JP3877618B2 - ガス放電管及びそれを用いた表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス放電管に関し、さらに詳しくは、直径0.5〜5mm程度の細管を用いたガス放電管に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス放電管を並列に複数配列して、任意の画像を表示する表示装置が知られている。この表示装置のガス放電管では、直径0.5〜5mm程度の細管を用いる。
【0003】
従来、このような細管を用いたガス放電管では、細管の内面に、ある値以上のエネルギーを有する放電ガスとの衝突により荷電粒子を発生し、放電開始電圧を下げる機能をもつ電子放出膜、例えばMgO膜を形成する場合、細管の内面に、例えば脂肪酸マグネシウムの溶液をスピンコート法などで塗布し、その塗布層を焼成することで形成するようにしている。
【0004】
この場合、細管が短かければ(ほぼ300mm以下)、細管の内面にMgO膜を比較的均一に塗布することができる。また、塗布層の焼成を行う際、細管の内径が十分に大きい(4mm以上)と、細管内への空気導入に対して抵抗が少なく(通気コンダクタンスが高い)、焼成を行いやすい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、細管の長さが300mmを超えるものになると、スピンコート法で細管の内面にMgO膜を均一に塗布することは困難である。また、細管の内径が2mm以下になると、塗布層の焼成を行う際、細管の内部で脂肪酸マグネシウムの有機成分の燃焼に必要な酸素が不足し、このため有機成分が完全に除去されず、MgO膜の光透過率が低下する。
【0006】
したがって、内径が2mm以下、あるいは長さが300mm以上の細管であっても、細管の内面に電子放出膜を容易に形成できるような技術の出現が望まれていた。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、電子放出膜を細管とは別体の支持部材に形成し、この支持部材を細管の内部に配置することで、電子放出膜の形成を容易にすることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、放電空間を形成する細管の内部に電子放出膜を有したガス放電管において、前記細管と独立した支持部材に、脂肪酸マグネシウムの溶液が塗布されて焼成されることで電子放出膜があらかじめ形成された後、当該支持部材が前記細管の内部に挿入されて放電空間内に配置されてなるガス放電管である。
【0009】
本発明によれば、細管の外部で電子放出膜を支持部材に形成し、その支持部材を細管の内部に挿入して放電空間内に配置することができる。したがって、例えば、支持部材を、細管よりも短い複数の筒形状の部材で構成したり、半筒形状の部材で構成することにより、電子放出膜形成用の塗布液を均一に塗布することができる。また、その塗布膜の焼成の際の酸素不足による焼きむらを防止することができる。これにより良好な電子放出膜を容易に形成することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のガス放電管は、どのような径の細管を用いて形成されてもよいが、特に直径0.5〜5mm程度の細管を用いて好ましくは形成される。この細管は、円形の断面を有していることが好ましいが、扁平楕円状の断面を有していてもよい。
【0011】
本発明は、例えば細管の両端を封止することによって細管の内部に放電空間を形成し、その放電空間内に電子放出膜を配置した構成である。そして、その電子放出膜の配置においては、電子放出膜を細管と独立した支持部材に形成し、その支持部材を細管の内部に挿入することによって、電子放出膜を放電空間内に位置付ける。
【0012】
細管の内径が小さい場合、細管の内部の通気性が悪く、細管の内面に電子放出膜を形成しようとしても、細管の内面に塗布した電子放出膜形成用の塗布膜の焼成時に十分に空気が供給されない。そこで、本発明では、細管の内部に挿入できるような支持部材に電子放出膜を形成する。つまり、電子放出膜を細管内で形成するのではなく、細管の外部で形成して、その後細管の内部に導入できる構造としている。
