JP3880006B2 - 光学物品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レンズやミラー等の光学物品の製造方法に係る。より詳細には、エキシマレーザーを用いた露光装置又は光学系に好適に用いられる光学物品用の光学薄膜とその製造方法に関する。
レンズ、ミラー及び光学フィルタ等の光学物品は、例えば、カメラ、望遠鏡、顕微鏡などの光学装置に用いられている。これらの光学物品は、反射防止や反射増強の為に、その表面に反射防止膜や増反射膜を備えている。
また、このような光学物品が組み込まれた光学装置の一種に露光装置がある。この装置は、半導体集積回路やそれを製造する為のフォトマスク等の製造工程において使用される。この分野の露光装置の代表例としては、ステッパーと呼ばれる露光装置が挙げられる。
従来、このような露光装置の照明光源としては、g線(435.8nm)、h線(404.7nm)及びi線(365nm)を発する超高圧水銀灯、キセノン・水銀アークランプ等が用いられてきた。しかし最近では、単位時間あたりの露光処理能力(スループット)やウエハのような被露光体上での均一な照明特性を実現する為に、遠紫外線(200〜260nm)や高出力でスペクトル幅の狭い光束を発振するレーザー光を用いる試みがなされている。とりわけエキシマレーザーは、極めて狭いスペクトル幅で且つ高出力の光を放出することから、望ましい光源の1つである。
エキシマレーザー用の光学物品としては、特開昭63−113501号公報や特開昭63−113502号公報に記載の反射防止膜を真空蒸着した光学物品が知られている
しかしながら、例えば、可視光の光学系では十分な光学特性が得られていたレンズであっても、エキシマレーザーの光学系に用いようとすると十分使用に耐え得るだけの光学特性が維持し難いことがあった。具体的には、特にレンズやミラーの表面に設けられる光学薄膜の透過特性が、エキシマレーザーの利点を生かすに十分でなく、またその耐久性においても問題があった。
更には、露光装置用の光学物品では非常に高精度の表面性が要求される為、光学薄膜を形成する際の温度条件が厳しくなっており、一般的に好ましいといわれる成膜技術は、このような光学物品を作製する際にそのまま転用できなかった。
以上のように、エキシマレーザーの使用に耐え得る光学物品を製造する為には新規な発想と新規なアプローチにより光学物品の設計がなされねばならない。
本発明は、上述した技術課題に鑑みなされたものであり、エキシマレーザー用途のような厳しい使用条件にも十分耐え得る光学特性を有する光学物品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の別の目的は、不要な光吸収が少なく、大面積に亘り均質な物理的特性を持つ光学薄膜を有する光学物品の製造方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、低温での成膜が可能で、膜はがれのような応力による悪影響のない光学薄膜を有する光学物品の製造方法を提供することにある。
勿論、エキシマレーザーに耐え得るものであれば他の光を用いた光学系においても、良好な特性を示すであろう。
本発明の光学物品の製造方法は、第1の透光性薄層と該第1の透光性薄層より屈折率の高い第2の透光性薄層とが基体の表面に積層された光学物品の製造方法において、
前記基体を100℃以下に保持した状態で、前記第1及び第2の透光性薄層の少なくとも一方を、クリプトン又はキセノンからなる群より選択された少なくとも一つの原子を含むスパッタリングガスを用いたターゲットのスパッタリングにより、前記基体表面に堆積することを特徴とする。
また、前記スパッタリングガスに加えて、反応ガスとして酸化用ガスを用いることを特徴とする。さらに、前記スパッタリングの前に少なくとも前記基体の被成膜面を窒素ガス雰囲気にさらし基体の裏面を100℃以下に保持することが好ましい。
本発明者は、真空蒸着やArガスを用いたスパッタリングによって得られたクリプトン、キセノンを含まない膜よりも、これら2つの原子の少なくとも1つを含む膜が、良好な透過率を長期間維持できることを見いだし、本発明をなし得た。
請求項1に係る発明によれば、プラズマが均一化して、均一な特性をもつ大面積の光学物品が、100℃以下の低温で容易に製造できる光学物品の製造方法が得られる。
請求項2に係る発明によれば、反応ガスとして酸化作用を持つガスを導入するため、非単結晶膜といえどもストイキオメトリックな組成で、より特性の優れた酸化物膜が作製できる光学物品の製造方法が得られる。
請求項1に係る発明によれば、光学物品の表面形状の変化が抑制できる光学物品の製造方法が得られる。また、成膜中の脱ガスが少なくなり、膜はがれや不要な生成物の発生が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、スパッタリングの前に窒素ガス雰囲気に基体晒すことにより、成膜中の脱ガスがおさえられた光学物品の製造方法が得られる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施態様について説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されることはなく、本発明の目的が達成されるものであれば、構成要素の代替物や均等物への置換や採用する材料の変更など種々の変更がなされたものであってもよい。
(光学薄膜が基体の表面に積層された光学物品)
図1は、本発明の一実施態様による種々の光学薄膜を有する光学物品の模式的断面図である。
図1(a)は、透光性の基体1の表面上に反射防止膜2が設けられた透過型の光学物品であり、レンズや光透過窓などとして用いられる。
反射防止膜2は単一の薄層膜でもよいが、図1(b)に示すように互いに屈折率の異なる透光性の薄層が積層された構成としても良い。ここで薄層2Hは高屈折率の薄層、2Lは低屈折率の薄層であり、表面(空気)側に低屈折率の薄層を設けることで、反射防止効果を持たせている。
