均一検出用パルスシーケンスにより、前記体積部分についての静磁場不均一を表すエコー信号を取得し、
前記信号処理手段は、前記静磁場不均一を表すエコー信号から前記体積部分の静磁場分布を得、この静磁場分布を前記シミング手段が発生する空間成分毎の磁場分布で展開し、該静磁場分布を均一化するように前記シミング手段の空間成分毎に流す電流の最適値を求め、
前記シミング手段は、その空間成分毎に前記最適値の電流を流す磁気共鳴イメージング装置において、
前記静磁場不均一検出用パルスシーケンスは、前記スライス方向にスライスエンコード傾斜磁場を、位相エンコード方向に位相エンコード傾斜磁場を、リードアウト方向に連続反転する傾斜磁場をそれぞれ印加する基本シーケンスを繰り返し、
前記信号処理手段は、前記リードアウト方向傾斜磁場が同一極性であって時間軸方向において同一間隔となるように取得された前記静磁場不均一を表すエコー信号から前記被検体のボクセル毎のスペクトルを求め、その特定ピークの共鳴周波数を静磁場強度に換算することにより、前記ボクセル毎の静磁場分布を得る。
【0014】
3次元MRSI法は、リードアウト方向の傾斜磁場を連続反転させ、空間情報とスペクトル情報を重畳させて取得することにより、反復ループを1次元分削減した高速スペクトロスコピックイメージング方法であり、短時間にマルチボクセルスペクトルを取得することができる。
【0015】
特定のスペクトルピークとしては水プロトンの共鳴周波数を用いることが好ましい。これにより生体内の概ね全てのボクセルに亘り静磁場強度を計測できる。また短時間化のために、繰り返し時間(TR)を短縮した場合にも高周波磁場として低フリップ角のパルスを用いることにより、高信号が得られる。更に3次元MRSI法としてスピンエコー(SE)法を基本としたシーケンスを採用しTEを長く設定した場合に、T2の差を利用して束縛水等からの信号を消去したシャープなスペクトルを得ることができ、共鳴周波数の読み取り精度が向上する。
【0016】
また、本発明の好適な態様においては、前記信号処理手段は、前記ボクセル毎の静磁場分布を球面調和関数の1次項および2次項を用いて展開して、それぞれの空間成分毎に前記最適電流値を求め、前記シミング手段は、概略球面調和関数の1次項および2次項を生成する少なくとも8つの空間成分を有して、その空間成分毎に対応する前記最適電流を流す。本発明においてシミング手段として、1次項の磁場分布を有する傾斜磁場コイル及び概略2次項以上の高次磁場分布を有するシムコイルを利用する。
【0017】
2次以下の項のみを用いて静磁場分布を近似することにより、小数のボクセルの静磁場計測データで展開項を決定でき、静磁場計測を実際的な短い時間内に行うことができる。また2次項以下とすることにより、シミング手段として特定の高次項のみを発生するシムコイルを製作する困難性を回避でき、また一般に3次以上の高次項成分は小さいので、実用上十分精度のある補正を行うことができる。
【0018】
2次以下の項数は8項であるため、ボクセル数は原理的に8以上であればよく、例えば3×3×3(=27)とすることができる。この場合、上記3次元MRSI法における反復ループ数9回で静磁場計測を行うことができる。
【0019】
更に、本発明の好適な態様として、3次元RSI法において、前記計測制御手段は、前記リードアウト方向のマトリクス数を残りの2方向よりも大きく設定する。これにより静磁場計測時間を実質的に延長することなく、スペクトル方向に高精度な情報を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。図4は本発明が適応されるMRI装置の概略構成図であり、この装置は、被検体401内部に一様な静磁場B0を発生させるための静磁場発生磁気回路402、直交するx,yおよびzの3方向に強度が線形に変化する磁場勾配を与えるための傾斜磁場発生系403,被検体401に高周波磁場を発生する送信系404,被検体から生じる核磁気共鳴信号を検出するための検出系405,検出された信号を処理,記憶するための信号処理系406,これら傾斜磁場発生系403,送信系404,検出系405を制御するシーケンサ407及び装置全体の制御及び信号処理系における各種演算を行うコンピュータ408を備え、更にコンピュータ408に指令を与える操作部421を備える。
