JP3885872B2 - インク収容装置及びそれを備えたインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電式等のインクジェット記録装置の印字ヘッドにインクを供給するためのインク収容装置及びそれを備えたインクジェット記録装置の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、入力信号に基づいてインクを用紙等の被記録媒体に噴射して記録するインクジェット記録装置に使用するインク収容装置として、特許第2725281号特許公報に開示されているように、密閉箱状のインクカートリッジ内に、合成樹脂製のシート材からなるインク収容袋と、廃棄インク吸収体とを、仕切り板を介して区画形成された別々の室内に配置し、前記インクカートリッジの一側面に設けた孔には、インク収容袋内のインクを外部の印字ヘッドに導出するための断面筒状等のインク導出管の先端部を封止するゴム栓体を嵌着し、このゴム栓体に突き刺したインク供給針及び供給チューブを介して印字ヘッドに接続する一方、前記インクカートリッジの一側面に設けた別の孔には、同じくゴム状弾性体からなる廃液口体を設ける。
【0003】
そして、吸引パージ部に接続された廃棄インクチューブの先端の廃棄インク回収針を予め前記廃液口体に突き刺して、廃棄インク回収針の先端が廃棄インク吸収体の箇所に臨むようにしておき、印字ヘッドのメインテナンス時の吸引パージにより印字ヘッドのノズルから吸引された廃棄インク及び気泡は、廃棄インクチューブと廃棄インク回収針とを介して前記廃棄インク吸収体の配置された室内に放出される。そして、廃棄インクは廃棄インク吸収体に吸収される一方、密閉箱状のインクカートリッジの上面に穿設された通気孔を介して気泡をインクカートリッジの外に排出させることを提案している。
【0004】
他方、特開平4−211963号公報では、密閉箱状のインクカートリッジ内に、廃棄インク吸収体と、その広幅面に沿うように配置する非吸水性シートと、インクを入れたインク収容袋とを内蔵させ、インク収容袋内のチューブに接続したゴム弾性体製のシールキャップをインクカートリッジの一側面の孔に嵌合させる。前記インクカートリッジの一側面に穿設したインク回収部としての孔を介して廃棄インク案内管を前記非吸水性シートの上方に臨ませ、廃棄インクを非吸水性シートの表面に滴下させると、廃棄インクは非吸水性シートの表面に沿って急速に広がった後、インク吸収体に吸収される技術が開示されている。なお、気泡は前記インク回収部としての孔を介してインクカートリッジの外に排出されるものと解される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記先行技術の構成では、インク吸収体や非吸水性シートを必要とするため、装置の製造コストが高くなる。また、前記の廃棄インク吸収体に一旦廃棄インクが吸収された後長期間放置すると、廃棄インク中の揮発成分が蒸発してしまい、廃棄インク吸収体内に固形成分が固まり、廃棄インク吸収体の表面の毛細管能力が低下する。しかも、前記廃棄インク中に混じった気泡(空気)が、密閉したインクカートリッジの箱体の空間に充満すると、その空気圧により、廃棄インクが前記通気孔やインク回収部としての孔から外に漏れ出し、インクジェット記録装置の内部を汚してしまうという問題を解消できなかった。
【0006】
特に、インクカートリッジの取り扱い中にその姿勢を傾けたり、裏返す等の変化させたとき、前記通気孔やインク回収部としての孔が、インクカートリッジの下面側や斜め下向きになると、廃棄インクが一層漏出し易くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解消すべくなされたものであって、前記インク吸収体を使用することなく、且つインクが漏出し難いようにした低価格のインク収容装置及びそれを備えたインクジェット記録装置を提供することを技術的課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を達成するため、請求項1に記載の発明のインク収容装置は、インクジェット記録装置における印字ヘッドに供給管を介してインクを供給するためのインク収容袋の収容室と、印字に使用しない廃棄インクを収容するための廃棄インク導入室とを備えた、密閉箱状のインクカートリッジからなるインク収容装置において、前記インクカートリッジにおけるケース本体または蓋体には、前記廃棄インク導入室を外気に連通する段付きの開口孔と、一端が前記開口孔に繋がると共に、前記ケース本体または蓋体の外面側に開放されるラビリンス溝とが形成され、前記ラビリンス溝は、その底部が前記開口孔の段よりも外面側に位置し、且つ前記開口孔よりも断面積が小さいように形成され、前記開口孔の段に貼着され、前記開口孔を密閉する透気性フィルムと、前記ケース本体または蓋体の外面に貼着され、前記ラビリンス溝及び前記透気性フィルムよりも外側の空間を一体的に覆う非透気性フィルムとを備え、前記ラビリンス溝の、前記透気性フィルムから遠い部位を外気に開放したことを特徴とするものである。
【0009】
そして、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインク収容装置において、前記ケース本体または蓋体には、前記ラビリンス溝の中途部に、前記ラビリンス溝の断面積よりも断面積が大きいインクトラップが凹み形成されて、前記インクトラップも非透気性フィルムで覆われていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインク収容装置において、前記ケース本体または蓋体には、前記収容室と廃棄インク導入室とを区画する仕切り壁を設け、該仕切り壁には、両室に連通する通路を設けたものである。
【0011】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインク収容装置において、前記ケース本体または蓋体には、前記廃棄インク導入室に廃棄インク導入のための中空針を差し込み可能なシール材を設けたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明のインクジェット記録装置は、前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインク収容装置を備え、前記インク収容装置における前記インク収容袋から印字ヘッドに供給管を介してインクを供給するように構成する一方、廃棄管を介して前記廃棄インク導入室に廃棄インクを戻すように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面について説明する。図1は、本発明を適用するインクジェット記録装置の要部概略平面図、図2はインクカートリッジの蓋体を外した状態の斜視図、図3は本発明に係るインク収容袋の製造工程を示す斜視図である。
【0014】
まず、図1を参照して、インクジェット記録装置1の要部について説明すると、インクジェット記録装置1の本体ケース2内のフレーム4に、左右方向(図1で矢印A方向)に長手のガイドレール3を、その両端を固定する。該ガイドレール3には、キャリッジ5を左右往復移動可能に装着し、図示しないタイミングベルトと駆動モータ等の駆動手段により、所定範囲内で左右方向(図1で矢印A方向)に往復動させるように構成されている。このキャリッジ5には、下部側に図示しない複数の噴射チャンネルを有する印字ヘッド7(実施形態では4色のための4つの印字ヘッドが並列状に配置)が備えられたヘッドユニット6を着脱可能に搭載している。図1における符号Bは用紙(被記録媒体)が搬送される方向である。
【0015】
図1において、用紙の搬送面よりも下方には、4色(マゼンタ(赤色)、イエロー(黄色)、シアン(青色)、ブラック(黒色))のインクを別個に収納できる4つのインクカートリッジ9(個別の符号は9a,9b,9c,9d)が横一列状に配置されている。この各インクカートリッジ9a〜9dにそれぞれ基端が連結された合成樹脂製等の可撓性を有するインク供給管10(個別の符号は10a〜10d)の先端部は、前記キャリッジ5内のインク供給用ジョイント体(図示せず)に連結し、そのインク供給用ジョイント体を介してヘッドユニットに接続し、各印字ヘッドにインクが供給されるように構成されている。
【0016】
