JP3911144B2 - 液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置に用いる接着性スペーサーの製造方法に関する。さらに詳しくは、シード粒子の表面を接着性微粒子で被覆してなる液晶表示装置用の接着性スペーサーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、テレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、PHS(携帯情報端末)、カーナビゲーションシステム等の画像表示素子として、液晶表示板(LCD)が広く用いられている。なかでもTFT−LCDと呼ばれる液晶表示板は、高速応答や視野角拡大への対応が可能なため、ブラウン管(CRT)からの置き換えを目的に、15インチ以上の大画面TFT−LCDとする開発が検討されてきた。
しかし、特に大画面TFT−LCDを製造する際には、液晶パネルの製造工程時(基板搬送時、基板切断時など)および液晶パネルの輸送時等に、振動や衝撃が加わって液晶パネル内部のスペーサーが動き、1)配向膜の損傷に起因した液晶の配向乱れによる光抜けの増加、2)ギャップムラおよび色ムラの発生等の、液晶パネルの品質低下を生じさせる問題があった。そこで、スペーサーの移動防止を目的として、シード粒子表面を接着層で被覆した接着性スペーサーの開発や検討がなされてきた。
【0003】
このような接着性スペーサーを得るにあたっては、乾式の製造法として、最も簡便に実施できるという観点から、高速気流中衝撃法を用いた衝撃(摩擦)力(例えば、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムを用いた高速気流中衝撃法など)によって、シード粒子表面に接着性樹脂を被覆する方法(特開昭63−94224号公報など)がよく知られている。しかしながら、これらの処理は、粒子どうしの混合衝突によって被覆処理をするため、完全な混合がされず、被覆にあずからないシード粒子や樹脂粉体などの異物が多く存在したり、未被覆のスペーサーが残ってしまうといった問題があった。
【0004】
一方、湿式の製造法としては、反応溶媒中、シード粒子の存在下で、ラジカル重合性単量体を重合したときに析出してくる生成重合体を利用して該シード粒子を被覆させる方法(特開平10−324706号公報など)が公知方法として知られている。確かに、一般的に、湿式法によれば乾式で問題になっていた異物等を、ろ過などの操作により容易に取り除くことができる上、比較的シード粒子表面の被覆効率も良いと言える。しかしながら、上記公知方法においては、析出した生成重合体がシード粒子表面に集まって被覆層となり得ても、その被覆層は、実質的には、溶媒中に安定に溶解した状態では存在できない重合体どうしが凝集した樹脂塊を含む層であり、そのような樹脂塊がシード粒子表面上にあると粒子自体の分散安定性などにも悪影響を及ぼすこととなるため、被覆後の粒子はコロイド的安定性に欠けたものとなり、粒子どうしの凝集が起こりやすいという問題がある。よって、反応初期段階から系全体の固形分濃度を極端に低くするなどの必要性が生じるため、被覆層の厚みは薄くなる。この様なことから、被覆効率や生産性の面で問題がある上、被覆層の厚みや量をコントロールすることが困難であるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、シード粒子表面への被覆効率が高く、スペーサー粒子の生産性にも優れるとともに、被覆後の分散安定性(コロイド的安定性)も良好で、被覆層の厚みや量を容易に制御できる、液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。
その結果、湿式によりシード粒子の表面に被覆層を形成させる接着性スペーサー粒子の製法において、どのような形態や物性を有する被覆層をどういった手段で形成すればよいか、という点に着目すべきであると考え、種々の推測および実験を繰り返した。従来、湿式法によるスペーサー粒子の製法においては、上述のように、湿式法としてのメリットは有していても、結局、得られた被覆層においては膜厚等の形態などに起因したデメリットが生じ、また、被覆層の形態や物性については所望の効果を有するようなものとなっていてもその製法は非常に煩雑である等の問題があったからである。つまり、優れた物性や、被覆層の膜厚などにおいて適切な形態を有する被覆層を得ることのできる製法であって、かつ、該被覆層を容易に得ることのできる方法を見出すべきではないかと考えたのである。
【0007】
かかる知見に基づき試行錯誤を繰り返した結果、シード粒子の表面を接着性微粒子により被覆する方法、詳しくは、シード粒子と重合により生成した重合体を微粒子状態で安定化させる樹脂との存在下で、ラジカル重合性単量体を重合させることによって微粒子状の重合体粒子を生成させ、生成により得られた微粒子状の重合体粒子のうちシード粒子の表面に付着した重合体粒子によって被覆する方法、さらには、この付着した重合体粒子の内部においてさらに重合が進行し粒子径、粒子体積が大きくなることによって被覆する方法であれば、上記課題を一挙に解決することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】
この方法で重要となるのは、シード粒子の存在下、シード粒子表面の被覆にあずかる重合体を微粒子状となるように合成し且つ2次凝集しないようにする点である。
そして、この重合体粒子には、重合体粒子としておよそ合成初期あるいは合成途中にある段階でシード粒子と衝突してその表面に付着して付着したまま合成が進行する粒子や、シード粒子には付着することなく溶媒中で合成が進行する粒子などがあり、主として前者の粒子がシード粒子表面の被覆にあずかることとなる。
【0009】
また、これら重合体粒子は、それぞれが独立に粒子として安定に存在するため、重合体粒子どうしの凝集や融合は起こることはなく、シード粒子表面に付着した重合体粒子上にさらに重合体粒子が付着するということや、シード粒子表面に付着した重合体粒子どうしの融合なども、ほぼ考えられない。
さらに、上記前者の粒子は、付着後さらに合成が進行することにより粒子の体積が大きくなっていくため、付着している粒子間で互いの間隔が狭くなっていき、付着粒子数が十分量ある場合は、シード粒子表面上に付着した粒子どうしが密着した形態で、その表面を覆うこととなる。
【0010】
このように、シード粒子の表面は、表面に付着した重合体粒子により覆われることとなるため、被覆後の粒子の被覆層は、局所的には滑らかとはいえない場合があっても、全体的には厚みなどが平均として均一で非常にバランスの取れたものとなり、ひいては、得られるスペーサー粒子自体の分散安定性を高め、お互いの凝集を低減できる。また、このように、得られるスペーサー粒子の分散安定性が確保できることから、被覆層形成にかかる反応においては固形分濃度(シード粒子と原料単量体との合計濃度)を必要かつ十分に高めて行うことができるため、シード粒子の表面全体をくまなく一様に被覆することを可能とするとともに、生産効率も高めることができる。同時に、被覆層の原料となるラジカル重合性単量体とシード粒子との比率や、重合時間などの調整すれば、被覆層の大きさや量などを適宜所望のレベルに容易にコントロールすることもでき、所望の厚みを有する被覆層を容易に形成させることができる。
【0011】
すなわち、本発明にかかる液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法は、
シード粒子の表面が、ラジカル重合性単量体を重合してなる重合体粒子からなる接着性微粒子に由来する接着層で被覆された液晶表示装置用の接着性スペーサーを得る方法であって、
前記ラジカル重合性単量体が下記一般式(1):
【化2】
(式中、R 1 は水素原子あるいはメチル基を表し、R 2 は炭素数12〜50の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す。)で表される重合性単量体を0.1重量%以上でかつ50重量%未満の量で含有し、前記ラジカル重合性単量体は溶解するがその重合体は溶解しない溶媒中に前記ラジカル重合性単量体を溶解させ、重合により生成した重合体を微粒子状態で安定化させる樹脂(樹脂がマクロモノマー、マクロイニシエーターである場合はその数平均分子量が500以上であること)およびシード粒子の存在下で、前記ラジカル重合性単量体を重合させて前記重合体粒子を生成させるとともに、前記シード粒子の表面を前記生成させた重合体粒子により被覆する、
ことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施形態】
以下、本発明にかかる液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法に関する詳細を具体的に説明する。
本発明にかかる液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法(以下、本発明の製造方法と称することがある。)は、シード粒子の表面が、ラジカル重合性単量体を重合してなる重合体粒子からなる接着性微粒子に由来する接着層で被覆されてなる液晶表示装置用の接着性スペーサーを得る方法である。そして、(A)前記ラジカル重合性単量体は溶解するがその重合体は溶解しない溶媒中に前記ラジカル重合性単量体を溶解させ、重合により生成した重合体を微粒子状態で安定化させる樹脂とシード粒子との存在下で、前記ラジカル重合性単量体のラジカル重合反応を開始して重合させてこの重合により、前記重合体粒子を生成させるとともに、前記シード粒子の表面に生成させた重合体粒子を付着させることによってこの表面を前記重合体粒子により被覆し、接着層を形成する、製造方法である。
【0013】
