JP3882483B2 - 光記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は情報記録に用いる光記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光記録媒体は再生専用型、記録可能型(書換可能型を含む)に大きく分けられ、再生専用型はビデオディスク、オーディオディスク、さらには大容量コンピューター用ディスクメモリーとしてすでに実用化されている。
再生専用型では、通常、情報データは基板上に形成された凹凸ピット列により記録されており、ピットの有無による反射率の変化を検出することで再生が行われる。通常、基板上に反射層等が設けられてなる。
記録可能型の代表的なものには光磁気型、相変化型、有機色素型、孔あけ・変形型がある。
【0003】
光磁気型は記録層の磁化の向きにより記録や消去を行い、磁気光学効果によって再生を行う。通常、基板上に無機保護層、磁性層(記録層)、反射層等が設けられてなる。光磁気記録媒体は大容量かつ低コストの書換え可能な情報記録媒体であり、コンピューターの外部記憶装置に使用される光磁気(MO)ディスク、音楽の録音等に使用されるMD(Mini Disk)等として普及している。
相変化型は相変化前後で反射率又は反射光の位相が変化することを利用するものであり、外部磁界を必要とせず反射光量の違いを検出して再生を行う。通常、基板上に無機保護層、無機記録層、反射層等が設けられてなる。相変化型は光磁気型と比較すると、磁石を必要としない、光学系が単純である等の理由によりドライブ作製が容易で、小型化、低コスト化にも有利である。さらに、レーザー光のパワーを変調するだけで、記録・消去が可能であり、消去と再記録を単一ビームで同時に行う、1ビームオーバーライトも可能であるという利点を有する。代表的な相変化型記録媒体は、CD−RW(CD-Rewritable)、書換え可能DVD等である。
【0004】
有機色素型としては色素又は色素を含むポリマー等からなる記録層が用いられ、記録前後で反射率(屈折率)が変化し、反射光量の違いを検出して再生を行う。通常、基板上に有機色素記録層、反射層等が設けられてなる。代表的な色素型記録媒体であるCD−R(CD-Recordable)は現在広く普及している。
孔あけ・変形型としてはTe等の低融点金属又は染料等の記録層が用いられ、レーザー光照射により局所的に加熱され、孔もしくは凹凸部が形成される。
これら光記録媒体の記録方法には、ポリカーボネート樹脂等の透明基板を用い基板を介して記録層に光を入射する形態(基板面入射方式)と、基板を介さずに記録層に光を入射する形態(膜面入射方式)とがある。後者の方式を用いた記録装置では例えば、浮上ヘッドや接触型ヘッド上に光学系を形成し、記録層側から光を照射し記録再生を行う。
【0005】
膜面入射方式の利点としては、入射光が基板の複屈折による歪みを受けないため良好な信号特性が得られることがまず挙げられる。さらに基板を介した場合に比べてディスク傾きによる光の収差が小さく、傾きに対するマージンが大きくなる。また同様の理由から対物レンズのNA(開口数)を上げられるのでビームスポットが小さくなり高密度化が可能となる。記録膜と対物レンズを数十nmの距離まで近づけることにより、いわゆるエバネッセント光による近接場光記録も可能となる。
この点をより詳細に説明する。高密度の再生を行うためには再生光のスポット径を小さくする必要がある。再生波長が同じであれば、スポット径はNAに反比例するので、高いNAのレンズを用いれば高密度記録が可能となる。しかし基板を介して高NAの光入射を行う場合には、基板にわずかな傾きが存在しても大きな収差が発生してしまうという問題がある。これは空気と基板の屈折率の差に伴うものであり、レンズ開口数(NA)が大きいほど、また基板厚みが厚いほど基板傾きの許容範囲は著しく小さくなる。
【0006】
膜面入射方式では、基板を介さずに薄膜面から直接、或いは数μm〜数100μm厚の透明樹脂層を介して光を入射することで、高NAのレンズが使用できるようになる。この方法では空気と屈折率の異なる従来の基板に相当する層が無いかもしくは極めて薄いので、高NAのレンズを使用しても基板傾きの許容範囲を広くとることができる。
膜面入射にSIL(Solid Immersion Lens)を組み合わせて用いることで、著しく高いNAが得られる。近接場光を用いれば1を越えるNAを得ることもできる。この場合対物レンズと媒体を著しく近接させる必要があるので、記録装置においては通常浮上型ヘッドが用いられる。
浮上型ヘッド上に磁気コイルを搭載し光ビームと磁界を同時に発生させることで、光磁気記録媒体に磁界変調記録を行うことができ、ダイレクトオーバーライトが可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような光記録媒体ではいずれも、情報データは記録トラックに沿って並べられ、記録再生系がこのトラックに沿って移動することで順次記録再生される。記録可能な光ディスクでは、記録再生光が記録トラックを追随できるように通常螺旋状ないし同心円状の凹凸溝が設けられている。
このような凹凸溝は基板に設けられ、記録層、保護層、反射層等がその基板上に形成される。各層の形成にはスパッタリングや真空蒸着等の真空プロセスや、スピンコートによる塗布が用いられる。無機系の層の場合は通常スパッタリングあるいは真空蒸着(電子ビーム蒸着、熱蒸着等)が用いられる。緻密で良好な膜質が得られることからスパッタリングが用いられることが多い。
【0008】
本発明者らの検討によれば、同一の媒体を膜面入射と基板面入射で再生すると、膜面入射は基板面入射に比べ若干ノイズが高いことがわかった。再生信号のうち、特に数μmの大きさに相当する低い周波数でのノイズ上昇が大きい。この理由は以下のように説明される。
基板面入射では再生光が薄膜により反射されるのは、基板と薄膜の界面、もしくはそれに近い位置である。従って基板の表面荒れが小さければ、荒れに伴うノイズの発生は極めて小さくすることができる。一方膜面入射では、再生光は基板上に積層された膜の最表面で反射することになる。
