JP3924976B2 - 遺伝子の発現頻度の解析方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子の発現頻度の解析方法に関し、詳しくは、遺伝子発現の動的変化を捉えるために、細胞において蛋白質をコードする全遺伝子より発現しているmRNAの種類と量を、微量生体サンプルを用いて解析することが可能な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゲノム上に存在する蛋白質をコードする遺伝子の総数は、ヒトで約10万種と予想されている。既に全ゲノム構造が明らかとなった酵母では、蛋白質をコードする遺伝子の総数は約5000種と推定されている。
【0003】
近年、公共の遺伝子データバンクが欧米、日本を中心に設立され、世界中の膨大な量の遺伝子情報がデータバンクに登録されており、さらに日々新たな情報がデータバンクに集まって来る。世界規模で行なわれているヒトゲノムプロジェクト(human genome project)は、2005年を目標にヒトゲノムの全遺伝子の配列を明らかにしつつあり、その遺伝子情報もデータバンクに登録されつつある。ある遺伝子配列についてデータバンクに問い合わせると、その配列と同一又は類似の配列を持つ遺伝子が既に登録されているか否か、さらには登録されていれば、その配列に関する情報、例えば、遺伝子名、機能、関連する文献等を知ることができる。このような検索をホモロジー検索といい、ホモロジー検索を行うソフトウエアは何種類かあるが、多数の検索を行なう場合は検索時間の短いBLASTが通常用いられている。
【0004】
通常、細胞の遺伝子は全ての遺伝子がmRNAに読みとられ、mRNAから蛋白質が生産されている訳ではなく、ヒトでは1細胞の発現している遺伝子は約15000種と推定されている。このように、細胞中では何種類ものゲノム遺伝子が発現しており、それに応じた種類のメッセンジャーRNA(以下、「mRNA」という)が生成しているが、発現している遺伝子の種類及び量(以下、「遺伝子発現頻度情報」ともいう)は、細胞の種類、状態により変動する。例えば、血液幹細胞からリンパ球前駆細胞、プレB細胞、B細胞、活性化B細胞と分化するに従い、各細胞で共通に発現する遺伝子もあるが、全く違う遺伝子発現を示す。
【0005】
上記のような遺伝子発現頻度情報を測定することを、遺伝子発現プロファイル解析という。細胞の生命活動を担っているのは主として蛋白質であり、mRNAから翻訳される蛋白質の種類と量を解析することは、遺伝子発現解析として重要であるが、現状では全蛋白質のプロファイルを得ることは技術的に困難である。一方、mRNAについては、全種類のmRNAを測定することが可能となっている。
【0006】
遺伝子発現プロファイル解析法として最初に報告されたのは、Body Map法(Gene, 174, 151-158 (1996))である。Body Map法の概略は以下の通りである。mRNAをベクター上のポリT配列とmRNAの3'末端にあるポリAテールを結合させ、ベクターポリT配列をプライマーとしてcDNAを合成する。更に、制限酵素MboIでcDNAを切断する。MboIサイトはcDNA上で平均300塩基対に一つあるため、ベクター上のcDNAは平均300塩基対に分断される。このとき、最もポリAテールよりのcDNAは、ベクターに結合したまま残る。このcDNA断片を持つベクターを閉環させ、それを大腸菌に導入してcDNAライブラリーを作製する。ライブラリーから約1000クローンを任意に選択して、それぞれについて平均300塩基対の塩基配列を決定する。それらの配列の中から同じ配列を含むクローン毎にまとめて、それぞれの配列の種類と出現頻度を算出して遺伝子発現プロファイルを得る。各cDNA配列はデータバンクとのホモロジー検索(BLAST検索)を行い、既知の遺伝子と同一の配列を有するクローンにはその遺伝子の名称を与える。配列がデータバンクに登録されていない場合は、その配列に該当する遺伝子は存在しないものとする。
【0007】
BLAST検索によりホモロジー検索を行なうためには、最低11塩基対の情報が必要である。10塩基からなる配列の種類は約百万種であり、人で存在すると予想される遺伝子の種類10万種を遙かに越える。すなわち、11塩基対の情報があれば、その配列を持つ遺伝子は特定することができ、遺伝子発現プロファイル解析が可能である。したがって、多量のシークエンスを必要とするBody Mapによる遺伝子発現プロファイル解析を効率化するために、Body Mapにおける約300塩基対のcDNA断片を、更に11塩基対以上の短い断片(「タグ(tag)」と呼ばれる)とし、更にこの断片同士を多数連結してベクターに挿入することにより、連結タグのライブラリーを作成し、Body Mapと同様に約1000クローンを任意に選択して、連結タグのDNA配列を決定すれば、Body Mapと同じ手数でより多くの遺伝子発現情報を得ることが期待できる。タグは遺伝子配列を代表し、タグの出現頻度はその遺伝子の発現頻度を現す。通常、1回のシークエンスで判読出来るDNA配列の長さは約600塩基対であるから、1回のシークエンスで最大50個程度のタグのDNA配列を判読出来る。すなわち、Body Map法に比べて最大約50倍の効率で、遺伝子発現プロファイル解析を行うことが可能になる。
