JP3901832B2 - キノリノン誘導体製剤、及びその製造法 - Google Patents
キノリノン誘導体製剤、及びその製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定性及び生体吸収性に優れるキノリノン誘導体製剤、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、特開平9−255659号公報において、化学式(I)で表される新規なキノリノン誘導体が毒性が低く、即時型及び遅延型アレルギーの両者に有効で、抗アレルギー剤として極めて有用であることを報告した。
【0003】
また、本発明者らは、日本薬剤学会第12年会講演(大宮、1997年)において、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体に、α形、β形、γ形及びδ形の4種類の結晶多形が存在すること、その生体への吸収性が異なることを報告した。しかしながら、それら4種の結晶形の安定性や、医薬品製剤として好ましい形態については明らかになっていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、医薬、特に抗アレルギー剤として有用である化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶及び/又はγ形結晶を有効成分とする、生体吸収性及び安定性に優れる、キノリノン誘導体製剤、及びその製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、エタノールから再結晶することにより得られる、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の各結晶形は粉砕することにより非晶質化し、生体吸収性が向上するが、β形結晶、γ形結晶及びδ形結晶はα形結晶に比べて生体吸収性に優れること、また、α形結晶、β形結晶、及びγ形結晶はδ形結晶に比べて安定性に優れることを見いだし、β形結晶及び/又はγ形結晶を有効成分とする医薬品製剤が生体吸収性及び安定性に優れ、最も好ましいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1) 化学式(I)
【0007】
【化3】
【0008】
で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶及び/又はγ形結晶を有効成分とし、製剤の形態が、遮光性を有する、カプセル、コーティング顆粒、コーティング錠剤、又は糖衣錠から選ばれる剤形であることを特徴とするキノリノン誘導体製剤、
【0009】
(2) β形結晶及び/又はγ形結晶が、エタノールからの再結晶により得られることを特徴とする(1)に記載のキノリノン誘導体製剤、
【0011】
(3) 化学式(I)
【0012】
【化4】
【0013】
で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶及び/又はγ形結晶を用い、遮光性を有する、カプセル、コーティング顆粒、コーティング錠剤、又は糖衣錠から選ばれる剤形に製剤することを特徴とする、キノリノン誘導体製剤の製造法、及び、
【0014】
(4) β形結晶及び/又はγ形結晶が、エタノールからの再結晶により得られることを特徴とする(3)に記載のキノリノン誘導体製剤の製造法を含むものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の化学式(I)で表されるキノリノン誘導体は、毒性が低く、即時型及び遅延型アレルギー疾患の両者に有効で、抗アレルギー剤として極めて有用な化合物であることが、本発明者らによって見いだされ、既に特開平9−255659号公報に記載されている。
【0016】
しかしながら、更なる研究の結果、該キノリノン誘導体には、4種の結晶形が存在すること、その4種の結晶形は、各々生体への吸収性や安定性が異なることが解明された。本発明で言う4種の結晶形とは、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のα形結晶、β形結晶、γ形結晶及びδ形結晶の4種類の結晶形を言い、これらは各々、粉末X線回折測定、及び示差走査熱量分析(DSC)により特定される。
【0017】