図1(c)は、互いに屈折率の異なる透光性の薄層が2層ずつ交互に積層(全4層)された構成を示している。
図1(d)は、互いに屈折率の異なる3種類の透光性の薄層と、一つの低屈折率の薄層と、を有する構成である。ここでは高屈折率の薄層2Hと、低屈折率の薄層2Lと、それらの中間の屈折率をもつ薄層2Mと、が採用されている。
図1(e)は、互いに屈折率の異なる透光性の薄層が3層ずつ交互に積層(全6層)された構成である。
図1(f)は、透光性又は非透光性の基体3上に増反射膜4を有する光学物品を示しており、増反射膜4は互いに屈折率の異なる透光性の薄層が積層された構成である。ここでは表面側に高屈折率の薄層4Hを配置することで反射を増強させている。4Lは低屈折率の薄層である。図示は省略するが増反射膜4としては、薄層4Lと薄層4Hとを多層(例えば、10〜100層)に繰り返し積層してたものでもよい。
基体1、3の材料や、各薄層の材料は、使用される光の波長、光学薄膜の構成に応じて適宜選択されるものである。同様のことが、基体1、3の厚みや、各薄層の厚みについてもいえる。各薄層の厚みは、0.1nm〜1μm程度の範囲から選ばれる。
(基体)
本発明における基体1の材料としては、例えば、溶融石英、蛍石などの透光性基体が挙げられる。但し、利用する光に適応させる為に多少の調整材料を含んでいても構わない。具体的には、SiO2を主成分とし、B23、Na2O、K2O、PbO、Al23などを含むものである。ミラーなどの増反射膜用の基体3としては上述した透光の表面に高反射性の金属膜を設けたものや、金属が挙げられる。
(透光性薄層)
本発明における光学薄膜を構成するための透光性薄層の材料としては、反射防止膜2の場合も増反射膜4の場合も、次に示すような同じ材料の群から適宜選択される。その群に含まれる材料としては、例えば、酸化シリコン(1.44)、酸化タンタル(2.17)、酸化アルミニウム(1.72)、酸化ジルコニウム(2.25)、酸化ハフニウム(2.25)、酸化イットリウム(2.10)、酸化スカンジウム(2.11)などの非単結晶性の酸化物、または弗化マグネシウム(1.43)、弗化ネオジウム(1.66)、弗化カルシウム(1.46)、弗化リチウム(1.37)、弗化ナトリウムアルミニウム(1.35)、弗化トリウム(1.59)、弗化ランタン(1.59)などの非単結晶性の弗化物が挙げられる。上記( )内は、KrFエキシマレーザーに対応する波長248nmの光における屈折率の一例である。
(光学薄膜が含有する元素)
本発明における光学薄膜が含有する元素は、本発明者による数多くの実験を繰り返し行った結果、判明したものである。
エキシマレーザー光学系に用いられる光学物品はレーザー光の吸収が多少でもあると、そのハイパワーが故に発熱し、その熱が使用中に蓄熱される。その結果、光学物品の表面性が劣化したり、光学薄膜の透光性が劣化したりすることが分かった。
この対策として、本発明における元素を光学薄膜に含有させたところ、光学薄膜の光吸収がほぼ0に近くなることを見いだした。さらに、多数のレンズを組み合わせた光学系に採用しても、総合的な光吸収ですらほぼ0とすることが可能となった。このような光学物品を用いたため、露光装置の信頼性を顕著に向上させることができた。
本発明に用いられる光学薄膜は、キセノン(Xe),クリプトン(Kr)の群から選択させる少なくとも1つの原子を含む非単結晶薄膜である。光学薄膜が多数の薄層で構成される場合には、その中の少なくとも一層の薄層が上記原子を含めばよい。とりわけ、薄層を酸化物で形成する場合にはその効果が顕著である。上記原子の含有量が5原子%を超えないようにして薄層に含有させると非晶質膜の充填率が向上し耐久性が優れたものとなる。より好ましくは3原子%以下、最適には1原子%以下とする。含有量の下限の適正値は0.5原子ppmである。光学薄膜が多数の薄層で構成される場合には、夫々の膜中の上記原子の含有量を互いに異ならしめると互いの密着性が向上するので良い。また、上記つの元素のうちつ以上を含有する場合には含有量の合計が10原子%を超えないようにすると非晶質膜の充填率が向上し耐久性が優れたものとなる。これらの元素の含有量は、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)、2次イオン質量分析法(SIMS)、又は、全反射蛍光X線回折法により測定できる。
更には、上記3種の元素を薄層に含有させる場合に、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)の含有量を0.1原子%以下に抑えることが良質の膜を得る上でより好ましい。
(光学物品が用いられる光学系において使用される光)
本発明の光学物品が用いられる光学系において使用される光としては、i線等の紫外光や遠紫外光又はレーザー光が挙げられる。このような光を出力するレーザーとしては、例えば、He−Cdレーザー(442nm)、Ar+レーザー(488,515nm)、He−Neレーザー(544,633nm)、半導体レーザー(780nm)などがある。
特に、本発明の光学物品は、i線又はエキシマレーザーの光学系に適しており、とりわけエキシマレーザー光学系に対して最適である。エキシマレーザーとしては、例えば、F2(157nm)、ArF(193nm)、KrCl(222nm)、KrF(248nm)、ClF(284nm)、XeCl(308nm)、I2(342nm)、XeF(351nm,353nm)などがある。その中でも、露光装置用としては、KrFエキシマレーザー、XeClレーザー、又は、ArFエキシマレーザーが好適に用いられる。
更に望ましくは、露光用のこれらエキシマレーザーに加えて、アライメント用のHe−Neレーザーのような比較的長波長の光に対しても透過特性が良好な光学物品が形成できれば、投影光学系にアライメント光を通すことにより精度の高いアライメントを行うTTL(Through The Lens)アライメント方式を採用した露光装置に適用できるので、その用途は更に広がることからより好ましい。