【0008】
上記の考えに基づいた遺伝子発現プロファイル解析法として、Serial analysis of gene expression(SAGE)法がある(米国特許第527,154号、第544,861号、欧州特許公開第0761 822号)。SAGEは、ビオチンが3'末端に結合したポリTをプライマーとしてcDNAを作製し、Body Mapと同様にMboI等の制限酵素(「アンカリング酵素(anchoring enzyme)」と呼ばれる)でcDNAを切断した後、ビオチンが結合した3'末端を含むcDNA断片をアビジンビーズに吸着させ、ビーズを二分して、それぞれのビーズに吸着したcDNA断片(約13bp)に2種のリンカー(A又はB)の一方づつを結合させる。各リンカーにはBsmFIのようなClass II制限酵素(「タグ化酵素(tagging enzyme)」と呼ばれる)のサイトを含ませておく。タグ化酵素でcDNA断片をビーズから切り出し、切断部位を平滑化し、Aリンカーに接続するタグとBリンカーに接続するタグを連結させる。これは、ダイタグ(ditag)と称される。AリンカーとBリンカーを認識するプライマーを用いてPCRによりダイ夕グを増幅する。増幅されたダイタグ同士を多数連結させてベクターに組み込み、シークエンスする。1シークエンスで最大50程度のタグシークエンスを得ることができる。このタグシークエンス情報を集計して、遺伝子発現頻度を導き出す。
【0009】
また、遺伝子の発現頻度を解析する他の方法として、遺伝子チップ法及び遺伝子マイクロアレイ法がある。いずれも、遺伝子断片を何等かの板の上(通常はスライドガラス)に、極めて高密度に(約10個/mm2以上)並べて張り付けたものが用いられる。このチップと蛍光ラベルしたmRNAをハイブリダイズさせて、mRNAの種類と量を測定する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、遺伝子の発現頻度を解析する方法がいくつか開発され、それなりの成果は得られている。現状では、全ての真核生物の全ての遺伝子の発現頻度を測定するにはSAGE法が最も有効な手段であるが、実際にこの手法を実施しようとすると多くの問題に遭遇して、殆どの研究機関でSAGE法を再現することができなかった。すなわち、SAGE法は、手技が難しく、特別に訓練した者しか実施できない。また、測定にはmRNAが1μg程度必要であり、小量の検体しか入手できない場合、例えば臨床生検材料では測定することや、組織の微細な部分の遺伝子発現の違いを測定するこは、事実上不可能である。さらに、原理的に測定ミスが多い。
【0011】
SAGE法では、正確にタグの配列を読み取ることは極めて重要である。なぜなら、タグは短く(約13bp)、一カ所でも読み間違いがあると同一物であるにも関わらず別物と判断したり、また、異なるタグを同一物とみなしてしまうことが起こる。ところが、SAGE法にはこの間違いが生じる可能性が高い。なぜなら、SAGE法では2つのタグをつなげてダイタグを形成するが、このときにタグとタグの境界が不明瞭になるからである。タグはBsmFIやFokIなどの制限酵素で切り取られる短い遺伝子断片である。しかし、これらの酵素は切断部位が必ずしも安定しておらず、切り出されたタグの長さはまちまちである。このように長さの異なるタグが混在している状態でタグとタグをつなげてダイタグにすると、タグとタグの連結部位の塩基は、もともとどちらのタグ由来のものなのか判らなくなる。その結果、正確なタグの配列が得られなくなる。このように、SAGE法には原理的に不可避な欠点がある。また、SAGE法にはアビジン、ビオチンビーズを用いてDNAを回収する操作があるが、アビジン、ビオチンビーズを用いてコンタミネーションを生じることなくDNAを回収することは実際には非常に難しく、プロトコール通りの操作では正確なデータを得ることは非常に困難である。また、SAGE法ではデータを得るためには多量のmRNAを必要とし、臨床サンプルなどのサンプル量に限りがあるものの場合、十分なmRNAは得られず、SAGE法は実施困難であった。
【0012】
また、遺伝子チップ法及び遺伝子マイクロアレイ法では、Body Map法やSAGE法と違って、構造の解っている遺伝子しか測定することができない。したがって、現状では、全ての生物の全ての遺伝子の発現頻度を測定することはできない。
【0013】
現状では、全ての真核生物の全ての遺伝子の発現頻度を測定するにはSAGE法が最も有効な手段であるが、実際にこの手法を実施しようとすると多くの問題に遭遇して、殆どの研究機関でSAGE法を再現することができなかった。SAGE法の問題点を上げると、(1)手技が難しく、特別に訓練した者しか実施出来ない。(2)測定にmRNA量が1μg程度必要であり、小量の検体しか入手できない場合、例えば臨床生検材料は測定できない。同様に、組織の微細な部分の遺伝子発現の違いを測定することができない。(3)ダイタクを測定するために、原理的に測定ミスが多い。
【0014】
