JP3843587B2 - 感熱記録体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録部の画像保存性に優れた感熱記録体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、感熱記録体は、電子供与性化合物である無色あるいは淡色の染料前駆体と電子受容性化合物である顕色剤とを、それぞれ微細な粒子に磨砕分散した後、両者を混合し、バインダー、充填剤、増感剤、滑剤その他の助剤を添加して得た塗液を紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗布したもので、感熱ヘッド、ホットスタンプ、レーザー光等の加熱による瞬時の化学反応により発色記録を得るものである。これらの感熱記録体は、計測用レコーダー、コンピュータの端末プリンター、ファクシミリ、自動券売機、バーコードラベルなど広範囲の分野に応用されている。
【0003】
しかし、近年における感熱記録体用記録装置の多様化、高性能化の進展に伴い、感熱記録体に対して要求される品質もより高度なものとなってきた。また、電子写真方式やインクジェット方式などの普通紙記録方式の普及に伴い、感熱記録方式もこれら普通紙記録と比較される機会が多くなっている。そのため、例えば、感熱記録体の記録部(画像)の安定性、あるいは非記録部(地色)の安定性などが、普通紙記録方式と同程度の品質に近づくことが求められている。特に記録画像の保存安定性の点から、耐光性、耐油性、耐水性、及び耐可塑剤性などに優れた感熱記録体が要求されている。
【0004】
特に耐油性、耐可塑剤性を向上させるために、感熱発色層中に特開平4−97887号公報記載のエポキシ化合物、特開平4−113888号公報記載のアジリジン化合物、特開昭63−22683号公報記載の各種金属塩を含有した例などが知られている。しかし、その効果は不十分である。
【0005】
また、従来から用いられてきたフェノール系顕色剤に代り、ヒドロキシ基を有さずに染料前駆体を発色せしめうる酸性雰囲気を呈した、いわゆる非フェノール系顕色剤が開発されている。これまで非フェノール系顕色剤として尿素やチオ尿素、リン酸、リン酸エステル、アミド、ウレタン等を用いた例が開示されており、これらを顕色剤として用いた場合、従来のフェノール系顕色剤と比較して記録部の画像保存性が向上することが知られている。
【0006】
例えば、特開平4−282291号公報記載のカルボニルスルホンアミド化合物、特開平6−99666号公報記載の有機リン酸化合物などが挙げられる。発色画像の消色原因の一つに染料と顕色剤との解離があるが、上記非フェノール系顕色剤は従来のフェノール系顕色剤よりも水、油、可塑剤等に溶けにくく、画像保存性が向上すると考えられる。しかし、多少の効果はあるものの、その程度は未だ十分なものではない。
【0007】
また、尿素又はチオ尿素化合物を顕色剤として用いる例に関しては、特開昭58−211496号公報等をはじめとして数多く出願されており、より画像保存性に効果的な顕色剤の開発のため、尿素及びチオ尿素誘導体の探索が行われている。例えば、特開昭59−184694号公報記載のフェニル尿素又はフェニルチオ尿素化合物、特開昭60−145884号公報記載のチオ尿素二量体化合物、特開昭61−211085号公報記載のハロゲン導入ジフェニルチオ尿素化合物、特開平5−185739号公報記載のベンジルチオ尿素化合物等が挙げられる。しかし、これらを用いて感熱記録紙を作製した場合、短期間の耐可塑剤性や耐油性試験では効果があるものの長時間試験では画像消失が見られ、画像保存性向上の効果は不十分である。さらに特開平5−147357号公報等にはスルホニル尿素化合物を顕色剤として用いた例が報告されている。これは優れた画像保存性を示すが、耐可塑剤性試験における地色発色の問題や耐水性がやや弱いという欠点がある。
【0008】
さらに、尿素又はチオ尿素化合物にスルホンアミド基を導入した例もあり、特開平7−304727号公報及び特開平8−59603号公報記載のジフェニル尿素スルホンアミド化合物、特開平8−25810号公報及び特開平8−132739号公報記載のジフェニルチオ尿素スルホンアミド化合物等が挙げられる。これらは優れた画像保存性を示すが、耐熱試験における地色発色という欠点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、記録部の画像保存性及び白紙部の耐熱地色安定性を改良した感熱記録体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本研究者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、フェニルスルファモイル基と尿素構造を1分子内にそれぞれ2個有する化合物が感熱記録体の顕色剤として優れた機能を発揮することを見い出し、本発明を完成させるに至った。また、特に下記一般式(1)で表される化合物が本発明において有効に用いられる。
【0011】
【化5】
(但し、R1、R2はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、電子吸引性基を表す。mは0〜5の整数を表す。nは0〜4の整数を表す。Aは2価の基を表す。)
【0012】