図1に、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の各結晶を、Cu−Kα線、40kV、30mA、2〜60゜の条件で測定した粉末X線回折図を示す。図1の横軸は角度、2θ(degree)を、縦軸は強度(cps)を示す。図1中の1(α)はα形結晶の粉末X線回折図を、2(β)はβ形結晶の粉末X線回折図を、3(γ)はγ形結晶の粉末X線回折図を、4(δ)はδ形結晶の粉末X線回折図を各々示す。
【0018】
図1から明らかなように、Cu−Kα線、40kV、30mA、2〜60゜の条件で粉末X線回折を測定した場合は、α形結晶は7.14°、10.1°、22.8°、及び7.14°に、β形結晶は7.62°、8.84°、17.8°、及び22.8°に、γ形結晶は7.68°、8.88°、11.8°、13.2°、及び22.9°に、δ形結晶は5.74°、11.6°、13.2°、16.0°、20.4°、23.9°、及び26.6°に各結晶形を特徴づける回折ピークを示す。
【0019】
また、図2に昇温速度20℃/min、測定範囲50〜250℃で測定した各結晶形のDSC曲線図を示す。図2の横軸は温度(℃)を、縦軸は吸熱(mW)を示す。図2中の5(α)はα形結晶のDSC曲線図を、6(β)はβ形結晶のDSC曲線図を、7(γ)はγ形結晶のDSC曲線図を、8(δ)はδ形結晶のDSC曲線図を各々示す。
【0020】
図2から明らかなように、昇温速度20℃/min、測定範囲50〜250℃の条件で示差走査熱量分析(DSC)測定した場合は、α形結晶は187℃付近に、β形結晶は151℃付近に、γ形結晶は142℃付近に、δ形結晶は117℃付近に、各結晶形を特徴づける吸熱ピークを示す。
【0021】
本発明では、Cu−Kα線、40kV、30mA、2〜60゜の条件での粉末X線回折で、7.14°、10.1°、22.8°、及び7.14°付近に特徴的な回折ピークを示し、また昇温速度20℃/min、測定範囲50〜250℃の条件での示差走査熱量分析(DSC)測定で、187℃付近に特徴的な吸熱ピークを示す結晶をα形結晶と称し、上記条件での粉末X線回折で、7.62°、8.84°、17.8°、及び22.8°付近に特徴的な回折ピークを示し、また上記条件でのDSC測定で、151℃付近に特徴的な吸熱ピークを示す結晶をβ形結晶と称し、
【0022】
また上記条件での粉末X線回折で、7.68°、8.88°、11.8°、13.2°、及び22.9°付近に特徴的な回折ピークを示し、また上記条件でのDSC測定で、142℃付近に特徴的な吸熱ピークを示す結晶をγ形結晶と称し、上記条件での粉末X線回折で、5.74°、11.6°、13.2°、16.0°、20.4°、23.9°、及び26.6°付近に特徴的な回折ピークを示し、また上記条件でのDSC測定で、117℃付近に特徴的な吸熱ピークを示す結晶をδ形結晶と称する。
【0023】
しかしながら、これらの結晶の粉末X線回折測定の回折ピークや、示差走査熱量分析(DSC)の吸熱ピークは、これらの結晶の結晶化度により影響を受け、若干変化する傾向がある。この為に、本発明においては、これらの結晶の回折ピーク位置や吸熱ピーク位置は付近との表現で記載する。
【0024】
また、結晶化度は、結晶を機械的に粉砕することにより影響を受け、その結果、各結晶に特徴的な、粉末X線回折測定の回折ピークや、示差走査熱量分析(DSC)の吸熱ピークも影響を受けるので注意を要する。
【0025】
各結晶形を粉砕して得た各結晶粉砕物を、同様の条件で測定した粉末X線回折図を1例として、図3に示す。各結晶粉砕物は、結晶化度の低下により、粉砕前の各結晶形の粉末X線回折図に比べ、いずれも回折ピーク強度が著しく減少している。また図4に各結晶粉砕物を、同様の条件で測定したDSC曲線図を示す。
【0026】
α形結晶粉砕物では、124℃付近に非晶質部分の結晶化に伴う発熱ピークとα形結晶の吸熱ピークを認め、また、β形結晶粉砕物、γ形結晶粉砕物、及びδ形結晶粉砕物では、各結晶形の吸熱ピークが非常に小さくなり、結晶転移と推定される発熱ピークとα形結晶と同一温度の吸熱ピークが認められる。従って、いずれの結晶も粉砕により、結晶化度が著しく低下し、各結晶形に非晶質化の起きていることが認められる。
【0027】
次に、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の種々の結晶形及びその粉砕物の生体への吸収性を、ラットにおける吸収実験から得られた最高血漿中濃度(Cmax)及び血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)により評価することにより、生体吸収性に優れる結晶形を求めた。この結果、β形結晶、γ形結晶、及びδ形結晶及びそれらの粉砕物は、α形結晶及びその粉砕物に比べて、Cmax値及びAUC値が共に高く、生体への吸収性に優れていることが判った。
