JP3915762B2 - 部分メッキ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ピストンの表面の一部に摺動性の向上、耐摩耗性の向上等、所定の機能を付与するためのメッキ層を形成し、残余の部分にメッキが付着しないようにするための部分メッキ装置に関するものである。
リンダ内を摺動するピストンとして、軽量化等の点から、母材としては、アルミニウムやアルミニウム合金等で形成し、このピストンの外面に摺動性及び耐磨耗性を改善するために、Fe,Fe−Cr合金,Cr,Ni等の電解メッキを施すようにしたものは、例えば特許文献1等により従来から知られている。
ここで、ピストンにはシリンダ内面に対して摺動する部位と、シール部材が装着される部位とを有している。シール部材を装着するために、ピストンの外周面には1乃至複数箇所に円環状の溝が形成されて、シール部材をこの円環状の溝により保持させるようにしており、ピストンのこの部分はシリンダの内面とは接触させない。従って、シール部材が装着される部位には必ずしもメッキを施す必要はなく、むしろ溝が形成されて凹凸形状となっているために、この部位をメッキすると、部分的に電流密度が変化して、メッキの膜厚が均一にならない等、表面状態が変化する。従って、シール部材の装着部等は精密加工を施して、表面状態を維持する必要がある。以上のことから、耐摩耗性等を改善するためのメッキはピストンの外周面において、摺動面の部位に限定し、シール部材が装着される部位等はメッキ施さないようにしなければならない。
このために、例えばワークの表面にマスキングテープ等を貼り付けて、メッキを施さない部位をマスキングして、メッキ槽に浸漬させることによって、ワークの表面の一部に限定して所定の膜厚のメッキ層を形成するのが一般的である。そして、メッキ処理を行った後に、マスキングテープをワーク表面から剥離することによって、ワークに対して部分メッキが施される。
特開2001−41008号公報
ところで、メッキを行なう前処理としては、脱脂工程、酸洗工程、アルカリエッチング工程、酸活性工程、亜鉛置換工程等があり、これら各工程間には水洗工程が加わる。このために、メッキ槽に加えて、前述した各工程のための処理液を充填した処理液槽を配置し、これらの各槽に順次ワークを浸漬させる。そして、ワークに対して部分メッキを行なうために、ワーク表面へのマスキングテープの貼り付けは、当然、メッキの前処理工程に入る前の段階で行なわれることになり、マスキングした状態でワークを各前処理液槽に順次浸漬させるようにする。従って、マスキングテープも処理液内に浸漬されることになり、このマスキングテープにも処理液が付着するが、前述した各前処理工程の後における水洗工程では、マスキングテープに付着した処理液は洗い流されることになる。
マスキングテープが貼り付けられている部位とワークの表面が露出している部位との境界部分には段差があるために、この段差のコーナー部には処理液が滞留することになり、水洗工程ではこのコーナー部に残留した処理液を完全に除去できないまま滞留することがある。この状態でワークがメッキ槽に導入されると、ワークに対するメッキ処理が終了して、ワークを乾燥させたときに、ワーク表面におけるメッキ層を形成した領域とメッキされない領域との境界部に処理液の乾燥物がこびりついてしまい、部分的に形成したメッキ層の境界部に不純物の筋が残ることになり、外観が損なわれるだけでなく、その部分から腐食が発生する等、構造的な面でも問題となる。
また、マスキングテープを貼り付けたり、剥離したりする作業は面倒であり、時間と手間がかかるという問題点があり、さらにはマスキングテープの貼り付け方によってはメッキ層の境界ラインが乱れる可能性もある。さらにまた、メッキ層の形成部とマスキングテープを剥離した部位との間に段差が生じることになって、他の物体と衝突したとき等に、メッキ層が部分的に破壊されたり、剥離されたりする可能性もないとは言えない。しかも、部分メッキの境界部に凹凸等が存在する形状となっている場合には、マスキングテープを貼り付けることができない場合もある。
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ワークを部分メッキするに当って、ワークのメッキ層が形成されない部位を、ワークに対して非接触状態でマスクでき、もって精度の高いメッキ品を形成できるようにすることにある。
本発明は、外周面に円環状溝が形成された有蓋円筒形状のピストンクラウン部と、外周面に摺動面を形成したスカート部とを有するピストンからなるワークに対し、前記ピストンクラウン部の前記円環状溝の形成部にはメッキを施さず、前記スカート部の摺動面にメッキを施すための部分メッキ装置であって、電解液が充填され、2枚の陽極板を配設したメッキ槽と、前記ワークを前記ピストンクラウン部が上部側で前記スカート部が下方になるようにして着脱可能に支持して、前記メッキ槽に浸漬させるハンガーと、前記ハンガーに設けられ、前記ピストンクラウン部の前記円環状溝に対してはほぼ一定の微小隙間を介して対面し、前記スカート部の摺動面と対面する部位が開口した電気絶縁部材からなるシールド部材とを備え、前記ワークを陰極として、前記メッキ槽の電解液中には前記陽極板間で、これら陽極板とほぼ平行であり、かつこのワークを前記シールド部材と共に傾けるように対面させて、これら陰極と陽極板との間で電流を流すことにより前記摺動面にメッキをする構成としたことをその特徴とするものである。
また、本発明における部分メッキ装置は、ワーク表面のうち、メッキを施さない領域に、このワークに接続した陰極とメッキ槽内に設置した陽極との間に、ワークに対して非接触状態であり、かつこのワークに対してほぼ一定の微小隙間が形成されるようにシールド部材を配置する構成としたことをその特徴とするものである。