本発明の製造方法においては、上記(A)として示した製造工程を、下記(B)の製造工程で行うこともできる。すなわち、(B)は、前記ラジカル重合性単量体は溶解するがその重合体は溶解しない溶媒中に前記ラジカル重合性単量体を溶解させ、重合により生成した重合体を微粒子状態で安定化させる樹脂の存在下で、前記ラジカル重合性単量体のラジカル重合反応を開始して重合させ、この重合反応開始後から重合反応終了までの途中過程において前記溶媒中にシード粒子を分散させることにより、前記重合体粒子を生成させるとともに、前記シード粒子表面に生成させた重合体粒子を付着させることによってこの表面を前記重合体粒子により被覆し、接着層を形成する、製造方法である。ここで、重合反応開始後から重合反応終了まで(重合を開始した後、重合を終了するまでに)とは、重合開始時点および重合終了時点を含まない期間のことをいうとし、重合開始後にシード粒子を添加するタイミングとしては、特に限定はされないが、具体的には、重合度、すなわち仕込んだラジカル重合性単量体全量中の重合反応した単量体の重量割合が、50重量%以下の間に添加することが好ましく、より好ましくは40重量%以下、さらにより好ましくは30重量%以下である。上記重合度が50重量%以下の間であれば、重合体粒子は、該重合体粒子中に重合未反応の単量体などを含むことによって、シード粒子表面に容易に付着できる程度に可塑性(やわらかさ)を有する粒子となっていると考えられる。一方、上記重合度が50重量%を超えてから添加した場合、重合体粒子の可塑性が低下し、シード粒子表面に付着しにくくなるおそれや、一旦付着しても重合反応が進むにつれ、あるいは、重合反応終了後、シード粒子表面から剥がれてしまうおそれがある。また、重合終了までとは、シード粒子を添加した後も重合反応を継続して行うということであるが、添加後は1時間以上重合を行うことが好ましく、より好ましくは2時間以上、さらにより好ましくは4時間以上である。添加後1時間未満であると、シード粒子表面への重合体粒子の付着量が不十分となり、接着性スペーサーとしての機能を十分に発揮できないおそれがある。
【0014】
上述の(B)の方法ように、重合開始後から重合終了までの途中過程において、シード粒子を添加し溶媒中に分散させる場合、その添加の方法は、特に限定されるわけではなく、例えば、一括添加であっても、逐次添加(連続的添加、間歇的添加およびこれらを組み合わせた添加など)であってよい。
上記(A)および(B)のいずれの方法においても、重合体粒子がシード粒子表面に付着し、かつ、付着後も定着して接着性の被覆層となり得る理由としては、およそ重合反応初期から中期にかけて合成された重合体粒子が、重合反応終了時点での重合体粒子に比べて重合体粒子内部に例えば重合未反応の単量体や低分子量重合体などを多く含んでいることに起因する重合体粒子の可塑性などが考えられる。
【0015】
また、上記(A)および(B)の方法に関しては、いずれの方法によっても、同様に、シード粒子表面に重合体粒子が付着し被覆層となった接着性スペーサーを得ることができるが、(A)の方法では、シード粒子の存在下で重合体粒子の重合を開始するため、より合成初期の段階における重合体粒子をシード粒子表面に付着させることができ、単量体量および重合時間が十分であれば、得られる接着性スペーサーの被覆層(接着層)を非常にきめ細かく滑らかで緻密な層とすることが可能である。一方、(B)の方法では、重合開始直後にシード粒子を添加すれば(A)の方法と同様の効果を得ることもできるが、重合体粒子の粒子径が、重合終了時を粒子径を見越した上での所望の大きさとなった時点、あるいは、十分な可塑性・付着性を有する大きさとなった時点、などの任意のタイミングでシード粒子を添加することができるため、得られる接着性スペーサーの被覆層の厚みを容易に調整したり、重合体粒子のシード粒子表面への高い付着効率を容易に実現したりすることが可能である。
(ラジカル重合性単量体)
本発明の製造方法でいうラジカル重合性単量体としては、その種類は、特に限定されるわけではなく、本発明でいう接着性スペーサーが所望の物性を発揮できるよう適宜選択すればよいが、具体的には、例えば、親水性を付与したい場合には、特に限定はされないが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;などを用いることが好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
同様に、疎水性を付与したい場合には、特に限定はされないが、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルパーフルオロオクタスルホアミド)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−8−メチルデシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルパーフルオロオクタスルホアミド)エチルアクリレート、2−(N−エチルパーフルオロオクタスルホアミド)エチルメタクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;スチレン、p−クロロスチレン等のスチレン誘導体;などを用いることが好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
同様に、反応部位を与えるためには、特に限定はされないが、反応性の官能基としてエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基などを有するラジカル重合性単量体を用いることが好ましく、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド等を用いることが好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、本発明でいう接着性スペーサーに、液晶の異常配向や光抜けを防止する物性を備えたい場合は、上記ラジカル重合性単量体として、下記一般式(1)
【0018】
【化2】
【0019】
(式中、R1は水素原子あるいはメチル基を表し、R2は炭素数12〜50の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す。)
で表される、長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。上記一般式(1)において、R2の炭素数は、12〜50が好ましく、より好ましくは14〜30であり、さらにより好ましくは16〜28である。上記R2の炭素数が12未満であると、異常配向抑制の硬化が低くなり、多量の長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体が必要となり、得られる重合体のガラス転移温度Tg(℃)が低くなりすぎるおそれがあり、Tgが50℃未満になった場合スペーサー粒子どうしの融着が生じることとなる。また、50を超える場合は、長鎖アルキル基が長すぎるため単量体としての反応性が低下するほか、一般的に市販されていないため入手が困難であり、自ら合成するとなると操作が煩雑になることや、疎水性が強くなりすぎて他のラジカル重合性単量体との共重合性が低下するなどのおそれがある。
【0020】
本発明の製造方法において、ラジカル重合性単量体中に、上記長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体を含む場合、その含有割合は、0.1重量%以上かつ50重量%未満であることが好ましく、より好ましくは1重量%以上かつ40重量%未満、さらにより好ましくは3重量%以上かつ30重量%未満である。上記一般式(1)でいう、長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、パラステミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどを好ましく挙げることができる。上記長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよく、他のラジカル重合性単量体と併用してもよい。
【0021】
本発明の製造方法においては、上記ラジカル重合性単量体を重合して得られる重合体は、多数の微粒子状の重合体粒子として得られるため(詳しくは後述する。)、得られた重合体全量についてみれば、ラジカル単量体に由来する官能基、特に上記長鎖アルキル基などは、重合体表面に非常に多く導入することができ、容易に所望の効果を発揮させることができる。よって、重合体表面へ効率的に導入することが困難であった従来のように、長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体をラジカル重合性単量体全量に対して50重量%以上も含める必要性が、低減され得ることとなる。上記長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体を、ラジカル重合性単量体中に50重量%以上含むようにした場合は、上記重合体粒子は必要以上に高い粘着性を示し、ひいては接着性スペーサーどうしの融着を容易に引き起こしてしまうこととなる。これは、長鎖アルキル基を含む重合体は、ガラス転移温度が比較的低いためである。本発明においては、上述のように、重合体において長鎖アルキル基の効果を十分に発揮させたい場合は、長鎖アルキル基を有する重合性単量体を、ラジカル重合性単量体全体の0.1重量%以上かつ50重量%未満用いればよく、上述したような50重量%以上の過剰含有に関するデメリットを回避することができる。また、上記長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体の含有割合が0.1重量%未満であると、所望の効果を発揮させることが困難となるおそれがある。
【0022】
上記各種ラジカル重合性単量体については、その合計使用量すなわち合計仕込み量は、溶媒中に仕込んだシード粒子全量を100重量部とした場合、0.1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜70重量部、さらにより好ましくは5〜50重量部である。上記使用量が0.1重量部未満の場合は、接着層が薄くなり、接着性を十分に発揮できない場合がある。
上記ラジカル重合性単量体の重合に際しては、酸素等による重合抑制を防ぐ為に、反応系を窒素等の不活性ガスで置換しておくことが好ましい。
