JP3894903B2 - 射出成形機の型締制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の監視区間における負荷トルクが、設定したトルク制限値を越えないようにトルク制御を行う射出成形機の型締制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、サーボモータとボールねじ機構を有する駆動部を備え、この駆動部の進退運動を、トグルリンク機構を介して可動盤に伝達する射出成形機の型締装置において、可動盤を型閉方向へ移動させた際における可動型と固定型間に挟まった異物(成形品等)を検出する異物検出方法としては、既に、本出願人が提案した特開2002−172670号公報で開示される射出成形機の異物検出方法が知られている。
【0003】
同公報で開示される異物検出方法は、型締工程における監視区間の型閉動作に伴う物理量を検出するとともに、当該物理量の検出値と予め設定した設定値との偏差が予め設定した閾値以上になったなら異物検出処理を行う方法であって、特に、予め試型締を行うことにより当該偏差の最大値を検出し、この最大値を予め設定した基準値に加算することにより閾値を設定するものである。
【特許文献1】
特開2002−172670号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した異物検出方法(型締制御方法)では、可動型と固定型間に異物が挟まった場合、型閉動作に伴う物理量が正常に検出されなくなり、サーボ制御系では、サーボモータのトルクが急激に増加するフィードバック制御が行われことになる。したがって、トルクを制限しない場合には、金型に無理な加圧力が付加されてしまう。このため、異物検出を行う監視区間では、サーボ回路にトルク制限信号を付与することにより、予め設定したトルク制限値となるようにトルク出力を制限している。
【0005】
一方、トルク制限値は、低く設定しすぎた場合、サーボモータの駆動力が抑制され、回転速度が低下するなどの動作の不安定化を招き、誤検出の原因にもなる。このため、トルク制限値は、通常、成形品や成形条件等を考慮して、ユーザ(オペレータ)自身が所望の値に設定している。
【0006】
しかし、各種の要因を考慮しなければならないトルク制限値の設定は、ユーザにとって容易でないとともに、特に、ユーザは金型の保護を重視する観点から、トルク制限値を低めに設定する傾向があり、動作の不安定化、更には誤検出が発生し易くなるなどの解決すべき課題が存在した。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に存在する課題を解決したものであり、特に、的確なトルク制限値を自動で設定し、動作の安定化、更には誤検出の発生防止を図ることにより、型締制御に対する高度の安定性及び信頼性を確保できるようにした射出成形機の型締制御方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び実施の形態】
本発明は、型締工程の型閉動作に対して設定した所定の監視区間における負荷トルクを検出するとともに、検出により得たトルク検出値Tdが、設定したトルク制限値Tuに達したなら、このトルク制限値Tuを越えないようにトルク制御を行う射出成形機1の型締制御方法において、自動設定モードを設け、この自動設定モードにより、監視区間におけるトルク検出値Tdを、予め設定したサンプリング周期Δtsにより順次検出し、かつ予め設定したショット回数N分だけ検出するとともに、得られたトルク検出値Td…から各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値Td…に対する平均値Ai及び前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値Awを求め、この平均値Aiと最大値Awから、又は、得られたトルク検出値Td…から各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値Td…に対する最小値As及び前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値Awを求めるとともに、この最小値Asと最大値Awから中央値Ajを求め、この中央値Ajと最大値Awから、各サンプリング順位毎のトルク制限値Tu…を、所定の演算式により求めて自動設定するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合、好適な実施の態様により、平均値Aiと最大値Awから、各トルク検出値Tuを、Tu=〔{(Aw−Ai)×kp}+Ai〕+kq(ただし、kp,kqは定数)の演算式により求め、或いは中央値Ajと最大値Awから、各閾値Diを、Di=〔{(Aw−Aj)×kp}+Aj〕+kqの演算式により求めることができる。また、トルク制限値Tuを設定した後、ショット回数が設定数M(0を含む)に達する毎に、自動設定モードを実行してトルク制限値Tuを更新することができる。
