JP3903698B2 - 水晶振動片の製造方法及び水晶デバイス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水晶デバイスのパッケージ内に収容される水晶振動片を製造する方法の改良と、そのような製造方法による水晶振動片を使用した水晶デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図18は、水晶振動子等の水晶デバイスに使用される水晶振動片を製造する場合の従来の製造工程を簡単に示すフローチャートである。
【0003】
図において、先ず、電圧を印加することにより、振動を生じる圧電材料として、所定の結晶成長工程により得た人工水晶の原石を切断し、水晶ウエハを形成する。そして、この水晶ウエハを研磨して、ウエハの表裏両面の平行度を高めると共に、決められた厚みに調整する。そして、加工後の水晶ウエハを切断して、水晶振動片を形成するためのチップの大きさとすると共に、切断端面を研磨して、水晶片を得る(ST1)。
【0004】
次いで、この水晶片の表面(表裏両面)に、蒸着等により電極膜を形成する。すなわち、圧電体である水晶片に電極を形成して、所定の振動を生じさせるために、その表面には励振電極と、この励振電極と外部から駆動電圧を供給するための外部電極を接続するための引き出し電極が設けられる(ST2)。
【0005】
図19(a)は、上記電極膜8の膜構造を示している。水晶片2の上には、先ず下地層3としてCrが蒸着等により成膜され、その上に上層として、例えば銀による電極層4が形成される。
【0006】
次に、図21に示すように、外部電極である給電電極6を半田を用いて接合し(ST3)、続いて、アニール処理をして、この接合工程迄に加えられた内部応力を除去する(ST4)。
【0007】
そして、ST2で形成した電極膜8の質量を調整して、つまり、電極層4の成分を追加して重りつけしたり、あるいは電子ビームやイオンビームもしくはレーザ光を照射したりして、電極層4の金属被膜を微妙に除去してその質量を削減する周波数調整する(ST5)。すなわち、水晶振動片の所望の周波数に対して、実際の振動周波数を調整して、その所望の振動性能に合わせ込みを行う。
【0008】
周波数調整が終了したら、真空中や窒素雰囲気中で、パッケージ内に水晶振動片を封止し、水晶振動子が完成する(ST6)。そして、面実装の場合には、さらに水晶振動子を樹脂モールドする(ST7)。この時、水晶振動片には、加熱ストレスがかかることになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したような製造工程により作られた圧電振動片を利用した圧電デバイスでは、図20に示すように、その製品が高い温度環境、例えば、摂氏125度程度の環境にあると、振動周波数が変化してしまうという問題があった。
【0010】
この場合、圧電振動片の振動周波数は、低くなるように変化している。これにより、所望の振動性能が保持できないという問題がある。
【0011】
そして、このような変動の原因として、上述した製造工程上の問題が考えられる。
【0012】
すなわち、上記ST3の給電電極(リード)6の半田接合工程以降において、圧電振動片に熱が加わる(ST4ないしST7)と、図21のような過程が進行すると考えられる。先ず、給電電極6は、半田成分が熱により電極膜8の表面に拡散して接合が行われる。ところが、この半田成分は、接合後に上述した製造工程の例えばST4のアニール処理や、ST7のモールド工程等において、高温環境に置かれると、図21の矢印に示すように、電極層4の中にさらに拡散していく。
【0013】
この場合、拡散した半田成分が電極膜8の重量を増加させて、上述したような周波数の変化となって悪影響を及ぼしている。
【0014】
また、図19(b)に示されているように、この高温下では、下地層3のクロム成分も、これと接する上層の電極層4に拡散して拡散層5を形成しているが、電極層4の表面には、殆ど影響を与えていない。
【0015】
ここで、電極層4内に、クロム等の高融点金属成分が拡散していた場合に、上記半田成分の拡散が防止できることが判明している。しかしながら、図19(a)のような電極膜8の構造では、クロム成分は、下地層3の接する領域の近傍にしか拡散せず、一方、半田成分は、下地層3のある側とは反対の電極層4の表面に多く拡散するため、クロムの拡散による上述したような半田拡散の抑止効果が期待できない。
【0016】
そこで、図19(a)の電極膜構造において、下地層3と上層4の間に中間層(図示せず)を設け、この中間層に上記クロム成分を含有させるという方法も考えられる。
【0017】
そこで、このような試みについて、具体的に検討を行ったが、その結果、クロム成分を導体金属と混合させたこのような中間層を設けて、そのクロム成分を上層に十分に拡散させ、上述した周波数変化を5ppm程度に抑えるには、中間層のクロム含有量を原子量で4パーセント以上とする必要がある。
【0018】
しかし、このような膜構造とすると、CI(クリスタルインピーダンス)値が増大することから、その膜厚を150nm以上とする必要がある。尚、上記のように周波数変化を抑制するためにクロム成分を上層に十分拡散させた場合、半田流れが不十分になるという別の問題を生じてしまう。
本発明は、上記課題を解消して、電極膜中に半田成分の拡散を防止できる成分を十分に拡散混合させて、振動特性の悪化を阻止することができる水晶振動片の製造方法と、そのような特性をもつ水晶振動片を使用した水晶デバイスを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1の発明によれば、水晶片の表面に駆動電圧が印加される励振電極と、この励振電極と引き出し電極を介して接続された接続電極とを備え、この接続電極に対して、外部からの駆動電圧を印加するための給電電極が接合される水晶振動片の製造方法であって、水晶ブロックを切断して得た水晶ウエハから前記水晶片を形成し、この水晶片の表面に、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと導体金属(Ag或いはAu)との混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記導体金属(Ag或いはAu)からなる上層とを備えた電極膜を形成し、前記電極膜の接続電極に前記給電電極を当接して半田により接合し、次いで、熱処理することにより、前記接合工程までに前記水晶片に加わった応力を緩和すると共に、前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させて、この上層の表面に析出させ、さらに、前記電極膜の表面に対して、質量増加または質量削減処理を行うことで周波数調整する、水晶振動片の製造方法により、達成される。
