JP3887209B2 - 流入量予測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排水施設に流入する流体流入量を予測する流入量予測装置に係り、とりわけ流体の流れ状態を考慮して流体流入量を予測する流入量予測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水または工場廃水等の流体の流量を計測する流量計として、電磁流量計、超音波式流量計または、せき式流量計等が知られている。このうち超音波式流量計の一つである流速・水位演算方式流量計は、設置される管径が大きい場合でも、設置が容易であり、また管内の流体の流れに対する障害が少ないといった特徴があり、広範に用いられている。
【0003】
従来の流体流入量を予測する流入量予測装置は、地上雨量計、降雨レーダ、水位計および上述の流量計等からの情報に基づいて、流体流入量の予測式から一定時間後の流体流入量の予測を行なうものが知られている。
【0004】
しかしながら、流下状態と貯留状態とでは管渠内の流体の流れ状態が異なる。このため、管渠内の流体の流れ状態が流下状態および貯留状態のいずれの場合に対しても同一の予測演算式を用いて流体流入量の予測を行うと、流体流入量の予測の精度が低下する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来より、管渠内の流体の水位を計測する水位計および管渠内の流体の流量を計測する流量計を有し、水位計からの水位値と流量計からの流量値に基づいて、流体流入量を予測する流入量予測装置が知られている。
【0006】
しかしながら、管渠内の流体の流れ状態が流下状態または貯留状態であるかを考慮して流体流入量の予測をする流入量予測装置は開発されていないのが実情である。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、管渠内の流体の流れ状態が流下状態または貯留状態であるかを考慮して、水位計からの水位値と流量検出手段からの流量値に基づいて、流体流入量を精度良く予測することができる流入量予測装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、管渠または開渠内を流れる流体を計測し、流体流入量を予測する流入量予測装置において、管渠または開渠内の流体の水位を計測する水位計と、管渠または開渠内の流体の流量を求める流量検出手段と、水位計からの水位値に基づいて、水位値に基づいて算出された断面積に、水位値に基づいて算出された流体の平均流速を乗じて求めた、流れ状態を求める基準となる流体の流量の理想値を算出して、流体流入量を予測する予測演算部と、を備え、予測演算部は、算出された流量の理想値と流量検出手段からの流量値の偏差を算出し、算出された偏差が予め設定された範囲内である場合に、流れ状態が流下状態であると判定して、予め設定された流下状態用の予測演算式を用い、水位計からの水位値と流量検出手段からの流量値とに基づいて流体流入量を予測し、算出された流量の理想値と流量検出手段からの流量値との偏差が予め設定された範囲外である場合に、流れ状態が貯留状態であると判定して、予め設定された貯留状態用の予測演算式を用いて、水位計からの水位値と流量検出手段からの流量値とに基づいて、流体流入量を予測することを特徴とする流入量予測装置である。
【0009】
本発明によれば、管渠または開渠内の流れ状態が流下状態または貯留状態かを判定し、流体の流れ状態に適合した予測演算式を用いることにより、流体流入量の予測の精度を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図1を参照して本発明による流入量予測装置の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明による流入量予測装置の実施の形態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本発明による流入量予測装置15は、管渠13内の上部に設けられ、管渠13内の流体14の水位を計測する水位計2と、管渠13内の流体14の流量を求める流量検出手段20と、水位計2と流量検出手段20からの信号に基づいて演算を行う演算部5とを備えている。
【0013】
このうち流量検出手段20は、管渠13内の下部に一対設けられ管渠13内の流体14の流速を計測する流速計1、1と、各流速計1からの流体の流速値と水位計2からの流体の水位値に基づいて流体の流量を算出するための後述する流量演算部5fとから構成されている。
【0014】
演算部5は、水位計2および一対の流速計1、1から送られてくる信号を変換する信号変換部5aと、後述する監視部8へ信号を出力する信号出力部5bと、流体流入量を予測するための設定値を設定する設定部5cと、信号変換部5aからの信号に基づいて流量の理想値を算出する理想値演算部5dと、理想値演算部5dからの流量の理想値と流量検出手段20からの流量値に基づいて流体14の流れ状態を判定し、流体流入量を予測する判定部5eと、上述した流量演算部5fとを有している。そして、演算部5の各部5a、5b、5c、5d、5e、5fは相互に接続されている。
【0015】
演算部5は、信号変換部5aからの信号に基づいて、流れ状態を求める基準となる流体14の流量の理想値を算出して、流体流入量を予測する予測演算部5a、5b、5c、5d、5eと、上述した流量演算部5fとから構成されている。
【0016】
前述したように一対の流速計1、1は、対応するケーブル3、3を介して予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aに接続され、水位計2はケーブル4を介して、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aが接続されている。
【0017】
ここで流速計1としては、超音波を粒子に発射し、送信周波数と反射した超音波の反射周波数との差を測定して流速を求める超音波ドップラー方式の流速計が用いられている。
【0018】
水位計2としては、超音波の発信から受信までの時間差を測定して水位を求める超音波パルス伝搬時間差方式の水位計が用いられている。
【0019】
予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cには、ケーブル10を介して外部端末7が接続され、演算部5には、ケーブル9を介して、演算部5に電力を供給する電源6が接続されている。
【0020】
また前述のように予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号出力部5bおよび設定部5cには、ケーブル11、12を介して監視部8が接続され、監視部8にはポンプおよび流入ゲートを制御する制御部16が接続されている。
【0021】
次にこのような構成からなる実施の形態の作用について説明する。
【0022】
図1に示すように、一対の流速計1、1は、管渠13内の流体14の流速を計測し、その流速値を対応するケーブル3、3を介して、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aに送信する。また水位計2は、管渠13内の流体14の水位を計測し、その水位値をケーブル4を介して、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aに送信する。
