JP3893581B2 - パイプフランジの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、エンジンの吸気管などの流体導入部に用いられるパイプフランジの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来、自動車用あるいは産業機械用のガソリンエンジンとかディーゼルエンジンの吸気管などの流体導入部においては、図13に示すように、板状のフランジ51に接合挿入部51aを形成させ、パイプ52の先端の挿入直管部52bを、接合挿入部51a内に挿入して、ロー付けあるいは溶接で接合しており、パイプ52には曲がり部52aを設けて、干渉物53との干渉を避けているが、曲がり部52aの曲げ半径Rをパイプ52の直径Dの1.2倍以上にしないと急激に管路抵抗が増大するため、なるべく曲げ半径Rを大きくするようにしているが、干渉物53との関係で、曲げ半径Rを小さくせねばならない場合もあり、設計の自由度が小さくなるという問題点があった。
【0003】
このような問題点を解決するために、図14に示すように、鋳造でフランジ55を形成させ、内部に曲がり部55bを形成させて、端部に接合挿入部55aを形成させ、この接合挿入部55aに、直管のパイプ52を接合させて構成したものが存在し、このような構造では、曲がり部55bの曲げ半径Rを大きくすることができ、曲げによる管路抵抗の増大を抑えることができるが、このようなフランジ55を鋳造で形成するためには中子が必要となり、中子砂の粒度などから、この曲がり部55bの内面粗度が大きくなり、これにより管路抵抗が大きくなってしまうという問題点があり、また、鋳造のフランジ55では中子が必要となるため、高価なものとなってしまうという問題点が別に発生する。
【0004】
また、図15に示すように、パイプ52を、直径D1の真円から、高さ方向の寸法がD2の楕円あるいは長円形状に、形状変化区間Pで変化させて、板状フランジ51の長円開口51bに接合させるような構造では、パイプ52に曲がり部52aを形成させた後に、端部を加工して形状変化区間Pを形成させる必要があり、パイプ52の曲がり始めの部分がフランジ51から遠くなり、曲がり部52aの曲げ半径Rを小さくせねばならないという問題点が生ずる。
【0005】
また、図16に示すように、鋳造フランジ55内に、曲がり部55bと形状変化区間Pを作る場合には、曲がり部55bの曲がり半径を大きくすることができるが、成形時に中子が必要であり、中子により曲がり部55bの内面粗度が大きくなり、管路抵抗が大となってしまうという問題点があった。
【0006】
なお、図17は、図15及び図16における長円開口51b及び55cの正面構成図であり、長円開口51b,55cは、真円のパイプ52の直径D1に対し高さ方向の寸法D2は小さく、横方向の寸法D3は大に形成されている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、管路抵抗を増大させることなく設計の自由度の大きい曲がり部を有したパイプフランジの製造方法を提供することを第1の目的とし、また第2の目的は、中子を用いずダイカストで加工代の少ない安価なパイプフランジの製造方法を提供せんことを目的とし、その第1の要旨は、2つの主型を合わせて鋳込空間を形成する工程と、直線状のスライド型を前記2つの主型のうちの一方の主型から前記鋳込空間内に直線状に突出した突出部に所定角度をもって該鋳込空間内で接合させる工程と、該鋳込空間内に湯を流し込んで内部で前記所定角度の曲がり部をもって結ばれた第1直管部と第2直管部とからなる流路を有するフランジを形成する工程と、前記曲がり部のうち内側の曲がり点を、その切削寸法が、該曲がり部のうち外側の曲がり部の接点と前記第1直管部及び前記第2直管部をアール状に連続させる仮想円弧との最大距離と同じ、または、該最大距離の1.2倍程度となるよう前記内側の曲がり点を切削加工する工程と、を有することである。
また、第2の要旨は、前記流路は、真円から長円或いは楕円に変化する形状変化区間が形成され、該形状変化区間を前記内側の曲がり点を切削加工する工程で切削される部位内に設定したことである。
また、第3の要旨は、前記流路の形状変更に伴う断面積変化分の修正を、前記曲がり部内側の曲がり点を切削加工する工程で補ったことである。
