JP3863965B2 - 卵黄低分子ペプチド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、卵黄の不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解して調製した苦味が少なく、かつ、卵黄特有の生臭みやけもの臭などの異味異臭がないなど風味が良好であることを特徴とする卵黄低分子ペプチドおよびその製造法に関する。本発明の卵黄低分子ペプチドは、分子量が6,000以下、平均アミノ酸鎖長が10以下で、耐熱性を有し、腸管からの吸収速度が速く、アミノ酸スコアが良好で栄養性に優れ、かつ低アレルゲン性であることから、手術後の患者や老人用の経口経管流動食、乳幼児や小児用の栄養補給食品、あるいはエネルギ消費の激しいスポーツ選手用の飲料および食品などの必須アミノ酸補給素材として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
ペプチドはペプチド結合によるアミノ酸の重合体の総称であるが、狭義には、一般に重合度100以上のものを蛋白質、それより低重合度のものをペプチドと称されている。一般にペプチドは蛋白質の加水分解で得られ、原料蛋白質として植物由来および動物由来の蛋白質が用いられる。植物由来では、大豆、トウモロコシ、小麦、馬鈴薯などの蛋白質が、また、動物由来では鶏卵、ミルク、魚肉、畜肉、血液などの蛋白質がペプチドの原料として用いられる。
蛋白質を加水分解する方法は酸性あるいはアルカリ性条件下で加熱する方法や蛋白質分解酵素を利用する方法が知られている。蛋白質の酸またはアルカリ加水分解法は、発癌性の疑いがある塩素化合物が生じることや必須アミノ酸の一部が分解されることなどの欠点を有するため、通常、ペプチドの調製には蛋白質分解酵素で分解する方法が利用される。
【0003】
従来、人や動物に摂取された蛋白質は消化管の種々の酵素で、その構成成分であるアミノ酸まで分解され、腸管から吸収されると信じられていた。しかし、近年、ペプチドの腸管からの吸収性が詳しく調べられ、低分子のペプチドが腸管から効率良く吸収されることが見いだされた。特に、2〜10個のアミノ酸からなる低分子ペプチドの吸収速度は、それを構成するアミノ酸混合物より著しく速いことが報告されている(日本栄養・食糧学会誌,47巻195ー201ページ,1994年)。
また、最近、ペプチドの生理機能に関する研究が進み、血圧降下作用、脂質代謝促進作用、免疫増強作用、血中コレステロール低下作用、アルコール吸収阻害作用、鉄およびカルシウム吸収促進作用などの種々の生理機能を有する低分子ペプチドが発見されている。その他、低分子ペプチドは、その原料蛋白質と比較して、溶解性や吸湿性が高まること、加熱凝固性、起泡性、乳化性などの物理的性質が消失すること、およびアレルゲン性が低下することなどが知られている。
【0004】
このように、ペプチドは優れた栄養性機能や種々の生理機能を有し、それらの機能特性が食品、化粧品、医薬品の素材として注目されている。特に、2〜10個のアミノ酸からなる低分子ペプチドは速やかに必須アミノ酸を補給できる栄養素材として注目され、手術後の患者や老人用の経口経管流動食、あるいはエネルギー消費の激しいスポーツ選手用の飲料および食品などへの利用が進められている。また、ペプチドの有する腸管からの吸収に優れる点と低アレルゲン性は乳幼児や小児のアミノ酸補給素材としても注目されている。さらに、ペプチドの生理機能を利用する商品開発が食品分野、化粧品分野、医薬品分野で進められている。
一般的に低分子のペプチドは強い苦味や好ましくない異味異臭を呈するものが多い。ペプチドの苦味の原因は蛋白質分子内に内包されている苦味を有するアミノ酸が加水分解で生じるペプチドの分子表面に露出するためといわれている。また、ペプチドの異味異臭は原料蛋白質に由来するといわれている。従って、ペプチドの苦味や異味異臭は原料蛋白質と加水分解に用いる酵素を選定することによりある程度低減することが可能である。例えば、カゼイン、乳清蛋白質、卵白蛋白質、血液蛋白質などの動物性蛋白質の酵素分解物は苦味が強く、低分子ペプチドの原料蛋白質として好ましくないとされている。一般的に植物由来の蛋白質から得られるペプチドは動物由来の蛋白質からのペプチドより苦味が少ない。また、通常、血液由来の蛋白質はけもの臭を呈し生臭く、それらから得られたペプチドは好ましくない風味を有する。さらに、脱脂大豆や脱脂卵黄粉末などの原料蛋白質中に混在する脂質は、食品加工に使用される蛋白分解酵素剤中に混在するリパーゼやホスホリパーゼ等の脂質分解酵素により分解され、風味に悪影響を与える物質や種々の副産物を生成する。また、ペプチドの苦味低減に関しては、ペプチダーゼ活性の強い蛋白質分解酵素を用いる苦味の少ないペプチドの調製法が知られている。さらに、ペプチドの苦味を低減する方法として、苦味を有するアミノ酸やペプチドを活性炭等で吸着除去する方法が実用化されている。
【0005】
低分子ペプチドをアミノ酸の補給素材として利用する場合、その栄養価は原料蛋白質の必須アミノ酸組成に影響される。すなわち、必須アミノ酸をバランス良く有する栄養価の良好な低分子ペプチドを得るためには、原料蛋白質のアミノ酸スコアーが良好な蛋白質を原料に選ぶ事が重要である。例えば、鶏卵、ミルク、畜肉および大豆の蛋白質はアミノ酸スコアーが100であり栄養価に優れる。特に、鶏卵の蛋白質は、動物実験で種々の蛋白質の栄養価を評価する場合の標準蛋白質として用いられていることからも、その栄養性が最良であると言われている。
鶏卵の蛋白質は、約52%が卵白中に、約48%が卵黄中に存在する。卵白は水分約90%、蛋白質約10%から構成され脂質を含まない。卵白蛋白質は動物性蛋白質の中では風味が良く、低分子ペプチドの原料蛋白質として利用されている。しかし、その低分子ペプチドは苦味が強くアミノ酸の補給素材として最良のものではない。一方、卵黄は水分約50%、蛋白質約15%、脂質約35%から構成され、その蛋白質は卵黄の脂質と結合したリポ蛋白質と水溶性蛋白質(リベチン、ホスビチン等)からなる。卵黄の脂質はすべてリポ蛋白質の型で存在し、遊離の脂質は存在しない。卵黄蛋白質は、ほとんどが脂質と結合したリポ蛋白質であるため、従来、低分子ペプチドの原料蛋白質としては利用されていなかった。しかし、近年、卵黄蛋白質の酵素分解物中にカルシュウム吸収を促進する生理活性が見いだされ、脱脂卵黄粉末を蛋白原料として、これを酵素分解することによりカルシウム吸収促進効果を有する低分子ペプチドの開発が進められている(特開平4−53471、特開平8−256698)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
腸管から速やかに吸収されるペプチドの特性を、必須アミノ酸の補給を目的とする栄養性素材として応用する場合、その平均アミノ酸鎖長が2〜10である低分子ペプチドの利用が望ましい。このような低分子ペプチドは腸管からの吸収が速く、必須アミノ酸を効率よく補給できる栄養素材として注目されている。このような目的で乳蛋白質、大豆蛋白質、卵白蛋白質などを原料とする低分子ペプチドが開発されている。しかし、現状で利用できる低分子ペプチドは、いかなる製法であっても、少なからず苦味を呈し、風味が悪いことから、アミノ酸の補給素材として満足できるものではなかった。
卵黄蛋白質はアミノ酸スコアが100で、食品蛋白質の中でも最も栄養価が高く、酵素による加水分解で苦味の発生が少なく、アミノ酸の補給素材としての低分子ペプチドを得るための原料として最良の蛋白質である。通常、卵黄蛋白質由来ペプチドの調製には脱脂卵黄粉末が原料として利用されている。しかし、脱脂卵黄粉末は特有の生臭みやけもの臭を有し、それを酵素分解して得られる低分子ペプチドは風味が悪く、アミノ酸補給素材としての利用が困難であった。
【0007】
すなわち、脱脂卵黄粉末には卵黄の蛋白質として水不溶性の蛋白質(リポ蛋白質から脂質が除去された蛋白質)と水溶性の蛋白質(リベチン、ホスビチン等)が混在する。卵黄の水溶性蛋白質は親鳥の血清蛋白質が卵黄膜を通過して移行したものであることが知られている。脱脂卵黄粉末を酵素で加水分解して調製した低分子ペプチドは、苦味が少ないが特有の異味異臭を呈し、風味が好ましくない問題点があった。
本発明が解決しようとする課題は、卵黄の不溶性蛋白質由来の低分子ペプチドであって、必須アミノ酸の補給素材として経口経管流動食、スポーツ飲料・食品、乳幼児および小児の栄養補給食品に好ましく利用でき、苦味が少なく風味が良好な低分子ペプチドを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、卵黄低分子ペプチドの風味改善を目的として、種々の検討を行った結果、ペプチドの異味異臭が卵黄の水溶性蛋白質に由来することを見いだした。すなわち、脱脂卵黄粉末をその固形分の5重量倍以上の水で洗浄して水溶性の卵黄蛋白質を実質的に除去し調製される卵黄の不溶性蛋白質を酵素で加水分解して得られる低分子ペプチドは、脱脂卵黄粉末から得られる低分子ペプチドより、苦味が格段に少なくかつ特有の異味異臭がないことを見いだした。
さらに、卵黄の不溶性蛋白質を酵素で加水分解して調製した、分子量が6,000以下で平均アミノ酸鎖長が10以下の低分子ペプチドは腸管からの吸収速度が速いこと、脱脂卵黄粉末と同等のアミノ酸スコアーと蛋白質効率を有すこと、アレルゲン性が脱脂卵黄蛋白質の少なくとも100分の1以下に低減されていることを見いだし本発明を完成した。
すなわち、本発明は卵黄の不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解して得られる卵黄低分子ペプチドおよびその製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の卵黄の不溶性蛋白質は、脱脂卵黄粉末を水洗して水溶性の卵黄蛋白質を除去することにより得られる。脱脂卵黄粉末を得る方法は、特に限定はされないが、原料となる卵黄は、生卵黄液、冷凍卵黄液、粉末卵黄などいずれの形態であっても良いが、生卵黄液や冷凍卵黄液などの液状の原料は、噴霧乾燥や凍結乾燥で水分を乾燥させて粉末化する方が脂質抽出効率が良好となるため好ましい。また脱脂の方法は通常、脂質抽出溶剤として用いられるエタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、エテール等から選ばれる1種または2種以上の有機溶剤で卵黄中の脂質成分を抽出除去する方法、あるいは有機溶剤で脂質抽出を行った後、さらに、その残渣中の脂質と有機溶剤を超臨界炭酸ガスで抽出除去する方法が用いられる。脱脂の程度としては、卵黄脂質の90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上抽出除去して得られた脱脂卵黄粉末が後工程の水洗を行う上で好ましい。卵黄脂質が10%より多く残存する脱脂卵黄粉末は水洗工程で、乳化液となり、ろ過が困難となるばかりでなく、得られたペプチドの保存安定性を悪くするため好ましくない。
