JP3907454B2 - 感光体および画像形成装置、ならびに該感光体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機感光層上に炭素を主成分とする表面保護層を形成してなる感光体およびこの感光体を備えた画像形成装置、ならびにこの感光体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機半導体材からなる感光層により構成した、いわゆるOPC感光体(有機感光体)は高い帯電性が得られ、暗減衰が小さく、さらに長波長に対し優れた光感度が得られるという点で幅広く使用されている。しかも、OPC感光体を使用するに当って、それを加熱するヒーターを使用しないという利点もある。
【0003】
しかしながら、このOPC感光体においては、その表面の硬度が小さく、耐久性に劣るという課題がある。
【0004】
この課題を解消するために、有機半導体材からなる感光層(有機感光層)の上に炭素又は炭素を主成分とする高い硬度の耐磨耗性の被膜を積層する技術が提示されている(特公平7−27268号、特公平7−122757号、特開平1−86158号、特開平1−227161号、特許第2818881号、特許第2818882号および特許第2979070号参照)。
【0005】
このように有機感光層の上に無機材から表面保護層を被覆するに当たっては、下記のような特性が求められる。
【0006】
▲1▼可視光透過率が高い(有機感光層への入射光量が充分に確保できる)。 ▲2▼表面に傷を受けない程度の高硬度を有する。 ▲3▼有機感光層との接着性に優れ、複写機内での実使用において、機械的接触あるいは温湿度の変化等により剥離しない。 ▲4▼無害である。 ▲5▼有機感光層との電気的整合性に優れ、残留電位、メモリー現象、さらには不整合界面での電荷の横流れ(画像流れ)が発生しない。▲6▼高温高湿の条件下において、画像品位が劣化せず、所謂、画像流れが発生しない。 ▲7▼有機感光層は、耐熱性に乏しい化合物からなることで、その上の被膜を常温及至100℃にておこない、有機感光層を熱劣化させない。
【0007】
最近のかかる特性の要求に対し、さまざまな技術開発がおこなわれている。たとえば、酸素原子を含有する炭化水素化合物を用いることで、そのプラズマ有機重合膜が得られることから、それでもって有機感光層上に表面保護層として積層し、これによって接着性、電気的整合性ならびに耐環境性を高める技術が提案されている(特公平7−27268号参照)。
【0008】
また、上記のように酸素原子を含有させる代わりにハロゲン原子を含有させても同等の効果が得られることが提案されている(特公平7−122757号参照)。
【0009】
さらに有機感光層上の表面保護層を、ハロゲン原子と酸素原子とを含有してなる非晶質炭化水素膜でもって構成し、これにより、耐湿性を改善した技術が提示されている(特開平1−86158号参照)。
【0010】
同公報によれば、非晶質炭化水素膜中に含有されるハロゲン原子の量は、全構成原子に対して0.01原子%〜50原子%、酸素原子の量は、0.01〜20原子%である。硬度については有機感光層が5B〜B、非晶質炭化水素膜が4H程度である。
【0011】
また、有機感光層上に、1原子%以下の窒素と2原子%以上の弗素を含有するアモルファス構造のダイヤモンド状炭素からなる表面保護層を積層し、撥水性を高める技術や(特許第2979070号参照)、表面の酸素濃度が1原子%以下である有機感光層の上に、水素を30原子%以下含有する炭素又は炭素を主成分とする表面保護層を積層し、これら保護層と有機系感光層との接着性を高める技術が提案されている(特許第2818882号参照)。
【0012】
硬度については、表面保護層のビッカ−ス硬度が100〜2500kg/mm2、かつ有機感光層とのビッカース硬度の差が2500 kg/mm2以下である技術が提案されている(特許第3057165号参照)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
特許第3057165号にて提案された技術によれば、表面保護層のビッカ−ス硬度の好適な範囲を規定し、これにより、その保護層の剥離やクラックの発生がなくなり、長期に亘り優れた耐久性を示す感光体が得られることが記載されている。
【0014】
しかしながら、この感光体を作製しても画像流れが発生することが判明した。
【0015】
すなわち、感光体に対するクリーニング性を高めるために表面自由エネルギーを低下させ、画像流れをなくすようにしても、他方、耐久性を維持するために硬度を上げると画像流れが発生することが判明した。
【0016】
本発明者は上記事情に鑑みて鋭意研究に努めたところ、表面保護層の表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m2)の関係がE≦6/H+6×10-2を満たすときに画像流れが抑止できることを見出した。
【0017】
したがって本発明の目的はクリーニング性を向上させてトナー付着を抑制し、転写性を向上させ、さらに画像流れが発生しないようにした高性能かつ高信頼性の感光体を提供することにある。
【0018】
