JP3897552B2 - 電波吸収体及び電波吸収体の製造方法 - Google Patents

電波吸収体及び電波吸収体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波吸収体及びその製造方法に関するものであり、特に、100MHz〜数GHz帯域における電波の遮蔽に有効な電波吸収体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ等に代表される携帯用電子機器が普及している。最近では、航空機内等における携帯用電子機器によると思われる電磁波干渉の問題が報告され、一部では航空機内での携帯用電子機器の使用が禁止されている。また、携帯電話による医療機器の誤動作が報告されており、病院内での携帯電話の使用が規制されている状況にある。
【0003】
航空機にしても、医療機器にしても、誤動作が人命に関わる重大な影響を及ぼすため、電子機器における不要電波の輻射や発生の防止が重要になっている。特に、携帯用電子機器や携帯電話等から生じる高周波の不要電波の防止が重大な課題となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
不要電波の抑制には、使用周波数帯域における複素透磁率の虚数部μ”が大きな値を示す電波吸収体を用いるのが好ましく、このような電波吸収体として、フェライト材からなる電波吸収体や、軟磁性合金粉末を樹脂等の結着材とともにシート状に固化成形した電波吸収体が提案されている。
【0005】
前記複素透磁率の虚数部μ”は、高周波帯域で数百MHz〜数GHzの周波数帯域で極大を示す透磁率であり、電波吸収体の電磁干渉抑制効果の指標になる数値であり、この虚数部μ”の値が高いものほど電磁干渉抑制効果に優れたものとなる。尚、数百MHz以下の周波数帯域では、複素透磁率の実数部μ’が極大を示す。
従って、動作周波数を増大させていくと、最初に実数部μ’が極大を示し、更なる周波数の向上により実数部μ’が低下すると同時に虚数部μ”が向上し、数百MHz〜数GHzの周波数帯域で虚数部μ”が極大を示す関係になる。
また、実数部μ’及び虚数部μ”の極大周波数はそれぞれ、材料に固有の値であり、従って遮蔽しようとする電波の周波数によって電波吸収体の材料を適宜選択する必要がある。
【0006】
上記のフェライト材からなる電波吸収体は、数百MHzの周波数帯域では虚数部μ”が比較的高く、十分な電磁干渉抑制効果が得られるものの、上記の携帯型電子機器が発するような数GHzの周波数帯域ではμ”が急激に低下し、電磁干渉抑制効果が殆ど得られないという問題があった。また電磁干渉抑制効果を充分に発揮するためには、フェライト材を比較的厚くする必要があり、携帯電話等の小型機器には適用できないという問題があった。
【0007】
また、軟磁性合金粉末からなる電波吸収体は、フェライト材の場合よりも薄くできるので小型機器にも適用可能だが、数百MHz〜数GHzの周波数帯域では虚数部μ”が概ね5以下、高いものでも10以下と小さく、フェライト材の場合と同様に電磁干渉抑制効果が十分に得られないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、数百MHz〜数GHzの周波数帯域の広い範囲で複素透磁率の虚数部μ”が高く、高周波帯域での電磁波抑制効果に優れた電波吸収体を提供することを目的とする。
また、本発明は、1GHz〜10GHzの高周波帯域での複素透磁率の虚数部が高く、このような高周波帯域での電磁波抑制効果に優れた電波吸収体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、ΔTx=Tx-Tg(ただしTxは結晶化開始温度であり、Tgはガラス遷移温度である。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが25K以上である下記の組成式で表されるFe基非晶質軟磁性合金と樹脂とを混合してなり、前記Fe基非晶質軟磁性合金の含有量が40〜55体積%であり、1GHzにおける複素透磁率の虚数部μ''が10以上であることを特徴とする電波吸収体とした。
Fe100-x-v-z-w-tAlx(P1-bSibvzwt
ただし、RはCr元素であり、組成比を示すb、x、v、z、w、tは、0.1≦b≦0.28、x=0原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦1.98原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
上記電波吸収体において、前記組成比を示すtは、t=1.98原子%とすることができる。
温度間隔ΔTxが25K以上のFe基非晶質軟磁性合金であるならば、優れた軟磁気特性を有し、透磁率の高い材料であるので、電波吸収能力が発揮される。
【0010】
本発明は上記の目的を達成するために、前記Fe基非晶質軟磁性合金が、Feと遷移金属とBを含むことを特徴とする。
温度間隔ΔTxが25K以上のFe基非晶質軟磁性合金として、Feと遷移金属とBを含むものが好ましい。
【0011】
本発明は上記の目的を達成するために、前記Fe基非晶質軟磁性合金が、P、C、Siのうちの少なくとも1種以上の半金属元素を含むことを特徴とする。
温度間隔ΔTxが25K以上のFe基非晶質軟磁性合金として、P、C、Siのうちの少なくとも1種以上の半金属元素を含むものが好ましい。
【0012】
本発明は上記の目的を達成するために、前記Fe基非晶質軟磁性合金の含有量が40〜55体積%であることを特徴とする。
樹脂に対して上記範囲のFe基非晶質軟磁性合金の含有量とするならば、目的の高周波領域において好ましい電波吸収特性が得られる。
【0013】
本発明において、前記Fe基非晶質軟磁性合金が、遷移金属として、Cr元素を含むことを特徴とする。温度間隔ΔTxが25K以上のFe基非晶質軟磁性合金として、Cr元素を含むことが好ましい。
【0014】
本発明において、前記Fe基非晶質軟磁性合金が粉末状態で含まれ、前記粉末の平均粒径が1〜80μm、厚さが0.1〜5μmとされてなるものが好ましい。 この範囲の平均粒径と厚さにされているならば、高周波領域における電波吸収特性において優れたものが得られ易い。
係る電波吸収体によれば、扁平型の粉末粒子の厚さおよび平均粒径が上記の範囲なので、電波吸収体自体のインピーダンスの増大により渦電流の発生が抑制され、また扁平型の粒子自体の反磁界が過小にならずにμ’が抑制され、これによりGHz帯域におけるμ”が高くなり、電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
【0015】
本発明において、前記粉末のアスペクト比が1以上、800以下であることが好ましい。本発明において、前記粉末のアスペクト比が5以上、300以下の範囲であることがより好ましい。
係る電波吸収体によれば、前記非晶質軟磁性合金粉末がアスペクト比の高い扁平型粒子で構成されるので、アスペクト比が小さい場合と比較して電波吸収体自体のインピーダンスが高くなり、渦電流の発生が抑制されてGHz帯域におけるμ”が高くなり、この帯域での電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
【0016】
係る電波吸収体によれば、扁平型粒子のアスペクト比が1以上、好ましくは5以上なので、電波吸収体自体のインピーダンスが増大し、渦電流の発生が抑制されてGHz帯域におけるμ”が5以上になるので、電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
また、先のアスペクト比が800以下、好ましくは300以下なので、扁平粒子自体の反磁界が過小にならず、これにより低周波数体域における複素透磁率の実数部μ’が抑制され、一方で虚数部μ”が6以上になるので、電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
本発明において、前記樹脂としては熱可塑性樹脂からなるものとすることができる。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリエチレン等が挙げられ、これらの中でも特に、塩素化ポリエチレンが好ましい。
係る電波吸収体によれば、非晶質軟磁性合金粉末が熱可塑性からなる結着剤とともに固化成形されているので、非晶質軟磁性合金粉末が結着剤により絶縁されて電波吸収体自体のインピーダンスが高められ、これにより渦電流の発生が抑制されて数百MHz〜数GHzの周波数帯域における複素透磁率の虚数部μ”を幅広い範囲で高くすることができ、高周波帯域での電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
更に、結着剤としての樹脂が塩素化ポリエチレンからなる場合、軟質のものを得ることができる。例えば、板ガム状の軟質のもの、あるいは薄い鉛板のような変形可能な軟質のものを得ることができる。これにより、シート状の電波吸収体として利用する場合、貼り付け場所を選ぶ必要が無く、貼り付け箇所の形状に合わせて簡単に添わせることができ、貼り付け作業が容易となり、貼り付け作業自体も容易になる特徴を有する。また、切断して貼り付ける場合にハサミ等で容易に切断可能であり、切断したものも貼り付け、取り付けが容易となる。よって、例えば小さな箱状のシールドケース、小さなケースの内面に装着又は貼り付けることが容易となる。
【0017】
本発明の電波吸収体は、非晶質軟磁性合金粉末とシリコーンエラストマーからなる結着剤とが少なくとも混合され、固化成形されてなることを特徴とする。
係る電波吸収体によれば、非晶質軟磁性合金粉末がシリコーンエラストマーからなる結着剤とともに固化成形されているので、非晶質軟磁性合金粉末が結着剤により絶縁されて電波吸収体自体のインピーダンスが高められ、これにより渦電流の発生が抑制されて数百MHz〜数GHzの周波数帯域における複素透磁率の虚数部μ”を幅広い範囲で高くすることができ、高周波帯域での電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
【0018】
また本発明の電波吸収体は、先に記載の電波吸収体であって、1GHzにおける複素透磁率の虚数部μ”が6以上であることを特徴とする。
係る電波吸収体によれば、1GHzにおける複素透磁率の虚数部μ”が6以上であるので、GHz帯域での電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
【0019】
また本発明の電波吸収体は、先に記載の電波吸収体であって、密度が3.0g/cm3以上であり、前記非晶質軟磁性合金粉末の含有率が30体積%以上80体積%以下であることを特徴とする。
係る電波吸収体によれば、密度が3.0g/cm3以上であるため、非晶質軟磁性合金粉末が密に充填され、粉末を構成する扁平粒子同士の間で隙間が生じることがなく、これによってGHz帯域におけるμ”が高くなり、電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
また非晶質軟磁性合金粉末の含有率が30体積%以上なので、電磁波抑制効果を有効に発揮させることができ、また非晶質軟磁性合金粉末の含有率が80体積%以下なので、粉末同士の過密化による電波吸収体のインピーダンスの低下を防止し、電磁波抑制効果を有効に発揮させることができる。
【0020】
本発明の電波吸収体は、先に記載の電波吸収体であって、前記扁平型の粉末粒子が水ガラスにより被覆されていることを特徴とする。
係る電波吸収体によれば扁平型の粉末粒子が水ガラスで被覆されているので、粒子同士の絶縁性が高められて電波吸収体自体のインピーダンスが更に向上し、高周波数帯域におけるμ”を更に高くすることができ、電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
【0021】
また本発明の電波吸収体は、先に記載の電波吸収体であって、前記非晶質軟磁性合金が、ΔTx=Tx-Tg(ただしTxは結晶化開始温度であり、Tgはガラス遷移温度である。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含み、非晶質相を主相とする組織からなることを特徴とする。
