JP3912048B2 - 蒸発燃料処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に用いられるキャニスタに代表される蒸発燃料処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガソリンを燃料とする自動車では、主に燃料タンク内の蒸発燃料(HC)が大気へ放出されることを抑制するために、蒸発燃料処理装置としてのキャニスタが好適に用いられる。このキャニスタの容器の内部には大気や蒸発ガスが通流する流路が形成され、この流路の一端に大気を導入する大気導入部が設けられるとともに、他端に蒸発燃料導入部及び蒸発燃料排出部が設けられている。そして、機関停止時等には蒸発燃料導入部より導入される蒸発燃料を吸着体で吸着するとともに、機関運転中の所定のパージ運転時には、大気導入部よりキャニスタ内に大気を導入して、吸着体に吸着している蒸発燃料を脱離させ、この蒸発燃料を蒸発燃料排出部を介して機関の吸気系へ吸引し、燃焼処理するようになっている。
【0003】
ところで、吸着体としての活性炭に吸着された蒸発燃料の濃度分布は、大気導入部へ向かって低くなる傾向にあるが、活性炭がキャニスタ内の一つの連続する空間内に充填されていると、吸着平衡により蒸発燃料が時間の経過とともに濃度の低い大気導入部の方向へ向かって拡散・移動する所謂マイグレーション現象が進行し、時間の経過に伴って蒸発燃料の大気開放部へのリーク(放出)が起こり易くなってしまう。
【0004】
このような課題に対し、特開平10−37812号公報には、図10に示すように、筒状の第1キャニスタ101の大気導入部側に、相対的に小さい筒状の第2キャニスタ102を直列に配設し、両キャニスタ101,102を細い配管103により接続した構造が開示されている。この場合、両キャニスタ101,102内の活性炭が配管103により隔離されるため、この配管103の部分で吸着平衡による蒸発燃料の拡散・移動が実質的に中断されることとなり、ひいては蒸発燃料のリークを抑制できると記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この公報のように、外郭形状の異なる2つのキャニスタ101,102を細い配管103で接続した構成では、構成部品が多くなってコストが嵩むとともに、配管103での圧力損失が大きく、また長手方向に長尺な形状となるため、車両搭載性も良くない。
【0006】
本発明の一つの目的は、比較的簡素かつ安価な構造で、蒸発燃料の大気導入部からのリークを有効に防止し得る新規な蒸発燃料処理装置を提供することを一つの目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、内部に流路が形成され、この流路の一端に大気を導入する大気導入部が設けられるとともに、他端に蒸発燃料が導入される蒸発燃料導入部及び蒸発燃料が排出される蒸発燃料排出部が設けられた蒸発燃料処理装置において、上記流路の長手方向である主通流方向に沿って延在する筒部を有し、この筒部が、蒸発燃料を吸着・脱離する第1吸着体が充填される第1吸着室と、この第1吸着室よりも大気導入部寄りに直列に配置され、上記第1吸着体よりも吸着・脱離能力が高い第2吸着体が充填される第2吸着室と、流路断面方向に沿って第1吸着室と第2吸着室とを通流可能に隔離する隔離層と、を有することを特徴としている。
【0008】
典型的には、上記の蒸発燃料導入部が車両の燃料タンクに接続され、蒸発燃料排出部が内燃機関の吸気系に接続される。そして、燃料タンク内の温度上昇等に伴い蒸発ガスが蒸発燃料導入部を経由して流路へ導入され、この蒸発ガス内に含まれる蒸発燃料が吸着体に一時的に吸着され、残りの空気が大気導入部を経由して外部へ排出される。また、機関運転中の所定のパージ運転時には、蒸発燃料排出部から作用する吸気負圧により、大気導入部より大気が流路へ導入され、吸着体に付着している蒸発燃料が脱離され、この蒸発燃料が大気とともに蒸発燃料導入部を経由して吸気系へ供給され、最終的には機関の燃焼室内で燃焼処理される。吸気系へ導入される蒸発燃料の量及び時期は、典型的には蒸発燃料排出部と吸気系とを接続するパージ配管を開閉するパージコントロールバルブにより調節される。このパージコントロールバルブとしては、後述する実施形態のように機関運転状態に応じて電気的に制御されるものの他、吸気負圧に応じて強制的に開閉する機械式のものが挙げられる。