本発明は、上記現状に鑑みなされたものであり、通常の研究者が容易に実施することができ、また、ごく微量の検体から正確な遺伝子発現頻度解析が行なうことができる方法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリT配列を有するベクタープライマーを用いてmRNAからcDNAを合成し、同ベクター上でcDNA配列をタグ化し、得られたタグを、タグの末端が識別できるような配列を介在させて連結することによりコンカテマーを形成させ、このコンカテマーの塩基配列を解析することによって、効率よく、しかも高精度で遺伝子の発現頻度を解析することができることを見出し、「MAGE(Micro-analysis of Gene Expression)」と名付けた本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、
(1)以下のステップを含む遺伝子の発現頻度を解析する方法;
(a)直鎖状のプラスミドベクターの一方の3’末端に一本鎖のポリT配列と、その内側に第一の制限酵素認識配列とを有し、他方の末端近傍に第二の制限酵素認識配列と、さらにその内側にタイプIIS制限酵素認識配列とを有するベクタープライマーと、遺伝子の発現頻度を解析しようとする細胞に由来するmRNAとをアニールさせてcDNA合成を行い、cDNAが結合したベクタープライマーを生成するステップと、
(b)前記cDNAが結合したベクタープライマーを、ベクタープライマーを切断せず、かつ、前記第二の制限酵素の切断末端と同じ形の末端を生じさせる第三の制限酵素と、前記第二の制限酵素とを用いて消化してcDNAの上流側を切除し、ベクタープライマーを閉環するステップと、
(c)閉環したベクタープライマーを、前記第一の制限酵素及び前記タイプIIS制限酵素で消化して、cDNAの一部からなるタグを残してcDNAの下流側を切除し、ベクタープライマーを再び閉環するステップと、
(d)前記ベクタープライマーを鋳型とし、ベクタープライマー中のタグの両側のそれぞれの領域に相当する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとしてポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を行い、タグを増幅するステップと、
(e)前記増幅産物を連結してタグのコンカテマーを形成するステップと、
(f)前記コンカテマーの塩基配列を決定し、その塩基配列中に出現するタグの種類及びその頻度を調べるステップ。
【0017】
(2)前記ステップ(e)において、連結反応を、一方の末端がタグの末端と同じ形を有するアダプター存在下で行い、それによりコンカテマーの両端にアダプターを配置させ、アダプターの配列に相当する配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いてPCRを行うことによりコンカテマーを増幅することを特徴とする(1)の方法。
(3)前記ステップ(e)の後に、前記コンカテマーの塩基配列の決定を、塩基配列決定用のクローニングベクターにクローニングして行うことを特徴とする(1)又は(2)の方法。
【0018】
(4)前記第三の制限酵素の認識配列が4塩基である(1)〜(3)のいずれかの方法。
(5)ベクタープライマーは、第二の制限酵素認識配列の切断点の内側と同じ位置又はその内側に切断点を有し、かつ、タイプIIS制限酵素による切断によってベクタープライマーから切除されない第四の制限酵素認識配列を有し、
前記(d)のステップで用いるプライマーのうち、タグの下流側のプライマーは、第四の制限酵素切断末端と同じ形の末端を生じさせる第五の制限酵素の認識配列を有し、増幅されたプライマーを第四の制限酵素及び第五の制限酵素で消化した後にコンカテマーを形成させる(1)〜(4)のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
(6)前記ベクタープライマーは、第一の制限酵素認識配列のさらに内側に第五の制限酵素認識配列と一塩基異なる塩基配列を有し、前記タグの下流側のプライマーを用いたPCRにより前記一塩基異なる塩基配列が第五の制限酵素認識配列に変換される(5)の方法。
(7)前記第三の制限酵素、第四の制限酵素及び第五の制限酵素が同一である前記(6)の方法。
【0020】
(8)ベクタープライマーが、マルチクローニング部位を有するプラスミドを同マルチクローニング部位の二箇所で切断して得られる直鎖状プラスミドと、この直鎖状プラスミドの一方の末端と同じ形の末端を有し、一本鎖のポリT配列を有する部分二本鎖DNAとが連結されたものである(1)〜(7)のいずれかの方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の方法は、上記(a)〜(f)のステップを含む。以下、各ステップ毎に説明する。
【0022】
<1>ステップ(a)
最初のステップでは、直鎖状のプラスミドベクターの一方の3’末端に一本鎖のポリT配列と、その内側に第一の制限酵素認識配列とを有し、他方の末端近傍に第二の制限酵素認識配列と、さらにその内側にタイプIIS制限酵素認識配列とを有するベクタープライマー(以下、「逆転写用ベクタープライマー」ともいう)を用いる。ここで、タイプIIS制限酵素とは、制限酵素により認識される配列から離れた特定の部位を開裂する制限酵素をいう。
【0023】
