JP3912155B2 - 樹脂フィルムの熱成形方法及び加飾樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

樹脂フィルムの熱成形方法及び加飾樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿性の熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも一層有する樹脂フィルムを賦形するための熱成形方法に関するものである。本発明はまた、こうして賦形された樹脂フィルムが表面に一体貼合された樹脂成形体の製造方法にも関係している。
【0002】
【従来の技術】
樹脂フィルムはさまざまな分野で利用されているが、近年、成形体の印刷代替として、印刷や着色が施された樹脂フィルムを用い、それを成形品の表面に一体貼合する技術が注目されている。このような成形体の表面加飾に用いられる樹脂フィルムには、例えば、絵柄や文字などの印刷層を有するアクリル系樹脂フィルムや、透明アクリル系樹脂と着色アクリル系樹脂の積層フィルム、また、アクリル系樹脂/ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂、アクリル系樹脂/ポリプロピレンのような異種樹脂の積層フィルムがある。
【0003】
かかる加飾フィルムを成形体表面に一体貼合するにあたっては、真空成形や圧空成形などの熱成形によりフィルムに予備賦形を施した後、射出成形用の金型に挿入するか、あるいはインモールド成形機能を有する射出成形金型内で真空成形などの熱成形により予備賦形し、その状態で当該加飾フィルムの片面に熱可塑性樹脂を射出する方法が一般に採用される。そして例えば、特表平 2-503077 号公報には、アクリル系樹脂とフッ素化ポリマーを含む層を透明表層として、自動車外装部品を被覆することが記載され、また特開平 8-323934 号公報や特開平 10-279766号公報には、ゴム粒子が配合されたアクリル系樹脂を射出成形体の加飾フィルムとして用いることが記載されている。さらに、特開平 11-207896号公報や特開 2001-310427号公報には、表面加飾に用いる積層フィルムであって、溶融樹脂が射出される側(バッキング層)にポリプロピレン系の樹脂を配した積層フィルムが記載されている。
【0004】
加飾フィルムの片面に溶融樹脂を射出するに先立って行われる加飾フィルムの熱成形においては、当該加飾フィルムをヒーターで加熱するか、熱板を接触させて加熱する方法が一般に採用されている。ところが、アクリル系樹脂や、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂などは、一般的に吸湿性を有し、時間の経過とともに樹脂中に水分を吸収する。そして、吸湿した状態のままで加飾フィルムを加熱すると、フィルム表面に発泡などの不良が発生する。そのため、熱成形温度まで加熱する前に予備乾燥を行い、フィルム中に含まれる水分を除去することが必要であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
予備賦形工程である熱成形において、予備乾燥なしで、室温から成形温度まで直接フィルムを昇温できれば、製造工程の簡略化、生産効率の向上の観点から好ましい。
【0006】
そこで本発明の目的の一つは、吸湿性樹脂からなるか、又は吸湿性樹脂の層を含むフィルムを賦形するための熱成形において、吸湿した状態の樹脂フィルムから、予備乾燥を施すことなく良好な外観を有する賦形品を得ることができる方法を提供することにある。本発明のもう一つの目的は、フィルムを成形温度まで昇温する際の加熱条件に工夫を加えることで、予備乾燥を施すことなく良好な外観を有する賦形品を得ることにある。さらに本発明のもう一つの目的は、こうして賦形された樹脂フィルムを用いて、それを他の熱可塑性樹脂からなる成形体の表面に一体貼合し、良好な表面状態の樹脂成形体を製造することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる目的のもとで鋭意研究を行った結果、熱成形温度までフィルムを加熱する際、吸湿性樹脂層の水分の減少速度を適当な範囲にすることで、たとえ吸湿した状態の吸湿性樹脂層を含むフィルムであっても、これを予備乾燥することなく、良好な外観の賦形品が得られることを見出した。この知見をもとに、さらに種々の検討を加えて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、吸湿性の熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも一層有する樹脂フィルムを、その吸湿性樹脂層中の含水率が 0.25重量%以上の状態から、その吸湿性樹脂層中の水分が0.001〜0.009重量%/秒の割合で減少するように成形温度まで加熱し、次いで成形する方法を提供するものである。