ところが膜の最表面は基板面に比べて大きな荒れを持っている。これはスパッタリング中の一般に数百nmに及ぶ膜成長の間に、膜の欠陥が成長するのが原因であると思われる。膜面入射ではこの膜表面荒れが原因となり、再生時にノイズを発生してしまうという問題があった。また、膜表面荒れにより光が散乱され光反射効率が減少し信号レベルが低下するという問題もあった。
【0009】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、厚い無機薄膜であっても最表面が平坦化され、ノイズが著しく低く信号レベル(キャリアレベル)の高い光記録媒体を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、樹脂からなる基板上に少なくとも無機薄膜を有してなり、該基板とは反対の方向から無機薄膜に光を入射して記録又は再生を行うための光記録媒体の製造方法であって、該無機薄膜が該基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製されることを特徴とする光記録媒体の製造方法に存する。
なお、本発明でいう無機薄膜とは、情報を記録する記録層や、記録層の保護や記録再生特性の向上等を目的とした誘電体層などの無機保護層、金属や合金からなる反射層等を含むものである。これら無機薄膜の全部が、基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタ
リングにより作製されてもよいし、無機薄膜の一層、或いは一層の一部のみがそのように作製されてもよい。
【0011】
本発明の製造方法を用いて作製した光記録媒体は厚い無機薄膜の最表面が平坦化されるため、再生時の信号のノイズが著しく低減される。また、光反射効率も向上するため、特に光磁気記録媒体では信号レベル増加の効果もある。
本発明は、無機薄膜全体の膜厚が厚い場合に交流バイアスを加える効果が大きい。膜厚が厚いほど膜欠陥が成長しやすいためである。
中でも、反射層を設ける場合、反射層の成膜時に交流バイアスを加えることがノイズ低減及び反射率向上の効果が大きく好ましい。光の大部分は反射層の最表面で反射されるので、反射層の膜表面の荒れは他の層と比べても特に大きなノイズを発生し、また膜表面の荒れは光を乱反射するので反射率が低下してしまうためである。
【0012】
また、記録層が無機薄膜である場合に、記録層の成膜時に交流バイアスを加えることがノイズ低減効果が大きく好ましい。記録層の膜表面の荒れは大きなノイズを発生するためである。記録層が厚く反射層を設けない構成においては記録層で反射される度合が大きいため、効果が高い。
記録層が光磁気効果を用いて再生される磁性層である場合には特に好ましい。磁性層の膜表面の荒れは磁気異方性の乱れにつながり、大きなノイズを発生するからである。また、光磁気信号強度は磁性層での反射率Rとカー回転角θkの積R・θkで表せる。すなわち、表面荒れが低減されることで反射率Rが大きくなれば信号強度が強くなるという効果もある。
中でも、記録層が多層膜からなる磁性層を含み、磁性層のうち最も基板から離れた膜が基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製されるのが好ましい。再生信号の大部分が最も基板より離れた最表面の磁性膜より発生するからである。
また、膜表面の荒れを更に平滑にするには、無機薄膜を交流バイアスを加えた状態で製造したのち、Ar等のプラズマ(又は励起ガス粒子)に無機薄膜表面を晒すのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
基板上に無機薄膜をスパッタリング成膜する際、凹状或いは凸状の欠陥が一旦発生すると、凹状の欠陥内部には斜めに飛来した粒子が入りこみ難く、一方凸状の欠陥には飛来した粒子が様々な入射角度から付着する。このため凹状欠陥はますます深く、凸状欠陥はますます高く成長する。従って、最初は微小な欠陥であっても、数百nm程度まで成膜するうちに欠陥が成長して表面が荒れてくる。これが先に述べた膜最表面の荒れの発生過程である。
従来より、薄膜を成膜した後に、Ar等のプラズマ(又は励起ガス粒子)に膜表面を晒しエッチングすることで、表面の荒さが低減されることが知られている。プラズマ(又は励起ガス粒子)の一回の衝突による膜ダメージが充分弱ければ、衝突の影響が全面で平均化されて均一になり、膜表面を平坦にすることができる。
しかし一回の衝突ダメージが弱いということはエッチングレートが低いということであるから、本方法では、欠陥が大きく成長した後の厚い膜において欠陥のみを除去するのは困難である。可能であるとしても非常に長時間のエッチングが必要であり現実的ではない。
逆に、大きな突起を短時間で削るほどの強力なエッチングを行えば、一回の衝突のダメージが大きいのでダメージが平均化されず膜表面をむしろ荒らしてしまう。従って成膜後のプラズマ処理では、厚い薄膜の欠陥を充分に低減することができない。
【0014】
本発明ではスパッタリングによる薄膜の成膜中に、基板に交流バイアスを加える。
バイアスはアースと金属製の基板ホルダーとの間に加えられるのが一般的である。これにより基板付近にスパッタガスのプラズマが発生し、基板上に堆積した膜が再スパッタされる。このとき膜表面の凹状欠陥は、斜めに飛来したスパッタガス粒子が内部に入りこめないのでエッチングされにくい。一方凸状欠陥は、飛来したスパッタガス粒子により様々な入射角度からエッチングされる。
従って凹部のエッチング速度は遅く、凸部のエッチング速度が速くなり、膜は平坦化される。この結果、欠陥は成長前の小さいうちに消失し、最終的に膜最表面の著しい平坦化がなされる。
交流バイアスを用いることにより、スパッタ粒子がより微細になる効果もある。ターゲットからスパッタされた粒子が飛来中に、スパッタガスイオンとの衝突で分解され、より微細な粒子となって基板に到達する。この結果、膜厚のばらつきが小さくなり、大きな膜欠陥が発生し難くなる。
