JP3855847B2 - 水中音源 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソーナーや水中通信を行うための水中音源に関し、特に指向性の鋭い低周波の音波を放射することによって、遠距離水中通信や海底埋設物の探知および識別などを行うのに好適な水中音源に関する。
【0002】
【従来の技術】
遠距離水中通信や海底埋設物の探知および識別などを行うための水中音源では、通常、減衰の小さい低周波の音波が用いられる。しかし、指向性の鋭い低周波の音波を送波するには、必然的に音源の開口長を大きくする必要がある。音源の大型化にしたがって音源の重量も増大するため、このような水中音源を水中航走体などに実装することは困難であった。
【0003】
特開平5−223923号公報では、海底埋設物の検出を行うために、鋭い指向性を有する低周波の音波を、開口長の小さな音源で送波することが可能な、パラメトリック音源を利用する技術が開示されている。パラメトリック音源は、周波数が高く指向性に優れる一次波のエネルギの一部が、海水の非線形音響伝播により二次波の成分である差周波数成分に移り、差周波数成分に関して仮想的なエンドファイアアレイが形成されたのと等価になる効果を利用した音源である。
【0004】
ところが、パラメトリック音源は送信する一次音波から変換される二次の音波へのエネルギの変換効率が、高くとも百分の一程度であるため、その変換効率の改善が望まれる。
【0005】
パラメトリック音源の一次波から二次波へのエネルギ変換効率を高めるために、気泡の非線形振動を利用することが考えられる。「日本音響学会誌、46巻8号、p.622〜p.626、1990年」に述べられているように、気泡振動による非線形性の大きさは音響媒質によって決定される非線形パラメータと等価なものとして考えることができる。通常、海水の非線形パラメータは3.6程度であるが、気泡を含有している領域では、等価的に非線形パラメータが数百から数千の大きさになる。
【0006】
このような気泡の効果を利用した水中音源として、日本国特許第2911258号公報には、気泡群の非線形振動を利用した水中用パラメトリック低周波音源が開示されている。これは、気泡群を含有したウレタン樹脂やシリコン樹脂材料からなる二次波生成層を、送波器からの放射音波の伝搬経路に配置し、水の音響非線形性から生成される二次波だけでなく、気泡の非線形振動によって二次波を生成し、一次波から二次波へのエネルギ変換効率を向上させるものである。
【0007】
また、特開平7−203579号公報では、パラメトリック効果を利用した送波器の前方に多数の微細気泡を直接吐出、あるいは微細気泡の混入した水を送波器前方に吐出させることによって、送波器前方に一様な気泡領域を形成し、水中音場の音響非線形効果を大きくして、二次波差音への変換効率を増大させた水中音源装置が考案されている。この水中音源装置では、音波の非線形効果により二次流が発生し、気泡が送波器から遠くまで拡散されるので、二次波の発生する領域を長くすることが可能であるとされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、気泡の非線形振動を用いることで、非線形パラメータが等価的に数百から数千という大きな値になるため、気泡群を含んだ領域では一次波から二次波への変換効率が非常に高くなる。
【0009】
しかし、非線形パラメータを大きくすると、一次波の波形が急激に衝撃波波形へと移り、衝撃波波形形成後には非線形吸収が生じるため、二次波の仮想エンドファイアアレイの長さは、必然的に短くなってしまう。その結果、遠方での二次波差音のビームは拡がり、パラメトリック音源特有の鋭い指向性が得られなくなる。また、ビームの拡がりによって、音響エネルギが広い範囲に分布するため、遠方では二次波差音の音圧レベルも、気泡がない場合に比べて小さくなってしまうこともあり得る。
【0010】
また、気泡を含んだ水と、気泡を含まない水では、その減衰特性も変わり、特に共振気泡を含む場合の吸収係数は、気泡を含まない海水のそれの数十倍から数百倍にもなり得る。このため、気泡群を送波器前方に遠くまで拡散させることができたとしても、上記非線形吸収の他、気泡による減衰も加わることになり、一次波は急激に減衰してしまうので、やはり仮想エンドファイアアレイ長は短くなってしまう。その結果、上述と同じ理由により、遠方では気泡を用いた場合の方が、二次波音圧レベルが小さくなってしまう。