【0009】
また本発明は、吸湿性の熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも一層有する樹脂フィルムを、その吸湿性樹脂層中の含水率が 0.25重量%以上の状態から、その吸湿性樹脂層中の水分が0.001〜0.009重量%/秒の割合で減少するように成形温度まで加熱し、次いで成形し、得られる賦形フィルムを射出成形金型の一方の面に配置して金型キャビティーに溶融樹脂を射出することにより、上記樹脂フィルムで表面が加飾された樹脂成形体を製造する方法をも提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明においては、吸湿性の熱可塑性樹脂が熱成形の対象となる。本明細書でいう吸湿性樹脂とは、 JIS K 7209 に規定されるA法(23℃の水に浸漬後、吸水量を測定する方法)により測定したときの吸水率が 0.05重量%以上であるものとする。かかる吸湿性の樹脂として、アクリル系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。一方、代表的な熱可塑性樹脂の一つであるポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂は、通常、吸湿性を示さない。吸湿性樹脂と非吸湿性樹脂の両方を含有する混合樹脂組成物であっても、混合物全体の吸水率が上記範囲であれば、本明細書でいう吸湿性樹脂に該当する。
【0011】
アクリル系樹脂は、アクリル酸又はメタクリル酸のエステルから誘導される重合体を主成分とする樹脂である。本発明では、吸湿性樹脂からなるか、又は吸湿性樹脂の層を含む積層フィルムが熱成形の対象となるが、かかる吸湿性樹脂として、アクリル系樹脂、特にメタクリル酸メチルを主体とする重合体(通常、アクリル樹脂とかメタクリル樹脂とか呼ばれるもの)は、適当なものの一つである。アクリル系樹脂は、例えば、前述の特表平 2-503077 号公報に記載されるようなフッ素化ポリマーが混合されたものでもよく、同じく前述の特開平 8-323934 号公報や特開平 10-279766号公報に記載されるようなゴム粒子が配合されたものでもよい。
【0012】
本発明により成形されるフィルムは、吸湿性樹脂からなる層を少なくとも一層有するものであり、吸湿性樹脂からなる単層構造の樹脂フィルムであってもよいし、同種、異種をとわず複数の層から構成される多層構造の樹脂フィルムであってもよい。また、吸湿性の樹脂からなる層と、実質的に非吸湿性の樹脂からなる層とが積層された、複層構成の多層フィルムでもよい。
【0013】
多層フィルムとする場合は、アクリル系樹脂を意匠面、すなわち、他の熱可塑性樹脂を片面に射出して成形体としたときの最表層とするのが、加飾状態における意匠性の面で好ましい。特に、透明なアクリル系樹脂を意匠面とし、その裏側に着色樹脂層を配したり、あるいは裏側のフィルムに印刷を施したりすれば、その裏側に他の熱可塑性樹脂を射出して一体貼合したときに、透明なアクリル系樹脂フィルム側から見て深みのある外観を呈し、高い意匠性を与える。適当な多層フィルムの例として、透明アクリル系樹脂/着色アクリル系樹脂の二層構成からなるもの、透明アクリル系樹脂/着色ABS樹脂の二層構成からなるもの、透明アクリル系樹脂/着色アクリル系樹脂/ABS樹脂の三層構成からなるもの、透明アクリル系樹脂/着色アクリル系樹脂/接着剤/ポリプロピレン系樹脂の四層構成からなるものなどを挙げることができる。
【0014】
成形に供される樹脂フィルムの全体厚みは、一般的には25〜1,000μm程度であり、好ましくは50μm 以上、さらに好ましくは100μm 以上であり、また好ましくは900μm 以下、さらに好ましくは800μm 以下である。樹脂フィルムの厚みがあまり小さくなると、加飾に用いる場合の意匠性の点で劣るため、好ましくない。一方、フィルムの厚みがあまり大きくなると、賦形が困難になるため、好ましくない。