ベクタープライマーの構造の一例を、図2Dに示す。このベクタープライマーは、例えば、マルチクローニング部位を有するプラスミドを同マルチクローニング部位の二箇所で切断して得られる直鎖状プラスミドと、この直鎖状プラスミドの一方の末端と同じ形の末端を有し、一本鎖のポリT配列を有する部分二本鎖DNAとを連結することにより、調製することができる。図1に、マルチクローニング部位を有するプラスミドの例として、MAGE/pUC19の構造を示す。このプライマーは、基本構造として公知のクローニングベクターであるpUC19を含み、そのマルチクローニングサイトのEcoRlとHindlll制限酵素部位の間に、種々の制限酵素認識部位を含む配列(Z fragmentと呼ぶ。配列を配列番号1に示す。)が挿入されたものである。
尚、以下の具体例では、MAGE/pUC19は、Damメチレーション系を有するエシェリヒア・コリ宿主、例えばJM109株等を用いて調製したものを使用する例について説明するが、本発明に必須ではない。また、基本構造となるベクターは、pUC19に限られるものでなく、それ以外のベクター、例えばpUC18、pBR322、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218等、種々のベクターを用いることができる。尚、用いるベクターの宿主は、形質転換、宿主からのベクターの回収等、通常の遺伝子組換え技術を適用することができるものであれば特に制限されるものではないが、通常、エシェリヒア・コリが用いられる。
【0024】
以下、マルチクローニング部位を有するプラスミドとしてMAGE/pUC19を用いた例について説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
まず、MAGE/pUC19ベクター(図2A)を、制限酵素BstXI及びPstIで処理し、切り取られた小断片を除去する(図2B)。次にBstXIによる切断末端に、一本鎖のポリT配列を有する部分二本鎖DNA(図2Cに示すポリTアダプター)をライゲーションする。これにより、MAGE/pUC19ベクターの一端から一本鎖のポリTが飛び出した形のベクタープライマー(又は、逆転写用ベクタープライマー)が形成される(図2D)。このベクタープライマーでは、第一の制限酵素はPmeIであり、第二の制限酵素はBglIIであり、タイプIIS制限酵素はBsgIである。
【0025】
第二の制限酵素BglIIの認識配列にはMboI認識配列が重複して含まれており、BglII末端をMboI末端と連結すると、MboIで切断することができる。また、この例では、ベクタープライマーの第一の制限酵素(PmeI)認識配列のさらに内側に、第四の制限酵素(MboI)認識配列と一塩基異なる塩基配列を含むように設計されている(図3EのΔMboI)。このΔMboI及びベクタープライマーの第一の制限酵素認識配列は、ポリTアダプターに由来する。
【0026】
第一の制限酵素及び第二の制限酵素は、ベクタープライマーを一箇所で切断するものであれば特に限定されない。また、タイプIIS制限酵素及びその存在位置は、ベクタープライマーから第四の制限酵素部位を切除せず、かつ、cDNAの上流側の一部をベクタープライマーに残したまま切断するものであれば特に制限されない。具体的には、例えば上記BsgIの他に、BsmFI等が挙げられる。
また、ポリT配列の長さは、mRNAのポリA配列とアニールできる程度の長さであればよく、通常10〜50塩基程度である。
【0027】
上記のようなベクタープライマーと、遺伝子の発現頻度を解析しようとする細胞に由来するmRNAとをアニールさせる。その状態で逆転写反応を行うと、ポリTがプライマーとなってcDNA合成が始まる(図3E)。そして、合成された一鎖目のcDNAを鋳型として二鎖目を合成し、二本鎖cDNAが合成できる(図3F)。多数のmRNA分子から多数のcDNAが結合したベクタープライマー分子(cDNA-MAGE/pUC19)ができるが、図3Fはその典型例のひとつを示したものである。
【0028】
mRNAは、遺伝子の発現頻度を解析しようとする細胞から抽出する。発現頻度を解析しようとする細胞は、動物や植物の組織の細胞、酵母等の微生物の細胞等、細胞中のmRNAの3’末端にポリA構造を有するものであれば特に制限なく使用することができる。また、原核生物のmRNAは3’末端にポリA(poly(A))構造を持たないために、そのままではベクタープライマーのポリTにアニールさせることはできないが、mRNAに酵素的にポリA構造を付加することにより、真核生物のmRNAと同様にして本発明の方法を実施することができる。
mRNAの調製、及びcDNA合成、オリゴヌクレオチドの合成、制限酵素反応、ライゲーション反応、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)、形質転換等の操作は、通常のcDNAクローニングに用いられるmRNAの調製法(例えばSambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989)等参照)と同様にして行うことができる。
【0029】
<2>ステップ(b)
