JP3881108B2 - 光輝化製品の製造方法及びスパッタリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光輝化製品の製造方法及びスパッタリング装置に係り、詳しくは、基材の複数の面に形成された金属薄膜層が、金属光沢を備えてなる光輝化製品の製造方法、及び金属薄膜層を形成する際に用いられるスパッタリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図10に示すように、例えば、光輝化製品101は、ポリウレタンよりなる基材102と、その基材102上に塗布形成されたベースコート層103と、そのベースコート層103上に形成された金属薄膜層104と、さらにその上に塗布形成されたトップコート層105とからなっている。なお、前記ベースコート層103は、金属薄膜層104を形成する際に、主として被薄膜形成表面を鏡面状に形成するために設けられるものであって、トップコート層105は、金属薄膜層104等を保護するために設けられるものである。
【0003】
そして、上記のように構成されてなる光輝化製品101を製造するには、まず、基材102上に塗料を塗布してベースコート層103を形成する。続いて、後述するスパッタリング装置を用いてベースコート層103上に金属薄膜層104を形成した後、金属薄膜層104上に塗料を塗布してトップコート層105を形成する。このようにして、上述した光輝化製品101が得られる。
【0004】
ここで、前記金属薄膜層104を形成する際に用いられる従来のスパッタリング装置においては、図11に示すように、真空槽(図示略)の上部には、ガス導入管208が配設されており、そのガス導入管208のガス導入口209から真空槽内へプロセスガス(例えばアルゴンガス)が導入される。
【0005】
そして、スパッタリング装置の電極間に電圧を印加すると、グロー放電が発生し、真空槽内へ導入されたプロセスガスがプラズマ状態となる。このとき、プラズマ中の正イオン(例えばAr+ )が金属材料からなるターゲット203表面に衝突して、ターゲット203表面からターゲット原子がはじき飛ばされ、そのターゲット原子がベースコート層103上に付着する。このようにしてスパッタリングされた結果、ベースコート層103上には前記金属薄膜層104が形成されることとなる。
【0006】
また、真空槽内のプロセスガス等は、真空槽の底部に配設された排気管からポンプで排気される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図11に示すように、図中に二点鎖線で示したターゲット203に対して近接部102a及び離隔部102bを有して複数の面を備えてなる基材102が配置され、ガス導入口209からプロセスガスが導入された場合、図中に散点模様で模式的に示したプロセスガスの濃度分布は、基材102の形状等に関係なく形成される。
【0008】
しかしながら、上述したようなプロセスガスの濃度分布の状態では、図12(a),(b)に示すように、ベースコート層103全体に金属薄膜層104をスパッタリングにより形成したとしても、同金属薄膜層104の厚さは、微視的に見た場合に全体的に略均一となっていない。特に、近接部102a及び離隔部102bに相当する面の金属薄膜層104の厚さは、両者間で極端に差異が生じる。なお、ここで、複数の面とは、複数の平面だけではなく、曲面も含むものとする。すなわち、曲面は、無数の面が連続したものである。
【0009】
より詳しく説明すると、金属薄膜層104において、A,B,D及びE点の厚さはC点の厚さよりも薄くなっており、近接部に102aに相当する部分の厚さは、略均一となり、離隔部102bに相当する部分の厚さは、近接部102aに相当する部分の厚さよりも極端に薄くなっている。このように、金属薄膜層104の厚さに極端な差異が生じる部分では、金属薄膜層104の発する金属光沢にも極端なばらつきが生じる。
【0010】
なお従来、上述したスパッタリングに関する技術として、例えば特開平5−202468号公報や、特開平7−197249号公報に記載されたものが知られている。これらの技術は、半導体ウエハ上に金属薄膜を形成する製造方法及び製造装置に関するものである。
【0011】
前者の技術は、真空槽内にプロセスガスを隅なく分散させるために、複数のガス導入口を設けただけのものである。後者の技術は、単一面しか有しない半導体ウエハ上の金属薄膜の厚さを調整するために、ガス導入口から供給されるガスの混合比を調整したり、バルブの開閉量の大小によりガス供給量を調節するものである。従って、両者の技術を用いても、複数の面を有する基材における金属薄膜の厚さの極端なばらつきは変わらない。