【0022】
係る電波吸収体によれば、非晶質軟磁性合金粉末が過冷却液体の温度間隔ΔTxを有する金属ガラス合金からなり、この金属ガラス合金は従来の軟磁性合金と比べて複素透磁率の実数部μ’が高いので、この合金を粉末化して結着剤を添加して絶縁性を向上させることにより、当該実数部μ’を反映した高い虚数部μ”が発現され、電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
【0023】
また本発明の電波吸収体は、先に記載の電波吸収体であって、前記非晶質軟磁性合金粉末と前記結着剤とが混合されて固化成形された後、前記非晶質軟磁性合金のキュリー点温度(Tc)以上結晶化開始温度(Tx)以下の範囲で熱処理されてなることを特徴とする。
係る電波吸収体によれば、熱処理により電波吸収体自体の歪みが緩和されるので、磁歪の影響が小さくなり、これにより複素透磁率の虚数部μ”が高くなって電磁波抑制効果を向上させることが可能になる。
【0026】
また、前記非晶質軟磁性合金は、下記の組成式で表される。
Fe100-x-v-z-w-tAlx(P1-bSibvzwt
ただし、RはCr元素であり、組成比を示すb、x、v、z、w、tは、0.1≦b≦0.28、x=0原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦1.98原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
【0028】
次に本発明の電波吸収体の製造方法は、非晶質軟磁性合金粉末とシリコーンエラストマーからなる結着剤とを混合した後、室温以上の温度かもしくは373〜473Kの温度で固化成形し、更に600〜850Kの熱処理温度で熱処理することを特徴とする。
係る電波吸収体の製造方法によれば、熱処理によって固化成形時に電波吸収体に印加された歪みが緩和されるので、磁歪の影響が小さくなり、これにより複素透磁率の虚数部μ”が高くなって電磁波抑制効果に優れた電波吸収体とすることが可能になる。
【0029】
次に本発明の電波吸収体の製造方法は、非晶質軟磁性合金粉末とシリコーンエラストマーからなる結着剤とを混合した後、423〜673Kの温度で固化成形すると同時に熱処理することを特徴とする。
係る電波吸収体の製造方法によれば、固化成形と同時に熱処理できるので、製造工程を省略できるとともに、磁歪を小さくして複素透磁率の虚数部μ”を高めることで、電磁波抑制効果に優れた電波吸収体とすることが可能になる。
【0030】
また本発明の電波吸収体の製造方法は、先に記載の電波吸収体の製造方法であって、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含む合金溶湯を急冷して球状の粒子を含む非晶質合金粉末とし、該非晶質合金粉末をアトライタに投入して10分〜16時間の範囲で粉砕混合することにより、扁平型粒子を主として含む前記の非晶質軟磁性合金粉末を得ることを特徴とする。なお、合金溶湯は非晶質形成能の向上や耐食性を向上させるために、それぞれ、Cr元素Rを適宜添加すると良い。係る電波吸収体の製造方法によれば、非晶質合金粉末をアトライタに投入して上記の条件で粉砕混合することにより、適当なアスペクト比を有する扁平型粒子を主として含む非晶質軟磁性合金粉末を得ることが可能になる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電波吸収体の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明の電波吸収体の1つの形態は、ΔTx=Tx-Tg(ただしTxは結晶化開始温度であり、Tgはガラス遷移温度である。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが25K以上のFe基非晶質軟磁性合金の粉末と樹脂とを混合して、シート状に固化成形したものである。ここで用いる樹脂とは、塩化ビニル、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を選択することができ、これら熱可塑性樹脂の中でも、塩素化ポリエチレンが加工性の点で特に好ましい。
この種の塩素化ポリエチレンにおいては、ポリエチレンとポリ塩化ビニルの中間と考えらえる特性を発揮し、塩素含有量としては、例えば、30〜45%、伸び率として例えば420〜800%、ムーニー粘度35〜75(Ms1+4:100℃)などの特性のものを使用することができる。
また、本発明の電波吸収体の他の1つの形態は、先のFe基非晶質軟磁性合金粉末とシリコーンエラストマーからなる結着剤とが少なくとも混合され、シート状に固化成形されてなるものである。
また先の電波吸収体には、Fe基非晶質軟磁性合金と結着剤としての樹脂の他に、ステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤が添加されていてもよく、更にシランカップリング剤が添加されていても良い。
【0032】
先の電波吸収体は、Fe基非晶質軟磁性合金粉末が結着剤としての樹脂とともに固化成形されているので、Fe基非晶質軟磁性合金粉末が樹脂の内部で分散された構造とされている。
また、先の他の電波吸収体は、Fe基非晶質軟磁性合金粉末がシリコーンエラストマーからなる結着剤とともに固化成形されてなるもので、非晶質軟磁性合金粉末が分散した状態となっており、特に非晶質軟磁性合金粉末を構成する個々の粒子がシリコーンエラストマーによって絶縁されていることが好ましい。
これらのように、非晶質軟磁性合金粉末が樹脂の結着剤により絶縁されているので、電波吸収体自体のインピーダンスが高められ、これにより渦電流の発生が抑制されて数百MHz〜数GHzの周波数帯域における複素透磁率の虚数部μ”(以下、虚数透磁率μ”と表記)を幅広い範囲で高くすることができ、高周波帯域での電磁波抑制効果を向上させることができる。
【0033】
先の電波吸収体において、熱可塑性樹脂を結着剤として用いてなるものは、1GHzにおける虚数透磁率μ”が6以上のものである。虚数透磁率μ”が6以上であると、GHz帯域での電磁波抑制効果が向上して、高周波の電波を効果的に遮蔽することができるので好ましい。また、結着剤が軟質のものを選択することにより、電波吸収体として軟質のものを得ることができ、例えば板ガムのように自由に指先の力で変形できる形態のものを得ることができる。例えば前述のシリコーンエラストマーを結着剤としたものよりも遥かに柔軟で変形自在な特徴を有する。
また、先の電波吸収体において、シリコーンエラストマーを結着剤として用いてなるものは、1GHzにおける虚数透磁率μ”が10以上のものを得ることが可能である。虚数透磁率μ”が10以上であると、GHz帯域での電磁波抑制効果が向上して、高周波の電波を効果的に遮蔽することができるので好ましい。
【0034】
またシリコーンエラストマーと塩素化ポリエチレンは、電波吸収体のインピーダンスを高める他に、非晶質軟磁性合金粉末を結着して電波吸収体の形状を保持する。またシリコーンエラストマーは圧縮成形性に優れるので、常温で固化成形しても高強度の電波吸収体を構成できる。更にシリコーンエラストマーと塩素化ポリエチレンは電波吸収体内部でも十分な弾性を示し、例えば1×10-6〜50×10-6の磁歪定数を示す非晶質軟磁性合金粉末用いた場合でも、歪みを緩和させることができ、電波吸収体の内部応力を緩和して虚数透磁率μ”を高めることができる。
【0035】
尚、前述の樹脂にステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤を添加すると、非晶質軟磁性合金粉末が密に充填されて電波吸収体の密度が向上する。これにより虚数透磁率μ”が高くなる。
また、前述の樹脂にシランカップリング剤を添加すると、非晶質軟磁性合金粉末とシリコーンエラストマーとがシランカップリング剤によって強く結合され、非晶質軟磁性合金粉末の表面にシリコーンエラストマーが均一に被覆される。これにより非晶質軟磁性合金粉末同士の絶縁性が高められて虚数透磁率μ”が向上する。
【0036】
非晶質軟磁性合金粉末は、扁平型粒子を主として含むものであり、この扁平型粒子は、アスペクト比(長径/厚さ)が1以上800以下の範囲のものである。具体的には、粒子の厚さが0.1〜5μmの範囲(好ましくは1〜2μm)であるとともに長径が1〜80μm(好ましくは2〜80μm)の範囲のものである。
【0037】
非晶質軟磁性合金粉末が比較的アスペクト比の高い扁平型粒子で構成されるので、アスペクト比が小さい場合と比べて電波吸収体自体のインピーダンスが高くなり、渦電流の発生が抑制されてGHz帯域における虚数透磁率μ”がより高くなり、この帯域での電磁波抑制効果が向上するためである。
【0038】
具体的には、扁平型粒子のアスペクト比が1以上であれば、粒子同士の接触が少なくなって電波吸収体自体のインピーダンスが増大し、渦電流の発生が抑制されてGHz帯域における虚数透磁率μ”が6以上になり易く、これにより電波吸収体の電磁波抑制効果が向上する。
扁平型粒子のアスペクト比が10以上であれば、粒子同士の接触が更に少なくなって電波吸収体自体のインピーダンスが増大する割合が増加し、渦電流の発生が抑制されてGHz帯域における虚数透磁率μ”が10以上になり易く、これにより電波吸収体の電磁波抑制効果が向上する。
アスペクト比の上限は800以下とするのが好ましい。アスペクト比が800以下であれば、扁平粒子自体の反磁界が過小にならず、低周波数帯域における複素透磁率の実数部μ’(以下、実効透磁率μ’と表記)が低く抑制され、これと対照的に虚数透磁率μ”が6以上になり易く、電磁波抑制効果が向上する。
アスペクト比の上限は300以下とするのがより好ましい。アスペクト比が300以下であれば、扁平粒子自体の反磁界が過小にならず、低周波数帯域における複素透磁率の実数部μ’(以下、実効透磁率μ’と表記)がより低く抑制され、これと対照的に虚数透磁率μ”が10以上になり易く、電磁波抑制効果がより向上する。
【0039】
電波吸収体の密度は3.0g/cm3以上であることが好ましい。密度が3.0g/cm3以上であると、非晶質軟磁性合金粉末が密に充填されて扁平粒子同士の隙間が少なくなり、これによってGHz帯域における虚数透磁率μ”が10以上になり易く、電磁波抑制効果が向上する。
電波吸収体の密度は高いほど好ましいが、あまりに高くなると扁平型粒子が密に充填され過ぎて電波吸収体のインピーダンスが低減し、渦電流が発生して虚数透磁率μ”が低くなる。従って電波吸収体の密度の上限を6.5g/cm3以下に設定することが好ましい。
【0040】
電波吸収体における非晶質軟磁性合金粉末の含有率は、30体積%以上80体積%以下であることが好ましい。非晶質軟磁性合金粉末の含有率が30体積%以上であれば、磁性体の量が十分となり、電磁波抑制効果を有効に発揮させることができる。また含有率が80体積%以下であれば、合金粉末同士が接触してインピーダンスが低下することがなく、虚数透磁率μ”を確実に高く維持して電磁波抑制効果を有効に発揮させることができる。
シリコーンエラストマーあるいは塩素化ポリエチレンの含有率は、非晶質軟磁性合金粉末を除いた残部である。
【0041】
潤滑剤を添加する場合には、電波吸収体に対して0.1重量%以上、5重量%以下の範囲で添加することが好ましい。またシランカップリング剤を添加する場合には、電波吸収体に対して0.1重量%以上、2重量%以下の範囲で添加するのが好ましい。
【0042】
更に前述の扁平型粒子を水ガラスで被覆しても良い。扁平型粒子を水ガラスで被覆すると、粒子同士の絶縁性が更に高められて電波吸収体のインピーダンスが更に向上し、高周波数帯域における虚数透磁率μ”をより高くすることができ、電磁波抑制効果を向上できる。
【0043】
次に、本発明に係る非晶質軟磁性合金粉末は、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度であり、Tgはガラス遷移温度である。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが25K以上であって、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含み、非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末である。