次に、前記のようにして得られるcDNAが結合したベクタープライマーを、ベクタープライマーを切断せず、かつ、前記第二の制限酵素の切断末端と同じ形の末端を生じさせる第三の制限酵素と、前記第二の制限酵素とを用いて消化してcDNAの上流側を切除し、ベクタープライマーを閉環させる。閉環されたベクタープライマーは、それを適当な宿主に導入し、得られる形質転換体を培養してプラスミドを回収することにより、増幅させることができる。尚、以降の工程で得られる閉環状のベクタープライマーも同様であるが、回収されたベクタープライマーを切断しようとする制限酵素部位が、Damメチレーションにより切断されない場合には、修飾系を有しない宿主を用いる。
【0030】
前記第三の制限酵素としては4塩基認識の酵素が好ましい。6塩基認識の酵素であると、cDNA配列中に制限酵素部位が存在しない場合がある。また、ベクタープライマーに残されるcDNAの配列が長いと、後の操作で得られるタグがmRNAのポリA配列から遠くなる。そのような場合、データベース中の遺伝子の発現情報(EST:expressed sequence tag)は、通常mRNAの3’末端側の一部であるため、タグ配列を検索してもヒットしない場合がある。本発明に好適な4塩基認識の制限酵素としては、MboI、TaiI等が挙げられる。
以下、第三の制限酵素として、MboIを用いた例を説明する。まず、cDNAが結合したベクタープライマー(cDNA-MAGE/pUC19)を制限酵素BglII及びMboIで消化する(図3G)。このとき、MAGE/pUC19はDamメチレーションを受けているので、MboIでは切断されないが、逆転写により新たに合成されたcDNA中のMbolサイトだけが切断される。図3Gは、仮にcDNAが3箇所のMbolサイトを含む例を示している。cDNAに注目すると、ポリAテールから上流に向かって最初のMbolサイトまでの下流側部分がMAGE/pUC19ベクタープライマーにつながったまま残り、他の部分、すなわちcDNAの上流側はMbol切断により分離除去される。また、MAGE/pUC19は、BglIIにより一箇所のみが切断される。MboI及びBglIIで切断された末端は同じ形をしており、ライゲーション反応で互いをつなぐことができる。そこで、これらの末端を介して、cDNA-MAGE/pUC19をセルフライゲーション反応により閉環する(図3H)。
【0031】
<3>ステップ(c)
ステップ(b)で閉環したベクタープライマーを、前記第一の制限酵素及び前記タイプIIS制限酵素で消化して、cDNAの一部からなるタグを残してcDNAの下流側を切除し、ベクタープライマーを再び閉環する。
【0032】
具体的には、閉環されたcDNA-MAGE/pUC19を制限酵素BsgI及びPmeIで消化する(図4I)。これらの制限酵素の切断により、 cDNAの前記3’末端側部分のうちポリAテールから最も遠い約13塩基のみがベクタープライマーに残る。このcDNAの約13塩基からなる配列を、タグ(図4J中の「tag」で示される)と呼ぶ。
【0033】
上記のBsgIによる切断点は、5’側が2bp突出しているので、例えばT4 DNAポリメラーゼ処理により平滑化する。また、PmeIによる他方の切断末端は、平滑末端であるので、これらの末端をライゲーションすることができる(図4J)。そこで、ベクタープライマーをセルフライゲーション反応で閉環すると、タグ以外の部分のcDNAが切り取られ、MAGE/pUC19に短いタグがつながった構造のベクタープライマーが得られる(図4J、K)。
【0034】
<4>ステップ(d)
次に、ステップ(c)で閉環されたベクタープライマーを鋳型とし、ベクタープライマー中のタグの両側のそれぞれの領域に相当する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、タグを増幅する。
【0035】
具体的には、タグを含むベクタープライマーを鋳型とし、タグの両側のベクター部分の配列に相当するプライマー(例えば配列番号2及び3)を用いてPCR反応を行う(図4K)。その結果、中央にタグを含むDNAフラグメント(この場合はプライマーの配列及びタグを含めて110bp)が増幅される(図4L)。
【0036】
<5>ステップ(e)
前記のPCR増幅産物を連結してタグのコンカテマーを形成させる。その際、前記(d)のステップで用いるプライマーのうち、タグの下流側のプライマーに、第四の制限酵素切断末端と同じ形の末端を生じさせる第五の制限酵素の認識配列を含ませておき、増幅されたプライマーを第四の制限酵素及び第五の制限酵素で消化すると、効率よくコンカテマーを形成させることができる。第五の制限酵素の種類は特に制限されないが、第四の制限酵素と同じ制限酵素を用いると、操作が簡便となる。また、第四の制限酵素として、第三の制限酵素と同じ制限酵素を用いてもよい。さらに、第三、第四及び第五の制限酵素が同じであってもよい。ただし、第五の制限酵素と第四の制限酵素に同じものを用いる場合は、ステップ(b)でcDNAの全配列がベクタープライマーから切除されてしまうので、それを防ぐために、ベクタープライマーの第一の制限酵素認識配列のさらに内側に、第五の制限酵素認識配列と一塩基異なる塩基配列を含ませておき、タグの下流側に第五の制限酵素認識配列を有するプライマーを用いてPCRを行うことにより、一塩基異なる塩基配列を第五の制限酵素認識配列に変換するようにする必要がある。また、第三の制限酵素と第四の制限酵素が同じである場合には、ベクタープライマーの第四の制限酵素認識部位は、メチレーションにより切断されないようにしておく必要がある。その場合には、第四の制限酵素で消化する前に、ステップ(c)で閉環されたベクタープライマーを修飾系を持たない宿主に導入して脱修飾する。