【0015】
以上のような吸湿性樹脂からなる層を少なくとも一層有する樹脂フィルムを成形温度まで加熱し、成形するのであるが、この際本発明では、吸湿性樹脂層中の水分が0.001〜0.009重量%/秒の割合で減少するように加熱する。加熱による水分の減少速度は、加熱開始前の吸湿性樹脂層の含水率及び加熱終了直後(成形温度に達した状態)の吸湿性樹脂層の含水率を求め、重量%表示での両者の差(単位は重量%)を、加熱開始からフィルムの表面温度が成形温度に達するまでの時間(秒)で除して、求めることができる。加熱速度ないし水分の減少速度は必ずしも一定である必要はなく、加熱開始から成形温度に達して加熱を終了するまでの間を平均した水分の減少速度が上記の範囲となるようにすればよい。
【0016】
吸湿性樹脂層中の水分の減少速度が 0.009重量%/秒を越えるように加熱すると、成形後の予備賦形体に発泡などの不良が生じやすく、延いては、その予備賦形体を金型の一方の面に配置して他の熱可塑性樹脂の射出成形を行ったときに、その表面不良がそのまま射出成形品の貼合フィルム表面に残存することになる。一方、吸湿性樹脂層中の水分の減少速度が 0.001重量%/秒を下回るように加熱することは、加熱昇温に長時間を要することから、実用的でない。
【0017】
樹脂フィルムが吸湿性の樹脂からなる層と非吸湿性の樹脂からなる層とを含む積層フィルムである場合には、吸湿性樹脂層における含水率を、上記水分減少速度の基準とする。樹脂フィルムが吸湿性樹脂からなる層を複数有する場合には、それらの吸湿性樹脂からなる層全体での含水率を、上記水分減少速度の基準とする。また本発明では、予備乾燥を省略して、樹脂フィルムを熱成形温度まで加熱することから、加熱開始温度は、一般に常温、具体的には40℃以下とされる。加熱に供される樹脂フィルムは、吸湿性の熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも一層含むので、この吸湿性樹脂からなる層は通常、吸湿している。この吸湿性樹脂からなる層は、一般に0.25重量%以上の含水率となっている。
【0018】
本発明において、加熱方法は特に限定されるものでなく、例えば、遠赤外線ヒーターのような加熱ヒーターを用いて加熱する方法や、加熱した熱板をフィルムに接触させて加熱する方法などを採用することができる。
【0019】
このように本発明では、樹脂フィルムの熱成形に際して、常温での加熱開始から成形温度に到達するまで、0.001〜0.009重量%/秒というゆっくりした速度で水分が減少するように加熱する。一般に昇温速度を小さくすることにより、このような緩い速度での水分の減少(蒸発)を達成することができるが、吸湿性樹脂の種類や、積層フィルムである場合には各層の組合せなどによって、水分の減少(蒸発)速度と昇温速度の関係は大きく変化するので、簡単な予備実験を行って、適当な昇温速度を定めればよい。
【0020】
成形温度まで加熱された樹脂フィルムは、次いで熱成形される。熱成形には、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法など、各種公知の方法が採用できる。熱成形の形態は、フィルムを連続的に加熱しながら供給し、連続的に成形する方法であってもよいし、バッチ式にフィルムを加熱して供給し、バッチ式に成形する方法であってもよい。
【0021】
成形温度は特に限定されないが、一般には樹脂フィルムを構成する樹脂の最高ガラス転移温度以上であり、好ましくは、この最高ガラス転移温度より少なくとも10℃高い温度とされる。例えば、樹脂フィルムが事実上メチルメタクリレート主体のアクリル系樹脂のみからなる場合は、110℃以上、とりわけ130〜190℃程度の範囲である。樹脂フィルムがABS樹脂からなるか又はABS樹脂層を含む多層フィルムである場合は、110℃以上、とりわけ120〜190℃程度の範囲である。また、樹脂フィルムがポリプロピレン系樹脂層を含む多層フィルムである場合は、90℃以上、とりわけ110〜180℃程度の範囲である。
【0022】