【0028】
従って、生体への吸収性の観点からは、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の製剤は、β形結晶、γ形結晶、及びδ形結晶及びそれらの粉砕物のいずれか、又はそれらの混合物を用いて製造されることが好ましく、α型結晶は好ましくない。また、ここで用いるβ形、γ形、及びδ形結晶は、粉砕されている方が生体への吸収性は増加するが、必ずしも粉砕されていなくても良い。
【0029】
更に、実施例に示すように、本発明のキノリノン誘導体の各結晶形の安定性を6ヶ月間の光安定性試験により評価した。その結果、各結晶形は経時的に次第に含量が低下し、光に対して不安定な傾向にあることが明らかとなった。特に、δ形結晶が他の結晶形に比べて著しく不安定であり、これに対して、α形結晶、β形結晶、及びγ形結晶は比較的、安定性に優れていることが明らかとなった。
【0030】
従って、生体吸収性に優れる観点からは、β形結晶、γ形結晶、及びδ形結晶が好ましい結晶形として選択されたが、更に、安定性、特に光安定性の観点から選択することにより、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の製剤には、生体吸収性と保存安定性に優れる、β形結晶及び/又はγ形結晶を用いることが、キノリノン誘導体製剤として好ましい。尚、ここで用いるβ形結晶及び/又はγ形結晶は粉砕されていても、いなくても良い。
【0031】
β形結晶とγ形結晶は、いずれも化学式(I)で表されるキノリノン誘導体をエタノールを再結晶溶媒として、公知慣用の再結晶法により再結晶させ、次いで減圧乾燥してエタノールを除去することにより、各々の結晶形もしくは両結晶の混合物として得ることができる。β形結晶は、エタノール再結晶化後、比較的低温、即ち、0℃〜60℃、好ましくは30℃〜50℃で減圧乾燥して、エタノールを除去することにより得られる。
【0032】
また、γ形結晶はエタノール再結晶化後、比較的高温、即ち、60℃〜110℃、好ましくは、70℃〜90℃で減圧乾燥して、エタノールを除去することにより得られる。各々の結晶形を選択的に得る場合には、各々の結晶形に適した乾燥温度を選択して減圧乾燥を行えばよい。
【0033】
本発明に用いられる化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶及び/又はγ形結晶は、必ずしもエタノールからの再結晶法で得られるものに限定されるわけではなく、他の方法により得られるβ形結晶及び/又はγ形結晶も問題なく用いることができる。
【0034】
例えば、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体を塩化メチレン5とエタノール1の混合溶剤に溶解後に、ヘキサンを加えてキノリノン誘導体を析出させる方法によってもγ形結晶を得ることができ、該結晶も本発明に特に問題なく用いることができる。
【0035】
化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶及び/又はγ形結晶を有効成分とする医薬品製剤は、経口(内服又は吸入)又は非経口投与(例えば静脈内投与、皮下投与、経皮投与又は直腸内投与等)することができ、投与に際してはそれぞれの投与法に適した製剤形態に調製することができる。
【0036】
かかる製剤は、その用途に応じて錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、トローチ剤、舌下錠、坐剤、軟膏剤、注射剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、エアゾール剤等の製剤形態に調製することができる。
【0037】
特に好ましい製剤形態は、遮光性を有するカプセル、コーティング顆粒、コーティング錠剤、及び糖衣錠である。これらの調製に際しては、例えばこの種の薬剤に通常使用されている無毒の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、等張化剤、緩衝剤、コーティング剤、矯味剤、溶解補助剤、基剤、分散剤、安定化剤、着色剤等の添加剤を使用して公知の方法により製剤化することができる。これらの無毒性の添加剤の具体例を以下に列挙する。
【0038】