また、第4の要旨は、前記流路の端側を直線状に切削加工してパイプ接合用の接合部を形成する工程を有し、前記鋳込空間内に湯を流し込んで前記フランジを形成する際に発生する鋳バリを、前記曲がり部内側の曲がり点を切削加工する工程と前記接合部を形成する工程とで除去できる部位に発生するようにしたことである
【0008】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、フランジとパイプの接合構造の断面構成図であり、フランジ1は、ダイカストで中子を用いずに形成されたものとなっており、フランジ1の内部には、右側から下流側直管部5が形成され、他方側から接合側直管部4が形成されて、両直管部4,5は、外側曲がり点6及び内側曲がり点7で接点を形成するように構成されている。即ち、上流側及び下流側から2本の直管を角度θで結んだ形状に内部の流路が曲がり状に形成されたものとなっており、接合側直管部4の端部には、直線状の接合挿入部3が形成されて、この接合挿入部3に対し、外側より直径Dの真円のパイプ2が挿入され、ロー付けあるいは溶接で接合されたものとなっている。
【0009】
図1において、前記外側曲がり点6と、その内側の、接合側直管部4および下流側直管部5で構成される2本の直管をアール状に連続させる仮想円弧9との最大距離t1に相当するt2分の寸法が、内側曲がり点7で削り取られて切削部8が形成されており、図2に示すように、この切削部8は、ダイカスト成形後に、流路の内径よりも小さな刃具10の軸10aを回転させて、回転する刃具10で内側曲がり点7を切削加工して削り取ったものである。
【0010】
このように切削部8を形成しておけば、図3に示すように、パイプ2側からフランジ1内の流路に流れ込む流体の実流線11は、流路の外側では仮想円弧9以上には発達せず、流路の内側では切削部8で乱流域が生ずることなく、実流路径Dはパイプ2の内径Dとほぼ同寸法となって、上流から下流側へ流体が流れることとなり、曲げによる管路抵抗の増大を抑えることができるものとなる。
【0011】
なお、切削部8が存在しない場合には、図4に示すように、内側曲がり点7の下流で、流体の粘性などによる内側乱流域12aが形成されて、実流路径D4は小さくなってしまう。また、切削部8の切削量が小さすぎる場合も同様に、内側乱流域12aが発達して、実流路径は小さくなってしまう。
一方、逆に切削部8の切削量が大きすぎると、図5に示すように、この切削部8の部分が拡管部となり、流路径が拡大された後、下流側直管部5の部分に向かって縮管となるため、外側曲がり点6の部分でも外側乱流域12cが外側曲がり点6の乱流域に続いて形成され、また、内側の内側乱流域12bも内側乱流域12aに連続して形成され、管路抵抗が増大してしまうこととなる。
【0012】
従って、切削部8の切削寸法t2は、t1と同じか、t1の1.2倍程度が好ましく、このように設定して切削部8を切削加工した場合には、図3のように、切削部8で乱流域が生ずることなく、管路抵抗を少なくすることができるものとなる。
【0013】
この図1のようなフランジ1は、図6に示すような、主型16,17とスライド型18からなる割り型式のダイカスト鋳型15を用いて、中子を用いることなくダイカスト成形することができるものである。
即ち、主型17に前記外側曲がり点6を形成する部位が設けられており、また、主型17とスライド型18の接合面M1で前記内側曲がり点7の部位が成形され、内部の鋳込空間S内に湯を流し込んでフランジ1を製造することができ、主型17は矢印方向に移動させて抜くことができ、また、スライド型18も矢印方向に抜くことができ、このような割り型式のダイカスト鋳型15であれば、中子を必要とすることなく、直線状に抜き取ってフランジ1の成形が可能となる。
【0014】
なお、フランジ1の成形時に、図7に示すように、主型17とスライド型18の接合面M1の、内側曲がり点7の部位にバリ19bが形成され、外側にはバリ19cが形成されることとなり、また、主型16とスライド型18の接合面M2,M3でバリ19a,19aが形成されることとなるが、このようなダイカスト成形時に発生する鋳バリ19a,19b,19cは、全てその後の切削加工により除去することができるものである。
【0015】