【0023】
予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aは、送信された流速値および水位値を信号変換し、信号変換された流速値および水位値を流量検出手段20の流量演算部5fに送信する。また予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aは、信号変換された水位値を予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの理想値演算部5dおよび判定部5eに送信する。
【0024】
さらに予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cは、予め設定された管渠13の水路形状、管渠13内の粗度係数および重力加速度の値を流量検出手段20の流量演算部5fおよび予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの理想値演算部5dに送信する。
【0025】
管渠13の水路形状、管渠13内の粗度係数および重力加速度の値は、予め予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cに設定されているが、外部端末7または監視部8よりケーブル10、12を介して自由に設定変更できるようになっている。
【0026】
流量検出手段20の流量演算部5fは、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aから送信された水位値と予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cから送信された管渠13の水路形状に基づいて、管渠13の径深値を算出し、算出された管渠13の径深値、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cから送信された管渠13内の粗度係数および重力加速度の値に基づいて下記の演算式(1)を用いて、係数Arを算出する。
【0027】
【数1】
ここで上記演算式(1)および下記演算式(2)において各記号は、以下のように設定する。
n : 管渠内の粗度係数
R : 管渠の径深(水路形状および水位により変化する値)
y : 信号変換部から送信された水位値(点流速測定水深)
g : 重力加速度
Ar : 係数
【0028】
次に流量検出手段20の流量演算部5fは、演算式(1)において算出された係数Ar、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aからの水位値、算出された管渠13の径深値、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cから送信された管渠13内の粗度係数および重力加速度の値に基づいて、下記の演算式(2)を用いて補正係数Kpを算出する。
【0029】
【数2】
【0030】
なお、補正係数Kpを演算式(1)および(2)を用いて算出しているが、管渠13内の流体14の最大流速の発生位置を考慮した補正係数曲線に基づいて、算出してもよい。
【0031】
図2に示すように流量検出手段20の流量演算部5fは、算出された補正係数Kpと、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aから送信された流速値に基づいて、演算式(3)を用いて管渠13内の流体14の平均流速を算出する(演算a)。
【0032】
Va=Kp・Vp (3)
【0033】
ここで上記演算式(3)において各記号は、以下のように設定する。
Va : 管渠内の流体の平均流速
Vp : 信号変換部から送信された流速値(点流速)
【0034】
流量検出手段20の流量演算部5fは、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aから送信された水位値に基づいて流体14の断面積を算出し(演算b)、算出された流体14の断面積に算出された平均流速を乗じて(演算c)、流体14の流量を算出する(演算d)。算出された流量は、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eに送信される。
【0035】
また、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの理想値演算部5dは、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aから送信された水位値、算出された管渠13の径深値、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cから送信された管渠13の勾配値および管渠13内の粗度係数に基づいて、演算式(4)(Manning式)を用いて流体14の平均流速を算出する(演算e)。
【0036】
ここで管渠13の勾配値は、予め予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cに設定されているが、外部端末7または監視部8によりケーブル10、12を介して、自由に設定変更できるようになっている。
【0037】
【数3】
【0038】
ここで上記(4)式において各記号は、以下のように設定する。
n : 管渠内の粗度係数
R : 管渠の径深(水路形状および水位により変化する値)
I : 管渠の勾配
【0039】
次に予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの理想値演算部5dは、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aから送信された水位値に基づいて流体14の断面積を算出し(演算f)、算出された流体14の断面積に算出された流体14の平均流速を乗じて(演算g)、流量の理想値を算出する(演算h)。算出された流量の理想値は、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eに送信される。
【0040】
予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eは、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの理想値演算部5dから送信された流量の理想値と流量検出手段20の流量演算部5fから送信された流量値(実測値)の偏差を算出し、算出された偏差が予め設定された範囲内にあるか否かの判定を行なう(演算i)。
【0041】
ここで、予め設定された範囲(設定範囲)は、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cにおいて、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの理想値演算部5dから送信された流量の理想値の10%が設定されているが、外部端末7または監視部8によりケーブル10、12を介して自由に設定変更できるようになっている。予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cに設定された設定範囲は、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eに送信される。