【0011】
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたもので、気泡群を利用してパラメトリック効果を増大させる水中音源に関し、気泡を用いない場合と比較して、遠方においても二次波差音の音圧レベルが大きくとれる水中音源を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明の水中音源は、複数の周波数成分を送波し、上記周波数成分の差音周波数成分を信号として利用する水中音源であって、水中に微小気泡を発生するための気泡発生手段と、上記水中音源の送波面前方に、送波面全体を覆うように配置され、上記気泡発生手段から生じた微小気泡を貯蔵するための貯蔵手段とを具備し、上記送波面の法線方向に対応する上記貯蔵手段の平均長さLbと、上記差音周波数に対する水中での音波の波長λdとの比で定義されるLb/λdの値が、2以下であり、上記貯蔵手段内における平均密度、平均音速および等価非線形パラメータを、それぞれρ、cおよびβbとし、上記複数の周波数成分の中心角周波数をωとし、上記複数の周波数成分の中で、最も音圧の周波数スペクトルが大きい周波数成分における、上記送波面での音圧振幅をp0とした時に、
xs=ρ・c/(βb・ω・p0)
として定義される衝撃波形成距離xsと、上記貯蔵手段の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、0.5以上であり、上記貯蔵手段の中に生成される微小気泡群の気泡の大きさによる個数分布が、上記複数の周波数成分の中心角周波数ωに対する共振気泡の大きさの気泡数が最大となる個数分布であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の水中音源は、複数の周波数成分を送波し、上記周波数成分の差音周波数成分を信号として利用する水中音源であって、水中に微小気泡を発生するための気泡発生手段と、上記水中音源の送波面前方に、送波面全体を覆うように配置され、上記気泡発生手段から生じた微小気泡を貯蔵するための貯蔵手段とを具備し、上記送波面の法線方向に対応する上記貯蔵手段の平均長さLbと、上記差音周波数に対する水中での音波の波長λdとの比で定義されるLb/λdの値が、4以下であり、上記貯蔵手段内における平均密度、平均音速および等価非線形パラメータを、それぞれρ、cおよびβbとし、上記複数の周波数成分の中心角周波数をωとし、上記複数の周波数成分の中で、最も音圧の周波数スペクトルが大きい周波数成分における、上記送波面での音圧振幅をp0とした時に、
xs=ρ・c/(βb・ω・p0)
として定義される衝撃波形成距離xsと、上記貯蔵手段の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、0.2以上であり、上記貯蔵手段の中に生成される微小気泡群の気泡の大きさによる個数分布が、上記複数の周波数成分の中心角周波数ωに対する共振気泡の大きさよりも十分小さい気泡の数が最大となる個数分布であることを特徴とする。
【0014】
また、上記の水中音源において、上記貯蔵手段は、シリコン製か、ウレタン製の樹脂で囲まれて形成されていることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施例による水中音源の基本構成を示す模式図である。本実施例の水中音源は、基本的には、送波器1と、微小気泡発生手段2と、微小気泡貯蔵手段3からなり、上記微小気泡発生手段2と微小気泡貯蔵手段3は吐出管4で連結され、微小気泡発生手段2で生じた微小気泡群21を含有する水は、吐出管4を通って微小気泡貯蔵手段3に貯蔵され、微小気泡生成層31を形成する。
【0016】
微小気泡貯蔵手段3は、水と固有音響インピーダンスがほとんど等しい、例えばシリコン製やウレタン製の樹脂で、中空になるように形成されており、送波器1の送波面を全て覆うように設けられている。このような材質を選ぶことによって、気泡を固定された空間に留め、この気泡領域に効率よく音波を透過させることができる。
【0017】