本発明の一般式(1)で表される化合物において、Aは2価の基を表す。Aに属する基の代表的な例を下記式(5)及び(6)に示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
【化6】
【0014】
【化7】
【0015】
さらに、下記一般式(2)、(3)、(4)で表される化合物は、より有用な化合物である。
【0016】
【化8】
(但し、R3、R4はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、電子吸引性基を表す。oは0〜5の整数を表す。pは0〜4の整数を表す。)
【0017】
【化9】
(但し、R5、R6、R7はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、電子吸引性基を表す。qは0〜5の整数を表す。r、sは0〜4の整数を表す。)
【0018】
【化10】
(但し、R8、R9はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、電子吸引性基を表す。tは0〜5の整数を表す。uは0〜4の整数を表す。vは2〜12の整数を表す。)
【0019】
ここで、R1〜R9は該化合物を顕色剤として用いた場合に発色及び画像保存性を阻害しない置換基であれば良い。このうち顕色能力の安定性や発色感度の点から、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、電子吸引性基として塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ニトリル基が望ましい。
【0020】
本発明の化合物は分子内にヒドロキシ基を持たないが染料前駆体を発色させる顕色能を有するいわゆる非フェノール系顕色剤であり、フェニルスルファモイル基及び尿素構造を1分子内にそれぞれ2個有する化合物であることを特徴とするものである。これを用いて作製した感熱記録体は、記録部の耐可塑剤性や耐油性、耐水性等の画像保存性が大幅に向上する。その理由は明らかではないが、下記のように推定される。
【0021】
一般に尿素構造を有する化合物は油や可塑剤、各種溶剤に難溶であることからこれらに曝されても溶出することがなく、これを顕色剤として用いた場合染料との解離による画像消失が起こらずに良好な画像保存性が得られる傾向がある。一方、本発明者らは、フェニルスルファモイル基も同様に画像保存性に寄与することを見出し、鋭意検討の結果、本発明の化合物が良好な画像保存性及び十分な顕色能を達成し得る優れた顕色剤であるという知見を得たものである。1分子内に有する尿素構造の数が増えればさらにその効果は増すと考えられるが、化合物の急激な融点又は分解点の上昇が起こりこれに伴って顕色能が低下することが懸念される。これに対しフェニルスルファモイル基は、尿素化合物の融点を低下させて顕色能を維持するように作用すると考えられ、両者が2個ずつ存在することにより、画像保存性及び顕色能のバランスの良い優れた品質性能が得られると推察される。
【0022】
さらに本発明によれば、画像保存性が向上するだけでなく、白紙部の優れた耐熱地色安定性が得られる。これは本化合物が分子内に尿素構造を有していることが理由の1つであると考えられる。通常、尿素はケト型(−NHC(=O)NH−)で存在しているが、印字時には感熱ヘッド等で短時間ではあるが非常に大きな熱エネルギーが加わる。その際にエノール型(−N=C(−OH)NH−)へと変化が生じ、ここで初めて顕色能が発揮されると推定される。一方、耐熱地色の安定性が求められる温度は90〜120℃程度であり、この温度ではエノール型への変換は起らずに顕色能は発揮されない、つまり白紙部が発色して耐熱地色が悪化することはないと考えられる。加えて、本発明の化合物は従来のフェノール系顕色剤と比較して、融点が高いことも理由の1つであると推定される。感熱記録体には顕色剤の他に染料前駆体や増感剤など熱で融解し合う有機化合物が存在している。そのためこれら混合物の共融点は比較的低く、100℃程度の加熱でも発色反応が進行して地色悪化する傾向があるが、より高融点の顕色剤はその恐れが小さいと考えられる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の化合物は以下の方法で合成することができる。まず、アセトアミドベンゼンスルホニルクロライド化合物とアニリン化合物を反応させてアセトアミド−N−フェニルベンゼンスルホンアミド化合物を合成する。次に加水分解反応によりアセチル基を脱離してアミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド化合物に導く。さらににアミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド化合物を従来公知の方法(例えば新実験化学講座14有機化合物の合成と反応[III]P.1631に記載の合成法)で尿素化することにより合成することができる。具体的には、アセトンやTHF等の不活性溶媒に溶解したジイソシアネートとアミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミドを不活性ガス雰囲気下で混合し、数分〜数時間室温で攪拌することにより、目的とする化合物を合成することができる。
【0024】
また別法として、ジイソシアネート化合物とアニリン化合物2分子を反応させて尿素2量体を合成する。次に末端フェニル基をクロロ硫酸と反応させてジスルホニルクロライド化し、さらにアニリン化合物2分子と反応させて目的とする化合物を得ることができる。