上記ラジカル重合性単量体の上記溶媒に対する仕込み方については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込んでもよいし、最初に一部を仕込んでおいてから残りを連続フィード添加しても、断続的にパルス添加しても、両者を組み合わせて添加してもよい。
【0023】
本発明の製造方法では、上記ラジカル重合性単量体を重合するにあたり、反応系中(溶媒中)に、上記ラジカル重合性単量体とともに、さらに架橋性単量体を含んでいてもよい。架橋性単量体を用いることによって、上記ラジカル重合性単量体のみで重合を行った場合よりも、得られる重合体粒子の分子量を上げることができるとともに、得られる重合体粒子の粒子径を小さくすることもできる。
上記架橋性単量体としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ビニル基を有する単量体として、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体などが挙げられる。また、上記ビニル基を有する単量体以外に、エポキシ基やシラノール基などを有する単量体なども挙げることができ、例えば、グリシジルメタクリレート等が挙げ挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記架橋性単量体を用いる場合、該架橋性単量体の使用量は、上記ラジカル重合性単量体をも含めた全単量体に対し、0.01〜40重量%とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%、さらにより好ましくは0.5〜10重量%である。上記架橋性単量体の使用量が、0.01重量%未満の場合は、架橋性単量体としての上述した効果がみられず、40重量%を超える場合は、反応系中で重合体粒子がさらにモノマーを吸収しにくくなって該粒子径が小さくなるため、重合体粒子を微粒子状で安定化する樹脂が不足することとなり、重合体粒子どうしが凝集、融合してしまうおそれがある。
【0025】
上記架橋性単量体の溶媒に対する仕込み方については、上述のラジカル重合性単量体の仕込み方と同様であることが好ましく、特に限定はされない。
本発明の製造方法において、上記ラジカル重合性単量体を重合して得られる重合体粒子の平均粒子径、なかでも特に、シード粒子の表面に付着し、その表面を被覆する重合体粒子の平均粒子径は、0.01〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1μm、最も好ましくは0.03〜0.5μm、特に好ましくは0.04〜0.3μmである。シード粒子表面では、被覆にあずかる重合体粒子は、隣接する重合体粒子を密着し不定形な粒子形状となる場合もあるが、そのような場合、上記平均粒子径は、重合体粒子の最長径とする。上記重合体粒子の平均粒子径が上記範囲内である場合は、シード粒子の粒子径と、シード粒子と重合体粒子との重量比と、を制御することにより、シード粒子表面を重合体粒子で表面全体を完全に被覆することが可能となる。また、上記重合体粒子の平均粒子径が0.01μm未満であると、被覆は可能であるが、接着性スペーサーとして接着性が十分に発揮できないおそれがあり、2μmを超えると、シード粒子と重合体粒子との粒子径の差が小さくなり、表面全体を完全に被覆することができない場合がある。ただし、シード粒子の粒子径が重合体粒子に比べ十分大きい場合は、重合体粒子の粒子径が2μmを超える場合であっても、シード粒子の表面全体を完全に被覆することができることがある。
(溶媒)
本発明の製造方法でいう溶媒とは、前記ラジカル単量体は溶解するが、該単量体を重合してなる重合体および重合体微粒子は溶解しない特性を有する反応溶媒である必要がある。
【0026】
上記溶媒としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;
ベンゼン、トルエン等の芳香族類;アセトにトリル、ジオキサン、ジオキソラン、THF等;などを好ましく挙げることができ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよく、また、これらと互いに相溶し合う他の有機溶媒と併用してもよいし、水との併用でもよい。
(ラジカル重合開始剤)
本発明でいうラジカル重合開始剤としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、過可硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類、および、これら過酸化物系開始剤類に還元剤としての亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリット、メタ重亜硫酸ナトリウム等と組み合わせたレドックス系開始剤;
アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬(株)製、商品名:V−601)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)(和光純薬(株)製、商品名:V−501)、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕(和光純薬(株)製、商品名:VA−061)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬(株)製、商品名:V−50)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製、商品名:V−70)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(和光純薬(株)製、商品名:V−60)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド(和光純薬(株)製、商品名:V−30)等のアゾ系化合物類;
などを好ましく挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記ラジカル重合開始剤の添加方法については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込んでもよいし、最初に一部を仕込んでおいてから残りを連続フィード添加しても、断続的にパルス添加しても、両者を組み合わせて添加してもよい。
また、本発明の製造方法においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を開始するが、熱、紫外線、放射線および電子線等を利用して重合を開始させることもできる。
(シード粒子)
本発明の製造方法でいうシード粒子は、本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用接着性スペーサー(以下、本発明でいう接着性スペーサーと称することがある。)を液晶表示装置に用いた場合に、液晶表示板に使用する場合に、液晶層をはさむ両電極板の隙間距離を決める主なものであって、液晶層の厚みを均一かつ一定に保持するために必要であり、その平均粒子径は、1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは1〜20μm、最も好ましくは1〜15μmである。シード粒子の平均粒子径が上記範囲を外れる場合は、液晶表示装置用の接着性スペーサーとしては通常用いられない領域である。
【0028】
シード粒子の粒子径の変動係数(CV)は、10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。前記粒子径の変動係数が10%を超えると、液晶表示装置用接着性スペーサーとして用いた場合に、液晶層の厚みを均一かつ一定に保持することが困難となり、画像ムラを起こしやすくなるおそれがあるので好ましくない。
シード粒子としては、特に限定されるわけではないが、種々のものがあり、例えば、有機架橋重合体粒子、無機系粒子、有機質無機質複合体粒子等を好ましく挙げることができる。これらの中でも、有機架橋重合体粒子および/または有機質無機質複合体粒子が、電極基板、配向膜またはカラーフィルターの損傷防止や両電極基板間の隙間距離(ギャップ)の均一性を得やすいという点で好ましく、有機質無機質複合体粒子が最も好ましい。
【0029】
シード粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されるわけではないが、両電極基板間の隙間距離を均一に一定とする上で球状が好ましい。これは、球状であると、すべてまたはほぼすべての方向について一定またはほぼ一定の粒形を有するからである。
シード粒子は、染料および/または顔料を含むことで好ましく着色されていてもよい。
上記有機架橋重合体粒子としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ベンゾグアナミン、メラミンおよび尿素からなる群の中から選ばれた少なくとも1種のアミノ化合物とホルムアルデヒドとから縮合反応により得られるアミノ樹脂の硬化粒子(特開昭62−068811号公報参照);ジビニルベンゼンを単独で重合あるいは他のビニル単量体と共重合させて得られるジビニルベンゼン架橋樹脂粒子(特開平1−144429号公報参照)等を好ましく挙げることができる。
【0030】
上記無機系粒子としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ等の球状微粒子等を好ましく挙げることができる。
上記有機質無機質複合体粒子は、好ましくは、有機質部分と無機質部分とを含む複合粒子である。この有機質無機質複合体粒子において、前記無機質部分の割合は、特に限定されるわけではないが、例えば、前記有機質無機質複合体粒子の重量に対して、無機酸化物換算で、10〜90wt%の範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜85wt%、さらに好ましくは30〜80wt%である。前記無機酸化物換算とは、好ましくは、有機質無機質複合体粒子を空気中などの酸化雰囲気中で高温(たとえば1000℃)で焼成した前後の重量を測定することにより求めた重量百分率で示される。前記有機質無機質複合体粒子の前記無機質部分の割合が、無機酸化物換算で10wt%を下回ると、前記有機質無機質複合体粒子は軟らかくなり、電極基板への散布個数が増えることになるので好ましくなく、また、90wt%を上回ると、硬すぎて配向膜の損傷やTFTの断線が生じやすくなるおそれがあるので好ましくない。
