JP3926402B2 - カルバモイルオキシ酢酸の製造方法及び該方法に有用な中間体 - Google Patents
カルバモイルオキシ酢酸の製造方法及び該方法に有用な中間体 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
ペネム系抗生物質原料として有用なカルバモイルオキシ酢酸の製造方法及びその中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルバモイルオキシ酢酸の合成法として次の2とうりの方法が知られている。すなわち、第一の合成法としては、チオカルバミルグリコール酸またはそのカリウム塩を原料として、臭素、過酸化マンガンまたは無水酢酸を作用させて合成する方法(Alfred Ahlgvist, J.Prakt.Chem. , 2(99) 45(1919))であり、また第2の方法としては、グリコール酸を原料として、クロロスルホニルイソシアナートを作用させて合成する方法(Walter Cabri ら, Tetrahedron Letters , 34, 3491(1993),Carlo Battistini ら、Tetrahedron Letters , 27, 513(1986) )である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら第1の方法は実験室的に合成する方法であり工業的ではなく、またその後改良された第2の方法は、実際の反応条件、処理、単離方法等の詳細な製造方法は記載されておらず、さらに原料として用いているグリコール酸は水溶液の形で流通しているが、クロロスルホニルイソシアナートは水と爆発的に反応するため、グリコール酸水溶液を直接クロロスルホニルイソシアナートと反応させることはできない。このため、カルバモイルオキシ酢酸の製造には、商業的に高価である高純度で水分を含まないグリコール酸を用いる必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
今般、発明者らは高純度で水分を含まないグリコール酸を使用しない製造方法を検討した結果、グリコール酸水溶液から容易に導けるグリコール酸エステルを用い、クロロスルホニルイソシアナートと反応させて得られるカルバモイルオキシ酢酸エステルを中間体として単離するか、あるいはこれを単離することなく加水分解してカルバモイルオキシ酢酸を製造する方法を見出だすに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、式(1):
HO−CH2 −COOR (1)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるグリコール酸エステルとクロロスルホニルイソシアナートとを反応させて、式(2):
H2 NOC−O−CH2 −COOR (2)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるカルバモイルオキシ酢酸エステルを得た後、加水分解することを特徴とするカルバモイルオキシ酢酸の製造方法、及び該方法に有用な、式(2):
H2 NOC−O−CH2 −COOR (2)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるカルバモイルオキシ酢酸エステルに関する。
【0006】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明において原料として用いる式(1):
HO−CH2 −COOR (1)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるグリコール酸エステルとしては、炭素数1〜6の低級アルキルエステルが最も好ましく次いでベンジルエステル、置換されてもよいフェニルエステルの順に好ましい。
【0007】
グリコール酸エステルとクロロスルホニルイソシアナートとの反応において、クロロスルホニルイソシアナートの量は、使用するグリコール酸エステルの0.8 〜2 モル当量、好ましくは1.0 〜1.3 モル当量である。
【0008】
グリコール酸エステルとクロロスルホニルイソシアナートとの反応温度は -20〜50℃、好ましくは0 〜25℃である。またその反応時間は15分から4 時間、好ましくは30分〜2時間である。
【0009】
この反応に使用する溶媒は、クロロスルホニルイソシアナートに対して不活性なものであればよく、好ましくはヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素や、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素などである。
【0010】