(作製方法及び作製装置)
以下では、キセノン(Xe),クリプトン(Kr)の群から選択させる少なくとも1つの原子を含む光学薄膜を作製する為の作製方法及び作製装置について述べる。
本発明に用いられる光学薄膜の作製方法としては、上記希ガスを用いた化学的気相堆積法(CVD)や物理的気相堆積法(PVD)が挙げられるが、本発明者の知見によれば、光学薄膜を構成する薄層の少なくとも一方を、クリプトン、キセノンからなる群より選択された少なくとも一つの原子を含むスパッタリングガスを用いたスパッタリングにより堆積する。
図2は本発明に用いられる光学薄膜の作製装置の基本構成を示す模式図である。作製装置11は、スパッタリングを行う成膜チャンバ12と、必要に応じて設けられ該チャンバ12に対して被成膜基体1を搬入・搬出しその中に基体1を収容出来る予備室としてのロードロック室13と、排気手段14と、ガス供給手段15と、を具備している。成膜チャンバ12内には、ターゲット12a、基体ホルダ12b、磁石12c、電極12dが配されており、電極12dは高周波電源に接続されている。ロードロック室13と成膜チャンバ12との間にはゲートバルブ13aが配されておりこれら2室の雰囲気を互いに分離独立させている。
排気手段14はターボ分子ポンプ、クライオポンプ、メカニカルブースタポンプ、油拡散ポンプなどの各種ポンプから適当なもの少なくとも一つを選択して、バルブや配管と共に配設される。
ガス供給手段は、クリプトン、キセノンの一つを収容したガスボンベや、バルブ、ガス流量コントローラー、配管などで構成される。勿論必要に応じて酸素などの酸化ガスを供給できるようにしてもよい。
作製手順は次の通りである。ロードロック室13に収容された基体を、ゲートバルブ13aを開けて、チャンバ12内のホルダ12b上に配置する。ロードロック室13内では必要に応じて基体を窒素雰囲気に晒し基体が100℃を超えない範囲で加熱しても良い。
ゲートバルブ13aを閉じて、チャンバ12内を排気したのちスパッタリング用のガスとして、クリプトン又はキセノンなどを供給する。勿論反応性スパッタリングを行うときには更に酸素などの反応ガスを供給する。電極12dにラジオ周波数の電力を供給し上記希ガスのグロー放電プラズマを起こす。こうすると、ターゲット12aの構成原子は希ガスに叩出されて、基体表面に堆積する。このとき表面形状の変化を抑えるために、プラズマにより基体温度が100℃を超えない様にホルダ12bに加熱冷却手段と温度センサを設けて温度をコントロールすることが望ましい。勿論冷却することなく100℃を超えない場合にはこのようなコントローラがなくてもよい。
2種類以上の薄層にて光学薄膜を構成する場合には、ターゲット材料を替えて上記工程を繰り返せばよい。スループットを向上させる為には1つのチャンバ内に複数のターゲットを配置して、プラズマに晒されるターゲットを選択すればよい。また、成膜チャンバを複数用意してそれぞれ独立させて、一つの薄層を成膜する為に専用に設けても良い。
薄層に含有されるクリプトン、キセノンの量を制御する為には、これらのガスの供給量や、基体の温度、成膜時の圧力を制御して含有量が5原子%を超えないように注意する。また、酸化物の薄層を形成する場合には、アルミニウムやタンタルなどの純金属をターゲットとし酸素を反応ガスとする反応性スパッタリングや、酸化物ターゲットによる単純なスパッタリングが挙げられるが、酸化物をターゲットとして、上記希ガスとともに酸化ガスを供給して反応性スパッタリングを行うことが好ましい。
上記希ガスを用いてスパッタリングを行うと、均質なエネルギ分布を持つ大きなプラズマ領域を生成することができ、しかも膜質のエネルギ依存性が向上する。図3はイオン照射エネルギに対する反射率の変動を示すグラフの一例であり、エネルギの広い範囲で優れた透過率(低反射率)を示すことを表している。これが100%アルゴンの場合には非常に限られた範囲でしか良好な透過率を示さないことがわかる。このことは成膜の再現性がよく、成膜時の各パラメータの調整範囲が広くなり成膜が容易に成ることを示す。
本発明のスパッタリングにおいて採用される条件は以下の通りである。
スパッタ中の圧力は、放電が安定的に維持できるものであればよく、具体的には1〜5mTorrである。
RF電力としては、薄層にダメージを与えず吸着不純物が除去できる値を選べば良く、具体的には5W〜50W、同様の理由で時間は1分〜20分が適当である。
スパッタリング用の希ガスはKr,Xe原子単体以外に、これらの混合ガスや、Ar,He,Neとの混合ガスも用いることができる。Kr,Xeの混合ガスの場合は、それらの体積比は問わないが、例えば、XeとKrの体積比を1:1とするとよい。Ar,He,Neと混合する場合には、これらの原子が過剰に薄層中に取り込まれないようにKr,Xeのガスよりも少ない量にしたほうがよい。
印加パワーの周波数は、低くなるとターゲットのセルフバイアスが負に大きくなり、スパッタレートが上がるが、その反面、照射エネルギのばらつきが生じるので、10MHz〜500MHzが適している。
本発明者の別の実験によれば、シリコン(Si)やアルミニウム(Al)の非透光性膜をスパッタリングにより形成する場合、Xeを用いたスパッタリングでは、堆積されたSi膜やAl膜へのXeの含有は認められなかった。これは、Arを用いたスパッタリングではArが膜中に取り込まれ易いことと対照的である。
したがって、本発明のスパッタリング法を用いて、Xe,Kr原子を5原子%を越えない範囲で光学薄膜中に含有させるためには、基体温度を比較的低温とし、プラズマ発生用の電力の周波数を比較的低くし、酸素ガスとの混合雰囲気下で、堆積速度を比較的遅くして行うとよい。具体的な設定値については、後述する。こうすることで、透光性の光学薄膜中に微量のXe,Krを取り込めるようになる。