【0013】
本発明において、支持部材には電子放出膜が形成される。この電子放出膜は、MgO、CaO、SrO、BaO等からなる。
支持部材は、細管と独立した形状であればよく、特に限定されないが、細管よりも短い複数の筒形状の部材、または筒を長手方向に割った半筒形状(以下、ボート形状ともいう)の部材とすることが望ましい。この支持部材は、電子放出膜の形成面で放電を発生させるため、誘電体で構成することが望ましい。
【0014】
本発明においては、細管と独立した支持部材に形成された蛍光体層をさらに備えていてもよく、この場合、電子放出膜の支持部材が筒形状であれば、この蛍光体層の支持部材を電子放出膜の支持部材の内部に挿入して放電空間内に配置した構成とすることが望ましい。
【0015】
また、電子放出膜の支持部材が、筒を長手方向に割った半円形の断面を有するボート形状で、蛍光体層の支持部材もそれと同じ形状であれば、それぞれ半筒形の電子放出膜の支持部材と蛍光体層の支持部材を、円筒形となるように両者を向き合わせ、細管の内部に挿入して放電空間内に配置した構成とすることが望ましい。この場合、電子放出膜の支持部材と蛍光体層の支持部材とが向き合わされた断面は円形であり、両者はともに半分の円弧の断面形状であるが、これに限定されず、一方の円弧が大きく、他方の円弧が小さい形状であってもよい。
【0016】
支持部材の材料としては、ガラスを用いることが望ましい。ガラスを用いた場合には、細管がガラス等であれば、細管内に放電ガスを導入して細管の端部を封止する際に、支持部材を細管と一緒に溶融させてチップオフ(溶断)することで、支持部材を細管内に固定することができる。この場合、互いのガラスがなじむため、細管のリーク等の発生を防止することができる。支持部材の細管内への固定については、この他に低融点ガラスのような接着剤を用いて固定するようにしてもよい。
【0017】
本発明は、また、上記したガス放電管を、支持基板上に複数本並設し、前記支持基板のガス放電管設置面に、当該ガス放電管の外壁面と接してその長手方向に沿う複数の信号電極を形成し、前記ガス放電管の表面側の外壁面に接して各ガス放電管を横切る方向の表示電極対を設けてなる表示装置である。
【0018】
以下、図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳述する。なお、この発明はこれによって限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
本発明のガス放電管は、ガス放電管を複数本並列に配置して、任意の画像を表示する表示装置に好適に用いられる。この表示装置の一例を説明する。
【0019】
図1は本発明のガス放電管を用いた表示装置の一例を示す説明図である。
図において、31は前面側の基板、32は背面側の基板、1はガス放電管、2は表示電極対(主電極対)、3は信号電極(データ電極ともいう)である。
【0020】
細管状のガス放電管1の内部(放電空間)には、電子放出膜を形成した支持部材(以下、電子放出膜の支持部材という)と蛍光体層を形成した支持部材(以下、蛍光体層の支持部材という)とが挿入されて配置され、放電ガスが導入されて、両端が封止されている。信号電極3は背面側の基板32に形成され、ガス放電管1の長手方向に沿って設けられている。表示電極対2は前面側の基板31に形成され、信号電極3と交差する方向に設けられている。表示電極対2と表示電極対2との間には、非放電領域(非放電ギャップ)21が設けられている。
【0021】
信号電極3と表示電極対2は、組み立て時にガス放電管1の下側の外周面と上側の外周面にそれぞれ密着するように接触させるが、その密着性を良くするために、表示電極とガス放電管面との間に接着剤を介在させて接着してもよい。
【0022】