本発明において、カルバモイルオキシ酢酸の製造工程中、式(2):
H2 NOC−O−CH2 −COOR (2)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるカルバモイルオキシ酢酸エステルが中間体として生成され、本発明においては、そのカルバモイルオキシ酢酸エステルを単離させることができる。
【0011】
このようにして得られるカルバモイルオキシ酢酸エステルはいずれも新規化合物であり、この化合物自身もペネム系抗生物質の原料として有用なる化合物である。
【0012】
カルバモイルオキシ酢酸の製造工程において、そのカルバモイルオキシ酢酸エステルを単離しない場合は、この反応液を使用するクロロスルホニルイソシアナートの1〜5倍重量、好ましくは2〜3倍重量の水に滴下した後、そのまま0 〜100 ℃、好ましくは25〜50℃の温度条件下で撹拌することにより、カルバモイルオキシ酢酸エステルの加水分解を進行させる。この加水分解の反応時間は特に限定はされないが、1時間〜7日間、好ましくは2〜24時間である。加水分解が進行すると目的のカルバモイルオキシ酢酸が析出してくるので、これをろ過すればカルバモイルオキシ酢酸を単離できる。
【0013】
また、ろ過の前に、使用したクロロスルホニルイソシアナートの1〜3モル当量好ましくは1.8〜2.2当量のアルカリを投入して、系内の塩酸、硫酸を中和することにより、加水分解液の酸臭や腐食性を軽減し、かつ塩析効果によるカルバモイルオキシ酢酸の析出量の増大を図ることができる。この時のアルカリはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。
【0014】
またカルバモイルオキシ酢酸の製造工程において、そのカルバモイルオキシ酢酸エステルを単離する場合は、この反応液に水を加え、0 〜100 ℃、好ましくは5〜25℃を保ちながら撹拌することで、カルバモイルオキシ酢酸エステルを生成させる。水の添加方法としては、反応液に水を加えても、また水に反応液を加えてもよい。その際の水の量としては使用するクロロスルホニルイソシアナートの1〜10倍重量、好ましくは2〜3倍重量である。また反応時間は15分〜8 時間、好ましくは30分〜2時間である。
【0015】
こうようにして得られたカルバモイルオキシ酢酸エステルは、混在する有機層を分離、濃縮することで単離することができる。
【0016】
カルバモイルオキシ酢酸エステルは、酸性条件下で0 〜100 ℃、好ましくは25〜50℃にて水と撹拌することにより、エステル部分を選択的に加水分解できる。
【0017】
この時に用いる酸は塩酸、硫酸のような鉱酸やp- トルエンスルホン酸のような有機酸の他、強酸性イオン交換樹脂が望ましい。使用する酸の量は加水分解するカルバモイルオキシ酢酸エステルに対して0.2 〜5モル当量、好ましくは0.5 〜3モル当量である。強酸性イオン交換樹脂を用いる場合、加水分解するカルバモイルオキシ酢酸エステルに対する使用量は、用いるイオン交換樹脂の総交換容量で0.5 〜10倍モル当量、好ましくは1〜3倍モル当量である。
【0018】
またカルバモイルオキシ酢酸エステルの加水分解に使用する水の量は、用いるカルバモイルオキシ酢酸エステルに対して1〜20重量倍、好ましくは5〜10重量倍である。
【0019】
加水分解の反応時間は特に限定されないが、1時間〜7日間、好ましくは2時間〜24時間である。
【0020】
強酸性イオン交換樹脂を使用する場合、カルバモイルオキシ酢酸エステルと強酸性イオン交換樹脂とを水とともに撹拌する方法、あるいは強酸性イオン交換樹脂の充填塔にカルバモイルオキシ酢酸エステル水溶液を循環させる方法が好ましい。
【0021】
加水分解により生成したカルバモイルオキシ酢酸は、加水分解液を濃縮することにより析出してくるのでこれをろ過すれば単離できる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1(グリコール酸メチルからカルバモイルオキシ酢酸の合成)
撹拌子をいれた200ml 四つ口フラスコに、温度計を装着し系内を窒素置換した。ここに塩化メチレン90ml、グリコール酸メチル31.36g(ガスクロマトグラフ分析で98% 純度、0.341mol)を加え、氷冷下、クロロスルホニルイソシアナート30ml(48.78g、0.345mol)を5 〜10℃を維持しながら1 時間かけて滴下した。
【0024】
滴下終了後は1.5 時間氷冷下に撹拌した。一方、温度計、撹拌機のついた500ml 四つ口フラスコに水100ml を入れ、撹拌しながら10℃以下に氷冷した。ここに、前述の反応液を15〜18℃を保ちながら35分かけて加えた。滴下終了後は室温にて1 時間撹拌した後、一晩放置すると白色結晶が析出した。
【0025】