【0020】
請求項1の構成によれば、この製造方法による水晶振動片は、電極膜の膜構成として、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと導体金属との混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記導体金属(Ag或いはAu)からなる上層とを有している。
【0021】
そして、この電極膜の接続電極に前記給電電極を当接して半田により接合し、次いで、熱処理することにより、前記接合工程までに前記水晶片に加わった応力を緩和すると共に、前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させて、この上層の表面に析出させている。
【0022】
つまり、この発明では、前記下地層の成分は、Ti、Cr、Niのうちの1種より選ばれているが、これらの成分は、上層内に拡散することは期待されていない。つまり、特にこれらの成分を上層の導体金属に拡散させて、半田の拡散を防止する効果を得るように意図されたものではなく、前記下地層の成分は、水晶と導体金属との接合に適したものが選ばれている。
【0023】
これに対して、高融点金属以外の効果ある成分を、電極膜の厚み方向に積極的に拡散させる条件を種々検討した結果、前記Cu成分と導体金属との混合層でなる中間層を設けることと、接合工程の後で、積極的に熱処理を行うことを案出した。
【0024】
つまり、製造後、もしくは電極膜形成後に高温度環境に置くことは、上述したように接合で利用した半田成分を電極膜に拡散させることにつながる。したがって、単純な熱処理工程の追加は、課題解決にはならない。本発明者等は、高融点金属成分以外の成分の拡散のための熱処理工程を導入しつつ、半田の拡散を阻止する条件を種々検討し、本発明では、上述したように、下地層の上に中間層を設け、この中間層の前記Cu成分を積極的に電極層の上まで析出させるような熱処理工程を工夫することで、これをなし得たものである。
【0025】
これにより、電極膜の表面まで析出したCu成分があることから、この電極膜の表面近くまで、Cu成分が混合していると考えられる。これにより、半田成分は、以後の実装工程等における高温度環境下においても、電極膜表面にそって拡散されにくく、拡散した半田成分が、電極膜の重量を増加させることがない。
【0026】
しかも、この電極膜の表面に析出する程混合されたCu成分は、CI値の上昇をともなわないので、CI値上昇のための対策を行う必要がなく、半田拡散以外の別の問題を生じることもない。
【0027】
上記目的は、請求項2の発明によれば、水晶片の表面に駆動電圧が印加される励振電極と、この励振電極と引き出し電極を介して接続された接続電極とを備え、この接続電極に対して、外部からの駆動電圧を印加するための給電電極が接合される水晶振動片の製造方法であって、水晶ブロックを切断して得た水晶ウエハから前記水晶片を形成し、この水晶片の表面に、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと導体金属(Ag或いはAu)との混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記導体金属からなる上層とを備えた電極膜を形成し、前記電極膜の接続電極に前記給電電極を当接して半田により接合し、さらに、少なくとも前記励振電極上に、Alによる最表面層を形成し、次いで、熱処理することにより、前記接合工程までに前記水晶片に加わった応力を緩和し、かつ、前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させてこの上層の表面に析出させると共に、前記最表面層のAlを前記上層に拡散させ、さらに、前記電極膜の表面に対して、質量増加または質量削減処理を行うことで周波数調整する、水晶振動片の製造方法により、達成される。
【0028】
請求項2の構成によれば、この水晶振動片は、請求項1の発明と同じように、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと導体金属との混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記導体金属からなる上層とを有している電極膜の少なくとも前記励振電極部分の前記上層の上にAlによる最表面層を備えている点が請求項1の構成と異なっている。
【0029】
ここで、最表面層として、アルミニウム(Al)を選択するのは、導体金属上にAlを成膜し、かつ導体金属(AgあるいはAu)にAlを拡散することにより、半田の導体金属への拡散を抑制できること、Al成分はCI値の上昇を伴わないこと、周波数調整工程以前において、励振電極上に、予め質量増加させておくために、重り層を形成するが、この時、導体金属と重り層との接着層の役割を果たすことができること等の理由による。
【0030】
そして、この最表面層を形成した後で、積極的に熱処理して、最表面層の材料成分を、それより下の前記上層に拡散させるので、請求項1の場合と異なり、Cu成分は、中間層からは上方へ、Al成分は最表面層からは下方へと、膜厚の方向へ拡散する。
【0031】
これにより、請求項1を越える作用が発揮されて、半田成分の電極膜(上層)への拡散が抑止される。
【0032】