【0012】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の面を有してなる基材上に金属薄膜層の形成された光輝化製品において、金属薄膜層の厚さの均一化を向上させて、その金属光沢のばらつきを抑制することのできる光輝化製品の製造方法及びスパッタリング装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、複数の面を有してなる基材上に、スパッタリング装置を用いて金属薄膜層を形成する光輝化製品の製造方法であって、金属薄膜層を形成させる前記基材上の面を前記スパッタリング装置のターゲットに対向させたときに、該ターゲットに対して斜めに向き合う面あるいは該ターゲットから離隔する面近傍のプロセスガス濃度が、該ターゲットに対して正対する面あるいは該ターゲットに近接する面近傍のプロセスガス濃度よりも濃密となるようにすることをその要旨とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光輝化製品の製造方法において、前記プロセスガスの濃度分布は、前記スパッタリング装置内に開口するプロセスガスのガス導入口の多寡により得られたものであることをその要旨とする。
【0015】
さらに、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の光輝化製品の製造方法において、前記プロセスガスの濃度分布は、前記スパッタリング装置内に開口する複数のガス導入口の開口面積を変えることにより得られたものであることをその要旨とする。
【0016】
併せて、請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光輝化製品の製造方法において、前記基板は前記ターゲットを回転の中心として公転するとともに、前記基板自身は自転することをその要旨とする。
【0017】
加えて、請求項5に記載の発明においては、真空槽と、該真空槽内に配設されるターゲット及びアノードと、前記ターゲットに対向するように基材を所定位置にて支持する支持手段と、前記真空槽内へプロセスガスを導入するガス導入口を有してなるガス導入路とを備えてなるスパッタリング装置であって、金属薄膜層を形成させる前記基材上の面を前記スパッタリング装置のターゲットに対向させたときに、該ターゲットに対して斜めに向き合う面あるいは該ターゲットから離隔する面近傍のプロセスガス濃度が、該ターゲットに対して正対する面あるいは該ターゲットに近接する面近傍のプロセスガス濃度よりも濃密となるように濃度分布を設定する濃度分布設定手段を備えることをその要旨とする。
【0018】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載のスパッタリング装置において、前記濃度分布設定手段は、前記真空槽内に開口するプロセスガスのガス導入口の多寡により得られたものであることをその要旨とする。
【0019】
さらに、請求項7に記載の発明によれば、請求項5に記載のスパッタリング装置において、前記濃度分布設定手段は、前記真空槽内に開口する複数のガス導入口の開口面積を変えることにより得られたものであることをその要旨とする。
【0020】
併せて、請求項8に記載の発明によれば、請求項5〜7のいずれか一項に記載のスパッタリング装置において、前記基板は前記ターゲットを回転の中心として公転するとともに、前記基板自身は自転することをその要旨とする。
【0021】
(作用)
上記請求項1に記載の発明によれば、複数の面を有してなる基材上に、スパッタリング装置を用いて金属薄膜層が形成される。この場合、金属薄膜層を形成させる前記基材上の面を前記スパッタリング装置のターゲットに対向させたときに、該ターゲットに対して斜めに向き合う面あるいは該ターゲットから離隔する面近傍のプロセスガス濃度が、該ターゲットに対して正対する面あるいは該ターゲットに近接する面近傍のプロセスガス濃度よりも濃密となるようにしている。そのため、複数の面を有してなる基材上には、金属薄膜層の厚さが略均一となるように形成されることとなる。従って、金属薄膜層の厚さに極端な差異は生じず、その金属薄膜層の発する金属光沢にもばらつきは生じにくい。
【0022】
また、上記請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明によっても、複数の面を有してなる基材上に形成される金属薄膜層の厚さを略均一とするために、プロセスガスの濃度分布を変化させるようにしているため、請求項1に記載の発明の作用が確実に奏される。
【0023】
さらに、上記請求項5に記載の発明によれば、スパッタリング装置の真空槽内へガス導入路のガス導入口からプロセスガスが導入される。そして、スパッタリング装置の電極間に電圧を印加すると、グロー放電が発生し、真空槽内へ導入されたプロセスガスがプラズマ状態となる。このとき、プラズマ中の正イオンがターゲット表面に衝突して、ターゲット表面からターゲット原子がはじき飛ばされ、そのターゲット原子が基材上に付着する。このようにして、複数の面を有してなる基材上には、金属薄膜層が形成される。
