JP3900592B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気加熱源として温水式暖房装置の他に補助暖房装置(補助電気ヒータ等)を組み合わせる車両用空調装置に関するものであって、特に、空調ケース内通路を内気側の第1空気通路と外気側の第2空気通路とに区画形成することにより、フット開口部からは暖められた高温内気を再循環して吹き出し、一方、デフロスタ開口部からは低湿度の外気を吹き出す、いわゆる内外気2層流モードが設定可能な車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の内外気2層流モードが設定可能な車両用空調装置は、特開平5−124426号公報等にて知られており、この従来技術の概要を説明すると、空調ケースの一端側に内気吸入口および外気吸入口が形成され、他端側にはフット開口部、デフロスタ開口部、およびフェイス開口部がそれぞれ形成されている。
【0003】
そして、この空調ケース内に、上記内気吸入口から上記フェイス開口部およびフット開口部にかけての第1空気通路と、上記外気吸入口から上記デフロスタ開口部にかけての第2空気通路とを区画形成する仕切り板が設けられている。
さらに、上記両空気通路内には、暖房用熱交換器、この暖房用熱交換器をバイパスするバイパス通路、およびエアミックスドアがそれぞれ設けられた構成となっている。
【0004】
そして、吹出モードとしてフェイスモード、バイレベルモード、およびフットモードのいずれかが選択されたときは、そのときの内外気モードが内気循環モードであれば、上記両空気通路内に内気を導入し、外気導入モードであれば、上記両空気通路内に外気を導入する。また、吹出モードとしてデフロスタモードが選択されたときは、上記両空気通路内に外気を導入する。
【0005】
さらに、吹出モードとしてフットデフロスタモードが選択されたときは、第1空気通路内に内気を導入し、第2空気通路内に外気を導入する2層流モードとする。これによって、既に温められている内気を再循環してフット開口部から吹き出して車室内を暖房できるので、車室内への吹出空気温度が高くなり、暖房性能を向上できる。これと同時に、デフロスタ開口部からは低湿度の外気を窓ガラスへ吹き出すので、窓ガラスの防曇性能を確保できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、車両エンジンの高効率化により車両暖房用の熱源である温水(エンジン冷却水)の温度が低下する傾向にあり、この温水温度の低下により暖房能力が不足することが大きな課題となっている。しかるに、上記従来技術では、このような暖房能力不足に対して十分対応できない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は上記点に鑑みて、内外気2層流モードが設定可能な車両用空調装置において、補助暖房熱源の追加により暖房能力不足を解消することを目的とする。
また、本発明は、この種の内外気2層流式の車両用空調装置において、内気側通路と外気側通路間での吹出空気温度差を補助暖房熱源の設置形態により所望の値に設定できるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
冬期の暖房時に温水温度が低いときに用いられる補助暖房装置(補助電気ヒータ等)に注目して、本発明では、この補助暖房装置の設置形態を工夫して、上記目的を達成しようとするものである。
すなわち、請求項1〜8記載の発明では、温水熱源の暖房用熱交換器(13)を内気側の第1空気通路(8、80)と、外気側の第2空気通路(9、90)の両方に跨がって配置するとともに、
温水熱源の暖房用熱交換器(13)の空気下流側において、補助暖房装置(16)を内気側の第1空気通路(8、80)と、外気側の第2空気通路(9、90)の両方に跨がって配置することを特徴している。
【0009】
これによると、フット開口部(25)とデフロスタ開口部(19)の両方を同時に開口する吹出モードにおいて、内外気切替手段(2、2a、3、4、5)により内外気2層流モードが選択されたときは、内気を第1空気通路(8、80)を通して暖房用熱交換器(13)で加熱した後にフット開口部(25)から吹き出させるとともに、外気を第2空気通路(9、90)を通して暖房用熱交換器(13)で加熱した後にデフロスタ開口部(19)から吹き出させることができる。
