JP3923184B2 - マルテンサイト系快削ステンレス鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハードディスクモータシャフト等に用いられるマルテンサイト系快削ステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、モータシャフト等の複雑な形状を呈する精密部品には、高硬度で優れた耐食性を有し、快削性を付与したマルテンサイト系快削ステンレス鋼が用いられている。ところが一般のSUS416やSUS420Fでは、鋼中に含まれる硫化物が空気中の水分と反応して硫化水素を発生することがある。
近年においては、特にハードディスクモータ周辺部材の場合には、いわゆるCu線を腐食する硫化水素のアウトガスの少ない鋼が求められて来ており、この要求が益々厳しくなっており、そのために焼入硬化可能な材料でアウトガス特性に優れた鋼種の開発が望まれているのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような状況の下に、そのアウトガス対策として、水分と反応して硫化水素の発生源となる硫化物組成の制御が有効であることから、Mn/S比とCr量で決定される硫化物組成を制御し、Mn−richからCr−richに変えることが有効であることが判明した。一方、マルテンサイト系はフェライト系と比較して熱間加工性が劣るが、しかし高温域でオーステナイト一相とすることで改善することができることを見出したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
その発明の要旨とするところは、
(1)質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.5%以下、Ni:0.60%以下、Cr:10〜16%、Mo:1.0%以下、Cu:0.50%以下、S:0.05〜0.45%、N:0.1%以下、O:0.004〜0.030%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式(1)、(2)で表される範囲の値であることを特徴とするマルテンサイト系快削ステンレス鋼。
Cr%−21Mn%/S%≧−15 … (1)
Cr%+1.4Mo%+1.5Si%−Ni%−Cu%−0.3Mn%−22C%−1 4N%≦10 … (2)
【0005】
(2)質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.5%以下、Ni:0.60%以下、Cr:10〜16%、Mo:1.0%以下、Cu:0.50%以下、S:0.05〜0.45%、N:0.1%以下、O:0.004〜0.030%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式(1)、(2)で表される範囲の値であることを特徴とするマルテンサイト系快削ステンレス鋼にある。
Cr%−21Mn%/S%≧−15 … (1)
Cr%+1.4Mo%+1.5Si%−Ni%−Cu%−0.3Mn%−22C%−1 4N%≦10 … (2)
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各成分元素の含有量の限定理由を以下に示す。
C:0.05〜0.15%
Cは、基地中に固溶して焼入れ後の硬度確保に必要な元素である。しかし、0.05%未満だと硬度確保に不十分で、0.15%を超えると本成分のC,Crによる粗大なクロム炭化物が晶出して被削性及び耐食性を劣化させるので、その範囲を0.05〜0.15%とした。
Si:0.1〜1.0%
Siは、製鋼時に脱酸元素として必要である。しかし、0.1%未満だと脱酸効果がうすく、1.0%を超えると焼なまし時の軟化を阻害するので、その範囲を0.1〜1.0%とした。
【0007】
Mn:0.5%以下
Mnは、硫化物組成を制御するために低減させる必要がある。そのため、少なくとも0.5%以下とする。
Ni:0.60%以下
Niは、焼入性を向上させるために添加する場合があるが、0.60%を超えると、焼なまし時の軟化が困難になるため、上限を0.60%にした。
【0008】
Cr:10〜16%
Crは、ステンレス鋼として必要な耐食性確保と焼入れ性確保に重要な元素である。10%未満では耐食性確保に不十分で、16%を超えるとフェライトが生じ易く、そのため10〜16%とした。
Mo:1.0%以下
Moは、耐食性を向上させるために必要な元素であるが、高価な元素であるために、1.0%以下とした。
【0009】
Cu:0.50%以下
Cuは、耐食性を改善する元素である。しかし0.50%を超えて含有させること、Cuによる脆化により熱間加工性を損なうために、0.50%以下とした。
S:0.05〜0.45%
Sは、被削性改善に必要な元素である。0.05%未満では効果がうすく、0.45%を超えると効果が飽和して、しかも熱間加工性を損なうので、その範囲を0.05〜0.45%とした。
【0010】
N:0.1%以下
Nは、Cと同様に固溶強化による強度と耐食性を高める元素であるが、過度の添加は製鋼時のコストを上昇させるために、0.03%以下とした。
O:0.004〜0.030%
Oは、硫化物形態に影響を及ぼし被削性改善に必要な元素である。0.004%未満だと硫化物の分散が悪く被削性が悪化し、0.030%を超えると酸化物が被削性を損なうので、その範囲を0.004〜0.030%とした。
【0011】
式(1):Cr%−21Mn%/S%≧−15
