JP3890139B2 - コモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造 - Google Patents

コモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置におけるコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置において、コモンレールには燃料ポンプを接続するためのパイプとインジェクタを接続するためのパイプ(以下、インジェクションパイプという。)とが接続される。図5〜図7は、従来例にかかるコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接合構造を示している。
【0003】
図5及び図6に示すように、コモンレール51の中心部にはレール長方向に延びるコモンレール穴52が形成され、コモンレール51の筒壁部には、内側から外側へ順に、コモンレール穴52に交差開口してレール長直角方向に延びる分岐穴53と、テーパー状のシール面54と、内周に雌ネジ56が切られた取付穴55とが形成されている。インジェクションパイプ61の端部には小筒状のカラー62が圧入固定され、カラー62の外周にはフランジ部63が形成され、カラー62の先端には凸球面状のシール面64が形成されている。インジェクションパイプ61の周りには大筒状のユニオン71が通され、ユニオン71の外周には雄ネジ72が切られるとともに六角部73が形成され、ユニオン71の内周には段部74が形成されている。そして、インジェクションパイプ61とカラー62とユニオン71とが、予めインジェクションパイプアッシー60としてアッセンブリ化されている。
【0004】
インジェクションパイプアッシー60をコモンレール51に接続するには、図6に示すように行う。すなわち、ユニオン71の雄ネジ72を取付穴55の雌ネジ56に螺合し、ユニオン71の段部74をカラー62のフランジ部63に係合させて、カラー62のシール面64をコモンレール51のシール面54に強く密着させればよい。燃料ポンプにより加圧してコモンレール51に送られた燃料は、コモンレール穴52から分岐穴53に導入され、カラー62の穴を経てインジェクションパイプ61からインジェクタに送られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のコモンレール51には、次の問題(1)(2)があった。
(1)性能上の要求から、コモンレール51の分岐穴53の内径を0.7〜1.0mm程度に小さくする必要がある。このような小径の分岐穴53を形成するには、多大な設備と手間とを要する放電加工や電解バリ取り加工が必要となるため、設備投資増やコストアップになっていた。この加工の容易化対策として、分岐穴53の周囲部分をコモンレール51の本体と別ピースにする案もあるが、同案にコスト上の利点はない。
【0006】
(2)コモンレール穴52内には燃料ポンプから送られた加圧燃料により、例えば20←→150MPa程度の圧力変動を伴った超高圧がかかる。この超高圧により、図7に示すように、コモンレール穴52に対する分岐穴53の交差開口縁部57に、変動を伴った引張歪みが繰り返し発生するため、同部57に金属疲労による亀裂58が発生し易く、品質が不安定となる。この亀裂を防止するために、コモンレール51の浸炭焼入れ等の硬化処理や、交差開口縁部57の電解バリ取り加工による曲面化や、材料変更等による強度アップが図られているが、これらの方法では、大幅なコストアップや重量増になってしまう。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、亀裂の発生を防止して品質の安定化を図ることができるとともに、加工の容易化とコストダウンとを図ることができるコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造は、コモンレールに内径が2mm以上の分岐穴を形成し、該分岐穴の交差開口縁部を曲面化して局部応力集中を緩和し、インジェクションパイプアッシーの端部に固定される金属製の小筒状のカラーの先端を絞る方法で圧縮残留歪みが残るように塑性変形することにより、前記カラーの先端に外径が前記分岐穴の内径より小さい細管状の突き出し部を形成し、前記突き出し部を前記分岐穴に遊挿し、この遊挿により前記突き出し部と前記分岐穴との間に周状に隙間が生じるようにしたことを特徴とする。分岐穴の内径を2mm以上としたのは、分岐穴の加工を容易にするためと、遊挿する突き出し部が細くなりすぎないようにするためであり、3mm以上にすることがさらに好ましい。分岐穴の内径の上限は、数値上は特にないが、コモンレール穴の内径までである。
【0009】
ここで、前記突き出し部の先端面をコモンレール穴に対する前記分岐穴の交差開口と略面一にすることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態例について、図1〜図4を参照して説明する。図4はディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置の概略を示し、コモンレール1の側部には、燃料ポンプ2を接続するためのパイプ3と、インジェクタ4を接続するためのインジェクションパイプアッシー20とが接続され、コモンレール1の端部には、リリーフバルブ6と圧力センサ7とが接続される。燃料ポンプ2とインジェクタ4は電子制御装置8により制御される。図1〜図3は、本実施形態に係るコモンレール1とインジェクションパイプアッシー20との接合構造を示している。
【0011】
図1及び図2に示すように、金属製のコモンレール1の中心部にはレール長方向に延びるコモンレール穴12が形成され、その内径は11mmである。コモンレール1の筒壁部には、内側から外側へ順に、コモンレール穴12に交差開口してレール長直角方向に延びる分岐穴13と、テーパー状のシール面14と、内周に雌ネジ16が切られた取付穴15とが形成されている。分岐穴13の内径は3.5mmであり、この程度の大きさであれば切削加工により形成可能であるから、本実施形態の分岐穴13はドリル加工されている。
【0012】