【0042】
図3に示すように管渠13内の理想的な流れの状態(等流)が継続している場合には、実測値(プロットx)と理想値aが略一致する(c)。また、何らかの影響で理想的な流れが妨げられると、実測値(プロットx)が理想値aから外れてくる(d)。ここで、破線部bと理想値aに挟まれた範囲を予め設定された範囲eとする。
【0043】
なお図3において、縦軸は管渠13内の流体14の流量を示し、横軸は管渠13内の流体14の水位を示している。
【0044】
図4において、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eは、上述したように予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの理想値演算部5dから送信された流量の理想値と流量検出手段20の流量演算部5fから送信された流量値(実測値)の偏差を算出する(Step1)。
【0045】
次に予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eは、算出された偏差が予め設定された範囲内である場合に、流れ状態が流下状態であると判定する(Step2)。予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eは、流れ状態が流下状態であると判定すると予め設定された流下状態用の予測演算式を用い(Step3)、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aからの水位値と流量検出手段20の流量演算部5fからの流量値とに基づいて、一定時間経過後(n分後)の流体流入量を予測する(Step4)。一方、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eは、算出された偏差が予め設定された範囲外である場合に、流れ状態が貯留状態であると判定する(Step2)。予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eは、流れ状態が貯留状態であると判定すると予め設定された貯留状態用の予測演算式を用いて(Step3a)、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号変換部5aからの水位値と流量検出手段20の流量演算部5fからの流量値とに基づいて、一定時間経過後(n分後)の流体流入量を予測する(Step4)。
【0046】
ここで、一定時間(n分)は、予め予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの設定部5cに設定されているが、外部端末7または監視部8よりケーブル10、11を介して、自由に設定変更できるようになっている。
【0047】
予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eは、予測した流体流入量を予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号出力部5bに送信し、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの信号出力部5bは、送信された流体流入量をケーブル11を介して監視部8に送信する。監視部8は送信された流体流入量をケーブル17を介して制御部16に送信し、制御部16は、送信された流体流入量の値に基づいて、ポンプおよび流入ゲートの制御量を算出する(Step5)。制御部16は、算出された制御量でポンプおよび流入ゲートを制御する(Step6)。
【0048】
なお、流体流入量は、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eにおいて予測されているが、監視部8が流体流入量を予測してもよい。
【0049】
次に本発明の変形例について説明する。
【0050】
予測演算部5a、5b、5c、5d、5eには、雨量を計測する地上雨量計が接続され、予測演算部5a、5b、5c、5d、5eの判定部5eは、地上雨量計からの雨量の値と外部端末7または監視部8から入力された降雨レーダの情報をさらに考慮して流体流入量を予測してもよい。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、管渠または開渠内の流れ状態が流下状態または貯留状態かを判定し、流体の流れ状態に適合した予測演算式を用いることにより、流体流入量の予測の精度を向上させることができる。
【0052】
また、簡易な構成で流体流入量の予測の精度を向上させることができることから、降雨レーダを用いて流体流入量を予測する流入量予測装置よりコストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による流入量予測装置の実施の形態を示す全体構成図
【図2】流量の実測値と理想値の算出方法を示す図
【図3】流体流入量を予測するフローチャートを示す図
【図4】Manning式により算出された流量を示す図
【符号の説明】
1 流速計
2 水位計
5 演算部
5a 信号変換部
5b 信号出力部
5c 設定部
5d 理想値演算部
5e 判定部
5f 流量演算部
7 外部端末
8 監視部
15 流入量予測装置
20 流量検出手段
Claims (4)
- 管渠または開渠内を流れる流体を計測し、流体流入量を予測する流入量予測装置において、
管渠または開渠内の流体の水位を計測する水位計と、
管渠または開渠内の流体の流量を求める流量検出手段と、
水位計からの水位値に基づいて、水位値に基づいて算出された断面積に、水位値に基づいて算出された流体の平均流速を乗じて求めた、流れ状態を求める基準となる流体の流量の理想値を算出して、流体流入量を予測する予測演算部と、を備え、
予測演算部は、算出された流量の理想値と流量検出手段からの流量値の偏差を算出し、算出された偏差が予め設定された範囲内である場合に、流れ状態が流下状態であると判定して、予め設定された流下状態用の予測演算式を用い、水位計からの水位値と流量検出手段からの流量値とに基づいて流体流入量を予測し、算出された流量の理想値と流量検出手段からの流量値との偏差が予め設定された範囲外である場合に、流れ状態が貯留状態であると判定して、予め設定された貯留状態用の予測演算式を用いて、水位計からの水位値と流量検出手段からの流量値とに基づいて、流体流入量を予測することを特徴とする流入量予測装置。 - 流量検出手段は、管渠または開渠内の流体の流速を計測する流速計と、流速計からの流体の流速値と水位計からの流体の水位値に基づいて流体の流量を算出する流量演算部とを有することを特徴とする請求項1記載の流入量予測装置。
- 流量演算部は、流速計からの流体の流速値に補正係数を乗じて平均流速を求め、この平均流速を用いて流体の流量を算出することを特徴とする請求項2記載の流入量予測装置。
- 予測演算部は、流体の流量の理想値をManning式により算出することを特徴とする請求項1記載の流入量予測装置。
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