JP3918285B2 - ポリアクリロニトリル系黒鉛化繊維束およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアクリロニトリル系黒鉛化繊維束およびその製造方法に関し、特にコンポジット特性の優れたポリアクリロニトリル系黒鉛化繊維束およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
黒鉛化繊維束は引張弾性率が高いことを生かして、主に釣竿、ゴルフシャフトなどのスポーツ用途の高級品向けの強化繊維として広く活用されてきたが、近年の情報・通信分野の拡大と共に、人工衛星などの宇宙用途向けの強化繊維として急速に需要が増えてきている。ここで高弾性率の黒鉛化糸としては、原料をポリアクリロニトリル(以下、PANと略称する)系とするものと、ピッチ系とするものの2種類があるが、コンポジット圧縮強度が比較的高いことを理由にPAN系の黒鉛化繊維束がよく用いられている。
【0003】
PAN系の黒鉛化繊維束には、焼成する前に撚りを入れて焼成する有撚タイプと、実質的に撚りを入れずに焼成する無撚タイプがある。
【0004】
無撚タイプの黒鉛化繊維束は、それをシート状のプリプレグに加工した場合、拡がり性が良好であり、「薄物」と称される特別な品種に好適に使用されるが、一方、無撚タイプは、プリプレグ製造中の樹脂含浸時の圧力により、樹脂が繊維の横方向に流れてしまい、樹脂を均一に保持することが困難であるという問題もある。よって、そのようなプリプレグを用いて、成形品を成形加工したときに、成形品における樹脂含有量のバラツキが見られ、結果として成形品の寸法精度が悪化したり、さらには強度低下、剛性低下等の問題を引き起こすことがある。すなわち、無撚タイプの黒鉛化繊維はプリプレグとして必要な樹脂含有量の均一化が難しいという欠点がある。
【0005】
一方、有撚タイプの黒鉛化繊維束は、そのまま成形に用いられることはほとんどなく、通常、「解撚」と称される撚りを解く工程を経てから、プリプレグに使用される。この解撚を施した後も、繊維束が比較的円形に近い形をしているため、前記したようなプリプレグ製造中に樹脂流れを起こすことなく、上述の樹脂含有量が不均一になりやすいという問題はほとんど見られないが、繊維の長手方向に撚りのムラがあった場合、プリプレグ製造中に繊維束間に拡がり隙間が生じ、その部分での樹脂ムラ、見た目が悪いなどの問題を起こすことがある。この部分はプリプレグ製品として使用し難く収率低下の原因となる。すなわち、有撚タイプの黒鉛化繊維束では、撚りムラ・解撚ムラをなくすことが非常に重要な課題である。
【0006】
ここで、黒鉛化繊維束や炭化繊維束の製造工程においては、平ローラー(ローラーの表面に凹凸のない円筒状のローラー)や溝ローラー(ローラの周方向に連続した溝を有するローラー)を適当な間隔で用いるが、一般に平ローラーでは、撚りを蓄積する作用はなく、撚りムラの原因にはならないものの、平ローラーを長いローラースパンの工程に用いると、多糸条を併走させた場合、隣接糸条同士が絡みつくことがあるので、有撚タイプの製造プロセスにおいては平ローラーを多段に重ねて使用できない。これに対し、溝ローラーは、隣接糸条同士が絡みつくのを防止するには有効であるが、ローラー相互の平行度が不良であったり、糸条張力に変動があったりすると、糸条がローラの溝の側面部分に擦れ、それが原因となって糸条に撚りが蓄積するしやすい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の有する問題点を解決し、プリプレグにおける樹脂含有量の均一性を低下させることなく、プリプレグにおける樹脂保持性に優れた黒鉛化繊維束を高効率に製造し得る方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の黒鉛化繊維束の製造方法は、前記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、複数のローラーを介して、撚りを有するPAN系繊維束を耐炎化、炭素化および黒鉛化して後、一旦巻き取り、その後解撚して引張強度が3.3GPa以上、引張弾性率が360GPa以上の黒鉛化繊維束を得るに際して、前記ローラーの少なくとも一部に、円周方向に少なくとも2つ以上の山状の縁部を持ち、かつ山径の少なくとも2ヶ所以上の部分が谷径に実質的に等しい形状を持つ溝ローラーを用いることを特徴とするPAN系黒鉛化繊維束の製造方法である。