【0010】
【実施例】
次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
まず、本実施例に係る型締制御方法を実施できる射出成形機1の概略構成について、図4及び図5を参照して説明する。
【0012】
図4に示す射出成形機1は、型締装置1cと仮想線で示す射出装置1iを備える。型締装置1cは離間して配した固定盤3cと駆動盤3rを備え、この固定盤3cと駆動盤3rは不図示の機台上に固定されている。また、固定盤3cと駆動盤3r間には、四本のタイバー4…を架設し、このタイバー4…に可動盤3mをスライド自在に装填する。そして、この可動盤3mには可動型Cmを取付けるとともに、固定盤3cには固定型Ccを取付ける。この可動型Cmと固定型Ccは金型Cを構成する。
【0013】
一方、駆動盤3rと可動盤3m間には駆動機構部5を配設する。この駆動機構部5は、駆動盤3rに取付けたサーボモータ2と、この駆動盤3rに回動自在に支持されたボールねじ部6s及びこのボールねじ部6sに螺合するナット部6nからなるボールねじ機構6と、サーボモータ2の回転をボールねじ部6sに伝達する回転伝達機構7からなる駆動部8を備えるとともに、駆動盤3rと可動盤3m間に取付けたトグルリンク機構9を備える。トグルリンク機構9は、複数のトグルリンクメンバ9r…の組合わせにより構成し、入力部となるクロスヘッド9hはナット部6nに固定する。これにより、ナット部6nの進退運動は、トグルリンク機構9を介して可動盤3mに伝達される。なお、10はエジェクタ機構を示す。
【0014】
他方、Sは制御系を示す。制御系Sにおいて、11はサーボ回路であり、このサーボ回路11にはサーボモータ2及びこのサーボモータ2に付設したロータリエンコーダ12を接続する。また、サーボ回路11には、シーケンスコントローラ13を接続するとともに、このシーケンスコントローラ13には、メモリ14及びタッチパネルを付設したディスプレイ15を接続する。
【0015】
図5には、サーボ回路11の具体的構成を示す。サーボ回路11は、偏差演算部21,22、加算器23、位置ループゲイン設定部24、フィードフォワードゲイン設定部25、加減速時間設定部26、速度変換器27、速度ループゲイン設定部28、ドライバ29、トルク比較処理部30、トルク微分器31、トルク微分比較処理部32をそれぞれ備え、同図に示す系統によりサーボ制御系を構成する。なお、各部の機能(動作)は後述する型締装置1cの全体動作により説明する。
【0016】
次に、本実施例に係る型締制御方法を含む型締装置1cの全体動作について、図1〜図8を参照して説明する。
【0017】
まず、本実施例に係る型締制御方法に用いるトルク制限値Tuの設定方法について、図1に示すフローチャートを参照して説明する。
【0018】
本実施例に係る型締制御方法を実行するに際しては、ディスプレイ15に表示される機能キーにより、自動設定モードを選択する。これにより、トルク制限は解除状態となり、トルク制限値Tuの初期設定が実行される(ステップS1)。この初期設定は、通常、試成形により行うことができる。今、可動盤3mは型開位置にあるものとする。試成形の開始によりサーボモータ2が作動し、可動盤3mは型開位置から前進移動する(ステップS2)。この場合、最初は可動盤3mが型閉方向へ高速で前進移動する高速型閉が行われる。この際、サーボ回路11により可動盤3mに対する速度制御及び位置制御が行われる。即ち、シーケンスコントローラ13からサーボ回路11の偏差演算部21に対して位置指令値が付与され、ロータリエンコーダ12の検出パルスに基づいて得られる位置検出値と比較される。これにより、位置偏差分が得られるため、この位置偏差分に基づいて位置のフィードバック制御が行われる。なお、位置偏差分は、位置ループゲイン設定部24,フィードフォワードゲイン設定部25及び加減速時間設定部26により補償される。また、加減速時間設定部26の出力は、偏差演算部22に付与され、速度変換器27の出力と比較される。これにより、速度偏差分が得られるため、この速度偏差分に基づいて速度のフィードバック制御が行われる。なお、速度偏差分は、速度ループゲイン設定部28により補償される。