交流バイアスとしての効果を得るには、周波数が10Hz以上であることが好ましい。より好ましくは30Hz以上である。周波数があまりに高いとイオンの動きが追随しないため、100MHz以下であることが好ましい。さらに好ましくは50MHz以下である。
【0015】
また、交流バイアスの電圧の最大値は、50V以上が好ましく、300V以下が好ましい。投入パワーは基板ホルダーに対し、0.1W/cm2以上とし、1W/cm2以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.15W/cm2以上とし、0.7cm2以下とする。
基板に、交流バイアスではなく負電位の直流バイアスを加えることによっても、スパッタガス粒子の基板エッチングは起こる。ただし直流バイアスの場合、ほとんどのスパッタガス粒子は電界分布に従って基板に垂直な方向から入射する。このため先に述べた凸部を優先的に削り取る効果が小さい。条件によっては表面をかえって荒らしてしまうおそれがある。
交流バイアスであれば、スパッタガスイオンが電界の時間変化によって方向を変える。このためイオン同士の衝突が起こり易く、基板へのスパッタガス粒子の入射はあらゆる方向から行われる。従って、凸部を優先的に削り取る効果が大きい。
【0016】
また、基板が樹脂やガラス等の不導体からなる場合は、直流バイアスをかけると、引き寄せられた正電荷が基板表面にたまるためバイアスの効果がすぐに無くなってしまう。交流バイアスであれば電位が正と負に振れるため、たまった正電荷は電子によって打ち消される。従って交流バイアスを用いることにより、導体のみならず不導体を含むあらゆる基板が使用可能となる。
なお、交流バイアスに負電位の直流バイアスを重畳してもよい。正電荷をもったスパッタガスのイオンが、より多く基板に入射して、エッチング効果を高めるのでより好ましい。
簡単には、電源(及びマッチング回路)と基板ホルダーの間に直列にコンデンサーを挿入することで、負電位の自己バイアスを得ることができる。もちろん、電源側において直流電圧を重畳することもできる。重畳される負電位は20V以上が好ましく、より好ましくは40V以上とする。電圧が低すぎると効果が小さい。また、負電位は200V以下するのが好ましく、より好ましくは150V以下とする。電圧が高すぎると交流バイアスとしての効果が小さくなる。基板が不導体である場合は、正電荷の蓄積を電子によって打ち消すため、交流の最大電圧が重畳される直流電圧より高いことが好ましい。
【0017】
スパッタガスとしては不活性ガスを用いることができ、例えばAr、Xe、Kr、Neを用いる。スパッタ効率とコストの点からArが最も好ましく用いられる。誘電体層の作製等において不活性ガスに酸素、窒素、水素等を混合させて反応性スパッタリングを行ってもよい。
交流バイアスを用いる際のスパッタリングの方法は、高周波スパッタリング及び直流スパッタリングを用いることができる。直流スパッタリングであれば、ターゲットから跳ね返る高エネルギーのスパッタガス粒子が膜をエッチングする効果が加わるのでより好ましい。跳ね返りのエネルギーを大きくするため、スパッタリングを行う際の投入パワーは、5インチターゲットに対して400W以上とすることが好ましい。より好ましくは500W以上である。ただし大きすぎると基板の加熱、ターゲットの割れ等の問題があるので1.5kW以下が好ましい。より好ましくは1.2kW以下である。別の大きさのターゲットを用いる場合、投入パワーは面積に比例して変化させればよい。
また、交流バイアスを加えた状態で無機薄膜を製造したのち、Ar等のプラズマ(又は励起ガス粒子)に無機薄膜表面を晒すことで、膜表面の荒れを更に平滑にすることができる。
このようにして無機薄膜を作製することによって、膜表面が平坦となり、無機薄膜の最表面の平均荒さRaが0.9nm以下の光記録媒体を得ることができる。より好ましくは0.8nm以下である。最大荒さRmaxは10nm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは8nm以下である。なお、ここで言うRa、Rmaxは表面を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したときの値とする。
【0018】
本発明は光磁気記録媒体及び相変化記録媒体の作製に好ましく用いられる。
光磁気記録媒体の構成は通常、基板/無機保護層/記録層/無機保護層、或いは、基板/反射層/無機保護層/記録層/無機保護層、である。相変化記録媒体の構成は通常、基板/反射層/無機保護層/記録層/無機保護層である。各層が複数膜からなる場合もある。また、必要に応じて他の膜をさらに形成する場合もある。
基板としては、凹凸の入ったスタンパーを用いポリカーボネート、PMMA等の樹脂を射出成形したものがコストや生産性の面から好ましい。ガラス、金属等の上に紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等を塗布し、スタンパーを密着させた状態で硬化させる方法もある。あるいはガラスや、アルミニウム合金などの金属をキャスト成形する方法も用いることができる。
【0019】
こういった方法で基板に形成される凹凸は、記録データを表すもの、記録トラックを追随するためのサーボ信号を発生させるためのもの、記録領域のアドレスを示すもの、再生するクロックを生成するためのもの等がある。サーボ信号は、連続溝によって発生させる方法(連続溝方式)と、間隔を開けて形成されたピットから生成させる方法(サンプルサーボ方式)のいずれをも用いることができる。
或いは上記凹凸を付けない基板を用いてもよい。
光磁気記録媒体の記録層としては、光磁気効果を用いて再生できる磁性層であればよいが、例えばTbFe、TbFeCo、TbCo、GdFeCo、DyTbFeCo等の希土類と遷移金属との非晶質磁性膜、MnBi、MnCuBi等の多結晶垂直磁化膜、Pt/Co多層膜等が用いられる。光磁気記録層は単層であってもよいし、オーバーライトや超解像を可能とするためにGdTbFe/TbFeのように2層以上の磁性層を重ねて用いてもよい。超解像技術を用いた媒体の記録層構成についてはあとで詳述する。