【0010】
しかも、その際に、補助暖房装置(16)からの放熱により第1空気通路(8、80)の内気および第2空気通路(9、90)の外気をともに加熱できるので、温水温度が低いときにも暖房能力および窓ガラスの防曇性能を効果的に向上できる。
さらには、補助暖房装置(16)を内気側の第1空気通路(8、80)と、外気側の第2空気通路(9、90)の両方に跨がって配置することにより、内外気2層流モード以外の全外気モード、および全内気モードのいずれでも、補助暖房装置(16)からの放熱により暖房能力および窓ガラスの防曇性能を向上できるとともに、補助暖房装置(16)の第1、第2空気通路への設置面積を選択することにより、第1、第2空気通路の吹出空気温度差を簡単に所望の値に設定できる。
【0011】
例えば、請求項5記載の発明のように、補助暖房装置(16)のうち、第1空気通路(8、80)内に位置する面積を、第2空気通路(9、90)内に位置する面積より大きくすれば、補助暖房装置(16)の第1空気通路(8、80)内への放熱量を第2空気通路(9、90)内への放熱量より大きくすることができる。
【0012】
第1空気通路(8、80)内を流れる内気の温度は元々第2空気通路(9、90)内を流れる外気温度よりも高いので、これに上記放熱量の差が加わることにより、第1空気通路内を流れる内気の吹出温度(フット吹出温度)を第2空気通路を流れる外気の吹出温度(デフロスタ吹出温度)より十分高くすることができる。従って、乗員足元部への暖房能力を優先的に高めることができる。
【0013】
また、逆に、請求項6記載の発明のように、補助暖房装置(16)のうち、第1空気通路(8、80)内に位置する面積を、第2空気通路(9、90)内に位置する面積より小さくすれば、補助暖房装置(16)の第1空気通路(8、80)内への放熱量よりも第2空気通路(9、90)内への放熱量を大きくすることができる。
【0014】
従って、第1空気通路内を流れる内気温度が第2空気通路を流れる外気温度より高くても、第1、第2両空気通路の吹出空気温度を同等の温度に設定して、吹出空気温度差をなくすこともできる。従って、外気の吹出温度(デフロスタ吹出温度)を高くして、窓ガラスの防曇性能を優先的に高めることができる。
また、請求項2記載の発明では、温水熱源の暖房用熱交換器(13)を、第1空気通路(8、80)および第2空気通路(9、90)のいずれか一方から他方に向かって温水が流れる一方向流れタイプとして構成することを特徴としている。
【0015】
これによると、暖房用熱交換器(13)は温水が一方向流れ(全パス)タイプであるため、温水流路が低圧損であるとともに、暖房用熱交換器(13)の幅方向(チューブ配列方向)の吹出温度差がないという利点がある。その反面、暖房用熱交換器(13)の温水流れ方向が一方向であるため、温水出口側では温水温度の低下により吹出空気温度が低下することになるが、温水出口側の空気通路への補助暖房装置(16)の設置面積割合を増加させれば、温水出口側での吹出空気温度低下を補助暖房装置(16)の放熱量で相殺することができる。
【0016】
また、請求項3記載の発明のように、暖房用熱交換器(13)を、第1空気通路(8、80)側から第2空気通路(9、90)側に向かって温水が流れるように構成すれば、暖房用熱交換器(13)の吹出側において、第1空気通路(8、80)側の吹出空気温度を高くし、第2空気通路(9、90)側の吹出空気温度を低くすることができる。
【0017】
従って、全外気モードにおいて、第1空気通路(8、80)からのフット吹出温度よりも第2空気通路(9、90)からのデフロスタ吹出温度を低くすることができるので、車室内温度分布を頭寒足熱形の快適な状態とすることができる。同様に、全外気または全内気によるバイレベルモードにおいても、第1空気通路(8、80)からの空調空気をフット開口部(25)から吹き出すとともに、第2空気通路(9、90)からのからの空調空気をフェイス開口部(21)から吹き出すことにより、車室内温度分布を頭寒足熱形の快適な状態とすることができる。
【0018】
請求項7記載の発明のように、補助暖房装置は補助電気ヒータ(16)により構成することができる。
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態を示すものであり、ディーゼルエンジン車のように、温水(エンジン冷却水)温度が比較的低い温度となる低熱源車に適用したものである。
