JP3904551B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物,発泡粒子及び型内成形体 - Google Patents
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Description
上記ポリプロピレン系樹脂組成物としては,その発泡適性等の面から,主としてプロピレンにエチレンや1−ブテン等のα−オレフィンを共重合させたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等が用いられている。しかし,これらは共重合体であるがゆえに,重合体そのものの力学物性が低い。
そこで,上記ポリプロピレン系樹脂組成物の力学物性を向上させるために,共重合体中のコモノマー含量を低くする方法や,あるいはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体に直鎖状ポリエチレンを混合する方法(特許文献1参照)が提案されていた。しかし,このような方法によっても,成形体の力学物性を向上させるには限界があった。
しかし,シンジオタクチック構造を有するポリプロピレンは,アイソタクチック構造を有するポリプロピレンに比較して融点が低く,機械的物性が劣るという問題があった。
この場合には,発泡粒子の気泡径が比較的均一となるという特徴があるが,かかる発泡粒子を用いて得られる成形体の力学物性は必ずしも十分ではなく,更なる改良が望まれていた。
プロピレン系重合体[A]:下記の要件(a)〜(c)を有するプロピレン系重合体。
(a)プロピレンから得られる構造単位が100〜98モル%,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位が0〜2モル%存在すること(但し,プロピレンから得られる構造単位と,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位との合計量は100モル%である)。
(b)13C−NMRで測定したときの,全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.5〜1.8%であり,かつプロピレンモノマー単位の1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.005〜0.4%であること。
(c)融点(Tm)が143℃以上であること。
プロピレン系重合体[B]:上記要件(a)及び(b)のうち要件(a)だけを満足し,かつ下記の要件(d)を満足するプロピレン系重合体。
(d)融点(Tm)が158℃以上であること。
樹脂[C]:テルペン系樹脂および/または石油樹脂。
そのため,上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,低温加工性に優れると共に機械的物性に優れている。
かつ上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,上記第2の発明のものを用いてなることを特徴とする型内成形体にある(請求項6)。
そのため,上記型内成形体は,低い成形蒸気圧で作製できると共に,圧縮強度及び引張強度等の機械的物性に優れ,かつ平滑性及び光沢性のような表面外観にも優れるものとなる。
まず,上記プロピレン系重合体[A]について説明する。
上記プロピレン系重合体[A]は,上記要件(a)〜(c)を有するプロピレン系重合体である。以下,上記要件(a)〜(c)について,説明する。
ここで,プロピレンから得られる構造単位と,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位との合計量は100モル%である。
したがって,要件(a)を満たすプロピレン系重合体としては,プロピレン単独重合体よりなるもの,或いはプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体よりなるものがある。
そして,このようなプロピレン系重合体[A]を含有してなる上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,発泡粒子を製造するための基材樹脂として用いることができる。
そして,このようなプロピレン系重合体[A]を上記の範囲の含有量で含有する上記ポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とする発泡粒子は,型内成形したときに,二次発泡性に優れる。
この場合には,上記プロピレン系重合体は,所謂プロピレン単独重合体となる。そして,このようなプロピレン系重合体[A]を上記の範囲で含有する上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,これを基材樹脂として発泡粒子を製造し,該発泡粒子を型内で成形したときに得られる型内成形体の強度を一層優れたものとすることができる。
この要件(b)はプロピレン系重合体の位置不規則単位の割合に関するものであり,かかる不規則単位は,プロピレン系重合体の結晶性を低下させる作用を有し,発泡適性を高める効果を示す。
即ち,直径10mmφのNMR用サンプル管内に,350〜500mg程度の試料を入れ,溶媒としてo−ジクロロベンゼン約2.0ml及びロック用に重水素化ベンゼン約0.5mlを用いて完全に溶解させた後,130℃にてプロトン完全デカップル条件下に測定した。
なお,13C−NMR法での位置不規則単位の検出感度は,通常0.01%程度であるが,積算回数を増加することにより,これを高めることが可能である。