電解液中に陽極と陰極とを平行に配置して、これら陽極と陰極との間に電流を流すと、陰極側にメッキ層が積層される。陽極と陰極との間の電流密度が一定であれば、均一な厚みのメッキ層が形成される。また、陽極と陰極との間に遮蔽物を配置すると、電流はこの遮蔽物を迂回するようにして流れる。そして、陰極を遮蔽物で部分的に覆うと、遮蔽物に対面する部位と陽極と直接対面する部位とでは電流密度が異なってくる。遮蔽物を陰極側に接近させると、陰極側には部分的に電流が流れない部位が生じる。遮蔽物と陰極との間隔を、例えば数mm程度というように、微小空間を介して対面させると、陰極の遮蔽領域の端部では、その外側から内側に向けてメッキ層の厚みが連続的に減少することになり、遮蔽物の内側におけるある位置からは全くメッキの付着がない領域が形成される。
ワークにおけるメッキ層を形成する部位を露出させておき、メッキ層を形成しない部位を遮蔽するために、ワークに対して微小隙間を介してシールド部材を配置する。しかも、シールド部材をワークに対して非接触状態に保持する。これによって、前処理工程において、ワークを所定の処理液槽に浸漬させた後、このワークを処理液槽から引き上げると、処理液はほぼ完全に処理液槽内に流下することになり、また水洗槽に浸漬させることによって、処理液を完全に除去できる。従って、ワークの表面には処理液等の不純物が全く付着しない状態でメッキ槽に導入することができる。
メッキ槽内において、ワークを陰極とし、メッキ液中でこのワークに陽極を対向配置して、これら陽極と陰極との間に電流を流すことによって、ワークの表面にメッキ層が形成される。このために、メッキ槽には一対の陽極板が配設されており、一部がシールド部材に覆われたワークは、両陽極板間の位置でメッキ槽に浸漬される。しかも、シールド部材とワークとの間には均一な微小空間が形成される。従って、ワークの表面において、シールド部材で覆われている部位と表面が露出している部位との境界部の内外において、所定の幅に及ぶように連続的にメッキ厚が減少する移行域が形成され、かつこの移行域より内側の部位は、メッキ液に浸漬されているにも拘らず、メッキされることはない。これによって、ワークに対して必要な部位のみに部分メッキを行なうことができる。シールド部材は、ワークのメッキ領域との関係に応じて適宜の形状とする。例えば、メッキ領域と非メッキ領域とが上下、若しくは左右に分かれるときには、非メッキ領域と対面する部位にシールド部材を対向配置する。ワークの全表面のうち、限られた領域だけに部分メッキを行なう場合には、シールド部材には部分メッキされる部位に対応する開口を形成する。
遮蔽用のシールド部材とワークとの間の間隔を広げると、メッキの移行域の幅が広くなり、メッキを施すべきではない部位まで及ぶ可能性がある。一方、この間隔が1mm以下というように極微細なものとすれば、移行域は実質的にライン状となる。ただし、シールド部材とワークとの間隔が小さければ小さい程、シールド部材とワークとの間により正確な調芯性が必要となり、またワークの着脱が困難になる。勿論、精度の高い部分メッキを行なう必要がある場合には、ワークとシールド部材との間隔をより微小なものとする。シールド部材はワークと接触しないように保持する。ただし、前段階における処理液を完全に洗い落とすことができるように水洗できれば、シールド部材とワークとが部分的に接触していても良い。
具体的には、シールド部材とワークとの間隔が5mmより広くすると、部分メッキの移行域が広くなりすぎる。従って、シールド部材とワークとの間隔は、好ましくは5mm以下とし、より好ましくは2〜5mmとする。
シールド部材が必要なのはメッキ槽内だけであるから、メッキ槽内にシールド部材を設置しておき、ワークがこのメッキ槽内に導入されたときに、このワークの表面をシールド部材で覆うようにすることもできるが、メッキを行なうに当っては、多段の前処理が行われ、しかも前処理の終了後に直ちにメッキ槽にワークを浸漬させるのが一般的である。このために、ワークをハンガーに支持させて、このハンガーを搬送手段により各前処理工程等におけるそれぞれの槽内に順送りに浸漬させる構成とするのが一般的である。このように、ワークをハンガーに支持させて、前工程における複数の処理液槽を経てメッキ槽に導入し、さらにメッキ槽から水洗槽等の後工程に送り込んで順次工程を経る上で、ハンガーを引き上げる際に、このハンガー及びワーク、さらにはシールド部材における液切れを良好にしなければ、後続の槽に液が持ち込まれて、槽内の処理液やメッキ液等が汚損されてしまう。従って、ハンガーを引き上げる際に、ハンガー,ワーク及びシールド部材からの排液を良好となし、液の次槽への持込を阻止しなければならない。このためには、ワーク及びシールド部材を傾けた状態にして各槽に浸漬させるようにすれば良い。そうすると、ハンガーを引き上げたときに、処理液やメッキ液等はほぼ完全に当該の槽内に流下して、次槽に持ち出すことはない。
シールド部材はハンガーに固定的に設けても良く、また着脱可能に設けるように構成することもできる。いずれにしろ、ワークはハンガーに対して所定の位置に装着することによって、シールド部材によるマスク機能が十分に発揮される。メッキが終了した後にワークをハンガーから取り出して、新たなワークを再装着でき、つまりワークをハンガーに着脱するだけで、このワークにマスキングテープを貼り付けたり、剥離したりする等の作業を必要としない。
