JP3875305B2 - 楕円ドーム形の膝蓋骨プロテーゼ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療器具に係り、特にヒトの関節の代用器具として用いられる関節プロテーゼの改良に関する。
【０００２】
【背景】
膝関節全置換術は、種々の関節障害の治療において非常な成功を収めてきた。例えば医学博士W.J. Petersilge 他の「膝関節全置換術における膝蓋骨・大腿骨への剪断力および圧縮力に対する滑車設計の効果」（「臨床整形外科と関連研究」、第３０９号、第１２４〜１３０頁参照）。この論文は、膝について研究し、種々の膝蓋骨プロテーゼとその剪断力による影響を詳細に論じている。
【０００３】
とりわけ、ドーム形接触面と丸い外周縁をもつ膝蓋骨プロテーゼは、１９７０年代の初期から利用されてきている。このプロテーゼの利点は、挿入用器具の使用が簡単なこと、患者の身体構造に基づいて膝蓋骨上でインプラントの位置を定められること、装置が不整合に影響される、および大腿部における滑車の深い溝と合わせて使用したとき接触領域が拡がることである。滑車の溝における接触領域が拡大すると、同じ力が加えられたときの接触応力は減少する。しかし、接触領域の拡大とともに、力の及ぶ領域は拡大していく。
【０００４】
しかし、そのような丸いプロテーゼは、膝蓋骨切断面を覆う機能が比較的劣る。なお、膝蓋骨の表面は、プロテーゼを収めるため、手術中に切除しなければならない。
この従来の型の膝蓋骨は、図１（ａ）と図１（ｂ）に示してある。
【０００５】
１９８０年代の初期に、プロテーゼは、図２（ａ）と図２（ｂ）に示すように、楕円両凹形に修正された。この修正はより解剖学的な形状に合致したものであったため膝蓋骨を覆う程度は改善され、膝蓋骨にかかる力は、撓み角が７５°以下の膝蓋骨ドーム形状部分から、撓み角が７５°以上の周縁凹部へと移行される。膝蓋骨表面上の三本のペグ（小くい）の取付けに係る設計は接触面を拡大し、また血液の供給を確保し、さらに骨を保護する。
【０００６】
本発明者によれば、膝蓋骨プロテーゼの周縁を楕円形にし、かつ接触面をドーム形（すなわちほぼ一定の半径を有する）にすると、接触応力が減少するとともに、プロテーゼの骨を覆う程度も増加することが分った。
【０００７】
本発明は、膝用プロテーゼの大腿部に形成される深い滑車溝に係合するドーム形の接触面を有する楕円形の膝蓋骨プロテーゼを提供する。こうすると、接触応力は、すでに説明した溝の浅い従来の両凹型膝蓋骨プロテーゼに比べて大きく減少する。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
膝用プロテーゼには、連接面すなわち関節面として二つの顆を含む大腿部を有する型のものを用いる。二つの顆は、深い滑車みぞを形成し、大腿部に対して連接するすなわち大腿部とともに関節をなす脛部の上に乗る。その滑車溝と滑り係合する膝蓋骨プロテーゼは、この膝用プロテーゼに設ける。膝蓋骨プロテーゼの膝蓋骨部は全周が楕円形をしており、またドーム形の連接面すなわち関節面を有する。連接面とは、滑車みぞを形成する顆のある側と接触する面のことである。前記接触面は、前記二つの顆を結ぶ線を短径方向とし前記二つの顆を結ぶ線に対して直角方向を長径方向とする楕円形状を有している。ドーム形の接触面の反対側においては、膝蓋骨は、切除した膝蓋骨へ取付けるための少なくとも１本、好ましくは３本の柱（ポスト）を備える。したがって、膝蓋骨の切除は、この柱を収めることができるように行う。さらに、セメントによる取付けの際固定の強度を増すため、接触面と反対側に、短い張り出しを備える切り取り領域が設けられる。この切り取り領域は、セメントがプロテーゼを把持し、切除した膝蓋骨にプロテーゼを取り付けるための領域である。
【０００９】
【発明の実施の形態】