また、図1の本体ケース2の左端部(キャリッジ5の移動範囲内の端部)には、回復動作(吸引パージ)のための吸引キャップ11と、キャリッジ5が吸引キャップ11に接近動するときに、各印字ヘッドの表面を拭き清掃するためのワイパーブレード12とが、前記印字ヘッドと対向するように配置されており、吸引パージ時には、吸引キャップ11が印字ヘッドの前面(下面)のノズル部を覆うように接近密着するように構成されている。前記吸引キャップ11に接続した吸引パイプ13は図示しない吸引ポンプを介して、廃棄タンク、例えば、前記インクカートリッジ9(9a〜9dのうちの一つ)における後述する廃棄インク導入室20bに接続されており、吸引パージにより吸い出される廃棄インクが前記箇所に排出されるようになっている。
【0017】
なお、回復動作のための装置としては、上記の吸引による方法のほか、ヘッドへのインクの供給側からインクに高い圧力を付与する方法もある。
【0018】
図2、図8、図9及び図10はインクカートリッジ9の構成を示し、合成樹脂製の平面視略矩形状の偏平箱型のケース本体20と、その上面を覆う蓋体21と、ケース本体20内に配置するインク収容袋40等とからなる。インクカートリッジ9のうちの1つ、例えば最も多く使われるブラックインクのカートリッジは、ケース本体20が、前記インク収容袋40が配置される収容室20aと、該収容室20aより容積の小さい廃棄インク導入室20bとに仕切り壁20cにて区切られている。この仕切り壁20cに設けた切欠きの連通溝等の連通部20eにより、廃棄インク導入室20bに排出されたインクが収容室20a内にも流れるようにしている。他のカラーインクのカートリッジには、廃棄インク導入室20bを設ける必要はない。
【0019】
次に、インク収納袋40の構成について説明すると、図3(a)〜図3(d)はその第1実施形態を示す。1枚の合成樹脂製の矩形状のシート材41の略中央に穿設孔42を形成する。その場合、シート材41は、図4に示すように、ポリエチレンテレフタレート製フィルム44aの片面にアルミナ又はシリカ44bを真空蒸着した真空蒸着フィルム44の表面にナイロン樹脂製のフィルム45を接着し、他方の面にはポリプロピレン樹脂製またはポリエチレン製のフィルム46を接着した多層構造とする。
【0020】
一方、インク取り出し口体23は、筒状部23aと該筒状部23aの一端から半径外方向に広がる略円盤状のフランジ部23bとからなる合成樹脂製の一体成形品であり、筒状部23a及びフランジ部23bの内径部分を貫通する貫通孔23cを備えている。実施形態では、ポリプロピレン樹脂製またはポリエチレン製である。そして、前記穿設孔42に対してインク取り出し口体23の筒状部23aを挿入するとき、シート材41のポリプロピレン樹脂製またはポリエチレン製のフィルム46側から挿入し、筒状部23aが突出する側のフランジ部23bの円盤面が前記フィルム46と対面するようにして、当該フランジ部23bとシート材41とを熱により溶着(熱シール)して接合部とする(図3(b)参照)。
【0021】
次いで、前記インク取り出し口体23のフランジ部23bがシート材41の折り畳みの内部側になるように、当該シート材41を半分に折り、そのシート材41の3方の端縁部を同方向に向けて重ね合わせ、その重ね合わせのうち底辺を除く左右両側辺をそれぞれ全長にわたって熱により溶着(熱シール)して接合部(溶着部)43a,43bとする(図3(c)参照)。
【0022】
これらの場合、合成樹脂製のインク取出し口体23の材料が前記シート材41における熱シール面と同じ材質であることが熱シール性や接着剤による接着性能を向上させるために望ましい。実施形態では、インク取出し口体23の材質はポリプロピレン樹脂またはポリエチレンとする。また、シート材の接合部43a,43bの合わせ面も、相互に熱シールし易いポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂とすることが望ましい。なお、熱シールに代えて接着剤による接合としても良い。
【0023】
次に、前記インク収容袋40のインク取出し口体23を塞ぐと共に、インクカートリッジ9に装着するためのシールキャップ24の構成について説明する。
【0024】
ケース本体20の一側壁20dには、収容室20a内に収容したインク収納袋40に設けたインク取出し口体23の開口部としての貫通孔23cを塞ぎ、且つ一側壁20dに穿設され装着孔25を封止するための弾性体のシールキャップ24と、前記廃棄インク導入室20bに連通する孔26を塞ぐための弾性体のシール部材27とが設けられている(図5、図6及び図7参照)。