この表示装置を平面的にみた場合、信号電極3と表示電極対2との交差部が単位発光領域となる。表示は、表示電極対2のいずれか一本を走査電極として用い、その走査電極と信号電極3との交差部で選択放電を発生させて発光領域を選択し、その発光に伴って当該領域の管内面に形成された壁電荷を利用して、表示電極対2で表示放電を発生させることで行う。選択放電は、上下方向に対向する走査電極と信号電極3との間のガス放電管1内で発生される対向放電であり、表示放電は、平面上に平行に配置される2本の表示電極間のガス放電管1内で発生される面放電である。
【0023】
図の電極構造では、一つの発光部位に3つの電極が配置された構成であり、表示電極対によって表示放電が発生される構造であるが、この限りではなく、表示電極2と信号電極3との間で表示放電が発生される構造であってもよい。
【0024】
すなわち、表示電極対2を一本とし、この表示電極2を走査電極として用いて信号電極3との間に選択放電と表示放電(対向放電)を発生させる形式の電極構造であってもよい。
【0025】
図2はガス放電管の実施形態1の構成を示す説明図である。図はガス放電管の長手方向に直交する断面を示している。図において、1aはガス放電管となる細管、4は電子放出膜の支持部材、5は蛍光体層の支持部材である。
【0026】
本形態では、細管1aは、円形の断面を有しており、ホウケイ酸ガラスを用い、管の外径1000μm、肉厚60μm、長さ400mmで作製している。細管1aの内部には、電子放出膜の支持部材4が配置され、この電子放出膜の支持部材4の内部には、蛍光体層の支持部材5が配置されている。電子放出膜の支持部材4と蛍光体層の支持部材5もホウケイ酸ガラスで作製している。
【0027】
細管1aは、細管1aと相似形の大形の母材をダンナー法で作製し、それを加熱して軟化させながら、リドロー(引き伸ばし)することにより作製する。電子放出膜の支持部材4と蛍光体層の支持部材5も同様の方法で作製する。なお、これらはリドローではなく、最終的な形状のものを加熱プレスで直接形成するようにしてもよい。
【0028】
電子放出膜の支持部材4は、細管1aよりもひと回り小さい円形の断面を有しており、管の外径860μm、肉厚60μm、長さ200mmで作製している。電子放出膜の支持部材4の内面には、電子放出膜としてのMgO膜4aを0.1〜1μmの膜厚で形成している。MgO膜4aは、細管1a内に電子放出膜の支持部材4を挿入する前に、支持部材4の内面に形成しておく。
【0029】
このMgO膜4aは、支持部材4の内面に脂肪酸マグネシウムの溶液をスピンコート法で塗布して乾燥させた後、その塗布層を焼成することで形成する。
【0030】
電子放出膜の支持部材4は、長さが200mmであるので、支持部材4の内面に脂肪酸マグネシウム溶液を均一に塗布することができる。また、この長さであれば、焼成時に、支持部材4の内部で、脂肪酸マグネシウムの有機成分の燃焼に必要な酸素が不足することがないので、焼成後のMgO膜に光透過率の低下がない。これにより、支持部材4の内面に良好なMgO膜を均一に形成することができる。
【0031】
蛍光体層の支持部材5は、外径720μmの円筒を長手方向に2つに割ったボート形状で、半円形の断面を有しており、肉厚60μm、長さ200mmで作製している。蛍光体層の支持部材5の凹部には、蛍光体層5aを20〜30μmの厚みで形成している。蛍光体層5aは、蛍光体層の支持部材5を電子放出膜の支持部材4内に挿入する前に、支持部材5の凹部に形成しておく。
【0032】
蛍光体層5aは、フルカラーの表示に必要なR(赤)、G(緑)、B(青)の蛍光体の内のいずれか一色の蛍光体で形成する。この蛍光体層5aは、当該分野で公知の蛍光体を用い、この蛍光体を含むペーストを支持部材5の凹部に塗布して乾燥させた後、焼成することにより形成する。
【0033】
蛍光体層5aは、細管1aと電子放出膜の支持部材5の外部で形成するので、蛍光体を含むペーストを支持部材5の凹部に塗布した後、焼成しても、酸素不足になることがなく、有機成分を完全に焼失させることができる。
【0034】
このガス放電管では、構造が、細管1aと電子放出膜の支持部材4との二重構造であるので、細管と電子放出膜の支持部材との合計の肉厚を、一重構造の場合の細管の肉厚と同じ程度にする必要がある。
【0035】