【0019】
そして、可動盤3mが型閉方向へ前進移動し、予め設定したサンプリング区間(=監視区間)の開始点に達すれば、設定したサンプリング周期Δts毎に、負荷トルク(トルク検出値Td)の検出を行う(ステップS3,S4)。この場合、サンプリング区間は、低圧型締(低速型閉)開始点から高圧型締開始点までの間を設定できる。これらの開始点は、位置により設定してもよいし時間により設定してもよい。なお、サンプリング周期Δtsは、一例として、2.5〔ms〕に設定することができる。これにより、サンプリング区間の時間を8秒間と想定すれば、全サンプリング回数は3200回となる。
【0020】
また、トルク検出値Td(負荷トルク)は、速度ループゲイン設定部28から出力する速度制御信号Scを取込むことにより検出する。即ち、速度制御信号Scの大きさは、負荷トルクの大きさに対応するため、速度制御信号Scの電圧値をトルク検出値Tdとして用いる。そして、サンプリング周期Δts毎に検出されるトルク検出値Tdは、シーケンスコントローラ13を介してメモリ14のデータエリアに書き込まれる(ステップS5)。このようなトルク検出値Tdの検出処理は、サンプリング区間が終了するまで、サンプリング周期Δts毎に順次実行される(ステップS6,S4…)。
【0021】
さらに、一回目のショット(成形サイクル)が終了したなら、次のショットを行い、同様にトルク検出値Tdの検出を行うとともに、トルク検出値Tdに対する同様の検出を、予め設定したショット回数N分だけ行う(ステップS7,S2…)。図7は、メモリ14のデータエリアに書き込まれたトルク検出値Td…を一覧表で示す。実施例は、ショット回数Nを「10」に設定し、かつ一回のショットにおいて、t0,t1…tnの順位でサンプリングを行った例を示す。
【0022】
一方、ショット回数N分の検出が終了したなら、得られたトルク検出値Td…から、各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値Td…に対する平均値Aiを算出する(ステップS8)。図7における、例えば、サンプリング順位t1でのトルク検出値Td…(10回分)の平均値Aiは、「1.17」であることを示している。また、各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値Td…から最大値Awを選出する(ステップS8)。図7における、例えば、サンプリング順位t1での最大値Awは、「1.28」であることを示している。
【0023】
この場合、最大値Awは、前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値を選出する。この理由について図8を参照して説明する。今、最大値を同一サンプリング順位の中から選出したとすれば、各トルク制限値Tu…を時系列的にグラフ化したトルク制限値データは、図8に示すTurのように変化し、このトルク制限値データTurは、同図に示すトルク検出値データTddの変化に対して上側にオフセットする点を除いて同じ傾向で変化する。なお、このトルク検出値データTddは、各トルク検出値Td…を時系列的にグラフ化したものである。しかし、このトルク検出値データTddは、必ずしもトルク制限値データTurに同期して検出されるものではなく、時間的な遅れが生じるなど時間軸方向Ftにバラツキを生じる。この結果、トルク検出値データTddが時間軸方向Ftにおいてトルク制限値データTurに達してしまう事態も発生し、本来制限しなくてもよい大きさのトルクに対してもトルク制限を実行してしまう誤制御を生じることになる。
【0024】
そこで、最大値Awを、前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値を選択し、図8に示すトルク制限値データTusのように、トルク制限値データTurのピーク値を時間軸方向Ftへ所定の時間幅だけ広げることにより、この問題を回避した。この場合、広げる範囲(所定の範囲)は、「1,2,3,4…」の数値を選択することにより任意に設定できる。即ち、「1」は、前後に一回分のサンプリング順位を広げることを意味し、「1」を選択した場合、所定の範囲は、三回分のサンプリング順位、具体的には、サンプリング順位t1の場合、t0,t1,t2の三回分のサンプリング順位の中から最も大きい最大値Awを選択することになる。同様に、「2」は、前後に二回分のサンプリング順位を広げることになり、所定の範囲は、五回分のサンプリング順位を含むことになる。なお、図7におけるサンプリング順位t1の最大値Awは、サンプリング順位t2の最大値(不図示)を用いた例である。