【0025】
シールキャップ24及びシール部材27は、弾性体として、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリロゴム(NBR)、イソプレンゴム、ブチレンゴム、フッ素系ゴム等にて構成されており、前記インク供給管10及び吸引パイプ13の先端に取付けられた尖頭状の中空針29、28(図5及び図6参照)にて突き刺して貫通できると共に、この中空針29、28をシール部材24、27から引き抜いた跡がゴム材料自体の弾性力にて封止(密閉)できることが望ましいから弾性復元性の高いシリコーンゴムが好ましい。
【0026】
図6及び図7に示すように、シールキャップ24は、インク取出し口体23の筒状部23a及びフランジ部23bの内径部を貫通する貫通孔23cに嵌挿する栓部24aと、前記筒状部23aの外周面に被嵌密着する外筒部24bとが一体的に連設形成されている。前記栓部24aは、前記筒状部23aの先端側の略截頭円錐状に形成された内径部に密着して嵌まるように略截頭円錐状に形成されている。このように、シールキャップ24を構成すれば、インク取出し口体23の筒状部23aの内周面(貫通孔23c)と外周面と、筒状部23aの端面とにわたって広い面積の密接部が形成できて、シール性(インク防漏出性)が向上するのである。
【0027】
そして、このシールキャップ24を前記ケース本体20の一側壁20dに設けた装着孔25に対して圧入して嵌挿係合する。このとき、前記装着孔25の内周面(一側壁20dの板厚さ内)には、環状もしくは円周方向に点在するように突起部49を備える(図7参照)。これにより、装着孔25に圧入したシールキャップ24の外筒部24bの外周面が前記突起部49により半径内方向に圧縮力を受けるから、シールキャップ24の外側(インクカートリッジ9の外面側)から中空針29を刺し通したとき、及びこの中空針29を抜き取るときの一側壁20dの板厚さ方向の外力対する抵抗力が増大して、シールキャップ24が装着孔から抜けるという不都合を確実に防止できると共に、前記シールキャップ24の外筒部24bを半径内方向に圧縮する力により、筒状部23aに対する外筒部24b及び栓部24aの密着性能も増大して、シール性(インク防漏出性)も一層確実となるという効果を奏する。
【0028】
所定のインクを入れたインク収納袋40を収容室20a内にセットした後には、蓋体21をケース本体20に接着剤等により接着して密閉する。インク収納袋40内のインクが消費されると、このインクカートリッジ9ごと交換するものである。
【0029】
なお、ケース本体20の一部(前記シールキャップ24及びシール部材27が配置されている側面)には、インクの種類や適用可能なインクジェット記録装置、前記インクカートリッジ9の使用履歴(記録装置本体に1回装着されれば、そのインクカートリッジ9は新品でないと判断するため)等の情報を記憶させるメモリチップ30及びそのチップを記録装置本体と接続するための電気接点の配置部31を備えている。
【0030】
また、前記中空針28から排出された廃棄インクと共に気泡として排出される空気のみをインクカートリッジ9の外に排気するため、前記インクカートリッジ9におけるケース本体20または蓋体21には、前記廃棄インク導入室20bを外気に連通するための開口孔としての段付き孔32を設け、該段付き孔32を透気性フィルム33(インク等の液体は非透過である)にて密閉するものであり、その第1実施形態では、前記蓋体21に穿設された平面視略矩形状の段付き孔32の外面を覆うように透気性フィルム33が貼着されている。この透気性フィルム33は、空気を透過し、インク等の液体を透過しないものである。
【0031】
そして、前記蓋体21の外面には、前記開口孔(段付き孔)32の外面等であって、透気性フィルム33の張設面より外側の空間に連通するようにした細い溝状のラビリンス溝34を屈曲させて形成する。その場合、ラビリンス溝34の断面積は前記開口孔(段付き孔)32の断面積よりもはるかに小さくする。さらに、前記段付き孔32(透気性フィルム33の外側)及びラビリンス溝34の全体を覆うように、気体も液体も非透過である非透気性フィルム35を蓋体21の外面に接着し、ラビリンス溝34の端部等から外気に連通する通気孔36を前記非透気性フィルム35に穿設する。なお、ラビリンス溝34の途中には、前記透気性フィルム33の貼着面から万一漏れたインクがラビリンス溝34を通って外に漏れないように広い面積のインクトラップ37が凹み形成されている(図2、図5、図6及び図8参照)。