【0037】
タグの連結反応を、一方の末端がタグの末端と同じ形を有するアダプター存在下で行い、それによりコンカテマーの両端にアダプターを配置させると、アダプターの配列に相当する配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いてPCRを行うことにより、コンカテマーを増幅することができる。アダプターは、タグの量に比べて少量用いるか、一方の末端がタグの末端と異なる形を有するアダプターを用いると、多数のタグからなるコンカテマーの末端にアダプターを配置させることができる。このようにすることで、ごく微量のコンカテマーでもクローニングすることができ、結果としてごく微量のサンプルmRNAを用いた解析が可能となる。
タグとアダプターの比率は、通常モル比でタグ:アダプター=1:1〜1:0.01、好ましくは1:0.2〜1:0.05である。この範囲でアダプターを用いると、タグが2〜50程度連結したコンカテマーが得られる。
【0038】
得られるコンカテマーは、塩基配列決定用のクローニングベクターに挿入すると、シークエンス操作が容易になる。
MAGE/pUC19を用いる場合には、ステップ(d)の増幅産物を制限酵素MboIで消化することにより、タグを含む小断片が得られる(図5M)。ここで得られたタグ断片は、既知のDNA配列、すなわちGATCとAAACGに挟まれており、どの部分がタグかを明確に識別することができる。このタグ配列は両端にMbolサイトが露出しているので、ライゲーション反応によりタグ同士を連結し、コンカテマーを形成させることができる(図5M)。
【0039】
<6>ステップ(f)
上記のようにして得られるコンカテマーの塩基配列を決定すると、その中には多数のcDNA分子に由来するタグが含まれているので、その塩基配列中に出現するタグの種類及びその頻度を調べることにより、cDNAが由来する遺伝子の発現頻度を解析することができる。タグの種類は、既知のmRNAの部分配列(EST)の情報に関するデータベースを検索することにより調べることができる。
【0040】
尚、タグのコンカテマーを増幅することにより、同一配列を持つフラグメントが複数個生じることになる。しかし、クローニング後のシークエンス解析において、先にシークエンスしたものと同一物とみなされるシークエンスは出現した場合は、それを解析から除くことにより、遺伝子発現頻度解析にPCRが及ぼす悪影響を排除することができる。
また、第四と第五の制限酵素として同じ酵素を用いた場合は、コンカテマー中のタグの向きは不定であるので、配列解析においては一方の鎖だけでなく逆鎖の配列も考慮する。
【0041】
以上説明したように、本発明の方法では、SAGE法のようにダイタグを作らず、個々のタグを既知のDNA断片で挟むことにより、タグが他のタグと連続しないようにすることができる。その結果、タグの境界が曖昧になるという問題点が解決される。また、PCRを複数回行い、試料を増幅することができるので、微量のmRNAからでも解析が可能となる。さらに、ベクタープライマーを用いることにより、ベクターに融合した形のcDNA合成を行うことで、アビジンやビオチンビーズを用いずに解析することができる。
【0042】
本発明の遺伝子発現解析法は、生命科学の研究にとって有用であるが、特に、健康人と病気の人における特定臓器、又は細胞における遺伝子発現の差異を解析する事により、病気の治療法開発や診断法開発に有用である。例えば、健康人の肝臓と肝炎の肝臓の発現遺伝子の違いを本法により解析することにより、肝炎で特異的に発現が増加したり減少したりする遺伝子を見つけることができる。これら遺伝子の肝臓での役割を調べることにより、肝炎治療を目的として、この遺伝子の働きを阻害したり、促進させたりする薬剤を開発することができる。又、遺伝子そのもの、遺伝子構造から設計したアンチセンスオリゴヌクレオチド、あるいは遺伝子を発現させて得た蛋白質等を、肝炎治療に用いることができる。
【0043】
また、発症のメカニズムが解っていない病気に対しても、本発明の方法を用いれば、治療法を開発できる可能性がある。さらに、本発明の方法により疾患特異的に発現が変動する遺伝子を発見することができれば、治療ばかりでなく、疾患の診断法を開発することも可能となる。
【0044】
さらに、医療における利用ばかりでなく、全ての真核生物を対象に有用遺伝子を発見する手段ともなる。例えば、ビール生産に適した酵母を変異により育種した場合、親株と変異株の遺伝子発現の変化を本発明の方法で解析し、変異により発現が変化した遺伝子を同定することができる。このようにして得たビール生産にとって有利な遺伝子を総合的に操作することにより、よりよいビール生産酵母を創製することができる。
【0045】
また、例えば、大腸菌やコリネバクテリウムのようなアミノ酸生産菌の解析を行うことにより、より優れたアミノ酸生産菌を創製することができる。
【0046】
【実施例】
マウスC57BL/6肝臓 1gから、Invitrogen社製FastTrack 2.0キットを用いてmRNA 35μgを抽出した。