【0010】
本発明において、黒鉛化繊維束はネジリ係数により管理し得、かつ、焼成工程・解撚工程のそれぞれで撚りの滞留を防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明により得られる黒鉛化繊維束は、PAN系繊維束を焼成して得られる黒鉛化繊維束であって、引張強度が3.3GPa以上、引張弾性率が360GPa以上である。そして本発明により得られる黒鉛化繊維束は、ネジリ係数の平均値が次式を満たすことができるようになる。
【0013】
(−2.1×10-4×E+0.19)/A2≦T≦(−2.1×10-4×E+0.29)/A2
ネジリ係数 : T(°)
繊維の引張弾性率 : E(GPa)
繊維の断面積 : A(mm2)
なお、繊維の断面積は、繊維の繊度(単位)を繊維の密度(単位)で割った値である。
【0014】
これにより、本発明により得られる黒鉛化繊維束は、それをプリプレグに加工した場合、樹脂含有量を均一なものとしたままで、プリプレグにおける樹脂保持性を優れたものとすることができる。
【0015】
本発明により得られる黒鉛化繊維束は、その長手方向におけるネジリ係数のバラツキが3°以内であることが好ましい。長手方向におけるネジリ係数のバラツキが、3°以内であると、プリプレグ工程において拡がり不良等の問題を起こすことなく加工することができるが、かかるバラツキが大きすぎると、撚りムラが無視できない状態となり、プリプレグ上での繊維束間の拡がり隙間となりやすく、目的としている均一な樹脂付着量のプリプレグを得難い。
【0016】
ここで、本発明におけるネジリ係数とは、次のようにして求めた値をいう。
【0017】
予め20分以上、温度23℃、湿度60%の恒温室で試料となる黒鉛化繊維束を吊しておき、ワインダーでの巻きぐせを直しておく。同じ条件下において黒鉛化繊維を約200mmカットし、図1に示すように案内用ガラス管を通し上下をクリップ中央で固定する。クリップの間隔は110mmとし、繊維束が垂直につり下げるようにする。上部のクリップには指針を固定してあり、下部のおもり(クリップ)は28gとした。ワイヤーには長さ175mm、直径0.26mmのニクロム線(種類:ニッケルクロム電熱線1種、記号:NCHW1、横弾性係数:7400kg/mm2)が用いられる。繊維束の揺れが無くなったことを確認後、指針を0°に合わせる。分度器側を回転させる機構にしておくと容易に調整が出来てよい。繊維束自身の持つ撚りを増加させる方向に下側クリップを10回転させ、その時の指針値(繊維束からワイヤーに伝わったねじり力による変位角度)を読みとる。このときクリップの荷重は有効に繊維束に伝わるようにしながら、ねじれの反動に起因するクリップ戻りを防ぐためクリップを固定するようにする。回転の固定と同時に指針の角度を読みとる。
【0018】
ネジリ係数の平均値とは、繊維束についてこの測定を1m間隔で20点測定した測定値の平均値であり、ネジリ係数のバラツキとは、かかる測定値の標準偏差である。
【0019】
ネジリ係数は、繊維束自身の硬さ(引張弾性率)の影響を受けることが判っており、また、繊維束の太さ(断面積)も影響する。これについてその関係を調査・解析することにより本発明に至ったのである。
【0020】
また、本発明において、黒鉛化繊維束の引張強度・引張弾性率は、次のようにして求められる。
【0021】