【0009】
そして、第1吸着体と第2吸着体とが隔離層により通流可能に隔離されているため、上述したマイグレーション現象が隔離層の部分で実質的に中断されることとなる。このため、時間の経過に伴い第1吸着室から第2吸着室へ拡散・移動する蒸発燃料の量及び速度が著しく抑制されることに加え、大気導入部寄りの第2吸着体の吸着・脱離能力を相対的に高くしているため、大気導入部への蒸発燃料のリークを十分に抑制することができる。言い換えると、吸着・脱離能力が高く高価な第2吸着体を大気導入部寄りの部分に局所的に配置しているため、コストを抑制しつつ効果的に蒸発燃料のリークの低減化を図ることができる。このような作用効果が得られる構造を、均一断面形状で主通流方向へ延在する筒部で実現でき、例えば上記公報のように形状の異なる2つのキャニスタを細い配管で接続する構造に比して、その形状が十分に単純化,簡素化され、レイアウト的に有利であるとともに、圧力損失も抑制される。
【0010】
図7に示すように、本発明のように吸着・脱離能力の異なる2種類の活性炭(吸着体)を用いた例a2,a3では、1種類の活性炭しか用いていない例a1に比して、排気エミッションが十分に低減されることがエバポ試験により確認された。また、図7及び図8に示すように、蒸発燃料排出部より流路へ導入されるパージ空気量を増加させることにより、吸着・脱離能力すなわちワーキングキャパシティが増加することも確認された。つまり、本発明と合わせてパージ空気量を増加させることにより、吸着体に残存する蒸発燃料の量を更に低減し、蒸発燃料のリークをより確実に防止することができる。なお、パージ空気量の増加は、典型的には、リニア型の空燃比センサ等を利用してパージ運転領域を拡大することにより実現できる。
【0011】
上記隔離層は、例えば発泡セラミック等で形成したり、単なる空間層とすることも可能であるが、典型的には安価で確実に隔離できるウレタン等で成形されたスクリーンすなわち不織布が用いられる。上記第1吸着体は、典型的には粒状の多数の活性炭により構成される。第2吸着体は、第1吸着体よりも吸着・脱離能力が高く効率の良いものとされる。典型的には、ハニカム活性炭,セラミック吸着材,高効率活性炭,及び高比熱活性炭等が挙げられる。なお、上記の吸着・脱離能力とは、ワーキングキャパシティ又は吸着・脱離効率とも称されるもので、吸着容量に対する脱離容量の割合に対応している。一般的には、比熱が高くなるほど吸着・脱離能力が向上する傾向にある。
【0012】
第2吸着体の吸着・脱離能力を最も効率よく高めるために、好ましくは第2吸着室を流路断面方向に円形をなす円柱形状又は円錐形状とし、特に好ましくは製造の容易な円柱形状とする。具体的には、上記筒部の内周面にインナケースを液密に嵌合し、このインナーケースの円柱形状をなす内周面により第2吸着室を画成する。つまり、インナーケースを用いて第2吸着室を筒部の内部で円柱形状に縮径させる。この場合、好ましくは第2吸着体を、インナーケースの内周面に嵌合する円柱状のセラミックフィルタ(ハニカム活性炭)とする。また、典型的には第2吸着室の中心軸線と筒状をなす大気導入部の中心軸線とを一致させる。なお、コストや吸着・脱離効率等を勘案すると、第2吸着体の容量は、第1吸着体を含む第2吸着体以外の残りの吸着体の容量に対して2%〜20%以下であることが好ましい。
【0013】