また、本発明の他の目的は、かかる本発明の感光体を搭載した画像形成装置、ならびに、かかる本発明の感光体の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の感光体は、導電性支持体上に有機感光層と炭素を主成分とする表面保護層とを順次積層した電子写真用の感光体であって、前記表面保護層の表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m2)の関係がE≦6/H+6×10-2である。
【0020】
本発明の画像形成装置は、かかる本発明の感光体と、この感光体の表面に電荷を付与する帯電手段と、感光体の帯電領域に対して光照射する露光手段と、これら帯電手段と露光手段とにより感光体表面に形成された静電潜像に対してトナー像を感光体の表面に形成する現像手段と、上記トナー像を被転写材に転写する転写手段と、転写後に感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段とを配設している。また、本発明の感光体の製造方法は、表面に有機感光層が成膜形成された導電性支持体の該有機感光層上に、直流バイアス値を調整しつつグロー放電法により炭素を主成分とする表面保護層を成膜形成する工程と、フッ素系ガスを用いて発生させるプラズマを高周波電力により調整しつつ該プラズマにより前記表面保護層を表面処理する工程と、を含み、前記直流バイアス値および前記高周波電力は、前記表面保護層の表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m 2 )との関係がE≦6/H+6×10 −2 となるように調整されることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明を図でもって説明する。
図1は本発明の感光体の断面図である。
【0022】
同図の電子写真感光体1において、2は導電性基板、3は有機感光層、4は表面保護層である。
【0023】
以下、導電性基板2と各層を詳述する。
(導電性基板2について)
導電性基板2は銅、黄銅、SUS(ステンレススチール)、Al、Niなどの金属導電体、あるいはガラス、セラミックなどの絶縁体の表面に導電性薄膜を被覆したものなどがある。この導電性基板2はシート状、ベルト状もしくはウェブ状可とう性導電シートでもよく、このようなシートにはSUS、Al、Niなどの金属シート、あるいはポリエステル、ナイロン、ポリイミドなどの高分子樹脂フィルムの上にAl、Niなどの金属もしくは酸化スズ、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)などの透明導電性材料や有機導電性材料を蒸着などにより被覆して導電処理したものを用いる。
【0024】
(有機感光層3の具体的な構成例)
感光層3には、電荷輸送剤を電荷発生剤とともに同一の感光層中に分散させた単層型感光層と、電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光層とがあるが、本発明はこのいずれにも適用できる。
【0025】
単層型の感光層は、電荷発生剤、電荷輸送剤および結着樹脂を適当な有機溶媒に溶解または分散した塗工液を、塗布などの手段によって導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成される。かかる単層型の感光層は、層構成が簡単で生産性に優れている。
【0026】
電荷輸送剤としては、電子輸送剤および正孔輸送剤のうちのいずれか一方または両方が使用でき、とくに上記両輸送剤を併用した単層型の感光層は、単独の構成で正負いずれの帯電にも対応できるという利点がある。
【0027】
電子輸送剤および正孔輸送剤としては、それぞれ電荷発生剤とのマッチングがよく、電荷発生剤で発生した電子または正孔を引き抜いて、効率よく輸送できるものが望ましい。
【0028】
また、電子輸送剤と正孔輸送剤とが共存する系では、両者が電荷移動錯体を形成して、感光層全体での電荷輸送能の低下を引き起こし、感光体の感度が低下するのを防止すべく、両輸送剤の組合せについても配慮する必要がある。つまり、両輸送剤を、正孔輸送および電子輸送が効率よく起こる高濃度で同一層中に含有させても、層中で電荷移動錯体が形成されず、正孔輸送剤は正孔を、電子輸送剤は電子を、それぞれ効率よく輸送できる、電子輸送材と正孔輸送剤との組合せを選択するのが望ましい。
【0029】
一方、積層型の感光層は、まず導電性基体上に、蒸着または塗布などの手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、ついでこの電荷発生層上に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗工液を、塗布などの手段によって塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することで構成される。また、上記とは逆に、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷発生層を形成してもよい。
【0030】
ただし、電荷発生層は、電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0031】