再び系を撹拌しながら、25% 水酸化ナトリウム水溶液110.4g(0.69mol )を25℃以下を維持しながら20分かけて加え、その後氷冷下30分撹拌した。白色結晶をろ過し、これを50℃で減圧乾燥することにより、カルバモイルオキシ酢酸30.51gを得た。この結晶の純度は高速液体クロマトグラフより96.2% であった。その収率は72.3% であり、またNMRデ−タは次のとうりである。
【0026】
1H-NMR(DMSO-d6); 4.38ppm(s,2H), 6.5-6.9ppm(bd,2H),
12.3-13.5ppm (bs,1H)
13C-NMR(DMSO-d6); 60.2ppm, 156.2ppm, 170.4ppm
実施例2(カルバモイルオキシ酢酸エチルの合成)
100ml 三つ口フラスコに、温度計を装着し、撹拌子を入れて、系内を窒素置換した。塩化メチレン30ml、グリコール酸エチル5.02g (ガスクロマトグラフ分析により96% 純度品、46.3mmol)を加え、系を氷冷した。
【0027】
ここにクロロスルホニルイソシアナート5ml(57.4mmol)を加え、氷冷下1.5時間攪拌した。その後、水10mlを加えて30分攪拌し、分液後、塩化メチレン抽出の後、有機層をまとめて濃縮して、カルバモイルオキシ酢酸エチルの白色結晶5.56gを得た。その収率は78.4%であり、またNMRデータは次のとうりである。
【0028】
1H−NMR(DMSO−d6); 1.29ppm(t,3H), 4.23ppm(q,2H), 4.58ppm(s,2H), 5.1−5.5ppm(bs,2H)
13C−NMR(DMSO−d6); 13.8ppm, 60.9ppm,
61.1ppm, 156.3ppm, 168.6ppm
実施例3(カルバモイルオキシ酢酸エチルの加水分解1)
実施例2の方法により得られたカルバモイルオキシ酢酸エチル1.006g(6.84mmol)を、1N塩酸10.3mlに溶かし、25〜35℃で24時間攪拌した。この液を液体クロマトグラフ分析したところ、99%の収率でカルバモイルオキシ酢酸が生成していた。
【0029】
実施例4(カルバモイルオキシ酢酸エチルの加水分解2)
温度計、撹拌機、ジムロート冷却管を装着した200ml 四つ口フラスコに、実施例2の方法により得られたカルバモイルオキシ酢酸エチル7.50g (51.0mmol)、強酸性イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B )75ml、水70mlを加えて、48℃にて8 時間撹拌した。
【0030】
その後樹脂をろ過してこれを水100mlでよく洗浄した。母液と洗液とをあわせ、減圧下で80gまで濃縮しこれを塩化メチレン50mlで2回洗浄した。水層をさらに21.84gまで減圧濃縮し、これを氷冷すると白色結晶が析出した。これをろ過し、乾燥してカルバモイルオキシ酢酸3.88gを得た。純度99.3%、収率63.5%であった。
【0031】
実施例5(カルバモイルオキシ酢酸エチルの加水分解3)
恒温槽を用いて44℃に調節した強酸性イオン交換樹脂充填塔(アンバーライトIR-120B 、60ml)に、実施例2の方法により得られたカルバモイルオキシ酢酸エチル10.03g(68.2mmol)を水100ml に溶かした液を定量ポンプを用いて循環させた。SV=8/hで16時間循環させた後、反応液をとり、充填塔は水100ml で洗浄した。
【0032】
この洗浄液と反応液を高速液体クロマトグラフにより分析したところ、収率にして84.3% のカルバモイルオキシ酢酸が生成していた。
【0033】
実施例6(グリコール酸イソプロピルを用いるカルバモイルオキシ酢酸の合成)
攪拌子をいれた100ml四つ口フラスコに、温度計を装着し系内を窒素置換した。ここに塩化メチレン50ml、グリコール酸イソプロピル10.24g(ガスクロマトグラフ分析で93%純度、80.6mmol)を加え、氷冷下、クロロスルホニルイソシアナート7.0ml(11.38g、80.4mmol)を5〜10℃を維持しながら20分かけて滴下した。
【0034】
滴下後氷冷下で30分撹拌し、その後室温で1時間撹拌した。さらに塩化メチレン50mlを入れた後水30mlを滴下し、1.5 時間室温で撹拌した。液を分液後、水層を50mlの塩化メチレンで2回抽出し、有機層をすべてあわせて硫酸マグネシウムで乾燥後、これを濃縮すると無色のオイル12.55gがとれた。このオイルは冷蔵庫で一晩冷やすと結晶となった。
【0035】
この結晶のうち12.14gをとり、水100ml 、濃塩酸6.2ml を加えて45℃で17時間撹拌した後、この液を塩化メチレン洗浄した。洗浄した後の水層を高速液体クロマトグラフにて分析したところ、6.60g (55.4mmol)のカルバモイルオキシ酢酸が生成していた。グリコール酸イソプロピルからの換算収率は71.1% であった。