また、上記目的は、請求項3の発明によれば、水晶片の表面に駆動電圧が印加される励振電極と、この励振電極と引き出し電極を介して接続された接続電極とを備え、この接続電極に対して、外部からの駆動電圧を印加するための給電電極が接合される水晶振動片の製造方法であって、水晶ブロックを切断して得た水晶ウエハから前記水晶片を形成し、この水晶片の表面に、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと導体金属(Ag或いはAu)との混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記導体金属からなる上層とを備えた電極膜を形成し、前記電極膜の接続電極に前記給電電極を当接して半田により接合し、さらに、少なくとも前記引出し電極上に、Alによる最表面層を形成し、次いで、熱処理することにより、前記接合工程までに前記水晶片に加わった応力を緩和し、かつ、前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させてこの上層の表面に析出させると共に、前記最表面層のAlを前記上層に拡散させ、さらに、前記電極膜の表面に対して、質量増加または質量削減処理を行うことで周波数調整する、水晶振動片の製造方法により、達成される。
【0033】
請求項3の構成によれば、この水晶振動片は、請求項1の発明と同じように、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと導体金属との混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記導体金属からなる上層とを有していて、この電極膜の少なくとも前記引出し電極部分の前記上層の上にAlによる最表面層を備えている点が請求項1の構成と異なっている。
【0034】
そして、この最表面層を形成した後で、積極的に熱処理して、最表面層の材料成分を、それより下の前記上層に拡散させるので、請求項1の場合と異なり、Cu成分は、中間層からは上方へ、最表面層からは下方へと、膜厚の方向へ拡散する。特に、請求項3では、外部電極である給電電極が半田で接合される接続電極とつながった引き出し電極部分に上記最表面層が形成されているので、半田が励振電極につたわる限られた経路中に選択的にCuに加えAl成分も拡散させている。
【0035】
これにより、請求項1を越える作用が発揮されて、半田成分の電極膜(上層)への拡散が抑止される。
【0036】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの構成において、前記下地層の膜厚が5nm以上、30nm以下で、前記中間層のCuと導体金属(Ag或いはAu)との混合比が、Cuの原子比で30パーセント以上、60パーセント以下であり、前記上層の膜厚が20nm以上、180nm以下であり、前記上層と中間層を合わせた膜厚が100nm以上、500nm以下であることを特徴とする。
【0037】
請求項4の構成において、前記下地層の膜厚が5nm以上、30nm以下とするのは、膜厚が5nm未満であると、電極膜の密着強度が不足してしまうからで、膜厚が30nmを越えると、CI値が許容できない範囲に上昇するからである。
【0038】
Cu(銅)が原子比で30パーセント未満であると、後述する半田拡散防止効果が低下もしくは失われる。銅が原子比で60パーセントを越えると、製品の完成後の時間経過により周波数変化が生じる。
【0039】
また、中間層と上層とを合わせた膜厚が100nm以上500nm以下としたのは、この範囲においては、製品のCI(クリスタルインピーダンス)値に関して、この範囲であれば問題がないからである。
【0040】
さらに、上層のみの膜厚が20nm以上ないと、接続電極と給電電極の接合強度が不十分となり、180nmを越えると、銅(Cu)成分の膜厚方向への拡散が不十分になるおそれがある。
【0041】
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの構成において、前記最表面層の膜厚が、5nm以上、30nm以下であることを特徴とする。
【0042】
請求項5の構成によれば、前記最表面層の厚みが5nm以上ないと、後述するような周波数変化低減効果が表れない。また、最表面層の厚みが30nmでこの効果が一定となることから、その上限としたものである。
【0043】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成において、前記熱処理の温度が摂氏200度以上摂氏300度以下で、処理時間が2分以上1.5時間以下であることを特徴とする。
【0044】
請求項6の構成によれば、摂氏200度以上で2分以上加熱しないと、前工程における応力緩和をとともに、必要なCu成分の拡散が困難となるからであり、摂氏300度以上で、1.5時間以上熱処理すると、電極の接合強度が不足することがある。また、上記目的は、請求項7の発明によれば、パッケージ内の水晶振動片が収容されて封止された水晶デバイスであって、前記水晶振動片は、表面に駆動電圧が印加される励振電極と、この励振電極と引き出し電極を介して接続された接続電極とを備え、この接続電極に対して、外部からの駆動電圧を印加するための給電電極が半田により接合されており、前記励振電極、引き出し電極、及び接続電極を構成する各電極膜は、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、この下地層の上に設けられ、Cuと、Ag或いはAuとの混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記Ag或いはAuからなる上層とを備えた電極膜と、を備え、前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させて、この上層の表面に析出させ、さらに、前記電極膜の表面に対して、質量増加または質量削減処理を行うことで周波数調整した構成を備えている、水晶デバイスにより、達成される。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