【0031】
上述のような有機質無機質複合体粒子としては、特に限定されるわけではないが、例えば、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiO2の量が10wt%以上である、有機質無機質複合体粒子A等を好ましく挙げることができる。有機ポリマー骨格としては、ビニル系ポリマーがギャップコントロールを制御できる高復元性を与えるため好ましい。ここで、前記有機質無機質複合体粒子Aが、G≧14・Y1.75(ここで、Gは破壊強度〔kg〕を示し;Yは粒子径〔mm〕を示す)を満足する破壊強度であると好ましく、10%圧縮弾性率が300〜2000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%であるとさらに好ましい。
【0032】
前記有機質無機質複合体粒子Aの製造方法については、特に限定されるわけではないが、例えば、下記に示す縮合工程と重合工程と熱処理工程とを含む製造方法を好ましく挙げることができる。
前記縮合工程とは、ラジカル重合性基含有第1シリコン化合物を用いて加水分解・縮合する工程であることが好ましく、この縮合工程では、触媒としてアンモニア等の塩基性触媒を好ましく用いても良い。
ラジカル重合性基含有第1シリコン化合物は、次の一般式(2):
【0033】
【化3】
【0034】
(ここで、Raは水素原子またはメチル基を示し;Rbは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rcは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す。R3は、炭素数1〜5のアルキル基とフェニル基とからなる群から選ばれた少なくとも1種の1価の基を示す。lは1または2であり、pは0または1である。)
と、次の一般式(3):
【0035】
【化4】
【0036】
(ここで、Rdは水素原子またはメチル基を示し;Reは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す。R4は、炭素数1〜5のアルキル基とフェニル基とからなる群から選ばれた少なくとも1種の1価の基を示す。mは1または2であり、qは0または1である。)
と、次の一般式(4):
【0037】
【化5】
【0038】
(ここで、Rfは水素原子またはメチル基を示し;Rgは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rhは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す。R5は、炭素数1〜5のアルキル基とフェニル基とからなる群から選ばれた少なくとも1種の1価の基を示す。nは1または2であり、rは0または1である。)
とからなる群から選ばれる少なくとも1つの一般式で表される化合物またはその誘導体であることが好ましい。
【0039】
前記重合工程は、前記縮合工程中および/または前記縮合工程後に、ラジカル重合性基をラジカル重合反応させて粒子を得る工程であることが好ましい。
前記熱処理工程は、前記重合工程で生成した重合体粒子を800℃以下、より好ましくは100〜600℃の温度で乾燥および焼成する工程であり、たとえば、10容量%以下の酸素濃度を有する雰囲気中や減圧下で行われることが好ましい。
上記の縮合工程、重合工程および熱処理工程から選ばれる少なくとも1つの工程中および/または後に、生成した前記シード粒子を着色する着色工程をさらに含んでいてもよく、詳しくは、前記シード粒子は染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つ等を含むことで着色されていてもよい。その色は、光が透過しにくいか、または、透過しない色が、接着性スペーサー自身の光抜けを防止でき画質のコントラストを向上できる点で好ましい。光が透過しにくいか、または、透過しない色としては、たとえば、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤等の色を好ましく挙げることができるが、特に好ましくは、黒、濃青、紺色である。なお、染料および/または顔料は、単にシード粒子に含まれるものでもよく、あるいは、染料および/または顔料とシード粒子を構成するマトリックスとが化学結合によって結び付けられた構造を有するものでもよいが、特にこれらに限定されない。
【0040】
前記染料は、着色しようとする色に応じて適宜選択して使用され、たとえば、染色方法によって分類された、分散染料、酸性染料、塩基性染料、反応染料、硫化染料等が挙げられる。これらの染料の具体例は、「化学便覧応用化学編 日本化学会編」(1986年丸善株式会社発行)の1399頁〜1427頁、「日本化薬染料便覧」(1973年日本化薬株式会社発行)に記載されている。
シード粒子を染色する方法としては、従来公知の方法がとられる。たとえば、上記の「化学便覧応用化学編 日本化学会編」や「日本化薬染料便覧」に記載されている方法等で行うことができる。
【0041】
前記顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、鉄黒、クロムバーミリオン、モリブデン赤、べんがら、黄鉛、クロム緑、コバルト緑、群青、紺青などの無機顔料;フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系などの有機顔料が挙げられる。なお、前記顔料は、その平均粒子径が0.4μm以下でないと、シード粒子中に導入されない場合があるので、この場合は染料を使用する方が好ましい。前記シード粒子が着色されている場合、液晶表示板用スペーサーとして用いると、バックライトの光抜けを防止でき、液晶表示板の画質向上を達成することができる。
【0042】
上記縮合工程、重合工程および熱処理工程から選ばれた少なくとも1種の工程中および/または後に、生成した前記シード粒子を表面処理する表面処理工程をさらに含んでいても良い。
前記表面処理に用いる表面処理剤としては、特に限定されないが、下記一般式(5)〜(7)から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物が好ましい。
SiX4 (5)
R6SiX3 (6)
R7R8SiX2 (7)
(ここで、Xは塩素原子、水素原子、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数2〜5のアシロキシ基から選ばれた少なくとも1種;R6およびR7は、いずれも、炭素数1〜22のアルキル基および炭素数6〜22のアリール基から選ばれる少なくとも1種であり、その基の中の1つ以上の水素原子が、アミノ基、メルカプト基、アルキレンオキシド基、エポキシ基、シアノ基、塩素原子およびフッ素原子から選ばれる少なくとも1種で置換されていても良い;R8は、炭素数1〜5のアルキル基とフェニル基とからなる群から選ばれる少なくとも1種の1価の基である。)
前記シラン化合物のうち、一般式(4)で示されるシラン化合物や、R6やR7がアミノ基を置換基として有するものである一般式(5)または(6)で示されるシラン化合物で表面処理されると、特に乾式散布性に優れるため好ましい。
【0043】
上記シード粒子としては、上述したように、有機質無機質複合体粒子であることが好ましいが、さらに、その粒子表面に、前記ラジカル重合性単量体と反応可能なビニル基および/またはシラノール基を有する有機質無機質複合体粒子であってもよい。
上記ビニル基を有機質無機質複合体粒子表面に導入するには、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体などを単量体成分として使用して有機質無機質複合体粒子を得ることが好ましい。これらは単独で導入されていても2種以上を併用されていてもよい。
【0044】
上記シラノール基を有機質無機質複合体粒子表面に導入するには、特に限定はされないが、具体的には、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルビス(トリメトキシ)メチルシラン、11−メタクリロキシウンデカメチレントリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルテトラメチレントリメトキシシラン、8−ビニルオクタメチレントリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルトリアセトキシシラン、p−トリメトキシシリルスチレン、p−トリエトキシシリルスチレン、p−トリメトキシシリル−α−メチルスチレン、p−トリエトキシシリル−α−メチルスチレン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル−γ−アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩等の、加水分解性シリル基を有する重合性ビニル単量体を単量体成分として使用して有機質無機質複合体粒子を得ることが好ましい。これらは単独で導入されていても2種以上を併用されていてもよい。
【0045】
上記反応可能なビニル基および/またはシラノール基については、これらのシード粒子表面への導入量は、特に限定はされず、適宜所望量となるように設定すればよい。
本発明の製造方法においては、重合反応開始前に上記シード粒子を上記溶媒中に分散させておくことが好ましいが、分散させる方法としては、特に限定はされないが、超音波等により溶媒に分散させる方法や、ホモジナイザーなどの攪拌器機を用いて分散する方法などが挙げられる。また、本発明の製造方法においては、重合反応開始してから終了までの途中過程において上記シード粒子を上記溶媒中に分散させることが好ましいが、そのようにする方法としては、上述のように超音波や攪拌機を用いてシード粒子を何らかの溶媒に分散させておき、その分散液の状態で反応溶媒中に添加する方法で行うこともできる。上記何らかの溶媒とは、重合に用いている反応溶媒と同様であることが好ましい。