かくして予備賦形されたフィルムは、次いで射出成形金型の一方の面に密着させて配置し、その金型キャビティーに溶融熱可塑性樹脂を射出することにより、当該フィルムが表面に一体貼合され、それが加飾層となった射出成形体を製造することができる。そして本発明によれば、フィルムの予備乾燥を省略しながら加熱条件を制御することで、表面不良の極めて少ない賦形フィルムを得ることができ、その一方の面に他の熱可塑性樹脂を射出した成形体も、表面状態の良好なものとなる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。なお、樹脂フィルムの含水率、加熱による水分の減少速度、及び予備賦形体の意匠面の不良個数は、以下の方法で求めた。
【0024】
〔樹脂フィルムの含水率〕
フィルムから所定寸法のサンプルを切り出し、それを電子精密天秤で精秤して含水状態の重量aを求める。次に、そのサンプルを120℃の真空乾燥機で3日間乾燥し、常温まで冷却した後に再度精秤して、含水率が0%である状態の重量bを求める。これらの重量a及び重量bから、下式(I)により樹脂の含水率を求める。フィルムが吸湿性樹脂と非吸湿性樹脂との積層品である場合には、その積層フィルムから吸湿性樹脂層を分離し、その吸湿性樹脂層について上と同様の操作を行って、含水率を求める。
含水率(%)=(重量a−重量b)÷重量b×100 (I)
【0025】
〔加熱による水分の減少速度〕
熱成形前の加熱開始直前と加熱終了直後の含水率(%)を求め、両者の%表示での差を加熱時間(秒)で除して、水分の減少速度を求める。試料の含水率が測定までの時間で変化しないように、採取した試料は直ちに防湿性の袋に保存し、測定直前に開封して測定に供する。
【0026】
〔予備賦形体の意匠面の不良個数〕
熱成形で賦形された予備賦形体の意匠面を観察し、100cm2 あたりの発泡状不良個数を数える。
【0027】
実施例1
(a)アクリルフィルムの作製
ここでは、透明アクリル系樹脂層と着色アクリル系樹脂層の二層からなるアクリルフィルムを作製した。透明層には、住友化学工業(株)製で汎用グレードのメタクリル樹脂“スミペックス EX”を用いた。この樹脂は、JIS K 7209 のA法に従って23℃の水に24時間浸漬した後の吸水率が0.3 %であった。また着色層には、住友化学工業(株)製で耐衝撃グレードのメタクリル樹脂“スミペックス HT01X”97.99%と、東洋アルミニウム(株)製で平均粒子径38μmのアルミニウム粉末2%と、チタンイエロー染料0.01% とを溶融混練して作製したペレットを用いた。着色層に用いたメタクリル樹脂“スミペックス HT01X”は、 JIS K 7209 のA法に従って23℃の水に24時間浸漬した後の吸水率が
0.4%であった。
【0028】
それぞれの樹脂を、設定温度260℃の一軸押出機2台を用いて溶融し、設定温度280℃のフィードブロックで各層を逐次積層した後、設定温度280℃のTダイから押し出した。さらに、ロール温度70℃に設定された3本のポリシングロールからなる成形ロールを用い、そのうちの第一及び第二ロールが、押し出された溶融樹脂に両面から接して挟み込む状態で樹脂を冷却し、アクリル二層フィルムを作製した。得られた二層フィルムは、透明層の厚みが100μm 、着色層の厚みが200μm 、全厚みが300μm であった。
【0029】
(b)ABS樹脂フィルムの作製
日本エイアンドエル(株)製のABS樹脂“MTH-2 ”を、Tダイフィルム加工機に投入し、シリンダー設定温度260℃で押し出してフィルムとした。ここで用いたABS樹脂“MTH-2”は、JIS K 7209 のA法に従って23℃の水に24時間浸漬した後の吸水率が0.3% であった。また、得られたABS樹脂フィルムの厚みは200μm であった。
【0030】
(c)加飾フィルムの作製
上で作製したアクリル二層フィルムとABS樹脂フィルムとを、100℃に設定したラミネートロールを用いて貼合した。この際、意匠面を透明アクリル系樹脂層とし、着色アクリル系樹脂層とABS樹脂層が接するように積層した。得られた積層フィルム(加飾フィルム)の厚みは480μm であった。また、この加飾フィルムの含水率は 0.31%であった。
【0031】
(d)加飾フィルムの予備賦形