【0025】
そして、得られた平均値Aiと最大値Awから、各サンプリング順位毎のトルク制限値Tuを、
Tu=Qi+kq
=〔{(Aw−Ai)×kp}+Ai〕+kq
(ただし、kp,kqは定数)
の演算式により求める(ステップS9)。この場合、Qiは基準値であり、定数kqは、この基準値Qiに対して所定の余裕度(オフセット)を設定するための定数となる。また、定数kpは、通常、「1〜2」の間の任意数に設定することができる。
【0026】
なお、平均値Aiの代わりに中央値Ajを用いることもできる。即ち、各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値Td…に対する最小値Asと最大値Awを求め、この最小値Asと最大値Awから中央値Ajを、Aj=(Aw−As)/2の演算式により求めるとともに、この中央値Ajと最大値Awから、各トルク制限値Tuを、
Tu=〔{(Aw−Aj)×kp}+Aj〕+kq
(ただし、kp,kqは定数)
の演算式により求めることもできる。この定数kp,kqは、前述した定数kp,kqと同一値であってもよいし、必要に応じて異ならせてもよい。
【0027】
また、得られたトルク制限値Tuは、メモリ14に自動設定されるとともに、さらに、図6に示すディスプレイ15のデータ表示部15sに表示される(ステップS10)。同図に示すTusは、このようにして設定した各トルク制限値Tu…をグラフ化したトルク制限値データである。以上のトルク制限値Tu…(トルク制限値データTus)を求める一連の処理は、全てシーケンス動作により自動で実行される。
【0028】
他方、トルク制限値Tuの初期設定と同時に、型締工程の監視区間において行う異物検出のための閾値Diの設定が行われる。この場合、サンプリング周期Δts毎に検出されたトルク検出値Tdは、トルク微分器31により微分され、微分検出値Ddに変換される。そして、この微分検出値Ddは、シーケンスコントローラ13を介してメモリ14のデータエリアに書き込まれる。このような微分検出値Ddの検出処理は、サンプリング区間が終了するまで、サンプリング周期Δts毎に順次実行されるとともに、予め設定したショット回数N分だけ行われる。
【0029】
一方、ショット回数N分の全ての検出が終了したなら、得られた微分検出値Dd…から、各ショットにおける同一サンプリング順位の微分検出値Dd…に対する平均値Xiを算出するとともに、各ショットにおける同一サンプリング順位の微分検出値Dd…から最大値Xwを選出する。この場合、前述したトルク制限値Tuの初期設定の場合と同様に、最大値Xwは、前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値を選出する。
【0030】
そして、得られた平均値Xiと最大値Xwから、各サンプリング順位毎の閾値Diを、
Di=Pi+kb
=〔{(Xw−Xi)×ka}+Xi〕+kb
(ただし、ka,kbは定数)
の演算式により求める。この場合、Piは基準値であり、定数kbは、この基準値Piに対して所定の余裕度(オフセット)を設定するための定数となる。また、定数kaは、通常、「1〜2」の間の任意数に設定される。
【0031】
なお、各ショットにおける同一サンプリング順位の微分検出値Dd…に対する最小値Xsと最大値Xwを求め、この最小値Xsと最大値Xwから中央値Xjを、Xj=(Xw−Xs)/2の演算式により求めるとともに、この中央値Xjと最大値Xwから、各閾値Diを、
Di=〔{(Xw−Xj)×ka}+Xj〕+kb
(ただし、ka,kbは定数)
の演算式により求めることもできる。この定数ka,kbは、前述した定数ka,kbと同一値であってもよいし、必要に応じて異ならせてもよい。
【0032】
また、得られた閾値Diは、メモリ14に設定されるとともに、さらに、図6に示すディスプレイ15のデータ表示部15sに表示される。同図に示すDisは、このようにして設定した各閾値Di…をグラフ化した閾値データである。以上の閾値Di…(閾値データDis)を求める一連の処理は、全てシーケンス動作により自動で実行される。
【0033】
次に、生産稼働時における全体の動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0034】