積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれかの帯電型となるかが選択される。
【0032】
たとえば、上記の如く、帯電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した層構成において、電荷輸送層の電荷輸送剤として正孔輸送剤を使用した場合には、感光層は負帯電型となる。この場合、電荷発生層には電子輸送剤を含有させてもよい。電荷発生層に含有させる電子輸送剤としては、電荷発生剤とのマッチングがよく、電荷発生剤で発生した電子を引き抜いて、効率よく輸送できるものが望ましい。
【0033】
一方、上記の層構成において、電荷発生層の電荷輸送剤として電子輸送剤を使用した場合には、感光層は正帯電型となる。この場合、電荷発生層には正孔輸送剤を含有させてもよい。
【0034】
[単層型の感光層]
単層型の感光層は電子輸送剤と電荷発生剤と結着樹脂とを含有する単一の層であり、正負いずれの帯電にも対応できるが、負極性コロナ放電を用いる必要のない正帯電型で使用するのが好ましい。この単層型は、層構成が簡単で生産性に優れていること、感光層の被膜欠陥が発生するのを抑制できること、層間の界面が少ないので光学的特性を向上できること等の利点を有する。
【0035】
また、電子輸送剤とともに電子受容体を含有させた単層型の感光層3においては、電子輸送性能をより一層向上することができ、より高感度の感光体を得ることができる。
【0036】
単層型の感光層において、電子輸送剤は結着樹脂100重量部に対して、5〜100重量部の範囲にて、好適には10〜80重量部にて含有するのがよい。電子輸送剤が10重量部未満の場合、残留電位が高くなり、感度が不十分になる虞があり、500重量部を越える場合は結晶化の可能性があり、感光体としての性能が十分発揮されない。
【0037】
[積層型の感光層]
一方、積層型は電荷発生剤を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とをこの順で、あるいは逆の順で積層したものである。
【0038】
電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0039】
積層型の感光層は、電荷発生層と電荷輸送層との形成順序と、電荷輸送層中で使用する電荷輸送剤の種類とによって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。たとえば、導電性基板の上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した層構成において、電荷輸送層中に電子輸送剤としてキノン誘導体のような電子輸送剤を使用したときは、正帯電型の感光体になる。この場合、電荷発生層には正孔輸送剤や電子輸送剤を含有させてもよい。ここで、前記電荷輸送層に電子受容体を含有させた場合は、電子輸送性が向上するため、より高感度の積層型の感光体が得られる。
【0040】
なお、上記の層構成において、電荷輸送層中の電荷輸送剤として正孔輸送剤を使用したときは負帯電型の感光体になる。この場合、電荷発生層には電子輸送剤や電子受容体を含有させてもよい。
【0041】
積層型の感光層においては、電荷発生剤と結着樹脂を含む電荷発生層と、電子輸送剤を含む電荷輸送層から構成される。積層型における電子輸送剤の配合割合は、単層型の場合と同様の理由で、結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部、好適には25〜100重量部がよい。
【0042】
前述のように、感光体1は、単層型および積層型のいずれにも適用できるが、とくに正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の皮膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の観点から、単層型が好ましい。
【0043】
次に感光層に用いられる種々の材料について説明する。
【0044】
《電荷発生剤》
種々のフタロシアニン顔料、多環キノン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、スクアリリウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム染料、チオピリリウム染料、キサンテン染料、キノンイムン色素、トリフェニルメタン色素、スチリル色素、アンサンスロン系顔料、ピリリウム塩、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料等の有機光導電材料、セレン、テルル、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等の無機光導電材料があげられ、単独または2種類以上を混合して使用できる。
【0045】
《正孔輸送剤》
高い正孔輸送能を有する主々の化合物、たとえば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系の化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、スチルベン系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等があげられる。