【0010】
卵黄の不溶性蛋白質は卵黄粉末より卵黄脂質を有機溶剤で抽出した後、得られた脱脂卵黄粉末を水洗して、残存する有機溶剤および卵黄の水溶性蛋白質を除去して得ることができる。また、卵黄脂質を脱脂する方法として、有機溶剤と超臨界炭酸ガスを用いる方法も選択できる。
脱脂卵黄の水洗に用いる水は、蛋白質重量の5重量倍以上、さらに好ましくは10重量倍以上の水が必要で、水を加え、撹拌後、不溶物をろ過で回収することにより卵黄の不溶性蛋白質が得られる。
脱脂卵黄粉末と水洗後の脱脂卵黄粉末を還元剤(2ーメルカプトエタノール)存在下のSDSポリアクリルアミド電気泳動法で分析し、水溶性蛋白質の主要成分である卵黄抗体蛋白質を指標に水溶性蛋白質の除去率を調べた。その結果、5重量倍の水洗では卵黄水溶性蛋白質の約90%が、また10重量倍の水洗では卵黄水溶性蛋白質の約95%が除去された。水洗工程で加水量が5重量倍より少ないと、脱脂卵黄粉末中の水溶性蛋白質の除去が十分に行えず、この場合、そのろ過残渣を酵素分解して調製した低分子ペプチドは官能検査で異味異臭を感じるものであった。
【0011】
本発明でいう蛋白分解酵素とは、植物、動物または細菌由来の蛋白質分解酵素を指し、蛋白質分解活性の至適pH(最大活性を示すpH)により分類された、いわゆる、酸性蛋白質分解酵素、中性蛋白質分解酵素、アルカリ性蛋白質分解酵素のいずれであってもよい。たとえば、酸性蛋白分解酵素を含むものとしては、アスペルギルス属由来のプロテアーゼM(天野製薬)やオリエンターゼ20A(阪急バイオインダストリー)、リゾップス属由来のニューラーゼF(天野製薬)、中性蛋白分解酵素としては、バシルス属由来のオリエンターゼ90Nやオリエンターゼ10NL(阪急バイオインダストリー)、プロテアーゼN(天野製薬)、プロチンPやサモアーゼ(大和化成)、アルカラーゼ(ノボ)、アスペルギルス属由来のプロテアーゼAやプロテアーゼP(天野製薬)、フレーバーザイム(ノボ)、動物臓器由来のパンクレアチン、植物由来のパパイン、アルカリ性蛋白分解酵素としては、バシルス属由来のオリエンターゼ22BF、オリエンターゼ5BL(阪急バイオインダストリー)、プロレザー(天野製薬)など、市販の蛋白分解酵素製剤の1種もしくは2種以上を用いてもよい。通常、食品用の蛋白質分解酵素として市販されているものは、安価に製造ができる微生物由来の蛋白質分解酵素であるため、経済的であり、それらの利用が好ましい。また、蛋白質分解酵素のなかでもペプチダーゼ活性が高いほど苦味の発生が少なく、ペプチドの苦味を低減する目的では好ましい。
【0012】
本発明の卵黄低分子ペプチドを得るための酵素処理条件は、分子量が6,000以下で平均アミノ酸鎖長が10以下であるペプチドが得られる条件であれば、特に限定されるものではなく、使用する蛋白質分解酵素の至適pHや至適温度で酵素反応をおこなえばよい。尚、酵素添加量、反応時間、酵素失活条件は用いる酵素の力価や活性の安定性により異なり、限定するものではないが、一般的な酵素処理条件、例えば原料蛋白質の0.5〜5重量%の酵素量で、4時間から24時間酵素反応を行った後、必要があればpHを中性(pH6〜8)に調製し、その酵素分解液から遠心分離あるいはろ過助材を用いたろ過により不溶物を除去し、上清あるいはろ過液として得られる透明なペプチド液を90℃で10分間以上加熱し、酵素の失活を行うことで、本発明の卵黄低分子ペプチドが得られる。
本発明の卵黄低分子ペプチドは目的に応じ、液または粉末の形態で使用される。尚、卵黄低分子ペプチドの粉末は凍結乾燥あるいは噴霧乾燥など、通常の方法により粉末化できる。本発明の卵黄低分子ペプチドは耐熱性を有する。耐熱性とは卵黄低分子ペプチド溶液を、あるいは卵黄低分子ペプチドの粉末を水に1〜10重量%に溶解して調製した、卵黄低分子ペプチド液を100℃または120℃で10分間加熱処理した場合に加熱凝集物を生ずることなく透明性を保持することで確認できる。
【0013】
また、本発明の卵黄低分子ペプチドは分子量が6,000以下で平均アミノ酸鎖長として10以下のペプチドである。また、本発明の卵黄低分子ペプチドはアミノ酸スコアーが少なくとも95以上で、必須アミノ酸をバランス良く含み、アミノ酸供給源として腸管からの吸収性が良好なペプチドである。
分子量の測定はゲルろ過法やSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)存在下でのポリアクリルアミド電気泳動法で、分子量既知の蛋白質、たとえばインシュリン(分子量6,000)や卵白リゾチーム(分子量14,400)等と比較することにより測定することができる。ペプチドの平均アミノ酸鎖長とはペプチドの大きさを表す指標で、ペプチドを塩酸加水分解して構成アミノ酸にした場合のアミノ基量を、そのペプチドのアミノ基量で除した値である。通常、アミノ基の測定はホルモール滴定法、TNBS発色法、またはニンヒドリン発色法等で測定することができる。また、アミノ酸スコアーは、通常の方法で分析したペプチドのアミノ酸組成と国連食糧農業機構/世界保健機構/国連大学が1985年に設定した2−5歳の必須アミノ酸基準値を比較して算出される。
なお、本発明の卵黄低分子ペプチドは必要に応じ精製することができる。例えば、酵素分解液に活性炭などの吸着剤を添加し脱色処理する工程や、電気透析などで脱塩処理をする工程を組み合わせる等、公知の方法が適用できる。以下実施例、試験例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0014】