【0025】
本発明の化合物の原料としてジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート<商品名:MDI>やトリレン−2,4−ジイソシアネート<2,4−TDI>、トリレン―2,6―ジイソシアネート<2,6−TDI>、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート<HDI>等を用いた場合、これらは塗料や接着剤、ポリウレタン原料として工業的に大量に生産されていることから、非常に容易かつ安価に入手可能である。また、製造する際も特殊な設備を必要とせず、高収率で合成することができる。そのため、本発明の顕色剤の製造コストは非常に安価になる利点がある。
【0026】
本発明で用いられる化合物の具体例として以下の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【化11】
【0028】
【化12】
【0029】
【化13】
【0030】
【化14】
【0031】
【化15】
【0032】
【化16】
【0033】
【化17】
【0034】
本発明の感熱記録体を製造するには、従来公知の種々の製造方法を利用することができる。具体的には、以下の様な方法で製造することができる。即ち、本発明の化合物、染料前駆体、増感剤をそれぞれボールミル、アトライター、サンドグラインダー等の粉砕機あるいは乳化機で微粒化し、各種填料及び各種添加剤を加え、水溶性バインダーの水溶液中で分散して塗料とし、これをエアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター等の各種コーター等で任意の支持体に塗工すると感熱記録体が得られる。本発明の化合物は単独又は2種類以上混合して使用しても良い。
【0035】
本発明の感熱記録体に使用する染料前駆体としては、従来公知のものを使用することができる。以下に染料前駆体を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、またこれらを2種類以上混合して使用しても良い。
【0036】
3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド<商品名:CVL>、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン<ODB>、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン<ODB−2>、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン<S−205>、3−ジエチルアミノ−7−m−トリフルオロメチルアニリノフルオラン<Black−100>、3−ジブチルアミノ−7−o−クロロアニリノフルオラン<TH−107>、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン<PSD−150>、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン<Green−2>、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド<MGL>、トリス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メタン<LCV>、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド<インドリルレッド>、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン<OR−55>、3,3−ビス[2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,5,6,7−テトラクロロフタリド<NIR−Black>、1,1,5,5−テトラキス(p−ジメチルアミノフェニル)−3−メトキシ−1,4−ペンタジエン、1,1,5,5−テトラキス(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,4−ペンタジエン。
【0037】
本発明において、本発明の化合物と従来使用されている既知の顕色剤の1種又は2種以上を併用することができる。以下に顕色剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,7−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノールなどのビスフェノール類、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸ノルマルプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチルなどの4−ヒドロキシ安息香酸エステル類、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシフタル酸ジイソプロピル、4−ヒドロキシフタル酸ジベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジヘキシルなどの4−ヒドロキシフタル酸ジエステル類、フタル酸モノベンジルエステル、フタル酸モノシクロヘキシルエステル、フタル酸モノフェニルエステル、フタル酸モノメチルフェニルエステルなどのフタル酸モノエステル類、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−2−メチル−5−エチルフェニル)スルフィドなどのビスヒドロキシフェニルスルフィド類、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ノルマルプロポキシジフェニルスルホンなどの4−ヒドロキシフェニルアリールスルホン類、4−ヒドロキシフェニルベンゼンスルホナート、4−ヒドロキシフェニル−p−トリルスルホナート、4−ヒドロキシフェニル−p−クロルベンゼンスルホナートなどの4−ヒドロキシフェニルアリールスルホナ−ト類、1,3−ジ[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ジ[2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−プロピル]ベンゼンなどの1,3−ジ[2−(ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン類、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸ノルマルプロピル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸ブチルなどの4−ヒドロキシベンゾイルオキシ安息香酸エステル類、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2−ヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルスルホン、ビス(3−クロル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスヒドロキシフェニルスルホン類、p−tert−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−ベンジルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトールなどのフェノール類、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、3−sec−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸などの芳香族カルボン酸の金属塩。
【0039】
染料前駆体と顕色剤を発色成分とする感熱記録体においては、発色感度を上げるために通常増感剤が使用される。以下に増感剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、またこれらを2種類以上混合して使用しても良い。
【0040】
ステアリン酸、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸、エチレンビスステアロアミド、ヤシ脂肪酸アミド、モンタン系ワックス、ポリエチレンワックス、フェニル−α−ナフチルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、ジフェニルカーボネート、4−ビフェニル−p−トリルエーテル、p−ベンジルビフェニル、m−ターフェニル、トリフェニルメタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビスフェノキシエタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ビスフェノキシブタン、1,4−ビスフェノキシブテン、2−ナフチルベンジルエ−テル、1,4−ジエトキシナフタリン、1,4−ジメトキシナフタリン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチルエステル、2−ナフトエ酸フェニルエステル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニル−2−プロパノール、1,3−ジフェノキシ−2−プロパノール、p−(ベンジルオキシ)ベンジルアルコール、ノルマルオクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、ノルマルオクタデシルカルバモイルベンゼン。
【0041】
本発明においては、記録画像の安定性を向上させるため、各種助剤を添加してもよい。以下に助剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、p−クロロ安息香酸金属塩(Zn、Ca)、p−ニトロ安息香酸金属塩(Zn、Ca)、フタル酸モノベンジルエステル金属塩(Zn、Ca)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチル)フェノール。
【0043】
本発明の感熱記録体に使用するバインダーとしては、従来、感熱記録の分野で公知のものを使用することができる。以下にバインダーを例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