即ち、図7に示すように、前述した内側曲がり点7を刃具10で切削して切削部8を形成させる際に、バリ19bは除去されるものであり、また、パイプ2を接合させるための接合挿入部3を接合挿入部加工用刃具20で切削加工する際に、バリ19a,19a,19cは除去されるものであり、流路内にバリが残ることがなく、別途、鋳バリ19a,19b,19cの除去作業を行う必要がなく、加工工数が少ないものとなる。
【0016】
なお、鋳バリ19b,19c等が流路内に残ると、流体の圧力とか震動などで落下して、流路内に流れ込み、エンジンの吸気管の場合には、バルブの部分に引っ掛かって、シール不良とかバルブの損傷とかエンジンストールなどの重大な問題を発生させるものであるため、鋳バリ19b,19c等は注意深く削除する必要があったが、本例では、切削部8の部位及び接合挿入部3の加工部位にバリ19b,19cが発生するように予め設定されているため、ダイカスト成形の後の切削加工により、確実にこの流路内のバリ19a,19b,19cを削除できるものとなる。
【0017】
なお、図8は、図6の変形例であり、図8のダイカスト鋳型15では、外側曲がり点6の部分を、予め仮想円弧9のアール形状に設定して、主型17を形成したものである。
次に、図9の縦断面図で、また図11の横断面図で示すダイカスト鋳型15は、フランジ1の内部の流路に形状変化区間P1〜P2を形成させることができるものであり、スライド型18は直径D1に形成され、主型17側に、図10に図9のA−A線断面図で、図12に図11のB−B線断面図で示すように、縦寸法がD2で、横寸法がD3の長円または楕円形状の形状部を設けたものである。
【0018】
このようなダイカスト鋳型15では、主型17に、切削部8の切削代t2の区間で直径をD1からD2(D1からD3)に変化させた形状変化区間P1〜P2を設け、切削代t2を、外側曲がり点6と仮想円弧9との間の最大距離t1に、形状変化による断面積変化分を加えた分とすることで、曲がり部の乱流域による管路抵抗の増大を防止できるように構成されており、断面積の修正のための加工も不要となり、中子を用いずに安価にフランジ1を成形することができるものとなっている。
また、主型16,17とスライド型18との接合する面に発生するバリが、切削部8及び接合挿入部3の位置となるように設定されており、その後の切削部8と接合挿入部3の切削加工でバリを除去でき、別途、バリ取り加工を行う必要がなく、フランジ1を安価に製造できるものとなる。
【0019】
【発明の効果】
本発明のパイプフランジの製造方法は、2つの主型を合わせて鋳込空間を形成する工程と、直線状のスライド型を前記2つの主型のうちの一方の主型から前記鋳込空間内に直線状に突出した突出部に所定角度をもって該鋳込空間内で接合させる工程と、該鋳込空間内に湯を流し込んで内部で前記所定角度の曲がり部をもって結ばれた第1直管部と第2直管部とからなる流路を有するフランジを形成する工程と、前記曲がり部のうち内側の曲がり点を、その切削寸法が、該曲がり部のうち外側の曲がり部の接点と前記第1直管部及び前記第2直管部をアール状に連続させる仮想円弧との最大距離と同じ、または、該最大距離の1.2倍程度となるよう前記内側の曲がり点を切削加工する工程と、を有することにより、中子を使わず安価にダイカスト成形でパイプフランジを形成させることができ、しかも、成形されるパイプフランジは、乱流域が生ずることのない、管路抵抗が少ないものとなる。
【0020】
また、前記流路は、真円から長円或いは楕円に変化する形状変化区間が形成され、該形状変化区間を前記内側の曲がり点を切削加工する工程で切削される部位内に設定したことにより、成形されるパイプフランジに、管路抵抗の少ない形状変化区間を形成させることができ、また、鋳バリも後の切削加工で良好に除去することができ、流路内に形状変化区間の存在するフランジを、中子を使わず安価に製造することができるものとなる。
【0021】
また、前記流路の形状変更に伴う断面積変化分の修正を、前記曲がり部内側の曲がり点を切削加工する工程で補ったことにより、切削加工部位の切削代を形状変化による断面積変化分を加えた分とすることで、断面積の修正のための加工も不要となり、安価にフランジを成形することができる。
【0022】