【0036】
実施例7(グリコール酸ブチルからカルバモイルオキシ酢酸の合成)
攪拌子をいれた200ml四つ口フラスコに、温度計を装着し系内を窒素置換した。ここに塩化メチレン60ml、グリコール酸ブチル29.43g(ガスクロマトグラフ分析で98%純度、0.218mol)を加え、氷冷下、クロロスルホニルイソシアナート20ml(0.230mol)を5〜10℃を維持しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後は1.5時間氷冷下に攪拌した。
【0037】
一方、温度計、撹拌機のついた500ml 四つ口フラスコに水67mlを入れ、撹拌しながら10℃以下に氷冷しておき、ここに、前述の反応液を15〜18℃を保ちながら30分かけて加えた。滴下終了後は室温にて1 時間撹拌した後、42-44 ℃で12.5時間撹拌した後、室温で4日間放置した。再び系を撹拌しながら、25% 水酸化ナトリウム水溶液73.6g (0.46mol )を25℃以下を維持しながら20分かけて加え、その後氷冷下30分撹拌した。白色結晶をろ過し、これを50℃で減圧乾燥することにより、カルバモイルオキシ酢酸19. 71g を得た。この結晶の純度は高速液体クロマトグラフより95.0% であった。なおその収率は72% であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明により、ペネム系抗生物質原料として有用なカルバモイルオキシ酢酸及びカルバモイルオキシ酢酸エステルを容易にかつ安価に製造することができる。
【産業上の利用分野】
ペネム系抗生物質原料として有用なカルバモイルオキシ酢酸の製造方法及びその中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルバモイルオキシ酢酸の合成法として次の2とうりの方法が知られている。すなわち、第一の合成法としては、チオカルバミルグリコール酸またはそのカリウム塩を原料として、臭素、過酸化マンガンまたは無水酢酸を作用させて合成する方法(Alfred Ahlgvist, J.Prakt.Chem. , 2(99) 45(1919))であり、また第2の方法としては、グリコール酸を原料として、クロロスルホニルイソシアナートを作用させて合成する方法(Walter Cabri ら, Tetrahedron Letters , 34, 3491(1993),Carlo Battistini ら、Tetrahedron Letters , 27, 513(1986) )である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら第1の方法は実験室的に合成する方法であり工業的ではなく、またその後改良された第2の方法は、実際の反応条件、処理、単離方法等の詳細な製造方法は記載されておらず、さらに原料として用いているグリコール酸は水溶液の形で流通しているが、クロロスルホニルイソシアナートは水と爆発的に反応するため、グリコール酸水溶液を直接クロロスルホニルイソシアナートと反応させることはできない。このため、カルバモイルオキシ酢酸の製造には、商業的に高価である高純度で水分を含まないグリコール酸を用いる必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
今般、発明者らは高純度で水分を含まないグリコール酸を使用しない製造方法を検討した結果、グリコール酸水溶液から容易に導けるグリコール酸エステルを用い、クロロスルホニルイソシアナートと反応させて得られるカルバモイルオキシ酢酸エステルを中間体として単離するか、あるいはこれを単離することなく加水分解してカルバモイルオキシ酢酸を製造する方法を見出だすに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、式(1):
HO−CH2 −COOR (1)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるグリコール酸エステルとクロロスルホニルイソシアナートとを反応させて、式(2):
H2 NOC−O−CH2 −COOR (2)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるカルバモイルオキシ酢酸エステルを得た後、加水分解することを特徴とするカルバモイルオキシ酢酸の製造方法、及び該方法に有用な、式(2):
H2 NOC−O−CH2 −COOR (2)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるカルバモイルオキシ酢酸エステルに関する。