空調装置通風系は、大別して、送風機ユニット1と空調ユニット100の2つの部分に分かれている。空調ユニット100部は、車室内の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されるものであり、一方、送風機ユニット1は図1の図示形態では、空調ユニット100の車両前方側に配置する状態を図示している。すなわち、空調ユニット100を車室内に配置し、送風機ユニット1はエンジンルーム内において空調ユニット100の前方位置に配置するレイアウトとしている。
【0020】
ここで、送風機ユニット1を車室内において空調ユニット100の側方(助手席側)にオフセット配置するレイアウトとすることもできる。
まず、最初に、送風機ユニット1部を具体的に説明すると、送風機ユニット1には内気(車室内空気)を導入する第1、第2の2つの内気導入口2、2aと、外気(車室外空気)を導入する1つの外気導入口3が備えられている。これらの導入口2、2a、3はそれぞれ第1、第2の2つの内外気切替ドア4、5によって開閉可能になっている。
【0021】
この両内外気切替ドア4、5は、それぞれ回転軸4a、5aを中心として回動操作される平板状のものであって、図示しないリンク機構、ケーブル等を介して、空調操作パネル(図示せず)の内外気切替用手動操作機構(レバーやダイヤルを用いた機構)に連結され、連動操作するか、あるいは、両内外気切替ドア4、5をサーボモータを用いた内外気切替用アクチュエータ機構により連動操作する。
【0022】
本例では、内気導入口2、2aと外気導入口3と内外気切替ドア4、5と上記手動操作機構またはアクチュエータ機構とにより内外気切替手段が構成されている。
そして、上記導入口2、2a、3からの導入空気を送風する第1(内気側)ファン6および第2(外気側)ファン7が、送風機ユニット1内に配置されている。この両ファン6、7は周知の遠心多翼ファン(シロッコファン)からなるものであって、1つの共通の電動モータ7bにて同時に回転駆動される。
【0023】
図1は後述する2層流モードの状態を示しており、第1内外気切替ドア4は第1内気導入口2を開放して外気導入口3からの外気通路3aを閉塞しているので、第1(内気側)ファン6の吸入口6aに内気が吸入される。これに対し、第2内外気切替ドア5は第2内気導入口2aを閉塞して外気導入口3からの外気通路3bを開放しているので、第2(外気側)ファン7の吸入口7aに外気が吸入される。
【0024】
従って、この状態では、第1ファン6は、内気導入口2からの内気を第1空気通路(内気側通路)8に送風し、第2ファン7は、外気導入口3からの外気を第2空気通路(外気側通路)9に送風するようになっており、第1、第2空気通路8、9は、第1ファン6と第2ファン7との間に配置された仕切り板10により仕切られている。この仕切り板10は、両ファン6、7を収納する樹脂製のスクロールケーシング10aに一体成形できる。
【0025】
なお、本実施形態では、第1ファン6の外径を小とし、第2ファン7の外径を大にしている。これは、第2ファン7側において、電動モータ7bの存在により吸入口7aの開口面積が減少するのを防止するためである。
次に、空調ユニット100部は空調ケース11内に蒸発器(冷房用熱交換器)12とヒータコア(暖房用熱交換器)13とを両方とも一体的に内蔵するタイプのものである。空調ケース11はポリプロピレンのような、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなり、図1の上下方向(車両上下方向)に分割面を有する複数の分割ケースからなる。この複数の分割ケース内に、上記熱交換器12、13、後述するドア等の機器を収納した後に、この複数の分割ケースを金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合することにより、空調ユニット100部が組み立てられる。
【0026】
空調ケース11内において、最も車両前方側の部位に蒸発器12が設置され、空調ケース11内の第1、第2空気通路80、90の全域を横切るように蒸発器12が配置されている。この蒸発器12は周知のごとく冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調空気から吸熱して、空調空気を冷却するものである。ここで、蒸発器12は図1に示すように、車両前後方向には薄型の形態で空調ケース11内に設置されている。