得られたmRNA 0.97μgを用いて、上記と同様にしてMAGE/pUC19を用いて逆転写cDNA合成後、遺伝子発現頻度解析を行った。
【0047】
MAGE/pUC19ベクター(図2A)を、制限酵素BstXI及びPstIで処理し、切り取られた小断片を除去した(図2B)。次にBstXIによる切断末端に、一本鎖のポリT配列を有する部分二本鎖DNA(図2Cのに示すポリTアダプター)をライゲーションした(図2D)。このベクタープライマーでは、第一の制限酵素はPmeIであり、第二の制限酵素はBglIIであり、タイプIIS制限酵素はBsgIである。
上記ベクタープライマー0.2μgと、上記のマウス肝臓由来のmRNA 0.97μgとをアニールさせ、cDNA合成を行い、続いて合成された一鎖目のcDNAを鋳型として二鎖目を合成した(図3F)。そして、得られたcDNAの40分の1に当たる量(mRNA 0.025μg相当)を材料に遺伝子発現頻度解析を行った。
尚、別の実験では、4.5mgの微量臨床サンプルから抽出した、0.05μgの微量mRNAを実験材料にして、逆転写cDNA合成後、以下と同様にして遺伝子発現頻度解析を実施することに成功している。
【0048】
次に、前記のようにして得られるcDNAが結合したベクタープライマーを、第二の制限酵素BglII及び第三の制限酵素であるMboIで消化した(図3G)。次に、cDNA-MAGE/pUC19のMboI末端及びBglII末端をセルフライゲーション反応により連結して閉環させた(図3H)。
【0049】
前記の閉環したベクタープライマーをBsgI及びPmeIで消化し、T4 DNAポリメラーゼ処理により平滑化した後、ベクタープライマーを再び閉環させた(図4I〜K)。この閉環されたベクタープライマーを鋳型とし、ベクタープライマー中のタグの両側のそれぞれの領域に相当する塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号2及び3)をプライマーとして、酵素AmpliTaq Gold(PE Biosystems社)を用いてPCRを行い、タグを増幅した(図4L)。PCR反応は、変性(95℃、0.3分)、アニーリング、およびポリメラーゼによる伸長反応(72℃、1.5分)からなる反応を65サイクル行うことにより行った。その結果、中央にタグを含む110bpのDNAフラグメントが増幅された。
【0050】
前記のPCR増幅産物をMboIで消化してタグを切り出し、タグ:アダプターが8:1となるように、配列番号4、5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをアニールさせたアダプターを加えて連結反応を行い、タグのコンカテマーを形成させた(図5M)。このコンカテマーを、配列番号6に示す塩基配列を有するプライマーを用いたPCRにより増幅した。PCR反応は、変性(95℃、0.3分)、アニーリング(40℃、3分)、ポリメラーゼによる伸長反応(72℃、1分)からなる反応を5サイクル行い、引き続き変性(95℃、0.3分)、アニーリング及び伸長反応(72℃、1分)からなる反応を60サイクル行った。増幅産物を制限酵素NotIで消化し、シークエンス用クローニングベクターpKF3のNotI部位に挿入して、塩基配列を決定した。
【0051】
得られたシークエンスデータ(11000個)から、同一の配列を有するタグをグループ化し、出現頻度順に並べた。頻度上位10番までを表1に示す。この結果から、マウス肝臓組織中で最も発現頻度が高い遺伝子はウリナリ・プロテインI/II遺伝子であることがわかる。以下、発現頻度の高い順に、アルブミン遺伝子、ウリナリ・プロテインIII遺伝子、アルギニノコハク酸合成酵素遺伝子と並んでいる。このように、本発明の方法は、mRNAサンプルが微量であっても、ベクタープライマーを用いることによりcDNAの回収効率が高く、またタグ配列の不明瞭さを除くことが可能であるので、遺伝子発現頻度を高精度で解析することができる。
【0052】
【表1】
Figure 0003924976
【0053】
【発明の効果】
本発明により、遺伝子の発現頻度を、簡便に、確実に、かつ精度よく解析することができる。
【0054】
【配列表】
Figure 0003924976
【0055】
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【0056】
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【0057】
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【0058】
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【0059】
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【0060】
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【0061】
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【0062】
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【0067】