金属酸化物の形成であっても、これらのガスに酸素を混合することが好ましい。これは夕ーゲットからの金属酸化物に対して結合がちぎれてしまったボンドを酸化することでダメージの入った金属酸化物を修復する効果がある。比率としては希ガスに対して20体積%以下の酸素が好ましい。酸素の量が多すぎると成膜速度が極端に遅くなったり、希ガスイオンによる表面活性の効果が減少し、緻密な膜が形成できなくなるためである。また夕ーゲットが金属であり、膜として金属酸化物を形成する場合は希ガスに対しての酸素の量は金属酸化物ターゲットの場合に比べて多くなる。しかしながらレンズ上で金属を酸化して金属酸化物を形成するよりも、純度の高い金属酸化物をターゲットとし、部分的に弱い部分を酸化して補強する方法の方がより好ましく、ダメージのすくない緻密な膜が形成できる。
以下では、本発明に用いられる光学薄膜の作製装置の別の例について述べる。 この装置はレンズ表面を照射するイオンのエネルギを制御し、堆積原子を供給することの可能なスパッタ装置である。
図6の装置はrf−dc結合型バイアススパッタ装置である。図6において、91、911は真空チヤンバで911はロードロックチャンバである。920はロードロックチャンバと接続されているクリーンなN2が常時流れているレンズストッカーである。912はハロゲンランプであり、ロードロックチャンバ911内で予備加熱が可能である。92はターゲットであり、93はプラズマを効率良く発生させるための磁石、94はレンズ支持部材1002にレンズ抑えにより取り付けられた凸系レンズで、このレンズ支持部材はレンズホルダに取り付けられ、このレンズホルダが回転系を備えている。96は周波数を変えることのできる高周波電源、97はマッチング回路、98はターゲットの直流電位を決定するための直流電源、100はターゲットのローパスフィルターをそれぞれ示す。不図示ではあるがレンズ側に第2の高周波電源を備え更に精度良くレンズに照射するイオンのエネルギ等を制御するとよい。この例ではレンズホルダはSUS316製であるが、電位としてはフローティング電位である。
真空チャンバ91、911、920は、脱ガスの少ない材料で構成されており、例えばSUS316製である。チャンバ内面は表面処理として電界研磨、電界複合研磨を施した、表面の平滑度としてRmax<0.1μmの鏡面加工された表面に高純度酸素による不動態酸化膜が形成されている(T.Ohmi et al Extended Abstracts, 174th Electrochemical Society, Fall Meeting, 396, 579-580, Oct. 1988)。従ってガスが吸着しにくく不純物汚染を極力抑える構造となっている。
ガス供給系はマスフローコントローラーやフィルタも含めてすべてSUS316製のものに電界研磨及び不動態酸化処理を施すなどしてチャンバ内へのプロセスのガス導入時の不純物量を極力抑えるようにしてある。排気系は以下のように構成されている。メインポンプは磁気浮上型のタンデム型ターボ分子ポンプであり、補助ポンプとしてのドライポンプを使用している。この排気系はオイルフリーシステムであり、該システムは不純物汚染が少ないように構成されている。なお2段目のターボ分子ポンプは大流量型のポンプであって、プラズマ発生中のmTorrオーダーの真空度に対しても排気速度は維持される。なおレンズ94の真空チャンバ91への導入は該チャンバに接して設けられたロードロック室を介して行われ該真空チャンバ91への不純物の混入を抑えてある。
これらの結果チャンバに導入される際の不純物量はもっとも多い水分でさえ数ppb以下である。真空チャンバのバックグラウンド真空度は10-8台以下が達成される。またターゲットには数百MHzまで可能な可変型高周渡電源が設置されていることから高密度のプラズマの発生が可能であるほか、セルフバイアスやプラズマポテンシャル等を変更することが可能である。ターゲットにはローパスフィルタを介して直流電位印加の為の直流電源が接続されていてターゲットが導電性の場合はターゲットの電位を直流電源で制御できるようにもしてある。この構成により、
a)成膜速度
b)基体に照射するイオンのエネルギ
c)プラズマ密度
などの成膜条件を制御することが可能である。
図7は本発明に用いられる別のスパッタ装置のチャンバを示す図である。
このチャンバ91においては、3角柱状のターゲットホルダが2つ配されている。このターゲットホルダの構成が図6に示す装置と異なる点であり、その他の構成は図6の装置と同じである。
このターゲット方式では、ホルダ92a,92bを回転させることにより、3種類のターゲットから1つを選択してスパッタすることができる。
図7の例では、酸化タンタル、酸化アルミニウム又は酸化シリコンをターゲットとして用いた場合を描いている。
スパッタ中は、基体の表面に対してターゲットの表面が斜めになるようにホルダの回転角度が調整される。こうすることで、凹レンズ、凸レンズ、凹面ミラー等のあらゆる表面形状と大きさをもつ基体上への均一な膜の形成が容易となる。
図8は、アースに接地された基板表面に照射するイオンのもつエネルギ分布を、ターゲットに投入する高周波電力の周波数に対して示したグラフである。この図は圧力7mTorr,Arイオン及びXeイオンの場合であるが、周波数が高いほどエネルギ分布はシャープになり、低周波数の場合に現れる2つのピークも消滅し、1つのエネルギピークを持つ分布となる。これは高周波になるほどイオンは高周波に振られにくくなり、すなわち安定なプラズマポテンシャルを得るためである。そのため制御性を考えた場合には周波数は高い程好ましいが、高すぎるとその波長が基板と同程度になり面内分布を生じる元になる。