【0046】
図1は、本発明の実施形態による水晶振動片を利用した水晶デバイスの一例としての水晶振動子を示す斜視図であり、図2はその概略平面図、図3は概略断面図である。
【0047】
これらの図において、この水晶振動子10は、空間部12aが形成されたパッケージ12と、このパッケージ内に密封される一方向に長い板状の水晶振動片11を備えている。
【0048】
水晶振動片11は、例えば水晶により短冊状に形成された板体であり、この水晶振動片11上には、後述する製造工程において、励振電極19と、接続電極13,14が形成されている。励振電極19は外部から駆動電圧を印加されることで、圧電作用に基づいて、水晶に所定の厚みすべり振動を生じさせるためのものである。この励振電極19と接続電極とは引き出し電極13a,14aにより接続されている。
【0049】
励振電極19は、図1の裏面にも同様に形成されており、接続電極14は、表面側に形成した励振電極19との間に引き出し電極14aを介して接続されている。接続電極13は、裏面側に形成した同じ形状の励振電極(図示せず)との間に引き出し電極13aを介して接続されている。
【0050】
パッケージ12は、例えば金属材料により、形成されている。具体的には、パッケージ12は、加工のしやすい洋白や、より好ましくはコバール等により形成されており、図1において手前側が開放され、奥側に底部23を有する中空の筒体として形成されている。
【0051】
パッケージ12の開放端18aから上記空間部12a内には、水晶振動片11が挿入され、その一端部には、上記接続電極13,14上に、パッケージ外部から引き込まれる給電電極としてのリード端子17,17の各先端,すなわちインナーリード17a,17aが、半田15,16を用いてそれぞれ接合されている。
【0052】
そして、パッケージ12の開放端18aは、プラグ18を嵌入されて、密閉されている。このプラグ18は、図2及び図3に示すように、パッケージ12の開放端18aの内周部に嵌入される金属製のリング18bと、このリング18bの内側に配置される例えばガラス材料等でなる絶縁部材18cとを有している。
【0053】
このプラグ18を介して、水晶振動片11の一端側が固定され、奥側が自由端21とされることにより、水晶振動片11は片持ち方式で支持された構造となっている。そして、プラグ18の絶縁部材18cは、これを貫通するリード端子17,17どうしを絶縁している。
【0054】
このように、本発明の水晶振動片は、例えば、水晶振動子や、これに集積回路を付加した構成の水晶発振器等の種々の水晶デバイスに適用される。
【0055】
次に、上記水晶振動片11の製造方法を説明する。
【0056】
図4は、本発明の第1の実施形態である水晶振動片の製造方法を示すフローチャートである。
【0057】
先ず、所定の結晶成長工程により得た人工水晶の原石を切断し、水晶ウエハを形成する。そして、この水晶ウエハを研磨して、ウエハの表裏両面の平行度を高めると共に、決められた厚みに調整する。そして、加工後の水晶ウエハを切断して、水晶振動片を形成するためのチップの大きさとすると共に、切断端面を研磨して、水晶片21を得る(ST10)。尚、図1ないし3の水晶振動片11の電極膜が形成されていない状態が水晶片21である。
【0058】
次いで、図5に示すように、この水晶片の表面(表裏両面)に、蒸着等により電極膜25を形成する。水晶片21の表面に、図1で説明した励振電極19と、この励振電極と外部から駆動電圧を供給するための外部電極を接続するための接続電極13,14が設けられる(ST11)。
【0059】
図5は、上記電極膜25の膜構造を示している。水晶片11の上には、先ず下地としてTi、Cr、Niのうちの1種より下地層22を蒸着等により成膜する。ここで、Ti、Cr、Niのうちの1種を用いるのは、導体金属としての金や銀と密着性がよく、かつ後述する中間層の機能を阻害しないで、CI値の上昇を回避できる性質からである。次に、下地層22の上に中間層として、導体金属と上記銅(Cu)との混合層23を蒸着等により形成する。次いで、中間層23の上に導体金属,例えば、金(Au)や銀(Ag)により電極層である上層24を蒸着等により成膜する。この実施形態では、上層24に銀を選択する。
【0060】
次に、電極膜25を成膜した後で、図7に示すように、給電電極(インナーリード)17aを上記電極膜25の上に当接させた状態にて、半田15,16を介して接合する(ST12)。半田15,16は、通常の半田としてPbSnでも鉛フリー半田として、例えばSnCuでもよい。ここで、鉛フリー半田を用いると、環境に対して鉛の汚染の影響を生じることがない。
【0061】
さらに、上記接合後、熱処理を行う(ST13)。この熱処理は、例えば、恒温槽内に、電極膜25を形成した水晶片21を収容して行う。
【0062】
この場合、熱処理は、ST12の接合工程までに水晶片21に加わった応力を緩和すると共に、図5及び図6に示すように、中間層23のCu成分を上層24に拡散させて、この上層24の表面に成分26として析出させるために行う。
【0063】
これにより、本実施形態では、下地層22の上に中間層23を設け、この中間層23のCu成分を積極的に上層方向に拡散させる。そして、図5及び図6に示すように、上層である電極層24の上まで析出させ、電極層24をその表面付近に銅(Cu)成分26が確実に存在する拡散混合層27とする処理をしている。
【0064】
ここで、上記ST11の電極膜25の成膜条件として、本実施形態では、好ましくは、下地層22の膜厚が5nm以上で30nm以下、中間層23の銅と導体金属,例えば銀との混合比に関して、銅の原子比が30パーセント以上、60パーセント以下であり、かつ、中間層22と上層24とを合わせた膜厚が100nm以上500nm以下で、上層24のみの膜厚が20nm以上180nm以下に設定する。
【0065】
すなわち、下地層22の膜厚が5nm未満であると、水晶21と中間層23との密着強度が不足する。下地層22の膜厚が30nmを越えると、CI値が上昇しすぎて許容範囲を越えるおそれがあるからである。