【0032】
本発明の参考例として、前記開口孔32は段付き状でなくても良く、またインクカートリッジ9の内面側に前記透気性フィルム33を貼着してもよい。さらに、開口孔及びこれに連通するラビリンス溝34は、インクカートリッジ9のケース本体20の底面もしくは4方の側面板に穿設しても良い。
【0033】
以上のように開口孔を透気性フィルムにて覆うように貼着したものでは、吸引パージ時に、記中空針28から排出された廃棄インクと共に気泡とが廃棄インク導入室20bに入った後、空気のみが前記透気性フィルム33を介してインクカートリッジ9の外に排出できて、インクカートリッジ9の密閉室内の空気圧が大気圧以上に上昇しない。また、インクカートリッジ9が温度上昇したときにもその内部の空気を外に逃がすことができて空気圧が大気圧以上に上昇しない一方、廃棄インクは廃棄インク導入室20bに溜めることができ、インクカートリッジ9の外に漏出することはない。
【0034】
前記開口部(段付き孔32)及びラビリンス溝34の外面側を非透気性フィルム35にて覆うことにより、万一、インクカートリッジ9の蓋体21側を下向きに反転した場合やインクカートリッジ9を立て置きした場合に、開口孔(段付き孔32)を塞いだ透気性フィルム33の貼着面から廃棄インクが漏出したとき、細い断面のラビリンス溝34を伝って廃棄インク及び気泡が流れるが、途中のインクトラップ37にて廃棄インクのみが捉えられ、気体(空気)のみをラビリンス溝34の先端側にて大気と連通する通気孔36を介して逃がすことができ、廃棄インクの漏出を確実に防止できてインクカートリッジ9の外(インクジェット記録装置1内)を汚すこともないのである。
【0035】
また、インク収容袋40を入れる収容室20aと廃棄インク導入室20bとを仕切る仕切り壁20aに切欠き部20eを設けることにより、廃棄インク導入室20b内の廃棄インクが収容室20a内にも流入できることになり、インク収容袋40内のインクが消費されてインク収容袋40の体積が減少したところに、廃棄インクが充満できる結果、廃棄インク導入室20bの体積を大きく設定する必要がなくなり、インクカートリッジ9をコンパクトに設計できるという効果も奏する。
【0036】
なお、前記非透気性フィルム35に通気孔36を穿設するのに代えて、ラビリンス溝34と開口孔(段付き孔32)との連通箇所から遠い箇所において、ラビリンス溝34の一部34aが大気に露出するように前記非透気性フィルム35の形状を設定して貼着するようにしても良い(図9の二点鎖線参照)。
【0037】
前記インクカートリッジ9を印字ヘッド7のノズル面より下方に配置したときの、ノズルとインクカートリッジ9との位置水頭差H1(mmAg) とし、インクカートリッジ9内に廃棄インクが送り込まれるときの、インクカートリッジ9内の最大圧力上昇H2(mmAg) とするとき、H1>H2の圧力バランスとなるような透気性フィルム33を用いると、吸引パージ時に、印字ヘッド7のノズル面からインク滴が凸状に膨出するようなメニスカスとなることがなく、印字ヘッドのノズル面が汚れないのである。
【0038】
なお、本発明において、廃棄インク導入室20bへの中空針28の突き刺し用のシール材27は、蓋体21に設けても良いことはいうまでもない。そして、インク収容袋40の形態は、前述のものに限らず、2枚のシート材を重ねてその外周縁辺を熱シールしたものなど周知の形態であっても良い。また、インク取り出し口体23には前記の貫通孔23cを有する筒状部23aを備えれば、フランジ部23bがなくても良い。
【0039】
【発明の効果】