この金属ガラス合金としては、比抵抗が1.5μΩ・m以上のものが好ましく、また磁歪定数が1×10-6〜50×10-6の範囲のものが好ましい。
【0044】
従来から非晶質軟磁性合金の1種として、Fe-Al-Ga-C-P-Si-B系の金属ガラス合金が知られている。この従来の組成系の金属ガラス合金は、Feに非晶質形成能を有するAl、Ga、C、P、Si及びBを添加したものである。この従来の非晶質軟磁性合金に対して本発明の非晶質軟磁性合金は、Feと、P、C、Bとを少なくとも含有し、必要に応じてNi、Co、Si及びR(Cr元素)を添加したものであり、Gaを除去してこのGa置換でFeを増量させたものであり、従来から必須元素と考えられてきたGaを除去しても非晶質相を形成することが確認され、更には過冷却液体の温度間隔ΔTxをも発現することが見出された。更に本発明の非晶質軟磁性合金は、非晶質の粉末を作る上で必要な非晶質形成能を十分に維持しつつ、従来のFe-Al-Ga-C-P-Si-B系合金よりも磁気特性を向上させることができ、なおかつ、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法など、様々な粉末形成方法に耐え得る耐食性を得ることができるものである。
【0045】
本発明の非晶質軟磁性合金は、磁性を示すFeと、非晶質形成能を有するP、C、Bを少なくとも具備しているので、非晶質相を主相とするとともに優れた軟磁気特性を示す。また、Ni、Coのいずれか一方または両方をFe置換で添加しても良く、更にP、C、Bに加えてSiを添加しても良い。またR(Cr元素)を添加しても良く、非晶質形成能を更に向上させるためにAlを添加しても良い。
【0046】
この非晶質軟磁性合金は、25K以上の過冷却液体の温度間隔ΔTxを示す金属ガラス合金であり、組成によってはΔTxが30K以上、さらには50K以上という顕著な温度間隔を有し、これまでの知見から知られる他の合金からは全く予期されないものであり、軟磁性についても室温で優れた特性を有しており、これまでの知見に見られない全く新規なものである。
本発明の非晶質軟磁性合金は、従来のFe-Al-Ga-C-P-Si-B系合金よりもFe、Ni、Co等の磁性元素を多く含むために高い飽和磁化を示す。従って本発明の非晶質軟磁性合金は、従来の金属ガラス合金よりも飽和磁化を格段に向上させることができる。
また組織全体が完全な非晶質相であることから、適度な条件で熱処理した場合に結晶質相が析出させることなく内部応力を緩和でき、軟磁気特性をより向上させることができる。
【0047】
また本発明の非晶質軟磁性合金は、過冷却液体の温度間隔ΔTxが大きいために、溶融状態から冷却するとき、広い過冷却液体領域を有し、結晶化することなく温度の低下に伴ってガラス遷移温度Tgに至って非晶質相を容易に形成する。従って、冷却速度が比較的遅くても充分に非晶質相を形成することが可能であり、例えばガスアトマイズ法のように、合金溶湯を不活性ガスにより噴霧して急冷する方法によって、非晶質相組織を主体とする粉末状の合金を得ることができ、実用性に優れたものとなる。
【0048】
上記の非晶質軟磁性合金の一例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
Fe100-x-y-z-w-tAlxyzwt
ただし、RはCr、Mo、Vより選ばれる1種または2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、w、tは、0原子%≦x≦10原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(y+z+w)≦30原子%である。
【0049】
また、上記の非晶質軟磁性合金の別の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
(Fe1-aa100-x-y-z-w-tAlxyzwt
ただし、RはCr、Mo、Vより選ばれる1種または2種の元素であり、TはCo、Niより選ばれる1種または2種の元素であり、組成比を示すa、x、y、z、w、tは、0.1≦a≦0.15、0原子%≦x≦10原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(y+z+w)≦30原子%である。
【0050】
更に、上記の非晶質軟磁性合金の他の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
Fe100-x-v-z-w-tAlx(P1-bSibvzwt
ただし、RはCr、Mo、Vより選ばれる1種または2種の元素であり、組成比を示すb、x、v、z、w、tは、0.1≦b≦0.28、0原子%≦x≦10原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
【0051】
更にまた、上記の非晶質軟磁性合金のその他の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
(Fe1-aa100-x-v-z-w-tAlx(P1-bSibvzwt
ただし、RはCr、Mo、Vより選ばれる1種または2種の元素であり、TはCo、Niより選ばれる1種または2種の元素であり、組成比を示すa、b、x、v、z、w、tは、0.1≦a≦0.15、0.1≦b≦0.28、0原子%≦x≦10原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−v−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
上記の組成の非晶質軟磁性合金は、合金の融点をTmとしたとき、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg以上を示す。
【0052】
また、FeとP、C、Bとを少なくとも含む上記の非晶質軟磁性合金の好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx、y、z、w、tが、0原子%≦x≦6原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦4原子%、76原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、18原子%≦(y+z+w)≦24原子%となる範囲である。
また、FeとP、C、B、Siとを少なくとも含む上記の非晶質軟磁性合金の好ましい範囲は、前記の組成比のうちのx、v、z、w、tが、0原子%≦x≦6原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦4原子%、76原子%≦(100−x−v−z−w−t)≦79原子%、18原子%≦(v+z+w)≦24原子%となる範囲である。
【0053】
上記の好ましい組成範囲の非晶質軟磁性合金においては、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが200×10-6Wb・m/kg以上を示す。
更に、FeとP、C、Bとを少なくとも含む上記の非晶質軟磁性合金のより好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx、y、z、w、tが、0原子%≦x≦5原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦3原子%、77原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、18原子%≦(y+z+w)≦23原子%となる範囲である。
更にまた、FeとP、C、B、Siとを少なくとも含む上記の非晶質軟磁性合金のより好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx、v、z、w、tが、0原子%≦x≦5原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦3原子%、77原子%≦(100−x−v−z−w−t)≦79原子%、18原子%≦(v+z+w)≦23原子%となる範囲である。
【0054】
上記のより好ましい組成の非晶質軟磁性合金においては、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが210×10-6Wb・m/kg以上を示す。
また、上記の非晶質軟磁性合金を示す組成比tは、2原子%≦t≦8原子%の範囲であっても良く、2原子%≦t≦4原子%の範囲であっても良く、2原子%≦t≦3原子%の範囲であっても良い。
【0055】
以下に、本発明の非晶質軟磁性合金の組成限定理由について説明する。
Feは磁性を担う元素であって、本発明の非晶質軟磁性合金に必須の元素である。また、Feの一部をCo、Niのいずれか一方または両方の元素Tで置換しても良い。
Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比を高くすると、非晶質軟磁性合金の飽和磁化σsを向上できる。
【0056】
Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比は、70原子%以上79原子%以下であることが好ましく、76原子%以上79原子%以下であることがより好ましく、77原子%以上79原子%以下であることが更に好ましい。
Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比が70原子%未満では、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg未満に低下してしまうので好ましくない。また、組成比が79原子%を越えると、合金の非晶質形成能の程度を示すTg/Tmが0.57未満になり、非晶質形成能が低下するので好ましくない。
尚、組成比が76原子%以上であれば合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にでき、組成比が77原子%以上であれば合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にできる。
【0057】
また、Fe置換で元素Tを添加する場合には、上記組成式中の組成比aで示すように、Feの添加量の10〜15%を置換して元素Tを添加することが好ましい。元素Tを添加することにより、合金を構成する原子の充填密度が向上し、原子の再配列が抑制されることにより熱的安定性が向上する。特にCoを添加すると、キュリー温度が向上し、また融点が低下することにより非晶質形成能も向上する。
元素Tの添加量がFe量の10%未満では元素Tの添加効果が見られず、添加量がFe量の15%を越えるとFe量が相対的に低下して飽和磁化が低下してしまうので好ましくない。
【0058】
Alは、本発明の非晶質軟磁性合金の非晶質形成能を向上させるために必要に応じて添加する元素である。Alの組成比xを0原子%以上10原子%以下の範囲とすることにより、合金の非晶質形成能を更に向上させることができる。
具体的には、組成比xが0原子%以上10原子%以下であるときに、合金の非晶質形成能の程度を示すTg/Tmが0.57以上となり、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg以上にできる。しかし、AlをFe置換で添加する場合、飽和磁化σsが低下し、コストも増大するため、Alは必要に応じて添加するのがよい。
Alは、Feとの間での混合エンタルピーが負であり、Feよりも原子半径が大きく、更にFeよりも原子半径が小さいP、B、Siとともに用いることにより、結晶化し難く、非晶質構造が熱的に安定化した状態となる。
