JP3897831B2 - 自動変速機用油圧制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動変速機の変速機構を油圧で変速制御する自動変速機用油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用等に多く利用されている自動変速機は、回転駆動力を負荷に応じてスムーズに伝達するため、各摩擦係合装置に加わる油圧を油圧弁により切換え制御して変速制御を行っている。変速制御は、乗員により前進、中立および後退のいずれかを選択するセレクトレバーによる手動変速と、エンジンのスロットル開度などからエンジン制御コンピュータにより適正なギア比になるように摩擦係合装置の係合状態を決定する自動変速とにより行われる。このような自動変速機制御装置として特開昭63−312553号公報および特開平1−299351号公報に開示されているものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の自動変速機制御装置では、手動変速によりセレクトレバーのDレンジを選択し、Dレンジの最高変速段で走行中、長い下り坂等において2レンジにシフトダウンすることによりエンジンブレーキをかけることがある。しかしながら、従来の自動変速機制御装置では、セレクトレバーの切換えが検出された後で、例えばDレンジの最高変速段である4速走行状態から2レンジの2速走行状態に変速位置を切換える自動変速処理が行われ、2速走行状態への油圧弁の切換えが行われるので、セレクトレバーをDレンジから2レンジに切換えてから走行状態が4速から2速に変化するまでの間に時間遅れがあった。
【0004】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、手動変速手段のシフトダウン方向への切換えから走行状態が変化するまでの時間遅れを減少させる自動変速機用油圧制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の請求項1記載の自動変速機用油圧制御装置は、自動変速機に設けられる複数の摩擦係合要素に加わる油圧をそれぞれ切換え、前記複数の摩擦係合要素をそれぞれ係合または解除させることにより、複数の変速段を切換え制御する自動変速機用油圧制御装置であって、手動操作により前記複数の摩擦係合要素に加わる油圧を切換える手動変速手段と、自動制御により前記複数の摩擦係合要素に加わる油圧を切換える自動変速手段とを備え、前記手動変速手段にて軸方向に移動および回転の何れか一方を行なうことにより走行レンジを選択し、前記自動変速手段にて軸方向に移動および回転の何れか他方を行なうことで各走行レンジの変速段を選択するカムシャフトを有し、前記手動変速手段により走行レンジを選択し、前記走行レンジにおける前記自動変速制御による最高変速段で走行中、前記手動変速手段を前記走行レンジからシフトダウン方向に切換えると、前記自動変速手段の位置をシフトダウン前の前記最高変速段位置に保持したまま、シフトダウン後の走行レンジにおける最高変速段より一段低い変速段に移行できることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2記載の自動変速機用油圧制御装置は、請求項1記載の自動変速機用油圧制御装置において、 前記手動変速手段は前進用としてDレンジ、2レンジ、Lレンジの順にシフトダウンする走行レンジを有し、前記Dレンジにおける前記自動変速手段による最高変速段での走行中、前記2レンジへ前記手動変速手段をシフトダウンさせると、前記自動変速手段の位置を前記Dレンジにおける前記自動変速手段の最高変速段位置に保持したまま前記2レンジの最高変速段より一段低い変速段に移行できることを特徴とする。
【0007】
【作用および発明の効果】
本発明の請求項1記載の自動変速機用油圧制御装置によると、複数の摩擦係合要素に加わる油圧を切換える手動変速手段と自動変速手段とを有し、手動変速手段により選択した走行レンジにおいて自動変速手段による最高変速段で走行中、手動変速手段をシフトダウン方向に切換えると、自動変速手段によるシフトダウン前の最高変速段位置を保持したまま、シフトダウン後の走行レンジにおける最高変速段より一段低い変速段に移行できる。これにより、手動変速手段のシフトダウン方向への切換え後、車両が素早くシフトダウンした走行状態に移行できる。
【0008】
本発明の請求項2記載の自動変速機用油圧制御装置によると、Dレンジの最高変速段による走行中、2レンジへ手動変速手段をシフトダウンさせると、自動変速手段によるDレンジの最高変速段位置を保持したまま2レンジの最高変速段より一段低い変速段に移行できるので、例えば下り坂を走行中に利用されるDレンジから2レンジへのシフトダウンに伴い、車両が素早くシフトダウンした走行状態に移行できる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例による自動変速機用油圧制御装置を車両用の自動変速機(以下、「自動変速機」をATという)に適用したシステム構成を図2に示す。図2において、EVは電磁弁を表し、MVは集積弁を表す。
【0010】
車両用ATの動作は、周知のように自動または手動でトランスミッション300内のギヤ接続が切換えられ、トルクコンバータ200に接続された図示しないエンジンからの回転力が車両の後輪または前輪に伝達される。集積弁60とその周辺装置全体は、トランスミッション300下部のAT内部の図示しないオイルパン内部にあり、オイルパン内部の油圧制御装置400の周囲は油圧回路のドレンになっている。
【0011】
トランスミッション300内には、エンジンの回転軸に直結して回転駆動される公知の油圧ポンプ56が設けられており、各油圧装置からオイルパン等に排出された駆動油を吸入ポート57より吸入し、ライン圧制御弁64を介し各装置へ圧油を供給している。この油圧ポンプ56からの圧油は、変動のある高ポンプ油圧であり、電磁制御式圧力制御弁であるライン圧制御弁64により一定の高圧なライン圧に制御し各油圧機器へ供給される。油圧制御装置400には3つの係合油圧制御弁61、62、65が設けられている。係合油圧制御弁61、62、65は、ライン圧制御弁64から供給される圧油のライン圧を任意に制御し、所定の制御圧にした圧油を集積弁60に供給している。