【0006】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明において原料として用いる式(1):
HO−CH2 −COOR (1)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるグリコール酸エステルとしては、炭素数1〜6の低級アルキルエステルが最も好ましく次いでベンジルエステル、置換されてもよいフェニルエステルの順に好ましい。
【0007】
グリコール酸エステルとクロロスルホニルイソシアナートとの反応において、クロロスルホニルイソシアナートの量は、使用するグリコール酸エステルの0.8 〜2 モル当量、好ましくは1.0 〜1.3 モル当量である。
【0008】
グリコール酸エステルとクロロスルホニルイソシアナートとの反応温度は -20〜50℃、好ましくは0 〜25℃である。またその反応時間は15分から4 時間、好ましくは30分〜2時間である。
【0009】
この反応に使用する溶媒は、クロロスルホニルイソシアナートに対して不活性なものであればよく、好ましくはヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素や、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素などである。
【0010】
本発明において、カルバモイルオキシ酢酸の製造工程中、式(2):
H2 NOC−O−CH2 −COOR (2)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるカルバモイルオキシ酢酸エステルが中間体として生成され、本発明においては、そのカルバモイルオキシ酢酸エステルを単離させることができる。
【0011】
このようにして得られるカルバモイルオキシ酢酸エステルはいずれも新規化合物であり、この化合物自身もペネム系抗生物質の原料として有用なる化合物である。
【0012】
カルバモイルオキシ酢酸の製造工程において、そのカルバモイルオキシ酢酸エステルを単離しない場合は、この反応液を使用するクロロスルホニルイソシアナートの1〜5倍重量、好ましくは2〜3倍重量の水に滴下した後、そのまま0 〜100 ℃、好ましくは25〜50℃の温度条件下で撹拌することにより、カルバモイルオキシ酢酸エステルの加水分解を進行させる。この加水分解の反応時間は特に限定はされないが、1時間〜7日間、好ましくは2〜24時間である。加水分解が進行すると目的のカルバモイルオキシ酢酸が析出してくるので、これをろ過すればカルバモイルオキシ酢酸を単離できる。
【0013】
また、ろ過の前に、使用したクロロスルホニルイソシアナートの1〜3モル当量好ましくは1.8〜2.2当量のアルカリを投入して、系内の塩酸、硫酸を中和することにより、加水分解液の酸臭や腐食性を軽減し、かつ塩析効果によるカルバモイルオキシ酢酸の析出量の増大を図ることができる。この時のアルカリはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。
【0014】
またカルバモイルオキシ酢酸の製造工程において、そのカルバモイルオキシ酢酸エステルを単離する場合は、この反応液に水を加え、0 〜100 ℃、好ましくは5〜25℃を保ちながら撹拌することで、カルバモイルオキシ酢酸エステルを生成させる。水の添加方法としては、反応液に水を加えても、また水に反応液を加えてもよい。その際の水の量としては使用するクロロスルホニルイソシアナートの1〜10倍重量、好ましくは2〜3倍重量である。また反応時間は15分〜8 時間、好ましくは30分〜2時間である。
【0015】
こうようにして得られたカルバモイルオキシ酢酸エステルは、混在する有機層を分離、濃縮することで単離することができる。
【0016】
カルバモイルオキシ酢酸エステルは、酸性条件下で0 〜100 ℃、好ましくは25〜50℃にて水と撹拌することにより、エステル部分を選択的に加水分解できる。
【0017】
この時に用いる酸は塩酸、硫酸のような鉱酸やp- トルエンスルホン酸のような有機酸の他、強酸性イオン交換樹脂が望ましい。使用する酸の量は加水分解するカルバモイルオキシ酢酸エステルに対して0.2 〜5モル当量、好ましくは0.5 〜3モル当量である。強酸性イオン交換樹脂を用いる場合、加水分解するカルバモイルオキシ酢酸エステルに対する使用量は、用いるイオン交換樹脂の総交換容量で0.5 〜10倍モル当量、好ましくは1〜3倍モル当量である。
【0018】
またカルバモイルオキシ酢酸エステルの加水分解に使用する水の量は、用いるカルバモイルオキシ酢酸エステルに対して1〜20重量倍、好ましくは5〜10重量倍である。
【0019】
加水分解の反応時間は特に限定されないが、1時間〜7日間、好ましくは2時間〜24時間である。