送波器1からは複数の周波数成分を有する一次波が放射され、信号としては、微小気泡生成層31や水中において、音波の非線形効果によって生じる二次波差音を利用する。例えば、一次波の周波数成分が50kHzと60kHzの成分からなる場合、二次波差音として生じる10kHzの信号を利用する。
【0018】
上記微小気泡生成層31に、一次波中心周波数における共振気泡の大きさを有した気泡が多数含まれている場合、上記送波面の法線方向に対応する微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbは、信号として利用する2次波差音周波数の音波の波長λdとの比Lb/λdが2以下となる長さになっている。
【0019】
例えば、上記のように、二次波差音の周波数が10kHzで、海水中に音波を放射する場合には、海水の平均音速を1487m/sとすると、Lbは約30cm以下にすればよい。なお、この例では、一次波中心周波数は45kHzであり、このときの共振気泡の大きさは、半径約70μmである。
【0020】
さらに、微小気泡生成層31における平均密度、平均音速および等価非線形パラメータを、それぞれρ、cおよびβbとし、上記複数の周波数成分の中心角周波数をωとし、上記複数の周波数成分の中で、最も音圧の周波数スペクトルが大きい周波数成分における、上記送波面での音圧振幅をp0とした時に、
xs=ρ・c/(βb・ω・p0)
として定義される衝撃波形成距離xsと、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、0.5以上となるようになっている。
【0021】
例えば、上記のように海水中での音波の放射を考え、一次波の周波数が50kHzおよび60kHzで、共に送波器1の送波面上における音圧振幅が141kPaであり、海水の平均密度が1028.6kg/mで、海水の平均音速が1487m/sであるとする。また、微小気泡貯蔵手段3には、半径70μmの共振気泡が、気泡の体積含有比10−7で混入されているとすると、微小気泡生成層31の等価非線形パラメータβbの値は、後述するように600程度になるため、衝撃波形成距離xsの値は約14cmになる。したがって、xs/Lb=1となるように設定すると、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbは約14cmとなり、上記のLbが約30cm以下となる条件も満たされる。
【0022】
一方、微小気泡生成層31に、一次波中心周波数における共振気泡の大きさよりも十分小さい気泡が、共振気泡に近い大きさの気泡に比べて数多く含まれている場合には、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbと2次波差音周波数の音波の波長λdとの比Lb/λdの値が4以下となればよい。さらに、上述のように定義される衝撃波形成距離xsと、微小気泡貯蔵手段3の長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値は、0.2以上となるようになっている。
【0023】
例えば、上述の例では、Lbは約60cm以下であればよい。また、微小気泡貯蔵手段3に、半径が30μmの気泡が、体積含有比10−6で混入している場合、後述するように、微小気泡生成層31での等価非線形パラメータβbは700程度になり、衝撃波形成距離xsは約12.1cmとなるので、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbは60cm以下の値にすればよい。
【0024】
次に、上述のような構成が有効である理由について、以下、図面を用いて説明する。
【0025】
送波器1から放射された一次波は、まず微小気泡貯蔵手段3内に形成された微小気泡生成層31を通過し、主に気泡振動の非線形性に伴う二次波の生成が行われる。「日本音響学会誌、46巻8号、p.622〜p.626、1990年」に記載されているように、気泡群を含む水の音響非線形性は、等価的に非線形パラメータβbをもって表すことができる。等価非線形パラメータβbは、気泡の径や気泡の体積含有比、一次波および二次波周波数などに依存する。
【0026】