【0046】
正孔輸送剤は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリビニルカルバゾール等の成膜性を有する正孔輸送剤を用いる場合には、結着樹脂は必ずしも必要でない。
【0047】
《電子輸送剤》
電子輸送剤としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、たとえば、ナフトキノン系化合物、ピラゾリン系化合物、ベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレンシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等があげられる。
【0048】
《結着樹脂》
感光層に使用されている従来周知の樹脂を使用することができる。たとえば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
【0049】
さらに感光層には、前記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、たとえば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、たとえばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0050】
単層型の感光層において、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。電荷輸送剤として、電子輸送剤を含有させる場合は、結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部の割合で配合すればよい。また、正孔輸送剤を含有させる場合、正孔輸送剤の割合を結着樹脂の100重量部に対して5〜500重量部、好ましくは25〜200重量部とすればよい。さらにまた、単層型感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
【0051】
一方、積層型の感光層において、電荷発生層を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使用することができるが、結着樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で配合するとよい。電荷発生層に正孔輸送剤あるいは電子輸送剤を含有させる場合は、それらの割合を結着樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部とするとよい。
【0052】
電荷輸送層を構成する電荷輸送剤と結着樹脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲および結晶化しない範囲で種々の割合で使用することができるが、光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂100重量部に対して、電荷輸送剤を10〜500重量部、好ましくは25〜100重量部の割合で配合するとよい。電荷輸送層に正孔輸送剤を含有させる場合は、正孔輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜80重量部とすればよい。
【0053】
単層型においては、導電性基板と感光層との間に、また積層型においては、導電性基板と電荷発生層との間、導電性基板2と電荷輸送層との間または電荷発生層と電荷輸送層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層を形成してもよい。
【0054】
[感光層の成膜方法]
このような構成の感光層の形成方法を述べると、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂を適当な溶剤とともに、公知の方法、たとえばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
【0055】
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0056】
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性をよくするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
【0057】
(表面保護層4)
表面保護層4は炭素を主成分とする。たとえば、SP3軌道を有するダイヤモンド状の物質があり、もしくはこれに類似のC−C結合を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)やアモルファスカーボン等がある。
【0058】
表面保護層4はグロー放電法により成膜形成する。
【0059】
一例として導電性基板2に対し負の直流バイアスを印加するとよく、その成膜条件は、たとえば真空度0.05torr(トール)(6.67Pa)、基板温度50℃、高周波電力(RF)50W、基板バイアス−500Vという条件でもってプラズマ化し、有機感光層3の上に積層を行う。