【0027】
また、空調ケース11内部の空気通路は、蒸発器12の上流部からヒータコア13の下流部に至るまで、仕切り板15a、15b、15c、15dにより車両下方側の第1空気通路(内気側通路)80と車両上方側の第2空気通路(外気側通路)90とに仕切られている。この仕切り板15a〜15dは空調ケース11に樹脂にて一体成形され、車両左右方向に略水平に延びる固定仕切り部材である。
【0028】
なお、蒸発器12は周知の積層型のものであって、アルミニュウム等の金属薄板を最中状に2枚張り合わせて構成した偏平チューブをコルゲートフィンを介在して多数積層配置し、一体ろう付けしたものである。蒸発器12の内部はコルゲートフィンのフィン面または偏平チューブの偏平面によって仕切り板15a、15bの端部の延長線上で空気通路を仕切ることができるので、蒸発器12内部でも第1空気通路80と第2空気通路90とを区画形成することができる。
【0029】
ヒータコア13は、蒸発器12の空気流れ下流側(車両後方側)に、所定の間隔を開けて隣接配置されている。このヒータコア13は、蒸発器12を通過した冷風を再加熱するものであって、その内部に高温のエンジン冷却水(温水)が流れ、この冷却水を熱源として空気を加熱するものである。このヒータコア13も蒸発器12と同様に、車両前後方向には薄型の形態で空調ケース11内に設置されている。より具体的に述べると、ヒータコア13は、仕切り板15bと15cの間において、第1空気通路80と第2空気通路90の両方に跨がって配置されている。しかも、ヒータコア13のうち、第2空気通路90側の部分はこの第2空気通路90の全域を横切るように設置され、一方、ヒータコア13のうち、第1空気通路80側の部分はこの第1空気通路80の最下方部に後述の冷風バイパス通路17を形成するように設置されている。
【0030】
なお、ヒータコア13は周知のものであって、アルミニュウム等の金属薄板を溶接等により断面偏平状に接合してなる偏平チューブをコルゲートフィンを介在して多数積層配置し、一体ろう付けしたものである。ヒータコア13内部はコルゲートフィンのフィン面または偏平チューブの偏平面によって仕切り板15b、15cの端部の延長線上で空気通路を仕切ることができ、これにより、ヒータコア13内部でも第1空気通路80と第2空気通路90とを区画形成することができる。
【0031】
本例のヒータコア13は、温水入口側タンク13aを下方の第1空気通路80側に配置するとともに、温水出口側タンク13bを上方の第2空気通路90側に配置している。そして、この両タンク13a、13bの間に上記偏平チューブおよびコルゲートフィンからなる熱交換コア部13cを構成している。従って、ヒータコア13は温水入口側タンク13aからの温水が熱交換コア部13cの偏平チューブを下方から上方への一方向に流れる一方向流れタイプ(全パスタイプ)として構成されている。
【0032】
そして、ヒータコア13に流入する温水の流量(または温水の温度)を調整する温水弁14を設けて、この温水弁14の温水流量(または温水温度)の調整作用により車室内への吹出空気温度を調整できるようにしてある。つまり、本例では、この温水弁14により車室内への吹出空気温度を調整する温度調整手段を構成している。
【0033】
ヒータコア13の空気下流側の直後の部位には補助電気ヒータ16が配置されている。この補助電気ヒータ16は、仕切り板15c、15dの間で、第1空気通路80と第2空気通路90の両方に跨がって配置されている。また、補助電気ヒータ16は図1の紙面垂直方向には第1空気通路80と第2空気通路90の幅方向全長にわたって配置されている。
【0034】
この補助電気ヒータ16は、温水温度が所定温度(例えば、75°C)以下のとき(エンジン始動直後のように温水温度の低いとき、あるいはエンジン暖機終了後でも温水温度が十分上昇しないとき)に、その発熱作用により空調空気を即効的に加熱するための補助暖房装置である。
この補助電気ヒータ16は所定温度にて抵抗値が急激に増加する正の抵抗温度特性を有する正特性サーミスタ(PTCヒータ)で構成することが安全性等の点で好ましい。
【0035】
この補助電気ヒータ16は、具体的には、チタン酸バリウムのようなセラミック材料からなるPTCヒータを空気通過用の多数の穴部を有するハニカム状に成形したものである。