“ベークライト”ERL−4221/三フッ化ホウ素モノエチルアミン/アセトン=100/3/4部を黒鉛化繊維束に含浸し、得られた樹脂含浸ストランドを130℃で30分間加熱して硬化させる。得られたストランドをJIS R 7601に規定する樹脂含浸ストランド試験法に従って、破断時の引張強度、および、直接読み取り法により伸度0.1%〜0.3%の伸度範囲における引張弾性率を求める。
【0022】
本発明により得られる黒鉛化繊維束は、引張強度が3.3GPa以上、かつ、引張弾性率が360GPa以上である。高い引張弾性率で、かつ高い引張強度や圧縮強度を有する黒鉛化繊維束を得ようとすると、2000℃以上の不活性雰囲気中で焼成する、いわゆる黒鉛化工程において、黒鉛化温度を高くしすぎずに、高い張力を付与して糸条を延伸するプロセスが必要となるのであるが、その場合において、特に撚りムラが問題になる。引張弾性率が前記に満たないものは、いわゆる炭素繊維束であって、繊維束自身が比較的柔らかいため、解撚あるいはプリプレグ等の高次加工時に撚りムラが緩和され、繊維束間の拡がり隙間の発生などの問題は元々生じにくい。一方、引張強度が前記に満たない黒鉛化繊維束は、黒鉛化工程においてさほど高い張力は付与されないため撚りムラが発生しにくく、かかる黒鉛化繊維束は、やはり繊維束自身が比較的柔らかいため、炭素繊維束と同様に、解撚あるいはプリプレグ等の高次加工時に撚りムラが緩和され、繊維束間の拡がり隙間などの問題は生じにくい。
【0023】
本発明における黒鉛化繊維束は、複数のローラーを介して、撚りを有するPAN系繊維束を耐炎化、炭素化および黒鉛化して後、一旦巻き取り、その後解撚して黒鉛化繊維束を得るに際して、前記ローラーの少なくとも一部に、円周方向に少なくとも2つ以上の山状の縁部を持ち、かつ山径の少なくとも2ヶ所以上の部分が谷径に実質的に等しい形状を持つ溝ローラーを用いることにより製造することができる。
【0024】
より具体的には、0.5〜20ターン/m程度の撚り数を有するPAN系繊維束を、複数のローラーを介し、230〜260℃の空気中で耐炎化、続いて1段もしくは2段の炉を用い400〜1900℃の不活性雰囲気中で炭素化し、次いで2000℃以上の不活性雰囲気中で延伸しながら黒鉛化し、必要に応じて表面処理、サイジング剤を付与した後、ワインダーにて巻き取って有撚黒鉛化繊維束を得る。ここで、前記ローラーの少なくとも一部に、円周方向に少なくとも2つ以上の山状の縁部を持ち、かつ山径の少なくとも2ヶ所以上の部分が谷径に実質的に等しい形状を持つ溝ローラー(以下、間欠溝ローラーと称する)を用いるのである。
【0025】
PAN系繊維束へ付与する撚り数は、黒鉛化繊維束の生産性に大きく関わっており、撚り数が少ない、すなわち無撚に近いと製造工程で糸がさばけてしまい、特に高張力となる黒鉛化工程における毛羽・巻き付きの原因となる一方、撚り数が大きすぎると、発熱反応である耐炎化工程における繊維束の発熱反応による蓄熱により糸切れに至る。本発明において、複数のローラーは相互に極力平行とすべきで、これにより撚りムラはかなり減少する。
【0026】
撚りムラや解撚ムラは、特に、工程途中の比較的ローラースパン(ローラーと次のローラーとの間隔)の長いところや、張力が不均一なところで、撚りが蓄積されることにより発生する。撚りが蓄積するとは、工程途中において、初期に付与した撚り数に比して大きな撚り数を有する部分を生じることといい、例えば、初期に10ターン/mの撚りをPAN系繊維束に付与した場合に、あるローラー間において20ターン/mの撚りが存在するような場合をいう。その蓄積した撚りが、隣接糸条同士が単繊維レベルで交絡したり毛羽等の外乱により先の工程へ一度に送り出されると撚りムラになる。
【0027】
本発明において用いる間欠溝ローラーは、例えば図2に示す通り、溝ローラーの一部に溝のない平らな部分があり、その溝と平の部分が回転に合わせ交互に訪れるローラーである。図2では4カ所に溝がある例を示しているがローラーの大きさ、走行糸の撚り数から5カ所以上にしても良いし、溝の部分の角度を増すなどのことを行えば、3カ所以下にしても良い。このローラーは平ローラーのもつ撚り走行性を確保しながら、溝ローラーの分繊安定性を兼ね備えたものである。このローラーを工程の途中に設けると、たとえ張力変動があっても、撚りが蓄積することなく繊維束を安定して通過させることができる。
【0028】
この間欠溝ローラーは、黒鉛化繊維製造に用いるローラーの全てに採用するのが最も望ましいが、間欠溝ローラーは作製が複雑で割高なため経済的な問題を考慮し、ローラースパンの長い工程のローラーや、繊維束にかかる張力が不均一となりやすい工程のローラーとして用いるのが良い。特に、撚りが極めて蓄積しやすく、繊維束への張力変動の大きい工程である巻き取り(ワインダー)工程に用いるのが効果的である。通常、黒鉛化繊維束には、収束性やハンドリング性向上のためにサイジング剤が付与されるが、このサイジング剤は通常それを水溶液や水分散液としたものが用いられることが多く、それを付与後に乾燥させるときには、隣接糸条との干渉を防止するため、糸条に付与される張力は極力一定なものとする。その後サイジング剤が付与された黒鉛化繊維束はドライブステーションを通過してからワインダーにて巻き取られる。かかる巻き取りでは、黒鉛化繊維束をボビンに巻き上げるために、ボビンの軸方向に繊維束をトラバースガイドで移動させる、つまりトラバースさせることが必要であり、そのトラバースガイドの移動方向が反転する度に繊維束への張力が変動するのである。したがって、ワインダーに最も近いドライブステーション以降のローラとして、通常の溝ローラーは使用せずに、間欠溝ローラーのみを使用するか、間欠溝ローラーと平ローラーのみを使用するのである。
【0029】
間欠溝ローラーは、有撚黒鉛化繊維束を巻き取るまでの工程以外にも、かかる繊維束を解撚する工程にも用いることができる。なお、一度撚りムラを含んでしまった有撚繊維束を解撚しても撚りムラを解消できることは少ないので、有撚黒鉛化繊維束を巻き取るまでの工程と、有撚繊維束を解撚する工程の両方において間欠溝ローラーを使用すると最も効果的である。
【0030】
【実施例】
本発明について、以下実施例に従い、より具体的に説明する。
【0031】
(実施例1〜6)
第1にアクリロニトリル(AN)99.5モル%とメタクリル酸0.5モル%からなる共重合体を用いて、濃度が20重量%のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を作製した。この溶液を35℃に調整し、孔径0.12mm、ホール数3000の紡糸口金を通して温度5℃、濃度30重量%のDMSO水溶液中で凝固させた。凝固糸条を水洗後、3段階の浴延伸で3.5倍に延伸し、シリコーン系油剤を付与した後、130〜160℃に加熱されたローラー表面に接触させて乾燥緻密化し、さらに3.6kg/cm2・Gの加圧スチーム中で3倍に延伸し、2糸条を合糸して単糸繊度0.75デニール、総繊度4500デニールのPAN系繊維束を得た。
【0032】
得られたPAN系繊維束を回転式クリールに仕掛け15ターン/mの撚りをかけて引き出し、240〜280℃の空気中で加熱し、密度が1.36g/cm3の耐炎化繊維に転換する。耐炎化時の張力は0.25g/デニールであった。さらにこの耐炎化繊維を900℃の不活性雰囲気中で張力を0.2g/デニールとして前炭化して後、1900℃の不活性雰囲気中で延伸比を8%として炭化することにより炭素繊維束に転換する。さらにこの炭素繊維束を連続して不活性雰囲気中2000℃以上で温度・延伸比をそれぞれ表1に示すように変更することにより黒鉛化して黒鉛化繊維束に転換して後、表面処理を行い、サイジング剤の水分散液を付与し乾燥してからドライブステーションを通過させて後、糸条を図2に示す間欠溝ローラーによりその走行方向を振り分けることによりワインダーに導きワインダーで巻き取った。ここで、ワインダーでの繊維束の張力は0.18g/デニールを目標値としたが、トラバースガイドの移動方向が反転する度にその張力が0.15〜0.21g/デニールの範囲で変動した。
【0033】