即ち,プロピレンモノマーは,通常,メチレン側が触媒中の金属成分と結合する方式,すなわち,いわゆる「1,2−挿入」にて反応するが,希には,「2,1−挿入」や「1,3−挿入」を起こすことがある。「2,1−挿入」は,「1,2−挿入」とは付加方向が逆となる反応形式であり,ポリマー鎖中に上記の部分構造(Ι)で表される構造単位を形成する。
微粒子状担体に金属錯体成分を担持させる場合,金属錯体成分の担持量は,担体1gあたり0.001〜10mmolであることが好ましく,より好ましくは,0.001〜5mmolであることがよい。
また,上記メタロセン系触媒の中でも,ジルコニウムジクロリド型の錯体が好適に使用されるが,その中でも,特に架橋型錯体を用いることが好ましい。
具体的には,メチレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,メチレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,メチレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,メチレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,エチレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,エチレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,エチレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,エチレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,イソプロピリデンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,イソプロピリデンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,イソプロピリデンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,イソプロピリデンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジフェニルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジフェニルシリレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジフェニルシリレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジフェニルシリレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,等が例示できる。
これらの中でも特に,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,及びジメチルシリレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリドを用いることが好ましい。この場合には,上記の各位置不規則単位の割合を容易に本発明の範囲内にコントロールすることができると共に,後述する要件(e)を満足する(アイソタクチックトリアッド分率が97%以上の)プロピレン重合体を容易に得ることができる。
また,全プロピレン挿入に対する2,1−挿入したプロピレンの割合,及び1,3−挿入したプロピレンの割合は,下記の[数2]に示す式で計算した。
(−0.20)・Tm+35≦Y≦(−0.33)・Tm+60 式(1)
また,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法としては,樹脂粒子を水に分散させつつ発泡剤を含浸させた後,高温高圧下から低圧下に放出して発泡粒子化する方法が一般的であるが,この際,適度の水蒸気透過性は,樹脂粒子への水及び発泡剤の浸透を行いやすくする。その結果,樹脂粒子内における水及び発泡剤の分散が均一となり,得られる発泡粒子の気泡径を均一にし,また,発泡倍率を向上させることができる。
上記水蒸気透過度(Y)がプロピレン系重合体の融点(Tm)との関係で表現されているのは,発泡粒子の製造時の発泡温度や型内成形時の飽和スチーム温度が,一般的に基材樹脂であるプロピレン系重合体の融点(Tm)が高いほど高くなり,融点(Tm)が低いほど低くなることに基づいている。
尚,プロピレン系重合体[A]の融点(Tm)は,JIS K7121(1987年)に記載の「一定の熱処理を行った後,融解温度を測定する場合」を採用し(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は,いずれも,毎分10℃を採用),熱流束DSC装置を使用し,加熱速度毎分10℃にてDSC曲線を描かせ,得られたDSC曲線上の融解ピークの頂点が採用される。尚,複数の頂点が観測された場合には,高温側のベースラインを基準に融解ピークの頂点が最も高いものが採用され,最も高い融解ピークの頂点が複数ある場合はそれらの相加平均値が採用される。
上記プロピレン系重合体[B]は,上記要件(a)及び(b)のうち要件(a)だけを満足し,かつ上記要件(c)を満足するプロピレン系重合体である。
即ち,上記プロピレン系重合体[B]は,プロピレンから得られる構造単位が100〜98モル%,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位が0〜2モル%存在するという要件(a),及び融点(Tm)が158℃以上であるという要件(d)を満たし,上記要件(b)については,満足しないものである。上記プロピレン系重合体[B]は,通常,上記式(1)も満足しない。このようなプロピレン系重合体[B]は,例えばチーグラー/ナッタ触媒等を用いて得ることができる。