重合度が2000以下の完全ケン化ポリビニールアルコール、部分ケン化ポリビニールアルコール、カルボキシ変性ポリビニールアルコール、アマイド変性ポリビニールアルコール、スルホン酸変性ポリビニールアルコール、その他の変性ポリビニールアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン、酢酸ビニール、アクリルアミド、アクリル酸エステル等の重合体及び共重合体、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂、その他を挙げることができる。これら天然及び合成高分子物質は水またはアルコール等の有機溶剤に溶解して使用するほか、水等の媒体に乳化またはペースト状に分散した状態で使用できる。また、これらを2種類以上使用することもできる。
【0045】
本発明の感熱記録体に使用する填料としては、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカ、水酸化マグネシウム、酸化チタン、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、その他の天然または合成の無機または有機填料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらを2種類以上使用することもできる。
【0046】
添加剤としては、紫外線吸収剤、消泡剤、蛍光増白剤、耐水化剤、滑剤等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の感熱記録体に使用する染料前駆体及び顕色剤の量、その他の各種成分の種類及び量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され特に限定されるものではないが、通常、染料前駆体1部に対して、顕色剤1〜8部、填料1〜20部が好ましく、バインダーは全固形分中10〜25%が好ましい。
【0048】
本発明の感熱記録体に使用される支持体としては、上質紙、中質紙、コート紙等の紙や、合成紙、プラスチックフィルム等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
さらに保存性を高める目的で、高分子物質等のオーバーコート層を感熱発色層上に設けることもできる。また、保存性及び感度を高める目的で、有機填料又は無機填料を含有するアンダーコート層を発色層と支持体の間に設けることもできる。
【0050】
【実施例】
下記に実施例として本発明の化合物の合成例、ならびにその製造に適した出発物質の合成例、及びそれらを顕色剤として用いた感熱記録体の製造例を例示し本発明を具体的に説明する。また、反応物質やその他の使用成分は代表例として呈示したものであり、本発明の範囲内で上記に説明したように各種の変更が可能である。
【0051】
−本発明の化合物の合成−
[出発物質の合成例]4−アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミドの合成
4−アセトアミドベンゼンスルホニルクロライド34.0gにメチルエチルケトン250ml、水300ml、炭酸ナトリウム18.6gを加えて溶解した。ここにアニリン13.6gを添加して、室温で1時間反応させた。その後、4N−水酸化ナトリウム水溶液170mlを加えて16時間加熱還流して反応させた。エバポレータで溶媒を留去し、残渣に6N−塩酸を加えて酸性にし、生成する固体を濾取した。これを酢酸エチルで再結晶を行い、4−アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミドの白色固体を29.4g(収率81%)得た。
<IRスペクトル>
(KBr錠剤法,cm-1)
3420,3349,3294,3246,1638,1596,1495,1465,1435,1394,1319,1301,1220,1152,1093,1072,918,891,831,751,691,561
<1H−NMRスペクトル>
(300MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
5.92(2H,s,NH2),6.52(2H,d,J=9Hz,ArH),6.96(1H,t,J=7Hz,ArH),7.06(2H,d,J=8Hz,ArH),7.18(2H,t,J=8Hz,ArH),7.38(2H,d,J=8Hz,ArH),9.82(1H,s,NH)
<13C−NMRスペクトル>
(75MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
112.50,119.36,123.18,124.43,128.62,128.83,138.44,152.73
<MSスペクトル>
(FAB-MS(M/Z))
249(M+H)+
【0052】
[合成例1]4,4’−ビス(4−フェニルスルファモイルフェニルウレイド)ジフェニルメタン(A−01)の合成
4−アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド4.37gをTHF30mlに溶解した。ここに窒素雰囲気下で、MDI2.0gをTHF20mlに溶解した溶液を滴下し、6時間加熱還流して反応させた。反応終了後、エバポレータで溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルで再結晶を行い、4,4’−ビス(4−フェニルスルファモイルフェニルウレイド)ジフェニルメタン(A−01)の白色固体を4.54g(収率76%)得た。