ワークをハンガーに装着して前処理工程の開始から最終工程の終了までの全搬送経路を搬送する方が望ましい。このためには、ハンガーにはワークへの接触部を設けて、メッキ槽に導入されたときに、この接触部を陰極と電通可能な状態とし、メッキ槽内に浸漬させたときにのみ陰極に通電することができる。従って、ハンガーを導電部材で形成すると共に棒状の部材を導電性部材から構成して、メッキ槽外に設けた陰極と接続するという構成が可能になる。このワークへの接触部は、例えばフック等、ワークを保持する部材と兼用させる。また、シールド部材は通電されるハンガーに対して電気的に絶縁されておれば、シールド部材を導電部材で形成しても良いが、シールド部材は電気絶縁性を有するものとするのが望ましい。
部分メッキされるワークはピストンである。ピストンは外周面に円環状溝が形成された有蓋円筒形状のピストンクラウン部と、外周面が摺動面となったスカート部とを有するものであり、ピストンクラウン部の円環状溝の形成部にはメッキを施さず、スカート部の摺動面にメッキを施すように部分メッキを行う。非メッキ領域では、ワークとシールド部材との間の隙間は微小であり、かつ隙間管理を厳格に行なわなければならない。このために、ワークとシールド部材との間の調芯性の確保が要求され、かつ搬送中にこれらワークとシールド部材とが位置ずれ等が生じないように、安定的に保持させなければならない。さらには、メッキが行われた後に、ワークを取り出して、新たなワークを装着する必要がある。
ワークとシールド部材との間の調芯性を重視すれば、シールド部材をハンガーに固定的に支持させ、ワークをハンガーに対して位置調整を行なうようにするのが望ましい。一方、ワークのハンガーへの着脱を容易に行なうようにするには、ワーク及びシールド部材は共にハンガーに対して着脱できるように支持させる。そして、メッキ処理が完了した後には、ハンガーからシールド部材及びワークを取り出して、ハンガーには新たなワークを支持させるが、さらにこれらワークとシールド部材との間を調芯する。ワークとシールド部材との間を調芯するようにしても良いが、ワーク及びシールド部材をハンガーに対して調芯しても良い。
シールド部材は、要は、メッキを施さない部位の全体を覆っておれば良い。従って、シールド部材は必ずしも単一の部材で構成する必要はなく、分割タイプのものであっても良い。例えば、シールド部材をハンガーに対して左右に分割可能なもので構成し、ワークをハンガーに装着する際には、シールド部材を開いた状態となし、ワーク装着後にシールド部材を閉じることによって、ワークにおけるメッキを施さない部位を完全に覆えるようにすることも可能である。
本発明によれば、ワークを部分メッキするに当って、ワークのメッキ層が形成されない部位を、ワークに対して非接触状態でマスクでき、極めて品質の高い部分メッキを施すことができる等の優れた効果を有する。
まず、図1に示したように、メッキされる部材として、平板状の金属板(例えばアルミニウム板)Wに、この金属板Wのメッキ形成面にシールド部材Sを対向配設する。このシールド部材Sは電気絶縁部材からなる所定の幅(30mm以上)を有し、また厚みを一定のものとする。このシールド部材Sの一端を金属板Wに固定して、垂直に立ち上げて金属板Wに対して所定の間隔、例えば20mm離間させる。そして、これを最大間隔位置として、金属板Wに接触する位置まで連続的に隙間が減少するように傾斜させ、最終的には金属板Wに固定するようにして組み付けた試料Pを形成する。なお、図1において、シールド部材Sの立ち上がり方向に示した数値は金属板Wとシールド部材Sとの間隔を意味するものである。また、これと直交する方向の目盛りは、シールド部材Sの端部から外側及び内側における距離である。目盛りは5mm刻みとなっている。
電解液の種類、陽極板からの距離、電流密度、温度、電解液への浸漬時間等からなるメッキ条件を設定して、この試料Pにおける金属板Wに陰極を接続して、試料Pを陽極板に対面させてメッキを行なった。
その結果を図2に示す。同図から明らかなように、メッキすべき金属板Wとシールド部材Sとの間隔に応じてメッキ領域が変化する。間隔が20mmの位置では、同図に線Aで示したように、シールド部材で覆われている部位の内部に20mm入り込んだ位置であっても、シールド部材で覆われていない部位のメッキ層における厚みに対して約20%程度の厚みのメッキが形成される。そして、同図に線Bで示したのは間隔が15mmの位置であり、この位置ではシールド部材Sで覆われている部位の内部に20mm入り込んだ位置ではほぼ数%のメッキしか形成されない。さらに、間隔が10mmとなった位置では、同図に線Cで示したように、金属板Wのうちシールド部材Sで覆われている部位の内側20mmにまではメッキが及ばない。さらにまた、同図に線Dで示したように、シールド部材Sと金属板Wとの間隔が5mmになると、シールド部材Sの境界部外における5mm程度の位置からメッキ層の厚みが減少し、シールド部材Sの境界部内における5mmでは殆どメッキが付着しなくなる。さらに、同図に線Eで示したように、間隔を2.5mmにまで狭まった位置では、シールド部材Sの境界部における外側の5mmから急激にメッキ層の厚みが減少し、境界部の内部5mmで全くメッキ層が形成されなくなる。
以上のことから、シールド部材Sと金属板Wとの間隔を5mm以下とすれば、その間を非接触状態に保っても部分メッキが可能になる。より好ましくはその間の間隔を概略2.5mmとし、金属板Wへのメッキ厚を15μm程度にすると、メッキが施されるべき部位からメッキを施さない部位への移行部が約10mm程度のものとなり、しかもこの移行部では連続的にメッキ層の厚みが減少していくことになる。
以下、図3乃至図10に基づいて本発明の第1の実施例を説明する。なお、以下の説明においては、自動車用のレシプロエンジンにおいて、シリンダ内を摺動するピストンをワークとして、このピストンにおけるシリンダとの摺動面部に限定して部分メッキを行なうものとして説明する。