【0021】
静磁場発生磁気回路402は、図示しないが均一な静磁場を発生するための電磁石または永久磁石と、静磁場の不均一性を補正するためのシムコイル430及びシム電源431とを備えている。シムコイル430は、例えばz2,xz,xy,yz,x2−y2等の2次コイルやz3,z2x,z2y等の3次コイルを組合せて用いる。1次項の補正は、x,y,z方向の線形傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル409を用い、本来の傾斜磁場発生電流にシム補正電流を重畳して供給する。本発明においてシミング手段とは、これらシムコイル430及び傾斜磁場コイル409を含む。図6はシムコイルによって発生する磁場分布の一例を示したもので、y−z面内分布を、正側を実線で、負側を破線で等高線表示している。
【0022】
次に装置の動作の概要を説明する。送信系404においてシンセサイザ411により発生させた高周波を変調器412で変調し電力増幅器413で増幅し、送信コイル414aに供給することにより被検体401の内部に高周波磁場を発生させ、核スピンを励起させる。通常は1Hを対象とするが、31P,12C等、核スピンを有する他の原子核を対象とすることもある。
【0023】
この際、被検体から生じる核磁気共鳴信号に位置情報を付与するために傾斜磁場コイル409により傾斜磁場Gx,Gy,Gzを発生する。3軸方向の傾斜磁場コイル409は、それぞれ電源410から電流の供給を受け、高周波磁場の照射とともにシーケンサが制御する所定のパルスシーケンスに従って駆動される。
【0024】
被検体401から放出される核磁気共鳴信号は検出系405において受信コイル414bにより受信され、増幅器415を通った後、検波器416で直交位相検波され、シーケンサ407からの命令によるタイミングでA/D変換器417を経てコンピュータ408へ入力される。高周波コイル414a,414bは送受信両用の1つのコイルであってよく、別々でもよい。コンピュータ408は信号処理後、前記核スピンの密度分布,緩和時間分布,スペクトル分布等に対応する画像をCRT等のディスプレイ428に表示する。計算途中のデータあるいは最終データはメモリ425に収納される。傾斜磁場発生系403,送信系404,検出系405は全てシーケンサ407によって制御され、このシーケンサ407はコンピュータ408によって制御される。
【0025】
本発明はこのような構成におけるMRI装置の静磁場の不均一性(静磁場分布)、特に生体に起因する静磁場不均一の計測とそれに基づくシムコイルの制御に関するものであり、1)被検体が置かれた状態での静磁場分布の計測工程と、2)計測された静磁場分布をシムコイルが発生する磁場分布で展開する工程と、3)シムコイルに供給する補正電流を求める工程とからなる。
【0026】
1)静磁場分布計測工程
静磁場分布計測工程は、高速MRSI法によるパルスシーケンスを採用し、これによってボクセル毎のスペクトルを求める。ここでは一例として図2に示すように被検体頭部21の3×3×3(ボクセル数=27)のマトリクス22についてスペクトルを得る場合を説明する。まず、一般的な領域選択性RFパルスと拡散傾斜磁場の組合せを複数回印加して、関心領域外を予備飽和(プレサチュレーション)し、関心領域外からの信号の発生を抑制する。続いて図1に示す高速MRSI法を実施する。
【0027】
この実施例はグラディエントエコー(GrE)法を基本とする高速MRSI法を採用しており、関心領域を選択的に励起するRFパルス11を傾斜磁場(ここではz方向の傾斜磁場)13とともに印加し、次に2方向(ここではz及びy方向)の位相エンコード傾斜磁場14,16を印加し、リードアウト方向(x方向)の傾斜磁場18の反転を繰り返しながら、エコー信号19を計測する。
【0028】