すなわち,上記プロピレン系重合体[A]は,一般に狭い分子量分布を有し,一方,上記プロピレン系重合体[B]は,一般に広い分子量分布を有する。したがって,上記プロピレン系重合体[A]に対して,上記プロピレン系重合体[B]を混合してなる樹脂組成物は広い分子量分布を有するものとなる。
そして,一般に分子量分布が広い場合には,それが狭い場合に比べて配向される度合が低い。このことから,上記プロピレン系重合体[A]に対して,上記プロピレン系重合体[B]を混合してなる樹脂組成物を用いて得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,上記プロピレン系重合体[A]を単独で用いて得られる樹脂発泡粒子に比して,二次発泡力が高くなるものと推定される。
上記樹脂[C]は,テルペン系樹脂及び/または石油樹脂である。
また,上記樹脂[C]においては,上記テルペン樹脂の1種のみを使用してもよく,また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
この石油樹脂は,シクロペンタジエン等の石油系不飽和炭化水素,高級オレフィン系炭化水素,または芳香族炭化水素等を主原料(50重量%以上)とする樹脂である。これらの石油樹脂の中でも,水素化された水添石油樹脂が好ましい。
上記したごとく,上記樹脂[C]として,水素添加されたテルペン系樹脂及び/又は水素添加された石油樹脂を用いると,プロピレン系重合体[A]及びプロピレン系重合体[B]への溶解性をさらに高めることができる。
上記石油樹脂のガラス転位温度(Tg)が50℃未満の場合には,上記石油樹脂の軟化温度が低下する。そのため,工業的に取り扱うに当たって,特殊な装置や設備が必要となり,製造コストが高くなるおそれがある。より好ましくは,60℃以上がよく,さらにより好ましくは60〜100℃がよい。
上記石油樹脂のガラス転位温度(Tg)が100℃を超える場合には,上記石油樹脂が,上記プロピレン系重合体[A]及び上記プロピレン系重合体[B]中において分散し難くなり,その結果,発泡粒子の成形時の蒸気圧を低くすることができなくなるおそれがある。
また,上記樹脂[C]としては,上記テルペン系樹脂の1種または2種以上と,上記石油樹脂の1種または2種以上とを組み合わせて使用してもよい。
一方,プロピレン系重合体[A]の配合比が92重量%を越える場合には,樹脂[C]の配合比が3重量%未満となってしまうために,上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,低温での加工性が低下してしまう。そのため,かかるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とする発泡粒子を使用して,更に低温の成形蒸気圧にて型内成形を試みると,得られる型内成形体は,粒子間の間隙が大きく外観の悪い成形体となってしまうおそれがある。
一方,プロピレン系重合体[B]の配合比が75重量%を越える場合には,上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,低温での加工性が低下してしまう。そのため,かかるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とする発泡粒子を使用して,更に低温の成形蒸気圧にて型内成形を試みると,得られる型内成形体は,粒子間の間隙が大きく外観の悪い成形体となってしまうおそれがある。
即ち,上記プロピレン系重合体[A]と上記プロピレン系重合体[B]と上記樹脂[C]の合計量を100重量部とした場合,他のポリマー成分の添加量は40重量部以下にすることが好ましい。より好ましくは,30重量部以下がよく,さらに好ましくは15重量部以下がよい。また,もっとも好ましくは5重量部以下がよい。
また,上記プロピレン系重合体[A]と上記プロピレン系重合体[B]と上記樹脂[C]の合計量を100重量部とした場合,上記添加物の添加量(発泡剤のように最終的に気散してなくなるものは除く)は,添加物の使用目的にもよるが40重量部以下が好ましい。より好ましくは,30重量部以下がよく,さらに好ましくは0.001〜15重量部がよい。
(e)頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部における,13C−NMRで測定したときのアイソタクチックトリアッド分率が97%以上であること。
(f)メルトフローレートが0.5〜100g/10分であること。
この場合には,工業的に有用な製造効率を保ちつつ上記ポリプロピレン系樹脂組成物を生産することができる。さらに,これを基材樹脂として用いて得られる発泡粒子からなる型内成形体は,その力学物性が優れるという効果を得ることができる。
「示差走査熱量計による測定で,実質上単独の融解ピークを示す」とは,上記融点(Tm)を測定する方法と同じ方法にて上記ポリプロピレン系樹脂組成物の融点を測定した場合において,1つの融解ピークとして観察されることを意味する場合のみならず,複数の融解ピークが観察された場合であっても,隣合う融解ピークの頂点間の温度差(高温側融解ピークの頂点−低温側融解ピークの頂点)が7℃以内の場合をも包含するが,その温度差は5℃以内であることが好ましく,3℃以内であることがより好ましい。