【0066】
また中間層23の銅と銀との混合比に関しては、銅が原子比で30パーセント未満であると、後述する半田拡散防止効果が低下もしくは失われる。銅が原子比で60パーセントを越えると、製品の完成後の時間経過により周波数変化が生じる。
【0067】
また、中間層23と上層24とを合わせた膜厚が100nm以上500nm以下としたのは、この範囲においては、製品のCI(クリスタルインピーダンス)値に関して、この範囲であれば問題がないからである。
【0068】
さらに、上層24のみの膜厚が20nm以上ないと、接続電極と給電電極の接合強度が不十分となり、180nmを越えると、銅(Cu)成分の図7の上層24への拡散が不十分になるおそれがある。
【0069】
また、ST13における熱処理においては、例えば、その温度が摂氏200度以上摂氏300度以下で、処理時間が2分以上1.5時間以下とされる。
【0070】
すなわち、摂氏200度以上で2分以上加熱しないと、前工程における応力緩和をとともに、必要なCu成分の拡散が困難となるからであり、摂氏300度以上で、1.5時間以上熱処理すると、電極の接合強度が不足するからである。
【0071】
次に、ST11で形成した電極膜25の質量を調整して、つまり、電極層24の成分を、さらに蒸着することで追加して重量増加したり、あるいは電子ビームやイオンビームもしくはレーザ光を照射したりして、電極層24の金属被膜を微妙に除去してその質量を削減する周波数調整を行う(ST14)。すなわち、水晶振動片11の所望の周波数に対して、実際の振動周波数を調整して、その所望の振動性能に合わせ込みを行う。
【0072】
周波数調整が終了したら、真空中や窒素雰囲気中で、図1で説明したパッケージ12内に水晶振動片を封止して、水晶振動子を完成させ(ST15)、面実装の場合には、さらに、水晶振動子を樹脂モールドする(ST16)。
【0073】
本実施形態は、以上のように構成されており、電極膜25の接続電極13に給電電極17aを当接して半田15,16により接合した後で、ST13の熱処理をすることにより、接合工程までに前記水晶片21に加わった応力を緩和すると共に、中間層23の銅(Cu)成分を上層24内に拡散させ、さらにその表面に析出させている。
【0074】
これにより、電極層である上層24の表面まで析出した銅(Cu)成分が存在することから、半田15,16の成分は、以後の実装工程等における高温度環境下においても、電極膜25表面にそって拡散されにくく、拡散した半田成分が電極膜25の重量増加となってしまうことがない。
【0075】
特に、図6の拡散混合層27と析出層26が形成されることで、従来の下地層と上層の界面及び上層と空気層との界面における半田拡散が抑止される。そして、拡散混合層27における半田拡散も抑止される。
【0076】
このため、電極膜25の重量増加により、水晶振動片11の振動周波数が所望の周波数より低くずれてしまうということが有効に防止される。
【0077】
しかも、中間層23から拡散されるCu成分は、電気抵抗が低い成分であるから、図6の拡散混合層27は、銀と銅との合金となって、抵抗値が低く、このためCI値を低く抑えることができる。
【0078】
図8は、本発明の第2の実施形態である水晶振動片の製造方法を示すフローチャートである。図9に第2の実施形態に対応した水晶振動片30の概略平面図を示すが、この図において、図1ないし3の水晶振動片11と同一の符号を付した箇所は共通する構成であり、重複する説明は省略する。
【0079】
先ず、図4のST10と同じ工程で水晶片21を得る(ST21)。
【0080】
次いで、図10に示すように、この水晶片の表面(表裏両面)に、蒸着等により電極膜36を形成する(ST22)。
【0081】
図10(a)は、上記電極膜36のうち少なくとも励振電極19の領域の構造36aを示し、図10(b)は上記電極膜36のうち励振電極19以外の領域の構造36bを示している。
【0082】
これらの図において、水晶片21の上には、先ず下地としてTi、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層32を蒸着等により成膜する。この下地層32は、第1の実施形態の下地層22と同じである。
【0083】
次に、下地層32の上に、導体金属,例えば、金(Au)や銀(Ag)と銅(Cu)の混合層である中間層33を蒸着等により成膜する。
【0084】
次いで、電極層となる上層34を成膜する。この上層34は、第1の実施形態の上層と同じものであり、導体金属,例えば、金(Au)や銀(Ag)により形成される。この実施形態では、上層34として銀を選択する。
【0085】
さらに、上層34を成膜した後で、図12に示すように、給電電極(インナーリード)17aを上記電極膜36aの上に当接させた状態にて、半田15,16を介して接合する(ST23)。半田15,16は、通常の半田としてPbSnでも鉛フリー半田として、例えばSnCuでもよい。ここで、鉛フリー半田を用いると、環境に対して鉛の汚染の影響を生じることがない。
【0086】
さらに、本実施形態では、図9に示すように、少なくとも励振電極19の上に、さらに最表面層35を形成する(ST24)。この最表面層34は、アルミニウム(Al)が選択されて、蒸着等により成膜する。
【0087】
ここで、最表面層35として、アルミニウム(Al)を選択するのは、導体金属上にAlを成膜し、かつ導体金属(AgあるいはAu)にAlを拡散することにより、半田の導体金属への拡散を抑制できること、Al成分はCI値の上昇を伴わないこと、周波数調整工程以前において、励振電極上に、予め質量増加させておくために、重り層を形成するが、この時、導体金属と重り層との接着層の役割を果たすことができること等の理由による。
【0088】
すなわち、この場合、励振電極19上では、電極膜36aは図10(a)に示すように下地層32と、中間層33と、上層34と、最表面層35を有し、励振電極19以外の電極部では、電極膜36bは、下地層32と、中間層33と、上層34を有していて、最表面層35を有していない。