【0012】
集積弁60に供給されたライン圧または制御圧の圧油は、図1に示す各スプール弁2、3、4、5、6、7、8(SPと総称する)を介し、図2に示す連通ポート39、40、41、42、43、44、45からトランスミッション300内の摩擦係合装置である多板クラッチ類C0、C1、C2や多板ブレーキ類B0、B1、B2、B3に供給されている。スプール弁2は連通ポート39を介して多板ブレーキB1と接続し、スプール弁3は連通ポート40を介して多板クラッチC1と接続し、スプール弁4は連通ポート41を介して多板クラッチC2と接続し、スプール弁5は連通ポート42を介して多板クラッチC0と接続し、スプー弁6は連通ポート43を介して多板ブレーキB0と接続し、スプール弁7は連通ポート44を介して多板ブレーキB2と接続し、スプール弁8は連通ポート45を介して多板ブレーキB3と接続している。各摩擦係合装置は、トランスミッション300内にある図示しないプラネタリギア等の各変速比を構成するギアに連結されており、これら摩擦係合装置を係合または解除することにより、変速比を切換えて車両の変速制御を行っている。
【0013】
トランスミッション300に連結している連通ポート39、40、41、42、43、44、45の内、トランスミッション300に設置されている多板クラッチC0、多板ブレーキB0に連通するポート42、43は、これらポートが同時に作動操作されると内部的な構造からトランスミッション300が駆動不能となり損傷を与えてしまう恐れがあるので、同時に結合されるのを防ぐため二重結合防止弁63aが介在している。同様に多板クラッチC2、多板ブレーキB1に連通するポート41、39も二重係合防止弁63bが介在している。
【0014】
連結部11は、操作者が手動で前進、後退、ニュートラル、パーキング等、車両の駆動状態を操作するセレクトレバー500と機械的に接続されている。ライン圧制御弁64から供給された圧油は、さらにトルクコンバータ200のロックアップ(L/U)スリップ制御を行うため、ロックアップ油圧制御弁を兼ねる係合油圧制御弁65を介しトルクコンバータ200に供給される。
【0015】
集積弁60は、複数ある油路を同時に切換え制御できる集積型の弁である。図1に示すように、油路を切換えるスプール弁SPは、カムシャフト1の軸に垂直な方向にカムシャフト1の両側に並んで配置され、それぞれ集積弁60のハウジング28に設けられた円筒孔28a、28b、28c、28d、28e、28f、28gに軸方向に摺動可能に挿入されている。
【0016】
次に、スプール弁5を例にしスプール弁SPの構造を説明する。他のスプール弁はスプール弁5と実質的に同一の構成である。
図4(A)に示すように、スプール弁5は円筒状に形成され、外側面中央部周囲に環状の油路溝5aが設けられている。スプール弁5のカムシャフト1側の端面はピン17と接する平面であり、カムシャフト1と反対側の端部内部には円柱状の穴5bが形成されている。この穴5bにスプリング24の一部が収容されており、スプリング24は、カムシャフト1側にスプール弁5を付勢することでカムシャフト1のカム凹凸に追従してスプール弁5およびピン17を移動させる。穴5bを含みスプール弁5とハウジング28とで形成されるドレン圧ポート48c側の空間部5cは、常にドレン圧ポート48cと連通しているので、空間部5c内の圧力は低圧のドレン圧となっている。
【0017】
ピン17はピンガイド104に挿入され、カムシャフト1の外周壁に形成されたカム凹凸に従い軸方向にのみ移動できる。ピンガイド104は円筒状に形成され、円筒孔28dを形成するハウジング28の内壁に固定されている。ピンガイド104の外壁には、軸方向全長に渡り圧力抜き溝104aが形成されている。スプール弁5とピンガイド104間に形成される空間部5dは、圧力抜き溝104aを介してカムシャフト1の挿入される窪み58と連通し常に低圧のドレン圧となっている。このため、ピン17とピンガイド104との摺動部は密閉の必要がないので、ピン17およびピンガイド104の加工はそれほど高い精度を要求されない。
【0018】
スプール弁5の両端に設けられる圧力室である空間部5cおよび空間部5dの圧力は常にドレン圧に等しいため、スプール弁5は軸方向に力を受けないのでカムシャフト1側にスプール弁5を付勢するスプリング24の付勢力は小さくてよい。スプリング24の付勢力に抗してピン17がスプール弁5を押し上げる力も小さくなるので、軸方向にカムシャフト1を駆動するセレクトレバー500の操作力を小さくできる。また、回転方向にカムシャフト1を駆動する後述するステップモータ12の駆動力も小さくてよいので、小型のステップモータ12を使用できる。また、スプール弁5の両端に設けられた空間部5cおよび空間部5dとスプール弁5の油路溝5aとの圧力差により、スプール弁5の外周面と円筒孔28dの内壁面の間隙に油路溝5aからスプール弁5の両端に向かって油が僅かに流れだす。この隙間に流れ出した油は、円筒孔28dの軸芯に向かってスプール弁5を向心させる作用をなす。従ってスプール弁5と円筒孔28dを形成する内壁面との固着現象は起こらず、スプール弁5を移動させる力がさらに減少するのでカムシャフト1の駆動力を小さくできる。また、一般に圧力バランスの平衡のためにスプール弁外壁の周方向に設けるラビリンス溝が不要となる。
【0019】
図1に示すように、各スプール弁SPの油路溝は、各円筒孔28a、28b、28c、28d、28e、28f、28gに連通するライン圧ポート35a、35b、35c、35d、35e、35f、35g(PL と総称する)、制御圧ポート36b、36c、36d(PC1と総称する)、38e、38f、38g(PC2と総称する)、10a(PC3と総称する)、連通ポート39H、40H、41H、42H、43H、44H、45Hと連通可能に構成されている。連通ポート39L、40L、41L、42L、43L、44L、45Lは、連通ポート39H、40H、41H、42H、43H、44H、45Hに対しカムシャフト1と反対側に設けられ、スプール弁SPがカムシャフト1側に近付いたときに円筒孔28a、28b、28c、28d、28e、28f、28gと連通する。連通ポート39Hおよび39L、40Hおよび40L、41Hおよび41L、42Hおよび42L、43Hおよび43L、44Hおよび44L、45Hおよび45Lはそれぞれスプール弁SPの側部近傍のハウジング28内で連通して連通ポート39、40、41、42、43、44、45となり、対応する各摩擦係合装置に接続している。