【0020】
強酸性イオン交換樹脂を使用する場合、カルバモイルオキシ酢酸エステルと強酸性イオン交換樹脂とを水とともに撹拌する方法、あるいは強酸性イオン交換樹脂の充填塔にカルバモイルオキシ酢酸エステル水溶液を循環させる方法が好ましい。
【0021】
加水分解により生成したカルバモイルオキシ酢酸は、加水分解液を濃縮することにより析出してくるのでこれをろ過すれば単離できる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1(グリコール酸メチルからカルバモイルオキシ酢酸の合成)
撹拌子をいれた200ml 四つ口フラスコに、温度計を装着し系内を窒素置換した。ここに塩化メチレン90ml、グリコール酸メチル31.36g(ガスクロマトグラフ分析で98% 純度、0.341mol)を加え、氷冷下、クロロスルホニルイソシアナート30ml(48.78g、0.345mol)を5 〜10℃を維持しながら1 時間かけて滴下した。
【0024】
滴下終了後は1.5 時間氷冷下に撹拌した。一方、温度計、撹拌機のついた500ml 四つ口フラスコに水100ml を入れ、撹拌しながら10℃以下に氷冷した。ここに、前述の反応液を15〜18℃を保ちながら35分かけて加えた。滴下終了後は室温にて1 時間撹拌した後、一晩放置すると白色結晶が析出した。
【0025】
再び系を撹拌しながら、25% 水酸化ナトリウム水溶液110.4g(0.69mol )を25℃以下を維持しながら20分かけて加え、その後氷冷下30分撹拌した。白色結晶をろ過し、これを50℃で減圧乾燥することにより、カルバモイルオキシ酢酸30.51gを得た。この結晶の純度は高速液体クロマトグラフより96.2% であった。その収率は72.3% であり、またNMRデ−タは次のとうりである。
【0026】
1H-NMR(DMSO-d6); 4.38ppm(s,2H), 6.5-6.9ppm(bd,2H),
12.3-13.5ppm (bs,1H)
13C-NMR(DMSO-d6); 60.2ppm, 156.2ppm, 170.4ppm
実施例2(カルバモイルオキシ酢酸エチルの合成)
100ml 三つ口フラスコに、温度計を装着し、撹拌子を入れて、系内を窒素置換した。塩化メチレン30ml、グリコール酸エチル5.02g (ガスクロマトグラフ分析により96% 純度品、46.3mmol)を加え、系を氷冷した。
【0027】
ここにクロロスルホニルイソシアナート5ml(57.4mmol)を加え、氷冷下1.5時間攪拌した。その後、水10mlを加えて30分攪拌し、分液後、塩化メチレン抽出の後、有機層をまとめて濃縮して、カルバモイルオキシ酢酸エチルの白色結晶5.56gを得た。その収率は78.4%であり、またNMRデータは次のとうりである。
【0028】
1H−NMR(DMSO−d6); 1.29ppm(t,3H), 4.23ppm(q,2H), 4.58ppm(s,2H), 5.1−5.5ppm(bs,2H)
13C−NMR(DMSO−d6); 13.8ppm, 60.9ppm,
61.1ppm, 156.3ppm, 168.6ppm
実施例3(カルバモイルオキシ酢酸エチルの加水分解1)
実施例2の方法により得られたカルバモイルオキシ酢酸エチル1.006g(6.84mmol)を、1N塩酸10.3mlに溶かし、25〜35℃で24時間攪拌した。この液を液体クロマトグラフ分析したところ、99%の収率でカルバモイルオキシ酢酸が生成していた。
【0029】
実施例4(カルバモイルオキシ酢酸エチルの加水分解2)
温度計、撹拌機、ジムロート冷却管を装着した200ml 四つ口フラスコに、実施例2の方法により得られたカルバモイルオキシ酢酸エチル7.50g (51.0mmol)、強酸性イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B )75ml、水70mlを加えて、48℃にて8 時間撹拌した。
【0030】
その後樹脂をろ過してこれを水100mlでよく洗浄した。母液と洗液とをあわせ、減圧下で80gまで濃縮しこれを塩化メチレン50mlで2回洗浄した。水層をさらに21.84gまで減圧濃縮し、これを氷冷すると白色結晶が析出した。これをろ過し、乾燥してカルバモイルオキシ酢酸3.88gを得た。純度99.3%、収率63.5%であった。
【0031】
実施例5(カルバモイルオキシ酢酸エチルの加水分解3)
恒温槽を用いて44℃に調節した強酸性イオン交換樹脂充填塔(アンバーライトIR-120B 、60ml)に、実施例2の方法により得られたカルバモイルオキシ酢酸エチル10.03g(68.2mmol)を水100ml に溶かした液を定量ポンプを用いて循環させた。SV=8/hで16時間循環させた後、反応液をとり、充填塔は水100ml で洗浄した。
【0032】