今、型締装置1cの可動盤3mは型開位置にあるものとする。型締工程では、まず、サーボモータ2が作動し、可動盤3mは型開位置から前進移動する(ステップS21)。この場合、最初は可動盤3mが型閉方向へ高速で前進移動する高速型閉が行われる。この際、サーボ回路11により可動盤3mに対する速度制御及び位置制御が行われる点は前述した閾値Diを初期設定する場合と同じである。そして、可動盤3mが型閉方向へ移動し、予め設定した監視区間に達すれば、前述したサンプリング周期Δts毎に負荷トルクの検出を行う(ステップS22,S23)。この監視区間は、前述したサンプリング区間と同じである。
【0035】
また、負荷トルクの検出は、前述したトルク制限値Tuを初期設定する場合と同様に、速度ループゲイン設定部28から出力する速度制御信号Scを取込むことにより行う。これにより、サンプリング周期Δts毎に検出されたトルク検出値Tdは、トルク微分器31に付与され、このトルク微分器31により微分されるとともに、微分後の微分検出値Ddは、トルク微分比較処理部32に付与される。他方、トルク微分比較処理部32には、シーケンスコントローラ13から、微分検出値Ddと同じサンプリング順位の閾値Diが付与され、このトルク微分比較処理部32により、同じサンプリング順位の閾値Diと微分検出値Ddが比較処理される。
【0036】
今、可動型Cmと固定型Cc間に異物が挟まった状態を想定する。この場合、異物を挟んだ時点で負荷トルクが急上昇するため、速度制御信号Scの大きさも急激に大きくなる。したがって、トルク微分器31から得られる微分検出値Ddも急激に大きくなり、偏差データDisを越えるため、トルク微分比較処理部32は、異物が挟まったものとして検出し、サーボ回路11からシーケンスコントローラ13に異物検出信号Seを付与する。これにより、シーケンスコントローラ13は、サーボモータ2の後退動作及び警報の発生等の所定の異常処理(異物検出処理)を行う。一方、異物が挟まることなく正常な動作を継続すれば、検出値データDddが閾値データDisを越えることが無いため、設定したサンプリング期間Δts毎に、微分検出値Ddの検出処理がそのまま繰り返される。
【0037】
他方、サンプリング周期Δts毎に検出されたトルク検出値Tdは、トルク比較処理部30に付与される。トルク比較処理部30には、シーケンスコントローラ13から、当該トルク検出値Tdと同じサンプリング順位のトルク制限値Tuが付与されており、このトルク比較処理部30において、同じサンプリング順位におけるトルク制限値Tuとトルク検出値Tdが比較処理される(ステップS24)。そして、トルク検出値Tdが増加し、トルク制限値Tuに達した場合には、トルク制限値Tuを越えないように、シーケンスコントローラ13及びサーボ回路11によるトルク制御(トルク制限処理)が行われる(ステップS25,S26)。なお、図6に示すTddは、各トルク検出値Td…をグラフ化したトルク検出値データである。
【0038】
そして、監視区間の終了により、可動盤3mが低圧型締の終了する低圧終了位置、即ち、高圧型締開始位置に達すれば、高圧制御による高圧型締が行われ、さらに、所定の成形動作が終了すれば、型開きが行われる(ステップS27,S28)。なお、図6に示すDddは、各微分検出値Dd…をグラフ化した検出値データである。
【0039】
次に、トルク制限値データTusの更新方法について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0040】
本実施例では、ショット回数が予め設定した設定数Mに達する毎に、前述した自動設定モードを実行、即ち、図1に示したフローチャートに基づく処理を実行し、トルク制限値データTusを定期的に自動更新するようにした。なお、設定数Mは、一例として「100」を設定することができる。この場合、異常(異物検出)が発生しない限り、生産を継続した状態で自動設定モードを実行し、トルク制限値データTusの更新を行うことができる。図3において、ステップS31は、図1のフローチャートによる初期設定処理を示す。トルク制限値Tu(トルク制限値データTus)が初期設定されることにより、このトルク制限値Tu(トルク制限値データTus)を用いた成形処理が行われる(ステップS32)。そして、ショット数が予め設定した設定数Mに達したなら、トルク検出値Td(トルク検出値データTdd)の検出処理を行う(ステップS33,S34)。この場合、図1に示すフローチャートに従ってトルク検出値Tdの取込みをショット回数N分だけ行う。一方、ショット回数N分が終了したなら、新たなトルク制限値データTusを求めることにより自動更新を行う(ステップS35,S36)。
【0041】