式(1)は、硫化物をCr−richにするために、Cr%−21Mn%/S%≧−15とした。
式(2):Cr%+1.4Mo%+1.5Si%−Ni%−Cu%−0.3Mn%−22C%−1 4N%≦10
式(2)は、高温でオーステナイト一相にして熱間加工性を向上させるために、Cr%+1.4Mo%+1.5Si%−Ni%−Cu%−0.3Mn%−22C%−14N%≦10とした。
【0012】
Pb:0.3%以下
Pbは、被削性を向上させるために必要な元素であるが、0.3%を超えて添加すると被削性向上効果は飽和し、しかも熱間加工性を害するようになるため、0.3%以下とした。
Se:0.3%以下
Seは、被削性を向上させるために必要な元素であるが、0.3%を超えて添加すると被削性向上効果は飽和し、しかも熱間加工性を害するようになるため、0.3%以下とした。
【0013】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を掲げて具体的に説明する。
供試鋼の成分を表1に示す。100kg真空炉にて溶製した表1の成分の鋼塊を直径20mmの棒鋼に鍛伸して、グリーブル試験機による高温高速引張試験を行った。また、鍛伸後870℃×2時間保持後徐冷の焼まなし処理を行い、ドリル穿孔性試験を行った。さらに、980℃×30分保持後油冷し、180℃×1時間保持後空冷を行ったものについて、硫化水素アウトガス試験、塩水噴霧試験を行った。各試験方法を以下に示す。
【0014】
▲1▼硫化水素アウトガス試験
焼入焼戻材をφ12mm×L21mmの棒状試験片に加工し、銀板と共に80℃の飽和水蒸気中で20時間封入保持したときの銀板の変色度で、硫化水素アウトガス量を評価した。変色がみられないものをA、市販のSUS416のように変色が著しいものをEとし、これらの間を変色の程度によってさらにB(わずかに変色)、C(中程度変色)、D(かなり変色)に分けて判定した。
▲2▼塩水噴霧試験
焼入焼戻材をφ12mm×L21mmの棒状試験片に加工し、35℃の5%塩化ナトリウム溶液を16時間噴霧したときの発錆量をA(発錆なし)、B(わずかに発錆)、C(中程度の発錆)、D(大部分発錆)、E(全面発錆)の5段階で評価した。
【0015】
▲3▼ドリル穿孔性試験
焼なまし材の鍛伸面に平行な方向に、SKH51のφ5ストレートシャンクドリルを用いて、推力414N、周速18.7m/minで乾式で穿孔し、深さ10mmに達するまでの時間で被削性を評価した。
▲4▼グリーブル試験
φ8に加工した試験片を1100℃に加熱し、引張速度5cm/secで引張歪みを加えて破断したときに試験片の絞り値で熱間加工性を評価した。
【0016】
【表1】
【0017】
各種試験結果を表2に示す。表2に示すNo1〜9は、本発明鋼であり、No10〜17は、比較鋼である。比較鋼No10は、Cが低く、式(2)で表される成分バランスが悪いため熱間加工性が悪い。比較鋼11は、Cが高く耐食性が悪い。比較鋼12は、Siが高いため焼なまし硬さが高く被削性が悪い。比較鋼13は、Mnが高く式(1)の値が大きくなり硫化物の主成分がMnであるためアウトガス特性、耐食性が悪い。比較鋼14は、Sが低いため被削性が悪いのと同時に硫化物がMnを主成分とするものであるためアウトガス特性が劣る。比較鋼15は、Crが低いため耐食性が悪い。比較鋼16は、逆にCrが高すぎるため式(2)が大きくなり熱間加工性が劣化する。比較鋼17は、Oが低く硫化物が非常に細かくなるので被削性が悪くなる。
【0018】
【表2】
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によりハードディスクモータシャフト等の用途に対して、アウトガス特性と硬度を兼ね備えた耐食性および快削性の極めて優れた材料を供給することができるものである。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.05〜0.15%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.5%以下、
Ni:0.60%以下、
Cr:10〜16%、
Mo:1.0%以下、
Cu:0.50%以下、
S:0.05〜0.45%、
N:0.1%以下、
O:0.004〜0.030%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式(1)、(2)で表される範囲の値であることを特徴とするマルテンサイト系快削ステンレス鋼。
Cr%−21Mn%/S%≧−15 … (1)
Cr%+1.4Mo%+1.5Si%−Ni%−Cu%−0.3Mn%−22C%−1 4N%≦10 … (2) - 質量%で、
C:0.05〜0.15%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.5%以下、
Ni:0.60%以下、
Cr:10〜16%、
Mo:1.0%以下、
Cu:0.50%以下、
S:0.05〜0.45%、
N:0.1%以下、
O:0.004〜0.030%を含有し、
さらに、Pb:0.3%以下、Se:0.3%以下の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式(1)、(2)で表される範囲の値であることを特徴とするマルテンサイト系快削ステンレス鋼。
Cr%−21Mn%/S%≧−15 … (1)
Cr%+1.4Mo%+1.5Si%−Ni%−Cu%−0.3Mn%−22C%−1 4N%≦10 … (2)
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