長さ1200mm、幅500mmの上記加飾フィルムを、真空圧空成形機(布施真空(株)製の“CUPF1015-PWB”)のクランプ枠に固定した。クランプ枠の上下には、それぞれ遠赤外線ヒーターパネルが備え付けられている。このヒーターパネルの概要及び、それとフィルムの配置の概要を図1に示した。すなわち、加飾フィルムの上下に配置される遠赤外線ヒーターパネル3,4は、図1(A)に模式的な平面図で示す如く、大きさ120mm×120mmの赤外線ヒーター5,5……が、縦に150mm間隔で7枚、横に150mm間隔で10枚、計70枚並べられたものである。ここで、赤外線ヒーター5,5……は、Elestein-Werk Steinmetz 社製の“HFS”(200V×400W)で構成されている。 この遠赤外線ヒーターパネル3,4は、図1(B)に模式的な縦断面図で示す如く、クランプ7,7にセットした加飾フィルム1の上方165mmの場所と、下方210mmの場所の両面に設置されている。
【0032】
上下のヒーターパネル3,4の設定温度を、それぞれ350℃及び300℃として、加飾フィルム1の加熱を行った。加熱開始前の加飾フィルム1の表面温度は20℃であった。ここから、加飾フィルム1の表面温度が160℃になるまで加熱した。160℃に到達するまでの加熱時間は44秒であり、したがって、昇温速度は 3.2℃/秒であった。その後、ヒーターパネル3,4を系外に退避させてから、真空成形用金型を加熱フィルムに接触させ、金型とフィルムとの間の空気を真空引きすることにより、加飾フィルムを賦形した。この際、透明アクリル樹脂層側から真空吸引し、ABS樹脂層側が凹面となるようにした。引き続き送風機により冷却した後、予備成形された加飾フィルムを取り出した。この予備賦形された加飾フィルムの意匠面を観察したところ、不良は認められず、良好な表面状態の予備賦形体を得ることができた。
【0033】
別途、上と同様の操作を行い、型賦形する直前の表面温度が熱成形温度に到達した状態のフィルムの含水率を測定したところ、0.17% であった。また、型賦形を行った後のフィルムの含水率も0.17% であった。
【0034】
実施例2
加熱時にフィルム上下に配置されるヒーターパネル3,4の設定温度を、それぞれ300℃及び250℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。このとき、フィルム表面が160℃に到達するまでの加熱に要した時間は83秒であり、したがって、昇温速度は1.7℃/秒 であった。加熱開始前のフィルムの含水率は0.31%、型賦形直前のフィルムの含水率は0.20%、賦形後のフィルムの含水率は0.20% であった。得られた予備賦形フィルムの意匠面を観察したところ、不良は認められず、良好な表面状態の予備賦形体を得ることができた。
【0035】
実施例3
実施例1において、ABS樹脂フィルムの貼合を行わず、アクリル二層フィルムを単独で加飾フィルムとした。また、加熱時にフィルム上下に配置されるヒーターパネル3,4の設定温度を、それぞれ400℃及び350℃とし、フィルム表面の温度が130℃になるまで加熱した。それ以外は実施例1と同様の操作を行った。このとき、フィルム表面が130℃に到達するまでの加熱に要した時間は13.5秒であり、したがって、昇温速度は8.1℃/秒であった。加熱開始前のフィルムの含水率は0.45%、型賦形直前のフィルムの含水率は0.35%、賦形後のフィルムの含水率は0.35% であった。得られた予備賦形フィルムの意匠面を観察したところ、認められた不良数は2個/100cm2 と少なく、良好な表面状態の予備賦形体を得ることができた。
【0036】
実施例4
この例では、実施例1の(a)と同様の方法で作製したアクリル二層フィルムに、ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層したフィルムを用いた。
【0037】
(a)ポリプロピレン系樹脂フィルムの作製
住友化学工業(株)製でエチレン含量15%のプロピレン−エチレン共重合体樹脂“住友ノーブレン FH1016”(230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート0.5g/10分)が27% 、住友化学工業(株)製でブテン含量22%のエチレン−ブテン共重合体“エスプレン SPO N0416”(230℃、2.16kg 荷重でのメルトフローレート13g/10分)が30%、及び、林化成(株)製のタルク“JR46”とプロピレンホモポリマー(230℃、2.16kg 荷重でのメルトフローレート120g/10分)との重量比70:30混合物であるタルクマスターバッチが43%からなる樹脂組成物をドライブレンドした後、Tダイフィルム加工機に投入し、シリンダー設定温度260℃で押し出して、ポリプロピレン系樹脂フィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは200μm であった。このフィルムは、 JIS K 7209 のA法に従って23℃の水に24時間浸漬した後の吸水率が 0.03%であり、吸湿性を示さなかった。