図3はガス放電管の実施形態2の構成を示す説明図である。図はガス放電管の長手方向に直交する断面を示している。図において、6は電子放出膜の支持部材、7は蛍光体層の支持部材である。
【0036】
本形態において、細管1aは実施形態1と同じものである。細管1aの内部には、電子放出膜の支持部材6と蛍光体層の支持部材7が配置されている。電子放出膜の支持部材6と蛍光体層の支持部材7もホウケイ酸ガラスを用い、リドローにより作製している。
【0037】
電子放出膜の支持部材6は、外径860μmの円筒を長手方向に2つに割ったボート形状であり、肉厚60μm、長さ200mmで作製している。電子放出膜の支持部材6の凹部には、電子放出膜としてのMgO膜6aを0.1〜1μmの膜厚で形成している。MgO膜6aは、細管1a内に電子放出膜の支持部材6を挿入する前に、支持部材6の凹部に形成しておく。
【0038】
このMgO膜6aは、支持部材6の凹部に脂肪酸マグネシウムの溶液をスロットコート法やスピンコート法などで塗布して乾燥させた後、その塗布層を焼成することで形成する。
【0039】
電子放出膜の支持部材6は、ボート形状であるので、300mmを超えるような長さの支持部材であっても脂肪酸マグネシウム溶液の均一な塗布が可能である。また、脂肪酸マグネシウムの塗布層の焼成時に酸素不足となることがないので、焼成後のMgO膜に光透過率の低下がない。これにより、支持部材6の凹部に良好なMgO膜を均一に形成することができる。
【0040】
さらに、電子放出膜の支持部材6がボート形状であるので、脂肪酸マグネシウム溶液のような塗布液を用いた熱分解法でMgO膜を形成するのではなく、蒸着などの方法でもMgO膜を形成することができる。
【0041】
蛍光体層の支持部材7は、電子放出膜の支持部材6と同じ形状であり、蛍光体層の支持部材7の凹部には、実施形態1と同じ方法で、蛍光体層7aを20〜30μmの厚みで形成している。蛍光体層7aは、蛍光体層の支持部材7を細管1a内に挿入する前に、支持部材7の凹部に形成しておく。
【0042】
本形態でも、蛍光体層7aは、細管1aの外部で形成するので、蛍光体を含むペーストを支持部材7の凹部に塗布した後、焼成しても、酸素不足になることがなく、有機成分を完全に焼失させることができる。
【0043】
このガス放電管でも、構造が、細管1aと、電子放出膜の支持部材6と蛍光体層の支持部材7とで形成される管構造との二重構造であるので、細管と電子放出膜の支持部材との合計の肉厚を、一重構造の場合の細管の肉厚と同じ程度にする必要がある。
【0044】
図4は上述のガス放電管を用いて表示装置を構成した例を示す説明図である。この図は、図1で示した表示装置を平面的に見た状態を示している。
本例では、表示電極対2は、それぞれ透明電極2aとバス電極2bで構成している。信号電極は示していない。細管1aは、R用、G用、B用のものを順番に並列配置している。
【0045】
細管1aは400mmの長さであり、この細管1a内に、実施形態1の電子放出膜の支持部材4と蛍光体層の支持部材5を配置する場合、2本の電子放出膜の支持部材4と2本の蛍光体層の支持部材5とを、細管1a内にそれぞれ直列に挿入する。蛍光体層の支持部材5は400mmの長さのものであってもよい。そして、電子放出膜の第1の支持部材4と第2の支持部材4との継ぎ目が、非放電領域21に位置するように配置する。また、蛍光体層の第1の支持部材5と第2の支持部材5との継ぎ目も、非放電領域21に位置するように配置することが望ましい。
【0046】
図5は実施形態1における非放電領域の継ぎ目の状態を示す説明図である。
電子放出膜の第1の支持部材4と第2の支持部材4との継ぎ目は、非放電領域21の位置で突き合わせにしているが、電子放出膜の支持部材4どうしを加熱溶融させて接着してもよいし、低融点ガラスのような接着剤を用いて接着してもよい。この接続は、支持部材4の内面にMgO膜を形成した後、その支持部材4を細管1a内に挿入する前に行う。200mmの蛍光体層の支持部材5を2本用いる場合も同様の方法で直列に接続してもよい。
【0047】