賦形剤としては、でんぷん及びその誘導体(デキストリン、カルボキシメチルスターチ等)、セルロース及びその誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、糖類(乳糖、白等、ブドウ糖等)、ケイ酸及びケイ酸塩類(天然ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等)、水酸化アルミニウム・マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、ポリオキシエチレン誘導体、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0039】
結合剤としては、でんぷん及びその誘導体(アルファー化デンプン、デキストリン等)、セルロース及びその誘導体(エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、糖類(ブドウ糖、白糖等)、エタノール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0040】
崩壊剤としては、でんぷん及びその誘導体(カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ等)、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム等)、トラガント、ゼラチン、寒天等が挙げられる。
【0041】
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸及びその塩類(軽質無水ケイ酸、天然ケイ酸アルミニウム等)、酸化チタン、リン酸水素カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、マクロゴール等が挙げられる。
【0042】
保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、リン酸塩類(リン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等)、アルコール(クロロブタノール、ベンジルアルコール等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸グリセリン、糖類等が挙げられる。
【0043】
酸化防止剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)、ロンガリット、エリソルビン酸、L−アスコルビン酸、システイン、チオグリセロール、ブチルヒドロキシアニゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、dl−αートコフェロール等が挙げられる。
【0044】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、デキストリン、グリセリン、ブドウ糖等が挙げられる。また緩衝剤としては、炭酸ナトリウム、塩酸、ホウ酸、リン酸塩(リン酸水素ナトリウム等)等が挙げられる。
【0045】
コーティング剤としては、白糖、タルク、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)、セラック、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン類(ポリ−2−ビニルピリジン、ポリ−2−ビニル−5−エチルピリジン等)、ポリビニルアセチルジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタアクリレート・メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0046】
着色剤としては、食用タール色素(食用赤色2号、3号;黄色4号、5号;青色1号、2号)、酸化鉄、酸化チタン、βーカロチン、クロロフィル、レーキ色素等が挙げられる。矯味剤としては、糖類(ブドウ糖、白糖、乳糖等)、サッカリンナトリウム、糖アルコール類等が挙げられる。
【0047】
溶解補助剤としては、エチレンジアミン、ニコチン酸アミド、サッカリンナトリウム、クエン酸、クエン酸塩類、安息香酸ナトリウム、石鹸類、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン、ポリプレングリコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0048】
基剤としては、脂肪類(豚脂等)、植物油(オリーブ油、ゴマ油等)、動物油、ラノリン酸、ワセリン、パラフィン、ロウ、樹脂、ベントナイト、グリセリン、グリコール油、高級アルコール類(ステアリルアルコール、セタノール等)等が挙げられる。
【0049】