Alの組成比xは、0原子%以上10原子%以下であることが好ましく、0原子%以上6原子%以下であることがより好ましく、0原子%以上5原子%以下であることが更に好ましい。組成比xが10原子%を越えると、Fe量が相対的に低下して飽和磁化σsが低下し、またTg/Tmが0.57未満になって非晶質形成能が低下するので好ましくない。
Alを添加する場合、Alの添加効果、即ち、非晶質形成能と熱的安定性の向上を得るためには、少なくとも1原子%以上添加することが好ましい。
【0059】
また、Fe単独、またはFeと元素Tの合計の組成比が76原子%以上であり、かつAlの組成比xが0原子%以上6原子%以下の場合に、合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にできる。
更に、Fe単独、またはFeと元素Tの合計の組成比が77原子%以上であり、かつAlの組成比xが0原子%以上5原子%以下の場合に、合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にできる。
【0060】
C、P、B及びSiは、非晶質形成能を高める元素であり、FeとAlにこれらの元素を添加して多元系とすることにより、FeとAlのみの2元系の場合よりも安定して非晶質相が形成される。
特にPはFeと低温(約1050℃)で共晶組成を持つため、組織の全体が非晶質相になるとともに過冷却液体の温度間隔ΔTxが発現しやすくなる。
PとSiを同時に添加すると、過冷却液体の温度間隔ΔTxがより大きくなって非晶質形成能が向上し、非晶質単相の組織を得る際の製造条件を比較的簡易な方向に緩和できる。
【0061】
Siを無添加とした場合におけるPの組成比yは、2原子%以上15原子%以下であることが好ましく、5原子%以上15原子%以下であることがより好ましく、7原子%以上13原子%以下であることが最も好ましい。
Pの組成比yが上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxが発現して合金の非晶質形成能が向上する。
【0062】
PとSiを同時に添加する場合は、PとSiの合計量を示す組成比vが2原子%以上15原子%以下であることが好ましく、8原子%以上15原子%以下であることがより好ましく、10原子%以上14原子%以下であることが最も好ましい。
PとSiの合計量を示す組成比vが上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxが向上し、これにより合金の非晶質形成能が向上する。
【0063】
PとSiを同時に添加した場合のSiとPとの比(Si/P)を表す組成比bは、0.1≦b≦0.28であることが好ましい。組成比bが0.1未満ではSiの添加効果が見られないので好ましくなく、組成比bが0.28を越えるとSiの量が過剰になって過冷却液体領域ΔTxが消滅するおそれがあるので好ましくない。
PとSiの組成比を示すb、vを上記の範囲とするならば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質単相となるバルクの大きさを増大させることができる。
【0064】
またBの組成比wは、4原子%以上10原子%以下であることが好ましく、6原子%以上10原子%以下であることがより好ましく、6原子%以上9原子%以下であることが最も好ましい。
更にCの組成比zは、0原子%を越えて11.5原子%以下であることが好ましく、2原子%以上8原子%以下であることがより好ましく、2原子%以上5原子%以下であることが最も好ましい。
【0065】
そして、これらの半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y+z+w)または(v+z+w)は、11原子%以上30原子%以下であることが好ましく、18原子%以上24原子%以下とすることがより好ましく、18原子%以上23原子%以下とすることが更に好ましい。
半金属元素の合計の組成比が11原子%未満であると、非晶質軟磁性合金の非晶質形成能が低下して非晶質相単相組織を得ることができないので好ましくなく、半金属元素の合計の組成比が30原子%を越えると、特にFeの組成比が相対的に低下し、飽和磁化σsが低下するので好ましくない。
【0066】
Fe単独またはFeと元素Tの合計の組成比が76原子%以上のときに、半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y+z+w)または(v+z+w)を18原子%以上24原子%以下とすることにより、合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にできる。
更に、Fe単独またはFeと元素Tの合計の組成比が77原子%以上のときに、半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y+z+w)または(v+z+w)を18原子%以上23原子%以下とすることにより、合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にできる。
【0067】
また、Crを添加することによって合金の耐食性が向上する。
例えば、水アトマイズ法において、溶湯が直接水に触れたとき、更には粉末の乾燥工程において生じる錆の発生を防ぐことができる(目視レベル)。Crの組成比tは、0原子%以上8原子%以下であることが好ましい。Crを添加すると合金の耐食性を高めることができるが、Crの組成比tが8原子%を越えるとFe濃度が相対的に低下し、磁気特性が低下するので好ましくない。
また、Crの組成比tは、0原子%以上4原子%以下であることがより好ましく、0原子%以上3原子%以下であることが更に好ましい。
更にCrの組成比tは、1原子%以上8原子%以下でもよく、1原子%以上4原子%以下でもよく、1原子%以上3原子%以下でもよい。
Crの組成比tが2原子%以上であれば合金の耐食性をより向上させることができる。また、Crの組成比tが4原子%以下であれば飽和磁化σsを向上させることができ、Crの組成比tが3原子%以下であれば飽和磁化σsをより向上させることができる。
【0068】
また、同様な効果はCrの他にMo、Vにもあり、これらの元素を単独で添加するか、Mo、VとMo、CrとV、Cr及びCr、Mo、V等の組合せで複合添加しても良い。これらの元素のうち、Crは耐食性に最も良く効き、Mo,Vは耐食性がCrより若干劣るものの非晶質形成能が向上するため、必要に応じてこれらの元素を選択する。
また、上記の組成に、Geが4原子%以下含有されていてもよく、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Zrのうち少なくとも1種以上が0〜7原子%含有されていてもよい。
上記のいずれの場合の組成においても、本発明においては、過冷却液体の温度間隔ΔTxは20K以上、組成によっては35K以上が得られる。
また上記の組成で示される元素の他に不可避的不純物が含まれていても良い。
【0069】
本発明に係る非晶質軟磁性合金は、溶製してから単ロールもしくは双ロールによる急冷法によって、さらには液中紡糸法や溶液抽出法によって、あるいはガスアトマイズ法または水アトマイズ法によって、もしくは射出成形法によって、バルク状、リボン状、線状体、粉末等の種々の形状として製造される。
特に、従来公知の非晶質軟磁性合金薄帯を粉砕して得られた薄片状の粒子からなる粉末に対し、本発明では上記のガスアトマイズ法または水アトマイズ法によって、形状が略球状の粒子からなる合金粉末を得ることができる。
【0070】
ガスアトマイズ法により得られた前記組成の非晶質軟磁性合金は、室温において磁性を有し、また熱処理によってより良好な磁性を示す。このため優れたSoft magnetic特性(軟磁気特性)を有する材料として各種の応用に有用なものとなる。
なお、製造方法について付言すると、合金の組成、そして製造のための手段と製品の大きさ、形状等によって、好適な冷却速度が決まるが、通常は1〜104K/s程度の範囲を目安とすることができる。そして実際には、ガラス相(glassy phase)に結晶相としてのFe3B、Fe2B、Fe3P等の相が析出するかどうかを確認することで決めることができる。
【0071】
上記の非晶質軟磁性合金の製造方法の一例として、ガスアトマイズ法について説明する。
ガスアトマイズ法は、上述の組成からなる非晶質軟磁性合金の溶湯を、高圧の不活性ガスとともに不活性ガスで満たされたチャンバ内部に霧状に噴霧し、該不活性ガス雰囲気中で急冷して合金粉末を製造するというものである。
なお、ガスアトマイズ法の他に、水等の冷却液に対して合金溶湯を高速噴霧して急冷する水アトマイズ法を適用して球形型の非晶質軟磁性合金粉末を製造することもできるのは勿論である。
【0072】
図1は、ガスアトマイズ法による合金粉末の製造に好適に用いられる高圧ガス噴霧装置の一例を示す断面模式図である。
この高圧ガス噴霧装置1は、溶湯るつぼ2と、ガス噴霧器3と、チャンバ4とを主体として構成されている。
溶湯るつぼ2の内部には合金溶湯5が充填されている。また溶湯るつぼ2には加熱手段たるコイル2aが備えられており、合金溶湯5を加熱して溶融状態に保つように構成されている。そして、溶湯るつぼ2の底部には溶湯ノズル6が設けられており、合金溶湯5は溶湯ノズル6からチャンバ4の内部に向けて滴下されるか、若しくは溶湯るつぼ2内に不活性ガスを加圧状態で導入して合金溶湯5を溶湯ノズル6から噴出させる。
【0073】
ガス噴霧器3は溶湯るつぼ2の下側に配設されている。このガス噴霧器3にはAr、窒素等の不活性ガスの導入流路7と、この導入流路7の先端部であるガス噴射ノズル8とが設けられている。
不活性ガスは、図示しない加圧手段によってあらかじめ2〜15MPa程度に加圧されており、導入流路7によってガス噴射ノズル8まで導かれ、このノズル8からチャンバ4内部へガス流gとなって噴出される。
チャンバ4の内部には、ガス噴霧器3から噴出される不活性ガスと同種の不活性ガスが充填されている。チャンバ4内部の圧力は70〜100kPa程度に保たれており、また温度は室温程度に保たれている。
なお、先のガスアトマイズ法を実施するための高圧ガス噴霧装置1のチャンバ4において底部側に水を収容しておくように構成すると、水アトマイズ法を実施することができる。
【0074】
合金粉末を製造するには、まず、溶湯るつぼ2に充填された合金溶湯5を溶湯ノズル6からチャンバ4内に滴下する。同時に、ガス噴霧器3のガス噴射ノズル8から不活性ガスを噴射する。噴射された不活性ガスは、ガス流gとなって滴下された溶湯まで達し、噴霧点pにおいて溶湯に衝突して溶湯を霧化する。
霧状にされた合金溶湯はチャンバ4内で急冷凝固し、非晶質相を主相とする略球状の粒子となってチャンバ4の底部に堆積する。このようにして合金粉末が得られる。
【0075】
合金粉末の粒径は、噴出する不活性ガスの圧力、溶湯の滴下速度、溶湯ノズル6の内径等により調整することができ、数μm〜百数十μmの粒径のものを得ることができる。
【0076】
そして、このようにして得られた非晶質合金粉末をアトライタに投入し、10分〜16時間の範囲で粉砕混合することにより、扁平型粒子を主として含む前記の非晶質軟磁性合金粉末が得られる。
アトライタによる粉砕混合は10分〜16時間の範囲で行うことが好ましく、4〜8時間の範囲がより好ましい。
粉砕混合の時間が10分未満だと、扁平化が不十分なために扁平型粒子のアスペクト比を1以上、例えば10以上にできない傾向があり、粉剤混合の時間が16時間を超えると、扁平型粒子のアスペクト比が80以上を越えるようになる。
【0077】
得られた合金粉末は必要に応じて熱処理しても良い。熱処理をすることで合金の内部応力が緩和され、非晶質軟磁性合金の軟磁気特性をより向上できる。熱処理温度Taは、合金のキュリー温度Tc以上ガラス遷移温度Tg以下の範囲が好ましい。熱処理温度Taがキュリー温度Tc未満であると、熱処理による軟磁気特性向上の効果が得られないので好ましくない。また熱処理温度Taがガラス遷移温度Tgを越えると、合金組織中に結晶質相が析出しやすくなり、軟磁気特性が低下するおそれがあるので好ましくない。
また熱処理時間は、合金の内部応力を充分に緩和させるとともに結晶質相の析出のおそれのない範囲が好ましく、例えば30〜300分の範囲が好ましい。
