JP3879433B2 - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有する梱包用緩衝材として用いられる発泡粒子および成形体に使われる樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
軽量性、緩衝性、成形加工性を生かしたプラスチック発泡体が包装、梱包材として多量に用いられているが、その素材はポリスチレン(PS)、ポリオレフィンといった石油を原料とする化学製品である。この為使用後の処分が困難で、焼却するにしても燃焼カロリーが高く、焼却炉をいためたり、埋め立てをしても分解しない上に容積が大きいために処分場のスペースを占有してしまうといった大きな社会問題となってきている。
【0003】
又、処分されずに投棄された発泡体が及ぼす、河川、海洋など、自然態系への影響も無視できなくなってきている。そこで、生態系の中で分解し、地球環境への悪影響が少ない樹脂が開発された。
【0004】
生分解性の素材としてグリコール酸やラクチドの開環重合によりポリマーが得られ、かかるポリマーを使用し、実用上十分な生産性を有する生分解性発泡樹脂組成物を見出し、既に発明提案(PCT/JP98/04851)を行った。該発明で得られる発泡樹脂組成物から得られる発泡粒子あるいは成形体は、通常の梱包用緩衝材として十分使用できるものであった。
しかしながら、上記の発明における発泡成形体は、発泡粒子の発泡倍率が低いため、柔軟性、緩衝性等が特に必要な緩衝材においては不十分であり、用途が制限されていた。
【0005】
また、特開平9−3150号には、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリイソシアネートからなるブロックポリエステルの製造方法が開示されているが、このブロックポリエステルは発泡性、成形性が不良であり、発泡体には適さない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、生分解性、発泡性、成形性を維持したまま、柔軟性、緩衝性を改善し、緩衝材として適した発泡体の樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討の結果、ポリ乳酸系樹脂と芳香族脂肪族ポリエステルを含むポリエステル樹脂に対し、ポリイソシアネート化合物を配合したポリエステル樹脂組成物を使用することで上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するポリ乳酸系樹脂は、主成分がポリ乳酸であり、本発明の目的が達成される範囲で、他のグリコール、ジカルボン酸、酸無水物、ヒドロキシカルボン酸等を共重合されていてもよい。
【0009】
本発明に使用するポリ乳酸は、実質的に非晶性のポリ乳酸、即ち、DSC測定による融解熱(2nd scanΔH)が0.1J/g以下のポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸のL体とD体のモル比は、好ましくは95/5〜5/95、更に好ましくは92/8〜8/92である。L体とD体のモル比がこの範囲のものは結晶性が低いため発泡倍率が上がり易く、発泡が均一になるからである。
【0010】
本発明に使用するポリ乳酸は、高分子量で分岐したものが好ましい。ポリ乳酸は、例えば分岐剤としてエポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油等を用いたものが好ましく、これらはイソシアネートにより著しく増粘し発泡性が良好で好ましい。また、数平均分子量(Mn)は50,000以上300,000以下が好ましく、重量平均分子量(Mw)が90,000以上1,200,000以下のものが好ましい。多分散度(Mw/Mn)は、1.5以上が好ましく、更に好ましくは2.0以上である。その理由は、上記範囲のポリ乳酸は、以下に述べる芳香族脂肪族ポリエステル、ポリイソシアネートと反応させて超高粘度樹脂を得たとき、適度な架橋密度となり、発泡に適した架橋構造になるためである。
【0011】
このような高溶融粘度のポリ乳酸を得る手段として、通常の反応釜での高真空下、攪拌効率の良好な状態での溶融重合、二軸混練反応機による溶融重合、溶融重合と固相重合との組み合わせにより高溶融粘度のポリ乳酸を得る事は可能であるが、高粘度であるため反応サイクル低下による生産性の低下、樹脂の熱分解による品質低下に十分注意する事が必要である。
【0012】
本発明に使用する芳香族脂肪族ポリエステルは、脂肪族(環状脂肪族を含む)グリコール、芳香族ジカルボン酸またはその酸無水物(以下、芳香族ジカルボン酸と略称する)、および脂肪族ジカルボン酸またはその酸無水物(以下、脂肪族ジカルボン酸と略称する)からなるポリエステルである。また、必要に応じて、第3成分として、3官能または4官能の多価アルコール、オキシカルボン酸および多価カルボン酸(またはその酸無水物)から選ばれる少なくとも1種の多官能成分を含んでいても良い。
【0013】
本発明で使用するグリコール類としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールならびにそれらの混合物などがあげられる。
【0014】
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸ならびにそれらの混合物などがあげられる。