分散剤として、アラビアゴム、トラガント、セルロース誘導体(メチルセルロース等)、ステアリン酸ポリエステル類、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0050】
また、かかる製剤中における化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶及び/又はγ形結晶の含有量は、その剤形に応じて異なるが、一般に0.01〜100重量%の濃度で含有していることが望ましい。投与量は、対象とする人間をはじめとする温血動物の種類、症状の軽重、医師の診断等により広範囲に変えることができるが、一般に有効成分として、経口投与の場合、体重1kg当たり1日に0.01〜50mg、好ましくは、0.05〜10mg、非経口投与の場合は、体重1kg当たり1日に0.01〜10mg、好ましくは、0.05〜5mg投与することが好ましい。
【0051】
また、上記投与量は1日1回又は数回に分けて投与することができ、患者の症状の軽重、医師の診断に応じて適宜変えることができる。本発明の化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶及び/又はγ形結晶を有効成分とする製剤は、優れた生体への吸収性及び安定性を有し、該キノリノン誘導体の製剤、特にアレルギー性疾患の治療用の製剤として極めて有用である。
【0052】
【実施例】
次に、実施例及び参考例により本発明を更に詳細に説明するが、もとより本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0053】
(粉末X線回折測定法)
理学電機製RINT Ultimaを用い、Cu−Kα線、40kV、30mAの条件で、2〜60゜の範囲で、常法により測定した。
【0054】
(示差走査熱量分析(DSC)法、)
Perkin Elmer社製DSC7を用い、昇温速度20℃/minの条件で、50〜250℃の範囲で、常法により測定した。
【0055】
(参考例1)α形結晶
窒素雰囲気下、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体1.00gにアセトニトリル80mLを加え、50℃にて2時間攪拌した。これを5℃に冷却し、1時間攪拌した後、結晶を室温にて減圧乾燥し、α形結晶966mgを得た。粉末X線回折測定結果を図1の1(α)に、DSC分析結果を図2の5(α)に示す。DSCの吸熱ピークは187℃に認められた。
【0056】
(参考例2)β形結晶
窒素雰囲気下、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体1.00gにエタノール8mLを加え、加熱還流し溶解した。これを室温に冷却し、1時間攪拌した後、結晶を30〜50℃にて減圧乾燥し、β形結晶959mgを得た。粉末X線回折測定結果を図1の2(β)に、DSC分析結果を図2の6(β)に示す。DSCの吸熱ピークは150℃に認められた。
【0057】
(参考例3)γ形結晶
窒素雰囲気下、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体1.00gに塩化メチレン10mL及びエタノール2mLを加え溶解した。これにヘキサン25mLを加え1時間攪拌した後、結晶を室温にて減圧乾燥し、γ形結晶953mgを得た。粉末X線回折測定結果を図1の3(γ)に、DSC分析結果を図2の7(γ)に示す。DSCの吸熱ピークは142℃に認められた。
【0058】
(参考例4)δ形結晶
窒素雰囲気下、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体1.00gにアセトン35mLを加え、50℃にて1時間攪拌した。これを5℃に冷却し、1時間攪拌した後、結晶を室温にて減圧乾燥し、δ形結晶909mgを得た。粉末X線回折測定結果を図1の4(δ)に、DSC分析結果を図2の8(δ)に示す。DSCの吸熱ピークは117℃に認められた。
【0059】
(参考例5)γ形結晶
窒素雰囲気下、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体1.00gにエタノール8mLを加え、加熱還流し溶解した。これを室温に冷却し、1時間攪拌した後、結晶を70〜90℃にて減圧乾燥し、γ形結晶961mgを得た。粉末X線回折測定結果及びDSC分析結果は参考例3で得たγ形結晶のものと同一であった。
【0060】
(参考例6)各結晶形の粉砕物
自動メノウ乳鉢を用いて、上記の結晶形を各々10分間粉砕して得た各結晶粉砕物を、上記と同様のCu−Kα線、40kV、30mA、2〜60゜の条件で測定した粉末X線回折図を例として、図3に示す。図3の横軸は角度、2θ(degree)を、縦軸は強度(cps)を示す。