図３は、膝プロテーゼの膝蓋骨部が滑車溝に入り込んだ膝プロテーゼの大腿部の説明図である。このプロテーゼは、顆２を有する大腿部１を備える。顆２は、膝蓋骨プロテーゼ４が嵌る滑車溝３を区画する。大腿部１は、現在手に入れることのできる多くの型のものを用いることができ、また膝蓋骨プロテーゼ４との界面において大きな接触面積を与えるよう滑車溝３を深くした変形タイプのものでもよい。大腿部１は好ましくはコバルト−クロム合金でつくるのがよく、他方膝蓋骨プロテーゼは超高分子量ポリエチレン（ＵＨＭＥＰＥ）でつくるのが好ましい。
【００１０】
図４は、本発明に係る膝蓋骨プロテーゼの接触面すなわち関節面の平面図である。本発明に係る膝蓋骨プロテーゼの外周縁５は円形ではなく、好ましくは楕円形がよい。連接面６すなわち関節面は、好ましくはドーム形、すなわち半径が例えば１インチ（２．５４cm）で一定の形がよい。外周５の形状が楕円形でかつ半径が一定になるためには、膝蓋骨プロテーゼは、外周に沿って縁の厚みが異なることが必要である。図５に示すように、曲率が、膝蓋骨の径が狭い方向における連接面と反対側の面まで連接面を引き下ろすのに十分でないときには、薄い縁が形成される。図６は、そのような縁が最小の場合の様子を示す。即ち、図６に示すように、楕円形状の膝蓋骨プロテーゼにおいて径が狭い方向が短径方向であり、膝蓋骨プロテーゼにおいて径が長い方向が長径方向である。
【００１１】
連接面の反対側からは、このプロテーゼを骨に固定するさらなる手段として３本の柱７（図７参照）が伸びる。これらの柱７は、図６に示すように、三角形の配置をとり、この三角形の一辺は、外周５を形成する楕円の短径に平行に延びる。好ましい態様においては、正三角形の頂点に当るこの柱の位置は、プロテーゼ外周のほぼ真ん中になる。
【００１２】
連接面の反対面には、底部切り取り領域８が設けられる。底部切り取り領域８は膝蓋骨プロテーゼに設けられるくぼみで、セメントによる拡大固定領域を与えるための張り出し９を含む外周によって区画される。約１インチのドーム半径を有する代表的なプロテーゼにおける、各部材の代表的な寸法は次の通りである：楕円の最小径が約１．１インチ、楕円の最大径が約１．２５インチ。柱７は、裏面あるいは膝蓋骨プロテーゼ連接面の反対面の上方に約０．２インチ延びる。柱７は、骨への固定を強化するため、環状にわずかに切り取られている。張り出し９の切り取り角度は、５０〜７５°で、好ましくは６７．５°である。切り取り領域は、膝蓋骨プロテーゼの裏面内で約0.055 インチ後退している。
【００１３】
本発明の具体的な実施態様は、以下の通りである。
（Ａ） 連接面すなわち関節面として二つの顆を有する大腿部と、この大腿部に対して連接する脛部、および前記二つの顆の間に形成される溝と滑り係合する膝蓋骨プロテーゼを備える型の膝用プロテーゼにおいて、前記膝蓋骨プロテーゼが非円形の外周縁を有し、膝蓋骨プロテーゼの溝との接触側が前記溝と滑り接触するためほぼ一定の球に係る半径を有することを特徴とする膝用プロテーゼ。
１）前記膝蓋骨プロテーゼは、切除した膝蓋骨に固定するため、膝蓋骨プロテーゼの前記接触側と反対の骨への取付け側から延びる少なくとも一本の柱をさらに備える実施態様Ａ記載の膝用プロテーゼ。
２）前記柱は三本である上記実施態様１）記載の膝用プロテーゼ。
３）前記接触側と反対の側は、切除した膝蓋骨に前記膝蓋骨プロテーゼをセメントで固定するための切り取り領域を区画する上記実施態様１）記載の膝用プロテーゼ。
４）前記切り取り領域は、この切り取り領域の底面と５０〜７５°の角度をなして延びる壁からなる張り出しによって一部が区画される上記実施態様３）記載の膝用プロテーゼ。
５）前記張り出しの壁は、前記切り取り領域の底面とほぼ６７．５°の角度をなす上記実施態様４）記載の膝用プロテーゼ。
６）前記膝蓋骨プロテーゼは、ほぼ楕円形をなす実施態様Ａ記載の膝用プロテーゼ。
７）前記膝蓋骨プロテーゼの溝との接触側は、０．７５〜３インチの球形に係る半径を有する実施態様Ａ記載の膝用プロテーゼ。
８）前記半径は約１インチである実施態様Ａ記載の膝用プロテーゼ。