図3乃至図6にピストン1の構成を示す。図中において、ピストン1は概略有蓋円筒形状となったピストンクラウン2と、スカート部3と、ピストンピン(図示せず)が取り付けられるボス部4とを有する構成となっている。ピストンクラウン2における外周面には円環状のピストンリング溝5が上下方向に複数設けられており、これらピストンリング溝5にはピストンリングが装着される。ピストン1はシリンダ内を往復動するものであり、その結果ボス部4に取り付けたピストンピンに連結したコンロッドが上下動することになる。
前述したピストン1のうち、シリンダと摺動するのは、ピストンリング溝5に装着したピストンリングと、スカート部3とである。つまり、ピストン1の本体部分における摺動面はスカート部3のみである。しかも、摺動抵抗を低減させるために、図4に示したように、スカート部3におけるシリンダ内壁との摺動面3aはボス部4を挟んだ両側における所定の角度分となっている。
ピストン1の軽量化を図るために、その素材そのものはアルミニウムやアルミニウム合金等から構成されており、スカート部3における摺動面3aの部位には、摺動性及び耐磨耗性の向上を図るために、鉄メッキ(または鉄クロム合金メッキ)が施される。ただし、ボス部4にはピストンピンが挿入されるものであり、またピストンクラウン2におけるピストンリング溝5が形成され、いずれも複雑な凹凸形状となっていることから、これらの部位の仕上げ加工精度を維持するために、メッキを施さないようにする。つまり、ピストン1においては、摺動面3aに限定した部分メッキが施されるようになっている。ピストン1に対して部分メッキを施すために、メッキを行なわない部位はマスクされる。このように、ピストン1を部分メッキするために、例えば図5乃至図8に示したハンガー10が用いられる。
ハンガー10は、図7に示したように、ハンガー本体11を有し、このハンガー本体11の先端部は、後述するように給電用の接点を兼ねるフック部12となっている。このフック12は搬送手段に設けられ、ピッチ送り及び昇降動作を繰り返し行うロッド30(図9参照)に掛着されて、前処理を行なう各槽からメッキ槽及び後処理槽に順次搬送されるようになっている。ハンガー本体11は、概略下方に延在させた鉛直杆部11aの下端部を概略90°曲成した支持部11bとから構成される。ただし、ピストンクラウン2には溝等が設けられている関係から、各槽における処理液やメッキ液等の持ち出しが生じる可能性がある。この液の持ち出しを防止するために、ピストン1を多少傾けた状態に保持す。このためには、フック部12をロッド30に掛着したときに、ハンガー本体11がある程度傾くようにするか、または鉛直杆部11aと支持部11bとの間に多少の角度を付ける等とする。そして、このハンガー本体11は導電性を有する金属からなり、その外周部は合成樹脂等からなる絶縁チューブ13で覆われている。
ハンガー本体11における支持部11bにはピストン1のピストンクラウン2の下面と当接する支持杆14が立設されている。この支持杆14は好ましくは電気絶縁性を有する杆状の部材で形成され、ピストン1の荷重を受承するためのものである。また、支持部11bにおいて支持杆14を立設した部位の前後位置には、所定の長さ分だけ左右に延在されて、上方に向けて概略90°曲成された電極杆15が4本設けられている。電極杆15の基端部はハンガー本体11に連結されて、このハンガー本体11と電気的に導通し得る状態となっている。電極杆15は、その先端部分を残して絶縁チューブ13で覆われており、先端部は露出して、この露出部分はそれぞれ円弧状に曲成した電極部15aとなっており、またこれら電極部15aはばね性を有している。
ハンガー10にピストン1を装着すると、その支持杆14はピストンクラウン2の下面に当接して、ピストン1の荷重が受承される。また、電極杆15の電極部15aの高さ位置は支持杆13の先端部より低い位置にあって、各電極杆15はピストン1におけるスカート部3の内面と当接するようになっている。しかも、4箇所設けた電極部15aは、図4に矢印で示したように、スカート部3における摺動面3aが形成されて円弧状となっている部位からボス部4を設けた部位への移行部の内面における形状変化部であって、その内面に対して所定の付勢力が作用するようにして当接するようになっている。なお、電極部15aをピストン1の外周面側に当接させる場合には、図6に▲で示した位置に当接させるのが望ましい。これによって、電極部15aはピストン1の内面に圧接されることになり、もってピストン1を安定的に保持し、かつこのピストン1を位置決めすることができる。
さらに、図8に示したように、ハンガー本体11における鉛直杆部11aには、その絶縁チューブ13の外周部にシールド部材20が取り付けられている。シールド部材20は、上下2つの円筒部21,22から構成されており、上部側の円筒部21は下部側の円筒部22に所定長さ嵌合されて、接着等の手段で固定されている。ここで、シールド部材20を上下に分割したのは、その内部にピストン1を装着したときに、左右に設けたスカート部3における摺動面3aを露出させるための開口23が形成され、この摺動面3a以外を覆うようにマスクするためのものである。従って、シールド部材20は必ずしも上下に分割する必要はなく、単一の円筒部材の周胴部に開口を形成するようにしても良い。シールド部材20の外面には概略T字形状とした連結部材24が延在されており、この連結部材24はハンガー本体11を覆うように設けた絶縁チューブ13を挟んでクランプ板25と接合されて、複数のねじ26で連結状態に固定される。ここで、シールド部材20は少なくとも絶縁チューブ13によりハンガー本体11とは電気的に絶縁されているので、その材料は限定されないが、合成樹脂による成形品を用いるのが望ましい。