【0078】
次に上記の金属ガラス合金の粉末にシリコーンエラストマー等の結着剤を加えて混合し、必要に応じて潤滑剤またはシランカップリング剤を添加し、この混合物を室温以上の温度か、もしくは、373K〜473Kの温度で固化成形してシート状とし、更に600K〜850Kの熱処理温度で熱処理することにより、本発明に係る電波吸収体が得られる。
また、塩素化ポリエチレンを結着剤として用いても良く、必要に応じて潤滑剤もしくはシランカップリング剤、架橋剤を添加し、353K〜423Kの範囲で混練、成形し、更に353K〜850Kの熱処理温度で熱処理することにより、本発明に係る電波吸収体が得られる。
なお、本発明に係る電波吸収体にあってはシート状に形成することが利用形態として好ましいが、形状をシート状に限るものではなく、網目状、袋状等別種の形状に加工しても良いのは勿論である。
【0079】
上記の方法によれば、熱処理によってシート状成形時に電波吸収体に印加された歪みが緩和されるので、磁歪の影響が小さくなり、これにより複素透磁率の虚数部μ”が高くなって電磁波抑制効果に優れた電波吸収体が得られる。
【0080】
尚、シリコーンエラストマーを結着剤として用いて固化成形する際の温度は、室温以上の温度か、もしくは373〜473Kの範囲が好ましい。固化成形時の温度が室温未満では、温度が不十分なために上記の混合物を固化成形できないので好ましくなく、温度が473Kを越えると、固化成形時にシリコーンエラストマーがしみ出してしまうおそれがあるので好ましくない。また、工数を短縮するためには室温付近の温度で固化成形するのが好ましいが、より確実に固化成形させるためには373K以上の温度で固化成形させると良い。
また、シリコーンエラストマーを結着剤として用いる場合の熱処理温度は600〜850Kの範囲が好ましく、640K〜811Kの範囲がより好ましい。特に、金属ガラス合金のキュリー温度Tc以上結晶化開始温度Tx以下であることがより好ましい。
熱処理温度が600K未満では、温度が不十分なために電波吸収体の内部応力を緩和できず、虚数透磁率μ”を向上させることができないので好ましくない。また熱処理温度が811Kを越えると、金属ガラス合金が結晶化するおそれがあるので好ましくない。
【0081】
次に、塩素化ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を結着剤として用いる場合、混練、成形する際の温度は353K〜423Kの範囲が好ましい。混練、成形時の温度が353K未満では樹脂が十分に軟化せず、金属ガラス合金と樹脂が混ざらないので好ましくなく、温度が423Kを越えると樹脂が熱分解を起こし変質してしまうので好ましくない。
また、塩素化ポリエチレンを結着剤として用いる場合の熱処理温度は353K〜423Kの範囲が好ましいが、熱処理はキュリー温度Tc以上、結晶化開始温度Tx以下が望ましいため、架橋剤を添加して樹脂の耐熱性を上げ、熱処理温度を353K〜850Kの範囲とすることが好ましく、特に535K〜723Kとするのが好ましい。
熱処理温度が535K未満では、温度が不十分なため、電波吸収体の内部応力を緩和できず、虚数透磁率μ''を向上させることができないので好ましくない。また、熱処理温度が723Kを越えると、樹脂が変質するため好ましくない。
【0082】
また、別の方法として、上記の金属ガラス合金の粉末にシリコーンエラストマーを加えて混合し、必要に応じて潤滑剤またはシランカップリング剤を添加し、この混合物を423〜673Kの温度で固化成形すると同時に熱処理することによっても本発明の電波吸収体が得られる。
更に、上記の金属ガラスの粉末に塩素化ポリエチレンを加え、必要に応じて潤滑剤、シランカップリング剤、架橋剤を添加し、この混合物を353K〜723Kの温度で混練、シート状に成形するとともに、同時に熱処理することによっても本発明の電波吸収体が得られる。
これらの方法によれば、シート状に成形と同時に熱処理できるので、製造工程を省略できるとともに、磁歪を小さくして透磁率の虚数部μ”を高めることができ、電磁波抑制効果に優れた電波吸収体を得ることができる。
【0083】
尚、シリコーンエラストマーに加えて潤滑剤またはシランカップリング剤を添加する場合、固化成形及び熱処理の温度は423〜673Kの範囲が好ましい。温度が423K未満では、温度が不十分なために上記の混合物を固化成形できないとともに電波吸収体の内部応力を緩和できず、虚数透磁率μ”を向上させることができないので好ましくない。また温度が673Kを越えると、シリコーンエラストマーがしみ出してしまうおそれがあるとともに金属ガラス合金が結晶化するおそれがあるので好ましくない。
塩素化ポリエチレンに加えて潤滑剤またはシランカップリング剤を添加する場合、シート状に成形する際の成形温度及び熱処理の温度は353K〜723Kの範囲が好ましい。温度が353K未満では、温度が不十分なために上記の混合物を混練、シート状に成形できないとともに電波吸収体の内部応力を緩和できず、虚数透磁率μ”を向上させることができないので好ましくない。また温度が723Kを越えると、塩素化ポリエチレンが変質してしまうおそれがあるとともに金属ガラス合金が結晶化するおそれがあるので好ましくない。
【0084】
ここで用いる固化成形手段の一例として放電プラズマ焼結装置を用いることができる。放電プラズマ焼結装置とは、上パンチと下パンチの間に被成形物を挟んだ状態でパルス電流を流しながら被成形物を固化成形することができ、さらにパルス電流を引き続き流すことで熱処理を同時に行える装置であり、この種のFe基非晶質軟磁性合金粉末を固化成形する場合に本発明者らが適用して来た装置であって、その構造の一例は特願2000−79062号などの明細書に記載されたものである。
この放電プラズマ焼結装置は、真空排気可能あるいは不活性ガス雰囲気に調整可能なチャンバの内部に配置されていて、真空雰囲気あるいは雰囲気ガス雰囲気においてパルス電流を印加しながら上下のパンチで被成形物を素早く目的の温度に昇温して非晶質の状態を維持したまま加圧成形できる装置である。
【0085】
以上の加圧成形処理により、扁平型粒子を含む非晶質軟磁性合金粉末と、シリコーンエラストマーが固化成形されてなる電波吸収体を得ることができる。また、これらに加えて潤滑材またはカップリング材を添加してなる電波吸収体を得ることができる。
上記のようにして得られた電波吸収体においてシリコーンエラストマーを用いたものは、1GHzにおける虚数透磁率μ”が10以上であり、電磁波抑制効果に優れたものとなる。
また、上記のようにして得られた電波吸収体において塩素化ポリエチレンを用いたものは、1GHzにおける虚数透磁率μ”が6以上であり、電磁波抑制効果に優れたものとなる。
【0086】
【実施例】
「実験例1:非晶質軟磁性合金粉末の特性」
FeとAlと、Fe-C合金、Fe-P合金、B及びSiを原料として、Fe77Al19.232.27.7Si2.87の組成比となるようにそれぞれ所定量秤量し、減圧Ar雰囲気下においてこれらの原料を高周波誘導加熱装置で溶解し、インゴットを作製した。
このインゴットを図1に示す高圧ガス噴霧装置の溶湯るつぼ内に入れて1300℃に加熱して溶解し、溶湯るつぼの溶湯ノズルから合金溶湯を滴下するとともに、図1に示すガス噴霧器からアルゴンガス流を100kg/cm2の圧力で噴射して合金溶湯を霧状にし、チャンバ内で霧状の合金溶湯を急冷させるガスアトマイズ法により、粒径が62μm以下の球状粒子からなる非晶質合金粉末(アトマイズ粉)を得た。ここで得られる非晶質合金粉末は粒径62μm以下のものであるので、実質的な平均粒径は30μm程度であり、30μmよりも更に細径の球状粒子を含むものである。また、粒径を62μm以下としたのは、62μm以下とすることで非晶質の合金粉末がより得られやすくなるためである。
【0087】
次に、上記の球状粒子を含む非晶質合金粉末をアトライタに投入し、処理時間1、2、4、8時間の条件で粉砕混合して球状粒子を扁平型粒子にすることにより、本発明に係る非晶質軟磁性合金粉末を得た。
【0088】
アトライタによる処理時間が4時間の非晶質軟磁性合金粉末について、X線回折法により結晶構造の解析を行うとともに、DSC測定(Differential scanning caloriemetry:示差走査熱量測定)によりガラス遷移温度Tg及び結晶化開始温度Txを測定した。先のX線回折の結果を図2に示し、DSC測定の結果を図3に示す。
更に、合金粉末に含まれる粒子の外観を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。図4〜図8にSEM写真を示す。図4はアトライタ処理前、図5は処理時間が1時間、図6は処理時間が2時間、図7は処理時間が4時間、図8は処理時間が8時間のものである。
【0089】
図2に示すように、得られた非晶質軟磁性合金粉末のX線回折パターンはブロードなパターンであり、組織全体が非晶質相を主体としていることがわかる。
また、図3に示すように非晶質軟磁性合金粉末のDSC曲線からは、ガラス遷移温度Tgが774K(501℃)であり、結晶化開始温度Txが811K(538℃)であり、この結果からΔTxを求めると37Kであることがわかる。
以上の結果から、得られた非晶質軟磁性合金粉末は、20K以上のΔTxを有するとともに非晶質相を主体とする金属ガラス合金であることが分かる。
【0090】
次に図4に示すように、アトライタ処理前の非晶質合金粉末(アトマイズ粉)に含まれる粒子はアスペクト比がほぼ1の球状粒子である。この球状粒子をアトライタで粉砕混合すると図5〜図8に示すように、処理時間の経過に伴い扁平化が進行してアスペクト比が向上することが明らかになった。即ち、図8に示す処理時間8時間後の扁平型粒子は、厚さが1〜2μm、粒子の最長径が20〜50μm、アスペクト比が10〜50の範囲のものとなった。
【0091】
「実験例2:電波吸収体の特性(1)」
(実施例1〜8のリング試料)
実験例1の場合と同様にして、ガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の粒径が62μm以下の球状粒子からなる非晶質合金粉末(アトマイズ粉)を得た。
次に、上記の球状粒子を含む非晶質合金粉末をアトライタに投入し、処理時間4時間の条件で粉砕混合して球状粒子を扁平型粒子として非晶質軟磁性合金粉末を得た。
【0092】
そして、得られた非晶質軟磁性合金粉末に対して結着剤としてシリコーンエラストマー(東レダウコーニング社製SE9140)を20〜50体積%の範囲で混合し、これらの混合粉末を油圧プレス装置にて固化成形することにより、外径7.4mm、内径3.2mm、厚さ1mmの比較例1および実施例1〜3のリング試料を得た。
また、得られた非晶質軟磁性合金粉末に対して結着剤としてシリコーンエラストマー(東レダウコーニング社製SE9140)を20〜50体積%の範囲で混合し、これらの混合粉末をプラズマ焼結装置にて成形温度150℃、成形圧力572MPa(2t)の条件で固化成形することにより、外径7.4mm、内径3.2mm、厚さ1mmの実施例4〜8のリング試料を得た。
また、上記実施例1〜8のリング試料を、赤外線イメージ炉に投入し、窒素ガスフロー雰囲気中にて40℃/分の割合で昇温し、400℃にて30分間加熱する熱処理を施した。尚、比較例1及び実施例1〜3については、熱処理を同一条件で2回行った。
【0093】
熱処理前及び熱処理後の比較例1及び実施例1〜8について、固化成形条件(成型方法)、密度、抵抗値、100MHzにおける実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”、1GHzにおける実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
Figure 0003897552
【0095】
表1から明らかなように、いずれの実施例も熱処理後において、1GHzにおける虚数透磁率が6以上となっており、特に実施例1、3、5、6、7、8は1GHzの虚数透磁率が10以上となっている。また、密度はアニール前後で3.0g/cm3を越えており、更に直流抵抗値はいずれも100Ω以上を示しており、インピーダンスも高くなっていると考えられる。