【0060】
このような成膜方法によれば、負の直流バイアス値を大きくすることで、動的押し込み硬さが大きくなる。
【0061】
グロー放電用原料ガスとしては、炭化水素ガス等が用いられ、キャリアガスとしては一般に常用される水素ガスあるいはアルゴンガス等が用いられる。
【0062】
上記炭化水素ガスには飽和炭化水素として、たとえばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ジメチルブタン、メチルヘキサン、エチルペンタン、ジメチルペンタン、トリプタン、メチルヘプタン、ジメチルヘキサン、トリメチルペンタン、イソナノン等がある。
【0063】
上記のように成膜した後に、フッ素系ガスを用いてプラズマを発生させ、表面処理を行うことにより表面自由エネルギーが低下するが、さらには、そのプラズマ発生に用いる高周波電力の値でもって、その低下の度合を制御することができる。すなわち、高周波電力値を大きくすることで、表面自由エネルギーの低下度合が大きくなる。このフッ素系ガスとしては、CF4、CHF3、CH2F2、CH3F、C2F6、ClF3等のガスが用いられる。
【0064】
本発明の感光体によれば、上記の如く表面保護層4をグロー放電法により成膜形成した際に、表面保護層4の表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m2)の関係がE≦6/H+6×10-2を満たすときに画像流れが抑止できる。
【0065】
この点をさらに詳しく述べると、表面保護層4の表面自由エネルギーについては、その表面の物質の付着性(またはクリーニングの容易性)を表し、この表面自由エネルギーが低くなると、その表面に付着しにくくなる。
【0066】
画像流れは表面の酸化や付着物の付着等にて表面自由エネルギーが増加することによって水分が付着しやすくなることに起因する。よって、表面自由エネルギーを減少させることで画像流れが良くなる傾向がある。一方、硬度については、小さいほどに表面が研磨されやすくなり、これにより、付着物や表面の酸化した層をクリーニングすることができ、その結果、画像流れの点にて良好になる傾向がある。
【0067】
本発明者はさまざまな実験を繰り返しおこなった結果、表面保護層4の表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m2)の関係を上記の式に規定することで、クリーニング性を向上させてトナー付着を抑制し、転写性を向上させ、さらに画像流れが発生しなくなることを見出したのである。
【0068】
以上のような構成の表面保護層4については、その膜厚を0.1〜2.5μmの範囲にするとよく、膜厚が0.1μm(1000Å)未満に薄くなると、膜削れによる耐久性が確保できなくなることがあり、これによって下地の影響を受ける。一方、膜厚が2.5μm(25000Å)を超えると、光透過率が悪化し、残留電位が発生することがある。
【0069】
画像形成装置の構成
図2は本発明の感光体を搭載したプリンター構成の画像形成装置であり、1は感光体であり、この感光体1の周面にコロナ帯電器6と、その帯電後に光照射する露光器7(LEDヘッド)と、液体トナ−像を感光体1の表面に形成するための液体トナ−を備えた現像機9、その液体トナ−像を被転写材10に転写する転写器11と、その転写後に感光体表面の残留液体トナ−を除去するクリーニング手段12と、その転写後に残余静電潜像を除去する除電手段13とを配設した構成である。また、14は被転写材10に転写された液体トナ−像を熱もしくは圧力により固着するための定着器である。
【0070】
このカールソン法はつぎの(1)〜(6)の各プロセスを繰り返し経る。
(1)感光体1の周面をコロナ帯電器6により帯電する。
(2)露光器7により画像を露光することにより、感光体1の表面上に電位コントラストとしての静電潜像を形成する。
(3)この静電潜像を現像機9により現像する。この現像により黒色の液体トナ−が静電潜像との静電引力により感光体表面に付着し、可視化する。
(4)感光体表面の液体トナ−像を紙などの被転写材10の裏面より液体トナ−と逆極性の電界を加えて、静電転写し、これにより、画像を被転写材10の上に得る。
(5)感光体表面の残留液体トナ−をクリーニング手段12により機械的に除去する。
(6)感光体表面を強い光で全面露光し、除電手段13により残余の静電潜像を除去する。
【0071】
なお、画像形成装置はプリンターの構成であるが、露光器7に代えて原稿からの反射光を通すレンズやミラーなどの光学系を用いれば、複写機の構成の画像形成装置となる。
【0072】
【実施例】
純度99.9%のAlからなる円筒状の導電性基板2(外径30mm、長さ254mm)の上に感光層3を塗布形成し、正帯電のレーザープリンタ用にする。この感光層3は下記のとおりにて成膜した。
【0073】
電荷発生剤としてX型無金属フタロシアニン5重量部および結着樹脂としてポリカーボネイト100重量部、溶媒としてテトラヒドロフラン800重量部、正孔輸送剤として化1のジエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン100重量部をボールミルにて50時間混合、分散させて単層感光体用の塗布液を作製した。