【0020】
相変化型記録媒体の記録層としては、結晶状態の違いにより反射率が変化する物質であればよいが、例えばGeSbTeやInSbTe、AgSbTe、AgInSbTe、InGeSbTeなどの化合物が使用できる。
無機保護層の材料は、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性、屈折率等に留意して決定される。一般的には誘電体を用いることができる。酸化Si、酸化Al、酸化Ta、酸化Ti、窒化Si、窒化Al、炭化Siなどの単体あるいはそれらの混合物が好ましく用いられる。特に、窒化Si、酸化Si、酸化Ta、ZnS−SiO2等が好ましい。
反射層は金属または合金からなるが、高反射率のものが好ましく、Al、Ag、Cu、Au、Ptなどの金属あるいはこれらを主体とした合金を用いることができる。高反射率とは例えば、反射率90%以上である。
【0021】
記録再生に浮上ヘッドを用いる場合は、最表面に炭素膜、水素化カーボン膜及び窒素化カーボン膜などの硬質層を設けてもよい。特に水素化カーボン膜が好ましい。水素化カーボン膜は、水素と炭素を含有する膜であればよく、例えばカーボンターゲットを用いて、スパッタガスと水素ガスを含むプラズマ中でスパッタリングする方法により形成することができる。スパッタ雰囲気中の水素の含有量は、通常、2〜20体積%である。
浮上ヘッドを用いる場合はさらにこの上に潤滑剤を塗布するのが好ましい。
潤滑剤としては、エステル結合を有するパーフルオロポリエーテル、ジアルキルアミドカルボン酸、パークロロポリエーテル、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、リン酸エステル等が好ましい。エステル結合は分子内のどこにあってもよいが、末端にエステル結合の官能基を有すると分子中の可動部が長くなり潤滑性が得られ易いためより好ましい。特に主鎖に−CaF2aO−単位(但し、aは1〜4の整数)を有し、末端にエステル結合の官能基を有するパーフルオロポリエーテルが好ましい。
【0022】
例えば、アウジモント社製Fomblin−Z−DEALはCF2CF2OとCF2Oの重合体で直鎖構造を有し、両末端にエステル基−COOR(但し、Rはフッ素で置換されていてもよいアルキル基を表す。)を有する。また、ダイキン工業社製Demnumタイプ(SPやSY)はヘキサフルオロプロピレンオキシドのホモポリマーで、片方の末端にエステル基−COOR(但し、Rはフッ素で置換されていてもよいアルキル基を表す。)を有する。
潤滑剤の分子量は100〜10000の範囲内が好ましい。分子量が低いと一般的に蒸気圧が高く、塗布した後にわずかずつ蒸発し、時間と共に所望の膜厚から遠ざかってしまう。逆に分子量が高い場合は、一般的に粘性が高く、所望の潤滑性が得られない時がある。
【0023】
また、これらを溶解させる溶媒としては例えばフロン系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エーテル系、フッ素系、芳香族系等が用いられる。
潤滑剤の塗布膜厚としては、1〜20nmの範囲であることが好ましい。この範囲外すなわち薄い場合は、所望の潤滑性が得られないが、あまり厚くしても一定以上の潤滑性は得られず余分な潤滑剤がディスクの回転に伴って外周側へ移動し、内外周での膜厚分布が発生しやすくなる。
無機薄膜の上に透明な有機薄膜を保護膜として設けても良い。有機保護層は記録膜を傷、腐食から保護する効果がある。紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂をスピンコートやディップ法で塗布した後に硬化させる方法、樹脂のシートを接着する方法等がある。有機薄膜の膜厚は1μm以上であり、200μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは3μm以上であり、150μm以下である。
浮上ヘッドを用い、ヘッドを記録膜に1μm以下程度に近接させる必要がある場合、保護膜膜厚が非常に薄くなる。このとき有機薄膜では硬度がたりないので、最表面には高硬度の無機保護膜を用いることが好ましい。好ましくは水素化カーボンである。さらにその上に潤滑剤を塗布するのが好ましい。
【0024】
以下では、本発明の好ましい態様について述べる。
本発明においては、無機薄膜全体の膜厚が厚い場合に交流バイアスを加える効果が大きい。膜厚が厚いほど膜欠陥が成長しやすいためである。従って無機薄膜の合計膜厚が100nm以上である媒体の作製に用いて効果が大きい。より好ましくは150nm以上である。ただし、媒体の生産性を考えると合計膜厚は500nm以下であるのが好ましい。
ノイズ低減の意味からは全ての無機薄膜の層に交流バイアスを加えるのが最も好ましいが、これにより記録再生特性等に問題が生じる場合は、その一部の層のみに加えても良い。一部の層にのみ交流バイアスを加える場合には、当該層の膜厚が20nm以上である層に用いて効果が大きい。さらに好ましくは膜厚が25nm以上である。これは交流バイアスを加えた膜厚が薄すぎるとノイズ低減の効果が消失するからである
【0025】
無機薄膜が金属又は合金よりなる反射層を含む場合、該反射層を基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製するのが好ましい。
記録層と基板の間に反射層を設けると、光の大部分が該反射層の最表面で反射されるので、反射層の膜表面の荒れは他の層と比べても特に大きなノイズを発生する。また膜表面の荒れは光を乱反射するので、反射率が低下してしまう。この結果、光を反射させて干渉効果により再生特性を向上させる反射層としての性能が悪化してしまう。
【0026】
従って、少なくとも反射層の成膜時に交流バイアスを加えることが好ましい。また、反射層の膜厚が厚い場合には特に効果が大きい。相変化媒体では、記録層からの熱拡散を補助するため反射層の膜厚を厚くする傾向がある。