中でも実施例7及び8は、100〜120Ω程度と比較的低い直流抵抗値を示しており、虚数透磁率μ”が低いことが予想されたが、実際には表1に示すように10〜17程度と高い値を示している。
【0096】
このように実施例7及び8の抵抗値が低いにも係わらず、高い虚数透磁率μ”を示す理由は、これらの100MHzにおける実効透磁率μ’が34〜130と他の実施例の場合より高くなっており、この低周波数帯域の高い実効透磁率μ’が1GHzにおける虚数透磁率μ”に反映されたためと考えられる。
更に実施例7及び8は磁性材料である金属ガラス合金の含有率が80体積%と高いため、実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”に表される軟磁気特性が向上したものと考えられる。
尚、金属ガラス合金が80体積%でも100Ω程度の抵抗値を示しているのは、固化成形温度が150℃(423K)と比較的低いため、シリコーンエラストマーにより絶縁効果が有効に作用しているためと考えられる。
【0097】
このように、固化成形時の温度を150℃(423K)程度にすることで、絶縁性及び虚数透磁率μ”に優れた電波吸収体が得られることが分かる。
尚、固化成形方法の違いによる各種特性の大きな相違は見られなかった。
【0098】
実施例4の1GHzにおける虚数透磁率が8.4と10以下であるが、これでも電波吸収体としては十分な値を示している。
これに対し、比較例1については、軟磁性合金の含有率は50体積%となっているものの、熱処理後の密度が3.0g/cm3以下であり、これにより虚数透磁率μ”が小さくなったものと考えられる。
【0099】
図9に実施例4の実効透磁率μ’の周波数特性を示し、図10に実施例5の虚数透磁率μ”の周波数特性を示し、図11に実施例5の実効透磁率μ’の周波数特性を示し、図12に実施例5の虚数透磁率μ”の周波数特性を示し、図13に実施例6の実効透磁率μ’の周波数特性を示し、図14に実施例6の虚数透磁率μ”の周波数特性を示し、図15に実施例7の実効透磁率μ’の周波数特性を示し、図16には実施例7の虚数透磁率μ”の周波数特性を示す。
【0100】
いずれの実施例の場合も、実効透磁率μ’が0.01GHzを過ぎた付近から低下し(図9,11,13,15)、それと入れ替わるように虚数透磁率μ”が0.01GHzを越えた付近から向上していることが分かる(図10,12,14,16)。
また、実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”の両方が、熱処理によって大幅に向上することが分かる。
特に図16を見ると、0.07GHz(70MHz)付近で虚数透磁率μ”が50近くまで向上し、1GHz付近でも10程度の虚数透磁率μ”を示しており、数百MHz〜数GHz帯域で虚数透磁率μ”が高い値を示すことがわかる。
【0101】
(比較例2〜5のリング試料)
実験例1の場合と同様にして、ガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の粒径62μm以下の球状粒子からなる非晶質合金粉末(アトマイズ粉)を得た。
次に、上記の球状粒子を含む非晶質合金粉末をアトライタに投入し、処理時間20時間の条件で粉砕混合して球状粒子を扁平型粒子として非晶質軟磁性合金粉末を得た。
【0102】
そして、得られた非晶質軟磁性合金粉末に対して結着剤としてシリコーンエラストマー(東レダウコーニング社製SE9140)を20〜40体積%の範囲で混合し、これらの混合粉末を油圧プレス装置にて成形温度150℃、成形圧力572MPa(2t)の条件で固化成形することにより、外径7.4mm、内径3.2mm、厚さ1mmの比較例1〜3のリング試料を得た。
また、得られた非晶質軟磁性合金粉末に対して結着剤としてシリコーンエラストマー(東レダウコーニング社製SE9140)を20〜40体積%の範囲で混合し、これらの混合粉末をプラズマ焼結装置にて成形温度150℃、成形圧力572MPa(2t)の条件で固化成形することにより、外径7.4mm、内径3.2mm、厚さ1mmの比較例4〜6のリング試料を得た。
また、上記比較例2〜5のリング試料を、赤外線イメージ炉に投入し、窒素ガスフロー雰囲気中にて40℃/分の割合で昇温し、400℃にて60分間加熱する熱処理を施した。
【0103】
熱処理前及び熱処理後の比較例2〜5について、固化成形条件(成型方法)、密度、抵抗値、100MHzにおける実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”、1GHzにおける実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”をそれぞれ求めた。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
Figure 0003897552
【0105】
表2に示すように、固化成形方法によらず、どの試料も抵抗値が1k〜10MΩと高いものの、密度が3.0g/cm3以下であるとともに1GHzでの虚数透磁率μ”が6以下になっている。
これは、非晶質軟磁性合金粉末のアトライタ処理時間が20時間であり、実施例1〜9の場合(4時間)よりも長く、このため扁平型粒子のアスペクト比が110程度と過大になり、リング試料内部で扁平型粒子同士の間で隙間が生じ、これにより扁平型粒子それぞれの反磁界の影響が大きくなって虚数透磁率μ”が低下したものと考えられる。
【0106】
上記のアトライタ処理時間と扁平型粒子同士の隙間との関係を示す写真を図17〜図20に示す。図17は実施例1(熱処理1回)のリング試料の断面写真(倍率400倍)であり、図18は図17の拡大写真(倍率1500倍)である。
また、図19は比較例2(熱処理1回)のリング試料の断面写真(倍率300倍)であり、図20は図19の拡大写真(倍率3000倍)である。
特に図18と図20を比較すれば明らかであるが、処理時間4時間の実施例2では、扁平粒子同士が密に重なり合っているが(図18)、処理時間20時間の比較例2では、扁平粒子同士の間に隙間があることが分かる。
従って、アトライタによる処理をあまり長時間行うと、扁平型粒子のアスペクト比が過大になって密度が低下し、虚数透磁率μ”が低くなるので、アトライタの処理時間としては、10分〜16時間の範囲が好ましいものと考えられる。
【0107】
更に図21には、実施例6及び7と、FeAlSi合金粉末からなる従来の電波吸収体の実効透磁率μ’の周波数特性を示し、図22には虚数透磁率μ”の周波数特性を示す。
特に図22から明らかなように、熱処理後の実施例7及び8は、従来のFeAlSi合金粉末からなる電波吸収体よりも虚数透磁率μ”が高くなっており、特に1GHzにおいて実施例6の虚数透磁率μ”が19.2、実施例7の虚数透磁率μ”が14.2であるのに対して、従来の電波吸収体は1GHzでの虚数透磁率μ”が4.0になっており、明らかに本発明に係るリング試料の方が優れた値を示している。
【0108】
尚、図23には、比較例4及び5と、FeAlSi合金粉末からなる従来の電波吸収体の実効透磁率μ’の周波数特性を示し、図24には虚数透磁率μ”の周波数特性を示す。
図24から明らかなように、熱処理後の比較例4及び5と従来の電波吸収体は虚数透磁率μ”がほぼ同程度である。従って、アトライタ処理を20時間まで行うと、従来の電波吸収体と同程度まで虚数透磁率μ”が低下することが明らかになった。
【0109】
(実施例9〜13のリング試料)
実験例1の場合と同様にして、ガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の粒径62μm以下の球状粒子からなる非晶質合金粉末(アトマイズ粉)を得た。
次に、上記の球状粒子を含む非晶質合金粉末をアトライタに投入し、処理時間4時間の条件で粉砕混合して球状粒子を扁平型粒子として非晶質軟磁性合金粉末を得た。
【0110】
そして、得られた非晶質軟磁性合金粉末に対して結着剤としてシリコーンエラストマー(東レダウコーニング社製SE9140)を30〜40体積%の範囲で混合し、これらの混合粉末をプラズマ焼結装置にて成形温度150℃(423K)〜350℃(623K)、成形圧力860MPa(3t)の条件で固化成形すると同時に熱処理することにより、外径7.4mm、内径3.2mm、厚さ1mmの実施例9〜13のリング試料を得た。固化成形後の熱処理時間は15分とした。
尚、実施例9及び10については、赤外線イメージ炉に投入して窒素ガスフロー雰囲気中にて40℃/分の割合で昇温し、400℃にて30分間加熱する熱処理を再度施した。
【0111】
実施例9〜13について、固化成形条件(成型方法)、密度、抵抗値、100MHzにおける実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”、1GHzにおける実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”をそれぞれ求めた。結果を表3に示す。
【0112】
【表3】
Figure 0003897552
【0113】
表3に示すように、実施例9の再熱処理なしのものは、固化成形と同時に熱処理されているため、密度、抵抗値、1GHzの虚数透磁率μ”のいずれもが高い値を示している。一方、実施例10の再滅処理したものは虚数透磁率μ”が低下しており、固化成形と同時に熱処理したものに再度の熱処理を行うと、虚数透磁率μ”が低下することがわかる。
一方、比較例6では、金属ガラス合金の含有量が70体積%と比較的高いため、抵抗値が小さくなって虚数透磁率μ”が低下していることがわかる。
従って、固化成形と同時に熱処理する場合は、金属ガラス合金の含有率を70体積%未満にすることが好ましいことが分かる。
【0114】
また、実施例10〜13は、150〜350℃の範囲で固化成形と同時に熱処理したもので、いずれも優れた虚数透磁率μ”を示しており、この温度範囲が最適な範囲であると考えられる。
【0115】
(実施例14〜19のリング試料)
実験例1の場合と同様にして、ガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の球状粒子からなる非晶質合金粉末(アトマイズ粉)を得た。
次に、上記の球状粒子を含む非晶質合金粉末をアトライタに投入し、処理時間4時間の条件で粉砕混合して球状粒子を扁平型粒子として非晶質軟磁性合金粉末を得た。得られた非晶質軟磁性合金粉末を、粒径25μm以下でアスペクト比が12のものと、粒径25〜46μmでアスペクト比が12〜30のものとにふるい分けした。
【0116】
次にふるい分け後の各合金粉末に水ガラスを添加して、各合金粉末に含まれる扁平粒子を水ガラスで被覆した。
そして、上記の被覆済みの非晶質軟磁性合金粉末に対して結着剤としてシリコーンエラストマー(東レダウコーニング社製SE9140)を40体積%添加して混合し、これらの混合粉末をプラズマ焼結装置にて成形温度150℃(423K)〜250℃(523K)、成形圧力0〜143MPa(0.5t)の条件で固化成形すると同時に熱処理することにより、外径7.4mm、内径3.2mm、厚さ1mmの実施例14〜19のリング試料を得た。尚、水ガラスの含有率はリング試料の全体に対して20体積%であり、固化成形後の熱処理時間は15分とした。
更に、得られたリング試料について、赤外線イメージ炉に投入して窒素ガスフロー雰囲気中にて40℃/分の割合で昇温し、400℃にて30分間加熱する熱処理を再度施した。
【0117】
尚、実施例14及び15は粒径25μm以下の非晶質軟磁性合金粉末を用いたものであり、実施例16及び17は粒径25〜46μmの粉末を用いたものであり、実施例18及び19は粒径105μm以上の粉末を用いたものである。
【0118】
実施例14〜19について、固化成形条件(成型方法)、密度、抵抗値、100MHzにおける実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”、1GHzにおける実効透磁率μ’及び虚数透磁率μ”をそれぞれ求めた。結果を表4に示す。
【0119】
【表4】
Figure 0003897552
【0120】