この洗浄液と反応液を高速液体クロマトグラフにより分析したところ、収率にして84.3% のカルバモイルオキシ酢酸が生成していた。
【0033】
実施例6(グリコール酸イソプロピルを用いるカルバモイルオキシ酢酸の合成)
攪拌子をいれた100ml四つ口フラスコに、温度計を装着し系内を窒素置換した。ここに塩化メチレン50ml、グリコール酸イソプロピル10.24g(ガスクロマトグラフ分析で93%純度、80.6mmol)を加え、氷冷下、クロロスルホニルイソシアナート7.0ml(11.38g、80.4mmol)を5〜10℃を維持しながら20分かけて滴下した。
【0034】
滴下後氷冷下で30分撹拌し、その後室温で1時間撹拌した。さらに塩化メチレン50mlを入れた後水30mlを滴下し、1.5 時間室温で撹拌した。液を分液後、水層を50mlの塩化メチレンで2回抽出し、有機層をすべてあわせて硫酸マグネシウムで乾燥後、これを濃縮すると無色のオイル12.55gがとれた。このオイルは冷蔵庫で一晩冷やすと結晶となった。
【0035】
この結晶のうち12.14gをとり、水100ml 、濃塩酸6.2ml を加えて45℃で17時間撹拌した後、この液を塩化メチレン洗浄した。洗浄した後の水層を高速液体クロマトグラフにて分析したところ、6.60g (55.4mmol)のカルバモイルオキシ酢酸が生成していた。グリコール酸イソプロピルからの換算収率は71.1% であった。
【0036】
実施例7(グリコール酸ブチルからカルバモイルオキシ酢酸の合成)
攪拌子をいれた200ml四つ口フラスコに、温度計を装着し系内を窒素置換した。ここに塩化メチレン60ml、グリコール酸ブチル29.43g(ガスクロマトグラフ分析で98%純度、0.218mol)を加え、氷冷下、クロロスルホニルイソシアナート20ml(0.230mol)を5〜10℃を維持しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後は1.5時間氷冷下に攪拌した。
【0037】
一方、温度計、撹拌機のついた500ml 四つ口フラスコに水67mlを入れ、撹拌しながら10℃以下に氷冷しておき、ここに、前述の反応液を15〜18℃を保ちながら30分かけて加えた。滴下終了後は室温にて1 時間撹拌した後、42-44 ℃で12.5時間撹拌した後、室温で4日間放置した。再び系を撹拌しながら、25% 水酸化ナトリウム水溶液73.6g (0.46mol )を25℃以下を維持しながら20分かけて加え、その後氷冷下30分撹拌した。白色結晶をろ過し、これを50℃で減圧乾燥することにより、カルバモイルオキシ酢酸19. 71g を得た。この結晶の純度は高速液体クロマトグラフより95.0% であった。なおその収率は72% であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明により、ペネム系抗生物質原料として有用なカルバモイルオキシ酢酸及びカルバモイルオキシ酢酸エステルを容易にかつ安価に製造することができる。
Claims (2)
- 式(1):
HO−CH2 −COOR (1)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるグリコール酸エステルとクロロスルホニルイソシアナートとを反応させて、式(2):
H2 NOC−O−CH2 −COOR (2)
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を表す]
で表されるカルバモイルオキシ酢酸エステルを得た後、加水分解することを特徴とするカルバモイルオキシ酢酸の製造方法。 - カルバモイルオキシ酢酸エステルを単離した後、酸性条件下で加水分解することを特徴とする請求項1に記載のカルバモイルオキシ酢酸の製造方法。
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---|---|---|---|
JP32133494A JP3926402B2 (ja) | 1994-11-30 | 1994-11-30 | カルバモイルオキシ酢酸の製造方法及び該方法に有用な中間体 |
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JPH08157441A JPH08157441A (ja) | 1996-06-18 |
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- 1994-11-30 JP JP32133494A patent/JP3926402B2/ja not_active Expired - Fee Related
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