【0046】
本発明の製造方法においては、重合反応を終えるまで、上記分散させる方法と同様の方法により反応系を攪拌し粒子等を分散させておくことが好ましい。
本発明の製造方法においては、シード粒子を溶媒(反応溶媒)中に分散させる量は、上記溶媒100重量部に対して、150重量部以下であることが好ましく、より好ましくは120重量部以下、さらにより好ましくは100重量部以下である。上記使用量が150重量部を超える場合は、溶媒に対するシード粒子の濃度が高くなりすぎ、スラリー状となるため取り扱いが困難となるおそれがある。(重合により生成した重合体を微粒子状態で安定化させる樹脂)
本発明の製造方法でいう樹脂とは、重合により生成した重合体を微粒子状態で安定化させる樹脂である。ここで、本発明においては、微粒子状態で安定化させる、とは、実質的には、下記▲1▼および▲2▼で示す機能を表すとする。
【0047】
上記樹脂は、▲1▼重合により生成した重合体を微粒子状態に保つことのできる樹脂であり、ひいては、さらに重合の進んだ重合体を重合体粒子として生成させその粒子形状を保つことができる。詳しくは、前記樹脂は、重合により生成した重合体に結合または吸着するため、ラジカル重合性単量体の重合開始後に存在する重合体粒子の核となり得る低分子量重合体の段階からその表面に結合または吸着し、この低分子量重合体がさらに重合により成長していく間もその表面に結合または吸着する。このように、重合体の成長の初期段階からその表面に結合または吸着するので、得られる重合体を粒子状で保つことができ、すなわち、重合体粒子を生成することができると考えられる。さらに、重合体粒子がシード粒子表面に付着する場合であっても、上述のように重合体粒子自身が反応の進行とともに大きくなっていく場合であっても、他の重合体粒子などと接触して変形する場合であっても、本発明でいう樹脂は、重合体を粒子状態で保たせることができる。
【0048】
また、上記樹脂は、▲2▼重合体粒子どうしの2次凝集を防ぐことのできる樹脂でもある。詳しくは、溶媒中に分散している重合体粒子どうしの間や、シード粒子表面に付着している重合体粒子と溶媒中に分散している重合体粒子との間などで、重合体粒子どうしの凝集(2次凝集)が生じないようにすることができる樹脂である。ただし、上述のように、シード粒子表面に付着した重合体粒子がさらなる重合により粒子体積の拡大などをして隣り合う粒子と接するようになった場合は、重合体粒子どうしの2次凝集とは考えないとする。また、上記のとおり、シード粒子表面に付着している重合体粒子にさらに重合体粒子が付着するという形態は、上記樹脂が重合体粒子どうしの2次凝集を防ぐと言う点からみて無いと考えられ、シード粒子表面の接着層は、その表面に直接接している重合体粒子によって形成される。
【0049】
上記樹脂としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、アクリル酸−スチレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール−メタクリル酸メチル共重合体、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニルなどの各種ポリマーが好ましく挙げられる。
これら各種ポリマーが、上記▲1▼および▲2▼の作用効果を奏する機構としては、特に限定はされないが、具体的には、ラジカル重合性単量体の重合により重合体が合成されると、溶媒中に溶解させている上記各種ポリマーが、この重合体表面に結合または付着することにより重合体を粒子状で2次凝集すること無く安定化させる、という機構が好ましく挙げられる。
【0050】
また、上記樹脂としては、上記列挙した各種ポリマー以外にも、マクロモノマーやマクロイニシエーターを好ましく挙げることができる。
上記マクロモノマーとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、スチレン−アクリロニトリル共重合体マクロモノマー、ポリブチルアクリレートマクロモノマー、ポリイソブチルメタクリレートマクロモノマー、メチルメタクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体マクロモノマー、2−エチルヘキシルメタクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体マクロモノマー、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレングリコールメチルエーテルマクロモノマーなどであって、これらポリマーの片方の末端(片末端)に、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ビニル基、メルカプト基、メタクリロイル基などの重合性官能基から選ばれるいずれか1つを有するもの、あるいは、エポキシ基、ヒドロキシル基(水酸基)、ジヒドロキシル基(水酸基)、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基などの反応性官能基から選ばれるいずれか1つを有するもの、などを好ましく挙げることができる。
【0051】
マクロモノマーとしては、上記列挙したなかでも、ポリマーの片末端に重合性官能基としてのビニル基およびメルカプト基のいずれかを有するマクロモノマー、および、片末端に反応性官能基としてのエポキシ基、水酸基、カルボキシル基およびアミノ酸からなる群より選ばれる1つを有するマクロモノマー、がより好ましい。
マクロモノマーとは、通常、重合反応可能な官能基を有する高分子量モノマーであり、他のモノマーと共重合することによりグラフトポリマーとなり得るものである。このマクロモノマーが、上記▲1▼および▲2▼の作用効果を奏する機構としては、特に限定はされないが、具体的には、ラジカル重合性単量体の重合により重合体が合成されると同時に、溶媒中に溶解させているマクロモノマーがこの重合体表面に自身に由来するグラフト鎖を形成し、このグラフト鎖が重合体を粒子状で2次凝集すること無く安定化させる、という機構が好ましく挙げられる。
【0052】
上記マクロイニシエーターとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール鎖、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリメタクリル酸メチル鎖、ポリスチレン鎖、ポリブチルアクリレート鎖などであって、これらポリマー鎖が、アゾ基、パーオキサイド基、メルカプト基などの重合開始を促進し得る官能基(重合開始官能基)を有するもの、などを好ましく挙げることができる。
マクロイニシエーターとしては、上記列挙した中でも、重合開始官能基としてアゾ基およびパーオキサイド基のいずれかを有するマクロイニシエーターがより好ましい。
【0053】
マクロイニシエーターとは、通常、重合開始を促進する官能基を有する高分子量モノマーであり、1分子中に数個のラジカル重合開始官能基を有しており、熱等により分解して重合を開始させることができる。このマクロイニシエーターが、上記▲1▼および▲2▼の作用効果を奏する機構としては、特に限定はされないが、具体的には、原料となるラジカル重合性単量体の重合に重合開始剤として関与するとともに、ブロックポリマーとなり、得られる重合体の表面に、自身に由来するブロック共重合体鎖を形成することによって、このブロック共重合体鎖が重合体を粒子状で2次凝集すること無く安定化させる、という機構が好ましく挙げられる。
【0054】
上記マクロモノマーおよびマクロイニシエーターは、共にその数平均分子量は、500以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上、さらにより好ましくは2000以上である。上記数平均分子量が、500未満であると、重合体を粒子状で安定化させることができず、重合が進行しにくく凝集が生じることとなる。
上記列挙した各種樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記列挙した各種樹脂のなかでも、特に、上記マクロモノマーおよびマクロイニシエーターを用いた場合は、それ以外の樹脂を用いた場合では見られない、重合体粒子の粒子径を小さくできること、重合体粒子にグラフト反応するため液晶パネル中での重合体の溶出が生じないこと、また、散布分散液中での安定性を効率良く付与できること等の優れた効果を発揮することができる。
【0055】
本発明の製造方法においては、上記樹脂の使用量は、使用するラジカル重合性単量体100重量部に対して、0.1〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜100重量部、さらにより好ましくは1〜50重量部である。上記使用量範囲内であれば、上述した効果が発揮され得る。
本発明の製造方法においては、上記シード粒子は、予め、上記ラジカル重合性単量体の重合を開始する前に全量分散させて仕込んでおくことが好ましく、また、上記ラジカル重合性単量体は、上述したように、適宜所望の仕込み方で上記溶媒中に溶解させればよいが、上記溶媒の量を100重量部とした場合、シード粒子およびラジカル重合性単量体はその合計量が、0.1〜150重量部となるように仕込むことが好ましく、より好ましくは5〜120重量部、さらにより好ましくは10〜100重量部である。シード粒子およびラジカル重合性単量体の仕込み量が上記範囲内であれば、重合により生成した重合体粒子が、効率良くシード粒子表面上に付着して、最終的に、シード粒子の表面全体を完全に被覆することが可能となる。
【0056】