ところで、ピストン1に部分的であるとはいえ、その表面にメッキを施すものであるから、少なくともメッキ層が形成される部位を前処理しなければならない。この前処理としては、例えば脱脂、水洗、酸洗、水洗、アルカリエッチング、水洗、酸活性化、水洗、亜鉛置換、水洗、酸洗、水洗、亜鉛置換、水洗という工程を順次経るのが一般的である。従って、前述した各前処理工程を行なうために、それぞれの処理液を充填した槽を配列して、これら各槽に順次浸漬させる。ピストン1を搬送する手段は直列に並べた各槽の上部に設けられており、図9に示したように、ハンガー10はこの搬送手段において、ピッチ送りと昇降動作とを行なうロッド30に掛着される。ここで、ロッド30はハンガー10を安定的に保持するために、断面が四角形とするのが望ましい。
前述した前処理を行った後に、図10に示したように、メッキ槽31内でピストン1の摺動面3aに鉄メッキを施す。メッキ槽31には電解液が充填されると共に、陽極板32,32が電解液内に浸漬するように設けられている。また、ハンガー10の搬送手段を構成する角棒状のロッド30はメッキ槽31の上部位置において、両陽極板32,32間の位置に配置される。そして、直流電源33における陽極がこれら陽極板32と接続され、陰極はメッキ槽31にロッド30が配置されたときに、このロッド30にハンガ10のフック12と電気的に接続される。そして、陽極板32とロッド30との間に直流電流を流すことによって、ピストン1に対しては、そのスカート部3における摺動面3aに限定して鉄メッキが施される。このように、メッキを施す際において、ピストン1を静止状態に保っても良いが、上下乃至左右に揺動しながらメッキすることもできる。
さらに、ピストン1にメッキ層が形成された後には、水洗、錫メッキ、水洗、乾燥の各工程からなる後処理が行なわれる。ここで、鉄メッキを行った後に錫メッキを行なうのは、ピストン1における摺動面3aのシリンダに対する馴染みを良くするためのものであり、必ずしも後処理としての錫メッキを行なわなくても良い。
而して、前述した前処理の開始から後処理の終了までワークとしてのピストン1はハンガー10に装着した状態となっている。つまり、前処理の開始前にピストン1をハンガー10に装着し、後処理が終了した後にピストン1はハンガー10から取り外される。ハンガー10にはシールド部材20が連結して設けられているが、このシールド部材20の上部は開放されている。従って、ピストン1はハンガー10の上部からシールド部材20の内部に挿入するようにして装着することができる。また、メッキ処理が終了した後に、ハンガー10からピストン1を取り出す際も、このピストン1を上方に持ち上げれば良い。そして、このピストン1の着脱を容易にするために、ハンガー10におけるシールド部材20を設けた部位の上部は開放状態となっている。従って、ピストン1のハンガー10への着脱は極めて容易に行える。しかも、後述するように、ピストン1のうち、メッキを施さない部位にはマスキングテープ等を貼り付ける必要はないことから、メッキ処理を行なう準備作業も必要としないので、その分だけ手間や時間を節約できる。
ハンガー10にピストン1を装着した状態では、このハンガー10に連結して設けたシールド部材20を構成する円筒部21,22の内面に対してピストン1は非接触状態で、全周にわたってほぼ均一な隙間が形成されるようになる。シールド部材20はハンガー10に固定的に設けられているので、ピストン1はハンガー10に装着したときに、このハンガー10に対して常に所定の位置関係となるように配置する必要がある。ピストン1は、そのピストンクラウン2の下面に当接するが、スカート部3の内面には4箇所において電極部15aが弾性的に当接するようになっている。しかも、これら各電極部15aは内向きに突出しているボス部4の両側に配置されることから、ピストン1をハンガー10に装着するだけで、シールド部材20に対して調芯がなされ、つまりピストン1とシールド部材20との間の間隔が全周にわたってほぼ均一な状態となる。しかも、ピストン1の方向性も一定することになり、このピストン1におけるスカート部3の摺動面3aは必ずシールド部材20の開口23に対面する位置に配置されることになる。そして、摺動面3aのみが外部に露出しており、ピストンクラウン2及びボス部4はシールド部材20によって覆われている。
ピストン1を装着したハンガー10がメッキ槽31内に浸漬され、陽極板32とロッド30との間に電流を流すと、ハンガー10におけるフック12とハンガー本体11との間が通電用接点となり、かつ電極杆15における電極部15aとピストン1との間も通電用接点となるので、ピストン1に通電されて、このピストン1の外表面にメッキ層が形成される。ピストン1のうち、摺動面3aのみに均一な厚みのメッキ層が形成され、他の部位にはメッキされないようにする。ピストン1の全体がメッキ槽31における電解液内に浸漬されている。また、摺動面3aからボス部4への移行部等には段差があるために、この段差部の電流密度が高くなる。