例えば、上記のように一次波の周波数成分が50kHzと60kHzの成分からなり、10kHzの二次波差音を利用する場合において、上記海水における気泡の体積含有比を10−7とすると、気泡半径と等価非線形パラメータβbの関係は図2のようになる。一次波の中心周波数45kHzにおける共振気泡の大きさは半径約70μmであり、共振気泡の利用によって、等価非線形パラメータβbを600程度の非常に高い値にすることができる。
【0027】
一方、気泡群を含む水における音波の伝播では、気泡群のない水のそれに比べて、気泡での散乱などにより非常に大きな減衰特性を示すようになる。例えば、海水における気泡の体積含有比を10−7とし、気泡半径を70μmとすると、音波の周波数と吸収係数の関係は図3のようになる。図2において、約45kHzに対するβbの値は、気泡径がほぼ共振気泡になった場合の値を示しており、このときの吸収係数は約0.16dB/cmとなる。45kHzにおける海水の吸収係数は10−4dB/cm程度であり、これに比べて、共振気泡が多数存在する場合の吸収係数は千倍以上もの大きな値になる。
【0028】
このように、水中に気泡群が含まれることの効果は、等価非線形パラメータβbと、吸収係数の考慮を行うことによって置き換えることができる。図2からも明らかなように、微小気泡生成層31を形成すると、この領域における非線形パラメータが等価的に大きくできるので、パラメトリック音源に対する一次波から二次波へのエネルギ変換効率の改善が期待できる。しかし、等価非線形パラメータβbが大きくなると、一次波の波形は急激に歪み、衝撃波形成距離xsが短くなるため、衝撃波形成距離xs以降では非線形吸収によって一次波のエネルギが急激に減少してしまう。さらに、気泡領域を通過する一次波は気泡の散乱により、気泡のない場合に比べて大きな減衰特性を示す。このため、二次波仮想音源のエンドファイアアレイ長も短くなり、二次波のビームは、気泡を含まない場合に比べて拡がってしまう。その結果、音響空間に音響エネルギが広く分布することになり、遠方における二次波音圧レベルは、気泡を含まない場合よりも小さくなってしまう。
【0029】
一例として、送波器1の送波面を直径30cmの円形とし、一次波の周波数が40kHzおよび50kHzで、両周波数成分共に送波器1の送波面上における音圧振幅を141kPaとし、また、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbを1mとする。微小気泡生成層31を形成する気泡の半径を、ほぼ共振気泡径に相当する70μm、気泡の体積含有比を10−7とすると、図2から微小気泡生成層31の等価非線形パラメータβbは600程度に見積もることができる。同様に、半径30μm気泡の場合には、気泡の体積含有比を10−6とすると、微小気泡生成層31の等価非線形パラメータβbは700程度に見積もることができる。
【0030】
このような条件のもと、放物型非線形波動方程式を差分法により計算し、非線形音場シミュレーションを行った。まず、周波数10kHzの二次波差音に関する音圧レベルの、音軸上距離特性のシミュレーション結果を示すと図4のようになる。図4において、点線は微小気泡生成層31がない場合、実線は微小気泡生成層31内の気泡の半径が70μmの場合、一点鎖線は微小気泡生成層31内の気泡の半径が30μmの場合のシミュレーション結果を示している。
【0031】
また、図5は送波器1の送波面からの距離900mの位置における、二次波差音の指向性に関するシミュレーション結果を示したものである。図5においても、図4と同様に、点線は微小気泡生成層31がない場合、実線は微小気泡生成層31内の気泡の半径が70μmの場合、一点鎖線は微小気泡生成層31内の気泡の半径が30μmの場合のシミュレーション結果を示している。
【0032】
このシミュレーション条件下においては、気泡の半径が70μmの場合、Ld/λd=6.7、xs/Ld=0.14である。また、気泡の半径が30μmの場合、Ld/λd=6.7、xs/Ld=0.12である。
【0033】
これらの図から明らかなように、微小気泡領域で一次波から二次波への変換効率を増大させ、なおかつ仮想的な二次波エンドファイアアレイを形成しようとすると、非線形吸収や気泡の散乱による減衰によって、必然的にアレイ長が短くなり、二次波ビームが拡がってしまう。このため、遠方において二次波の音響エネルギも空間に広く分散されることになり、気泡を用いない場合に比べて、指向性、音圧レベルともに、劣化してしまう。