<分解点>
260−270℃
<IRスペクトル>
(KBr錠剤法,cm-1)
3372,3190,1702,1594,1536,1512,1408,1313,1232,1152,1094,923,825,754,696,597,553
<1H−NMRスペクトル>
(300MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
3.82(2H,s,CH2),6.98(2H,t,J=7Hz,ArH),7.10(8H,d,J=7Hz,ArH),7.19(4H,t,J=8Hz,ArH),7.34(4H,d,J=8Hz,ArH),7.55(4H,d,J=9Hz,ArH),7.64(4H,d,J=9Hz,ArH),8.68(2H,s,NH),9.00(2H,s,NH),10.07(2H,s,SO2NH)
<13C−NMRスペクトル>
(75MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
59.59,117.26,118.51,119.77,123.56,127.85,128.80,131.57,135.22,136.99,137.91,143.74,151.99,181.02
<MSスペクトル>
(FAB-MS(M/Z))
747(M+H)+
【0053】
[合成例2]2,4−ビス(4−フェニルスルファモイルフェニルウレイド)トルエン(A−13)の合成
4−アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド5.50gをTHF30mlに溶解した。ここに窒素雰囲気下で、2,4−TDI1.75gをTHF20mlに溶解した溶液を滴下し、6時間加熱還流して反応させた。反応終了後、エバポレータで溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルで再結晶を行い、2,4−ビス(4−フェニルスルファモイルフェニルウレイド)トルエン(A−13)の白色固体を2.82g(収率42%)得た。
<融点>
218−220℃
<IRスペクトル>
(KBr錠剤法,cm-1)
3352,1695,1596,1537,1499,1450,1410,1313,1220,1153,1094,923,828,753,697,616,595,556
<1H−NMRスペクトル>
(300MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
2.24(3H,s,CH3),6.94-7.24(13H,m,ArH),7.53-7.67(8H,m,ArH),8.45(1H,s,NH),8.81(1H,s,NH),9.01(1H,s,NH),9.46(1H,s,NH)
<13C−NMRスペクトル>
(75MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
17.12,110.94.112.34.116.88.119.28,119.79.123.16.127.69.128.56,129.91,131.62,137.35,138.18,143.57,151.91,180.90
<MSスペクトル>
(FAB-MS(M/Z))
671(M+H)+
【0054】
[合成例3]1,6−ビス(4−フェニルスルファモイルフェニルウレイド)ヘキサン(A−25)の合成
4−アミノ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド4.87gをTHF30mlに溶解した。ここに窒素雰囲気下で、HDI1.50gをTHF20mlに溶解した溶液を滴下し、6時間加熱還流して反応させた。反応終了後、エバポレータで溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルで再結晶を行い、1,6−ビス(4−フェニルスルファモイルフェニルウレイド)ヘキサン(A−25)の白色固体を3.67g(収率62%)得た。
<融点>
237−239℃
<IRスペクトル>
(KBr錠剤法,cm-1)
3382,3343,3140,2930,2860,2272,1685,1594,1543,1497,1405,1321,1242,1151,1095,925,833,755,701,593,552
<1H−NMRスペクトル>
(300MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
1.29-1.42(8H,m,CH2),3.07(4H,q,J=6Hz,NCH2),6.25(2H,t,J=5Hz,CONH),6.98(2H,t,J=7Hz,ArH),7.08(4H,d,J=8Hz,ArH),7.19(4H,t,J=8Hz,ArH),7.48(4H,d,J=9Hz,ArH),7.58(4H,d,J=9Hz,ArH),8.80(2H,s,ArNHCO),10.03(2H,s,NHSO2)
<13C−NMRスペクトル>
(75MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
26.01,29.51,97.44,116.66,119.07,123.53,127.81,128.83,130.65,137.94,144.54,154.53,180.94
<MSスペクトル>
(FAB-MS(M/Z))