ここで、ピストン1のうち、陽極板32に直接対面するのは、摺動面3aの部位だけであり、それ以外の部位と陽極板32との間にはシールド部材20が介在している。そこで、図2から明らかなように、上部側の円筒部21の内面とピストン1におけるピストンリング溝5を設けた部位との間隔を、例えば概略2.5mmとし、摺動面3aへのメッキ厚を15μm程度にする場合、メッキが施されるべき部位からメッキを施さない部位への移行部が約10mm程度のものとなり、しかもこの移行部では連続的にメッキ層の厚みが減少していくことになる。勿論、この間隔をさらに小さくすれば、移行部の幅を狭くすることができるが、ピストン1においては、この程度の移行部が存在しても格別の問題とはならない。また、この間隔が2.5mm程度あれば、ピストン1のハンガー10への着脱が極めて容易になる。ただし、移行部の幅をより狭くする必要があれば、シールド部材とワークとが密着状態とならないことを条件として、その間の間隔をより狭くすれば良い。また、ピストン1の着脱という点からは、5mm程度の間隔とする方が望ましい。ただし、そうするとメッキが施された領域とメッキが施されない領域との移行部の幅が多少大きくなる。要するに、シールド部材20の内面とピストン1の外面との間隔が2.5mm〜5mm程度とすると、極めて精度の高い部分メッキが行なわれる。
また、摺動部3aからボス部4への段差部や、摺動部3aの下端部に電流密度が高くなるのを防止して、摺動部3aの全体に均一な電流分布を生じさせるには、シールド部材20における側部及び下部を部分的に摺動部3a上に数mm程度オーバーラップさせる。これによって、摺動部3a全体にわたって実質的に均等な電流分布が得られることになる。なお、シールド部材20をどの程度オーバーラップさせるかは、摺動部3aからボス部4への段差部や、摺動部3aの下端部の形状、つまりエッジが存在するか、丸みを帯びているか等から適宜設定すれば良い。
前述のように、ワークであるピストン1の外面は何等の部材と接触させることなく、完全に露出した状態としているので、前処理段階において、例えば酸処理、アルカリ処理等を行う処理液は、それらの後に行われる水洗工程で完全に除去できることになり、メッキ槽31内に導入したときには、前述した処理液は全く付着していない状態でメッキ処理を行なうことができる。従って、メッキ処理後のピストン1には不純物の付着がなくなり、外観上で好ましいだけでなく、腐食等の発生を抑制できる。
次に、図11乃至図17に基づいて本発明の実施例2を説明する。なお、本実施例において、前述した実施例1と同一または均等な部材については、それと同一の符号を付して、その説明を省略する。本実施例においては、ハンガー40に対して、ワークとしてのピストン1及びシールド部材60を着脱可能に装着する構成としている。また、ピストン1及びシールド部材60はハンガー40に対して、例えば15°〜30°程度傾斜した状態にして保持されるようになっている。
図11にハンガー40の要部構成を示す。図中において、ハンガー40は鉛直杆部42と、この鉛直杆部42の下端部に連結した支持部43とから構成される。支持部43は鉛直杆42の下端部において、十文字形状となった板体からなる支持板43a,43bを有するものである。また、鉛直杆部42の先端部は、前述した実施例1と同様、フック部42aとなっており、このフック部42aは搬送手段に設けられ、ピッチ送り及び昇降動作を繰り返し行うロッドに掛着されるようになっているが、その図示は省略する。
図12及び図13にも示されているように、支持板43a,43bの交差部には支柱44が立設されている。そして、支柱44の先端にはピストン受け45と相対向するように配設した一対のピストン保持板ばね46とが連結して設けられている。ピストン受け45は、ピストン1のピストンクラウン2の内端面と当接するように、支柱44への連結部の両端を90°立ち上げるように曲折させたものである。また、ピストン保持板ばね46は、所定の幅寸法を有する板ばねからなり、支柱44への連結部の両端から斜め下方に向けて曲成し、最突出部46aから下方は内側に曲げられており、さらにその下部は外向きに曲成した折り返し部46bとなっている。従って、最突出部46aはピストン1のスカート部3の内面に圧接されるばね力作用部であり、また折り返し部46bはピストン1の下端部に対する逃げとして機能する。
鉛直杆部42から見て、その前後方向に設けた支持板43aのほぼ両端部には位置決め・支持ピン47がそれぞれ立設されており、また左右方向に設けた支持板43bの両端部には、台座ピン48が立設されており、これら支持ピン47及び台座ピン48とによってシールド部材60は、ハンガー40の支持部43に着脱可能に支持されるようになっている。また、各台座ピン48の取り付け位置にはシールド部材60の外周面をクランプして保持するためのクランプ板ばね49がそれぞれ連結して設けられている。このクランプ板ばね49は、支持板43bから真っ直ぐ立ち上がるようにして途中で内向きに曲成されており、その最内側端49aがシールド部材60の外周面と当接するものであり、この最内側端49aより上方は外向きに曲成されており、この最内側端49aはシールド部材60の外面をクランプするようにして保持するために設けられる。また、最内側端49aより上方の部位は外向きに曲成された曲成部49bとなっており、この曲成部49bはシールド部材60の呼び込み部として機能するものである。
次に、シールド部材60は、図14乃至図16に示したように、上部側が小径円筒部61となり、下部側が大径円筒部62となった段差付きのシールド本体63を有し、このシールド本体63の下端部には180°の位置関係に一対のフランジ部64,64が外向きに張り出すように設けられている。そして、これらのフランジ部64には、図14及び図15から明らかなように、位置決め孔65が穿設されており、これらの位置決め孔65にはハンガー40に設けた支持ピン47の先端部分が挿入されるようになっている。