トルク制限値Tu(トルク制限値データTus)が更新されることにより、更新されたトルク制限値Tu(トルク制限値データTus)を用いた成形処理が同様に継続して行われる(ステップS37)。以後、生産計画による生産が終了するまで同様の更新処理を繰り返して行う。即ち、ショット数が設定数Mに達したなら、初期設定の場合と同様に、トルク検出値Tdの検出処理を行うとともに、図1に示すフローチャートに従ってトルク検出値Tdの取込みをショット回数N分だけ行い、この後、新たなトルク制限値データTusを求めることにより更新を行う(ステップS38,S39,S34…)。
【0042】
よって、このような本実施例に係る型締制御方法によれば、自動設定モードを設け、この自動設定モードにより、監視区間における負荷トルク(トルク検出値Td)を、予め設定したサンプリング周期Δtsにより順次検出し、かつ予め設定したショット回数N分だけ検出するとともに、得られたトルク検出値Td…から、各サンプリング順位毎のトルク制限値Tu…を、所定の演算式により求めて設定するようにしたため、的確なトルク制限値Tuを自動で設定し、動作の安定化、更には誤検出の発生防止を図ることにより、型締制御に対する高度の安定性及び信頼性を確保できる。特に、各トルク制限値Tuは、各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値Td…に対する平均値Aiと最大値Awを求め、この平均値Aiと最大値Awから、Tu=〔{(Aw−Ai)×kp}+Ai〕+kqの演算式により求め、或いは各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値Td…に対する最小値Asと最大値Awを求め、この最小値Asと最大値Awから中央値Ajを、Aj=(Aw−As)/2により求めるとともに、この中央値Ajと最大値Awから、各閾値Diを、Di=〔{(Aw−Aj)×kp}+Aj〕+kqの演算式により求めるようにしたため、的確なトルク制限値Tuを確実かつ安定して求めることができる。
【0043】
また、最大値Awを選定するに際して、前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値を用いるようにしたため、時間軸方向Ftのバラツキに対しても所定の余裕度を設定することができ、時間軸方向Ftにおけるバラツキによる誤検出を回避することができる。さらに、トルク制限値Tuを設定した後、ショット回数が設定数Mに達する毎に、自動設定モードを実行してトルク制限値Tuを更新するようにしたため、特に、昼夜の温度変化等により、時間帯によって負荷トルクの大きさが変動する場合であっても、誤ったトルク制限を確実に回避することができる。
【0044】
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、細部の構成,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。例えば、演算式は、必要により他の演算式を用いてもよく、例示の演算式に限定されるものではない。また、実施例は、駆動機構部5にトグルリンク機構9を用いた場合を示したが、トグルリンク機構を用いない直圧形式の駆動機構部にも同様に利用することができる。
【0045】
【発明の効果】
このように、本発明に係る射出成形機の型締制御方法は、自動設定モードを設け、この自動設定モードにより、監視区間におけるトルク検出値を、予め設定したサンプリング周期により順次検出し、かつ予め設定したショット回数分だけ検出するとともに、得られたトルク検出値から各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値に対する平均値Ai及び前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値Awを求め、この平均値Aiと最大値Awから、又は、得られたトルク検出値から各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値に対する最小値As及び前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値Awを求めるとともに、この最小値Asと最大値Awから中央値Ajを求め、この中央値Ajと最大値Awから、各サンプリング順位毎のトルク制限値を、所定の演算式により求めて自動設定するようにしたため、次のような顕著な効果を奏する。
【0046】