以上に詳述したように、請求項1に記載の発明のインク収容装置は、インクジェット記録装置における印字ヘッドに供給管を介してインクを供給するためのインク収容袋の収容室と、印字に使用しない廃棄インクを収容するための廃棄インク導入室とを備えた、密閉箱状のインクカートリッジからなるインク収容装置において、前記インクカートリッジにおけるケース本体または蓋体には、前記廃棄インク導入室を外気に連通する段付きの開口孔と、一端が前記開口孔に繋がると共に、前記ケース本体または蓋体の外面側に開放されるラビリンス溝とが形成され、前記ラビリンス溝は、その底部が前記開口孔の段よりも外面側に位置し、且つ前記開口孔よりも断面積が小さいように形成され、前記開口孔の段に貼着され、前記開口孔を密閉する透気性フィルムと、前記ケース本体または蓋体の外面に貼着され、前記ラビリンス溝及び前記透気性フィルムよりも外側の空間を一体的に覆う非透気性フィルムとを備え、前記ラビリンス溝の、前記透気性フィルムから遠い部位を外気に開放したことを特徴とするものである。
【0040】
従って、回復動作時に、廃棄インクと共に気泡とが廃棄インク導入室に入った後、空気のみが前記透気性フィルムを介してインクカートリッジの外に排出できて、インクカートリッジの密閉室内の空気圧が大気圧以上に上昇しない。また、インクカートリッジが温度上昇したときにもその内部の空気を外に逃がすことができて空気圧が大気圧以上に上昇しない一方、廃棄インクは廃棄インク導入室に溜めることができ、インクカートリッジの外に漏出することはなく、インク漏れによる汚れを防止できる。そしてそのための構成として、従来のように、インク吸収体を必要としないから、製造コストが低減できると共に、インクカートリッジの体積、重量も小さくできるという顕著な効果を奏する。
【0041】
しかも、前記ケース本体または蓋体の外面側に開放されるラビリンス溝は、その底部が前記開口孔の段よりも外面側に位置し、且つ前記開口孔よりも断面積が小さいように形成され、前記ラビリンス溝及び前記透気性フィルムよりも外側の空間を一体的に覆う非透気性フィルムを貼着し、前記ラビリンス溝の、前記透気性フィルムから遠い部位を外気に開放したことを特徴とするものであるから、前記開口孔の箇所が下向きになったり、下方位置になるような姿勢にインクカートリッジを変更した場合に、万一非透気性フィルムが貼着されている箇所からインクが漏出したとしても、細い断面のラビリンス溝を介してインクの流れを阻害しつつ、空気のみをインクカートリッジの外に放出できるからインクの露出を一層確実に防止できるという効果を奏する。
【0042】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインク収容装置において、前記ケース本体または蓋体には、前記収容室と廃棄インク導入室とを区画する仕切り壁を設け、該仕切り壁には、両室に連通する通路を設けたものであるから、廃棄インク導入室内に廃棄インクで満杯になった後も、収容室内のインク収容袋のインクが消費されて、インク収容袋の体積が小さくなった箇所に廃棄インクを収容することができる結果、インクカートリッジを廃棄インクの収容のために大きくする必要がなく、コンパクトにできるという効果を奏する。
【0043】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインク収容装置において、前記ケース本体または蓋体には、前記廃棄インク導入室に廃棄インク導入のための中空針を差し込み可能なシール材を設けたものであるから、このシール材の箇所からの廃棄インクの漏出も防止できるのである。
【0044】
請求項5に記載の発明のインクジェット記録装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインク収容装置を備え、前記インク収容装置におけるインク収容袋から印字ヘッドに供給管を介してインクを供給するように構成する一方、廃棄管を介して前記廃棄インク導入室に廃棄インクを戻すように構成されていることを特徴とするものである。
【0045】
従って、前述のように、廃棄インクと共に気泡とが廃棄インク導入室に入った後、空気のみが前記透気性フィルムを介してインクカートリッジの外に排出できて、インクカートリッジの密閉室内の空気圧が大気圧以上に上昇しない。また、インクカートリッジが温度上昇したときにもその内部の空気を外に逃がすことができて空気圧が大気圧以上に上昇しない一方、廃棄インクは廃棄インク導入室に溜めることができ、インクカートリッジの外に漏出することはなく、インク漏れによる汚れを防止できる。そしてそのための構成として、従来のように、インク吸収体を必要としないから、製造コストが低減できると共に、インクカートリッジの体積、重量も小さくできる結果、インクジェット記録装置自体もコンパクトで且つ軽量にできるという効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態によるインクジェット記録装置の要部平面図である。