シールド部材60の小径円筒部61の内径はワークであるピストン1のピストンクラウン部2の外径より僅かに大きくなっており、具体的にはその間に2.5mm以下の径差を持たせている。また、大径円筒部62の内径は、スカート部3の外径部より十分大径となっており、具体的にはその間に20mm以上の径差がある。そして、小径円筒部61から大径円筒部62への移行部を含め、かつ大径円筒部62の中間位置までには、所定の角度分以上にわたって開口66が形成されている。開口66は、フランジ部64を延在させた部位に対して90°の角度位置に2箇所形成されており、大径円筒部62の外周部において、広い範囲にわたって、好ましくは概略45°の角度分に及ぶようになっている。
ここで、支持ピン47はシールド部材60を位置決めするためのものであると共に、この支持ピン47と段座ピン48とによって、シールド部材60が支持されるようになっている。 図13から明らかなように、支持ピン47は先端が球面形状となったロッド部47aの下部位置に大径となった台座部47bが連設されており、この台座部47bより下方の部位はねじ部47cとなっている。そして、このねじ部47cは支持板43aに固定して設けた軸部47dに螺挿されており、ねじ部47cと軸部47dとの間には、高さ調整リング50が介装されている。従って、ねじ部47cの軸部47dへの締め込み度合いを調整することによって、台座部47bの高さ位置を調整されることになる。また、台座ピン48は先端が平面形状となった台座部48aを有し、この台座部48aは軸部48bの先端に螺挿させたものであり、台座部48aと軸部48bとの間には高さ調整リング51が介装されて、台座部48aの締め込み度合いを調整することによって、台座部48aの先端面の高さ位置を調整することができる。
従って、支持ピン47の台座部47bと、台座ピン48の台座部48aにおける先端面の高さ位置を一致させることによって、シールド部材20は、その大径円筒部62の下面に当接することになる。しかも、2箇所設けた支持ピン47はシールド部材60の位置決め孔65内に嵌入されることから、この間の径差を最小限のものとすることによって、シールド部材60はハンガー40に安定的に支持され、みだりに位置ずれするおそれはない。さらに、ハンガー40には、相対向するようにクランプ板ばね49が設けられており、このクランプ板ばね49の最内側端49aが内向きに突出しているので、ハンガー40にシールド部材60を装着したときには、このシールド部材60によりクランプ板ばね49の最内側端49aが相互に離間することになり、もってシールド部材60はクランプ板ばね49,49間に挟持された状態で固定される。
そして、ハンガー40における支持部43は、図13に示したように、鉛直杆部42に対して所定の角度θ、好ましくは15°〜30°程度傾いており、従ってこのハンガー40に支持されているピストン1及びそれを覆うように装着したシールド部材60が同様の角度傾いた状態となる。このために、図17に示したように、メッキ槽31にハンガー40の鉛直杆部42を鉛直状態にして垂下させると、陽極板32の表面に沿う方向に向けて傾くことになる。また、このときに、シールド部材60の開口66は、その両側に位置する陽極板32に対面するようになる。そして、ハンガー40の全体は導電部材である金属で形成されており、かつ外面部は絶縁被覆されているが、ピストン1に給電を行うための接点となる鉛直杆部42のフック42aと、ピストン保持板ばね46におけるピストン1への接触部となる最突出部46aと、ピストン受け45における立ち上がり部の端面45aの各部は絶縁被覆が剥離されて、通電用の接点として機能する。従って、これらピストン保持板ばね46及びピストン受け45における通電用の接点と当接すると共に、鉛直杆部42は、実施例1における直流電源に接続したロッドに係合して、フック42と電気的に導通することになる。
以上のように構成することによっても、前述した実施例1と同様に、ピストン1に対して、そのピストンクラウン部2を除いた部位に部分メッキを施すことができ、特にスカート部3の摺動面3a表面に対して均一な膜厚のメッキを行なうことができる。
そして、ハンガー40及びそれに装着したピストン1とシールド部材60とには、水平面となる部位が概ね存在しなくなるように傾斜させるようにすることによって、メッキ槽31及び他の液処理槽にハンガー40を浸漬させた後に、このハンガー40を引き上げる際に、液は傾斜に沿って円滑に流れて、槽内に戻すことができる。従って、引き上げストローク端になると、例えばピストン1の上面における凹状に窪んだ部位等を含めて、ピストン1やシールド部材60及びハンガー40にメッキ液や他の処理液等が実質的に滞留することがなく、液切れが良好となる。その結果、液の持ち出しによるメッキ液や処理液の消費量を低減できると共に、次槽の汚損を抑制することができる。
また、ハンガー40にはピストン1と、このピストン1に対して部分的に微小隙間を設けて嵌合させるように装着されるシールド部材60とは、それぞれ個別的にハンガー40に着脱できるようになっている。従って、ハンガー40に対しては、そのハンガー40における支柱44にピストン1を支持させるようにして装着する。このときには、ピストン保持板ばね46にピストン1を嵌合させることによって、このピストン1のスカート部3の最下端部がピストン保持板ばね46の最突出端46aを変形させて、つまり相対向する位置に設けたピストン保持板ばね46を相互に近接する方向に撓めながら挿入され、ピストン1のピストンクラウン部2内面が支柱44の先端に設けたピストン受け45に当接する位置まで押し込むことによって、ピストン1はピストン保持板ばね46の作用により挟持された状態に保持される。