図9に示すように、上記流路の主通流方向に沿う長さをL、流路断面積の実質的な直径をDとすると、吸着室の直径Dに対する長さLの比、すなわちL/D比が高くなるほど、吸着・脱離能力が向上する反面、圧力損失が増加し、L/D比が低くなるほど、圧力損失が低下する反面、吸着・脱離能力が低下してしまう。従って、圧力損失の増加を抑制しつつ、大気導入部からの蒸発燃料のリークを効率的に抑制するためには、第1吸着室のL/D比を第2吸着室のL/D比よりも低く設定することが好ましい。特に好ましくは、ダスト耐久後の圧力損失が過度に大きくならないように、上記第2吸着室のL/D比を2〜5の範囲に設定し、上記第1吸着室のL/D比を略1.5に設定する。なお、断面形状が長方形等の場合、同じ断面積となるような円形の直径が上記の実質的な直径に相当する。
【0014】
典型的には、上記筒部と、この筒部に並設される筒状の反大気側筒部と、両筒部の一側を一体的に接続する連通部と、が一体的に形成された容器を有している。この容器は、例えば樹脂等により一体的に形成され、全体的な外郭形状がシンプルな箱形をなしている。また、上記流路を両筒部及び連通部の内部にわたって略U字状に延在させて、コンパクトな容器内で流路の長尺化を図る。上記反大気側筒部には、上記第2吸着体よりも吸着・脱離能力が低い第3吸着体が充填される第3吸着室が形成される。この第3吸着体は、例えば第1吸着体と同様、粒状の多数の活性炭により構成される。そして、上記容器の一方の側で、上記大気導入部が筒部の端部に形成されるとともに、上記蒸発燃料導入部及び蒸発燃料排出部が反大気側筒部の端部に形成される。このように、容器の一方の側に、大気導入部,蒸発燃料導入部,及び蒸発燃料排出部を集約させることにより、配管作業が容易化されるとともに、車両等への搭載性も向上する。
【0015】
より好ましくは、上記蒸発燃料排出部と蒸発燃料導入部とを仕切る仕切壁部と、上記第3吸着室の主通流方向両側の内側面を画成する通流可能な一対のスクリーンと、これらスクリーン及び第3吸着体を上記仕切壁部へ押し付ける捩りコイルスプリングや板ばね等の付勢手段と、を有している。これにより、蒸発燃料導入部から蒸発燃料排出部へ蒸発ガスが流れるような場合に、この蒸発ガスが確実に第3吸着室内を通過することとなり、蒸発燃料排出部へ排出される蒸発ガスの燃料濃度が緩和される。
【0016】
更に好ましくは、上記仕切壁部より第3吸着室の内部へ主通流方向に沿って延び、第3吸着室の一部を、上記蒸発燃料導入部へ連なる部分と、上記蒸発燃料排出部へ連なる部分と、に仕切るバッフルを有している。この場合、蒸発燃料導入部から蒸発燃料排出部へ蒸発ガスが流れるような場合に、第3吸着室内を流れる蒸発ガスが、バッフルにより略U字状に大きく迂回することとなり、蒸発燃料排出部へ排出される蒸発ガスの燃料濃度が更に効果的に緩和される。
【0017】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、比較的簡素な構造で、蒸発燃料の大気導入部からのリークを有効に防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る蒸発燃料処理装置としてのキャニスタ10を適用した車両の蒸発燃料処理システムの概要を示す構成図である。キャニスタ10の内部には、蒸発燃料(ベーパー)を吸着及び脱離する吸着体(21,23,31)が充填されている。内燃機関の停止時等には、高温高圧な燃料タンク1内の蒸発ガスがチャージ配管2を経由してキャニスタ10内に導入され、この蒸発ガス内に含まれる蒸発燃料が吸着体に一時的に吸着され、残りの空気が大気側配管3を経由して大気へ排出される。また、機関運転中の所定のパージ運転時には、吸気管4のスロットル弁4aの下流側の吸気負圧をパージ配管5を介してキャニスタ10内へ作用させる。この負圧により、大気が大気側配管3からキャニスタ10内へ導入され、吸着体に付着している蒸発燃料が脱離され、この蒸発燃料が大気とともにパージ配管5を通して吸気管4に供給され、最終的には燃焼室6内で燃焼処理される。このように吸気系へ導入される蒸発燃料の量及び時期は、パージ配管5を開閉するパージコントロールバルブ7により調整される。このパージコントロールバルブ7は、この実施形態ではECM(エンジン制御部)8により機関運転状態に応じて電気的に制御される。また、このシステムは、チャージ配管2に負圧カットバルブ(チェックバルブ)が設けられていない簡素な構造となっている。