671(M+H)+
【0055】
―比較例の化合物の合成―
[合成例4]4,4’−ジフェニルスルファモイル−N,N’−ジフェニルウレア(B−03)の合成
クロロ硫酸25mlを氷水バスに浸して冷却しつつ、N,N’−ジフェニルウレア10gを徐々に添加した。その後室温にて4時間攪拌して反応させた。反応液を氷に投入し白色固体として4,4’−ジクロロスルホニル−N,N’−ジフェニルウレアを得た。これにアセトン100mlとピリジン100mlを加え溶解し、氷水バスに浸して冷却しつつアニリン8.77gを滴下した。その後30℃で2時間攪拌して反応させた。エバポレータで反応液中のアセトンを留去し、残渣に希塩酸を加えて酸性にした。これを酢酸エチルで抽出し溶媒留去した残渣をアセトン+酢酸エチルで再結晶を行い、4,4’−ジフェニルスルファモイル−N,N’−ジフェニルウレア(B−03)の白色固体を5.41g(収率22%)得た。
<分解点>
283℃
<IRスペクトル>
(KBr錠剤法,cm-1)
3376,3305,3268,3189,1716,1594,1553,1541,1495,1407,1342,1322,1243,1215,1149,1095,933,913,900,830,757,697,664,563,543
<1H−NMRスペクトル>
(300MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
7.00(2H,t,J=7Hz,ArH),7.10(4H,d,J=8Hz,ArH),7.22(4H,t,J=7Hz,ArH),7.58(4H,t,J=9Hz,ArH),7.71(4H,d,J=9Hz,ArH),9.23(2H,s,NHCONH),10.16(1H,s,NHSO2)
<13C−NMRスペクトル>
(75MHz,DMSO-d6,δ/ppm,TMS)
117.9,119.9,123.8,128.0,129.1,132.2,137.9,143.3,151.8
<MSスペクトル>
(FAB-MS(M/Z))
523(M+H)+
【0056】
−感熱記録体の製造−
[実施例1〜3]
下記組成物からなる感熱記録体を作製した。即ち、まず下記配合の染料分散液(A液)と顕色剤分散液(B液)を各々サンドグラインダーにて平均粒子径1μmまで磨砕した。
次いで、下記の割合でA液とB液及びカオリンクレーの分散液を混合して感熱塗料とした。
A液:染料分散液 9.2部
B液:顕色剤分散液 36.0部
カオリンクレー(50%分散液) 12.0部
この感熱塗料を50g/m2の基紙の片面に塗布量6.0−6.5g/m2になる様に塗布乾燥し、このシートをスーパーカレンダーで平滑度が500−600秒になる様に処理し、感熱記録体を作製した。
【0057】
[比較例1〜3]
顕色剤分散液(B液)において、本発明の化合物に代えて下記に示す顕色剤を用いた以外は、実施例1〜3と同様にして感熱記録体を作製した。
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン(B−01)
N,N’−ジフェニルウレア(B−02)
4,4’−ジフェニルスルファモイル−N,N’−ジフェニルウレア(B−03)
【0058】
−感熱記録体の評価−
[発色方法]
作製した感熱記録体をUBIプリンター201(UBI社製)を使用し、印加エネルギー450mj/mm2で、作製した感熱記録体に記録を行った。次いで、その記録部及び白紙部の画像濃度をマクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルターを使用)により測定した。これを試験サンプルとし、以下の試験を行った。
[耐可塑剤性試験]:試験サンプルを塩化ビニルフィルム(三菱樹脂(株)製ダイアラップ300G)に接触させ、40℃で24時間放置し、記録部の画像残存濃度をマクベス濃度計で測定した。
[耐油性試験]:試験サンプルをサラダ油に1時間浸し、油を拭き取り、24時間室温に放置し、記録部の画像残存濃度をマクベス濃度計で測定した。
[耐水性試験]:試験サンプルを水道水に24時間浸し、30℃で2時間乾燥し、記録部の画像残存濃度をマクベス濃度計で測定した。
[白紙部の耐熱地色試験]:試験サンプルを100℃で30分放置し、白紙部の濃度をマクベス濃度計で測定した。
画像記録部の画像保存性試験の結果を表1に、白紙部の耐熱地色試験の結果を表2に示す。表1では値が大きいほど画像保存性が、表2では値が小さいほど耐熱地色の安定性が優れていることを示す。
【0059】
【表1】
表1.画像保存性試験の結果
【表2】
表2.耐熱地色試験の結果
【0060】
表1及び2の結果から明らかなように、本発明の化合物を顕色剤として用いた実施例1〜3は、従来のフェノール系顕色剤を用いた比較例1やフェニルスルファモイル基を持たない尿素系顕色剤の比較例2、さらにはフェニルスルファモイル基を2つ有するが尿素構造を1つしか有さない尿素系顕色剤の比較例3に比べて、耐油性や耐可塑剤性が格段に向上しているのみならず耐水性も良好であり、かつ白紙部の耐熱地色安定性にも優れている。
【0061】
【発明の効果】
本発明の化合物は、染料前駆体を発色せしめるに十分な能力を持っている。また、該化合物を顕色剤として用いた感熱記録体は、記録部の画像保存性及び白紙部の耐熱地色安定性に非常に優れているため、極めて有用なものである。
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