イオン種としては重い原子ほど高周波による振られは小さくなり、さらに安定なプラズマポテンシャルを得るためより好ましく、Kr,Xe,Rnの順で重くなるほどエネルギ分布は小さくなり、膜の特性の面内分布がよいものが得られる。使用する原子により周波数の使用範囲は最適値は異なるが、Kr,Xe,Rnを用いる場合は概ね10〜500MHz程度が好ましい。一方イオン照射による堆積膜表面へのエネルギ供給については同じエネルギを持つイオンならば、重い原子ほど表面近傍にのみ効率良くエネルギを与えることができる。しかも膜中に深く入り込んでダメージを与えることも少なくなる。したがって、緻密な膜が形成され表面平坦性も向上する効果がある。
図9にはArとXeガスのSiターゲットに対するスパッタレートを規格化した値で入射エネルギ依存性を示す。同じエネルギ値でもArはSiターゲット深く入り込みスパッタ現象を行う結果、スパッタレートがXeよりも大きい(グラフの傾きが大きい)ことがわかる。
以下では、本発明の光学物品が用いられたレンズストッカーについて説明する。
一般的に、大気中に放置された基体表面には、数10層の水分子が吸着している(中川、泉、大見「無水HFを用いた固体表面吸着水分量の測定」第19回超ウルトラクリーンテクノロジーシンポジウム、pp41,1993)。よって、おそらくこの水分子はレンズ表面に反射防止膜等の膜を堆積させる際にも、汚染物として膜中に取り込まれる等して、膜質を劣化させる大きな要因となるであろう。一方、レンズ表面、即ちSiO2を主成分とした表面に吸着した水分子の表面温度と吸着分子数の面密度から示された活性化エネルギは0.09eV,第2層目以降は水分子同士の結合になるため活性化エネルギは0.12eVであることが報告されている(M.Nakamura et al Extended Abstracts, 180th Electrochemical Society Meeting, Phoenix,Abstract No.534, pp.798-799, October 1991)。この水分子を除去するために、レンズストッカー内には水分子の少ないクリーンな窒素を常時流している。
時間と共に表面の水分子が除去されていく。レンズ温度を90℃程度に保てばこの除去速度は上がるため効率良い。常温の場合は例えば1週間程レンズストッカー内にレンズを入れクリーン窒素を流したままにして、その後レンズをロードロックチャンバに導入し、真空引きする。上記プロセスを経ることによってレンズ表面の水分子はほぼ除去される。
レンズストッカーにクリーンな窒素を供給するクリーン窒素供給系について図1を用いて説明する。301は液化窒素ガスタンク、302は蒸発器、303は純化装置、304はSUS配管、305、306、310は不動態酸化処理したSUS配管、307は圧力調整器、308はマスフローコントローラ、309は窒素ガス導入用2連3方弁、311はレンズストッカー、313はバルブ、314は排気ポンプ、315、312はSUS配管である。
液化窒素ガスは301より供給され、純化器を通って水分量を0.1ppb以下、0.1μm以上のパーティクル数は検出限界以下となっている。純化器は吸着タイプ及びゲッタータイプを兼ね備えた日本酸素製のPEGASUS200Eを用いた。レンズストッカーには圧力調整器、マスフローコントローラを通してクリーン窒素ガスを導入するが、レンズストッカー内部でガスが循環するように入力部を6つに分けてある。レンズ表面の水分除去としては導入部付近にレンズ表面を設置し、吹き付けるような構成にしてもよいが、特に限定されるものでもない。レンズストッカー内に導入された窒素はバルブ313を通して排気ポンプより排気される。排気ポンプは通常の大気から窒素に置換する際には大きな効力があるが、その後は排気ポンプを用いなくてもよく、押し出し排気等でも構わない。
(露光装置)
以下では、本発明の光学物品が用いられた露光装置について説明する。
露光装置としては、レンズ光学系を用いた縮小投影露光装置、レンズ式等倍投影露光装置が挙げられる。
特に、ウエハー全面を露光するために、ウエハーの1小区画(フィールド)を露光してはウエハーを1ステップ移動させて隣の1フィールドを露光する、ステップ・アンド・リピート方式を採用したステッパーが望ましい。勿論、マイクロスキャン方式の露光装置にも好適に用いられる。
図4に本発明の露光装置の構成概略図を示す。同図において21は照明光源部であり、22は露光機構部であり、21,22は別個独立に構成されている。即ち両者は物理的に分離状態にある。23は照明光源で、例えばエキシマレーザのような高出力の大型光源である。24はミラーであり、25は凹レンズ、26は凸レンズであり、25,26はビームエキスパンダーとしての役割を持っており、レーザのビーム径をおおよそオプティカルインテグレータの大きさに拡げるものである。27はミラーであり、28はレチクル上を均一に照明するためのオプティカルインテグレータである。照明光源部21はレーザ23からオプティカルインテグレータ28までで構成されている。29はミラーであり、30はコンデンサレンズでオプティカルインテグレータ28を発した光束をコリメートする。31は回路パターンが描かれているレチクル、31aはレチクルを吸着保持するレチクルホルダ、32はレチクルのパターンを投影する投影光学系、33は投影レンズ32においてレチクル31のパターンが焼付けられるウエハである。34はXYステージでありウエハ33を吸着保持し、かつステップアンドリピートで焼付けを行う際にXY方向に移動する。35は露光装置の定盤である。
露光機構部22は、照明光学系の一部であるミラー29から定盤35までで構成されている。36は、TTLアライメントに用いられるアライメント手段である。通常露光装置は、この他にオートフォーカス機構、ウエハー搬送機構等々によって構成されこれらも露光機構部22に含まれる。
図5は、本発明の露光装置に用いられる光学物品の一例であり、図4に示す露光装置の投影光学系に用いられるレンズである。このレンズアセンブリはL1〜L11の11枚のレンズをお互いに接着することなく組みあわせて構成されている。そして、本発明の光学薄膜は、図4、図5に示すレンズやミラー或いは不図示ではあるがミラー式露光装置のミラーやレンズの表面に反射防止膜または増反射膜として設けることができる。
(実施例1)