【0024】
ここで、前記スパッタリング装置には、金属薄膜層を形成させる前記基材上の面を前記スパッタリング装置のターゲットに対向させたときに、該ターゲットに対して斜めに向き合う面あるいは該ターゲットから離隔する面近傍のプロセスガス濃度が、該ターゲットに対して正対する面あるいは該ターゲットに近接する面近傍のプロセスガス濃度よりも濃密となるように濃度分布を設定する濃度分布設定手段を備えているため、前記基材の各面上には、金属薄膜層の厚さが略均一となるように形成される。従って、上述した場合と同様に、金属薄膜層の発する金属光沢にもばらつきは生じにくい。
【0025】
併せて、上記請求項6から請求項8のいずれかに記載の発明によっても、濃度分布設定手段により、請求項5に記載の発明の作用が確実に奏される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について、図面に従って説明する。
図1,図2に示すように、光輝化製品としてのラジエータグリル11は、基材12と、その基材12上に塗布形成されたベースコート層13と、そのベースコート層13上に形成された金属薄膜層14と、さらにその上に塗布形成されたトップコート層15とからなっている。
【0027】
基材12は、平坦部12aと、その両側に一体形成された湾曲部12bとから構成されている。また、平坦部12aは図中左右方向に略真っ直ぐ延びるように形成されており、両湾曲部12bは若干湾曲するように形成されている。さらに、基材12は、ゴム成分(例えばエチレン−プロピレン系)及び水酸基(OH基)を有するジエン系ポリマー成分の混入されたポリプロピレン(例えば三菱化学株式会社製 商品名:FG5−1)により、公知の射出成形法により形成されている。なお、基材12表面には付着性成分として水酸基等が存在している。
【0028】
また、ベースコート層13は、ウレタン塗料を主成分としており、110℃で90分間焼付けられることにより構成され、その膜厚が「約25μm」となっている。但し、本実施の形態において、ベースコート層13を形成する塗料は、1分子中に水酸基を3個以上10個以下備えたポリエステルポリオールと、そのポリエステルポリオールの分子数と同じ分子数のイソシアネートとを含有している。従って、ポリエステルポリオールとイソシアネートとが反応して、ウレタン結合を形成したとしても、塗料中には水酸基が残存し、極性が生じることとなる。
【0029】
ここで、ベースコート層13を形成する塗料成分としては、アルキド樹脂又はアクリル樹脂等の硬質塗料成分や、ポリエステル又はポリエーテル等の軟質塗料成分を使用してもよい。なお、これらの硬質塗料成分及び軟質塗料成分を、それぞれ単独で使用してもよいし、それらを併用してもよい。
【0030】
本実施の形態では、前記ベースコート層13は、そのガラス転移点が−10℃であり、比較的柔らかいものとなっている。そして、前記ベースコート層13には、さらにメルカプト基を有するシランカップリング剤(例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等)が1. 5重量%配合されている。なお、メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、特にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランを使用するのが望ましい。
【0031】
さらに、トップコート層15は、ウレタン系の塗料(例えば、藤倉化成株式会社製 商品名:TG−T−2287)を主成分としたものが塗布され、70℃で70分間焼付けられることにより構成され、その膜厚が「約25μm」となっている。併せて、金属薄膜層14は、金属材料のクロム(例えば高純度化学株式会社製 純度99.99%)により、その膜厚が「約400Å」程度に形成されている。
【0032】
本実施の形態において、前記金属薄膜層14は、巨視的には、金属膜として視認されうるものであるが、微視的には、微細な金属粒を敷き詰めたような連続的な(隣りあう金属粒が接触している)組織構造を有している。より詳しく説明すると、金属薄膜層14は、ベースコート層13上に多数の金属粒が敷き詰められることにより構成され、金属粒同士の境界部分は、いわゆる結晶粒界16となっている。
【0033】
次に、スパッタリング装置を図面に従って説明する。