【0019】
次に図2及び図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るキャニスタ10の具体的な構造について詳述する。このキャニスタ10は、樹脂材料等により一体的に形成される容器11を主体としている。この容器11は、均一な矩形断面で長手方向に延在する筒状の大気側筒部12と反大気側筒部13の一端同士を連通部14で一体的に接続してなり、全体としての外郭形状がシンプルな直方体状の略箱形をなしている。なお、両筒部12,13の互いに対向する側面は補強用のリブ15により一体的に連結されている。この容器11の内部には、大気や蒸発燃料が通流する流路16が形成されており、この流路16は、両筒部12,13及び連通部14にわたって延在する略U字状をなしている。このように流路16をU字状とすることにより、容器11の短縮化,小型化と流路16の長尺化とを両立させている。
【0020】
図1にも示すように、流路16の一端には、大気側配管3に接続する筒状の大気導入部17が容器11の内側へ凹設されている。また、流路16の他端には、チャージ配管2に接続する筒状の蒸発燃料導入部18と、パージ配管5に接続する筒状の蒸発燃料排出部19と、が容器11の外側へ突出形成されている。流路16が略U字状に形成されている関係で、上記の大気導入部17,蒸発燃料導入部18,及び蒸発燃料排出部19の全てが容器11の一方の側(図3の右側)に配置されている。従って、これらの部分17〜19に接続する配管2,3,5の全てが容器11の一方の側に集約される形となり、その配管作業が容易で車両搭載性も向上する。
【0021】
再び図2及び図3を参照して、大気側筒部12の内部には、蒸発燃料を吸着・脱離する第1吸着体21が充填される第1吸着室22と、この第1吸着室22よりも流路16の大気導入部17寄り(図3の右側)に直列に配置され、第1吸着体21よりも吸着・脱離能力が高い第2吸着体23が充填される第2吸着室24と、が形成されている。第1吸着室22の内周面は大気側筒部12の内壁面により画成され、第1吸着室22の長手方向である主通流方向の両側の内側面は第1スクリーン25及び第2スクリーン26により画成されている。第2吸着室24の内周面は大気側筒部12内に液密状態で嵌合するインナケース27の円柱状の内周面により画成され、第2吸着体23の主通流方向両側の内側面は第2スクリーン26及び第3スクリーン28により画成されている。インナケース27の外周面と大気側筒部12の内周面との間はシールリング等によりシールされている。容器11の連通部14側の内側面と第1スクリーン25の間には、付勢手段としての第1捩りコイルスプリング29が圧縮状態で介装されており、この第1捩りコイルスプリング29によって、スクリーン25,26、第1吸着体21、及びインナケース27等が大気導入部17側へ押し付けられた状態で保持されている。この実施形態では、第1吸着体21が粒状の多数の活性炭により構成され、第2吸着体23としてインナケース27の円柱状の内壁面に嵌合する円柱状の多孔質なセラミックフィルタ(ハニカム活性炭)が用いられている。
【0022】
このようにインナケース27を利用して第2吸着室24を最も吸着・脱離能力に優れた円柱形状に縮径しており、かつ、この第2吸着室24の中心軸線を大気導入部17の中心軸線と一致させているため、簡素な構造で、圧力損失等を抑制しつつ第2吸着体23の吸着・脱離能力が有効に高められている。
【0023】