【実施例】
実施例1 卵黄不溶性蛋白質の調製
卵黄粉末10Kgに95%エタノール50Kgを加え、室温で2時間撹拌した後、濾紙を用いた減圧下ろ過で残渣を回収した。残渣を超臨界抽出装置に充填し、圧力300Kg、温度40℃、6時間の条件で超臨界炭酸ガスを用いて残渣中の卵黄脂質とエタノールを抽出除去し脱脂卵黄粉末4.5Kg(蛋白質83%)を得た。これに水20Kgを加え、均質化した後、濾布を用いた加圧ろ過で不溶物を回収し、凍結乾燥して卵黄不溶性蛋白質3.2Kgを得た。得られた卵黄不溶性蛋白質は乾燥減量(110℃、3時間)6%、蛋白質(ケルダール法)89%、脂質(ソックスレー法)0.2%であった。
【0015】
実施例2 アルカリ性蛋白分解酵素による卵黄低分子ペプチドの調製
実施例1で得られた卵黄不溶性蛋白質100g(蛋白質重量として)に水を加え重量を1Kgとしホモミキサーで懸濁液とした。懸濁液に3N水酸化ナトリウム溶液を加えpHを10±0.2に調整した。バシルス属由来のアルカリ性蛋白分解酵素(プロレザー:天野製薬製)3gを水30gに溶解し、卵黄不溶性蛋白質の懸濁液に添加した。酵素反応は60℃で行い、8時間までは2時間毎に反応液のpHを10±0.2に再調整した。酵素反応開始から8時間後に反応液に3N塩酸を加えてpHを7±0.2に調製し、遠心分離(10,000 x gで30分間)により上清液を回収した。上清液を90℃で10分間加熱して酵素の失活を行った後、凍結乾燥し、卵黄低分子ペプチド粉末70.5gを得た。得られた卵黄低分子ペプチド粉末は水に透明に溶解し、100℃で10分間の加熱処理でも凝集物を生じなかった。また、その分子量は6,000以下で、平均アミノ酸鎖長は3.8であった。
【0016】
実施例3 中性蛋白分解酵素による卵黄低分子ペプチドの調製
実施例1で得られた卵黄不溶性蛋白質100g(蛋白質重量として)に水を加え重量を1Kgとしホモミキサーで懸濁液とした。懸濁液に3N水酸化ナトリウム溶液を加えpHを7±0.2に調整した。アスペルギルス属由来の中性蛋白分解酵素(オリエンターゼONS:阪急バイオインダストリー製)3gを水30gに溶解し、卵黄不溶性蛋白質の懸濁液に添加した。酵素反応は50℃で行い、8時間までは2時間毎に反応液のpHを7±0.2に再調整した。酵素反応開始から8時間後に反応液に3N水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを7±0.2に調製し、遠心分離(10,000 x gで30分間)により上清液を回収した。上清液を90℃で10分間加熱して酵素の失活を行った後、凍結乾燥し、卵黄低分子ペプチド粉末73.8gを得た。得られた卵黄低分子ペプチド粉末は水に透明に溶解し、100℃で10分間の加熱処理でも凝集物を生じなかった。また、その分子量は6,000以下で、平均アミノ酸鎖長は5.9であった。
【0017】
実施例4 酸性蛋白分解酵素による卵黄低分子ペプチドの調製
実施例1で得られた卵黄不溶性蛋白質100g(蛋白質重量として)に水を加え重量を1Kgとしホモミキサーで懸濁液とした。懸濁液に3N塩酸を加えpHを4±0.2に調整した。リゾップス属由来の酸性蛋白分解酵素(ニューラーゼF:天野製薬製)3gを水30gに溶解し、卵黄不溶性蛋白質の懸濁液に添加した。酵素反応は50℃で行い、8時間までは2時間毎に反応液のpHを4±0.2に再調整した。酵素反応開始から8時間後に反応液に3N水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを7±0.2に調製し、遠心分離(10,000 x gで30分間)により上清液を回収した。上清液を90℃で10分間加熱して酵素の失活を行った後、凍結乾燥し、卵黄低分子ペプチド粉末70.3gを得た。得られた卵黄低分子ペプチド粉末は水に透明に溶解し、100℃で10分間の加熱処理でも凝集物を生じなかった。また、その分子量は6,000以下で、平均アミノ酸鎖長は6.1であった。
【0018】
実施例5 卵黄不溶性蛋白質の調製
卵黄粉末100Kgに95%エタノール800Kgを混合し、40℃で1時間脂質の抽出を行った。その後、濾布を用いた加圧ろ過で残渣を回収した。残渣にさらに95%エタノール800Kgを混合し、40℃で1時間脂質の抽出を行った後、濾布を用いた加圧ろ過で残渣113Kg(蛋白質38%)を回収した。回収した残渣を減圧乾燥し、脱脂卵黄粉末40Kg(蛋白質80%)を得た。これに水320Kgを加え均質化後、濾布を用いた加圧ろ過で不溶物を回収し、これを減圧乾燥することにより卵黄不溶性蛋白質26Kgを調製した。得られた卵黄不溶性蛋白質は乾燥減量(110℃、3時間)7.4%、蛋白質(ケルダール法)89.8%、脂質(酸分解法)2.0%であった。
【0019】
実施例6 アルカリ性蛋白分解酵素による卵黄低分子ペプチドの調製
実施例5の卵黄不溶性蛋白質100g(蛋白質重量として)に水を加え総重量を500gとした後、90℃で30分間の加熱処理した。次いで60℃に冷却し、水酸化ナトリウムを加え、pHを10±0.2に調製した。この懸濁液にバシルス属由来のアルカリ性蛋白質分解酵素(オリエンターゼ22BF:阪急バイオインダストリー製)4gを添加し、60℃で16時間の酵素反応を行った。反応液に6N塩酸を加え、pHを7±0.2に調製した後、ろ過助材を用いた加圧ろ過を行い、その濾液を90℃で20分間加熱して、酵素の失活と殺菌を行った。その後、凍結乾燥を行い卵黄低分子ペプチド粉末87gを得た。得られた卵黄低分子ペプチド粉末は水に透明に溶解し、100℃で10分間の加熱処理でも凝集物を生じなかった。また、その分子量は6,000以下で、平均アミノ酸鎖長は4.2であった。