本発明の製造方法においては、上記ラジカル重合性単量体を重合させる際、必要に応じて、分子量を調節する目的で、連鎖移動剤や調節剤などを好ましく用いることができる。上記連鎖移動剤や調節剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、アセトフェノン等のケトン類;アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類等を好ましく用いることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記連鎖移動剤や調節剤については、その使用量は、上記ラジカル重合性単量体の総重量に対して20重量%以下となるように使用するのが好ましく、より好ましくは10重量%以下である。上記使用量が20重量%を超える場合は、生成する重合体粒子は分子量が低くなり、互いに融着しやすくなるとともに、スペーサー粒子どうし凝集の原因ともなるおそれがある。
本発明の製造方法においては、上記ラジカル重合性単量体を重合させる際の反応温度は、使用する溶媒の沸点以下で行うことが好ましい。
本発明の製造方法においては、上記ラジカル重合性単量体の重合および熟成などを行った後、さらに、得られた接着性スペーサーの精製および分級を行うことが好ましい。つまり、溶媒中に含まれる目的の接着性スペーサー以外の不純物を除去する、すなわち、重合体粒子単独のものと生成した接着性スペーサーとを分離したり、接着性スペーサーの大きさを分級等により均一化したりすることが好ましい。本発明の製造方法においては、生成される接着性スペーサーとシード粒子表面の被覆にあずからない重合体微粒子などとの粒子径の差が大きいため、上記接着性スペーサーと未被覆の重合体粒子との粒子径は明確に区別できる。
【0058】
本発明の製造方法においては、上記精製を行うには、ろ紙等を用いた通常のろ過により接着性スペーサーのみを得る方法や、デカンテにより接着性スペーサー以外の上澄み液を捨てる方法などが簡便であるため好ましい。また、上記精製および分級を行うためには、電成ふるいを備えた分級装置を用いることが好ましい。
上記精製により除かれた重合体粒子は、不純物として廃棄してもよいが、再利用として、ヘテロ重合や衝撃力によりシード粒子に重合体粒子を付着、被覆させて接着性スペーサーを得る場合に使用することもできる。
(液晶表示装置用接着性スペーサー)
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用接着性スペーサーについて、シード粒子表面の被覆層の厚さは、特に限定されるわけではないが、通常、シード粒子表面に付着して合成された重合体粒子の平均粒子径にほぼ等しくなり、0.01〜2μmとなるようにすることが好ましく、より好ましくは0.02〜1μm、さらにより好ましくは0.03〜0.5μm、特に好ましくは0.02〜0.3μmである。上記厚さが0.01μm未満の場合は、接着性スペーサーとして接着性を示さないおそれがあり、2μmを超える場合は、接着層の溶融時に、この接着層が電極基板、配向膜およびカラーフィルターを覆う面積が大きくなり、液晶表示板の画質低下を招くおそれがある。
【0059】
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用接着性スペーサーについては、その平均粒子径は、シード粒子の粒子径に重合体粒子による被覆層の厚みを加えたものと考えられる。
本発明の製造方法においては、得られる液晶表示装置用接着性スペーサー被覆層の厚みは、溶媒に対するシード粒子およびラジカル重合性単量体の仕込み量を適宜調整することによって、粒子間の均一性を確保しつつ、容易に制御することができる。
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用接着性スペーサーは、テレビ、モニター、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、カーナビゲーションシステム、DVD、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、PHS(携帯情報端末)などの種々の器機に搭載される液晶表示板用の接着性スペーサーとして好ましく用いることでき、いずれにおいても上述した各種優れた効果を発揮することができる。また、被覆効率(粒子表面積に対する接着層の被覆面積の割合)が高いため、電極基板上に効率的に接着・固定することができ、スペーサー自身の移動の防止や、液晶表示装置のコントラスト性等の画質面での向上を達成することができる。
【0060】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。
−実施例1−
温度センサー、攪拌羽根、冷却管を備え付けたセパラブルフラスコに、ステアリルメタクリレート10部、スチレン85部、メタクリル酸メチル5部、ポリビニルピロリドン(和光純薬社製、商品名:K−30)15部、メタノール400部、イオン交換水80部、および、シード粒子としての有機質無機質複合体粒子(日本触媒社製、商品名:エポスターYW50、平均粒子径5.02μm)400部を仕込んだ。その後、フラスコ内部を攪拌しながら65℃まで昇温し、窒素雰囲気下で30分間シード粒子を溶媒に分散させた後、イオン交換水20部に過酸化アンモニウム1.5部を溶解させた反応開始剤水溶液を加えて、24時間攪拌下で重合を行うことで、重合体粒子を生成するとともに、これら重合体粒子がシード粒子表面に付着することにより被覆した、実施例1の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(1)と称す)を得た。
【0061】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てることによって上澄み中に存在しているフリーの(シード粒子に付着していない)重合体粒子を除去した後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。なお、フリーの重合体粒子の平均粒子径を、動的光散乱法(大塚電子社製の動的光散乱測定装置(製品名:DLS−700)を使用した)により測定したところ、0.213μmであった。
接着性スペーサー(1)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.25μmに増大していた。
【0062】
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
なお、本実施例と同様の操作を繰り返し行っても同様の結果が得られ、良好な再現性が認められることが確認された。この良好な再現性については、以下すべての実施例においても同様であることが確認された。
−実施例2−
ポリビニルピロリドン15部をポリエチレングリコールマクロモノマー(数平均分子量:2080)15部にした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例2の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(2)と称す)を得た。
【0063】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。なお、実施例1と同様にフリーの重合体粒子の平均粒子径を測定したところ、0.13μmであった。
接着性スペーサー(2)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.19μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
【0064】
−実施例3−
ポリビニルピロリドン15部を、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(東亜合成社製、商品名:AA−6、数平均分子量:6000)15部とし、メタノール400部をイソプロピルアルコール400部にした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例3の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(3)と称す)を得た。
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。なお、実施例1と同様にフリーの重合体粒子の平均粒子径を測定したところ、0.31μmであった。
【0065】
接着性スペーサー(3)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.30μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
−実施例4−
実施例1におけるポリビニルピロリドン15部と過酸化アンモニウム1.5部をイオン交換水20部に溶解させたものとを、マクロイニシエーター(和光純薬社製、商品名:VPE−201、数平均分子量15000〜30000)15部をメタノール100部に溶解したものとし、メタノール400部とイオン交換水80部とを、メタノール300部とイオン交換水100部とした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例4の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(4)と称す)を得た。
【0066】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
接着性スペーサー(4)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.29μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
【0067】
−実施例5−
スチレン85部を50部とし、ステアリルメタクリレート10部をラウリルメタクリレート45部とした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例5の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(5)と称す)を得た。
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