【図2】 インクカートリッジの蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図3】 インク収容袋の第1実施形態を示し、(a)は製造工程の第1段階を示す斜視図、(b)は第2段階(インク取り出し口体を接合した後2つに折り畳みにした状態)の斜視図、(c)はインク取り出し口体を下にしてインク充填する状態の斜視図、(d)は完成状態のインク収容袋の斜視図である。
【図4】 多層状のシート材の断面図である。
【図5】 インクカートリッジにおける廃棄インク導入室の一部切欠き断面図である。
【図6】 インクカートリッジにおけるインク収容袋の収容室の一部切欠き断面図である。
【図7】 インクカートリッジに対するインク収容袋の開口部の取付け箇所の要部拡大断面図である。
【図8】 インクカートリッジにおける透気性フィルムからラビリンス溝までの断面図である。
【図9】 第2実施形態における開口孔及びラビリンス溝を覆う非透気性フィルムの貼着位置を示す蓋体の平面図である。
【符号の説明】
9 インクカートリッジ
20 ケース本体
20a 収容室
20b 廃棄インク導入室
20c 仕切り壁
21 蓋体
23 インク取り出し口体
24 シールキャップ
25 装着孔
26 孔
28 シール材
28、29 中空針
32 開口孔としての段付き孔
33 透気性フィルム
34 ラビリンス溝
35 非透気性フィルム
36 通気孔
37 インクトラップ
40 インク収容袋
Claims (5)
- インクジェット記録装置における印字ヘッドに供給管を介してインクを供給するためのインク収容袋の収容室と、印字に使用しない廃棄インクを収容するための廃棄インク導入室とを備えた、密閉箱状のインクカートリッジからなるインク収容装置において、
前記インクカートリッジにおけるケース本体または蓋体には、前記廃棄インク導入室を外気に連通する段付きの開口孔と、一端が前記開口孔に繋がると共に、前記ケース本体または蓋体の外面側に開放されるラビリンス溝とが形成され、
前記ラビリンス溝は、その底部が前記開口孔の段よりも外面側に位置し、且つ前記開口孔よりも断面積が小さいように形成され、
前記開口孔の段に貼着され、前記開口孔を密閉する透気性フィルムと、
前記ケース本体または蓋体の外面に貼着され、前記ラビリンス溝及び前記透気性フィルムよりも外側の空間を一体的に覆う非透気性フィルムとを備え、
前記ラビリンス溝の、前記透気性フィルムから遠い部位を外気に開放したことを特徴とするインク収容装置。 - 前記ケース本体または蓋体には、前記ラビリンス溝の中途部に、前記ラビリンス溝の断面積よりも断面積が大きいインクトラップが凹み形成されて、前記インクトラップも非透気性フィルムで覆われていることを特徴とする請求項1に記載のインク収容装置。
- 前記ケース本体または蓋体には、前記収容室と廃棄インク導入室とを区画する仕切り壁を設け、該仕切り壁には、両室に連通する通路を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のインク収容装置。
- 前記ケース本体または蓋体には、前記廃棄インク導入室に廃棄インク導入のための中空針を差し込み可能なシール材を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインク収容装置。
- 前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインク収容装置を備え、前記インク収容装置におけるインク収容袋から印字ヘッドに供給管を介してインクを供給するように構成する一方、廃棄管を介して前記廃棄インク導入室に廃棄インクを戻すように構成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
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