インジェクションパイプ5の外径は6.35mm、内径は3mmである。インジェクションパイプ5の端部には金属製の小筒状のカラー22が圧入固定され、その主要部の外径は8mm、内径は2mmである。カラー22の外周には拡径したフランジ部23が形成されている。カラー22の途中には凸球面状のシール面24が形成され、カラー22の先端には細管状の突き出し部25が形成されている。シール面24と突き出し部25とはカラー22を絞る(縮径させる)方法で圧縮残留歪みが残るように塑性変形させたものであり、突き出し部25の長さは分岐穴13の長さと略同一である。そして、塑性変形の結果、突き出し部25の外径は前記分岐穴13の内径より小さい3mm、内径(導入穴26)は0.7〜1.0mmと、それぞれ縮径している。
【0013】
インジェクションパイプ5の周りには取付部材としての大筒状のユニオン31が通され、ユニオン31の外周には雄ネジ32が切られるとともに六角部33が形成され、ユニオン31の内周には段部34が形成されている。そして、インジェクションパイプ5とカラー22とユニオン31とが、予めインジェクションパイプアッシー20としてアッセンブリ化されている。
【0014】
インジェクションパイプアッシー20をコモンレール1に接続するには、図2に示すように行う。すなわち、ユニオン31の雄ネジ32を取付穴15の雌ネジ16に螺合し、ユニオン31の段部34をカラー22のフランジ部23に係合させて、カラー22のシール面24をコモンレール1のシール面14に強く密着させるとともに、突き出し部25を分岐穴13に同心状に遊挿させて、突き出し部25の先端面をコモンレール穴12に対する分岐穴13の交差開口と略面一にすればよい。この遊挿により、突き出し部25と分岐穴13との間には周状に0.25mmの隙間27が生じる。
【0015】
燃料ポンプ2により加圧してコモンレール1に送られた燃料は、コモンレール穴12からカラー22の突き出し部25の導入穴26に直接導入され、インジェクションパイプ5からインジェクタ4に送られる。すなわち、本実施形態では突き出し部25の導入穴26が、従来例の分岐穴53と同様に燃料を導入させる穴として機能する。
【0016】
本実施形態のコモンレール1によれば、次の作用・効果(1)(2)が得られる。
(1)前記の通り、コモンレール1の分岐穴13の内径を3mm程度に大きくするので、切削加工又はその他の方法により容易に形成することができ、設備投資の軽減とコストダウンとを図ることができる。なお、インジェクションパイプアッシー20としては、カラー22に突き出し部25を形成する分だけ構造が複雑になるが、その加工は容易であるから、コモンレール1も含めたトータルとしては、従来例より製造が容易になり、コストメリットが大きい。
【0017】
(2)図3に示すように、コモンレール穴12内の加圧燃料による超高圧は、カラー22の突き出し部25にかかる。しかし、突き出し部25と分岐穴13との間に隙間27が生じていることから、突き出し部25はその内周面(導入穴26)と外周面とに同じ圧力を受けるため、発生応力が抑えられて亀裂の発生を防止することができ、品質が安定する。従って、従来例のような浸炭焼入れ等の硬化処理や材料変更等による強度アップは不要であるから、大幅なコストアップを図ることができ、重量増の心配も無い。なお、超高圧はコモンレール穴12に対する分岐穴13の交差開口縁部17にもかかるが、その内径が大きいことから、従来より簡単な方法(例えば流体研磨等)による曲面化等で局部応力集中を緩和できるので、性能は保障できる。
【0018】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)インジェクションパイプアッシーの構成を変更し、例えばインジェクションパイプ5の先端に突き出し部を直接形成し、インジェクションパイプ5の外周にカラーを固定すること。
(2)本発明から外れない範囲で各部の寸法を適宜変更すること。
【0019】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造によれば、亀裂の発生を防止して品質の安定化を図ることができるとともに、加工の容易化とコストダウンとを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造の接続前の断面図である。
【図2】同接続構造の接続後の断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置の概略図である。
【図5】従来例に係るコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造の接続前の断面図である。
【図6】同接続構造の接続後の断面図である。
【図7】図6の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 コモンレール
5 インジェクションパイプ
12 コモンレール穴
13 分岐穴
20 インジェクションパイプアッシー
22 カラー
25 突き出し部
26 導入穴
27 隙間
31 ユニオン

Claims (2)

  1. コモンレール(1)に内径が2mm以上の分岐穴(13)を形成し、該分岐穴(13)の交差開口縁部(17)を曲面化して局部応力集中を緩和し、
    インジェクションパイプアッシー(20)の端部に固定される金属製の小筒状のカラー(22)の先端を絞る方法で圧縮残留歪みが残るように塑性変形することにより、前記カラー(22)の先端に外径が前記分岐穴(13)の内径より小さい細管状の突き出し部(25)を形成し、
    前記突き出し部(25)を前記分岐穴(13)に遊挿し、この遊挿により前記突き出し部(25)と前記分岐穴(13)との間に周状に隙間(27)が生じるようにしたことを特徴とするコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造。
  2. 前記突き出し部(25)の先端面をコモンレール穴(12)に対する前記分岐穴(13)の交差開口と略面一にした請求項1記載のコモンレールとインジェクションパイプアッシーとの接続構造。
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