図3,図4に示すように、スパッタリング装置21は、有蓋円筒状の真空槽22と、該真空槽22内の中心部に配設されるターゲット23と、該ターゲット23を囲むようにして配設されたアノード24等とを有している。ターゲット23は、金属材料のクロムから円柱状に形成されており、カソード(図示略)に電気的に接続されている。アノード24は、その下部に形成された環状部24aと、その環状部24a上に所定間隔をおいて形成された4本の棒状部24bとを備えている。なお、図3においては、真空槽22の下部を開放して描いてあるが、実際には閉塞されている。
【0034】
また、真空槽22内には台車25が回転可能に配設されており、その台車25には支持手段としての支持柱26が軸27で回転可能に支持されている。そして、その支持柱26には、ベースコート層13の形成された前記基材12が所定位置にて支持されるようになっており、それらは支持柱26とともに回転される。なお、ベースコート層13上に前記金属薄膜層14を形成する際に、台車25はターゲット23を中心に、支持柱26は自身の軸線を中心に、それぞれ所定速度で回転する。
【0035】
さらに、真空槽22の上部から下部に向かうように、同真空槽22の内壁面に沿った部分には、ガス導入路としてのガス導入管28が配設されており、そのガス導入管28のガス導入口29から真空槽22内へプロセスガス(例えばアルゴンガス)が導入されるようになっている。また、真空槽22内のプロセスガス等は、真空槽22の底部に配設された排気管30からポンプ31で排気されるように設定されている。
【0036】
本実施の形態にあっては、真空槽22内へ導入されるプロセスガスの濃度分布、すなわち図5に散点模様で模式的に示した分布となるように調整すべく、次のような濃度分布設定手段を採用している。
【0037】
図3,図5に示すように、ガス導入管28に設けられたガス導入口29の数を、平坦部12aに対応する部分よりも湾曲部12bに対応する部分を多くしたものである。より詳しく説明すると、濃度分布設定手段は、前記基材12の平坦部12a及び湾曲部12bの上、つまりベースコート層13表面に形成される前記金属薄膜層14の厚さを略均一とするためのものであり、前記真空槽22内へ導入されるプロセスガスの濃度分布を、平坦部12aに対応する部分よりも湾曲部12bに対応する部分を濃密としたものである。
【0038】
さて、公知の射出成形法により形成されたラジエータグリル11の基材12の表面をイソプロピルアルコール等により脱脂洗浄し、風乾させる。次に、ベースコート層用の塗料を塗布し、110℃の高温下で90分間焼付ける。この焼付により、図3〜図5に示すように、基材12上には膜厚「約25μm」のベースコート層13が形成される。
【0039】
続いて、スパッタリング装置21に前記ベースコート層13が形成された基材12をセットし、初期真空度「6.0×10-3Pa」、製膜真空度(Arガス圧)「1.0×10-1Pa」、或いは「5.0×10-2Pa」の条件下で、クロムを用いてスパッタリングを行う。なお、このときの電圧は「550V」、電流は「80A」である。すると、図6(a)に示すように、ベースコート層13上には、上述した結晶粒界16を有する金属薄膜層14が形成される。
【0040】
ここで、スパッタリング装置21を用いて金属薄膜層14を形成する工程について、更に詳述する。
まず、図3,図4に示すように、スパッタリング装置21の真空槽22内を初期真空度となるようにポンプ31で排気し、その後、製膜真空度となるようにガス導入口29から真空槽22内へアルゴンガスを導入する。このとき、図5に示すように、前記真空槽22内へ導入されるプロセスガスの濃度分布、すなわち図中に散点模様で示した部分は、ターゲット23に近接して正対した平坦部12aに対応する部分よりも、ターゲット23から離隔し、ターゲット23に対して斜めに向き合う湾曲部12bに対応した部分が濃密な状態となっている。
【0041】
そして、前記スパッタリング装置21の電極間に電圧を印加すると、グロー放電が発生し、前記真空槽22内へ導入されたアルゴンガスがプラズマ状態となる。このとき、プラズマ中のアルゴンイオン(Ar+ )がターゲット23の表面に衝突して、ターゲット23の表面からクロム原子がはじき飛ばされ、そのクロム原子がベースコート層13上に付着する。
【0042】
この場合、プロセスガスの濃度分布が濃密な部分に対応するターゲット23の表面、すなわち湾曲部12bに対応する部分のターゲット23表面からは多数のクロム原子がはじき飛ばされ、プロセスガスの濃度分布が希薄な部分に対応するターゲット23の表面、すなわち平坦部12aに対応する部分のターゲット23表面からは少数のクロム原子がはじき飛ばされることとなる。従って、ベースコート層13上において、ターゲット23から離隔した位置にある両湾曲部12bに相当する部分でも、クロム原子は従来の場合より付着しやすくなっている。
【0043】