以下では、図6に示したスパッタ装置により、例えば120mmの石英基板にTa25からなる薄膜を形成する方法について具体的に説明する。ターゲットは5インチ×15インチで厚さは6mmのものを用いた。純度は0.9999以上の高純度品である。まず基板表面の極僅かに吸着した汚染物を、エネルギ値の弱いイオン照射を行うことで除去した(表面クリーニング工程とする)。一例として導入ガスとして5mTorrのXeを用いた。
先ずロードロックチャンバにクリーン窒素を導入して大気圧とし、続いてレンズストッカーからロードロックチャンバに支持部材ごと基板を搬送した。ロードロックチャンバとストッカーの間のゲートバルブを閉じた後ロードロックチャンバ内を排気した。到達真空度として3×10-8Torrであった。ここでハロゲンランプ等の加熱機構を設けて80℃〜99℃程度の加熱を行い脱ガスを行うことも可能である。ついでロードロックチャンバとスパッタチャンバ間のゲートバルブを開けてレンズを支持部材ごとスパッタチャンバに搬送し、ホルダに装着した。ホルダにつながる回転機構により基板を回転させながら、スパッタチャンバにXeガスを導入すると、圧力が5mTorrになり、安定化した後に周波数100MHz,RF電力として20Wの高周波を導入してプラズマを発生させ、5分間、エネルギ値の弱いXeイオン照射を行うことでレンズ表面の極僅かに吸着した汚染物を除去した。
この時基板表面はフローティング電位となり、プラズマポテンシャルとの電位差である、およそ3eVのXeイオンがレンズ表面に照射された。この電位差はArガスに対して重いガスを使用することにより、均一化され、照射するイオンエネルギの均一性が増す。照射エネルギが高すぎると表面にダメージが残ってしまい、その後の成膜過程で緻密なTa25膜が形成できなくなるようだ。基板の温度は常温であり、イオン照射で若干の上昇はあるが100℃を越えない範囲でレンズ表面のミクロ構造が変化しない程度に抑える必要性がある。
その後Ta25膜をスパッタ法にて成膜する。1度高周波導入を中断することによって、プラズマを止めた後に、今度はガス流量の体積比Xe/O2=10/1、全圧5mTorrとなるようにXeガス及びO2ガスをスパッタチャンバに導入し、安定化した後に周波数15MHz、RF電力として1kWの高周波を導入してプラズマを発生させ、成膜を行った。成膜速度は0.5nm/sec、水晶振動式膜厚計で膜厚250nmになるまで成膜した。Ta251個に対してXeが照射される割合は9.2個であった。この時の基板表面に照射されるXeイオンのエネルギは8eVであった。この時Ta25膜中に取り込まれるXeは0.1%であることがRBS分析により確認された。
上記条件によって形成したTa25膜と、Xeガスを粒ガスに変えた以外は全て同様に形成したXeを含まない膜について、その膜にパワーを倍にしたi線を500時間照射した後、透過率と反射率を分光測定法により測定し、その膜の光学的吸収を算出して消衰係数で表した。
消衰係数は、Arで4.5、Xeで0.1であった。
なおこの実施例ではi線の反射防止膜を作製することを目的としたため、測定波長は365nmであった。Arを用いたときよりもXeをスパッタガスとして用いると消衰係数が小さく膜として光学的吸収しにくい良質の膜が形成されていることがわかる。
このようにして、得られた物品をi線光学系に配置して、通常の露光装置に用いられる照射量の倍のi線を照射しレンズの透過率の経時変化を測定した。その結果を図11に示す。Xeを用いずにArを用いてスパッタしたときの膜を有するものでは照射時間が所定の時間T1を過ぎると透過率が極端に劣化するのに対して、本実施例ではほとんど透過率の劣化が見られなかった。
また、屈折率の面内分布は、Kr,Xe,Rnを用いずにArガスを用いて得た比較サンプルに比べて10%ほどの良くなっていた。
(実施例2)
本例では、イオン照射のエネルギ量を変えることで、数種類の酸化タンタルからなる光学薄膜を作製した点が実施例1と異なる。他の点は、実施例1と同様とした。
実施例1の図11と同様に、本例の光学薄膜に対しても、透過率の経時変化を測定した。図12は、図11と同様の時間T2経過後の透過率が、初期値に比べて劣化した量を纏めたグラフである。
実施例1にて比較のためにArガスを用いて作製した方法と同様の方法により得たArの比較データに比べて、経時変化の少ない良質の膜ができるイオン照射エネルギ量の範囲が広いことが分かる。これはスパッタリングガスにXeを用いると良質の膜を如何に容易に再現性良く作製できることを意味している。
(実施例3)
本例では、実施例1のXe/O2ガスに代えて、以下に示すガスを用い、数種類の酸化タンタルからなる光学薄膜を作製した点が実施例1と異なる。
本例で用いたガスは、100体積%Krガス、KrとXeの体積比が2:8,1:1,8:2である混合ガス、XeとArの体積比が2:8,1:1,8:2である混合ガス、KrとArの体積比が2:8,1:1,8:2である混合ガス、からなる10種類である。また、イオン照射エネルギ量も変えて、多数の試料を作製した。他の点は、実施例1と同様とした。
試料に対する評価としては、実施例2と同様に透過率の経時変化を測定した。図13は、その結果を示すグラフである。Arの比較データに比べて、経時変化の少ない良質の膜ができるイオン照射エネルギ量の範囲が広いことが分かる。これはKrやXeを用いると良質の膜を如何に容易に再現性良く作製できるかということを意味している。
(実施例4)
本例では、XeとO2の体積比をかえた混合ガスを用いるとともに、基体ホルダに温度コントローラを付けて成膜時の温度を150℃〜20℃の範囲でコントロールし又電力エネルギの周波数を200MHz〜10MHzの範囲でコントロールして、堆積速度を0.1nm/sec〜1nm/secとして数種類の酸化タンタルからなる光学薄膜を作製した点が実施例1と異なる。また、イオン照射エネルギ量も変えて、多数の試料を作製した。他の点は、実施例1と同様とした。