上記の隣合う融解ピークの頂点間の温度差が小さいほど,上記プロピレン系重合体[A]と上記プロピレン系重合体[B]とが相互に高いレベルで溶解していることを意味し,樹脂組成物としての均一性が高いことを示す。その結果,かかるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として用いて得られる発泡粒子においては,型内成形時の二次発泡性に優れるものとなる。
尚,本発明において,上記プロピレン系重合体[B]の融点は,使用される上記プロピレン系重合体[A]の融点と同じであっても構わないが,両重合体の融点は2℃以上離れていることが好ましく,3℃以上離れていることが好ましく,5〜30℃離れていることがより好ましい。
また,上記プロピレン系重合体[A]と上記プロピレン系重合体[B]と上記樹脂[C]の合計量を100重量部とした場合,上記添加物の添加量(発泡剤のように最終的に気散してなくなるものは除く)は,添加物の使用目的にもよるが40重量部以下が好ましい。より好ましくは,30重量部以下がよく,さらに好ましくは0.001〜15重量部がよい。
本発明ではこれら樹脂,エラストマー,ゴム或いはそれら変成物を単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
即ち,例えばロール,スクリュー,バンバリーミキサー,ニーダー,ブレンダー,ミル等の各種混練機を使って,上記プロピレン系重合体[A]と上記プロピレン系重合体[B]と上記樹脂[C]とを,または上記基材樹脂とその他の成分等とを所望の温度で混練し,混練後は,発泡粒子の製造に適した大きさの樹脂粒子に成形することができる。
上記分解型発泡剤としては,樹脂粒子の発泡温度で分解してガスを発生するものであれば使用することができる。具体的には,たとえば重炭酸ナトリウム,炭酸アンモニウム,アジド化合物,アゾ化合物等が挙げられる。
このような分散強化剤としては,40℃の水100ccに対して少なくとも1mg以上溶解し得る無機物質であって,該化合物の陰イオンまたは陽イオンの少なくとも一方が2価または3価のものを用いることができる。このような無機物質としては,たとえば,塩化マグネシウム,硝酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,塩化アルミニウム,硝酸アルミニウム,硫酸アルミニウム,塩化鉄,硫酸鉄,硝酸鉄等が例示される。
この場合には,様々な条件の金型等が使用される。
上記型内成形体の密度が0.5g/cm3を超える場合には,軽量性,衝撃吸収性,断熱性といった発泡体の好ましい特性が充分に発揮されなくなり,低発泡倍率であるがゆえにコスト上の不利を招くおそれがある。
一方,密度が0.008g/cm3未満の場合には,独立気泡率が小さくなる傾向にあり,曲げ強度及び圧縮強度等の機械的物性が不充分となるおそれがある。尚,上記型内成形体の密度とは,JIS K7222(1999年)で定義される見掛け全体密度を意味する。
基材樹脂を構成するプロピレン系重合体は,次の製造例1〜8に示す方法により合成した。
(i)[ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド]の合成
以下の反応は全て不活性ガス雰囲気で行い,また,反応には予め乾燥精製した溶媒を用いた。
特開昭62−207232号公報に記載の方法に従って合成した2−メチルアズレン2.22gをヘキサン30mLに溶解し,フェニルリチウムのシクロヘキサン−ジエチルエーテル溶液15.6mL(1.0当量)を0℃にて少量ずつ添加した。
この溶液を室温で1時間撹拌した後,−78℃に冷却し,テトラヒドロフラン30mLを加えた。
上記で得られたビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−1,4−ジヒドロアズレニル)ジメチルシラン786mgをジエチルエーテル15mLに溶解し,−78℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.68mol/L)1.98mLを滴加し,徐々に室温に昇温し,その後室温にて12時間撹拌した。溶媒を減圧留去して得られた固体をヘキサンで洗浄し,減圧乾固した。
得られた溶液を減圧下に濃縮し,ヘキサンを加えて再沈殿させることにより,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリドよりなる,ラセミ/メソ混合物150mgを得た。
上記の反応を繰り返して得たラセミ/メソ混合物887mgをガラス容器に入れ,ジクロロメタン30mLに溶解し,高圧水銀ランプで30分間光照射した。その後ジクロロメタンを減圧下に留去し,黄色固体を得た。
この固体にトルエン7mLを添加して撹拌後,静置することにより,黄色固体が沈殿として分離した。上澄みを除去し,固体を減圧乾固して,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリドよりなる,ラセミ体を437mg得た。
(a)触媒担体の処理
脱塩水135mLと硫酸マグネシウム16gをガラス製容器に入れ,撹拌し溶液とした。この溶液にモンモリロナイト(クニミネ工業製「クニピア−F」)22.2gを加えた後,昇温し,80℃で1時間保持した。
次いで,脱塩水300mLを加えた後に濾過により,固形分を分離した。この固形分に,脱塩水46mLと硫酸23.4g及び硫酸マグネシウム29.2gを加えた後,昇温し,加熱還流下に2時間処理した後,脱塩水200mLを加え,濾過した。
更に脱塩水400mLを加えて濾過する,という操作を2回実施した。その後,固体を100℃で乾燥し,触媒担体としての化学処理モンモリロナイトを得た。
内容積1リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,脱水ヘプタン230mLを導入し,系内温度を40℃に保持した。