【0034】
次に、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbを15cmとし、その他の条件は上述と同様にした場合の、二次波差音に関する音圧レベルの音軸上距離特性と、送波器1の送波面からの距離900mの位置における、二次波差音の指向性のシミュレーション結果を、それぞれ図6および図7に示す。このシミュレーション条件下においては、気泡の半径が70μmの場合、Ld/λd=1.0、xs/Ld=0.94である。また、気泡の半径が30μmの場合、Ld/λd=1.0、xs/Ld=0.81である。
【0035】
このような構成にすることによって、上記送波器から放射された一次波は、放射直後に、微小気泡生成層31内で、強い音響非線形性による二次波仮想音源領域を形成する。その後、気泡を含まない海水領域で弱い音響非線形性に伴う二次波仮想音源のエンドファイアアレイが形成される。微小気泡生成層31内で形成された二次波仮想音源領域からの音波は点音源のように振る舞うが、強い音響非線形性のために大きな音圧レベルを有する。しかし、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbは短いため、一次波の減衰はほとんど無く、気泡を含まない海水領域では、アレイ長の長い二次波仮想音源のエンドファイアアレイの形成が可能になる。
【0036】
以上に述べたように、本発明によれば微小気泡生成層31内で形成された二次波仮想音源領域からの大きな音圧レベルに加えられる形で、気泡を含まない海水領域における二次波仮想音源のエンドファイアアレイによるビームが形成されるので、遠方においても高い音圧レベルと鋭い指向性を有するパラメトリック音源が可能となる。
【0037】
この際、微小気泡生成層31を形成する気泡の大きさが、共振気泡の大きさと同じくらいのものが多数含まれている場合は、気泡の散乱による減衰が激しく起こるので、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbは、二次波の波長λdの2倍程度以下にするのが望ましい。さらに、非線形吸収による減衰が大きく影響しないように、微小気泡貯蔵手段3の長さLbは、この際に定義される衝撃波形成距離xsの2倍程度以下の長さ、すなわちxs/Ldが0.5以上になるようにすることが望ましい。
【0038】
また、微小気泡生成層31を形成する気泡の大きさが、共振気泡の大きさよりも十分小さいものが多数含まれている場合には、気泡の散乱による減衰が小さいために、微小気泡貯蔵手段3の長さLbは比較的長く取ることができ、二次波の波長λdの4倍程度以下にすればよい。このときも、非線形吸収による減衰が大きく影響しないように、微小気泡貯蔵手段3の長さLbは、この際に定義される衝撃波形成距離xsの5倍程度以下の長さ、すなわちxs/Ldが0.2以上になるようにすることが望ましい。
【0039】
なお、微小気泡生成層31の等価非線形パラメータβbの値は、計算から求めてもよいが、実際には単一径の気泡群を形成することが困難であるので、微小気泡生成層31を通過した音波の波形歪みなどから、予め実験的に計測して求めておいてもよい。また、微小気泡発生手段2と、微小気泡貯蔵手段3から構成される部分は、例えば、気泡群を含むウレタン樹脂を送波器1の送波面に設置するなどして、送波器1の送波面近傍で等価的に非線形パラメータβbが大きくとれる手段にしてもよい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の水中音源によれば、送波器の送波面近傍付近にのみ形成された気泡領域を通して、複数の周波数成分を持った一次波が放射されるため、この気泡領域では、一次波の音響非線形効果によって、大きな音圧レベルの二次波差音成分が発生する。また、気泡領域を通過後の一次波は、ほとんど減衰せずに、水の弱い音響非線形性によって、アレイ長の長い仮想的な二次波のエンドファイアアレイを形成する。このため、全体として生じる二次波差音は、気泡部で発生した二次波音圧レベルに、気泡領域後のパラメトリックアレイが上乗せした形になり、開口長の小さな送波器で、高い音圧レベルと鋭い指向性を有する低周波音波が、非常に遠距離まで送波可能になる。
【0041】