【0020】
スプリングストッパ108、109は、ボルト47によりハウジング28に固定されている。スプリングストッパ108、109のハウジング28に対向する面にはカムシャフト1の軸方向に長板状の溝が形成され、この溝がドレン圧ポート48a、48b、48c、48d、48e、48f(Dr と総称する)を形成している。ドレン圧ポートDr 内の圧力は低圧であるため、スプリングストッパ108、109とハウジング28との間を特にシールする必要はない。ドレン圧ポートDr は図3に示すように、カムシャフト1の軸方向に沿った一方の側がスプリングストッパ108、109から開口している。ドレン圧ポート48aは円筒孔28aと、ドレン圧ポート48bは円筒孔28bおよび円筒孔28cと、ドレン圧ポート48cは円筒孔28dと、ドレン圧ポート48dは円筒孔28eと、ドレン圧ポート48eは円筒孔28fと、ドレン圧ポート48fは円筒孔28gとそれぞれ常に連通している。集積弁60は、図示しないA/Tミッションのオイルパン内に設けられ、ハウジング28の周囲はドレン部として利用されるため、各ドレン圧ポートDr からドレン圧ポート48を介してハウジング28外のドレン部に圧油が排出される。
【0021】
スプール弁3、4、5の制御圧ポートPC1は制御圧ポート36を介して係合油圧制御弁61に接続され、スプール弁6、7、8の制御圧ポートPC2は制御圧ポート38を介して係合油圧制御弁62に接続され、スプール弁2の制御圧ポートPC3は制御圧ポート10を介して係合油圧制御弁65に接続されている。さらにライン圧ポートPL はライン圧ポート35を介し、集積弁60にライン圧の圧油が直接供給されるようにライン圧制御弁64に接続されている。
【0022】
油圧ポートPL 、PC1、PC2、PC3、連通ポート39H、40H、41H、42H、43H、44H、45H、39L、40L、41L、42L、43L、44L、45Lは、それぞれ円筒孔28a、28b、28c、28d、28e、28f、28gを形成するハウジング28の内壁に環状に形成され、図3に示すように、ライン圧ポートPL 、制御圧ポートPC1、PC2、PC3は、スプール弁SPを挟んで連通ポート39H、40H、41H、42H、43H、44H、45H、39L、40L、41L、42L、43L、44L、45Lと180°反対方向に向けてカムシャフト1の軸方向と垂直方向に延びている。ライン圧ポートPL は制御圧ポートPC1またはPC2またはPC3よりもカムシャフト1から離れた位置に配置されている。連通ポート39H、40H、41H、42H、43H、44H、45Hは、それぞれ各ライン圧ポートPL と制御圧ポートPC1またはPC2との間に配置され、連通ポート39L、40L、41L、42L、43L、44L、45Lは、ライン圧ポートPL よりもドレン圧ポートDr 側に配置されている。また本実施例では、ライン圧ポートPL 、制御圧ポートPC1、PC2、PC3は、図示しないが、ハウジング28の側面で連通している。この様に構成すると、ハウジング28内において各油圧ポートPL 、PC1、PC2、PC3の間隔が十分にない場合でも、各ポート間の隔壁の強度が十分にとれるという効果がある。
【0023】
3種類の油圧ポートであるライン圧ポートPL 、制御圧ポートPC1、PC2、PC3、ドレン圧ポートDr は、スプール弁SPの移動によりいずれか一つが摩擦係合装置に接続する連通ポート39、40、41、42、43、44、45と連通する。
各スプール弁SPがカムシャフト1の駆動により円筒孔28a、28b、28c、28d、28e、28f、28gを移動する際、各円筒孔28a、28b、28c、28d、29e、28f、28gに開口するライン圧ポートPL の位置と対向する位置に各スプール弁SPの油路溝が位置決めされると、各ライン圧ポートPL に供給されるライン圧の圧油が各スプール弁SPの油路溝を経由して連通ポート39、40、41、42、43、44、45から各摩擦係合装置に供給される。
【0024】
また、ライン圧の圧油と同様に、制御圧ポートPC1、PC2、PC3から圧力調整された制御圧の圧油が各スプール弁SPに供給され、さらにスプール弁SPを介し各摩擦係合装置へ制御圧の圧油が供給される構成になっている。係合油圧制御弁61から制御圧ポート36に供給された制御圧の圧油は制御ポートPC1に接続するスプール弁3、4、5にのみ供給される。同様に、係合油圧制御弁62から制御圧ポート38に供給された制御圧の圧油は制御圧ポートPC2に接続するスプール弁6、7、8にのみ供給される。同様に、係合油圧制御弁65から制御圧ポート10に供給された制御圧は制御圧ポートPC3に接続するスプール弁2にのみ供給される。その結果係合油圧制御弁62から供給された制御圧の圧油は多板ブレーキB0、B2、B3にのみ供給され、係合油圧制御弁61から供給された制御圧の圧油は多板クラッチC0、C1、C2にのみ供給され、係合油圧制御弁65から供給された制御圧の圧油は多板ブレーキB1のみに供給されることになる。
【0025】
スプール弁SPがカムシャフト1側に近付いたとき、連通ポート39L、40L、41L、42L、43L、44L、45Lは円筒孔28a、28b、28c、28d、28e、28f、28gと連通し、ドレン圧ポートDr からドレン圧の圧油が連通ポート39、40、41、42、43、44、45を経由して各摩擦係合装置に供給される。
【0026】
次に、スプール弁SPの位置と油路の切換え作動とをスプール弁5を例にして説明する。他のスプール弁についても同様に油路が切換えられる。
図4(A)は、ピン17によりスプール弁5が一番押し上げられた状態を示し、図4(C)はスプール弁5がカムシャフト1に一番近付いた状態を示す。図4(B)では、スプール弁5は図4(A)と図4(C)のほぼ中間の位置にある。多板クラッチC0に接続する連通ポート42に切換え供給される圧油の油圧はれぞれ図4(A)でライン圧、図4(B)で制御圧、図4(C)でドレン圧である。 図4(A)において、油路溝5aはライン圧ポート35dおよび連通ポート42Hと連通し、図4(B)において、油路溝5aは制御圧ポート36dおよび連通ポート42Hと連通している。そして、油路溝5aは連通ポート42Hを介して連通ポート42と連通している。スプール弁5がカム凹凸に従い最もカムシャフト1側に近付くと、図4(C)に示すように、連通ポート42Hは油路溝5aとの連通を遮断される。一方連通ポート42Lは空間部5cと連通し、空間部5cを介してドレン圧ポート48cと連通ポート42とが連通する。このように、ライン圧ポート35dおよび連通ポート42Hまたは制御圧ポート36dおよび連通ポート42Hが油路溝5aを介して連通可能なように油路溝5aは軸方向に所定長さで形成されている。