【0089】
その後、熱処理を行う(ST25)。この熱処理は、例えば、恒温槽内に、電極膜36a,36bを形成した水晶片21を収容して行う。
【0090】
ここで、熱処理は、ST23の接合工程までに水晶片21に加わった応力を緩和すると共に、図11及び図12に示す作用を発揮するために行う。
【0091】
この実施形態では、図11(a)で示すように、励振電極19の領域では、上層34に対して、中間層33の銅(Cu)成分を拡散する。それとともに、最表面層35のアルミニウム(Al)成分が上層34に対して拡散し、かくして拡散混合層37を形成する。また、この拡散混合層37の上にST24で形成された最表面層35が存在している。
【0092】
また、図11(b)に示すように、励振電極19の以外の領域では、中間層の銅(Cu)成分を上層34に拡散させて、拡散混合層37を形成する。すなわち、上層34は銅(Cu)成分が拡散されて拡散混合層37とされると共に、さらにその表面に析出されて、析出層38を構成する。
【0093】
ここで、上記ST22の電極膜の成膜条件として、本実施形態では、好ましくは、下地層32の膜厚が5nm以上で30nm以下、中間層33の銅と導体金属,例えば銀との混合比に関して、銅の原子比が30パーセント以上、60パーセント以下であり、かつ、中間層32と上層34とを合わせた膜厚が100nm以上500nm以下で、上層34のみの膜厚が20nm以上180nm以下に設定する。
【0094】
また、ST25における熱処理においては、例えば、その温度が摂氏200度以上摂氏300度以下で、処理時間が2分以上1.5時間以下とされる。
【0095】
これらの条件は第1の実施形態と同じで、その理由も共通である。
【0096】
ここで、本実施形態では、最表面層35に関して、好ましくは、その膜厚が、5nm以上、30nm以下とされる。
【0097】
すなわち、最表面層35の厚みが5nm以上ないと、後述するような周波数変化低減効果が表れない。また、最表面層35の厚みが30nmでこの効果が一定となることから、その上限としたものである。
【0098】
ST25の熱処理が終了したら、周波数調整(ST26)を行い、パッケージ12により封止し(ST27)、必要なモールド処理を行う(ST28)。これらの工程は、第1の実施形態の対応するST14、15、16と同じである。
【0099】
かくして、本実施形態においても、半田15,16の成分は、以後の実装工程等における高温度環境下においても、電極膜36a,36bの表面にそって拡散されにくく、拡散した半田成分が電極膜の重量を増加させることがない。
【0100】
特に、励振電極19の領域では、図11に示すように、最表面層34及び拡散混合層37が形成され、それ以外の領域では、拡散混合層37及び析出層38が形成されているために、従来の上層と空気層との境界及び上層と下地層との境界における半田の拡散が抑止できる。
【0101】
このため、電極膜36a,36bの重量増加により、水晶振動片11の振動周波数が所望の周波数より低くずれてしまうということが有効に防止される。
【0102】
しかも、この場合、中間層33及び最表面層35から拡散されるCu成分は、電気抵抗が低い成分であるから、拡散混合層37は、銀と銅との合金となって、抵抗値が低く、このためCI値を低く抑えることができる。
【0103】
また、特に、本実施形態では、ST26にて、最表面層34の上に重量増加方式により新たに蒸着等により金や銀の重り層を設けた場合において、従来のように、金や銀の電極表面に重り層を追加する場合と比べて、重り層の密着度が向上する。このため、製品の使用時に、追加した重り層が剥がれ落ちたりすることが未然に防止できる。さらに、質量削減処理による周波数調整方法を用いると、Alの存在により、周波数の変化速度を遅くできるために、精密な周波数調整に適している。
【0104】
図13は、本発明の第3の実施形態である水晶振動片の製造方法を示すフローチャートである。図14に第3の実施形態に対応した水晶振動片40の概略平面図を示すが、この図において、図1ないし3の水晶振動片11と同一の符号を付した箇所は共通する構成であり、重複する説明は省略する。
【0105】
図13において、ST31、32、33の工程は、図8のST21、22、23で説明した工程で同じである。
【0106】
この実施形態では、接合工程ST23の後で、図15に示すように、水晶片21の表面及び裏面に電極膜を形成する。ここで、図15(a)は、図14の水晶振動片40の引き出し電極の部分の膜構造を示しており、図15(b)は、その少なくとも励振電極19の領域の膜構造を示している。
【0107】
これらの各膜構造に関して、第2の実施形態と同じ符号を付した箇所は同一の層構造であるから、重複する説明は省略する。
【0108】
ST34では、特に、図14に示す引き出し電極14aの領域(裏側の引き出し電極13aも同様)の上層34上に、最表面層44を形成する。この場合最表面層44は、第2の実施形態の最表面層35と同じく、アルミニウムにより成膜される。
【0109】
次いで、ST35にて熱処理を行う。この熱処理の条件は、第2の実施形態のST25と同じ条件である。
【0110】
ST35の熱処理後の膜構造を図15(c)と図15(d)に示す。この場合、図15(c)は、熱処理後の図14の水晶振動片40の引き出し電極の部分の膜構造を示しており、図15(d)は、その少なくとも励振電極19の領域の膜構造を示している。
【0111】
図15(a)と図15(c)の比較によりわかるように、引き出し電極14a(13a)上では、上層34に対して、中間層33の銅(Cu)成分が膜厚方向に関して上方に拡散する。それとともに、最表面層44のアルミニウム(Al)成分が、上層34に対して膜厚方向に関して下方に拡散し、かくして拡散混合層37を形成する。
【0112】
また、図15(b)と図15(d)の比較によりわかるように、励振電極19の領域では、中間層33の銅(Cu)成分を上層34に膜厚方向に拡散させて、拡散混合層37を形成する。すなわち、上層34は銅(Cu)成分が拡散されて拡散混合層37とされるとともに、その成分が表面に析出して析出層38を形成する。