接着性スペーサー(5)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.25μmに増大していた。
【0068】
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
−実施例6−
スチレン85部を95部とし、ステアリルメタクリレート10部を用いず、ポリビニルピロリドン15部をポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(東亜合成社製、商品名:AA−6、数平均分子量:6000)15部とした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例6の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(6)と称す)を得た。
【0069】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
接着性スペーサー(6)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.31μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
【0070】
−実施例7−
シード粒子となるジビニルベンゼン粒子(DVB粒子)を調製した。まず、3%ポリビニルアルコール水溶液800部に、ジビニルベンゼン100部および過酸化ベンゾイル2部の混合液を加えて、ホモジナイザーで攪拌し、粒度調整を行った。その後、この混合液を反応容器に移し、攪拌しながら窒素雰囲気下にて85℃まで昇温して8時間反応を行った。反応後に得られた微粒子を、熱イオン交換水およびメタノールにて洗浄後、分級操作を行った。分級後に得られた粒子は、平均粒子径5.1μm、変動係数5.5%であった。
【0071】
次に、ステアリルメタクリレート10部をベヘニルメタクリレート10部とし、過酸化アンモニウム15部をイオン交換水20部に溶解させたものを、V−65(g)(和光純薬社製)15部をメタノール20部に溶解させたものとし、シード粒子として有機質無機質複合体粒子の代わりに上記DVB粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、実施例7の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(7)と称す)を得た。
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
【0072】
接着性スペーサー(7)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.31μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子であるDVB粒子の表面を被覆している様子が確認された。
−実施例8−
ステアリルメタクリレート10部をベヘニルメタクリレート10部とし、ポリビニルピロリドン15部をポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(東亜合成社製、商品名:AA−10、数平均分子量:10000)15部とし、メタノール400部をイソプロパノール400部とし、シード粒子として有機質無機質複合体粒子の代わりに実施例7のDVB粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、実施例8の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(8)と称す)を得た。
【0073】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
接着性スペーサー(8)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.33μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子であるDVB粒子の表面を被覆している様子が確認された。
【0074】
−実施例9−
ステアリルメタクリレート10部をベヘニルメタクリレート5部およびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部とし、ポリビニルピロリドン15部をポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(東亜合成社製、商品名:AA−6、数平均分子量:6000)15部とし、メタノール400部をイソプロパノール400部とした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例9の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(9)と称す)を得た。
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
【0075】
接着性スペーサー(9)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.2μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
−実施例10−
ステアリルメタクリレート10部をベヘニルメタクリレート5部およびジビニルベンゼン5部とし、ポリビニルピロリドン15部をポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(東亜合成社製、商品名:AA−6、数平均分子量:6000)15部とし、メタノール400部をイソプロパノール400部とし、シード粒子として有機質無機質複合体粒子の代わりに実施例7のDVB粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、実施例10の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(10)と称す)を得た。
【0076】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
接着性スペーサー(10)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.18μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子であるDVB粒子の表面を被覆している様子が確認された。
【0077】
−実施例11−
ポリビニルピロリドン15部をポリエチレングリコールマクロモノマー(数平均分子量:2080)15部とし、平均粒子径5.02μmの有機質無機質複合体粒子を平均粒子径2.5μmの有機質無機質複合体粒子(日本触媒社製、商品名:エポスターYW25)とした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例11の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(11)と称す)を得た。
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径1.0μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
【0078】
接着性スペーサー(11)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径2.73μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
−実施例12−
ステアリルメタクリレート10部をベヘニルメタクリレート10部とし、ポリビニルピロリドン15部をポリエチレングリコールマクロモノマー(数平均分子量:2080)15部とし、さらに、シード粒子を分散させていない状態で重合を開始して、重合開始後、均一系で透明であった反応系が重合体の生成により白濁して不均一系となった後、反応液をサンプリングして光学顕微鏡で重合体粒子の生成を確認し、重合開始30分後にメタノール400部および水100部からなる溶媒(重合反応溶媒と同量、同一組成)にシード粒子400部を超音波により分散させた分散液を反応系に一括添加し、添加後12時間重合反応を行った、以外は実施例1と同様の操作により、実施例12の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(12)と称す)を得た。
【0079】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。なお、実施例1と同様にフリーの重合体粒子の平均粒子径を測定したところ、0.12μmであった。
接着性スペーサー(12)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.28μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
【0080】
−実施例13−
メタクリル酸メチル5部をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部とし、ステアリルメタクリレート10部をベヘニルメタクリレート10部とし、ポリビニルピロリドン15部をポリエチレングリコールモノエチルエーテル15部とし、さらに、シード粒子を分散させていない状態で重合を開始して、重合開始後、均一系で透明であった反応系が重合体の生成により白濁して不均一系となった後、反応液をサンプリングして光学顕微鏡で重合体粒子の生成を確認し、重合開始30分後にメタノール400部および水100部からなる溶媒(重合反応溶媒と同量、同一組成)にシード粒子400部を超音波により分散させた分散液を反応系に一括添加し、添加後12時間重合反応を行った、以外は実施例1と同様の操作により、実施例13の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(13)と称す)を得た。