【0027】
連通ポート42が制御圧ポート36dと連通して制御圧となるスプール弁5の位置は、スプール弁5の全行程であるライン圧からドレン圧となる位置の中間に配置されている。これにより、油圧切換え時、スプール弁5は制御圧位置を必ず通過し油路溝5aが制御圧ポート36dと連通状態になるため、制御圧の調圧により油圧差を減少することができるので油圧切換え時の油圧差による衝撃を低減できる。
【0028】
図1に示すように、ハウジング28のほぼ中央に設けられた窪み58内に円柱状のアルミ製のカムシャフト1が設けられている。カムシャフト1の材質をアルミにするのは、カムシャフト1を鉄で製造すると鍛造による製造となり製造コストが高くなるとともに重くなり過ぎるからである。カムシャフト1は、軸受9、29に対し回転可能かつ軸方向に往復動可能に支持されている。軸受9、29は、本発明では、滑り軸受、玉軸受、コロ軸受や転がり軸受等を用いてもよい。軸受9はハウジング28の一端に圧入固定され、カムシャフト1の一端の軸受部34を案内する。軸受29は、カムシャフト1の他端部を案内しており、サイドハウジング30に圧入固定されている。サイドハウジング30はボルト37によりハウジング28に固定されている。円柱状のカムシャフト1の主要部分の外周面には各スプール弁SPを駆動するカムとして凹凸が形成されている。カムシャフト1の軸受9近傍の円周面にカム面と反対側のスプール弁6、7、8側に、所定の円弧幅で所定の軸方向長さのギア歯53が形成されている。このため、カムシャフト1の回動駆動に用いるギアスペースを節約できカムシャフト1の全長を縮小できる。また、カムシャフト1の一端の軸受部34を他端部と異なる形状にするとともにカムシャフト1の最大外径とすることにより、短い軸長でカムシャフト1を支持可能であるためカムシャフト1の全長を縮小できる。またギア歯53は、カムシャフト1が軸方向に移動した場合においても、後述する中間ギア52との噛合が外れないよう軸方向にギア溝が延設されている。
【0029】
ギア歯53に対向する位置に、カムシャフト1の軸方向と平行な回転軸を有するステップモータ12が固定されている。ステップモータ12はハウジング12a内に固定子である駆動部を収容している。図示しない電源から駆動部に駆動電流が供給され可動子である回転軸を回動させる。図3に示すように、ステップモータ12のハウジング12aには渦巻状のリターンスプリング54の一端が固定され、他端はステップモータ12の回転軸に固定されている。また、ステップモータ12のハウジングにはストッパピン55が設けられ、ステップモータ12の回転軸にはストッパレバー31が固定されている。ストッパピン55にストッパレバー31が当接することによりステップモータ12の回転角が制限されている。ステップモータ12の回転軸にギア13が同心円状に固定され、このギア13とギア歯53との間に、ギア歯53の形成されたカムシャフト1の外径よりも大きな外径の中間ギア52が固定部材32によりハウジング28に回転可能に取り付けられている。ギア歯53が形成されている位置におけるカムシャフト1の外径は、ギア13の外径よりも大きい。ステップモータ12の駆動力は、ギア13、中間ギア52、ギア歯53に伝達し、カムシャフト1を回動駆動する。
【0030】
本実施例においては、ステップモータ12の回転軸をカムシャフト1と平行に設置することにより、ギア13とギア歯53との間に中間ギア52をただ一つ介在させるだけでステップモータ12の駆動力をカムシャフト1に伝達可能であるとともに、コンパクトな構成で大きな減速比が得られるので集積弁60を小型化できる。さらにステップモータ12から中間ギア52に伝達するトルクよりも中間ギア52からギア歯53に伝達するトルクの方が大きくなるため、ステップモータ12のトルクを増幅してカムシャフト1に伝達できる。このため、ステップモータ12の駆動力を小さくできるので、ステップモータ12を小型化可能である。また、スプール弁SPの内、カムシャフト1の軸方向の最外位置に配置されているスプール弁2と5間にカムシャフト1のカム面側に向けてステップモータ12を設置したことにより集積弁60の全長を短くできるのでさらに集積弁60を小型化できる。
【0031】
カムシャフト1の軸受29側の端部には、外部のセレクトレバー500と図10〜図15に示す後述するメカニカルリンクを介し機械的に連結されている連結部11が設けられており、操作者がセレクトレバー500を操作することにより、連結部11はセレクトレバー500に連動しカムシャフト1を軸方向に駆動する。
【0032】
図1に示すカムシャフト1の回転角は、図5に示すAT用ECU70からの指示によって制御され、ステップモータ12がカムシャフト1を回転させて、カムシャフト1の円周面に設けられたカムによりピン14、15、16、17、18、19、20を介してスプール弁SPの位置を制御し、各油圧ポートPL 、PC1、PC2、PC3、Dr のいずれかが連通ポート39、40、41、42、43、44、45と連通し、図6のマトリックス状に構成された油圧連通モードに従い所定の油圧が各摩擦係合装置に加えられる。油圧連通モードは、各スプール弁SPにおける、セレクトレバー500の選択位置と、自動変速手段による運転状態に応じた変速モードとにより選択される油圧を示している。
【0033】
AT用ECU70は、図5に示すように加速に際し変速段を下段にシフトするためのキックダウン信号やセレクトレバー500がどのポジションにあるのかを示すセレクトレバー信号等と、エンジンの駆動を制御するエンジン(E/G)用ECU72からの信号によって、E/G用ECU72とデータを交換しながらステップモータ12を駆動するモータ位置信号を出力し、同時に各油圧制御信号を前述の係合油圧制御弁61、62、ライン圧制御弁64、係合油圧制御弁65に出力する。この時E/G用ECU72とAT用ECU70とが交換するデータとしては、ラジエータの水温、スロットル開度、クランクシャフトのクランク角、車速、タービン回転数等がある。