【0074】
【化1】
【0075】
そして、この塗布液をアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、100℃で1時間乾燥させて、膜厚25μmの感光層3を形成させ、単層型とした。
【0076】
次に表1に示す成膜条件のグロー放電法により5000Åの厚みで表面保護層4を成膜形成した。この成膜に当り、DCバイアス値を幾とおりにも変えて、さまざまな硬度の表面保護層を形成した。
【0077】
さらには、続けて表1に示すような表面処理条件にて、フッ素系ガスを用いてプラズマを発生させ、表面処理を行うことにより所要とおりの表面自由エネルギーに制御した。この制御に当っては、高周波電力(RF)を変えればよい。
【0078】
【表1】
【0079】
かくして表面自由エネルギーと動的押し込み硬さを幾とおりにも変えた各感光体について、それぞれの画像流れの評価を測定したところ、図3に示すような結果が得られた。
【0080】
表面自由エネルギーEは分散力成分、双極子成分、水素結合力成分でもって、それぞれの表面自由エネルギーが数値化できるものであって、これらの各数値の合計値によって求めた。測定は拡張Forkesの理論を適用して解析するが、具体的には3種類の液体(分散力成分と双極子成分と水素結合力成分の各表面自由エネルギーの数値がすでに分かっている、α-ブロムナフタリン、水、ヨウ化メチレン)を用いて、ドラム表面を純水等で洗浄、乾燥後に液滴法により接触角を測定し、そのデータをもとにして拡張Forkesの理論に基づいて算出した。
【0081】
動的押し込み硬さは島津製作所製の超微小硬度計DYNAMIC ULTRA MICRO HARDNESS TESTER(DUH-201・202)を使用して測定した。また画像流れはエコシスLS−1700改造機(京セラ株式会社製)にて評価を行った。
【0082】
図3において、〇印は画像流れが発生しなかった場合であり、×印は画像流れが発生した場合である。
【0083】
これら各測定スポットに対し、さらにさまざまな実験を繰り返しおこなった結果、これら各スポットの間にて、四角形状のスポットが臨界値であることを見出した。そして、これら各臨界スポットに対し、関係式を求めたところ、表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m2)にて、E=6/H+6×10-2になる。
【0084】
したがって、本発明によれば、表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m2)の関係がE≦6/H+6×10-2にすることで、画像流れが発生しなくなる。
【0085】
【発明の効果】
以上のように、本発明の感光体によれば、導電性支持体上に有機感光層と炭素を主成分とする表面保護層とを順次積層し、この表面保護層の表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m2)の関係をE≦6/H+6×10-2にしたことで、画像流れが低減したり、もしくはその発生が解消され、これによって高品質かつ高信頼性の感光体が得られた。
【0086】
また、本発明によれば、かかる本発明の感光体を搭載したことで画像流れがない高性能な画像形成装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感光体の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の概略図である。
【図3】表面保護層の表面自由エネルギーと動的押し込み硬さの関係を示す線図である。
【符号の説明】
1・・・感光体
2・・・導電性基板
3・・・有機感光層
4・・・表面保護層
Claims (3)
- 導電性支持体上に有機感光層と炭素を主成分とする表面保護層とを順次積層した電子写真用の感光体であって、前記表面保護層の表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m2)との関係がE≦6/H+6×10−2である感光体。
- 請求項1の感光体と、この感光体の表面に電荷を付与する帯電手段と、感光体の帯電領域に対して光照射する露光手段と、これら帯電手段と露光手段とにより感光体表面に形成された静電潜像に対してトナー像を感光体の表面に形成する現像手段と、上記トナー像を被転写材に転写する転写手段と、転写後に感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段とを配設した画像形成装置。
- 表面に有機感光層が成膜形成された導電性支持体の該有機感光層上に、直流バイアス値を調整しつつグロー放電法により炭素を主成分とする表面保護層を成膜形成する工程と、
フッ素系ガスを用いて発生させるプラズマを高周波電力により調整しつつ該プラズマにより前記表面保護層を表面処理する工程と、を含み、
前記直流バイアス値および前記高周波電力は、前記表面保護層の表面自由エネルギーE(N/m)と動的押し込み硬さH(N/m 2 )との関係がE≦6/H+6×10 −2 となるように調整されることを特徴とする、感光体の製造方法。
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