次に、シールド部材60を前述のようにしてハンガー40に装着したピストン1に嵌合するようにして装着する。シールド部材60でピストン1をほぼ覆う状態になると、一対設けたクランプ板ばね49,49の曲成部49bによりその下端部が呼び込まれるようになり、この曲成部49bが外向きに拡開するように変形して、最内側端49aが相互に離間するようになる。そして、シールド部材60に設けたフランジ部54の位置決め孔55内に支持ピン47を挿入させる。これによって、シールド部材60が位置決めされることになり、さらにシールド部材60を押し込むと、支持ピン47の台座部47b及び台座ピン48の台座部48aにおける先端面上にピストン1の下端面が当接すると共に、両クランプ板ばね49の最内側端49aにより挟持され、もってシールド部材60がハンガー40の支持部40に固定的に保持される。
以上のようにしてハンガー40にピストン1及びシールド部材60が固定されことによって、ピストン1に対して部分メッキを行なうための各槽内に順次浸漬させるに当って、ピストン1及びシールド部材60がみだりに位置ずれするおそれはない。
そして、ピストン1に対するメッキ処理が終了すると、ハンガー40からまずシールド部材60を取り外すことによって、部分メッキされたピストン1を容易にハンガー40から脱着することができ、この作業を行なっている間に、ピストン1に他の部材が衝突して損傷させる等のおそれはない。
本発明の部分メッキを施すために用いた評価用治具の構成説明図である。 シールド部材とワークとの間隔に応じて、シールド部材の端部近傍に形成されるメッキ層の厚みの変化を示す線図である。 本発明におけるワークの正面図である。 図3のA−A断面図である。 図4のB−B断面図である。 図3のC−C断面図である。 本発明の実施例1におけるメッキ処理を行なうためのハンガーの外観図である。 図7のハンガーにシールド部材を設けた状態を示す外観図である。 ハンガーにシールド部材を設け、かつワークとしてのピストンを装着した状態を示す部分断面正面図である。 実施例1において、ピストンに部分メッキを行なっている状態を示す構成説明図である。 本発明の実施例2におけるメッキ処理を行なうためのハンガーの概観図である。 実施例2のハンガーにワークとシールド部材とを装着した状態を示す断面図である。 図12のD−D断面図である。 実施例2におけるシールド部材の平面図である。 図14のE−E断面図である。 図14のF−F断面図である。 実施例2において、ピストンに部分メッキを行なっている状態を示す構成説明図である。
符号の説明
1 ピストン 2 ピストンクラウン
3 スカート部 3a 摺動面
4 ボス部 5 ピストンリング溝
10,40 ハンガー 11 ハンガー本体
12 フック 13 絶縁チューブ
14 支持杆 15 電極杆
15a 電極部 20,60 シールド部材
21,22 円筒部 23,66 開口
30 ロッド 31メッキ槽
32 陽極板 33 直流電源
42 鉛直杆部 43 支持部
45 ピストン受け 46 ピストン保持板ばね
47 支持ピン 48 台座ピン
61 小径円筒部 62 大径円筒部
63 シールド本体 64 フランジ部
65 位置決め孔

Claims (5)

  1. 外周面に円環状溝が形成された有蓋円筒形状のピストンクラウン部と、外周面に摺動面を形成したスカート部とを有するピストンからなるワークに対し、前記ピストンクラウン部の前記円環状溝の形成部にはメッキを施さず、前記スカート部の摺動面にメッキを施すための部分メッキ装置であって、
    電解液が充填され、2枚の陽極板を配設したメッキ槽と、
    前記ワークを前記ピストンクラウン部が上部側で前記スカート部が下方になるようにして着脱可能に支持して、前記メッキ槽に浸漬させるハンガーと、
    前記ハンガーに設けられ、前記ピストンクラウン部の前記円環状溝に対してはほぼ一定の微小隙間を介して対面し、前記スカート部の摺動面と対面する部位が開口した電気絶縁部材からなるシールド部材とを備え、
    前記ワークを陰極として、前記メッキ槽の電解液中には前記陽極板間で、これら陽極板とほぼ平行であり、かつこのワークを前記シールド部材と共に傾けるように対面させて、これら陰極と陽極板との間で電流を流すことにより前記摺動面にメッキをする
    構成としたことを特徴とする部分メッキ装置。
  2. 前記ワークのスカート部に設けられ、前記シールド部材の前記開口の位置に露出する前記摺動面はボス部を挟んだ両側に位置しており、前記メッキ槽内の2枚の陽極板間にこれら両摺動面に対面するように配置する構成としたことを特徴とする請求項1記載の部分メッキ装置。
  3. 前記シールド部材は前記ハンガーに固定的に取り付けた円筒状の部材からなり、前記ワークは前記シールド部材の内側に装着する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の部分メッキ装置。
  4. 前記シールド部材は前記ハンガーに着脱可能に装着されるものであり、このハンガーは、前記ワークを支持する第1の支持部と、前記シールド部材を支持する第2の支持部とを設けたハンガー本体を有し、またこのハンガー本体には前記陰極部材に係脱可能なフックを設ける構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の部分メッキ装置。
  5. 前記ワークの表面と前記シールド部材と間に形成される微小隙間の間隔は5mm以下とする構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の部分メッキ装置。
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