反射層膜厚が100nm以上では表面が荒れが著しく、ノイズの増加が大きい。従って、100nm以上の反射層を有する媒体の作製に用いて効果が高い。ただし、膜厚は500nm以下であるのが好ましい。反射層は熱伝導度が高いので、あまりに厚いと記録に必要なレーザーパワーが著しく大きくなってしまう。
さらに、記録層の膜厚が50nm以下と薄く再生光の多くが反射層に到達する構成において、より効果が高い。より好ましくは記録層が40nm以下である。ただし、8nm以上とする。記録層が薄すぎると再生信号が著しく低下してしまう。
【0027】
本発明は特に、AlやAgを主体とした金属又は合金を反射層に用いる場合に効果が高い。AlないしAgを主体とした反射層は結晶粒が大きく表面荒れを生じやすいからである。反射層としては、AlやAgに熱伝導率の制御ないし腐食の抑制のため、Si、Cr、Ta、Ti、Pt、Mo、B等を10原子%以下添加したものが好ましい。
無機薄膜が光磁気効果を用いて再生される磁性層を含む場合、該磁性層の少なくとも一部を基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製するのが好ましい。磁性層が多層膜からなる場合には、該多層膜のうち少なくとも、最も基板から離れた膜を基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製するのがより好ましい。
磁性層の膜表面の荒れは磁気異方性の乱れにつながり、特に大きなノイズを発生するからである。また、光磁気信号強度は磁性層での反射率Rとカー回転角θkの積R・θkで表せる。すなわち、表面荒れが低減されることで反射率Rが大きくなれば信号強度が強くなるという効果もある。
【0028】
磁気誘導超解像(MSR)媒体のように記録層が多層磁性膜よりなる場合には、少なくとも、最も基板から離れた膜を、基板に交流バイアスを加えた状態でスパッタリングにより作製することが好ましい。これは再生信号の大部分が最も基板より離れた最表面の磁性膜より発生するからである。磁性層最表面の荒れが少なければノイズの低減効果は著しい。
ここで、超解像(Magnetically induced super resolution、以下MSR)技術を用いた媒体について詳細に説明する。
本方式は、基本的に、情報を記録した層(記録磁性層)と情報を再生する層(再生磁性層)とからなり、記録は記録層に対して行い、再生時に記録層の磁化方向を再生層に転写して読み出す。通常、記録層の加熱温度によって再生層への転写状態がコントロールされる。本方式によれば、再生光スポット内に温度分布があるのを利用し、この温度分布により再生層の磁区を変形させることで再生信号の波形干渉を軽減できるため、高密度の記録情報を品質よく再生することができる。
【0029】
MSRの形態としては様々のものがある。例えば「交換結合CAD」方式や、特開平7−147029号に示されるように、保磁力の小さい再生層、キュリー温度の低い切断層、さらにキュリー温度が高く保磁力が大きい記録層の互いに交換結合した3層からなる媒体を用いる「反転型MSR」方式、特開平8−221818号に示される、記録層と再生層の間に非磁性の遮断層を設け、静磁結合力だけで記録層の磁化方向を再生層に転写する「静磁結合CAD」方式などである。後2者は静磁結合型MSRと総称される。
【0030】
以下、例として静磁結合型MSRの層構成について説明する。
反転型MSR方式、ならびに静磁結合CAD方式において、再生層は希土類金属磁化優勢の組成が好ましい。反転型MSR方式においては、これは交換結合力と静磁結合力の方向を逆にするための必須条件である。また静磁結合CAD方式においては、低温で面内磁化膜であり高温で磁化の減少により垂直磁化膜に推移する必須条件である。
再生層に用いられる物質としては、GdFeCo、GdCo、GdFe、GdDyFe、GdDyCo、GdDyFeCo、GdTbFe、GdTbCo、GdTbFeCo、DyFeCo、DyCo、TbCo、TbFeCo、TbDyFeCo、TbDyCo等の希土類金属と遷移金属の合金が用いられる。中でも、Gdを含有する合金を用いるのがキュリー温度や保磁力の点から好ましい。特に好ましいのはGdFeCoやGdFeである。キュリー温度としては、250℃以上であることが好ましい。
【0031】
PtCoや、PtとCoの超格子等の磁性体を再生層上に積層させることもできる。これらは短波長でのカー回転角が大きいため、青色レーザーなどを用いた高密度記録媒体に適用できる。
再生層の垂直磁気異方性を大きくするには、磁性層にある程度の膜応力をもたせて逆磁歪効果による異方性を発生させるのが好ましいため、再生層の膜厚が薄い方が磁化が垂直に立ちやすく好ましい。好ましくは100nm以下、さらに好ましくは70nm以下、特に好ましくは60nm以下である。
しかし、薄すぎる場合、漏洩磁束が小さくなり静磁結合力が減少するので好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上である。
【0032】
再生層と記録層の間に交換結合を切断するための切断層を設ける。切断層は反転型MSR方式においてはキュリー温度が記録層及び再生層より低い層とし、キュリー温度を超える高温において交換結合を遮断する。静磁結合CAD方式では全ての温度領域において交換結合を遮断するように主に非磁性の膜を用いる。
反転型MSR方式において切断層は、キュリー温度が再生層や記録層と比べて小さいものを用いる。切断層のキュリー温度は、90〜180℃程度が好ましい。キュリー温度が低すぎると交換結合している領域(再生光スポット内の低温領域)からの信号が小さくなるが、一方、高すぎると高い再生パワー及び高い記録パワーを必要が必要になる。
【0033】