図1の図示例では、第1空気通路80と第2空気通路90に対して補助電気ヒータ16の全高さの略半分づつが位置するようにしてあるが、第1空気通路80と第2空気通路90に対する補助電気ヒータ16の設置面積割合は、第1空気通路80側と第2空気通路90側との間で、所望の上下吹出温度差が得られるように設定する。例えば、第1空気通路80側の吹出温度>第2空気通路90側の吹出温度となるように補助電気ヒータ16の設置面積割合を設定する。
【0036】
次に、空調ケース11内の第1空気通路80において、ヒータコア13の下方側には、ヒータコア13をバイパスして空気(冷風)が流れる冷風バイパス通路17が形成され、この冷風バイパス通路17は最大冷房時にマックスクールドア18により開放される。
また、空調ケース11の上面部には、ヒータコア13直後の第2空気通路90に連通するデフロスタ開口部19が開口している。このデフロスタ開口部19は図示しないデフロスタダクトおよびデフロスタ吹出口を介して、車両窓ガラス内面に向けて風を吹き出すためのものである。このデフロスタ開口部19はデフロスタドア20により開閉され、このデフロスタドア20は回転軸20aにより回動自在なバタフライ状になっている。
【0037】
空調ケース11の最も車両後方側(乗員寄り)の部位には、第1空気通路80と直接連通するフェイス開口部21が開口している。このフェイス開口部21は図示しないフェイスダクトを介して計器盤上方部のフェイス吹出口より乗員頭部に向けて風を吹き出すためのものである。このフェイス開口部21はフェイスドア22により開閉され、このフェイスドア22は回転軸22aにより回動自在なバタフライ状になっている。
【0038】
前述した仕切り板15dの最も空気下流側の端部と、フェイス開口部21の入口部との間に、第1、第2空気通路80、90の間を連通する連通路23が設けてられており、この連通路23は回転軸24aにより回動自在な平板状の連通ドア24により開閉される。
また、空調ケース11の下面のうち、車両後方側の部位にはフット開口部25が開口しており、このフット開口部25は第1空気通路80においてヒータコア13および補助電気ヒータ16の空気下流側の部位と連通している。このフット開口部25は図示しないフットダクトを介してフット吹出口から車室内の乗員足元に温風を吹き出すためのものである。このフット開口部25はフットドア26により開閉され、このフットドア26は回転軸26aにより回動自在なバタフライ状になっている。
【0039】
なお、デフロスタドア20、フェイスドア22、およびフットドア26は吹出モード切替用のドア手段であって、図示しないリンク機構、ケーブル等を介して空調操作パネルの吹出モード切替用手動操作機構に連結されて、連動操作するか、あるいは、吹出モード切替用のドア手段をサーボモータを用いたモード切替用アクチュエータ機構により連動操作する。
【0040】
また、温水弁14およびマックスクールドア18は温度調整手段であって、図示しないリンク機構、ケーブル等を介して空調操作パネルの温度調整用手動操作機構に連結されて、連動操作するか、あるいは、これら温度調整手段をサーボモータを用いた温度調整用アクチュエータ機構により連動操作する。
次に、上記構成において本実施形態の作動を吹出モード別に説明する。
【0041】
(1)フット吹出モード
冬期の暖房始動時のごとく、最大暖房状態を設定するときは、内外気切替用操作機構が操作されて、2層流モードが設定される。すなわち、送風機ユニット1において、第1内外気切替ドア4が第1内気導入口2を開放し、外気導入口3からの外気通路3aを閉塞する。また、第2内外気切替ドア5が第2内気導入口2aを閉塞し、外気導入口3からの外気通路3bを開放する。
【0042】
これにより、第1送風ファン6は、内気を第1内気導入口2から吸入口6aを経て吸入し、これと同時に、第2送風ファン7は、外気を外気導入口3から外気通路3b、吸入口7aを経て吸入する。そして、第1送風ファン6により送風される内気は、第1空気通路8を通って、空調ユニット100の第1空気通路80を流れる。また、第2送風ファン7により送風される外気は、第2空気通路9を通って、空調ユニット100の第2空気通路90を流れる。
【0043】
一方、吹出モード切替用操作機構が操作されて、フットドア26はフット開口部25を開放し、フェイスドア22はフェイス開口部21を閉塞する。デフロスタドア20はデフロスタ開口部19を少量開放する。なお、2層流モードであっても、後述の理由から、連通ドア24は連通路23を全開または少量開く小開度の位置に操作される。