【0034】
カムシャフト1は、ある作動モードにおけるピン14、15、16、17、18、19、20との当接位置から周方向および軸方向にそれぞれ所定幅で同一径部分を設けてあるため、カムシャフト1が回転方向またはスライド方向に駆動され小さな範囲で移動しても、スプール弁SPの位置が変化しない。このため、カムシャフト1の位置決めに若干のずれを許容している。さらに、カムシャフト1が回転方向またはスライド方向に全ストロークしたときにも、ピン14、15、16、17、18、19、20の側面と隣接スプールに対応したカムシャフト表面のカム凹凸との間には若干の余裕が設けてあり、万一の際にも、ピン14、15、16、17、18、19、20に大きな力が加わらないように考慮されている。また、カム凹凸の隅部は、ピン14、15、16、17、18、19、20先端の曲率半径よりも大きな曲率半径に加工されており、カム凹凸に対するピンの追従がスムーズに行えるように配慮してある。
【0035】
ATの多板クラッチ類、多板ブレーキ類の動作状態は図7に示す構成となる。図7に示すようにセレクトレバー500がP(パーキング)レンジの位置にあるときとセレクトレバー500がN(ニュードラル)レンジの位置にあるときの各多板クラッチ、多板ブレーキ類の動作状態は同一である。外部のセレクトレバー500とカムシャフト1との間に図10〜図15に示す板状のメカニカルリンク80を設置し、乗員がセレクトレバー500を操作することによってセレクトレバー500に連結されたシャフト82が回転し、連結部11が図示しないガイド部によってカムシャフト1の軸方向に溝81の中を移動するので、カムシャフト1は、図10〜図15に示すように軸方向に移動しセレクトレバー500がPレンジにあるときとNレンジにあるときのカムシャフト1は同じ位置となりカムシャフト1の軸長を短くすることができる。他の、L(前進第1速)レンジ、2(前進第2速)レンジ、D(前進自動変速段)レンジ、R(リバース)レンジにセレクトレバー500を選択したときは、各多板クラッチ、多板ブレーキ類の動作状態が異なるので、図12〜図15に示すように、カムシャフト1の軸方向位置は異なる。
【0036】
カムシャフト1は連結部11およびメカリンク機構80によってセレクトレバー500と連結しているので、運転者による手動操作でセレクトレバー500の位置選択が行われると、カムシャフト1はシャフト軸方向に移動し、カムシャフト1の軸方向の凹凸でカムシャフト1に接するピン14、15、16、17、18、19、20を動かし各スプール弁SPを制御する。また、ステップモータ12はAT用ECU70の指令により回動し、カムシャフト1の円周方向の凹凸で各スプール弁SPの位置を制御する。
【0037】
スプール弁4および7について、Dレンジにおいて変速モードがdモードの位置にあるカムシャフト1の軸方向断面図を図8に示す。カムシャフト1の回動により、図6に示すaモード、bモード、cモード、dモードの変速モードのいずれかが選択される。図8では、スプール弁4および7にそれぞれ接しているピン16および19は、他端がいずれもカムシャフト1の最大径の位置に接しているのでスプール弁4および7を最大に押し上げている。従って、スプール弁4および7はライン圧ポート35c、35f(PL )と連通する位置に位置決めされ、スプール弁4および7に連通する多板クラッチC2および多板ブレーキB2にライン圧の圧油が供給される。
【0038】
この状態から、AT用ECU70の指令によるステップモータ12の回転に応じ、cモード、bモード、aモードと、カムシャフト1は45°間隔で回転し、その回転に応じピン16および19はカムシャフト1の外周面に沿って移動する。図8に示した図の場合には、スプール弁4はcモードとdモードにおいて同一の位置である。bの変速モードでは、ピン16がカムシャフト1の中間径位置に移動するのでスプール弁4は制御圧ポート36cに連通する位置に移動し、連通ポート41を介し多板クラッチC2へ制御圧の圧油が供給される。aの変速モードでは、ピン16はカムシャフト1の最小径位置に移動し、スプール弁4はドレン圧ポート48bと連通する位置に移動する。すると、多板クラッチC2の圧油は連通ポート41を介してオイルパンへ抜かれるので多板クラッチC2は解除状態となる。
【0039】
セレクトレバー500を順に、L、2、D、N、R、Pレンジにシフトした場合、カムシャフト1はメカリンク機構によって予め定められた距離だけ軸方向に移動する。すると、回転移動の場合と同様にしてスプール弁4および7は、図6に示す圧力分配が行われる。他の変速段および他のレンジおよび他のスプール弁においても同様の作動を示す。
【0040】
次にDレンジ位置における変速動作を説明する。他のレンジにおいても基本的な作動は同様である。
カムシャフト1は手動のDレンジの位置において、カムの凹凸によりピンを介しスプール弁SPを図6のDレンジの欄で示す油圧ポートで決まる油圧連通モードにする。そしてカムシャフト1に対するAT用ECU70の指示が、図7に示すDレンジにおける車速の4段階の内の1−2速モード(図6のaモード)であると、多板クラッチC0は、ライン圧ポート35からライン圧ポート35d(図6のPL )、スプール弁5の油路溝、連通ポート42を介しライン圧を受けて作動状態となる。多板クラッチC1、多板ブレーキB2は、制御圧ポート36、38から制御圧ポート36b(図6のPC1)、38f(図6のPC2)、スプール弁3、7の油路溝、連通ポート40、44を介して制御圧を受け、車速等の状態によって制御圧が係合油圧制御弁61、62、65で調節され係合状態が制御される。係合油圧制御弁61からの制御圧(PC1)が高圧のとき1速走行状態が形成され、さらに係合油圧制御弁62からの制御圧(PC2)も高圧のときに2速走行状態が形成されるよう各多板クラッチ類、多板ブレーキ類に圧油が供給される。
【0041】