また、前記流路の端側を直線状に切削加工してパイプ接合用の接合部を形成する工程を有し、前記鋳込空間内に湯を流し込んで前記フランジを形成する際に発生する鋳バリを、前記曲がり部内側の曲がり点を切削加工する工程と前記接合部を形成する工程とで除去できる部位に発生するようにしたことにより、ダイカスト成形時に発生する鋳バリは曲がり部内側の切削加工域内及びパイプ接合用の切削加工域内に発生するため、後の切削加工で鋳バリを確実に除去して、鋳バリの脱落による不具合の発生を確実に防ぐことができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 曲がり流路を形成したフランジに直管状のパイプを接合した状態の断面構成図である。
【図2】 図1のフランジの成形後に、曲がり部内側を刃具で切削している状態の作業説明図である。
【図3】 内側曲がり点の切削量が適正値の場合の、流路内を流れる流体の実流路径を示す説明構成図である。
【図4】 内側曲がり点を切削しない場合に乱流域が発生する状態の説明構成図である。
【図5】 内側曲がり点の切削量が大の場合に乱流域が増大してしまう状態を示す説明構成図である。
【図6】 図1のフランジを成形するためのダイカスト鋳型の断面構成図である。
【図7】 ダイカスト鋳型で成形されたフランジに発生する鋳バリの位置を示す概略構成図である。
【図8】 ダイカスト鋳型の変形例を示す断面構成図である。
【図9】 形状変化区間の存在する流路をフランジに成形するためのダイカスト鋳型の縦断面図である。
【図10】 図9のA−A線端面図である。
【図11】 図9の横断面構成図である。
【図12】 図11のB−B線端面図である。
【図13】 従来のパイプ側を曲げた構成の断面構成図である。
【図14】 従来のフランジ側に曲がり流路を形成させた状態の断面構成図である。
【図15】 従来のパイプ側に形状変化区間を形成させた場合の断面構成図である。
【図16】 従来のフランジ内の流路に形状変化区間を形成させた断面構成図である。
【図17】 図15及び図16における長円開口の正面図である。
【符号の説明】
1 フランジ
2 パイプ
3 接合挿入部
4 接合側直管部
5 下流側直管部
6 外側曲がり点
6a 曲がり部
7 内側曲がり点
8 切削部
9 内接円弧
10 刃具
11 流体の実流線
12a,12b 内側乱流域
12c 外側乱流域
15 ダイカスト鋳型
16,17 主型
18 スライド型
19a,19b,19c 鋳バリ
20 接合挿入部加工用刃具
M1,M2,M3 接合面
S 鋳込空間
P1〜P2 形状変化区間
Claims (4)
- 2つの主型を合わせて鋳込空間を形成する工程と、
直線状のスライド型を前記2つの主型のうちの一方の主型から前記鋳込空間内に直線状に突出した突出部に所定角度をもって該鋳込空間内で接合させる工程と、
該鋳込空間内に湯を流し込んで内部で前記所定角度の曲がり部をもって結ばれた第1直管部と第2直管部とからなる流路を有するフランジを形成する工程と、
前記曲がり部のうち内側の曲がり点を、その切削寸法が、該曲がり部のうち外側の曲がり部の接点と前記第1直管部及び前記第2直管部をアール状に連続させる仮想円弧との最大距離と同じ、または、該最大距離の1.2倍程度となるよう前記内側の曲がり点を切削加工する工程と、
を有するパイプフランジの製造方法。 - 前記流路は、真円から長円或いは楕円に変化する形状変化区間が形成され、
該形状変化区間を前記内側の曲がり点を切削加工する工程で切削される部位内に設定したことを特徴とする請求項1に記載のパイプフランジの製造方法。 - 前記流路の形状変更に伴う断面積変化分の修正を、前記曲がり部内側の曲がり点を切削加工する工程で補ったことを特徴とする請求項2に記載のパイプフランジの製造方法。
- 前記流路の端側を直線状に切削加工してパイプ接合用の接合部を形成する工程を有し、
前記鋳込空間内に湯を流し込んで前記フランジを形成する際に発生する鋳バリを、前記曲がり部内側の曲がり点を切削加工する工程と前記接合部を形成する工程とで除去できる部位に発生するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3何れかに記載のパイプフランジの製造方法。
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2000
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