表4に示すように、水ガラスで扁平型粒子を被覆することにより、抵抗値が数百〜数MΩと比較的高くなっている。
また虚数透磁率μ”については、表4に示す1GHzにおけるものは10以下と低い値であるが、3〜4GHzにおける虚数透磁率μ”は15〜20程度に向上しており、この周波数帯域における電波の遮蔽効果に優れることが分かる。
【0121】
図25には、実施例9の虚数透磁率μ”の周波数特性を示す。
実施例9では、2GHzにおける虚数透磁率μ”が15程度であり、実施例9の1GHzにおける虚数透磁率μ”が22と非常に高い値を示している。
このように、本発明に係る実施例9のリング試料は、100MHz〜2GHzの幅広い周波数帯域で高い虚数透磁率μ”を示しており、電波吸収体として優れていることがわかる。
【0122】
「塩素化ポリエチレンを結着剤とする場合の試験例」
実験例1の場合と同様にして、ガスアトマイズ法により、Fe75.21Cr1.989.142.187.62Si3.87なる組成の球状粒子からなる非晶質合金粉末(水アトマイズ粉)を得た。
この粉末をアトライタで粉砕する場合の時間の違いにより、最終的に得られる電波吸収体の特性に対する影響と、離型材としてステアリン酸亜鉛を1重量%添加した場合に最終的に得られる電波吸収体の特性に対する影響と、混練時の剪断応力の違いにより最終的に得られる電波吸収体の特性に対する影響を調べた。
【0123】
先の試験例で用いたアトライタに4〜16時間かけて偏平型の種々の粒径の非晶質合金粉末を得ることができ、この非晶質合金粉末に45体積%の割合になるように塩素化ポリエチレンを混同し、混練機(ブラベンダー)の撹拌プロペラのトルクを調整して30rpmになるように混練した場合に標準剪断応力で混練したこととし、15rpmになるように混練した場合に低剪断応力とした。また、ステアリン酸亜鉛を添加した混練物と添加していない混練物をそれぞれ作成するとともに、得られた各混練物を100℃にて熱プレス成形し、冷プレスにて固定を行ってシート状の電波吸収体を得た。なお、前記の塩素化ポリエチレンの中には20%の割合で可塑剤である塩素化パラフィンが含まれているものとした。
【0124】
得られたシート状の各電波吸収体から試験片を切り出し、インピーダンス法(マテリアルアナライザー使用)にて1MHz〜1.8GHzの帯域で透磁率を測定するとともに、同軸管法(Sパラメータ法)にて0.5〜18GHzの帯域で透磁率を測定した。
図26は、アトライタ処理時間4時間により粒径40μm以下、厚さ2μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを45体積%混合し、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.55mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.82g/mm3であった。
【0125】
図27は、アトライタ処理時間4時間により粒径40μm以下、厚さ2μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを45体積%混合し、塩素化ポリエチレンに対して1重量%のステアリン酸亜鉛を加え、低専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.53mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.71g/mm3であった。
図28は、アトライタ処理時間4時間により粒径40μm以下、厚さ2μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを45体積%混合し、塩素化ポリエチレンに対して1重量%のステアリン酸亜鉛を加え、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.53mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.76g/mm3であった。
図29は、アトライタ処理時間4時間により粒径40μm以下、厚さ2μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを50体積%混合し、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.55mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.86g/mm3であった。
【0126】
図30は、アトライタ処理時間4時間により粒径40μm以下、厚さ2μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを50体積%混合し、低専断力で撹拌し、先の条件でプレスして0.55mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.88g/mm3であった。
図31は、アトライタ処理時間4時間により粒径40μm以下、厚さ2μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを50体積%混合し、塩素化ポリエチレンに対して1重量%のステアリン酸亜鉛を加え、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.55mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.91g/mm3であった。
【0127】
図32は、アトライタ処理時間16時間により粒径40μm以下、厚さ0.5μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを45体積%混合し、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.56mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.68g/mm3であった。
図33は、アトライタ処理時間1時間により粒径70μm以下、厚さ7μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを45体積%混合し、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.55mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.83g/mm3であった。
【0128】
図34は、アトライタ処理時間2時間により粒径50μm以下、厚さ5μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを45体積%混合し、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.55mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.80g/mm3であった。
図35は、アトライタ処理時間8時間により粒径40μm以下、厚さ1μm以下の偏平型非晶質軟磁性合金粉末を得、これに塩素化ポリエチレンを45体積%混合し、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.56mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.63g/mm3であった。
【0129】
図36は、アトライタ処理時間4時間により得た球状の非晶質軟磁性合金粉末を用い、これに塩素化ポリエチレンを45体積%混合し、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.57mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.83g/mm3であった。 図37は、アトライタ処理時間4時間により得た球状の非晶質軟磁性合金粉末を用い、これに塩素化ポリエチレンを50体積%混合し、標準専断力で撹拌し、先の条件でプレスして厚さ0.57mmのシート状の電波吸収体試料としたものの測定結果を示す。また、この電波吸収体試料の密度は3.83g/mm3であった。
【0130】
図38は、これら図26〜図37に示す実効透磁率μ’の値を選択してアトライタ処理時間、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間の各試料と球状粉末を用いた値を比較して示す図である。図39は先の図26〜図37に示す虚数透磁率μ”の値を選択してアトライタ処理時間、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間の各試料と球状粉末を用いた値を比較して示す図である。
図38と図39に示す特性から見ると、アトライタの処理時間については、2〜8時間の間が好ましいと思われる。
また、図26〜図37に示す結果から、アトライタ処理時間2〜8時間の試料であるならば、1GHz〜3GHzにおいて6以上の虚数透磁率μ”を得られることが判明した。
【0131】
図40はアトライタ処理4時間のシート状試料の厚さ方向の断面写真(倍率3000倍)であり、偏平状のFe基非晶質軟磁性合金粉末の集合体であることがわかる。
図41は先の図26の例と同じ条件で製造した電波吸収体試料において、Fe基非晶質軟磁性合金の配合量のみを40、45、50、55体積%の4通りに変更して製造した各電波吸収体試料の密度の測定値を示す。非晶質軟磁性合金の組成は先の例と同じFe75.21Cr1.989.142.187.62Si3.87なる組成である。
図41に示す測定結果によれば、理論密度は非晶質軟磁性合金の配合量を増やすほど向上するが、実際の密度は非晶質軟磁性合金の配合量が多くなるほど理論密度と乖離し、45〜55体積%の範囲ではほとんど上昇していないことが判明した。これは、混合する際にわずかの空気が混入するため、密度向上に限界を生じたものと思われる。また、55体積%を越える配合量としても、逆に電波吸収体が脆くなって塩素化ポリエチレンを配合したことによる利点の1つである軟質で変形が可能であるという利点がなくなる。従って非晶質軟磁性合金の配合量は多くても理論密度と解離が生じる。逆に配合量を40体積%よりも低くしても非晶質軟磁性合金の量が少なくなって電波吸収効果は低下することとなる。このような見地から、塩素化ポリエチレンを結着剤とする場合、非晶質軟磁性合金の配合量は40体積%以上、55体積%以下の範囲が好ましいと考えられる。
【0132】
また、図42に示す結果から見れば、密度3.40〜3.73近傍までは密度が高くなるにつれて虚数透磁率μ”は単調に上昇するが、密度が3.75g/cm3あたりを越えると逆に虚数透磁率μ”は急激に低下する。これは、非晶質軟磁性合金の周囲を覆っている樹脂分が減少し、非晶質軟磁性合金の粒子どうしの絶縁性が確保されなくなったことを意味すると考えられる。このことから、非晶質軟磁性合金の密度は3.5以上、3.80以下の範囲が好ましいと思われる。
【0133】
図43は先のFe75.21Cr1.989.142.187.62Si3.87なる組成の非晶質軟磁性合金粉末を用いて先の図26の条件で得られた電波吸収体試料の周波数毎の虚数透磁率μ”の測定値と、熱処理を施して微結晶を生成させるFeNbSiBCu系の軟磁性合金粉末(粒径20μm)に塩素化ポリエチレンを45体積%配合して得た電波吸収体試料の虚数透磁率μ”の測定値と、FeCr系の軟磁性合金粉末(粒径20μm)に塩素化ポリエチレンを45体積%配合して得た電波吸収体試料の虚数透磁率μ”の測定値と、FeAlSi系の軟磁性合金粉末(粒径30μm)に塩素化ポリエチレンを45体積%配合して得た電波吸収体試料の虚数透磁率μ”の測定値を比較して示す図である。