【0044】
一方、冬期の暖房始動時には温度調整用操作機構により温水弁14を全開させ、最大暖房状態となる。これにより、ヒータコア13に最大流量の温水が流れるとともに、マックスクールドア18は冷風バイパス路17を閉塞する。
そして、第1空気通路80を流れる内気は、蒸発器12を通過した後、ヒータコア13にて加熱されて、温風となり、フット開口部25を経て車室内の乗員足元に吹き出す。これと同時に、第2空気通路90を流れる外気は、蒸発器12を通過した後、ヒータコア13にて加熱されて、温風となり、デフロスタ開口部19を経て車両窓ガラス内面に吹き出す。この場合、第1空気通路8、80側では、外気に比して高温の内気を再循環してヒータコア13で加熱しているので、乗員足元への吹出温風温度が高くなり、暖房効果を向上できる。一方、デフロスタ開口部19からは、内気に比して低湿度の外気を加熱して吹き出しているので、窓ガラスの曇り止めを良好に行うことができる。
【0045】
また、フット吹出モードでは、通常、デフロスタ開口部19からの吹出風量を20%程度、フット開口部25からの吹出風量を80%程度の風量割合に設定するので、第2空気通路90側の外気温風を全開または小開度の連通路23を通して第1空気通路80側の内気温風の中に混入することにより、上記風量割合を達成することができる。
【0046】
次に、車室内温度が上昇して、暖房負荷が減少すると、吹出空気温度制御のため、温水弁14を全開位置(最大暖房状態)から中間開度位置に操作し、ヒータコア13に流入する温水流量を減少させる。このとき、連通ドア24は上記した全開または小開度の位置に維持されたままであり、また、マックスクールドア18も冷風バイパス通路17を閉塞したままである。
【0047】
中間温度制御域では、最大暖房能力を必要としていないため、内外気吸入モードは、通常、第1、第2の内気導入口2、2aをともに閉塞し、外気導入口3を開放する全外気モードに設定するのがよい。しかし、乗員の手動操作よる設定にて、外気導入口3を閉塞して、第1、第2の内気導入口2、2aをともに開放する全内気モードとしたり、前述のように内気と外気とを同時に導入する内外気2層流モードとすることもできる。
【0048】
このフット吹出モードにおいて、ヒータコア13を循環する温水温度が所定温度以下のときには、この温水温度を検知して図示しない制御回路にて補助電気ヒータ16に通電され、補助電気ヒータ16が発熱するので、第1、第2空気通路80、90の両方において、ヒータコア13の吹出空気を加熱できる。これにより、温水の低温時における暖房能力不足、およひ窓ガラスの防曇能力不足を解消できる。
【0049】
ここで、補助電気ヒータ16の発熱量を温水温度の低下に応じて増大させるようにしてもよい。
(2)フットデフロスタ吹出モード
フットデフロスタ吹出モードでは、フット開口部25からの吹出風量と、デフロスタ開口部19からの吹出風量とを略同等(50%づつ)とするため、フットドア26によりフット開口部25を全開するとともに、デフロスタドア20によりデフロスタ開口部19を全開する。そして、連通ドア24を連通路23の全閉位置に操作する。
【0050】
これにより、連通路23からフット開口部25側へ流入する外気温風の流れがなくなるので、フット開口部25には第1空気通路80の内気温風が全量流入し、また、デフロスタ開口部19には第2空気通路90の外気温風が全量流入する。これにより、フット開口部25からの吹出風量と、デフロスタ開口部19からの吹出風量とを略同等にすることが可能となる。
【0051】
温水弁14を全開する最大暖房時には、内外気の2層流モードを設定し、暖房効果の向上と窓ガラスの防曇性の確保との両立を図ることができるという点はフット吹出モードと同じである。また、温水弁14の開度調整により所望の中間温度制御が可能であり、また、中間温度制御域では、通常、全外気モードに設定するが、乗員の手動操作よる設定にて、全内気モードとしたり、内外気2層流モードとすることもできる。
【0052】
また、フットデフロスタ吹出モードにおいても、補助電気ヒータ16は上述のフット吹出モード時と同様に補助暖房熱源の役割を果たすことができる。
ところで、上述したフット吹出モードおよびフットデフロスタ吹出モードにおいて、ヒータコア13を、第1空気通路80側から第2空気通路90側に向かって温水が流れる一方向流れタイプとして構成しているから、ヒータコア13の温水出口側では温水温度の低下により吹出空気温度が低下することになる。従って、温水出口側に位置する第2空気通路90側のデフロスタ吹出温度が低下し、窓ガラスの防曇能力が不足する場合が生じる。