【0020】
実施例7 中性蛋白分解酵素による卵黄低分子ペプチドの調製
実施例5の卵黄不溶性蛋白質100g(蛋白質重量として)に水を加え総重量を500gとした後、90℃で30分間の加熱処理した。次いで50℃に冷却し、水酸化ナトリウムを加えpHを7±0.2に調製した。この懸濁液にバシルス属由来の中性蛋白質分解酵素(プロテアーゼN:天野製薬製)4gを加え、50℃で18時間の酵素反応を行った。次いで、反応液に水酸化ナトリウムを加え、pHを7±0.2に調製した後、ろ過助材を用いた加圧ろ過を行い、その濾液を90℃で20分間加熱して、酵素の失活と殺菌を行った。その後、凍結乾燥を行い卵黄低分子ペプチド粉末78gを得た。得られた卵黄低分子ペプチド粉末は水に透明に溶解し、100℃で10分間の加熱処理でも凝集物を生じなかった。また、その分子量は6,000以下で、平均アミノ酸鎖長は7.3であった。
【0021】
実施例8 酸性蛋白分解酵素による卵黄低分子ペプチドの調製
実施例5の卵黄不溶性蛋白質100g(蛋白質重量として)に水を加え総重量を500gとした後、90℃で30分間の加熱処理した。次いで50℃に冷却し、6N塩酸を加えて、pHを3±0.2に調製した。この懸濁液にアスペルギルス属由来の酸性蛋白質分解酵素(オリエンターゼ20A:阪急バイオインダストリー製)4gを添加し、50℃で18時間の酵素反応を行った。次いで、反応液に水酸化ナトリウムを加え、pHを7±0.2に調製した後、ろ過助材を用いた加圧ろ過を行い、その濾液を90℃で20分間加熱して、酵素の失活と殺菌を行った。その後、凍結乾燥を行い卵黄低分子ペプチド粉末79gを得た。得られた卵黄低分子ペプチド粉末は水に透明に溶解し、100℃で10分間の加熱処理でも凝集物を生じなかった。また、その分子量は6,000以下で、平均アミノ酸鎖長は3.0であった。
【0022】
実施例9
実施例5の卵黄不溶性蛋白質10Kg(蛋白質として)に水を加え総重量を100Kgとして、90℃で30分間、加熱処理した。次いで60℃に冷却し、水酸化ナトリウム89gと水酸化カリウム89gを加え、pHを10±0.2に調製した。この懸濁液にバシルス属由来のアルカリ性蛋白質分解酵素90gを添加し、60℃で2時間の酵素反応を行った。次いで、反応液に水酸化ナトリウム61gと水酸化カリウム61gを加え、pHを7.5±0.2に調製した後、バシルス属由来の中性蛋白質分解酵素180gを添加し、60℃で4時間の酵素反応を行った。この反応液の温度を40℃にして、防腐の目的で95%エタノール23Kgを添加し、さらにアスペルギルス属の中性蛋白質分解酵素180gを加え、pH7±0.2で14時間の酵素反応を行った。酵素分解後の反応液はろ過助剤を添加し加圧ろ過して、ろ過液45Kgを得た。次に、ろ過液に粉末活性炭400gを懸濁させ、20℃で2時間、撹拌した後、さらにろ過助剤を添加し加圧ろ過で卵黄低分子ペプチド液43Kgを得た。卵黄低分子ペプチド液を加熱し、90℃で10分間、酵素失活と殺菌を行った後、噴霧乾燥機で粉末化することにより卵黄低分子ペプチド粉末8.5Kgを得た。得られた卵黄低分子ペプチド粉末は水に透明に溶解し、100℃で10分間の加熱処理でも凝集物を生じなかった。また、その分子量は6,000以下で、平均アミノ酸鎖長は2.3であった。
【0023】
実施例10
実施例5と同様の方法で卵黄粉末を原料として、エタノールを用いる脱脂操作を行った。その残渣を5倍重量の水に懸濁し撹拌した後、加圧ろ過で残渣を回収した。この水洗操作を2回繰り返した後、回収した卵黄の不溶性蛋白質265Kgに水275Kgを加え、均質化した。次いで、90℃で20分間、加熱処理した後、60℃に冷却し、水酸化ナトリウム890gと水酸化カリウム890gを加え、pHを10±0.2に調製した。この懸濁液にバシルス属由来のアルカリ蛋白質分解酵素900gを添加し、60℃で2時間の酵素反応を行った。次いで、反応液に水酸化ナトリウム610gと水酸化カリウム610gを加え、pHを7.5±0.2に調製した後、バシルス属由来の中性蛋白質分解酵素1.8Kgを添加し、60℃で4時間の酵素反応を行った。この反応液の温度を40℃にして、防腐の目的で95%エタノール30Kgを添加し、さらにアスペルギルス属の中性蛋白質分解酵素1.8Kgを加え、pH7±0.2で14時間の酵素反応を行った。酵素分解後の反応液はろ過助剤を添加し加圧ろ過して、ろ過液450Kgを得た。次に、ろ過液に粉末活性炭4Kgを懸濁させ、20℃で2時間、撹拌した後、さらにろ過助剤を添加し加圧ろ過で卵黄低分子ペプチド液425Kgを得た。卵黄低分子ペプチド液を加熱し、90℃で10分間、酵素失活と殺菌を行った後、噴霧乾燥機で粉末化することにより卵黄低分子ペプチド粉末35Kgを得た。得られた卵黄低分子ペプチド粉末は水に透明に溶解し、100℃で10分間の加熱処理でも凝集物を生じなかった。また、その分子量は6,000以下で、平均アミノ酸鎖長は3.4であった。
【0024】
試験例1 脱脂卵黄粉末の水洗による水溶性蛋白質除去効果