【0038】
(b)アクリル二層フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムの貼合
東洋モートン(株)製のポリウレタン系接着剤である“TKS 3989”100部に対して、東洋モートン(株)製のイソシアネート系硬化剤である“CAT-RT”4部を加え、さらにトルエンで希釈して塗布量が7g/m2になるようにしたものを、接着剤とした。アクリル二層フィルムの着色層側に上記接着剤を所定量塗布し、80℃で約1分間乾燥させた。一方、上の(a)で得たポリプロピレン系樹脂フィルムの片面にコロナ処理を施して、このコロナ処理面を上記アクリル二層フィルムの接着剤塗布面に重ね、90℃に設定したラミネートロールを用いて貼合した。その後、40℃で72時間養生して、積層フィルムを得た。この積層フィルムの厚みは500μm であった。
【0039】
(c)積層フィルムの予備賦形
上の(b)で得た積層フィルムを用い、実施例1の(d)に示した方法に準ずるが、加熱時にフィルム上下に配置されるヒーターパネル3,4の設定温度を、それぞれ320℃及び300℃とし、フィルム表面の温度が180℃になるまで加熱した。その後は実施例1と同様の操作を行って、予備賦形されたフィルムを作製した。なお、真空吸引は透明アクリル樹脂層側から行い、ポリプロピレン系樹脂層側が凹面となるように賦形した。このとき、フィルムの表面温度が180℃に到達するまでの加熱に要した時間は92秒であり、したがって、昇温速度は1.7℃/秒 であった。加熱開始前の積層フィルムにおけるアクリル二層フィルム部分の含水率は 0.83%、型賦形直前のアクリル二層フィルム部分の含水率は 0.27%、賦形後のアクリル二層フィルム部分の含水率は 0.27%であった。得られた予備賦形フィルムの意匠面を観察したところ、不良は認められず、良好な表面状態の予備賦形体を得ることができた。
【0040】
比較例1
実施例1の(a)〜(c)と同様の方法で作製されたアクリル二層フィルムとABS樹脂フィルムの積層フィルムを用いた。ただし、ここで用いた積層フィルムは、加熱開始前の含水率が0.43% であった。この積層フィルムを、実施例1の(d)に示したのと同様の配置で、ただし、上下のヒーターパネル3,4の設定温度をそれぞれ400℃及び350℃とし、積層フィルムの表面温度が20℃から180℃になるまで加熱した。このとき、フィルム表面が180℃に到達するまでの加熱に要した時間は37秒であり、したがって、昇温速度は 4.3℃/秒であった。引き続き、実施例1の(d)と同様の方法で真空成形を行い、予備賦形されたフィルムを得た。型賦形直前のフィルムの含水率は 0.07%、賦形後のフィルムの含水率は0.07% であった。得られた予備賦形フィルムの意匠面を観察したところ、320個/100cm2 と非常に多くの不良が認められ、良好な表面状態の予備賦形体が得られなかった。
【0041】
参考例1
比較例1で用いたのと同じアクリル二層フィルムとABS樹脂フィルムの積層フィルム(初期含水率0.43%)を、 予め80℃に設定した熱風循環オーブンにて3時間予備乾燥を行った。予備乾燥後、オーブンから取り出して室温雰囲気に置くと、フィルム温度は数分で室温まで下がった。この状態でフィルムの含水率を測定したところ、0.23% であった。この予備乾燥後のフィルムを比較例1と同様に、その上下に配置されるそれぞれ400℃及び350℃に設定されたヒーターパネル3,4により、フィルムの表面温度が20℃から180℃になるまで加熱した。このとき、フィルム表面が180℃に到達するまでの加熱に要した時間は38秒であり、したがって昇温速度は4.2℃/秒 であった。引き続き比較例1と同様に真空成形を行い、予備賦形された加飾フィルムを得た。型賦形直前のフィルムの含水率は 0.12%、賦形後のフィルムの含水率は 0.12%であった。得られた予備賦形フィルムの意匠面を観察したところ、不良は認められず、良好な表面状態の予備賦形体を得ることができた。