また、本発明の水中音源によれば、微小気泡貯蔵手段は、シリコン製か、あるいはウレタン製の樹脂で中空になるように形成されており、送波器1の送波面を全て覆うように設けられている。このような材質を選ぶことによって、気泡群を送波面近傍付近の固定された空間に留め、さらに音波は、この気泡領域を効率よく透過することができるため、気泡部における強い音響非線形効果と、気泡領域通過後における水の弱い音響非線形効果を十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による水中音源の基本的構成を示す模式図。
【図2】多数の微小気泡を含む海水における、微小気泡の大きさと等価非線形パラメータの関係を表す特性図。
【図3】多数の微小気泡を含む海水における、吸収係数の周波数特性図。
【図4】送波面前方の微小気泡領域が長い場合の、音軸上における二次波差音の音圧レベルを示す特性図。
【図5】送波面前方の微小気泡領域が長い場合の、二次波差音の指向性を示す特性図。
【図6】本発明による水中音源の一実施の形態の、音軸上における二次波差音の音圧レベルを示す特性図。
【図7】本発明による水中音源の一実施の形態の、二次波差音の指向性を示す特性図。
【符号の説明】
1…送波器、2…微小気泡発生手段、21…微小気泡群、3…微小気泡貯蔵手段、31…微小気泡生成層、4…吐出管。

Claims (3)

  1. 複数の周波数成分を送波し、上記周波数成分の差音周波数成分を信号として利用する水中音源であって、水中に微小気泡を発生するための気泡発生手段と、上記水中音源の送波面前方に、送波面全体を覆うように配置され、上記気泡発生手段から生じた微小気泡を貯蔵するための貯蔵手段とを具備し、上記送波面の法線方向に対応する上記貯蔵手段の平均長さLbと、上記差音周波数に対する水中での音波の波長λdとの比で定義されるLb/λdの値が、2以下であり、上記貯蔵手段内における平均密度、平均音速および等価非線形パラメータを、それぞれρ、cおよびβbとし、上記複数の周波数成分の中心角周波数をωとし、上記複数の周波数成分の中で、最も音圧の周波数スペクトルが大きい周波数成分における、上記送波面での音圧振幅をp0とした時に、
    xs=ρ・c/(βb・ω・p0)
    として定義される衝撃波形成距離xsと、上記貯蔵手段の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、0.5以上であり、上記貯蔵手段の中に生成される微小気泡群の気泡の大きさによる個数分布が、上記複数の周波数成分の中心角周波数ωに対する共振気泡の大きさの気泡数が最大となる個数分布であることを特徴とする水中音源。
  2. 複数の周波数成分を送波し、上記周波数成分の差音周波数成分を信号として利用する水中音源であって、水中に微小気泡を発生するための気泡発生手段と、上記水中音源の送波面前方に、送波面全体を覆うように配置され、上記気泡発生手段から生じた微小気泡を貯蔵するための貯蔵手段とを具備し、上記送波面の法線方向に対応する上記貯蔵手段の平均長さLbと、上記差音周波数に対する水中での音波の波長λdとの比で定義されるLb/λdの値が、4以下であり、上記貯蔵手段内における平均密度、平均音速および等価非線形パラメータを、それぞれρ、cおよびβbとし、上記複数の周波数成分の中心角周波数をωとし、上記複数の周波数成分の中で、最も音圧の周波数スペクトルが大きい周波数成分における、上記送波面での音圧振幅をp0とした時に、
    xs=ρ・c/(βb・ω・p0)
    として定義される衝撃波形成距離xsと、上記貯蔵手段の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、0.2以上であり、上記貯蔵手段の中に生成される微小気泡群の気泡の大きさによる個数分布が、上記複数の周波数成分の中心角周波数ωに対する共振気泡の大きさよりも十分小さい気泡の数が最大となる個数分布であることを特徴とする水中音源。
  3. 上記貯蔵手段は、シリコン製か、ウレタン製の樹脂で囲まれて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水中音源。
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