細管1a内に、実施形態2の電子放出膜の支持部材6と蛍光体層の支持部材7を配置する場合も同様であり、2本の電子放出膜の支持部材6と2本の蛍光体層の支持部材7とを、細管1a内にそれぞれ直列に挿入する。この挿入に際しては、電子放出膜の支持部材6と蛍光体層の支持部材7が筒形となるように両者を向き合わせて、細管1aの内部に挿入する。電子放出膜の支持部材6はボート形状であるので、400mmの長さのものであってもよい。蛍光体層の支持部材7も同様である。
【0048】
そして、電子放出膜の第1の支持部材6と第2の支持部材6との継ぎ目が、非放電領域21に位置するように配置する。また、蛍光体層の第1の支持部材7と第2の支持部材7との継ぎ目も、非放電領域21に位置するように配置することが望ましい。
【0049】
図6は実施形態2における非放電領域の継ぎ目の状態を示す説明図である。
電子放出膜の第1の支持部材6と第2の支持部材6との継ぎ目についても、非放電領域21の位置で突き合わせにしているが、溶着、接着のいずれを用いてもよい。この接続も、支持部材6の凹部にMgO膜を形成した後、その支持部材6を細管1a内に挿入する前に行う。200mmの蛍光体層の支持部材7を2本用いる場合も同様の方法で直列に接続してもよい。
【0050】
このようにして、細管1a内に、実施形態1の電子放出膜の支持部材4と蛍光体層の支持部材5、あるいは実施形態2の電子放出膜の支持部材6と蛍光体層の支持部材7を挿入し、固定を行うことで、細管1a内(放電空間内)に電子放出膜と蛍光体層を配置する。その後、細管1aの内部の排気を行った後、細管1a内に放電ガスを封入し、細管1aの両端を封止する。
【0051】
この封止の際には、電子放出膜の支持部材と蛍光体層の支持部材を細管と共にチップオフして、細管の端部を封止することにより、電子放出膜の支持部材と蛍光体層の支持部材を細管内に固定することができる。
【0052】
細管はガラス製であり、ガラス製の電子放出膜の支持部材および蛍光体層の支持部材となじみがよいため、封止の際に電子放出膜の支持部材と蛍光体層の支持部材を細管の端部と一緒に溶融して固定しても、細管のリーク等の発生が生じにくい。
【0053】
このように、細管、電子放出膜の支持部材、蛍光体層の支持部材のアセンブリによって、ガス放電管を形成することにより、それぞれの工程で良品となったものを組み合わせて、1つのガス放電管とすることができるので、ガス放電管全体の歩留まりを向上させることができる。
【0054】
図7は誘電体層の厚さを示す説明図である。ここでは実施形態2の例で説明する。図4で示した表示装置では、表示の際、表示電極対2間で面放電が発生される。このため、電極上の誘電体層、つまり細管1aの厚さHtと電子放出膜の支持部材6の厚さStとの合計の厚さが、表示電極対2間の放電開始電圧に影響を及ぼす。
【0055】
図8は誘電体層の厚さ(μm)と放電開始電圧(V)との関係を示すグラフである。
誘電体層の厚さは、放電開始電圧を決めるパラメータの1つであり、細管1aの内部に封入する放電ガスの組成や、圧力によっても放電開始電圧が変化する。このため、例えば、誘電体層が細管と電子放出膜の支持部材からなり、これらにホウケイ酸ガラスを用いた場合、表示電極対2間の面放電ギャップを200μmとし、封入する放電ガスをNe(96%)+Xe(4%)とし、封入ガス圧を350Torrとすると、誘電体層の厚さと放電開始電圧の関係は、このグラフに示すようになる。
【0056】
グラフには示されていないが、たとえば誘電体層の厚さが300μm以上になると、放電開始電圧は1000Vを超えてしまい、電圧印加用のドライバのコストや、電子回路の耐圧を考慮すると実用的ではない。
【0057】
したがって、放電開始電圧の制限からは、細管と電子放出膜の支持部材との合計の厚さ(Ht+St)は、300μm以下にすることが望ましい。また、細管1aと電子放出膜の支持部材6との合計の厚さ(Ht+St)は、機械的強度の面から、最低でも20μm程度は必要である。したがって、細管1aと電子放出膜の支持部材6との合計の厚さ(Ht+St)は、20〜300μm程度の範囲とすることが望ましい。これは、実施形態1のガス放電管であっても同じである。
【0058】