そして、AT用ECU70からの指示が2速走行状態から3速走行状態になると、AT用ECU70からの指示によってステップモータ12がカムシャフト1を2−3速モード(図6のbモード)位置に回転させ、各スプール弁SPの位置を変化させる。その結果、図6のDレンジのbモード欄に示すように多板クラッチC1はライン圧ポート35b(図6のPL )を通じてライン圧ポート35に接続され、多板クラッチC2は制御圧ポート36cを通じて制御圧ポート36に接続され、他の多板クラッチ、多板ブレーキは1−2速モード(図6のaモード)と同じ状態が保持される。これらのモードによって決まる油圧でトランスミッション300内の多板クラッチ類、多板ブレーキ類が作動し2速走行状態と異なる変速比である3速走行状態となる。このように制御状態が決められてATとしての機能を果たす。他のレンジ位置でも、またシフトダウン操作でも同様な動作で制御される。
【0042】
手動でセレクトレバー500を切換えレンジを変更すると、セレクトレバー500に連動した連結部11によってカムシャフト1がスライドさせられて各スプール弁SPの位置を切換え、図6の各レンジで指定するような油圧連通モードにする。その状態で同時にECU70による制御でステップモータ12によりカムシャフト1が回動駆動されて車速に対応した油圧連通モードになり、自動制御が続行される。
【0043】
次に、Dレンジの最高変速段である4速走行中に2レンジにシフトダウンしたときの作動について説明する。
Dレンジのcモードにおける4速走行では、図7から判るように、多板クラッチC1、C2および多板ブレーキB0、B2は係合状態であり、多板クラッチC0および多板ブレーキB1、B3は解除状態である。そして図6に示すように、多板クラッチC0、C1、C2に、それぞれ制御圧ポート36d(PC1)、ライン圧ポート35b(PL )、ライン圧ポート35c(PL )が接続され、多板ブレーキB0、B1、B2、B3に、それぞれ制御圧ポート38e(PC2)、ドレン圧ポート48a(Dr )、制御圧ポート38f(PC2)、ドレン圧ポート48f(Dr )が接続されている。2レンジの最高変速段は、図7に示すように3速である。通常、2レンジの3速走行状態および3速よりも一段低い2速走行状態はbモードで形成されるが、Dレンジの4速走行中、乗員がDレンジから2レンジへセレクトレバー500を動かして2レンジの2速走行状態を形成するときはcモードで形成する。2レンジの2速走行時、多板クラッチC0、C1および多板ブレーキB1、B2は係合状態であり、多板クラッチC2および多板ブレーキB0、B3は解除状態である。そして図6に示すように、2レンジのcモードでは、多板クラッチC0に制御圧ポート36d(PC1)、多板クラッチC1にライン圧ポート35b(PL )、多板クラッチC2にドレン圧ポート48b(Dr )、多板ブレーキB0にドレン圧ポート48d(Dr )、多板ブレーキB1に制御圧ポート10a(PC3)、多板ブレーキB2にライン圧ポート35f(PL )、多板ブレーキB3にドレン圧ポート48f(Dr )が接続されている。
【0044】
Dレンジの4速走行中、乗員がDレンジから2レンジへセレクトレバー500を動かすと、カムシャフト1は図1の軸方向に移動するだけであり、回動位置はcモードのまま保持され、このcモードにおいて2レンジの2速走行状態が形成される。2レンジのcモードで2速走行をするためには、係合油圧制御弁61および65を制御することにより、多板クラッチC0に接続する制御圧ポート36d(PC1)の油圧をドレン圧からライン圧に上昇させ、多板ブレーキB1に接続する制御圧ポート10a(PC3)の油圧をドレン圧からライン圧に上昇させればよい。このように、Dレンジの最高変速段を形成するcモードと同じ軸方向位置に形成された2レンジのcモードで2レンジの2速走行状態を形成することにより、カムシャフト1を回動させることなくセレクトレバー500の選択から時間遅れを殆ど生じさせないで素早くシフトダウンできる。また、Dレンジの4速走行中にLレンジにシフトダウンしたときも、カムシャフト1を回動させることなく軸方向に移動させ、係合油圧制御弁61、62および65を制御することにより、素早くシフトダウンしてLレンジの2速走行を実現することができる。また、2レンジの最高変速段である3速は、乗員がDレンジから2レンジにセレクトレバー500を操作しても車速が高過ぎる等の原因でcモードにおいて2レンジの2速へのシフトダウンが不適切であるとAT用ECU70が判断した場合、AT用ECU70の指示によりcモードにおいて2レンジの3速にシフトダウンできるように設けてある。これにより、急激なシフトダウンを回避することができる。
【0045】
次に、Nレンジへのセレクトレバー500の切換え時における作動について説明する。
従来では、Nレンジ位置で多板クラッチ、多板ブレーキ類と、制御圧ポートとを接続すると、係合油圧制御弁が故障したときに乗員がセレクトレバー500をNレンジに動かしても、係合摩擦装置に加わる油圧の高低により車両が前進方向または後進方向に発進することがあったため、Nレンジでは制御圧ポートを用いることができなかった。例えば、図7でDレンジのaモードにおける運転状態からNレンジにシフトすると、多板クラッチC1が高圧状態から急激に排出され変速ショックが発生してしまう。本実施例では、aモード、bモード、cモードで制御圧ポートを用いていても、係合油圧制御弁が故障した場合、摩擦係合装置に制御圧ポートを接続しないdモード位置にカムシャフト1を回転させるので、Nレンジで車両が発進することはない。これにより、係合油圧制御弁の正常動作時、係合油圧制御弁で圧力調整した圧油を係合摩擦装置に供給できるので、滑らかな変速切換えが可能である。前述の多板クラッチC1もNレンジで制御圧ポート36bを用いており、DレンジのaモードからNレンジへ手動操作したとき、係合油圧制御弁61を制御して多板クラッチC1の圧油の排出を調整し、ライン圧からドレン圧に圧力を徐々に低下することによって変速ショックを低減できる。同様にRレンジからNレンジへの手動変速においても、従来できなかった変速ショックの電子制御が可能となる。
【0046】
また、DレンジからNレンジへの変速ショック制御とRレンジからNレンジへの変速ショック制御とを同一の1−2速モード(図6のaモード)で行うと、なんらかの誤動作で前進用の多板クラッチ(C1)と後退用の多板クラッチ、多板ブレーキ(C2、B3)が同時に係合してしまい、内部的な構造からトランスミッション300が駆動不能となり損傷を与えてしまう恐れがあるので、DレンジからNレンジへの変速ショック制御は1−2速モード(図6のaモード)で行い、R(リバース)への変速終了後カムシャフト1をbモード位置へ回転させることにより、RレンジからNレンジへの変速ショック制御は2−3速モード(図6のbモード)にて行うようにする。RレンジからNレンジへの変速終了後、カムシャフト1をaモード位置に回転させる。このようにして、前進用の多板クラッチ(C1)を制御するときは後退用の多板クラッチ、多板ブレーキ(C2、B3)は必ず低圧にし、後退用の多板クラッチ、多板ブレーキ(C2、B3)を制御するときは必ず前進用の多板クラッチ(C1)を低圧にするようにしてトランスミッション300を保護する構成となっている。