反転型MSR方式の切断層は垂直磁気異方性が高く、再生層の磁化に強い力を発生させるものが好ましい。切断層に用いられる物質としては、TbFe、TbFeCo、DyFeCo、DyFe、TbDyFeCo等の希土類と遷移金属の合金が好ましい。膜厚は2nm以上とし、30nm以下とすることが好ましい。薄いと交換結合の遮断が十分に行われにくくなり、厚いと静磁結合の磁束が届きにくくなる。
静磁結合CADにおいて、切断層は金属、誘電体等の少なくとも再生層に磁化方向が転写される温度で非磁性又は常磁性のものが好ましく用いられる。例えばAl、Ta、Cr、Ti、W、Si、Pt、Cu、Tb、Gd、Dy、ZnS、Si3N4などの窒化Si、AlN、TiN、カーボン、水素化カーボン等である。これらの混合物であってもかわまない。ただし透磁率の高いもの、例えばFe、Ni等は記録層から再生層への磁束透過を妨げ、静磁結合を低下させるため好ましくない。膜厚は2nm以上とし、30nm以下とすることが好ましい。薄すぎると交換結合の遮断が十分に行われにくくなり、厚いと静磁結合の磁束が届きにくくなる。
【0034】
記録層は記録を蓄えている層であるから、再生光による加熱で劣化しない程度に高いキュリー温度を有し、かつ微小磁区を安定に保持可能であることが必要である。
記録層は、再生光による加熱で劣化しない大きさのキュリー温度を有していることが必要である。また、記録層が高い垂直磁気異方性を持つことも、安定に記録磁区を保持するために好ましい。
記録層は単独の膜でも良いが、複数の記録膜することも好ましい形態である。複数の記録膜からなる場合は、各記録膜は再生光による加熱で劣化しない大きさのキュリー温度を有していることが必要であり、また、高い垂直磁気異方性を持つことが安定に記録磁区を保持するために好ましい。
また、各記録膜は互いに交換結合しているのが好ましい。保磁力の低い膜(例えば、GdFeCo)と保磁力の高い膜(例えば、TbFeCo)との組み合わせである場合、高保磁力膜に記録すれば交換結合力により低保磁力膜に転写される。
【0035】
記録膜の積層のしかたとしては、再生層に近い順に第1記録膜、第2記録膜・・・とした場合、第1記録膜に静磁結合に使用したい磁化方向を持つ層を配することが好ましい。
再生層との距離が最も近い層が最も効率的に静磁結合力を及ぼすからである。第1記録膜として磁化の大きな層を設け、第2記録膜として第1記録膜より磁化は小さいが保磁力が大きい層を設けることで、強い静磁結合力を保ちつつ微小磁区を安定に記録できる。
反転型MSRであれば、希土類金属磁化優勢である再生層に対しては、反対の遷移金属優勢磁化の磁化を結合させたいため、第1記録膜が室温で遷移金属磁化優勢であることが好ましい。
静磁結合CADでは、記録層が希土類金属磁化優勢(REリッチ)でも遷移金属磁化優勢(TMリッチ)でもよいが、希土類金属磁化優勢の場合は、高温で再生すると磁化が低下してしまうという問題があるため、記録層は、室温で遷移金属磁化優勢であることが好ましい。
なお、記録層が複数の記録膜よりなる場合、記録層の磁化方向とは、記録層が全体として再生層に及ぼす静磁結合力の方向から導かれる磁化方向を示すこととする。
【0036】
例えば、REリッチの再生層に対して磁化方向を転写した際、再生層と記録層の副格子磁化が揃っている場合は記録層はREリッチ、逆になった場合はTMリッチであると判断できる。
記録層中の記録膜の数は3層以上でも良いが、生産上の簡便さから2層以下であることが好ましい。
記録層を形成する物質としては、少なくとも一つの記録膜が高い保磁力を持ち、記録を安定に蓄え得ることが好ましい。この高保磁力膜としてはTbFeCo、TbCo、DyFeCo、TbDyFeCo、GdTbFe、GdTbFeCo等が好ましく用いられる。
中でもTbFeCoが垂直磁気異方性が高く、保磁力が大きいので特に好ましい。保磁力は5kOe以上であることが好ましい。高保磁力膜以外の膜は、高保磁力膜と交換結合していれば、単独で保磁力が小さいものでもかまわない。例えばGdFe、GdFeCo、GdCoである。
【0037】
記録層が薄いと安定して制御層に磁区方向を転写しにくくなるため、記録層の膜厚は20nm以上が好ましく、さらに好ましくは25nm以上である。一方、記録層が厚いと感度及び生産性が悪くなりやすいため、記録層の膜厚は100nm以下が好ましく、さらに好ましくは70nm以下である。
記録層が複数の記録膜からなる場合は、各々の記録膜の膜厚を上記範囲とするのが好ましい。
記録層のキュリー温度が低いと、再生のパワーマージンが無くなるか狭くなるので、200℃以上であることが好ましい。さらに好ましくは250℃以上である。ただし、高過ぎれば記録に要するレーザーパワーが非常に大きくなってしまうので350℃以下であることが好ましい。
【0038】
記録層が複数の記録膜からなる場合は、最も低いキュリー温度の記録膜のキュリー温度を上記範囲とする。単に「記録層のキュリー温度」と呼ぶときは、この最も低いキュリー温度を指す。
記録層を、高キュリー温度の低保磁力膜を第1記録膜とし、それよりも低キュリー温度の高保磁力膜を第2記録膜とする組み合わせとするときは、再生時に、第2記録膜のキュリー温度付近まで温度が上がっても第1記録膜の磁化が低下せずに強い静磁結合を得ることができるので特に好ましい形態である。この場合、具体的には、第1記録膜としてGdFeCo、第2記録膜としてTbFeCoが好ましく用いられる。
記録層を単層とする場合は、同様の理由でTbFeCoを用いることが好ましい。
各々の記録膜の磁化があまり大きすぎる場合、垂直磁気異方性の低下によって再生信号特性が低下する。従って、記録層に極端に補償組成から離れた組成を用いることは好ましくない。
【0039】
このため、記録層中の希土類金属を18原子%以上とすることが好ましく、より好ましくは19原子%以上、特に好ましくは20原子%以上とする。あるいは記録層中の希土類金属を32%原子以下とすることが好ましく、より好ましくは31原子%以下、特に好ましくは30原子%以下とする。なお、本明細書中では組成に全て原子%を用いる。
記録層における高保磁力の記録膜としてTbFeCoを用いる場合、FeCo中のCoの比率は10%以上40%以下であることが、適切なキュリー温度を得る上で好ましい。