試料に対する評価としては、RBS分析を行い、試料中に含まれるXeの量を測定した。図14は、Xeの量をパラメータとして、透過率の経時変化の度合いを纏めたグラフである。図14の縦軸は、Arガスのみを用いた場合を1.0として規格化して示した。
図14から、Xeの量が0.5原子ppm〜5原子%の範囲の試料が好ましく、Xeの量が0.5原子ppm〜3原子%の範囲の試料がより好ましく、Xeの量が0.5原子ppm〜1原子%の範囲の試料が最適であることが分かる。
(実施例5)
本例では、実施例4で用いたXeとO2との体積比をかえた混合ガスの代わりに、KrとO2との体積比をかえた混合ガスを用いた点が異なる。他の点は、実施例4と同様とした。
実施例4と同様に、試料に対してSIMS分析を行った。Krの量をパラメータとして、屈折率の経時変化の度合いをみてみると、実施例4と同様に、Krの量が5原子%の範囲の試料が好ましく、Krが0.5原子ppmのものと13原子%の試料がより好ましく、1原子%のものが最適であることが分かった。
(実施例6)
本例では、実施例4で用いたXeとO2との体積比をかえた混合ガスの代わりに、XeとKrとO2との体積比をかえた混合ガスを用いた点が異なる。他の点は、実施例4と同様とした。
実施例4と同様に、試料に対してRBS分析を行った。KrとXeの合計の含有量をパラメータとして、透過率の経時変化の度合いをみてみると、合計の量が10原子%を越えない試料が好ましく、合計で5原子%以下の試料が最適であった。
(実施例7)
本例では、レンズ上に形成した反射防止膜が、空気側からレンズ側にかけて順に第1、第3、第5層がSiO2主成分の低屈折率層、第2、第4、第6層がAl23が主成分の高屈折率層である点が、実施例1と異なる。基体としては、石英ガラスを用い、KrFエキシマレーザー用のレンズを作製した。図15は、本例に係る光学薄膜の層構成を示す模式的断面図である。
バイアススパッタでの堆積条件は以下に示すが、表面クリーニング工程までは実施例1と同様である。
その後、Al23ターゲットに対して放電を起こし、レンズ上にXeを含むAl23を堆積させた。この時の成膜条件を以下に示す。
RF周波数: 20MHz
高周波電力: 1.5kW
Xe/O2ガス=10:1,圧力: 5mTorr
成長速度: 0.2nm/sec
次いでターゲットホルダを回転させてSiO2ターゲットに変更してSiO2を堆積させる。この時の成膜条件を以下に示す。
RF周波数: 13.56MHz
高周波電力: 1.5kW
Xe/O2ガス=5:1,圧力: 5mTorr
成長速度: 0.7nm/sec
このような条件で表1に示すような屈折率、光学膜厚になるような248nmのエキシマレーザーの紫外光に対する反射防止膜を形成した。表中の屈折率は248nmの紫外光に対する屈折率である。
図16は、この膜の反射特性を示すグラフである。また、図17は、膜の透過率の時間変化を、上記Xeガスの部分をArに代えて同様に形成した場合を1.0として規格化しして示したグラフである。図17から、明らかにXeガスを用いたときに長寿命となることが分かった。
上記の評価は、本例で作製したレンズを用いて、図5に示す光学系を組んで、通常のエキシマレーザーステッパに用いられる照射光量の倍の光量の光を、1000時間照射した加速耐久試験によって得た。
(実施例8)
本例では、レンズ上に形成した反射防止膜が、空気側からレンズ側にかけて順に第1、第3層がSiO2主成分の低屈折率層、第2、第4、第6層がTa25が主成分の高屈折率層、第5層Al23を含む層である点が、実施例1と異なる。基体としては、石英ガラスからなるレンズを用いた。図18は、本例に係る光学薄膜の層構成を示す模式的断面図である。
バイアススパッタでの堆積条件は以下に示すが、表面クリーニング工程までは実施例1と同様である。
その後Ta25ターゲットに対して放電を起こし、レンズ上にXe,Krを含むTa25を堆積させる。この時の成膜条件を以下に示す。
RF周波数: 100MHz
高周波電力: 2kW
Xe/Kr/O2ガス=5:5:1,圧力: 5mTorr
成長速度: 0.2nm/sec
次いでターゲットホルダを回転させてSiO2ターゲットに変更してSiO2を堆積させる。この時の成膜条件を以下に示す。
RF周波数: 100MHz
高周波電力: 2kW
Xe/Kr/O2ガス=5:5:1,圧力: 5mTorr
成長速度: 0.4nm/sec
Al23成膜のときは同様にターゲットホルダを回転させてAl23ターゲットに変更してXe,Krを含むAl23膜を堆積させる。この時の成膜条件を以下に示す。
RF周波数: 100MHz
高周波電力: 2kW
Xe/Kr/O2ガス=5:5:1,圧力: 5mTorr
成長速度: 0.1nm/sec
このような条件で表2に示すような屈折率、光学膜厚になるような中心波長365nmの紫外光と中心波長550〜650nmの可視光の両方に対する反射防止膜を形成した。表中の屈折率は365nmの光に対する屈折率である。
図19は、この膜の反射特性を示す図である。また、図20は、膜の透過率の時間変化を、上記Xeガス及びKrガスの部分をArに変えたものを1.0として規格化して示したグラフである。図20から、明らかににXe,Kr混合ガスを用いたときに長寿命となることがわかる。
上記の評価は、本例のレンズで図5の光学系を組み、エキシマレーザーにかえて、365nmの紫外線を発生するi線を光源として実施例7と同じ試験によって得た。
(実施例9)
本例では、レンズ上に形成した反射防止膜が、空気側からレンズ側にかけて順に第1、第3層…第(49)層がTa25主成分の高屈折率層、第2、第4、第6層…第50層がSiO2が主成分の低屈折率層とした点が、実施例1と異なる。基体としては、石英ガラスからなるレンズを用いた。
バイアススパッタでの堆積条件は以下に示すが、表面クリーニング工程までは実施例1と同様である。
その後Ta25ターゲットに対して放電を起こし、石英ガラス上にTa25を堆積させる。この時の成膜条件を以下に示す。