実施例1および実施例5で調製した脱脂卵黄粉末に蛋白質重量あたり3、5、10、20重量倍の水を加え、ホモミキサーで均質化した後、加圧ろ過で卵黄の不溶性蛋白質を回収した。それぞれの不溶性蛋白質ともとの脱脂卵黄粉末を試料として、還元剤(2メルカプトエタノール)とドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在化でポリアクリルアミド電気泳動を行った。ゲルの染色はクマシーブリリアントブルーR250で行った。各試料の構成蛋白質バンドをデンシトメーターで測定し、卵黄水溶性蛋白質の主要成分である卵黄抗体の重鎖(分子量約65,000)を指標にして水洗による水溶性蛋白質除去効果を調べた。その結果、脱脂卵黄粉末中の水溶性蛋白質は3重量倍の水洗で約75%が、5重量倍の水洗で約90%が、10重量倍の水洗で約95%が、20重量倍の水洗で約99%が除去された。
【0025】
試験例2 卵黄低分子ペプチドの試作と風味および苦味の比較
試験例1で得られた水洗の程度が異なる卵黄の不溶性蛋白質とそれぞれの水洗前の脱脂卵黄粉末を原料として、実施例2−4および実施例6−8に示す酵素分解条件で卵黄低分子ペプチド粉末を調製した。それぞれのペプチド粉末を水に溶解して5重量%のペプチド液を調製し、それぞれの風味および苦味を比較した。風味の比較結果を表1に、また、苦味の比較結果を表2に示す。アルカリ性、中性、酸性のいずれの酵素分解条件であっても、脱脂卵黄粉末由来の低分子ペプチドの生臭さやけもの臭といった異味異臭は、あらかじめ脱脂卵黄粉末を蛋白質重量に対して5重量倍以上の水で水洗することにより消失した。3重量倍の水洗ではそのような効果は得られなかった。また、苦味については、脱脂卵黄粉末を水洗することにより消失する傾向があった。さらに、酵素分解条件ではアルカリ性の酵素分解条件で調製した低分子ペプチドの苦味が少ない傾向があった。
【0026】
【表1】
Figure 0003863965
【0027】
【表2】
Figure 0003863965
【0028】
試験例3 分子量の測定
実施例2〜4、6〜10で調製した卵黄低分子ペプチドの分子量の推定をファルマシア社製全自動水平型電気泳動システム(ファストシステム)を用いて行った。ゲルはペプチド用のハイデンシティーゲルを用い、SDS−PAGE系で、ヒトインシュリン(分子量6,000)をマーカーとして、各サンプルの泳動を行った。染色はクマシー染色法で行った。全ての操作条件はファストシステムのマニュアルに従った。泳動の結果、卵黄低分子ペプチドの示すバンドはいずれもヒトインシュリンの示すバンドより下部に現れ、少なくとも分子量6,000以下であると判断した。
【0029】
試験例4 腸管吸収性の試験
実施例1〜4で調製した脱脂卵黄粉末および卵黄低分子ペプチドを用いて、ラットに経口投与した場合の腸管からの吸収性を調べた。実験動物は体重約100gの4週齢SD系雄ラット(日本クレア社)を用いた。脱脂卵黄粉末および各卵黄低分子ペプチドの窒素含量をケルダール法で測定し、その値に6.25を乗じて蛋白質含量とした。各試料を生理食塩水に懸濁あるいは溶解し、蛋白質濃度0.1g/mlに調製し試料溶液とした。ラットは一夜絶食させた後、試料溶液1mlを胃ゾンデ針でラットの胃内に強制経口投与した。尚、試料溶液の対照としては生理食塩水を1ml経口投与した。1試料に対して3匹のラットを用いた。投与5分後にラットをエーテル吸引麻酔し、腹部切開で門脈より約1ml採血し、ヘパリンを添加した試験管に採取した。以上の採血操作は2分以内に行った。門脈血を遠心分離(3,000rpm,20 分,室温)で血漿を分離した。血漿0.1mlに2%スルホサリチル酸2mlを混合し蛋白質を凝集させ、遠心分離(3,000rpm, 20分,5℃)で上清液を回収した。上清液をポアーサイズ0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、その通過液を試料としてニンヒドリン法で遊離アミノ酸量を測定した。尚、ニンヒドリン法で、アミノ酸の標準物質としてはロイシンを用い、各血漿中の遊離アミノ酸量(3匹の平均値)をロイシン相当量として表した。結果を表3に示す。腸管吸収性を経口投与後5−7分に採取したラット門脈血の血漿中遊離アミノ酸濃度で比較した結果、いずれの卵黄低分子ペプチドも、脱脂卵黄粉末と比較して約2倍以上腸管吸収性が優れていた。
【0030】
【表3】
Figure 0003863965
【0031】
試験例5 組成分析およびアミノ酸分析
実施例9、10で調製した卵黄低分子ペプチド及び実施例5の脱脂卵黄粉末の組成分析およびアミノ酸分析を行った。結果を表4、5に示す。脱脂卵黄粉末を平均アミノ酸鎖長が2.3のペプチドになるまで酵素分解しても、そのアミノ酸組成については脱脂卵黄粉末および卵黄低分子ペプチドとも大きな差が認められず、アミノ酸スコアーは100であった。このことより、卵黄低分子ペプチドはアミノ酸スコアーが100である良質な栄養素材であることが示された。
【0032】
【表4】
Figure 0003863965
【0033】
【表5】
Figure 0003863965
【0034】
試験例6 蛋白質効率試験
ウイスター系の雄ラット(3週齢、日本クレア社)を実験動物として用い、実施例5の脱脂卵黄粉末および実施例9の卵黄低分子ペプチドを窒素源として蛋白質効率試験を行った。尚、対照としてはカゼインおよびカゼインペプチドを窒素源として用いた。カゼインペプチドはカゼインを原料蛋白質として用い、実施例9と同様の方法で調製した。