記録層の磁化が大きすぎると、漏洩磁界による磁化反転が起きやすくなるため、記録層の磁化は室温で250emu/cc以下であることが好ましい。さらに好ましくは200emu/cc以下である。
室温での記録層の磁化が小さすぎると高温においても静磁結合力が小さくなるので,50emu/cc以上であることが好ましい。さらに好ましくは100emu/cc以上である。
【0040】
静磁結合力をより確実に発生させるため、記録磁性層の再生磁性層とは反対の側に透磁率が記録磁性層よりも大きい層、例えばFe、Ni、Co、FeNi、AlSiFe等を直接あるいは非磁性層を介して10〜50nm程度設けても良い。こういった層の効果により記録磁性層の漏洩磁束がより効率的に発生し再生磁性層と結合する。記録磁性層と直接接すれば記録磁性層の垂直磁気異方性が低下するので非磁性層を介することが好ましい。
【0041】
【実施例】
以下に実施例をもって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1:光磁気記録媒体)
基板厚1.2mm、溝部の間隔が1.4μm、溝部と溝間部の平坦部が各々0.6μmであり、溝幅0.67μm、溝深さ60nmの断面が台形である溝を有するランド&グルーブ記録用の直径130mmのポリカーボネート基板を準備した。
この基板をスパッタリング装置に導入し、3x10-7Torr以下の真空度まで排気した。スパッタリングに用いたターゲットは全て直径5インチである。スパッタリングガスとしてArを80ccm、O2を25ccm流し、圧力を3.5mTorrとして、500WのTaターゲットの直流反応性スパッタリングにより膜厚70nmの酸化Taよりなる第1誘電体層を作製した。
【0042】
次にArを80ccm圧力を3mTorrとして800WのTbFeCo合金の直流スパッタリングにより膜厚100nmのTb21(Fe80Co20)79よりなる記録層を作製した。
続いてArを80ccm、N2を20ccm流して圧力を3.2mTorrとして、500WのSiターゲットの直流反応性スパッタリングにより膜厚70nmの窒化Siよりなる第2誘電体層を成膜した(比較例1)。
次に、表−1に示すごとく、全部のあるいは各々層の成膜時に周波数13.56MHz、振幅160V、自己バイアス70V、パワー200Wの交流バイアスを、基板が装着された直径300mmのステンレス製基板ホルダーに加えて成膜した(実施例1〜4)。
【0043】
以上のように作製した光磁気ディスクの無機薄膜の最表面の平均荒さ(Ra)をAFMで測定した結果を表−1に示す。
これら光磁気ディスクを、波長680nm、NA=0.55の光ヘッドを搭載した光ディスク評価機で線速8m/sで回転させて、膜面入射により評価を行った。
最初に磁界300Oe、消去パワー7mWで消去し、溝の形成されていない鏡面部でノイズを測定した。次に、溝部で同様に消去を行った後、磁界300Oe、記録パワー8mW、記録周波数2MHz(マーク長2μmのマーク記録に相当する)、発光duty35%で記録を行い、そののち再生した。再生パワーは2.5mWであった。
再生信号の、鏡面部でのノイズ及び溝部でのCNRを表−1に示す。全ての層で交流バイアスの効果が認められたが、記録層成膜時に交流バイアスを加えることにより最も大きくノイズが低下した。また、記録層成膜時にバイアスを加えた実施例1及び実施例3においてはキャリアレベルも約1dB増加した。
また、比較例1と実施例1の、鏡面部における0〜10MHzのノイズスペクトルの違いを図1に示す。なお、分解帯域幅(Resolution Band Width)は30kHz、ビデオ帯域幅(Video Band Width)は10kHzである。
【0044】
【表1】
【0045】
(実施例5〜7、比較例2〜4:反射層を設けた光磁気記録媒体)
実施例1と同様の基板及び成膜条件を用い、スパッタリングガスとしてArを80ccm流し、圧力を3.0mTorrとしてのAl98Ta2よりなる反射層を、表−2に示すごとく、それぞれ膜厚80、130、180nm作製した。
次にArを80ccm、N2を20ccm流して圧力を3.2mTorrとして、反応性スパッタリングにより膜厚30nmの窒化Siよりなる第1誘電体層を成膜した。続いてArを80ccm圧力を3mTorrとして膜厚30nmのTb21(Fe80Co20)79よりなる記録層を作製した。
続いてArを80ccm、N2を20ccm流して圧力を3.2mTorrとして、反応性スパッタリングにより膜厚80nmの窒化Siよりなる第2保護層を成膜した(比較例2〜4)。
【0046】
次に反射層の成膜時に周波数13.56MHz、振幅160V、自己バイアス70V、パワー200Wの交流バイアスを、基板が装着された直径300mmのステンレス製基板ホルダーに加えて成膜した。(実施例5〜7)
以上のように作製した光磁気ディスクの無機薄膜の最表面の平均荒さ(Ra)をAFMで測定した結果を表−2に示す。
これら光磁気ディスクを、同様の条件で評価した。結果を表−2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例8、比較例5:相変化記録媒体)
実施例1と同様の基板及び成膜条件を用い、スパッタリングガスとしてArを80ccm流し、圧力を3.0mTorrとして膜厚150nmのAl98Ta2よりなる反射層を作製した。
次にArを80ccm流して圧力を3mTorrとして高周波スパッタリングにより膜厚30nmの(ZnS)80(SiO2)20よりなる第1誘電体層を成膜した。続いてArを80ccm、圧力を3mTorrとして膜厚25nmのGeSbTeよりなる記録層を作製した。続いてArを80ccm流して圧力を3mTorrとして、高周波スパッタリングにより膜厚80nmの(ZnS)80(SiO2)20よりなる第2保護層を成膜した(比較例5)。
【0049】
次に、反射層の成膜時に周波数13.56MHz、振幅160V、自己バイアス70V、パワー200Wの交流バイアスを、基板が装着された直径300mmのステンレス製基板ホルダーに加えて成膜した。それ以外は比較例5と同様に成膜した。(実施例8)。