【0047】
次に、フェイルセーフ機能に付いて説明する。フェイルは突然発生することもあり、車両においては走行中に発生することが考えられるため、フェイル発生と同時に対応する必要がある。ここで対応するフェイルセーフは、装置自体が機械的な破損を生じる程度までのフェイルではなく、自動制御機能が不能となった場合である。なんらかの理由で自動制御機能が不能状態になった場合、手動で変速操作を実施できるようにフェイルセーフ設定する。通常、従来の車両で実施されているように、ATにおけるファイルセーフは、変速状態を現状維持もしくは4速モード位置(高速モード側)にするようにしている。これは、フェイル時にシフトダウンが生じると、車両に突然エンジンブレーキがかかる状態となる場合があり、変速ショックを生じることがあるため、必ず高速側にシフトアップすることによりショックが生じないように処置がとられている。
【0048】
図6の各油圧連通モードは、例として多板クラッチC0(スプール弁5)の欄で示すと、通常使用する範囲として本来太線の枠で囲った範囲内の連通位置が必要なだけである。即ち、L、2、D、P、N、Rレンジにおいては、dモード位置にカムシャフト1が回転することはない。そこで本実施例においては、フェイル(故障)時のフェイルセーフのため、dモード位置はすべてライン圧ポートPL もしくはドレン圧ポートDr とし、制御圧ポートPC1、PC2、PC3、とは接続しないようにしている。これにより、係合油圧制御弁61、62、65が高圧側または低圧側のいずれで故障しても、何らかのフェイルが発生したものとAT用ECU70が判断すると、変速状態を決定しているカムシャフト1をステップモータ12の駆動でフェイルセーフ位置(図6のdモード)にシフトする。強制的にこのフェイルセーフ位置に固定することで、自動制御は不能となっても、上述のように各レンジにおける高速段と同じ連通モードをdモードに設定するため、手動操作によるレンジ切換え動作は作動する。
【0049】
自動制御を行うAT用ECU70の処理プログラムのうち、フェイルに関する処理の流れの概略を示したものが図9(A)および図9(B)である。図9(A)は、ステップモータ12の駆動制御が正常に動作している場合のフェイル制御処理を示し、図9(B)は、ステップモータ12の駆動制御にフェイルが生じた場合のフェイル制御処理を示している。
【0050】
(1) ステップモータ正常時
ステップモータ12の駆動制御が正常に動作している場合、AT用ECU70は、各種のセンサなどの異常信号や演算結果の食い違いなどからフェイルかどうかの判定を行い(ステップ610)、フェイルならば、ステップモータ12によりカムシャフト1をフェイルセーフ位置(図6のdモード)に移動させる(ステップ650、660)。フェイルセーフ位置では完全には自動変速と同等の変速機能を実現しなくなるが(例えばLレンジで2速発進となるなど)、手動操作により少なくとも変速させる機能は維持されることになる。フェイルでなければ、車速、アクセル開度等のセンサ信号を入力して車両の走行状態を検知し(ステップ620)、図6に示す油圧連通モード(自動変速マップ)にしたがってカムシャフト1を所定位置に回動させる(ステップ630、640)。
【0051】
(2) ステップモータフェイル時
AT用ECU70は、各種センサからの検知信号によりステップモータ12の駆動制御がフェイルしているか否かを判定し(ステップ700)、フェイルしている場合、ステップモータ12への駆動信号の出力を停止する(ステップ710)。これにより、カムシャフト1はリターンスプリング54の復元力によりフェイルセーフ位置(図6のdモード)まで強制的に回転移動される。その状態でセレクトレバー500の操作による手動のP、R、N、D、2、Lレンジの選択がなされ、カムシャフト1は連結部11で移動させられて各スプール弁SPの位置を制御する。
【0052】
なお、このリターンスプリング54は、ハウジング内部に設けられる構成でも、別の機構による力を用いてもよい。また自動と手動とが入れ代わった構成の場合、このリターンスプリング54の力は、どの部位に設けようともカムシャフト1を軸方向にストッパ位置までスライドさせる力を蓄えさせる構成とし、さらには特に設けず、モータの力でリターンさせる構成であっても構わない。
【0053】
本実施例では、図1に示すように、カムシャフト1の両側にスプール弁SPを配置したので、集積弁60はコンパクトな略平板状に構成されている。配置上、上下方向の制約のある場所に適しており、例えばオイルパン内での配置も容易となる。本発明では、平板状に限らず、例えば、カムシャフト軸を中心として屈曲させるようにしてもよい。また本発明では、スプール弁列をカムシャフトの片側に一列に配置させ細長くした棒形状でももちろん構わない。これらの場合では、他の装置、特にAT本体のトランスミッションの形状に合わせて設置余裕の少ないオイルパン内部などの周辺にコンパクトに搭載することができる。
【0054】
また本実施例では、カムシャフト1に対するECU変速とマニュアル変速の割当は回転方向にECU変速、スライド方向にマニュアル変速を割り当てている。これは、回転方向にカム面の凹凸変化の頻度が少なくなるため、カムシャフト1の鋳造、成形等の加工が容易になり製作上極めて有利になるからである。本発明では、カムシャフトの軸方向の直線運動によって自動制御を行い、回転運動によって手動操作を行なうことも可能である。この場合、ステップモータはカムシャフトを軸方向に駆動し、セレクトレバーはカムシャフトを回転方向に駆動する。
【0055】
また本発明では、カムシャフトは図示した寸法に限らず、径を大きくして略円筒ドラムカムシャフトとしても構わない。またスプール弁の形状も、上述の機能を持つ油圧弁であれば円筒に限らず、どのような形状の弁であってもよい。なお一般的にスプール弁の個数や油圧連通モードは、トランスミッションの構造に依存して変わり、また多板ブレーキや多板クラッチの数や質によって設定条件も変化する。