反大気側筒部13の内部には、第3吸着体31が充填される第3吸着室32が形成されている。第3吸着体31は、少なくとも第2吸着体23よりも吸着・脱離能力が低く、この実施形態では第1吸着体21と同じく粒状の多数の活性炭により構成されている。第3吸着室32の内周面は反大気側筒部13の内壁面により画成され、第3吸着室32の主通流方向両側の内側面は、通流可能な第4スクリーン33及び第5スクリーン34により画成されている。第4スクリーン33と容器11の連通部14側(図3の左側)の内側面との間には付勢手段としての第2捩りコイルスプリング35が圧縮状態で介装されている。この第2捩りコイルスプリング35によって、スクリーン33,34及び第3吸着体31が、蒸発燃料導入部18と蒸発燃料排出部19とを仕切る仕切壁部36へ押し付けられた状態で保持されている。この仕切壁部36は、容器11の外壁部から連続的に屈曲形成されている。
【0024】
また、第3吸着室32の一部を蒸発燃料導入部18へ連通する部分と蒸発燃料排出部19へ連通する部分とに仕切る薄板状のバッフル38が、第3吸着室32内を流路16の主通流方向に沿って延在している。このバッフル38は、仕切壁部36の突出端部から一体的に突出形成されている。このようにバッフル38を用いた場合、第5スクリーン34は、バッフル38を挟んで一対の分割体34a,34bに分割構成される。
【0025】
上記のスクリーン25,26,28,33,34は、流路16の流路断面方向に延在する通流可能な層状のフィルタであり、吸着体の脱落を防止しつつ吸着体を保持する機能を有し、典型的には比較的安価なウレタンスクリーン等の不織布が用いられる。特に、第2スクリーン26は、第1吸着室22と第2吸着室24とを所定の間隔をあけて隔離する隔離層26として機能しており、上述したマイグレーション現象をより確実に防止するために、好ましくは図3にも示すように他のスクリーン25,28,33,34よりも主通流方向の厚さが長く設定されている。
【0026】
流路16の主通流方向に沿う長さをL、流路16の流路断面積の実質的な直径をDとすると、同じ活性炭が充填される第1吸着室22と第3吸着室32とは略同じL/D比に設定される。つまり、第1吸着室22の長さL及び直径Dがそれぞれ第3吸着室32の長さL及び直径Dの略半分となるように設定されている。これに対し、第2吸着室24は、インナケース27により断面円形状に縮径されている等の関係で、上記の第1吸着室22や第3吸着室32に比してL/D比が高く設定されている。このように、インナケース27を利用して、均一断面形状の大気側筒部12の内部に、L/D比の異なる第1吸着室22と第2吸着室24とを形成することができ、上述した特開平10−37812号公報のものに比して、構造が著しく簡素化される。より具体的には、第1吸着室22や第3吸着室32のL/D比を略1.5に設定し、第2吸着室24のL/D比を2〜5の範囲に設定する。また、第2吸着体23の容量を、残りの第1吸着体21及び第3吸着体31の容量に対して2%〜20%以下とする。
【0027】
燃料タンク1内の温度上昇等に伴い、図3に示すように、蒸発燃料導入部18より導入される蒸発ガスが、流路16内を矢印A1の方向へ流れる間に、蒸発ガス内の蒸発燃料が吸着体31,21,23に吸着され、残りの大気が大気導入部17より排出される。蒸発ガスは第3吸着体31,第1吸着体21,第2吸着体23の順に通過するため、一般的には第2吸着体23の吸着濃度が最も低くなり、かつ、この第2吸着体23の吸着・脱離能力を相対的に高く設定しているため、蒸発燃料が吸着されずに大気導入部17へ排出されることはほとんどない。
【0028】
また、上述したように、一つの連続する吸着室内に充填される吸着体においても、蒸発燃料の濃度勾配は大気導入部17の方向へ向かって低くなる傾向にある。ここで、時間の経過に伴って吸着体内の燃料濃度が平衡化するいわゆるマイグレーション現象によって、蒸発燃料が濃度の低い大気導入部の方向へ向かって拡散・移動する傾向にあることが知られているが、本実施形態では、第1吸着体21と第2吸着体23とが第2スクリーン26により隔てられているため、この第2スクリーン26の部分でマイグレーション現象が実質的に分断され、第2吸着体23への蒸発燃料の拡散・移動量が著しく抑制され、ひいては大気導入部17への燃料のリークをより確実に防止できる。
【0029】