以上のように作製した相変化ディスクの無機薄膜の最表面の平均荒さ(Ra)をAFMで測定したところ、実施例8が0.63nmであり、比較例5が0.91nmであった。
これら相変化ディスクを、波長680nm、NA=0.55の光ヘッドを搭載した光ディスク評価機で線速8m/sで回転させて、膜面入射により評価を行った。
消去パワー7mWで消去し、溝の形成されていない鏡面部でノイズを測定した。次に、溝部で同様に消去を行った後、記録パワー14mW、記録周波数4MHz(マーク長1μmのマーク記録に相当する)、発光duty35%で記録を行い、再生パワー2.5mWで再生した。
鏡面部でのノイズは比較例5が−73.2dBmであり、実施例8が−77.8dBmであった。CNRは比較例5が51.2dBであり、実施例8が54.6dBであった。
【0050】
(実施例9〜11、比較例6:多層光磁気記録媒体)
実施例1と同様の基板及び成膜条件を用い、スパッタリングガスとしてArを80ccm、O2を25ccm流し、圧力を3.5mTorrとして、500WのTaターゲットの直流反応性スパッタリングにより膜厚70nmの酸化Taよりなる第1誘電体層を作製した。
次に、Arを80ccm圧力を3mTorr、パワー800WとしてTbFeCo合金の直流スパッタリングにより膜厚60nmのTb22(Fe80Co20)78よりなる記録層を、TbFeCo合金の直流スパッタリングにより膜厚10nmのTb21(Fe92Co8)79よりなる切断層を、GdとFeCoの直流スパッタリングにより膜厚25nmのGd35(Fe80Co20)65よりなる再生層をそれぞれ作製した。
【0051】
続いてArを80ccm、N2を20ccm流して圧力を3.2mTorrとして、500WのSiターゲットの直流反応性スパッタリングにより膜厚70nmの窒化Siよりなる第2誘電体層を成膜した(比較例6)。このようにして反転型の磁気超解像媒体を作製した。
次に、表−3に示すとおり、全部のあるいは各々層の成膜時に周波数13.56MHz、振幅160V、自己バイアス70V、パワー200Wの交流バイアスを、基板が装着された直径300mmのステンレス製基板ホルダーに加えて成膜した(実施例9〜11)。
以上のように作製した光磁気ディスクの無機薄膜の最表面の平均荒さ(Ra)をAFMで測定した結果を表−3に示す。
これら光磁気ディスクを、同様の条件で評価した。結果を表−3に示す。
全ての層で交流バイアスの効果が認められたが、磁性層の最上層である再生層成膜時に交流バイアスを加えることにより、最も大きくノイズが低下したことが分かる。
【0052】
【表3】
【0053】
(実施例12:プラズマ曝露)
実施例6と同様に反射層を成膜したのち、Arを80ccm流し、圧力を3.0mTorrとして、基板に成膜時と同様の交流電圧を加えて放電することで、反射層表面をプラズマに10分間さらした。
このように作製した光磁気ディスクの無機薄膜の最表面の平均粗さ(Ra)をAFMで測定した結果を表−2に示す。
これら光磁気ディスクを、同様の条件で評価した。結果を表−2に示す。実施例6よりも更にRaが改善され、ノイズが低下し、溝部CNRが高くなった。
(実施例13、比較例7:Ag反射層を設けた光磁気記録媒体)
反射層としてAgよりなる反射層を用いた以外は比較例2と同様にして、光磁気ディスクを作製した(比較例7)。
次に反射層の成膜時に周波数13.56MHz、振幅160V、自己バイアス70V、パワー200Wの交流バイアスを、基板が装着された直径300mmのステンレス製基板ホルダーに加えて成膜した(実施例13)。
このように作製した光磁気ディスクの無機薄膜の最表面の平均粗さ(Ra)をAFMで測定した結果を表−2に示す。
これら光磁気ディスクを、同様の条件で評価した。結果を表−2に示す。実施例13は比較例7よりもRaが改善され、ノイズが低下し、溝部CNRが高くなった。Ag反射層はもともと膜表面の荒れが大きいので、本発明の製造法による改善効果が大きい。
【0054】
【発明の効果】
本発明の製造方法を用いて作製した光記録媒体は厚い無機薄膜の最表面が平坦化されるため、本光記録媒体を記録再生装置で再生する際に、再生信号のノイズが著しく低減される。また、光反射効率も向上するため、特に光磁気記録媒体では信号レベル増加の効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 成膜時の交流バイアス有無によるノイズスペクトルの違いを示す図。
Claims (5)
- 樹脂からなる基板上に少なくとも無機薄膜を有してなり、該基板とは反対の方向から無機薄膜に光を入射して記録又は再生を行うための光記録媒体の製造方法であって、該無機薄膜が該基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製されることを特徴とする光記録媒体の製造方法。
- 上記無機薄膜が金属又は合金よりなる反射層を含み、該反射層が基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製される請求項1に記載の光記録媒体の製造方法。
- 上記無機薄膜が光を用いて記録される記録層を含み、該記録層が基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製される請求項1又は2に記載の光記録媒体の製造方法。
- 上記記録層が光磁気効果を用いて再生される磁性層であり、該磁性層が基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製される請求項3に記載の光記録媒体の製造方法。
- 上記記録層が多層膜からなる磁性層を含み、該磁性層のうち最も基板から離れた膜が基板に交流バイアスを加えた状態でのスパッタリングにより作製される請求項3又は4に記載の光記録媒体の製造方法。
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