【0015】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、無水コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ならびにそれらの混合物などがあげられる。
【0016】
芳香族脂肪族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸の、割合は10/90〜90/10(モル比)である。この範囲のものは、生分解性、発泡性、柔軟性、緩衝性が良好で好ましい。また、芳香族脂肪族ポリエステルは、溶液粘度(ηr)が2.0以上であることが、物性上好ましい。
【0017】
ポリ乳酸と芳香族脂肪族ポリエステルの割合は、ポリ乳酸が50重量%以上の場合、特に発泡性が良好であるので好ましい。
【0018】
上述のポリ乳酸と芳香族脂肪族ポリエステルを含むポリエステル樹脂(以下、ポリ乳酸系樹脂と略称)に発泡剤を含浸、発泡させても発泡倍率を高くすることは困難であり、実用に耐え得るものではない。高発泡倍率を得るには、更に高い溶融粘度が必要であり、増粘剤としてポリイソシアネートを添加することが必要である。
【0019】
好ましいポリイソシアネートは、イソシアネート基≧2.0当量/モルのポリイソシアネートである。又、ポリイソシアネートは上記ポリ乳酸系樹脂に対して0.1〜5重量%、更には1〜3重量%を加える事が好ましい。ポリイソシアネートが0.1重量%以上で樹脂組成物の溶融粘度が上昇し易く、また5重量%以下で溶融粘度が適当であり、発泡性が良好である。上記ポリ乳酸系樹脂とポリイソシアネートを溶融状態で混合、反応、更に溶融混練後の固体状態で徐々に水分と反応し、アロハネート結合やユリア結合により架橋が進むことにより、溶融粘度がJIS K 7210(荷重211.8N)に準拠したメルトインデックス値(MI)で5以下の範囲の発泡性の良好な樹脂組成物を得ることが出来る。
【0020】
ポリ乳酸、芳香族脂肪族ポリエステルおよびポリイソシアネートを溶融状態で混合、反応させ超高分子量化させる方法は通常の公知の方法が可能である。例えば、ペレツト化したポリ乳酸、芳香族脂肪族ポリエステルにポリイソシアネートを添加混合し、単軸又は二軸混練機等で溶融混合する方法、予めポリ乳酸、芳香族脂肪族ポリエステルを単軸又は二軸混練機等で溶融した後ポリイソシアネートを添加する方法、単軸又は二軸混練機等で溶融重合によりポリ乳酸を製造又は製造中に、芳香族脂肪族ポリエステル、ポリイソシアネートを添加する方法などが挙げられる。
【0021】
使用されるポリイソシアネートとしては芳香族、脂環族、脂肪族系のポリイソシアネートがある。例えば、芳香族ポリイソシアネートとしてはトリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリジン、キシレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートとしてはイソホロン、水素化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネートがあり、いずれも使用可能であるが汎用性、取り扱い性、耐候性等からトリレン、ジフェニルメタン、特にジフェニルメタンが好ましく使用される。
【0022】
また、均一で微細な発泡セルを形成させるためには発泡核剤を配合することが好ましい。使用する発泡核剤としては、例えば、タルク、シリカ、カオリン、ゼオライト、マイカ、アルミナ等の無機粒子が好適である。この中でもタルクは本発明の樹脂組成物に対して好ましく使用される。
【0023】
また、その他の添加剤についても、目的に応じ、適宜添加することが出来る。例えば熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、可塑剤等がある。但し、難燃剤等は塩素等のハロゲン化物であることが多く、生分解性や焼却処分時の有害物質発生という観点から使用量は最小限に留めておくのがよい。
【0024】
こうして得られた樹脂組成物は、ペレット又はビーズ状粒子とした後、発泡剤及び発泡助剤を含浸させる。ペレット又はビーズの大きさ、形状等は必要に応じて適宜選択することができるが、通常、直径0.5〜2mmの大きさのものが好ましい。精密な成形体の場合は直径0.5〜1mmの粒子が更に好ましい。
【0025】
ここで用いる発泡剤及び発泡助剤としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン等の炭化水素、塩化メチレン、塩化メチル、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類が発泡剤として、又、炭素数1〜4のアルコール、ケトン類、エーテル、ベンゼン、トルエン等が発泡助剤として用いられる。
【0026】
発泡剤と発泡助剤の組み合わせは、使用する樹脂によって適宜選択すれば良い。本発明に使用するL体/D体共重合ポリ乳酸ポリマーの場合、発泡剤として低分子量アルカンが好ましく用いられるが、これと組み合わせる発泡助剤としては例えばメタノール、エタノール等の単素数1〜4の1価のアルコールが好適である。その他の組み合わせも種々あり、目的や経済性に鑑みて選択することができる。
【0027】
発泡剤と発泡助剤の使用比率(重量比率)は、発泡剤/発泡助剤=1/2〜
20/1が可能であるが、発泡剤と発泡助剤の組み合わせによってこの比率は変わり、1/1〜10/1が一般的である。
【0028】