ここでRFパルス11のフリップ角αは90゜でもよいが、生体シミングを短時間で行うために、90゜より小さいことが好ましい。一例として(90゜×TR)/T1とする。ここでT1は、対象とする組織のおおよそのT1値であり、繰り返し時間TRとしてT1より長い値を用いる場合は、T1/TR=1に置換する。小フリップ角のパルスを用いることにより信号強度の低下を抑えて繰り返し時間TRを短縮できる。フリップ角のとり方については、上述のように一定としてもよいが、励起毎に順次増加させててもよく、その場合発生する横磁化成分を一定にすることができる。
【0029】
このようなシーケンスを繰り返し時間TRで繰り返し、2方向に位相エンコードループを実行することにより、x軸,y軸,z軸及び時間(δ)軸の4次元データを得る。シーケンスの繰り返しにおいて残留横磁化のコヒーレンスを除去するため、リードアウト方向にはスポイラー傾斜磁場21を付加し、位相エンコードの累積を防ぐために位相方向にはリワインド傾斜磁場20を付加する。
【0030】
位相エンコード方向(y,z方向)のステップ数はその方向のボクセル数に対応し、ここでは3ステップずつのエンコードを反復する。従って3×3回の繰り返しで計測を終える。リードアウト方向のサンプリング点数は、その方向のボクセル数に対応し、ここではサンプリング点数は3点とする。リードアウト方向の傾斜磁場の反転回数は、時間軸方向のマトリックス数の1/2となり、数10程度とすることができる。
【0031】
このシーケンスによって計測されたデータのk空間配置を図3に示す。図3は、特定の位相ステップky,kzについて、kx−kδ平面の軌跡を描いており(kδ軸は時間軸)、1つのエコー31について3つのサンプリング点32,33,34でサンプリングされていることを示す。このような計測データにkx,ky,kz,kδについての4次元FFTを施し、図2に示すようにボクセル毎のプロトンスペクトルを得る。各ボクセルのスペクトルから水プロトンのピーク周波数23を得、この周波数から静磁場分布を得る。水プロトンの共鳴周波数を用いることにより、生体内の概ね全てのボクセルに亘り静磁場強度を計測できる。
【0032】
一例として、リードアウト方向の傾斜磁場を周期6msの矩形波で26回反復して印加し、52のエコーを取得したとする。一般にスペクトル計測帯域Lδはkδ方向のデータ間隔を△t(図3)とするとき、Lδ=1/(△t)の関係があるので、ここでは1/(6ms)=1.67Hzとなる。これは1.5TのMRIでは2.6ppmに相当し、生体内に存在する各種代謝物プロトンのスペクトル帯域(5ppm)よりも狭いため、計測帯域外部のピークが帯域内に折り返してくるが、通常の代謝物の強度は水よりも3ないし4桁小さいため、水のピークの同定と位置の検出には障害にならない。皮下脂肪等は水に匹敵する場合もあるが、脂肪のピーク(例えば図2の24)は水とは隔たっているためこれも障害にはならない。一般に代謝物の定量を行おうとすると折り返しは同定と定量の障害になるが、ここでは大量に存在する水の周波数を計測するだけでよいことが利点となる。
【0033】
尚、ボクセルの静磁場が2.6ppm以上基準値よりもずれていた場合は、水ピークが2回以上折り返されるため真の周波数が判定困難になるが、通常の撮影条件ではこのような大きなずれは生じにくい。また、リードアウト傾斜磁場の反転周期を6msよりも短くし、データ間隔Δtを短く設定しておけば折り返しは回避できる。EPIに対応した高磁場MRI装置であれば反転周期を2ms程度まで短くすることは可能である。
【0034】
また、図3では簡単のため傾斜磁場の正負のエコーを個別に処理して個別のスペクトルを得るもとのしているが、位相補正等を施した後、合わせて処理してもよく、その場合は△tは図3よりも短く(△t/2)なり、計測帯域Lδは拡張される。
【0035】
スペクトルの周波数分解能△fは計測時間Tと△f=1/Tの関係があり、前掲の例では、T=156ms(=6ms×26)、△f=6.4Hzとなる。これは1.5TのMRIでは0.lppmに相当する。従って、静磁場の計測精度も最高で0.lppmとなる。EPIで顕著なアーチファクトが発生しない静磁場均一度は約0.3ppm以下であるため、計測精度としては十分である。