飼料は100g中、窒素1.6g、脂質(ダイス脂質)8.0g、糖質72g(アルファーコーンスターチ)、ミネラル混合物3.5g、ビタミン混合物1.0gおよび繊維5.0g(セルロース)の組成に調製した。
【0035】
ラットを5日間の予備飼育した後、平均体重が等しくなるように各群10匹ずつ、脱脂卵黄粉末、卵黄低分子ペプチド、カゼイン、およびカゼインペプチド群にわけ、28日間、各粉末飼料で本飼育を行った。本飼育期間中、毎日、飼摂取量および体重を測定した。なお、ラットは明暗12時間ごと、室温24±2℃、湿度55±10%の環境で、ステンレスケージに1匹ずつ飼育した。飼料と水は自由摂取で行った。本試験終了後、全飼料摂取量および最終体重を測定し、摂取蛋白質量あたりの体重増加量より蛋白質効率(PER)を算出した結果、脱脂卵黄粉末のPERは3.64±0.17、卵黄低分子ペプチドは3.63±0.2であった。また、カゼインとカゼインペプチドのPERは、それぞれ3.20±0.11および2.8±0.24であった。
一般的に蛋白質の栄養価を判断する基準として、PER実測値が3.5以上が極めて良質、3.5未満から3.0以上が良質、3.0未満から2.0以上が普通、2.0以下が列質とされている。この評価基準から、脱脂卵黄粉末と卵黄低分子ペプチドは極めて良質、カゼインは良質、カゼインペプチドは普通の栄養価であることが示された。
【0036】
試験例7 アレルゲン性の評価試験
試料として実施例1の脱脂卵黄粉末、実施例9、10の卵黄低分子ペプチドを用い、RAST阻害テストでそれぞれのアレルゲン性を比較した。RAST用のディスクはファルマシア社製の卵黄蛋白質共有結合濾紙を用いた。卵黄に対してアレルギー性を示す小児10人の血清をプール血清とした。PBS-Tween に各試料を1,10,100,1000μg/ml濃度に溶解し試験溶液とした。1枚の卵黄蛋白質共有結合濾紙に対して、プール血清25ulと濃度の異なるそれぞれの試験溶液25ulを加え、試験管中、室温で18時間放置し、ディスク上の卵黄蛋白質と試験溶液中の試料に対してプール血清中の抗卵黄蛋白質IgEを競合結合させた。尚、コントロールは試験溶液の代わりにPBS-Tween を用いた。その後、ディスクをPBS-Tween で充分洗浄し、それに、ラジオアイソトープ化した抗人IgEうさぎIgG溶液20μlとPBS-Tween30μl を加え、室温で6時間反応させた。ディスクをPBS-Tween で充分洗浄した後、ディスク上の卵黄蛋白質に結合したIgEを1分間あたりのラジオアイソトープカウント(cpm)として測定し、コントロールのディスクが示すcpmを100%として、その値を50%阻害する、各試料濃度を計算した。その結果、脱脂卵黄粉末は10μg/mlで50%阻害が起こったが、いずれの卵黄低分子ペプチドともに、1000μg/ml濃度でも阻害が全く起こらなかった。以上の結果より、それぞれの卵黄低分子ペプチドのアレルゲン性は、脱脂卵黄粉末のそれと比較して、少なくとも100分の1以下であることが示された。
【0037】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下のとおりである。
(1)卵黄の不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解して得られる卵黄低分子ペプチド。
(2)卵黄の不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解して得られる、熱耐性を有し、栄養性に優れ、低アレルゲン性でかつ苦味が少なく風味が良好であることを特徴とする卵黄低分子ペプチド。
(3)卵黄の不溶性蛋白質がエタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、エーテルの1種または2種以上の有機溶剤で脱脂後、水洗し、卵黄の水溶性蛋白質が少なくとも90%以上除去された卵黄蛋白質である1)および2)記載の卵黄低分子ペプチド。
(4)卵黄の不溶性蛋白質がエタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、エーテルの1種または2種以上の有機溶剤で脱脂後、水洗し、卵黄の水溶性蛋白質が少なくとも95%以上除去された卵黄蛋白質である1)および2)記載の卵黄低分子ペプチド。
【0038】
(5)卵黄の不溶性蛋白質がエタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、エーテルの1種または2種以上の有機溶剤で脱脂後、超臨界炭酸ガス流体で脱脂後、水洗し、卵黄の水溶性蛋白質が少なくとも90%以上除去された卵黄蛋白質である(1)および(2)記載の卵黄低分子ペプチド。
(6)蛋白質分解酵素が微生物の産生するアルカリ性pHに至適pHを有する蛋白質分解酵素である(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
(7)蛋白質分解酵素が微生物の産生する中性pHに至適pHを有する蛋白質分解酵素である(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
(8)蛋白質分解酵素が微生物の産生する酸性pHに至適pHを有する蛋白質分解酵素である(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