９）前記膝蓋骨プロテーゼは、超高分子量ポリエチレンから形成される実施態様Ａ記載の膝用プロテーゼ。
（Ｂ） 連接面すなわち関節面として二つの顆を有する大腿部と、この大腿部に対して連接する脛部、および前記二つの顆の間に形成される溝と滑り係合する超高分子量ポリエチレン製膝蓋骨プロテーゼを備える型の膝用プロテーゼにおいて、前記膝蓋骨プロテーゼが非円形の外周縁を有し、また前記この膝蓋骨プロテーゼの溝と接触する第１の側は前記溝と滑り接触するためほぼ一定の球に係る半径を有し、他方骨と接触する第２の側は膝蓋骨プロテーゼを切除した膝蓋骨に固定するための３本またはこれを越える柱を有し、さらにこの第２の側は切り取り領域を含み、この切り取り領域はこの切り取り領域の底面と５０〜７５°をなす傾斜した壁によって区画されることを特徴とする膝用プロテーゼ。
【００１４】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、膝用プロテーゼの一部をなす膝蓋骨プロテーゼにおいて、連接する大腿部との接触応力が減少するとともに、プロテーゼの骨を覆う程度も増加する膝用プロテーゼが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図１】（ａ）は、円形の周縁を有する従来のドーム形膝蓋骨プロテーゼの背面図、（ｂ）は（ａ）の１Ｂ−１Ｂ線断面図。
【図２】（ａ）は、従来の両凹形膝蓋骨プロテーゼの背面図、（ｂ）は（ａ）の２Ｂ−２Ｂ線断面図。
【図３】膝プロテーゼの大腿部と膝蓋骨プロテーゼとの相互作用を示す説明図。
【図４】本発明に係る膝蓋骨プロテーゼの接触面の平面図。
【図５】図４の長軸に沿った５−５線断面図。
【図６】図４の短軸に沿った６−６線断面図。
【図７】図４の膝蓋骨プロテーゼ接触面の反対側の図（背面図）。

Claims (8)

1. 関節面として二つの顆を有する大腿部と、この大腿部とともに関節をなす脛部と、前記二つの顆の間に形成される溝と滑り係合する膝蓋骨プロテーゼとを備える膝用プロテーゼに用いられる前記膝蓋骨プロテーゼであって、
   前記膝蓋骨プロテーゼは、非円形の外周縁と、前記溝と滑り係合して接触するためにほぼ一定の球に係る半径を持つ接触面とを有し、前記接触面は、前記二つの顆を結ぶ線を短径方向とし前記二つの顆を結ぶ線に対して直角方向を長径方向とする楕円形状を有する、膝蓋骨プロテーゼ。
2. 請求項１に記載の膝蓋骨プロテーゼであって、
   切除した膝蓋骨に固定するため、前記接触面と反対の側から延びる少なくとも一本の柱をさらに備える、膝蓋骨プロテーゼ。
3. 請求項２に記載の膝蓋骨プロテーゼであって、
   前記柱は三本である、膝蓋骨プロテーゼ。
4. 請求項２または３に記載の膝蓋骨プロテーゼであって、
   前記接触面と反対の側は、切除した膝蓋骨に前記膝蓋骨プロテーゼをセメントで固定するためのくり抜き領域を定める、膝蓋骨プロテーゼ。
5. 請求項１〜４のいずれかに記載の膝蓋骨プロテーゼであって、
   前記くり抜き領域は、このくり抜き領域の底面と５０〜７５°の角度をなして延びる壁を持つ張り出しによって一部が区画される、膝蓋骨プロテーゼ。
6. 請求項１〜５に記載の膝蓋骨プロテーゼであって、
   前記接触面は、１９〜７６ｍｍ（０．７５〜３インチ）の球形に係る半径を有する、膝蓋骨プロテーゼ。
7. 請求項１〜６に記載の膝蓋骨プロテーゼであって、
   前記膝蓋骨プロテーゼは、超高分子量ポリエチレンから形成される、膝蓋骨プロテーゼ。
8. 膝用プロテーゼであって、
   関節面として二つの顆を有する大腿部と、
   前記大腿部とともに関節をなす脛部と、
   前記二つの顆の間に形成される溝と滑り係合する、請求項１〜７のいずれかに記載された膝蓋骨プロテーゼとを備える、膝用プロテーゼ。

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