このようにしてスパッタリングされた結果、図6(a),(b)に示すように、金属薄膜層14の厚さは、微視的に見た場合でも、全体的に略均一となっている。より詳しく説明すると、金属薄膜層14において、A,B,D及びE点の湾曲部12bに相当する部分の厚さは、C点の平坦部12aに相当する部分の厚さよりも若干薄くなっているが、両者間の厚さの差異はほとんどない。
【0044】
その後、金属薄膜層14の上からトップコート層用の塗料を塗布し、70℃の高温下で70分間焼付ける。この焼付により、図1,図2に示すように、金属薄膜層14上には膜厚「約25μm」のトップコート層15が形成される。そして、焼付完了後、一日室温で放置することにより、上述したラジエータグリル11が得られる。
【0045】
以上詳述した本実施の形態によれば、下記に示す効果が得られるようになる。(1)本実施の形態では、プロセスガスの濃度分布を調整したことにより、平坦部12a及び湾曲部12bを有してなる基材12上のベースコート層13に形成された金属薄膜層14の厚さは、微視的に見た場合でも略均一となっている。このため、従来の場合と比較して、金属薄膜層14の厚さの均一化を向上させることができ、ひいては金属薄膜層14の発する金属光沢のばらつきを抑制することができるようになる。
【0046】
(2)本実施の形態のベースコート層13においては、そのガラス転移点が−10℃であることと、メルカプト基を有するシランカップリング剤が1. 5重量%配合されていることと、水酸基の残存により極性が生じることとを有している。このため、金属薄膜層14を構成する結晶粒(金属粒)が、ベースコート層13に対し比較的容易に突き刺さり、食い込むこととなる。そのため、ベースコート層13に対する金属薄膜層14の接合力が比較的高いものとなる。
【0047】
(3)本実施の形態では、金属薄膜層14を上述したスパッタリング装置21を用いて製造することとした。このため、ベースコート層13に突き刺さる結晶粒の運動エネルギーが比較的大きくなり、ベースコート層13に対する密着性の向上を図ることができる。
【0048】
ここで、ベースコート層13上に形成された金属薄膜層14共々、それらをスーパーUVテスターを用いて耐候性試験に供し、その後、ゴバン目試験によって評価した。その結果、スーパーUV処理サイクル数40回でも、ベースコート層13及び金属薄膜層14間では層間剥離が生じなかった。
【0049】
(4)本実施の形態では、金属薄膜層14は、耐食性を有する金属材料のクロムにより構成されているため、腐食が起こりにくい。特に、金属薄膜層14は、結晶粒界16を有しているので、隣接しあう結晶粒間の導電性が遮断されやすく、仮に一部で腐食が起こったとしても、当該腐食の伝搬を抑制することができるようになる。
【0050】
尚、前記実施の形態は、上記に限定されるものではなく、次のように変更して具体化することもできる。
・ プロセスガスの濃度分布を設定するようにした濃度分布設定手段は、特に前記実施の形態に限定されるものではない。要は、基材12の平坦部12a及び湾曲部12bの上に形成される金属薄膜層14の厚さを、略均一とすることが可能な濃度分布設定手段であればよい。
【0051】
例えば、図7,図8に示すように、濃度分布設定手段としては、ガス導入管41,51におけるガス導入口42,43,52,53の開口面積を、前記平坦部に対応する部分よりも前記湾曲部に対応する部分を大きくしたものであってもよい。また、図9に示すように、濃度分布設定手段としては、3本のガス導入管61,63,65のガス導入口62,64,66から真空槽22内へガスを導入するようにしてもよい。図7〜図9に示される態様でも、前記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
・ 前記実施の形態では、金属薄膜層14をクロムにより構成する場合に具体化したが、その外にも耐食性を有する金属素材であれば、例えばニッケル、チタン、タンタル、アルミニウム又はそれらの合金等、種々の金属材料によって金属薄膜層を形成するようにしてもよい。
【0053】
・ 前記実施の形態では、プロセスガスとしてアルゴンガスを採用したが、アルゴンガスに限定されるものではなく、例えば、ネオン、キセノン等の不活性ガスを採用してもよい。
【0054】
・ 前記実施の形態では、光輝化製品を自動車用のラジエータグリル11に具体化するようにしたが、その外の製品、例えば自動車用エンブレム、サイドモール等の外装品や、種々の内装品に具体化してもよく、特にラジエータグリル11に限定されるものではない。
【0055】
・ 前記実施の形態のラジエータグリル11において、ベースコート層13及びトップコート層15のうち、少なくとも一方を省略するような構成としても差し支えない。
【0056】
・ 前記実施の形態では、基材12としてポリプロピレンを主成分とする材質を用いたが、例えばポリウレタン等を用いてもよく、基材12の材質は特に限定されるものではない。
【0057】