【0113】
次に、周波数調整が行われる(ST36)。この工程が特に重要であり、本実施形態では、周波数調整は、励振電極19の領域の拡散混合層37に対して、例えば、電子ビームやイオンビームもしくはレーザ光を照射したりして、拡散混合層37の金属被膜を微妙に除去してその質量を削減する周波数調整を行う。
【0114】
これは次の理由による。
【0115】
この実施形態では、引き出し電極14a(13a)の表面には、最表面層44が形成されており、この領域は、特に、膜厚方向に関して、この最表面層44と中間層33とから上層34に向かって上下の各方向に銅(Cu)とアルミニウム(Al)成分が拡散され、半田成分の拡散防止が行われている。特に、半田は、図14の接続電極13,14に適用されることから、この引き出し電極14a(13a)の箇所を選択的に処理しておけば、半田拡散のほとんどを有効に阻止できるので、他の実施形態と同様の作用効果が発揮される。
【0116】
一方、励振電極19の領域には、上記最表面層44を形成していないため、この領域の拡散混合層37の銀と銅の合金といった除去効率の高い金属を選択的に除去することができる。すなわち、励振電極19の領域には、アルミニウムによる強靱な酸化膜(酸化アルミニウム)が存在しないことから、短時間で質量削減方式の周波数調整を行うことができる。
【0117】
これにより、周波数調整時間を短くすることで、周波数調整時に大きく温度上昇しないで済み、終了後の温度下降との関係で過大な周波数変化を生じることがなく、周波数調整により調整した周波数が後で大きく変動する事態を有効に防止することができる。
【0118】
周波数調整が終了したら、真空中や窒素雰囲気中で、図1で説明したパッケージ12内に水晶振動片を封止し、水晶振動子を完成させ(ST37)、面実装の場合には、さらにこの水晶振動子を樹脂モールドする(ST38)。
【0119】
図16は、水晶振動片をいくつかの製造方法により製造したサンプルに関してまとめた表である(厚み、膜厚の単位はnmである)。この表中において、サンプル1とサンプル2は本発明とは異なる従来の製造方法により製造した比較例であり、他のサンプルについては、全て本発明の各実施形態を適用したものである。そして、この表では、各サンプルに関して、その各下地層や中間層等上述した各条件を当てはめた詳細を示しており、このうちサンプル3ないし7までは、第1の実施形態の製造方法を適用しその条件を種々変更したものである。サンプル8は上記第2の実施形態により、サンプル9は上記第3の実施形態によるものである。
【0120】
図17は、図16の各サンプルに関して、その性能をテストした結果を示している。
【0121】
製造後、摂氏125度で1000時間試したエージング特性に関しては、本発明のサンプル3ないし9は、その周波数変化がマイナス5ppm以下、サンプル14,15がマイナス2ppm以下と良好な結果を示し、CI値変化は、いずれも5Ω以下と良好であった。
本発明は上述の実施形態に限定されない。上述の各実施形態の各構成は、省略したり、適宜任意に組み合わせることができる。
【0122】
また、本発明の水晶振動片とその製造方法は、水晶振動子や水晶発振器に限らず、水晶振動片を用いたあらゆる水晶デバイスに適用することができる。
【0123】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、電極膜中に半田成分の拡散を防止できる成分を十分に拡散混合させて、振動特性の悪化を阻止することができる水晶振動片の製造方法と、そのような特性をもつ水晶振動片を使用した水晶デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る水晶デバイスとしての水晶振動子の一例を示す概略斜視図。
【図2】図1の水晶振動子の概略水平断面図。
【図3】図1の水晶振動子の概略垂直断面図。
【図4】本発明の水晶振動片の製造方法の第1の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図5】図4の製造方法による電極膜の膜構造を示す概略断面図。
【図6】図4の製造方法による熱処理後の電極膜の膜構造を示す概略断面図。
【図7】図4の製造方法による電極膜の高融点金属成分が拡散する原理を示す概略断面図。
【図8】本発明の水晶振動片の製造方法の第2の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図9】図8の製造方法により製造される水晶振動片を示す概略平面図。
【図10】図8の製造方法による電極膜の膜構造を示し、(a)励振電極の領域の膜構造の概略断面図、(b)励振電極以外の領域の膜構造の概略断面図。
【図11】図8の製造方法による電極膜の熱処理後の膜構造を示し、(a)励振電極の領域の膜構造の概略断面図、(b)励振電極以外の領域の膜構造の概略断面図。
【図12】図8の製造方法による電極膜の銅やAl成分が拡散する原理を示す概略断面図。
【図13】本発明の水晶振動片の製造方法の第3の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図14】図13の製造方法により製造される水晶振動片を示す概略平面図。
【図15】(a)図13の製造方法による電極膜の引き出し電極の領域の膜構造の概略断面図、(b)その励振電極の領域の膜構造の概略断面図、(c)図13の製造方法による熱処理後の電極膜の引き出し電極の領域の膜構造の概略断面図、(d)その励振電極の領域の膜構造の概略断面図。
【図16】本発明の各実施形態の製造方法を利用したサンプルの製造条件と比較例のサンプルの製造条件を示す表。
【図17】図16の各サンプルの性能を比較した表。
【図18】従来の水晶振動片の製造方法を説明するためのフローチャート。
【図19】従来の水晶振動片の電極膜の構造を示し、(a)製造時の膜構造を示す概略断面図、(b)製造後の熱的影響による電極膜構造の変化を示す概略断面図。
【図20】従来の水晶振動片の製造後の熱的影響による周波数変化の様子を示すグラフ。