ここに,上記にて調製した,触媒担体としての化学処理モンモリロナイト10gを200mLのトルエンに懸濁させて添加した。
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これに,トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液500mL(0.12mol),及び水素(3NL)を導入し,オートクレーブ内を75℃に昇温した。
その後,上記固体触媒成分(1.7g)をアルゴンで圧入して重合を開始させ,3時間重合反応を行った。
このポリマーは,プロピレンから得られる構造単位が100モル%であり,即ちプロピレン単独重合体である。これは上記要件(a)を満たす。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー1」と称する。
上記で得られたポリマー1を厚み25ミクロンのフィルムに成形し,JIS K7129に記載の方法に従って水蒸気透過度Yを測定した(以下の製造例も同じ)結果,11.4(g/m2/24hr)であった。
なお,ポリマー1は,融点(Tm)が143℃であるため,上記式(1)からYは6.4≦Y≦12.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていた。
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これに,トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液500mL(0.12mol),及び水素(3NL)を導入し,オートクレーブ内を40℃に昇温した。
その後,上記固体触媒成分(3.0g)をアルゴンで圧入して重合を開始させ,3時間重合反応を行った。
このポリマーは,プロピレンから得られる構造単位が100モル%であり,即ちプロピレン単独重合体である。これは上記要件(a)を満たす。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー2」と称する。
なお,ポリマー2は,上記のように融点(Tm)が152℃であるため,上記式(1)からYは4.6≦Y≦9.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていた。
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液500mL(0.12mol)を添加し,オートクレーブ内を70℃に昇温した。その後,上記固体触媒成分(9.0g)を添加し,プロピレンとエチレンの混合ガス(プロピレン:エチレン=98.5:1.5;但し重量比)を圧力が0.7MPaとなるように導入して重合を開始させ,本条件下に3時間重合反応を行った。
このポリマーには,プロピレンから得られる構造単位が98.0モル%,エチレンから得られる構造単位が2.0モル%存在している。これは上記要件(a)を満足する。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー3」と称する。
なお,このポリマー3は,融点(Tm)が143℃であるため,上記式(1)からYは6.4≦Y≦12.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていた。
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液500mL(0.12mol)を添加し,オートクレーブ内を70℃に昇温した。その後,上記固体触媒成分(9.0g)を添加し,プロピレンと1−ブテンの混合ガス(プロピレン:1−ブテン=97:3;但し重量比)を圧力が0.6MPaとなるように導入して重合を開始させ,本条件下に3時間重合反応を行った。
このポリマーには,プロピレンから得られる構造単位が98.0モル%,1−ブテンから得られる構造単位が2.0モル%存在している。これは上記要件(a)を満足する。
なお,このポリマー4は,融点(Tm)が146℃であるため,上記式(1)からYは5.8≦Y≦11.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていた。
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,ジエチルアルミニウムクロリド(45g),丸紅ソルベー社製三塩化チタン触媒11.5gをプロピレン雰囲気下に導入した。更に気相部の水素濃度を7.0容量%に保持しながら,オートクレーブ内温60℃にて,プロピレンを9kg/hrの速度にて4時間にわたり,オートクレーブ内に導入した。
このポリマーは,プロピレンから得られる構造単位が100モル%であり,即ちプロピレン単独重合体である。これは上記要件(a)を満足する。
また,このポリマーにおいては,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0%であった。即ち,このものは,上記要件(b)を満足しない。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー5」と称する。
なお,このポリマー5は,融点(Tm)が160℃であるため,上記式(1)からYは3.0≦Y≦7.2の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていなかった。
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,ジエチルアルミニウムクロリド(40g),丸紅ソルベー社製三塩化チタン触媒7.5gをプロピレン雰囲気下に導入した。更に気相部の水素濃度を7.0容量%に保持しながら,オートクレーブ内温60℃にて,プロピレンとエチレンの混合ガス(プロピレン:エチレン=97.0:3.0;但し重量比)を圧力が0.7MPaとなるように導入した。