【0061】
図3中の9(α)はα形結晶粉砕物の粉末X線回折図を、10(β)はβ形結晶粉砕物の粉末X線回折図を、11(γ)はγ形結晶粉砕物の粉末X線回折図を、12(δ)はδ形結晶粉砕物の粉末X線回折図を各々示す。各結晶の粉砕物は、結晶化度の低下により、粉砕前の各結晶形の粉末X線回折図に比べ、いずれも回折ピーク強度が著しく減少している。
【0062】
また、図4に各結晶粉砕物を、上記と同様の、昇温速度20℃/min、測定範囲50〜250℃の条件で測定したDSC曲線図を示す。図4の横軸は温度(℃)を、縦軸は吸熱(mW)を示す。図4中の13(α)はα形結晶粉砕物のDSC曲線図を、14(β)はβ形結晶粉砕物のDSC曲線図を、15(γ)はγ形結晶粉砕物のDSC曲線図を、16(δ)はδ形結晶粉砕物のDSC曲線図を各々示す。
【0063】
α形結晶粉砕物では、124℃付近に非晶質部分の結晶化に伴う発熱ピークとα形結晶の吸熱ピークを認め、また、β形結晶粉砕物、γ形結晶粉砕物、及びδ形結晶粉砕物では、各結晶形の吸熱ピークが非常に小さくなり、それぞれ170℃、157℃、及び144℃付近に結晶転移と推定される発熱ピークとα形結晶と同一温度の吸熱ピークが認められる。従って、いずれの結晶も粉砕により、結晶化度が著しく低下し、各結晶形に非晶質化の起きていることが認められた。
【0064】
(実施例1)ラットにおける吸収性試験
化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の各結晶形、及びそれらの粉砕物についてラットを用いて生体への吸収性の比較を行った。尚、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の各結晶形の粉砕は、自動メノウ乳鉢を用いて、それぞれ10分間粉砕した。
【0065】
以下に試験方法を説明する。
16時間絶食したSD系雄性ラット(6週齡)3匹に、試料100mg/kgを胃ゾンデを用いて1回経口投与した。試料は0.5%メチルセルロース水溶液に懸濁し、100mg/5mLの濃度に調製し投与した。投与後、経時的にヘパリン処理したガラス管を用いて尾静脈より採血し、得られた血漿中のキノリノン誘導体濃度をHPLC法により定量した。
【0066】
各採血時点のキノリノン誘導体の定量値から最高血漿中濃度(Cmax)及び血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)を求めた。その結果を表1に示す。
尚、Cmaxは実測値より求め、AUCは測定時点までは台形公式により算出し、以後は消失速度定数を用いて算出した。比較例として、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の各結晶形のCmax、AUCを記載する。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、β形結晶、γ形結晶、及びδ形結晶及びその粉砕物はα形結晶及びその粉砕物に比べ、Cmax値及びAUC値が高く、吸収性に優れていることが判る。また、粉砕されていても、いなくても、β形結晶、γ形結晶、及びδ形結晶はα形結晶に比べて、吸収性に優れている。
【0069】
(実施例4)光安定性試験
透明な気密容器に、窒素雰囲気下に化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の各結晶形を0.5gづつ充填し、室温にて直射日光下で6カ月間保存した。
経時的に、HPLC法により化学式(I)で表されるキノリノン誘導体の各結晶形の含量を定量した。その結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2に示すように、各結晶形は経時的に含量が低下し、光に対して不安定な傾向を示した。特に、δ形結晶は6ヶ月経過時の含量が57.3%になり、他の結晶形と比べ、非常に不安定であることが判明した。また、α形結晶、β形結晶、及びγ形結晶はδ形結晶に比べ、比較的安定であることが明らかである。
【0072】
(実施例5)コーティング顆粒剤
コーティング顆粒剤の製造例を以下に示す。
【0073】
【0074】
乳鉢内で、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶を等量のでんぷんと混合粉砕した。これに乳糖、でんぷんの残分を加え混合した。別にゼラチン300mgに精製水10mLを加えて、加熱溶解し、冷後かき混ぜながらこれにエタノール10mLを加え、ゼラチン液としたものを調製し、先の混合物にゼラチン液を添加練合し、造粒した後、乾燥して整粒し、顆粒剤とし、上記コーティング液15gを用い、常法によりコーティングして、コーティング顆粒剤を製造した。