巻き取られたそれぞれの黒鉛化繊維束を解撚して撚りを実質的になくした糸条について測定した引張強度、引張弾性率、繊度、密度、ネジリ係数の平均値とその標準偏差を表1に示す。また、かかる撚りを実質的になくした糸条のそれぞれについて、それを一方向に複数本引き揃えエポキシ樹脂を含浸することにより、炭素繊維目付100g/m2の一方向プリプレグを作製した。これらプリプレグについて、その長手方向100m当たりに存在する糸条間の隙間(隙間幅0.5mm以上で長さ200mm以上のもの)の発生数、およびプリプレグ端部で樹脂が5cm以上はみ出した部分の有無を調べた結果を表1に併せて示す。
【0034】
(比較例1〜6)
間欠溝ローラーを通常の溝ローラーに変更した以外は、実施例1〜6と同様にして黒鉛化繊維束を巻き取った。巻き取られたそれぞれの黒鉛化繊維束を解撚して撚りを実質的になくした糸条について測定した引張強度、引張弾性率、繊度、密度、ネジリ係数の平均値とその標準偏差を表1に示す。また、かかる撚りを実質的になくした糸条のそれぞれについて、実施例1〜6と同様にして炭素繊維目付100g/m2の一方向プリプレグを作製した。これらプリプレグについて、糸条間の隙間の発生数、およびプリプレグ端部で樹脂が5cm以上はみ出した部分の有無を調べた結果を表1に併せて示す。
【0035】
(比較例7)
耐炎化処理に供する前にPAN系繊維束に撚りを付与せず、黒鉛化での延伸比を1.5に変更した以外は、実施例3と同様にして黒鉛化繊維束を巻き取った。巻き取られた黒鉛化繊維束について測定した引張強度、引張弾性率、繊度、密度、ネジリ係数の平均値とその標準偏差を表1に示す。また、かかる繊維束について、実施例1〜6と同様にして炭素繊維目付100g/m2の一方向プリプレグを作製した。このプリプレグについて、糸条間の隙間の発生数、およびプリプレグ端部で樹脂が5cm以上はみ出した部分の有無を調べた結果を表1に併せて示す。
【0036】
【表1】
本発明の黒鉛化繊維束はいずれも、プリプレグ工程で拡がり隙間の発生することなく、また、樹脂流れのない良好な製品に成型することが出来た。
【0037】
【発明の効果】
本発明で得られる黒鉛化繊維束を用いれば、樹脂流れを起こすことなく、従って樹脂含有量の均一なプリプレグを成型することが出来、拡がり隙間がないため高収率で生産することができる。また、PAN系黒鉛化繊維束の長所であるコンポジット圧縮強度が高いことを特徴としているため、人工衛星などの宇宙用途だけでなく、釣竿・ゴルフクラブなどのスポーツ用途に対しても、幅広く好適に使用することができる。また、かかる黒鉛化繊維束は、本発明方法を採用することにより、高効率に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるネジリ係数を測定するための測定器を示す概略斜視図である。
【図2】本発明製造法で用い得る間欠溝ローラーの概略斜視図である。
【図3】図2に示す間欠溝ローラー使用時の状況の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1:支柱
2:ニクロム線
3:上クリップ
4:指針
5:目盛り盤
6:揺れ止め筒
7:測定試料
8:下クリップ
9:回転止めピン
10:溝ローラー部
11:平ローラー部
12:山溝
13:谷溝
14:繊維束
15:ローラー軸
16:間欠溝ローラー
17:平ローラー
Claims (1)
- 複数のローラーを介して、撚りを有するポリアクリロニトリル系繊維束を耐炎化、炭素化および黒鉛化して後、一旦巻き取り、その後解撚して引張強度が3.3GPa以上、引張弾性率が360GPa以上の黒鉛化繊維束を得るに際して、前記ローラーの少なくとも一部に、円周方向に少なくとも2つ以上の山状の縁部を持ち、かつ山径の少なくとも2ヶ所以上の部分が谷径に実質的に等しい形状を持つ溝ローラーを用いることを特徴とするポリアクリロニトリル系黒鉛化繊維束の製造方法。
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