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【0068】
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【0069】
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【0070】
Figure 0003924976

【図面の簡単な説明】
【図1】 ベク夕ープライマーを作るためのプラスミドDNAの構造の一例(MAGE/pUC19)を示す図。
【図2】 ベクタープライマーの構造の一例とその構築過程を示す図。
【図3】 図3〜図5は、本発明の方法の各ステップを示す。図3は、ステップ(a)、(b)を模式的に表す図。
【図4】 本発明の方法のステップ(c)、(d)を模式的に表す図。
【図5】 本発明の方法のステップ(e)と、ステップ(e)により得られる増幅産物をシークエンス用クローニングベクターに挿入するステップを模式的に表す図。

Claims (8)

  1. 以下のステップを含む遺伝子の発現頻度を解析する方法;
    (a)直鎖状のプラスミドベクターの一方の3’末端に一本鎖のポリT配列と、その内側に第一の制限酵素認識配列とを有し、他方の末端近傍に第二の制限酵素認識配列と、さらにその内側にタイプIIS制限酵素認識配列とを有するベクタープライマーと、遺伝子の発現頻度を解析しようとする細胞に由来するmRNAとをアニールさせてcDNA合成を行い、cDNAが結合したベクタープライマーを生成するステップと、
    (b)前記cDNAが結合したベクタープライマーを、ベクタープライマーを切断せず、かつ、前記第二の制限酵素の切断末端と同じ形の末端を生じさせる第三の制限酵素と、前記第二の制限酵素とを用いて消化してcDNAの上流側を切除し、ベクタープライマーを閉環するステップと、
    (c)閉環したベクタープライマーを、前記第一の制限酵素及び前記タイプIIS制限酵素で消化して、cDNAの一部からなるタグを残してcDNAの下流側を切除し、ベクタープライマーを再び閉環するステップと、
    (d)前記ベクタープライマーを鋳型とし、ベクタープライマー中のタグの両側のそれぞれの領域に相当する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとしてポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を行い、タグを増幅するステップと、
    (e)前記増幅産物を連結してタグのコンカテマーを形成するステップと、
    (f)前記コンカテマーの塩基配列を決定し、その塩基配列中に出現するタグの種類及びその頻度を調べるステップ。
  2. 前記ステップ(e)において、連結反応を、一方の末端がタグの末端と同じ形を有するアダプター存在下で行い、それによりコンカテマーの両端にアダプターを配置させ、アダプターの配列に相当する配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用い、コンカテマーを鋳型としてPCRを行うことによりコンカテマーを増幅することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記ステップ(e)の後に、前記コンカテマーの塩基配列の決定を、塩基配列決定用のクローニングベクターにクローニングして行うことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記第三の制限酵素の認識配列が4塩基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ベクタープライマーは、第二の制限酵素認識配列の切断点と同じ位置又はその内側に切断点を有し、かつ、タイプIIS制限酵素による切断によってベクタープライマーから切除されない第四の制限酵素認識配列を有し、
    前記(d)のステップで用いるプライマーのうち、タグの下流側のプライマーは、第四の制限酵素切断末端と同じ形の末端を生じさせる第五の制限酵素の認識配列を有し、増幅されたプライマーを第四の制限酵素及び第五の制限酵素で消化した後にコンカテマーを形成させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記ベクタープライマーは、第一の制限酵素認識配列のさらに内側に第五の制限酵素認識配列と一塩基異なる塩基配列を有し、前記タグの下流側のプライマーを用いたPCRにより前記一塩基異なる塩基配列が第五の制限酵素認識配列に変換される請求項5記載の方法。
  7. 前記第三の制限酵素、第四の制限酵素及び第五の制限酵素が同一である請求項6記載の方法。
  8. ベクタープライマーが、マルチクローニング部位を有するプラスミドを同マルチクローニング部位の二箇所で切断して得られる直鎖状プラスミドと、この直鎖状プラスミドの一方の末端と同じ形の末端を有し、一本鎖のポリT配列を有する部分二本鎖DNAとが連結されたものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
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