実施形態1と実施形態2のガス放電管では、細管と電子放出膜の支持部材との合計の厚さ(Ht+St)は70〜120μm程度であり、この厚さであれば、放電開始電圧は約400〜500Vとなり、実用的な放電開始電圧とすることができる。
【0059】
このようにして、細管の外部で電子放出膜を支持部材に形成し、その支持部材を細管の内部に挿入して放電空間内に配置する。これにより、円筒状の支持部材を用いた場合には、支持部材の長さを短くして、電子放出膜形成用の塗布液を支持部材の内部に均一に塗布することができ、塗布膜の焼成時の酸素不足も解消することができる。また、ボート形状の支持部材を用いた場合には、電子放出膜形成用の塗布液を容易にかつ均一に塗布することができ、塗布膜の焼成時の酸素不足も解消することができる。しかも、電子放出膜を蒸着などの他の方法で形成することもできる。したがって、良好な電子放出膜を容易に形成することが可能となる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、電子放出膜が細管と独立した支持部材に形成された構成であるので、ガス放細管の外部で電子放出膜を支持部材に形成し、その支持部材を細管の内部に挿入して放電空間内に配置することができる。したがって、電子放出膜形成用の塗布液を均一に塗布することが可能となる。また、その塗布膜の焼成が容易となる。これにより良好な電子放出膜を容易に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガス放電管を用いた表示装置の一例を示す説明図である。
【図2】ガス放電管の実施形態1の構成を示す説明図である。
【図3】ガス放電管の実施形態2の構成を示す説明図である。
【図4】本発明のガス放電管を用いて表示装置を構成した例を示す説明図である。
【図5】実施形態1における非放電領域の継ぎ目の状態を示す説明図である。
【図6】実施形態2における非放電領域の継ぎ目の状態を示す説明図である。
【図7】誘電体層の厚さを示す説明図である。
【図8】誘電体層の厚さと放電開始電圧との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ガス放電管
1a 細管
2 表示電極対
2a バス電極
2b 透明電極
3 信号電極
4,6 電子放出膜の支持部材
4a,6a 電子放出膜
5,7 蛍光体層の支持部材
5a,7a 蛍光体層
21 非放電領域
31 前面側の基板
32 背面側の基板
Claims (7)
- 放電空間を形成する細管の内部に電子放出膜を有したガス放電管において、前記細管と独立した支持部材に、脂肪酸マグネシウムの溶液が塗布されて焼成されることで電子放出膜があらかじめ形成された後、当該支持部材が前記細管の内部に挿入されて放電空間内に配置されてなるガス放電管。
- 支持部材が細管よりも短い複数の筒形状の部材からなる請求項1記載のガス放電管。
- 前記細管と独立した支持部材に形成された蛍光体層をさらに備え、当該蛍光体層の支持部材が前記電子放出膜の筒形支持部材の内部に挿入されて放電空間内に配置されてなる請求項2記載のガス放電管。
- 支持部材が筒を長手方向に割った半筒形状の部材からなる請求項1記載のガス放電管。
- 前記細管と独立した支持部材に形成された蛍光体層をさらに備え、当該蛍光体層の支持部材が筒を長手方向に割った半筒形状の部材からなり、それぞれ半筒形の電子放出膜の支持部材と蛍光体層の支持部材が、筒形となるように両者が向き合わされ、前記細管の内部に挿入されて放電空間内に配置されてなる請求項4記載のガス放電管。
- 細管の肉厚と支持部材の肉厚との合計が20〜300μmであることを特徴とする請求項1、2または4記載のガス放電管。
- 請求項1〜6のいずれか1つに記載のガス放電管を、支持基板上に複数本並設し、前記支持基板のガス放電管設置面に、当該ガス放電管の外壁面と接してその長手方向に沿う複数の信号電極を形成し、前記ガス放電管の表面側の外壁面に接して各ガス放電管を横切る方向の表示電極対を設けてなる表示装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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