【0042】
以上の実施例1〜4、比較例1及び参考例1の結果を表1にまとめた。
【0043】
【表1】
Figure 0003912155
【0044】
実施例5
以上の各例で作製した予備賦形加飾フィルムを用いて射出成形体を製造した。すなわち、各例で予備賦形した加飾フィルムを、形状を合わせて作製された射出成形用金型キャビティーの内面に挿入し、金型の型締めを行った後、実施例1及び2、比較例1並びに参考例1についてはABS樹脂層側に、また実施例3については着色アクリル樹脂層側に、それぞれABS樹脂を射出して、射出樹脂の表面に加飾フィルムが一体貼合された成形体を得た。一方、実施例4については、そのポリプロピレン系樹脂層側にポリプロピレン樹脂を射出して、同様の成形体を得た。その結果、予備賦形時に表面不良が事実上発生しなかった実施例1〜4及び参考例1については、表面の意匠性の高い成形体が得られたのに対し、予備賦形時に表面不良が発生した比較例1については、表面不良が残存したままで、外観不良を有する成形体となった。
【0045】
以上のように、フィルムの加熱前に予備乾燥を行った参考例1では、発泡状の表面不良が発生しないが、予備乾燥なしで室温から成形温度まで 0.010%/秒の水分減少速度で加熱した比較例1では、表面不良が多数発生する。これに対し、室温から成形温度まで加熱する際の水分減少速度を 0.010%/秒より小さくした実施例1〜4では、予備乾燥を省略しながら、良好な表面状態の賦形品が得られる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、吸湿性の熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも一層有する樹脂フィルムを賦形するための熱成形において、その樹脂フィルムを予備乾燥することなく、吸湿性樹脂層が吸湿した状態のままで、成形温度まで加熱する工程に付すことができる。そして、このように予備乾燥を省略しながら、良好な外観を有する賦形フィルム、さらにはそれを用いた外観良好な成形品を得ることができる。そのため、賦形フィルムの製造、さらにはそれを用いた成形品の製造において、工程の簡素化及び生産効率の向上が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における成形前の加熱状態の概要を示すものであって、(A)は加熱に用いたヒーターパネルの概要を示す平面図、(B)はヒーターパネルとフィルムの配置の概要を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1……フィルム、
3,4……ヒーターパネル、
5……赤外線ヒーター、
7……クランプ。

Claims (5)

  1. 吸湿性の熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも一層有する樹脂フィルムを、該吸湿性樹脂層中の含水率が 0.25重量%以上の状態から、該吸湿性樹脂層中の水分が0.001〜0.009重量%/秒の割合で減少するように成形温度まで加熱し、次いで成形することを特徴とする、樹脂フィルムの熱成形方法。
  2. 樹脂フィルムを構成する吸湿性の熱可塑性樹脂層が、アクリル系樹脂の層を含む請求項1記載の熱成形方法。
  3. アクリル系樹脂が透明層と着色層の二層からなり、透明アクリル系樹脂層が樹脂フィルムの意匠面を構成している請求項2記載の熱成形方法。
  4. 樹脂フィルムが、アクリル系樹脂と他の熱可塑性樹脂とが積層された多層フィルムであって、該アクリル系樹脂が、樹脂フィルムの意匠面を構成している請求項2又は3記載の熱成形方法。
  5. 吸湿性の熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも一層有する樹脂フィルムを、該吸湿性樹脂層中の含水率が 0.25重量%以上の状態から、該吸湿性樹脂層中の水分が0.001〜0.009重量%/秒の割合で減少するように成形温度まで加熱し、次いで成形し、得られる賦形フィルムを射出成形金型の一方の面に配置して金型キャビティーに溶融樹脂を射出することを特徴とする、上記樹脂フィルムで加飾された樹脂成形体の製造方法。
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