発泡剤及び発泡助剤の含有量(率)は目的とする発泡倍率、ペレット又はビーズ粒子の保存期間によって異なるが発泡剤として通常5〜15重量%が適用される。又、発泡剤の含有量(率)は、発泡倍率に応じて選択することができる。一般に、低発泡品は含有量(率)を低く、高発泡品は含有量(率)を高くすればよい。
【0029】
発泡剤及び発泡助剤を含有させたペレット又はビーズ粒子は、加熱によって発泡させた後、所望の金型に入れ、更に加熱して発泡を進め、セル同士を融着させて強固な成形体を成形する。ポリスチレン(PS)発泡体の成型方法と基本的には同一である。即ち、予備発泡及び発泡成形共に熱容量の大きい水蒸気が好ましく用いられる。
【0030】
また、成形体の曲げ弾性率(JIS K−7221)は、緩衝材に用いる場合、柔軟性の点で9.80MPa以下が好ましく、更に好ましくは7.85MPa以下、最も好ましくは5.88MPa以下である。
【0031】
【実施例】
以下に実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。尚、評価は下記の方法で行った。
【0032】
(測定方法)
(1)溶液粘度(ηr):テトラクロロエタン/フエノール=2/3(重量比)(KPC)の溶液中20℃で測定した値。(試料調整:試料1gをKPC100mLで溶解)
【0033】
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、多分散度(Mw/Mn):測定装置 HLC8120GPC(東ソー製)、カラム TSKgelS5000+3000+1000(東ソー製)、溶媒:クロロホルム/THF
【0034】
(3)メルトインデックス(MI):JIS K−7210に準拠して測定。(温度:190℃、オリフイス2mm径、荷重211.8N、予熱時間6分)
【0035】
(4)発泡粒子の発泡倍率:1Lメスシリンダーを用いて、かさ密度(g/L)を測定し、下記のように算出した。
発泡倍率(倍)=1000/かさ密度(g/L)
【0036】
(5)成形体のかさ密度:300×300×30mmボードの重量、体積を測定し、下記のように算出した。
かさ密度(g/cm3)=重量(g)/体積(cm3)
【0037】
(6)物性:JISに準拠して測定した。
・曲げ応力、初期弾性率:JIS K−7221
・緩衝係数:JIS Z―0235
【0038】
(7)生分解性:30×30×30mmの成形体をコンポストに2ケ月間入れ、外観状態で次のように評価した。
◎:原形をとどめない状態まで分解
○:元の形状はとどめているがぼろぼろ
△:僅かに変化
×:全く変化なし
【0039】
(8)成形性:成形品の外観を目視で評価。
【0040】
<実施例1>
重量平均分子量Mwが186,000、数平均分子量Mnが89,000、多分散度(Mw/Mn)が2.09、L体/D体=88.6/11.4のポリ乳酸とηrが2.45のBASF製エコフレックスFBX7011(芳香族脂肪族ポリエステル)を90/10(重量%)の割合で、ブレンドし、その後イソシアネート化合物「ミリオネートMR―200」(イソシアネート基2.7〜2.8当量/モル、日本ポリウレタン工業(株))2.1重量%、タルク「LMP―100」(富士タルク工業(株))3.0重量%を二軸混練機(TEM35B,東芝機械(株))にてシリンダー温度185℃で混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
【0041】
<比較例1>
使用した樹脂がポリ乳酸単独である以外は実施例1と全く同様に実施した。
【0042】
この樹脂組成物のMIを測定した後、オートクレーブに各々5000重量部、発泡剤としてイソブタン2000重量部、発泡助剤としてメタノール240重量部を仕込み、密封し、昇温し、85℃に3時間保持した。その後、25℃で冷却してから樹脂を取り出し、風乾後、重量を測定し、含浸率を求めた。次いで得られた発泡剤含浸ペレツトを水蒸気(96℃、1分)で予備発泡させ、発泡倍率及び生分解性を評価した。
【0043】
その後、更に、1日熟成後、この発泡粒子を密閉金型に充填してスチーム成形機で水蒸気圧0.1MPa、20秒間加熱して成形を行い、各300×300×30mmの成形体を得た。この成形体より試験片を切り出し物性を評価した。評価の対照として市販の発泡ポリスチレン(比較例2)を用いた。評価結果は表1の通りであった。
【0044】
【表1】
【0045】
評価結果
本発明のポリ乳酸系樹脂、芳香族脂肪族ポリエステルおよびポリイソシアネート化合物を含むポリエステル樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂と較べ、生分解性、発泡性、成形性を維持したまま、柔軟性、緩衝性が改善され、緩衝材として適している。
【0046】
【発明の効果】
以上、本発明のポリエステル樹脂組成物は、発泡スチレンと同様な優れた発泡性、成形性を有し、かつその発泡成形体は生分解性、柔軟性、緩衝性を有するため、広く梱包材として適用でき、地球環境保全に資する材料である。
Claims (5)
- ポリ乳酸系樹脂、芳香族脂肪族ポリエステルおよびポリイソシアネート化合物を含むポリエステル樹脂組成物。
- ポリ乳酸系樹脂が分岐型ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1または2記載のポリエステル樹脂組成物からなるペレット又はビーズ状粒子に発泡剤を含浸した発泡性粒子。
- 請求項3の発泡性粒子を発泡させた発泡粒子。
- 請求項4の発泡粒子を用いた発泡成形体。
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