このポリマーには,プロピレンから得られる構造単位が96.0モル%,エチレンから得られる構造単位が4.0モル%存在している。これは上記要件(a)を満足しないものである。
また,このポリマーは,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0%であった。即ち,このものは,上記要件(b)を満足しない。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー6」と称する。
なお,このポリマー6は,融点(Tm)が143℃であるため,上記式(1)からYは6.4≦Y≦12.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていなかった。
製造例7(プロピレン単独重合)
特開平6−240041号公報の実施例中の[基材樹脂の製造1]に記載の方法を適用して実施した。
すなわち,内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,東ソーアクゾ社製のメチルアルモキサン(平均オリゴマー度16)を120g,特開平4−268307号公報に記載の方法で合成したrac−ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(150mg)をプロピレン雰囲気下に導入した。更に気相部の水素濃度を0.5容量%に保持しながら,オートクレーブ内温40℃にて,プロピレンを7kg/hrの速度にて3時間にわたり,オートクレーブ内に導入した。
このポリマー7は,MFR=9,融点(Tm)が150℃,アイソタクチックトリアッド分率が94.4%,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.25%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合は検出限界以下,すなわち0.005%未満であった。即ち,このものは,上記要件(a),上記要件(c)及び上記要件(f)は満足するが,上記要件(b)を満足しないものである。また,このポリマー7は,上記要件(d)も満足しないものである。
なお,後述する表1においては,ポリマー7の1,3挿入に基づく位置不規則単位の割合は0%として表記した。
なお,このポリマー7は,融点(Tm)が150℃であるため,上記式(1)からYは5.0≦Y≦10.5の範囲内にあるべきところ,その範囲外であった。
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,東ソーアクゾ社製のメチルアルモキサン(平均オリゴマー度16)を120g,公知の方法[エイチ.ヤマザキ他(H.Yamazaki et.al),「ケミストリー レターズ」(“Chemistry Letters”),日本国,1989年,第18巻,p.1853]で合成したrac−ジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(100mg)をプロピレン雰囲気下に導入した。更に気相部の水素濃度を0.5容量%に保持しながら,オートクレーブ内温35℃にて,プロピレンを7kg/hrの速度にて5時間にわたり,オートクレーブ内に導入した。
このポリマー8は,MFR=17,融点(Tm)が143℃,アイソタクチックトリアッド分率が91.9%,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が2.1%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合は0.43%であった。
即ち,このものは,上記要件(a)及び上記要件(c)は満足するが,上記要件(b)を満足しないものである。また,このポリマー8は,上記要件(d)も満足しないものである。
なお,このポリマー8は,融点(Tm)が143℃であるため,上記式(1)からYは6.4≦Y≦12.8の範囲内にあるべきところ,その範囲外であった。
一方,ポリマー5は,上記要件(a)及び(d)を満たしているが,上記要件(b)を満足していない。即ち,上記ポリマー5は,上記プロピレン系重合体[B]に相当するものである。
また,上記ポリマー6は,上記要件(c)を満足しているが,上記要件(a),要件(b)及び要件(d)を満足していない。即ち,上記ポリマー6は,上記プロピレン系重合体[A]及び[B]のいずれにも相当しないものである。
また,上記ポリマー7及びポリマー8は,いずれも上記要件(a)及び上記要件(c)を満足しているが,上記要件(b)及び要件(d)を満足していない。即ち,上記ポリマー7及び上記ポリマー8は,上記プロピレン系重合体[A]及び[B]のいずれにも相当しないものである。
まず,製造例1で得たポリマー1と,製造例5で得たポリマー5と,水素添加された石油樹脂(荒川化学工業(株)製 商品名「アルコン P115」)とを,それぞれ5:75:20の重量比で混合し,ポリプロピレン系樹脂組成物を作製した。
続いて,このポリプロピレン系樹脂組成物に,酸化防止剤として,吉富製薬(株)製の「ヨシノックスBHT(商品名)」とチバガイギー製の「イルガノックス1010(商品名)」とを,上記樹脂組成物に対してそれぞれ0.05wt%及び0.10wt%加え,しかる後に65mmφ単軸押出機で直径1mmのストランド状に押し出し,水槽にて冷却後,長さ2mmにカットして細粒ペレットを得た。