(9)蛋白質分解酵素がバシルス属の産生する酵素で、その至適pHがアルカリ性、中性および酸性である1種または2種以上の蛋白質分解酵素である(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
【0039】
(10)蛋白質分解酵素がアスペルギルス属の産生する酵素で、その至適pHがアルカリ性、中性および酸性である1種または2種以上の蛋白質分解酵素である(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
(11)蛋白質分解酵素がリゾップス属の産生する酵素で、その至適pHがアルカリ性、中性および酸性である1種または2種以上の蛋白質分解酵素である(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
(12)蛋白質分解酵素がパンクレアチンである(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
(13)蛋白質分解酵素がパパインである(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
(14)蛋白質分解酵素がバシルス属の産生するアルカリ性および中性蛋白質分解酵素およびアスペルギルス属の産生する中性蛋白質分解酵素の1種または2種以上をである(1)〜(5)記載の卵黄低分子ペプチド。
【0040】
(15)耐熱性が5重量%のペプチド水溶液を100℃で10分間加熱しても加熱凝集物の生成がなく透明溶液である(1)〜(14)記載の卵黄低分子ペプチド。
(16)耐熱性が5重量%のペプチド水溶液を120℃で10分間加熱しても加熱凝集物の生成がなく透明溶液である(1)〜(14)記載の卵黄低分子ペプチド。
(17)ペプチドのアミノ酸スコアーが95以上である(1)〜(16)記載の卵黄低分子ペプチド。
(18)ペプチドのアミノ酸スコアーが100である(1)〜(16)記載の卵黄低分子ペプチド。
(19)アレルゲン性が卵黄蛋白質の100分の1以下である(1)〜(18)記載の卵黄低分子ペプチド。
【0041】
(20)アレルゲン性が卵黄蛋白質の1,000分の1以下である1)〜18)記載の卵黄低分子ペプチド。
(21)分子量が6,000以下で、平均アミノ酸鎖長が10以下である(1)〜(20)記載の卵黄低分子ペプチド。
(22)脱脂卵黄の蛋白質の内、水溶性蛋白質が少なくとも90%以上除去された卵黄不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解することにより低分子ペプチドを得る卵黄低分子ペプチドの製造方法。
(23)脱脂卵黄の蛋白質の内、水溶性蛋白質が少なくとも95%以上除去された卵黄不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解することにより低分子ペプチドを得る卵黄低分子ペプチドの製造方法。
(24)脱脂卵黄の蛋白質の内、水溶性蛋白質が少なくとも99%以上除去された卵黄不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解することにより低分子ペプチドを得る卵黄低分子ペプチドの製造方法。
【0042】
(25)脱脂卵黄の蛋白質に対して5重量倍以上の水を加え、撹拌後、ろ過して回収した卵黄の不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解することにより苦味が少なく風味が良好である低分子ペプチドを得る卵黄低分子ペプチドの製造方法。
(26)脱脂卵黄の蛋白質に対して10重量倍以上の水を加え、撹拌後、ろ過して回収した卵黄の不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解することにより苦味が少なく風味が良好である低分子ペプチドを得る卵黄低分子ペプチドの製造方法。
【0043】
【発明の効果】
本発明の卵黄低分子ペプチドは苦味が極めて少なく風味が良好であることを特徴とする低分子ペプチドである。本発明の卵黄低分子ペプチドは耐熱性を有し、栄養価に優れ、低アレルゲン性でかつその分子量を約6,000以下で、平均アミノ酸鎖長を10以下に調製しているため、経口摂取後、腸管からの吸収が極めて速い特徴を有する。また、そのペプチド溶液は100℃、あるいは120℃の加熱条件でも加熱凝集が無く、溶液は透明性を維持する。また、本発明のペプチドは卵黄蛋白質のアレルゲン性が100分の1以下に低減されている。さらに、その栄養価は原料の卵黄蛋白質と同等であり、アミノ酸スコアーは95−100である。
従って、本発明の卵黄低分子ペプチドは速やかに必須アミノ酸を補給できる栄養素材として、手術後の患者や老人用の経口経管流動食、あるいはエネルギー消費の激しいスポーツ選手用の飲料および食品などへ利用することができる。さらに、本発明の卵黄低分子ペプチドは腸管からの吸収に優れ、またアレルゲン性で低減されているため、乳幼児や小児の栄養補給素材としても利用できる。

Claims (2)

  1. 脱脂卵黄粉末を水洗し、残存する有機溶剤および卵黄の水溶性蛋白質を除去して得られる脱脂卵黄の水不溶性蛋白質を、蛋白質分解酵素で加水分解して得られる卵黄低分子ペプチド。
  2. 脱脂卵黄の蛋白質の内、水溶性蛋白質が少なくとも90%以上除去された卵黄水不溶性蛋白質を蛋白質分解酵素で加水分解することを特徴とする卵黄低分子ペプチドの製造方法。
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