【0075】
(実施例6)コーティング錠剤
コーティング錠剤の製造例を以下に示す。
【0076】
【0077】
上記配合の30倍量を用いて製造した。即ち、化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のγ形結晶150mgの結晶を乳鉢内で粉砕し、それに乳糖及びでんぷんを加え混合した。10%でんぷんのりを上記の配合体に加えて練合し、造粒した。乾燥後、タルク及びステアリン酸マグネシウムを混合し、常法により打錠して素錠とし、上記のコーティング液1.8gを用いて常法によりコーティングして、コーティング錠剤を製造した。
【0078】
(実施例7)(コーティング錠剤)
コーティング錠剤の製造例を以下に示す。
【0079】
【0080】
上記記載の30倍量を用いて製造した。即ち、ヒドロキシプロピルセルロース6gを適量のエタノールに溶解し、これに乳糖94gを添加して練合した。少し乾燥した後、60号ふるいにて整粒し、6%ヒドロキシプロピルセルロース乳糖とした。またステアリン酸マグネシウムとタルクを1:4の割合で混合しステアリン酸タルクとした。
【0081】
化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のγ形結晶、6%ヒドロキシプロピルセルロース乳糖、ステアリン酸タルク及びバレイショデンプンをよく混合し、常法により打錠して、素錠とし、上記コーティング液1.5gを用い常法によりコーティングして、コーティング錠剤を製造した。
【0082】
(実施例8)糖衣錠
糖衣錠の製造例を以下に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
上記化合物の各々300倍量を用いて製造した。即ち、乳鉢内で18gの化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶を粉砕し、それに乳糖及びコーンスターチを加えながら充分混合した。ヒドロキシプロピルセルロースに適量の精製水を加え、上記の混合物に添加練合し造粒した。
【0089】
乾燥後、タルク及びステアリン酸マグネシウムを混合し、常法により打錠して、素錠とし、上記のサブコーティング液1.00g、スムージング液1.73g、カラーリング液0.97g、フィニシング液0.97gを用い、常法によりサブコーティング、スムージング、カラーリング、フィニシング、ポリシング工程を経て、糖衣錠を製造した。
【0090】
(実施例9)10mgカプセル剤
カプセル剤の製造例を以下に示す。
【0091】
実施例5と同様の方法で顆粒を製造し、該顆粒100mgづつを遮光性を有するカプセルに充填して、カプセル剤を製造した。
【0092】
【発明の効果】
本発明は、医薬、特に抗アレルギー剤として有用である化学式(I)で表されるキノリノン誘導体のβ形結晶及び/又はγ形結晶を有効成分とする、生体吸収性及び安定性に優れる、キノリノン誘導体製剤、及びその製造法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 キノリノン誘導体の4種の結晶形の粉末X線回折図の模式図である。1(α)はα形結晶、2(β)はβ形結晶、3(γ)はγ形結晶、4(δ)はδ形結晶の粉末X線回折図である。
【図2】 キノリノン誘導体の4種の結晶形のDSC曲線図の模式図である。5(α)はα形結晶、6(β)はβ形結晶、7(γ)はγ形結晶、8(δ)はδ形結晶のDSC曲線図である。
【図3】 キノリノン誘導体の4種の結晶粉砕物の粉末X線回折図の模式図である。9(α)はα形結晶粉砕物、10(β)はβ形結晶粉砕物、11(γ)はγ形結晶粉砕物、12(δ)はδ形結晶粉砕物の粉末X線回折図である。
【図4】 キノリノン誘導体の4種の結晶粉砕物のDSC曲線図の模式図である。13(α)はα形結晶粉砕物、14(β)はβ形結晶粉砕物、15(γ)はγ形結晶粉砕物、16(δ)はδ形結晶粉砕物のDSC曲線図である。
Claims (4)
- β形結晶及び/又はγ形結晶が、エタノールからの再結晶により得られることを特徴とする請求項1に記載のキノリノン誘導体製剤。
- β形結晶及び/又はγ形結晶が、エタノールからの再結晶により得られることを特徴とする請求項3に記載のキノリノン誘導体製剤の製造法。
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