【0036】
尚、上記実施例ではリードアウト方向のサンプリング点数を3点として説明したが、サンプリング点数は計測時間を延長しない範囲で大きくとることができ、その場合オーバーサンプリングしたデータの平均値を記録することは当然可能である。
【0037】
水プロトンのピーク周波数は、上述のように4D−FFTによって得られたボクセル毎のプロトンスペクトルから計算機により自動検出する。ピーク検出方法としては、標準となる水の位置を中心としてローレンツ曲線をあてはめ、その位置,幅,高さを微調整する方法がある。また、必要に応じて位相補正を併用する。
【0038】
次にボクセル毎に水のピーク位置から静磁場磁場強度を式(2)により計算する。
【数2】
Figure 0003928992
式中δw(x,y,z)は、基準位置からの水ピークのシフト(ppm),Be(x,y,z)は静磁場不均一である。
【0039】
あるボクセルの水ピークの基準位置(4.7ppm)からのずれδwは、そのボクセル内を平均した静磁場の不均一を示すので、各ボクセルについて静磁場強度を求めることにより関心領域全体について静磁場分布をマッピングすることができる。ただし、ボクセル内の水の分布が片寄っている場合は、ボクセル内の水の分布で重み付けした平均となる。
【0040】
2)計測された静磁場分布をシムコイルが発生する磁場分布で展開する工程
この工程では、先に得られた3×3×3個のボクセルに亘る静磁場分布を球面調和関数で展開する。MRIでは、多くの場合シムコイルは概略球面調和関数状の磁場を発生するように設計されているので、球面調和関数で展開することにより、その係数から直ちにシム電流を求めることができる。
【0041】
球面調和関数は表1に示すような関数形からなるが、本実施例では2次以下の項のみを用いて静磁場分布を近似する。一般に3次以上の高次項成分は小さく、実用的には2次以下の項のみで十分静磁場均一化が達成されるからである。表1関数形のうち、1次項はx,y,zの3項、2次項はz2,zx,x2−y2,xy,zyの5項であり、これらの合計8頃の係数を求める。
【表1】
Figure 0003928992
各調和関数の係数の決定には例えば勾配法等を用い、式(3)の残差Iを最小化する。
【数3】
Figure 0003928992
式中、Pi(x,y,z)は球面調和関数、Cjはその係数である。vに関する総和は、均一化を行う体積内(ここでは27のボクセル)の各座標(x,y,z)に亘って行う。
【0042】
ここで計測体積の中心がシムコイルの中心と一致している場合は、係数の決定は容易である。一致していない場合は、計測した静磁場分布Be(x,y,z)と各シムコイルの生成する磁場分布Pi(x,y,z)の座標系が一致するよう変換処理を行ってから係数を決定する。
【0043】
3)シム電流を求める工程
この工程では、前工程で得られた球面調和関数の係数からシムコイルへ流す補正電流を求める。補正電流は理想的には計測した静磁場分布と振幅が等しく、向きが反対の補正磁場分布を発生する。前述したように、シムコイルが概略球面調和関数状の磁場を発生するように設計されている場合には、球面調和関数の係数から直ちにシム電流を求めることができる。この場合、シムのコイル毎の固有の磁場発生効率を考慮する。
【0044】
別法として、各シムコイルの生成する磁場分布(シム特性)から、式(4)に示す行列演算により補正電流を求めてもよい。
【数4】
Figure 0003928992
式中、Aはシム特性行列(Ajk=δBj/δIk)を表し、要素は第kチャンネルシム電流の微小変化に対する第j画素の静磁場変化で表される。△Iはシム電流ベクトル、B0は画素毎の静磁場偏倚を1次元に再配列したベクトル、AtはAの転置行列である。シム特性は、予め水などの均質な試料を用いて、シムコイルに流す単位電流当りの静磁場分布の変化を測定することにより、求めることができ、行列或いは調和関数で展開した展開関数の形式でメモリ内に記憶される。
【0045】