【0056】
また本実施例では、カムシャフト1により各スプール弁SPを駆動したが、本発明では、自動、手動の機構を備えた油圧制御方式ならばどのように油圧弁であるスプール弁を駆動してもよく、同様な効果を得ることができる。
また本実施例では、カムとカムシャフト1とを一体に形成したが、本発明では、外周面をカム形状としたカムリングをシャフトに嵌め込んで図1に示すカムシャフト構造としてもよく、その場合、ポート数変更やポート組み合わせ変更などに対応しやすくなる。例えば図示しないが、各スプール弁のあるハウジングの円筒孔の周囲を1ブロックとして、この1ブロックをカムシャフト軸方向に積み重ねる構成にすることで設計変更を容易に行える。従って、そのような集積弁の構成は、油圧弁とそのハウジングを1ブロック単位として、この1ブロック単位を必要ポート数だけ積層したことが特徴となる。
【0057】
第1実施例では、集積弁60は二方向の動きで制御され、即ち自動制御と手動操作とを同時に兼ね備えてフェイルセーフ手段を有した油圧制御を行う構造となっている。このため、自動制御が異常のために制御が不能となっても手動操作によりATの制御を維持でき、特に下り坂や上り坂、山岳路、雪道発進等の場合に不都合が生じることが妨げる。またカムシャフトに限らず自動、手動の機構を備えた油圧制御方式ならば同様な効果を有する。
【0058】
(第2実施例)
本発明の第2実施例を図16に示す。
第2実施例は、手動変速手段80に収容された図示しない手動操作により作動する油圧切換弁と、自動変速手段90に収容された自動変速4段用の電磁弁91、92および93等からなる油圧切換弁とが各々独立して操作可能な自動変速機用油圧制御装置である。電磁弁91、92および93は、通電・非通電の切換えによって4つのモードを自動切換えする油圧切換弁である。図16に示す油圧制御装置内に、図6に示すようなマトリクス状に油圧を切換える油圧回路を構成すれば、第1実施例と同様に、Dレンジから2レンジへのセレクトレバー500の切換えに伴い、車両が素早くシフトダウンした走行状態に移行できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例による自動変速機用油圧制御装置を示す断面図である。
【図2】第1実施例による自動変速機装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】図2のIII 方向矢視断面図である。
【図4】スプール弁5の位置により切換わる油路を示す断面図である。
【図5】第1実施例の信号線の入出力状態を示すブロック図である。
【図6】集積弁の油圧連通モードを示す説明図である。
【図7】トランスミッションの多板クラッチ、多板ブレーキの動作状態図である。
【図8】スプール弁4およびスプール弁7を駆動するカムシャフトの形状を示す断面図である。
【図9】フェイル時判定を示すフローチャートであり、(A)はフェイルに関する処理の流れの概略を示したフローチャートを示し、(B)はカムシャフトを駆動するモータの動作不良時におけるフローチャートを示す。
【図10】Pレンジにおけるメカリンク機構の作動を示す説明図である。
【図11】Nレンジにおけるメカリンク機構の作動を示す説明図である。
【図12】Lレンジにおけるメカリンク機構の作動を示す説明図である。
【図13】2レンジにおけるメカリンク機構の作動を示す説明図である。
【図14】Dレンジにおけるメカリンク機構の作動を示す説明図である。
【図15】Rレンジにおけるメカリンク機構の作動を示す説明図である。
【図16】本発明の第2実施例による自動変速機用油圧制御装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト
2、3、4、5、6、7、8 スプール弁
11 連結部(手動変速手段)
12 ステップモ−タ(自動変速手段)
39、40、41、42、43、44、45
連通ポート
35a、35b、35c、35d、35e、35f、35g
ライン圧ポート
10a、36a、36b、36c、36d、38e、38f、38g
制御圧ポート
48a、48b、48c、48d、48e、48f
ドレン圧ポート
61、62、65 係合油圧制御弁
64 ライン圧制御弁
70 AT用ECU
72 E/G用ECU
80 メカリンク機構
200 トルクコンバータ
300 トランスミッション
500 セレクトレバー(手動変速手段)
Claims (2)
- 自動変速機に設けられる複数の摩擦係合要素に加わる油圧をそれぞれ切換え、前記複数の摩擦係合要素をそれぞれ係合または解除させることにより、複数の変速段を切換え制御する自動変速機用油圧制御装置であって、
手動操作により前記複数の摩擦係合要素に加わる油圧を切換える手動変速手段と、
自動制御により前記複数の摩擦係合要素に加わる油圧を切換える自動変速手段とを備え、
前記手動変速手段にて軸方向に移動および回転の何れか一方を行なうことにより走行レンジを選択し、前記自動変速手段にて軸方向に移動および回転の何れか他方を行なうことで各走行レンジの変速段を選択するカムシャフトを有し、
前記手動変速手段により走行レンジを選択し、前記走行レンジにおける前記自動変速制御による最高変速段で走行中、前記手動変速手段を前記走行レンジからシフトダウン方向に切換えると、前記自動変速手段の位置をシフトダウン前の前記最高変速段位置に保持したまま、シフトダウン後の走行レンジにおける最高変速段より一段低い変速段に移行できることを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。 - 前記手動変速手段は前進用としてDレンジ、2レンジ、Lレンジの順にシフトダウンする走行レンジを有し、前記Dレンジにおける前記自動変速手段による最高変速段での走行中、前記2レンジへ前記手動変速手段をシフトダウンさせると、前記自動変速手段の位置を前記Dレンジにおける
前記自動変速手段の最高変速段位置に保持したまま前記2レンジの最高変速段より一段低い変速段に移行できることを特徴とする請求項1記載の自動変速機用油圧制御装置。
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