【0053】
このような車両では、温水出口側の第2空気通路90への補助電気ヒータ16の設置面積割合を第1空気通路80への設置面積割合よりも増加させて、第2空気通路90への補助電気ヒータ16の放熱量を増加させる。これにより、温水出口側の第2空気通路90からのデフロスタ吹出温度を温水入口側に位置する第1空気通路80からのフット吹出温度と同程度まで高めることができ、窓ガラスの防曇性能を優先的に高めることができる。
【0054】
また、逆に、補助電気ヒータ16のうち、第1空気通路80への設置面積割合を第2空気通路90への設置面積割合より大きくすれば、第1空気通路80からのフット吹出温度を第2空気通路90からのデフロスタ吹出温度より十分高くすることができる。従って、乗員足元部への暖房能力を優先的に高めることができる。
【0055】
また、ヒータコア13の温水出口側に位置する第2空気通路90側のデフロスタ吹出温度が温水入口側に位置する第1空気通路80側のフット吹出温度より低いことを利用して、全外気モード時におけるデフロスタ吹出温度とフット吹出温度との間に、頭寒足熱の上下温度差を設定することもできる。
(3)デフロスタ吹出モード
デフロスタ吹出モードにおいては、フェイスドア22がフェイス開口部21を、また、フットドア26がフット開口部25をそれぞれ全閉する。また、デフロスタドア20がデフロスタ開口部19を全開し、連通ドア24が連通路23を全開する。従って、第1、第2空気通路80、90からの空調空気をデフロスタ開口部19を通して窓ガラス内面のみに吹き出して、曇り止めを行う。このときは、窓ガラスの防曇性確保のために、通常、全外気吸入モードとする。
【0056】
また、デフロスタ吹出モードにおいても補助電気ヒータ16は補助暖房熱源の役割を果たすことができる。
(4)フェイス吹出モード
フェイス吹出モードにおいては、フェイスドア22がフェイス開口部21を全開し、デフロスタドア20がデフロスタ開口部19を、またフットドア26がフット開口部25をそれぞれ全閉する。連通ドア24は連通路23を全開する。従って、第1、第2空気通路80、90の下流部はいずれもフェイス開口部21に連通する。
【0057】
そのため、蒸発器12により冷却された冷風がヒータコア13により再加熱されて、温度調整された後、すべてフェイス開口部21側へ吹き出す。
このときも、内外気吸入モードは第1、第2内外気切替ドア4、5により、全内気、全外気、内外気2層流のいずれも選択可能となる。
なお、最大冷房状態では、全内気吸入モードとし、また、温水弁14が全閉状態となり、ヒータコア13への温水循環が遮断されるとともに、マックスクールドア18が冷風バイパス通路17を開くので、冷風の送風量を増加でき、冷房能力が最大となる。また、フェイス吹出モードでは補助電気ヒータ16に通電することはない。
【0058】
(5)バイレベル吹出モード
バイレベル吹出モードにおいては、フェイスドア22がフェイス開口部21を全開するとともに、フットドア26がフット開口部25を全開する。デフロスタドア20はデフロスタ開口部19を全閉する。また、連通ドア24が連通路23を全開する。従って、フェイス開口部21とフット開口部25を通して、車室の上下両方から同時に風を吹き出すことができる。
【0059】
ここで、ヒータコア13が一方向流れタイプであるため、ヒータコア13の吹出側において、温水入口側に位置する第1空気通路80側の吹出空気温度を高くし、温水出口側に位置する第2空気通路90側の吹出空気温度を低くすることができる。
従って、全外気モードあるいは全内気モードであっても、第1空気通路80からのフット吹出温度に比して第2空気通路90からのフェイス吹出温度を低くすることができるので、車室内温度分布を頭寒足熱形の快適な状態とすることができる。
【0060】
(他の実施形態)
なお、上記の実施形態に限らず、本発明は種々な形態で実施可能であり、以下、本発明の他の実施形態について説明する。
▲1▼なお、上記の実施形態では温水温度の低下により補助電気ヒータ16に自動的に通電する場合について説明したが、車室内の空調操作パネルに、乗員の操作より調整される発熱量調整部材を設置して、この発熱量調整部材の手動操作により補助電気ヒータ16の発熱量および発熱のON、OFFを調整可能としてもよい。