【図21】従来の水晶振動片の製造後の熱的影響による半田成分の拡散の様子を示す概略断面図。
【符号の説明】
10 水晶振動子
11 水晶振動片
12 パッケージ
13 接続電極
13a 引き出し電極
14 接続電極
14a 引き出し電極
15 半田
16 半田
17a 給電電極
19 励振電極
21 水晶片
22 下地層
23 中間層
24 上層(電極層)
25 電極膜

Claims (7)

  1. 水晶片の表面に駆動電圧が印加される励振電極と、この励振電極と引き出し電極を介して接続された接続電極とを備え、この接続電極に対して、外部からの駆動電圧を印加するための給電電極が接合される水晶振動片の製造方法であって、水晶ブロックを切断して得た水晶ウエハから前記水晶片を形成し、この水晶片の表面に、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと、Ag或いはAuとの混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記Ag或いはAuからなる上層とを備えた電極膜を形成し、前記電極膜の接続電極に前記給電電極を当接して半田により接合し、次いで、熱処理することにより、前記接合工程までに前記水晶片に加わった応力を緩和すると共に、前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させて、この上層の表面に析出させ、さらに、前記電極膜の表面に対して、質量増加または質量削減処理を行うことで周波数調整することを特徴とする、水晶振動片の製造方法。
  2. 水晶片の表面に駆動電圧が印加される励振電極と、この励振電極と引き出し電極を介して接続された接続電極とを備え、この接続電極に対して、外部からの駆動電圧を印加するための給電電極が接合される水晶振動片の製造方法であって、水晶ブロックを切断して得た水晶ウエハから前記水晶片を形成し、この水晶片の表面に、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと、Ag或いはAuとの混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記Ag或いはAuからなる上層とを備えた電極膜を形成し、前記電極膜の接続電極に前記給電電極を当接して半田により接合し、さらに、少なくとも前記励振電極上に、Alによる最表面層を形成し、次いで、熱処理することにより、前記接合工程までに前記水晶片に加わった応力を緩和し、かつ、前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させてこの上層の表面に析出させると共に、前記最表面層のAlを前記上層に拡散させ、さらに、前記電極膜の表面に対して、質量増加または質量削減処理を行うことで周波数調整することを特徴とする、水晶振動片の製造方法。
  3. 水晶片の表面に駆動電圧が印加される励振電極と、この励振電極と引き出し電極を介して接続された接続電極とを備え、この接続電極に対して、外部からの駆動電圧を印加するための給電電極が接合される水晶振動片の製造方法であって、水晶ブロックを切断して得た水晶ウエハから前記水晶片を形成し、この水晶片の表面に、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、下地層の上に設けられ、Cuと、Ag或いはAuとの混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記Ag或いはAuからなる上層とを備えた電極膜を形成し、前記電極膜の接続電極に前記給電電極を当接して半田により接合し、さらに、少なくとも前記引出し電極上に、Alによる最表面層を形成し、次いで、熱処理することにより、前記接合工程までに前記水晶片に加わった応力を緩和し、かつ、前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させてこの上層の表面に析出させると共に、前記最表面層のAlを前記上層に拡散させ、さらに、前記電極膜の表面に対して、質量増加または質量削減処理を行うことで周波数調整することを特徴とする、水晶振動片の製造方法。
  4. 前記下地層の膜厚が5nm以上、30nm以下で、前記中間層のCuと、Ag或いはAuとの混合比が、Cuの原子比で30パーセント以上、60パーセント以下であり、前記上層の膜厚が20nm以上、180nm以下であり、前記上層と中間層を合わせた膜厚が100nm以上、500nm以下であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の水晶振動片の製造方法。
  5. 前記最表面層の膜厚が、5nm以上、30nm以下であることを特徴とする、請求項2ないし4のいずれかに記載の水晶振動片の製造方法。
  6. 前記熱処理の温度が摂氏200度以上摂氏300度以下で、処理時間が2分以上1.5時間以下であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の水晶振動片の製造方法。
  7. パッケージ内の水晶振動片が収容されて封止された水晶デバイスであって、前記水晶振動片は、その表面に駆動電圧が印加される励振電極と、この励振電極と引き出し電極を介して接続された接続電極とを備え、この接続電極に対して、外部からの駆動電圧を印加するための給電電極が半田により接合されており、
    前記励振電極、引き出し電極、及び接続電極を構成する各電極膜は、Ti、Cr、Niのうちの1種よりなる下地層と、この下地層の上に設けられ、Cuと、Ag或いはAuとの混合層でなる中間層と、この中間層の上に設けられ、前記Ag或いはAuからなる上層とを備えた電極膜と、を備え、
    前記中間層の材料成分を前記上層に拡散させて、この上層の表面に析出させ、さらに、前記電極膜の表面に対して、質量増加または質量削減処理を行うことで周波数調整した構成を備えていることを特徴とする、水晶デバイス。
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