次に図4及び図5を参照して、蒸発燃料導入部18から蒸発燃料排出部19へ流れる蒸発ガスによる排気エミッションインパクトについて説明する。本実施形態のようにチャージ配管2にチェックバルブが設けられていない構成では、機関運転中に蒸発燃料導入部18から蒸発燃料排出部19へ向かって蒸発ガスが流れることがある。
【0030】
ここで図5に示す比較例のように、第2捩りコイルスプリング35’が本実施形態とは逆に蒸発燃料導入部18や蒸発燃料排出部19の側に設けられている場合、蒸発燃料導入部18と蒸発燃料排出部19とを仕切る仕切壁部36と第5スクリーン34’との間に空間部Kができてしまう。従って、蒸発燃料導入部18から導入される蒸発ガスが、第3吸着室32’の内部をほとんど通過することなく、矢印A3に示すように空間部Kを経由して直接的に蒸発燃料排出部19へ流れるため、吸気系へ導入される蒸発ガスの燃料濃度が高くなって、空燃比が不用意にリッチ化し、いわゆる排気エミッションインパクトと呼ばれる排気性能の低下を招き易い。
【0031】
これに対して本実施形態では、図4に示すように、第2捩りコイルスプリング35によりスクリーン33,34及び第3吸着体31を仕切壁部36に押し付けて保持しており、かつ、第3吸着室32の一部をバッフル38により仕切っているため、矢印A2に示すように、蒸発燃料導入部18から導入される蒸発ガスが第5スクリーン34を通って第3吸着室32へ確実に導入されるとともに、バッフル38によりU字状に大きく迂回して蒸発燃料排出部19へ流れることとなる。このため、蒸発ガス中の蒸発燃料が第3吸着体31に吸着される量が増し、吸気系へ導入される蒸発ガスの燃料濃度が十分に緩和(抑制)され、上記の排気エミッションインパクトを十分に抑制することができる。
【0032】
図6は第2実施形態を示している。なお、第1実施形態と同じ構成には同一参照符号を付し、重複する説明を省略する。この第2実施形態では、第2吸着室24をウレタンスクリーン等の通流可能な隔離層40により第1分割室41と第2分割室42とに更に分割しており、これらの分割室41,42に、第1吸着体21や第3吸着体31よりも吸着・脱離能力の高い吸着体43,44をそれぞれ充填している。例えば、第1分割室41には高比熱活性炭を充填し、第2分割室42には円柱状のセラミックフィルタを充填する。このように第2吸着室24を隔離層40により更に分割構成することにより、上記のマイグレーション現象を更に確実に抑制することができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更,変形を含むものである。例えば、上記第1実施形態に対し、隔離層としての第2スクリーン26を他のスクリーン25,28,33,34と略同等又は短い厚さとしたり、バッフル38を省略したり、第2吸着体23として高比熱活性炭や高効率活性炭を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る蒸発燃料処理装置としてのキャニスタを適用した内燃機関の蒸発燃料処理システムを示す概略構成図。
【図2】第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置としてのキャニスタの内部を透視して示す斜視対応図。
【図3】図2のキャニスタの断面図。
【図4】同じく図2のキャニスタの断面図。
【図5】比較例に係るキャニスタの断面図。
【図6】第2実施形態に係る蒸発燃料処理装置としてのキャニスタを示す断面図。
【図7】吸着・脱離能力の異なる2種類の活性炭を用いた例a2,a3と、1種類の活性炭を用いた例a1とのエミッションを表す特性図。
【図8】パージ空気量に対するワーキングキャパシティの変化を示す特性図。
【図9】L/D比に対する吸着・脱離能力と圧力損失の変化を示す特性図。
【図10】従来例としての蒸発燃料処理装置を示す構成図。
【符号の説明】
11…容器
12…大気側筒部(筒部)
13…反大気側筒部
14…連通部
16…流路
17…大気導入部
18…蒸発燃料導入部
19…蒸発燃料排出部
21…第1吸着体
22…第1吸着室
23…第2吸着体
24…第2吸着室