以上の操作により得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を乾燥後,嵩密度を測定したところ,48g/Lであった。また,発泡粒子の気泡は,その平均径が230μであり,非常に均一なものであった。
まず,上記で得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子をホッパーにより圧縮空気を用いて逐次的にアルミニウム製の成形用金型に圧縮しながら充填した。その後,金型のチャンバにゲージ圧0.27MPaのスチーム(下記の表中では「成形蒸気圧」と表示)を通じて加熱成形(型内成形)し,型内成形体を得た。
これらの結果を下記の表2に示す。
次に,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂として用いるポリプロピレン系樹脂組成物の組成を変え,また,イソブタン添加量,発泡温度,及び成形蒸気圧を変え,他は実施例1と同様にして,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子及び型内成形体を作製した。
なお,実施例8においては,樹脂[C]として,水素添加されたテルペン樹脂である「クリアロンM−105」(ヤスハラケミカル社製)を用いた。
なお,表2〜表4において,成形体外観の評価基準は次の通りである。
○ 表面の間隙が少なく,凹凸も無い表面外観が優れた成形体。
△ 表面の間隙がやや認められる又は表面凹凸がやや認められる表面外観が多少劣る成形体。
× 表面の間隙が多い又は表面凹凸が多い表面外観不良の成形体。
また,比較例3において得られた型内成形体は,その融着度が非常に低いものであった。
また,製造例5及び6は,メタロセン系重合触媒とは異なるチーグラー/ナッタ触媒を使用したことにより,得られたプロピレン系重合体に位置不規則単位が形成されなかった例を示すものである。
また,製造例8は,製造例1及び製造例7とは異なるメタロセン系重合触媒を使用してプロピレン単独重合体を製造した例を示すが,使用されたメタロセン系重合触媒の金属錯体成分が適当でなかったため各位置不規則単位の割合が本発明の範囲を上回ったものである。
Claims (6)
- 下記のプロピレン系重合体[A]4〜92重量%と,下記のプロピレン系重合体[B]5〜75重量%と,下記の樹脂[C]3〜20重量%(ただし,プロピレン系重合体[A]と,プロピレン系重合体[B]と,樹脂[C]との合計量は100重量%である)とからなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
プロピレン系重合体[A]:下記の要件(a)〜(c)を有するプロピレン系重合体。
(a)プロピレンから得られる構造単位が100〜98モル%,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位が0〜2モル%存在すること(但し,プロピレンから得られる構造単位と,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位との合計量は100モル%である)。
(b)13C−NMRで測定したときの,全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.5〜1.8%であり,かつプロピレンモノマー単位の1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.005〜0.4%であること。
(c)融点(Tm)が143℃以上であること。
プロピレン系重合体[B]:上記要件(a)及び(b)のうち要件(a)だけを満足し,かつ下記の要件(d)を満足するプロピレン系重合体。
(d)融点(Tm)が158℃以上であること。
樹脂[C]:テルペン系樹脂および/または石油樹脂。 - 請求項1において,上記プロピレン系重合体[A]又は/及び上記プロピレン系重合体[B]は,更に下記の要件(e)を有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
(e)頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部における,13C−NMRで測定したときのアイソタクチックトリアッド分率が97%以上であること。 - 請求項1又は2において,上記プロピレン系重合体[A]又は/及び上記プロピレン系重合体[B]は,更に下記の要件(f)を有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
(f)メルトフローレートが0.5〜100g/10分であること。 - 請求項1〜3のいずれか一項において,上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,示差走査熱量計による測定で,実質上単独の融解ピークを示すことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂としてなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
- ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形型内において成形してなり,密度0.008〜0.5g/cm3を有する型内成形体であって,
かつ上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,上記請求項5に記載のものを用いてなることを特徴とする型内成形体。
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