・ 前記実施の形態では、基材12等の色調は特に指定しなかったが、基材12等を別途着色してもよい。
・ 基材12として、ターゲット23に対して斜めに向かい合う面がなく、単に近接する面と離隔する面とが形成されたもの、例えば階段状をなすものを使用する。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の光輝化製品の製造方法及びスパッタリング装置によれば、複数の面を有してなる基材上に金属薄膜層の形成された光輝化製品において、金属薄膜層の厚さの均一化を向上させて、その金属光沢のばらつきを抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態のラジエータグリルを模式的に示す断面図。
【図2】同実施の形態におけるラジエータグリルの一部を示す拡大断面図。
【図3】同実施の形態のスパッタリング装置を模式的に示す正断面図。
【図4】同実施の形態のスパッタリング装置を模式的に示す平断面図。
【図5】同実施の形態のプロセスガスの濃度分布の状態を示す模式図。
【図6】同実施の形態の金属薄膜層の厚さを説明する断面図及びグラフ。
【図7】別の実施の形態におけるガス導入口の状態を示す断面図。
【図8】別の実施の形態におけるガス導入口の状態を示す断面図。
【図9】別の実施の形態におけるガス導入口の状態を示す断面図。
【図10】従来の光輝化製品の構造を模式的に示す断面図。
【図11】従来技術のプロセスガスの濃度分布の状態を示す模式図。
【図12】従来技術の金属薄膜層の厚さを説明する断面図及びグラフ。
【符号の説明】
11…ラジエータグリル、12…基材、12a…平坦部、12b…湾曲部、14…金属薄膜層、21…スパッタリング装置、22…真空槽、23…ターゲット、24…アノード、26…支持柱、28…ガス導入管、29…ガス導入口、41…ガス導入管、42,42…ガス導入口、51…ガス導入管、52,53…ガス導入口、61,63,65…ガス導入管、62,64,66…ガス導入口。
Claims (8)
- 複数の面を有してなる基材上に、スパッタリング装置を用いて金属薄膜層を形成する光輝化製品の製造方法であって、
金属薄膜層を形成させる前記基材上の面を前記スパッタリング装置のターゲットに対向させたときに、該ターゲットに対して斜めに向き合う面あるいは該ターゲットから離隔する面近傍のプロセスガス濃度が、該ターゲットに対して正対する面あるいは該ターゲットに近接する面近傍のプロセスガス濃度よりも濃密となるようにする
ことを特徴とする光輝化製品の製造方法。 - 前記プロセスガスの濃度分布は、前記スパッタリング装置内に開口するプロセスガスのガス導入口の多寡により得られたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の光輝化製品の製造方法。 - 前記プロセスガスの濃度分布は、前記スパッタリング装置内に開口する複数のガス導入口の開口面積を変えることにより得られたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の光輝化製品の製造方法。 - 前記基板は前記ターゲットを回転の中心として公転するとともに、前記基板自身は自転する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光輝化製品の製造方法。 - 真空槽と、
該真空槽内に配設されるターゲット及びアノードと、
前記ターゲットに対向するように基材を所定位置にて支持する支持手段と、
前記真空槽内へプロセスガスを導入するガス導入口を有してなるガス導入路とを備えてなるスパッタリング装置であって、
金属薄膜層を形成させる前記基材上の面を前記スパッタリング装置のターゲットに対向させたときに、該ターゲットに対して斜めに向き合う面あるいは該ターゲットから離隔する面近傍のプロセスガス濃度が、該ターゲットに対して正対する面あるいは該ターゲットに近接する面近傍のプロセスガス濃度よりも濃密となるように濃度分布を設定する濃度分布設定手段を備える
ことを特徴とするスパッタリング装置。 - 前記濃度分布設定手段は、前記真空槽内に開口するプロセスガスのガス導入口の多寡により得られたものである
ことを特徴とする請求項5に記載のスパッタリング装置。 - 前記濃度分布設定手段は、前記真空槽内に開口する複数のガス導入口の開口面積を変えることにより得られたものである
ことを特徴とする請求項5に記載のスパッタリング装置。 - 前記基板は前記ターゲットを回転の中心として公転するとともに、前記基板自身は自転する
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のスパッタリング装置。
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