(1) 的確なトルク制限値を自動で設定し、動作の安定化、更には誤検出の発生防止を図ることにより、型締制御に対する高度の安定性及び信頼性を確保することができる。
【0047】
(2) 各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値に対する平均値Aiと最大値Awを求め、この平均値Aiと最大値Awから、各トルク制限値Tuを、例えば、Tu=〔{(Aw−Ai)×kp}+Ai〕+kqの演算式により求め、或いは平均値Aiの代わりに中央値Ajを求め、この中央値Ajと最大値Awから、各トルク制限値Tuを、例えば、Tu=〔{(Aw−Aj)×kp}+Aj〕+kqの演算式により求めるようにしたため、的確なトルク制限値Tuを確実かつ安定して得ることができる。
【0048】
(3) 最大値Awを選定するに際して、前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値を用いるようにしたため、特に時間軸方向のバラツキによる誤検出を回避することができる。
【0049】
(4) 好適な実施の態様により、トルク制限値を設定した後、ショット回数が設定数に達する毎に、自動設定モードを実行してトルク制限値を更新するようにすれば、特に昼夜の温度変化等により、時間帯によって負荷トルクの大きさが変動する場合であっても、誤ったトルク制限を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る型締制御方法に用いるトルク制限値の設定方法を示すフローチャート、
【図2】同型締制御方法を含む生産稼働時における全体の動作を説明するためのフローチャート、
【図3】同型締制御方法に用いるトルク制限値データの更新方法を説明するためのフローチャート、
【図4】同型締制御方法を実施できる射出成形機の構成図、
【図5】同射出成形機におけるサーボ回路の構成図、
【図6】同型締制御方法を実施する際におけるディスプレイの画面構成図、
【図7】同型締制御方法により検出したトルク検出値の一覧表、
【図8】同型締制御方法を用いた際における最大値の選出方法説明図、
【符号の説明】
1 射出成形機
Td トルク検出値
Tu トルク制限値
Δts サンプリング周期
Claims (4)
- 型締工程の型閉動作に対して設定した所定の監視区間における負荷トルクを検出するとともに、検出により得たトルク検出値が、設定したトルク制限値に達したなら、このトルク制限値を越えないようにトルク制御を行う射出成形機の型締制御方法において、自動設定モードを設け、この自動設定モードにより、前記監視区間におけるトルク検出値を、予め設定したサンプリング周期により順次検出し、かつ予め設定したショット回数分だけ検出するとともに、得られたトルク検出値から各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値に対する平均値Ai及び前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値Awを求め、この平均値Aiと最大値Awから、又は、得られたトルク検出値から各ショットにおける同一サンプリング順位のトルク検出値に対する最小値As及び前後のサンプリング順位に対して設定した所定の範囲における複数のサンプリング順位の中の最も大きい最大値Awを求めるとともに、この最小値Asと最大値Awから中央値Ajを求め、この中央値Ajと最大値Awから、各サンプリング順位毎のトルク制限値を、所定の演算式により求めて自動設定することを特徴とする射出成形機の型締制御方法。
- 前記平均値Aiと最大値Awから、各トルク制限値Tuを、
Tu=〔{(Aw−Ai)×kp}+Ai〕+kq
(ただし、kp,kqは定数)
の演算式により求めることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の型締制御方法。 - 前記中央値Ajと最大値Awから、各トルク制限値Tuを、
Tu=〔{(Aw−Aj)×kp}+Aj〕+kq
(ただし、kp,kqは定数)
の演算式により求めることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の型締制御方法。 - 前記トルク制限値を設定した後、ショット回数が設定数(0を含む)に達する毎に、前記自動設定モードを実行して前記トルク制限値を更新することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の型締制御方法。
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