【0061】
▲2▼バイレベル吹出モードにおいて、デフロスタ開口部19を微少開度開くようにしてもよい。例えば、フェイス開口部21、フット開口部25、およびデフロスタ開口部19からの吹出風量の割合が、例えば、45:40:15となるように、各開口部21、25、19の開度を設定して、各開口部21、25、19のすべてから同時に風を吹き出すようにしてもよい。
【0062】
▲3▼空調ユニット100内に蒸発器(冷房用熱交換器)12を配設しないタイプの空調装置にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の通風系の全体構成図である。
【符号の説明】
1…送風機ユニット、2、2a…内気導入口、3…外気導入口、
4、5…第1、第2内外気切替ドア、6、7…第1、第2ファン、
8、80…第1空気通路、9、90…第2空気通路、11…空調ケース、
12…蒸発器、13…ヒータコア、14…温水弁、16…補助電気ヒータ、
19…デフロスタ開口部、20…デフロスタドア、21…フェイス開口部、
22…フェイスドア、25…フット開口部、26…フットドア、
100…空調ユニット。
Claims (8)
- 空調空気の吸入モードとして、内気と外気の両方を区分して同時に吸入する内外気2層流モードを選択可能な内外気切替手段(2、2a、3、4、5)と、
この内外気切替手段(2、2a、3、4、5)を通して吸入された空調空気を温水を熱源として加熱する暖房用熱交換器(13)と、
この暖房用熱交換器(13)を通過した空調空気を車室内乗員の足元に向けて吹き出すフット開口部(25)と、
前記暖房用熱交換器(13)を通過した空調空気を車両窓ガラス内面に向けて吹き出すデフロスタ開口部(19)と、
前記内外気切替手段(2、2a、3、4、5)から前記フット開口部(25)に向かって前記内気が流れる第1空気通路(8、80)と、
この第1空気通路(8、80)と区画形成され、前記内外気切替手段(2、2a、3、4、5)から前記デフロスタ開口部(19)に向かって前記外気が流れる第2空気通路(9、90)と、
前記暖房用熱交換器(13)の空気下流側に配置され、前記空調空気を加熱する補助暖房装置(16)とを備え、
前記暖房用熱交換器(13)を前記第1空気通路(8、80)と前記第2空気通路(9、90)の両方に跨がって配置するとともに、
前記補助暖房装置(16)を前記第1空気通路(8、80)と前記第2空気通路(9、90)の両方に跨がって配置することを特徴とする車両用空調装置。 - 前記暖房用熱交換器(13)は、前記第1空気通路(8、80)および前記第2空気通路(9、90)のいずれか一方から他方に向かって温水が流れる一方向流れタイプとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
- 前記暖房用熱交換器(13)は、前記第1空気通路(8、80)側から前記第2空気通路(9、90)側に向かって温水が流れるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
- 前記暖房用熱交換器(13)に循環する温水の流量または温度を調整して空調空気の温度を調整する温度調整手段(14)を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記補助暖房装置(16)のうち、前記第1空気通路(8、80)内に位置する面積を、前記第2空気通路(9、90)内に位置する面積より大きくしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記補助暖房装置(16)のうち、前記第1空気通路(8、80)内に位置する面積を、前記第2空気通路(9、90)内に位置する面積より小さくしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記補助暖房装置は補助電気ヒータ(16)により構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記暖房用熱交換器(13)に循環する温水の温度が所定温度以下のとき前記補助電気ヒータ(16)に通電することを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
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