RF周波数: 100MHz
高周波電力: 2kW
Xe/Kr/Ar/O2ガス=5:5:1:1,圧力: 5mTorr
成長速度: 0.3nm/sec
次いでターゲットホルダを回転させてSiO2ターゲットに変更してSiO2膜を堆積させる。この時の成膜条件を以下に示す。
RF周波数: 100MHz
高周波電力: 2kW
Xe/Kr/Ar/O2ガス=5:5:1:1,圧力: 5mTorr
成長速度: 0.5nm/Sec
このような条件で中心波長365nmの近紫外光に対する増反射膜を形成した。
図21は、上記Xeガス及びKrガスの部分をArに代えて、その他は同様に形成した膜との反射率の時間変化を図21に示す。明らかにXe,Krガスを用いたときに長寿命となることがわかる。
上記の実験は、本例で作製したレンズを用いて、図4に示す光学系を組んで行った。
(実施例10)
本例では、XeとO2との体積比をかえた混合ガスを用いるとともに、基体ホルダに温度コントローラを付けて成膜時の温度を150℃〜20℃の範囲でコントロールし又電力エネルギの周波数を200MHz〜10MHzの範囲でコントロールして、堆積速度を0.1nm/sec〜1nm/secとして数種類の酸化アルミニウムからなる光学薄膜を作製した。他の点は、実施例4と同様とした。
図22は、Xeの量に対する透過率安定性を示すグラフである。
本発明の光学薄膜を有する光学物品の模式的断面図である。 本発明の光学薄膜を形成するために用いる作製装置の基本構成を示す模式図である。 本発明におけるイオン照射エネルギに対する反射率の変動を示すグラフの一例である。 本発明の露光装置の構成を示す概略図である。 本発明の露光装置に用いられる光学部品の一例を示す模式的断面図である。 実施例1に係るスパッタ装置の概略図である。 本発明の光学薄膜を形成するために用いる、別の作製装置のチャンバを示す模式図である。 アースに接地された基板表面に照射するイオンのもつエネルギ分布を、ターゲットに投入する高周波電力の周波数に対して示したグラフである。 本発明に係るArイオン及びXeイオンがSiターゲットに入射するエネルギと、スパッタ率との関係を示すグラフである。 本発明に係るクリーン窒素供給系を示す概略図である。 実施例1に係る透過率の経時変化を示すグラフである。 実施例2に係る透過率安定性を示すグラフである。 実施例3に係る透過率安定性を示すグラフである。 実施例4に係る透過率安定性を示すグラフである。 実施例7に係る光学薄膜の層構成を示す模式的断面図である。 実施例7に係る光学薄膜の反射特性を示すグラフである。 実施例7に係る光学薄膜の透過率の時間変化を示すグラフである。 実施例8に係る光学薄膜の層構成を示す模式的断面図である。 実施例8に係る光学薄膜の反射特性を示すグラフである。 実施例8に係る光学薄膜の透過率の時間変化を示すグラフである。 実施例9に係る光学薄膜の反射率の時間変化を示すグラフである。 実施例10に係る透過率安定性を示すグラフである。
符号の説明
1、3 基体、
2 反射防止膜、
2H 高屈折率の薄層、
2L 低屈折率の薄層、
2M 高屈折率の薄層2Hと低屈折率の薄層2Lとの中間の屈折率をもつ薄層 4 増反射膜、
4H 高屈折率の薄層、
4L 低屈折率の薄層、
11 作製装置、
12 成膜チャンバ、
12a ターゲット、
12b 基体ホルダ、
12c 磁石、
12d 電極、
13 ロードロック室、
13a ゲートバルブ、
14 排気手段、
15 ガス供給手段、
21 照明光源部、
22 露光機構部、
23 照明光源、
24 ミラー、
25 凹レンズ、
26 凸レンズ、
27 ミラー、
28 オプティカルインテグレータ、
29 ミラー、
30 コンデンサレンズ、
31 回路パターンが描かれているレチクル、
31a レチクルを吸着保持するレチクルホルダ、
32 レチクルのパターンを投影する投影光学系、
33 ウエハ、
34 XYステージ、
35 定盤、
36 TTLアライメントに用いられるアライメント手段、
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11 レンズ、
91 真空チヤンバ、
92 ターゲット、
92a、92b ホルダ、
93 プラズマを効率良く発生させるための磁石、
94 凸系レンズ、
96 周波数を変えることのできる高周波電源、
97 マッチング回路、
98 ターゲットの直流電位を決定するための直流電源、
100 ターゲットのローパスフィルター、
1002 レンズ支持部材、
911 ロードロックチャンバ、
912 ハロゲンランプ、
920 レンズストッカー、
301 液化窒素ガスタンク、
302 蒸発器、
303 純化装置、
304 SUS配管、
305、306、310 不動態酸化処理したSUS配管、
307 圧力調整器、
308 マスフローコントローラ、
309 窒素ガス導入用2連3方弁、
311 レンズストッカー、
312、315 SUS配管、
313 バルブ、
314 排気ポンプ。

Claims (3)

  1. 第1の透光性薄層と該第1の透光性薄層より屈折率の高い第2の透光性薄層とが基体の表面に積層された光学物品の製造方法において、
    前記基体を100℃以下に保持した状態で、前記第1及び第2の透光性薄層の少なくとも一方を、クリプトン又はキセノンからなる群より選択された少なくとも一つの原子を含むスパッタリングガスを用いたターゲットのスパッタリングにより、前記基体表面に堆積することを特徴とする光学物品の製造方法。
  2. 前記スパッタリングガスに加えて、反応ガスとして酸化用ガスを用いることを特徴とする請求項1に記載の光学物品の製造方法。
  3. 前記スパッタリングの前に少なくとも前記基体の被成膜面を窒素ガス雰囲気下で100℃以下に保持することを特徴とする請求項1に記載の光学物品の製造方法。
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