この方法はシムコイルが球面調和関数とは異なる磁場、あるいは複数の球面調和関数の合成磁場を発生する場合にも適用できる。
【0046】
以上の3つの工程は、本撮像に先立つプリスキャンとして行われ、これら工程で得たシム電流のうち、1次シム値は傾斜磁場のオフセットとして設定し、2次シム値は2次シムコイルへ設定する。しかる後に本撮像を実行する。
【0047】
この方法によれば、きわめて短時間に生体シミングを実行することができ、EPI法やスペクトロスコピックイメージング法など高い静磁場均一性が要求される撮像において高画質画像を得ることができる。一例として第1の工程におけるボクセル数を3×3×3(=27),RFパルスのフリップ角10゜,シーケンスの繰り返し時間TR=160msとすると、160ms×9=1.44秒の計測時間+演算時間で静磁場補正を行うことができる。従って、シム電流値の計算を含む全シミング工程を数秒程度で完了できる。
【0048】
尚、以上の実施例では、第1工程におけるボクセル数は、静磁場分布を展開する場合の展開項として2次項まで用いることを前提として、(3×3×3)の場合を説明したが、既に述べたようにボクセル数は位相エンコードステップ数及び周波数エンコード方向のサンプリング点数によって決まり、これらを変えることにより関心領域に合せた任意のボクセル数、形状とすることができる。
【0049】
また展開項として3次,4次等より高次の項を含めることも可能であり、これにより高精度なシミングが可能になる。その場合、項の数に対応して体積内の画素マトリクス数を増やす必要があるが、リードアウト方向の画像マトリクス数は計測時間を延長せずに増加させることができるので、この方向にマトリクスを大きくとり、3次以上の展開項を用いることは有効である。従って生体の体軸方向等、高次の不均一が予想される方向をリードアウト方向に選ぶのが有効である。
【0050】
また、位相エンコード数を4以上とし、マトリクスを位相方向にも拡大すれば、3次以上の展開項も使用できるようになり、空間的により高精度な均一化が可能になることは言うまでもない。この場合位相エンコードステップ数と共に計測時間は増大するが、本発明で採用する高速MRSI法の時間的優位性はエンコードステップ数が大きいほど顕著になる。
【0051】
更に上記実施例では静磁場分布測定のためのシーケンスとして図1に示すグラディエントエコー(GrE)型の高速MRSI法を採用したが、図5に示すSE型の高速MRSI法を採用してもよい。図5のシーケンスは高周波パルス51を照射し、TE/2経過後にスピンを反転させる高周波パルス510を照射している点が異なり、2方向に位相エンコード54,55を付与すること、リードアウト方向に反転する傾斜磁場58を印加すること、繰り返し時間の最後にリワインド501及びスポイラー512をそれぞれ付加することは図1の場合と同様である。
【0052】
GrEの型のシーケンスとSE型のシーケンスとを比較すると、前者は低周波領域の信号が犠牲になるので、スペクトルのベースラインのうねりが生じる。但し、水ピークの検出には大きな障害にはならない。SE型は、計測時間はGrE型よりも長くなるが、エコー中心のデータが取得できるので、ベースラインのうねりを防止できる。
【0053】
また、SE型との特長として、公知のT2を用いるスペクトル編集が可能になる。即ち、エコー時間TEを数10msと大きく設定することにより、脂肪等の短T2物質のスペクトルを消去したスペクトルを得ることができる。スペクトル線の半値幅ν1/2はT2とν1/2=1/(πT2)の関係があるため、短T2物質のピークはブロードであり、短T2物質を消去したスペクトルはシャープになる。従ってピークの位置を高精度に検出できる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば生体シミングを行うに際し、静磁場不均一性を測定するために高速MRSI法によるシーケンスを小エンコードステップで実行するとともに、得られた静磁場分布を低次項の調和関数で展開することにより、分布被写体に応じた体積内静磁場均一化を短時間で達成でき、EPI法やEPI法をべースとした撮影方法の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静磁場計測シーケンスの一実施例を示す図。