【0081】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。なお、実施例1と同様にフリーの重合体粒子の平均粒子径を測定したところ、0.12μmであった。
接着性スペーサー(13)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.21μmに増大していた。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
【0082】
−実施例14−
24時間重合を行うところを、5時間とした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例14の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(14)と称す)を得た。
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
接着性スペーサー(14)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.12μmに増大していた。このように、重合時間を変化させることで被覆層の厚みを調整できることがわかった。
【0083】
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
−実施例15−
実施例3において、原料モノマーおよび反応開始剤を2倍量使用して重合を行った、すなわち、実施例3において、ステアリルメタクリレートを20部、スチレンを170部、メタクリル酸メチルを10部とし、過酸化アンモニウム3部を溶解させた反応開始剤水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、実施例15の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(15)と称す)を得た。
【0084】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールと細孔径3μmのフィルターとを利用して3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体粒子を除去した。
接着性スペーサー(15)の粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.67μmに増大していた。このように、原料モノマー量や反応開始剤量を変化させることで被覆層の厚みを調整できることがわかった。
また、上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認された。
【0085】
−比較例1−
ポリビニルピロリドン15部を用いなかった以外は、実施例1と同様の操作により、比較例1の接着性スペーサー(以下、比較接着性スペーサー(1)と称す)を得た。
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールで3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体凝集物を除去した。
しかしながら、上記洗浄後の比較接着性スペーサー(1)は、メタノールに分散せず、凝集していたため、実施例1と同様のコールターカウンターによる粒子径測定は不可能であった。
【0086】
上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体凝集物がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認されたが、接着性スペーサーどうしの凝集が激しく、単独で存在する粒子はごくわずかしか存在していなかった。また、重合過程で生成した数ミクロンから100ミクロン程度の重合体凝集物が多数存在し、それらをろ過・洗浄してスペーサー粒子と分離することは不可能であった。
−比較例2−
ポリビニルピロリドン15部をポリエチレングリコールマクロモノマー(数平均分子量:476(低分子量マクロモノマー))15部にした以外は、実施例1と同様の操作により、比較例2の接着性スペーサー(以下、比較接着性スペーサー(2)と称す)を得た。
【0087】
その後、反応液を一晩放置し、上澄みを捨てた後、メタノールで3回ろ過、洗浄を行い、残存していたフリーの重合体凝集物を除去した。
しかしながら、上記洗浄後の比較接着性スペーサー(2)は、メタノールに分散せず、凝集していたため、実施例1と同様のコールターカウンターによる粒子径測定は不可能であった。
上記洗浄後の粒子を40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、重合体凝集物がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面を被覆している様子が確認されたが、接着性スペーサーどうしの凝集が激しく、単独で存在する粒子はごくわずかしか存在していなかった。また、重合過程で生成した数ミクロンから100ミクロン程度の重合体凝集物が多数存在し、それらをろ過・洗浄してスペーサー粒子と分離することは不可能であった。
このようにして得られた接着性スペーサー(1)〜(15)および比較接着性スペーサー(1)および(2)について、以下の測定および評価を行った。その結果を表1〜4に示す。
(シード粒子表面の被覆状態、異物粒子の観察および評価)
走査型電子顕微鏡(SEM)により、倍率3000倍での任意の10視野を観察し、総粒子数500個以上のスペーサー粒子を確認すると同時に、それらスペーサー粒子の周りにある、シード粒子の被覆にあずからない重合体粒子の粒子数を測定した。
【0088】
また、未被覆のシード粒子の数を測定するために、上記SEMによるスペーサー粒子の観察の際に、シード粒子表面の被覆率が20%未満のものを未被覆粒子としてその数を測定した。
(固着力試験)
テープ剥離法およびエアブロー法にて接着性スペーサーの固着力を評価した。どちらの方法においても、
「残存率(%)=(残存個数/散布個数)×100」
とし、散布個数に関しては500個以上のスペーサーを計測し、残存率を算出した。
【0089】
テープ剥離法:スペーサー粒子を散布したポリイミド塗布ガラス基板を、150℃で30分加熱した後、ビニルテープ(積水化学社製)による剥離試験を行った。テープ剥離前後のスペーサー粒子の残存個数をスペーサーカウンターで計測した。
エアブロー法:スペーサー粒子を散布したポリイミド塗布ガラス基板を、150℃で30分加熱した後、該ガラス基板から5mm上部にエアーガン(先端口径4mm)を設置して、空気圧1kgf/cm2で10秒間エアブローを行い、ブロー前後のスペーサー粒子の残存個数をスペーサーカウンターで計測した。
(光抜け抑制能)
ポリイミド樹脂で表面コートされている基板ガラス(30mm×40mm)を、ラビング機を用いてアンチパラレルにラビングし、合成した接着性スペーサーを用いて水平配向セルを作製した。用いた液晶はメルク社製の製品(製品名:ZLI 4792)であり、電圧は無印加状態、20℃で、偏光顕微鏡を用いて観察した。また、振動による液晶配向異常の程度を評価するために、液晶セルにミクロ形電磁泳動ふるい器で1分間振動を加えて、その後の光抜け変化を偏光顕微鏡で観察した。
【0090】
なお、光抜け抑制能は、偏光顕微鏡により観察されたスペーサーの画像面積と光抜け部分の画像面積とを比較し、スペーサーの画像面積に対する光抜け部分の画像面積の比率で示すこととし、以下の基準で評価した。
A:スペーサー周囲の光抜け無し。
B:若干光抜けが見られる。
C:1/3程度の光抜けが見られる。
D:1/2程度の光抜けが見られる。
E:1/1異常の光抜けが見られる。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【発明の効果】
本発明によれば、シード粒子表面への被覆効率が高く、スペーサー粒子の生産性にも優れるとともに、被覆後の分散安定性(コロイド的安定性)も良好で、被覆層の厚みや量を容易に制御できる、液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法を提供することができる。
Claims (5)
- シード粒子の表面が、ラジカル重合性単量体を重合してなる重合体粒子からなる接着性微粒子に由来する接着層で被覆された液晶表示装置用の接着性スペーサーを得る方法であって、
前記ラジカル重合性単量体が下記一般式(1):
ことを特徴とする、液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法。 - 前記樹脂が片末端に重合性官能基としてビニル基およびメルカプト基のいずれかを有し、かつ、数平均分子量が500以上のマクロモノマーである、請求項1に記載の液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法。
- 前記樹脂が片末端に反応性官能基としてエポキシ基、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれるいずれか1つを有し、かつ、数平均分子量が500以上のマクロモノマーである、請求項1または2に記載の液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法。
- 前記樹脂が重合開始官能基としてアゾ基およびパーオキサイド基のいずれかを有し、かつ、数平均分子量が500以上のマクロイニシエーターである、請求項1から3までのいずれかに記載の液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法。
- 前記シード粒子が、その粒子表面に前記ラジカル重合性単量体と反応可能なビニル基および/またはシラノール基を有する有機質無機質複合体粒子である、請求項1から4までのいずれかに記載の液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法。
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