これら各試料の特性比較から本発明に係るFe75.21Cr1.989.142.187.62Si3.87なる組成の非晶質軟磁性合金粉末を用いた試料の虚数透磁率μ”の値が1MHz〜10GHzの広い範囲で優れていることが明らかである。特に本発明試料は、4MHz〜4GHzの範囲においては他のいずれの材料を用いた試料よりも優れた電波吸収特性が得られることが判明した。なお、FeNbSiBCu系の比較例試料の場合、本発明に係る試料と同等の虚数透磁率μ''が得られているが、この比較例試料の場合、成形時の加熱以外に微結晶化のために高い温度で熱処理を必ず行わなくてはならず、工数がかかり、コスト高となる。
【0134】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明は、ΔT x =T x- g( ただしT x は結晶化開始温度であり、T g はガラス遷移温度である。 ) の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔT x が25K以上である下記の組成式で表されるFe基非晶質軟磁性合金と樹脂とを混合してなり、前記Fe基非晶質軟磁性合金の含有量が40〜55体積%であり、1GHzにおける複素透磁率の虚数部μ '' が10以上であるので、Fe基非晶質軟磁性合金粉末が樹脂により絶縁されて電波吸収体自体のインピーダンスが高められ、これにより渦電流の発生が抑制されて数百MHz〜数GHzの周波数帯域における複素透磁率の虚数部μ”を幅広い範囲で6以上と高くすることができ、高周波帯域での電磁波抑制効果を向上できる。
Fe 100-x-v-z-w-t Al x (P 1-b Si b v z w t
ただし、RはCr元素であり、組成比を示すb、x、v、z、w、tは、0.1≦b≦0.28、x=0原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦1.98原子%、70原子%≦ ( 100−x−y−z−w−t ) ≦79原子%、11原子%≦ ( v+z+w ) ≦30原子%である。
また、Crの組成比tが、0原子%≦t≦1.98原子%であるので、飽和磁化σ s をより向上させることができる
【0135】
また、本発明の電波吸収体によれば、結着剤としてシリコーンエラストマーを用いたものでは、1GHzにおける複素透磁率の虚数部μ”が10以上であるので、GHz帯域での電磁波抑制効果をより高めることができる。
結着剤として塩素化ポリエチレンを用いたものでは、1GHzにおける複素透磁率の虚数部μ”が6以上であるので、GHz帯域での電磁波抑制効果を高めることができるとともに、塩素化ポリエチレン自体が軟質のものであるので、自由に変形させることが可能で、切り取りなども自在にできる。よって、使用目的の場所に添わせて変形させて設置することが可能であり、取り扱い性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明で用いる球状粒子を含む非晶質合金粉末を製造する際に用いて好適な高圧ガス噴霧装置(アトマイズ装置)の一構造例を示す断面模式図である。
【図2】 図2はFe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の非晶質軟磁性合金粉末のX線回折結果を示すグラフである。
【図3】 図3はFe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の非晶質軟磁性合金粉末のDSC曲線を示すグラフである。
【図4】 図4はアトライタ処理前の非晶質軟磁性合金粉末のSEM写真である。
【図5】 図5はアトライタ処理を1時間行った後の非晶質軟磁性合金粉末のSEM写真である。
【図6】 図6はアトライタ処理を2時間行った後の非晶質軟磁性合金粉末のSEM写真である。
【図7】 図7はアトライタ処理を4時間行った後の非晶質軟磁性合金粉末のSEM写真である。
【図8】 図8はアトライタ処理を8時間行った後の非晶質軟磁性合金粉末のSEM写真である。
【図9】 図9は実施例4のリング試料の実効透磁率μ’の周波数特性を示すグラフである。
【図10】 図10は実施例4のリング試料の虚数透磁率μ”の周波数特性を示すグラフである。
【図11】 図11は実施例5のリング試料の実効透磁率μ’の周波数特性を示すグラフである。
【図12】 図12は実施例5のリング試料の虚数透磁率μ”の周波数特性を示すグラフである。
【図13】 図13は実施例6のリング試料の実効透磁率μ’の周波数特性を示すグラフである。
【図14】 図14は実施例6のリング試料の虚数透磁率μ”の周波数特性を示すグラフである。
【図15】 図15は実施例7のリング試料の実効透磁率μ’の周波数特性を示すグラフである。
【図16】 図16は実施例7のリング試料の虚数透磁率μ”の周波数特性を示すグラフである。
【図17】 図17は実施例1(熱処理1回)のリング試料の断面SEM写真(倍率400倍)である。
【図18】 図18は図17の拡大写真(倍率1500倍)である。
【図19】 図19は比較例2(熱処理1回)のリング試料の断面SEM写真(倍率300倍)である。
【図20】 図20は図19の拡大写真(倍率3000倍)である。
【図21】 図21は実施例6、実施例7及び、FeAlSi合金粉末からなる従来の電波吸収体の実効透磁率μ’の周波数特性を示すグラフである。
【図22】 図22は実施例6、実施例7及び、FeAlSi合金粉末からなる従来の電波吸収体の虚数透磁率μ”の周波数特性を示すグラフである。
【図23】 図23は比較例4、比較例5及び、FeAlSi合金粉末からなる従来の電波吸収体の実効透磁率μ’の周波数特性を示すグラフである。
【図24】 図24は比較例4、比較例5及び、FeAlSi合金粉末からなる従来の電波吸収体の虚数透磁率μ”の周波数特性を示すグラフである。
【図25】 図25は実施例9の虚数透磁率μ”の周波数特性を示すグラフである。
【図26】 図26は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第1の例を示す図である。
【図27】 図27は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第2の例を示す図である。
【図28】 図28は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第3の例を示す図である。
【図29】 図29は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第4の例を示す図である。
【図30】 図30は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第5の例を示す図である。
【図31】 図31は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第6の例を示す図である。
【図32】 図32は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第7の例を示す図である。
【図33】 図33は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第8の例を示す図である。
【図34】 図34は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第9の例を示す図である。
【図35】 図35は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第10の例を示す図である。
【図36】 図36は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第11の例を示す図である。
【図37】 図37は塩素化ポリエチレンを非晶質軟磁性合金粉末に混合してなるシート状の電波吸収体試料の第12の例を示す図である。
【図38】 図38は図26〜図37に示す各試料の実効透磁率をまとめて示す図である。
【図39】 図39は図26〜図37に示す各試料の虚数透磁率をまとめて示す図である。
【図40】 図40は先の例のシート状の電波吸収体の断面組織写真を示す図である。
【図41】 図41は先の試料における非晶質軟磁性合金配合量と密度の関係を示す図である。
【図42】 図42は先の試料における電波吸収体の密度と虚数透磁率の関係を示す図である。
【図43】 図43は先の試料と比較材としての他の組成系の軟磁性合金粉末を塩素化ポリエチレンに配合してなる試料の虚数透磁率の周波数特性を比較して示す図である。
【符号の説明】
1 高圧ガス噴霧装置(アトマイズ装置)
2 溶湯るつぼ
3 ガス噴霧器
4 チャンバ
5 合金溶湯
6 溶湯ノズル
8 ガス噴射ノズル

Claims (11)

  1. ΔTx=Tx-Tg(ただしTxは結晶化開始温度であり、Tgはガラス遷移温度である。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが25K以上である下記の組成式で表されるFe基非晶質軟磁性合金と樹脂とを混合してなり、
    前記Fe基非晶質軟磁性合金の含有量が40〜55体積%であり、
    1GHzにおける複素透磁率の虚数部μ''が10以上であることを特徴とする電波吸収体。
    Fe100-x-v-z-w-tAlx(P1-bSibvzwt
    ただし、RはCr元素であり、組成比を示すb、x、v、z、w、tは、0.1≦b≦0.28、x=0原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦1.98原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
  2. 前記Fe基非晶質軟磁性合金が粉末状態で含まれ、前記粉末の平均粒径が1〜80μm、厚さが0.1〜5μmとされてなることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。
  3. 前記粉末のアスペクト比が1以上、800以下であることを特徴とする請求項2に記載の電波吸収体。
  4. 前記組成比を示すtは、t=1.98原子%であることを特徴とする請求項2に記載の電波吸収体。
  5. 前記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電波吸収体。
  6. 前記樹脂が塩素化ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電波吸収体。
  7. 前記樹脂がシリコーンエラストマーからなり、該シリコーンエラストマーが結着剤となって固化成形されてなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電波吸収体。
  8. 前記非晶質軟磁性合金粉末と前記結着剤とが混合されて固化成形された後、前記非晶質軟磁性合金のキュリー点温度(Tc)以上結晶化開始温度(Tx)以下の範囲で熱処理されてなることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の電波吸収体。
  9. 請求項7に記載の電波吸収体の製造方法であって、
    前記非晶質軟磁性合金粉末とシリコーンエラストマーからなる結着剤とを混合した後、373〜473Kの温度で固化成形し、更に600〜850Kの熱処理温度で熱処理することを特徴とする電波吸収体の製造方法。
  10. 請求項7に記載の電波吸収体の製造方法であって、
    前記非晶質軟磁性合金粉末とシリコーンエラストマーからなる結着剤とを混合した後、423〜673Kの温度で固化成形すると同時に熱処理することを特徴とする電波吸収体の製造方法。
  11. P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含む合金溶湯を急冷して球状の粒子を含む非晶質合金粉末とし、該非晶質合金粉末をアトライタに投入して10分〜16時間の範囲で粉砕混合することにより、扁平型粒子を主として含む前記の非晶質軟磁性合金粉末を得ることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電波吸収体の製造方法。
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