【図2】スペクトルによる静磁場分布計測の概念を示す図。
【図3】高速MRSI法のk空間軌跡を示す図。
【図4】本発明が適用されるMRI装置の全体の構成を示す図。
【図5】本発明の静磁場計測シーケンスの他の実施例を示す図。
【図6】シムコイルの磁場分布を示す図。
【符号の説明】
401 被写体
414a 送信RFコイル
414b 検出RFコイル
430 シムコイル
431 シム電源

Claims (3)

  1. 静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記静磁場の不均一をその空間成分毎に補正するシミング手段と、前記静磁場空間のスライス方向、位相エンコード方向、及びリードアウト方向にそれぞれスライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びリードアウト傾斜磁場の各傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、前記静磁場空間に配置された被検体を組成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を誘起するための高周波磁場を発生する高周波磁場発生手段と、前記被検体からの核磁気共鳴により生ずるエコー信号を受信する受信手段と、前記受信された核磁気共鳴信号から前記被検体の画像を再構成する信号処理手段と、所定のパルスシーケンスに基づいて前記傾斜磁場発生手段と前記高周波磁場発生手段と前記受信手段と前記信号処理手段を制御する計測制御手段とを備え、
    前記計測制御手段は、前記高周波磁場の照射により前記被検体の所望の体積部分を励起し、次いで所定の静磁場不均一検出用パルスシーケンスにより、前記体積部分についての静磁場不均一を表すエコー信号を取得し、
    前記信号処理手段は、前記静磁場不均一を表すエコー信号から前記体積部分の静磁場分布を得、この静磁場分布を前記シミング手段が発生する空間成分毎の磁場分布で展開し、該静磁場分布を均一化するように前記シミング手段の空間成分毎に流す電流の最適値を求め、
    前記シミング手段は、その空間成分毎に前記最適値の電流を流す磁気共鳴イメージング装置において、
    前記静磁場不均一検出用パルスシーケンスは、前記スライス方向にスライスエンコード傾斜磁場を、位相エンコード方向に位相エンコード傾斜磁場を、リードアウト方向に連続反転する傾斜磁場をそれぞれ印加する基本シーケンスを繰り返し、
    前記信号処理手段は、前記リードアウト方向傾斜磁場が同一極性であって時間軸方向において同一間隔となるように取得された前記静磁場不均一を表すエコー信号から前記被検体のボクセル毎のスペクトルを求め、その特定ピークの共鳴周波数を静磁場強度に換算することにより、前記ボクセル毎の静磁場分布を得ることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記信号処理手段は、前記ボクセル毎の静磁場分布を球面調和関数の1次項および2次項を用いて展開して、それぞれの空間成分毎に前記最適電流値を求め、
    前記シミング手段は、概略球面調和関数の1次項および2次項を生成する少なくとも8つの空間成分を有して、その空間成分毎に対応する前記最適電流を流すことを特徴とする
    磁気共鳴イメージング装置。
  3. 請求項1又は2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記計測制御手段は、前記リードアウト方向のマトリクス数を残りの2方向よりも大きく設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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