25,28,33,34…スクリーン
26…第2スクリーン(隔離層)
27…インナケース
29,35…捩りコイルスプリング(付勢手段)
31…第3吸着体
32…第3吸着室
36…仕切壁部
38…バッフル
Claims (11)
- 内部に流路が形成され、この流路の一端に大気を導入する大気導入部が設けられるとともに、他端に蒸発燃料が導入される蒸発燃料導入部及び蒸発燃料が排出される蒸発燃料排出部が設けられた蒸発燃料処理装置において、
上記流路の主通流方向に沿って延在する筒部を有し、
この筒部が、蒸発燃料を吸着・脱離する第1吸着体が充填される第1吸着室と、この第1吸着室よりも大気導入部寄りに直列に配置され、上記第1吸着体よりも吸着・脱離能力が高い第2吸着体が充填される第2吸着室と、流路断面方向に沿って第1吸着室と第2吸着室とを通流可能に隔離する隔離層と、を有し、
上記筒部の内周面に液密状態で嵌合するインナケースの内周面により上記第2吸着室が画成されて、この第2吸着室が第1吸着室よりも縮径されていることを特徴とする蒸発燃料処理装置。 - 上記第2吸着体が、上記インナーケースの内周面に嵌合する円柱状のセラミックフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
- 上記隔離層が、ウレタンスクリーンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸発燃料処理装置。
- 上記第1吸着体が粒状の活性炭により構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蒸発燃料処理装置。
- 上記流路の主通流方向に沿う長さをL、流路断面積の実質的な直径をDとすると、
上記第1吸着室のL/D比が第2吸着室のL/D比よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蒸発燃料処理装置。 - 上記第2吸着室のL/D比が2〜5,上記第1吸着室のL/D比が略1.5に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の蒸発燃料処理装置。
- 上記筒部と、この筒部に並設される筒状の反大気側筒部と、両筒部の一側を一体的に接続する連通部と、が一体的に形成された容器を有し、
上記流路が両筒部及び連通部の内部を略U字状に延在しており、上記反大気側筒部に、上記第2吸着体よりも吸着・脱離能力が低い第3吸着体が充填される第3吸着室が形成され、
、上記容器の一方の側で、上記大気導入部が筒部の端部に形成されているとともに、上記蒸発燃料導入部及び蒸発燃料排出部が反大気側筒部の端部に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蒸発燃料処理装置。 - 上記蒸発燃料排出部と蒸発燃料導入部とを仕切る仕切壁部と、上記第3吸着室の主通流方向両側の内側面を画成する通流可能な一対のスクリーンと、これらスクリーン及び第3吸着体を上記仕切壁部へ押し付ける付勢手段と、を有することを特徴とする請求項7に記載の蒸発燃料処理装置。
- 上記仕切壁部より第3吸着室の内部へ主通流方向に沿って延び、第3吸着室の一部を、上記蒸発燃料導入部へ連なる部分と、上記蒸発燃料排出部へ連なる部分と、に仕切るバッフルを有することを特徴とする請求項8に記載の蒸発燃料処理装置。
- 上記インナケース内の第2吸着室が、第1分割室と第2分割室とに分割されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
- 上記隔離層とともに第1吸着室と第2吸着室の主通流方向両側の内側面を画成する他のスクリーンを有し、これら他のスクリーンに比して上記隔離層の主通流方向の厚さが長く設定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の蒸発燃料処理装置。
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