JP3842927B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物とこれを用いたフィルムまたはシート - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂組成物とこれを用いたフィルムまたはシート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、制振性積層体や応力緩和性を要する各種フィルム等に有用な常温域から比較的高温域において高い制振性能あるいは応力緩和性に優れる、特殊軟質ポリプロピレン系樹脂と石油樹脂類からなる樹脂組成物と該樹脂組成物からなるフィルムまたはシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等の交通機関の発達などにより騒音や振動の問題が大きな社会問題となっており、自動車内部においても低振動、低騒音化が進んでいる。また、オフィス,一般家庭においてもパソコンやプリンター等の事務機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機等の家庭用電気製品を低振動化及び低騒音化することが強く求められている。
【0003】
従来このような問題点を解決する手段として、各種のバネや天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム類、あるいは各種の粘弾性材料が用いられてきた。
【0004】
一方、ポリプロピレン系樹脂は、一般に比較的安価、高結晶性で強度も高く、ポリオレフィン系樹脂の中では比較的高融点で耐熱性も良好であるが、高結晶性のため非晶部におけるミクロブラウン運動の寄与率が低い、すなわち損失正接(tanδ)の主分散のピーク値がかなり低く、このような用途にはその利用が制限されていた。
【0005】
また、ポリプロピレン系樹脂の結晶性を低下させる方法として、プロピレンにエチレンまたは炭素数4〜12程度のα−オレフィンを多量に共重合等の形態で含有させたものやポリプロピレンとエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)を動的に架橋したもの、ポリプロピレンにスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を混合する方法が提案されているが、これらは、損失正接(tanδ)の主分散のピーク値を示す温度がいずれも0℃よりもかなり低く、このことから常温域での十分な制振性能が得られない。
また、特開平2−300250号公報には、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体において、ビニル芳香族化合物として主としてスチレン、共役ジエンとしてビニル結合量が40%以上のイソプレンまたはイソプレン−ブタジエンブロック部分を有するスチレン−イソプレンブロック共重合体とポリプロピレンとの制振性能を有する樹脂組成物が提案されているが、このようなスチレン系ブロック共重合体組成物は、一般に高価であるとともに未水素添加品ではイソプレンブロック部分に二重結合が存在する為、耐候性や熱安定性が悪く、フィルムとした場合には変色やフィッシュアイ(ブツ)の原因になりやすく、また水素添加品ではその製造工程等からさらにコスト高となり、経済性の面でも不利となっていた。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂が有していた従来の問題点を解消し、常温域から比較的高温域における高い制振性能や応力緩和性に優れ、また経済性をバランスさせた樹脂組成物と該樹脂組成物からなるフィルムまたはシートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の立体規則性を制御した軟質ポリプロピレン系樹脂と石油樹脂類を用いることにより、上記問題点を解決することに成功したものであり、その要旨は、下記(A)成分に(B)成分を下式I及びIIを満足する範囲内で混合した樹脂組成物を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数100Hz、温度20〜70℃の範囲で測定した損失正接(tanδ)が0.15以上であることを特徴とするフィルムまたはシートにある。
【0008】
5≦WT(B)≦40 …
5≦Tg(B)×WT(B)/100≦30 …II
ここで、Tg(B):(B)成分のガラス転移温度(℃)
WT(B):樹脂組成物中の(B)成分の重量比(%)
を表す
(A)下記(1)〜(4)の条件を満足する軟質ポリプロピレン系樹脂
(1) 13C−NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30〜70%
(2) 動的粘弾性測定により周波数100Hzで測定される損失正接(tanδ)の主分散のピーク値を示す温度が0℃以上
(3) 示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が10〜50J/g
(4) メルトフローレート(MFR)(JIS K 7210、230℃、2.16kg荷重)が0.4〜40g/10分
(B)ガラス転移温度が50〜100℃である石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0010】
本発明の樹脂組成物および該樹脂組成物からなるフィルムまたはシートに用いられる(A)成分である軟質ポリプロピレン系樹脂は、主に立体規則性を制御することにより、結晶性を低下させつつ、ガラス転移温度をポリプロピレン本来のガラス転移温度(−10℃前後)よりも大幅に低下させないことにより、常温におけるtanδを高めたものである。ここで、tanδ(損失正接)とは貯蔵弾性率(E′)に対する損失弾性率(E″)の比、すなわち損失正接(tanδ=E″/E′)であり、この値が高い温度領域では、振動エネルギーを高い効率で熱エネルギーに変換することができる。
【0011】
具体的には条件(1)として、メソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30〜70%、好ましくはメソペンタッド分率(mmmm)が25〜60%、かつ、メソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が40〜65%の範囲に制御されたものを用いる。このように、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在しているポリプロピレン系樹脂は、一般にゴム弾性を有し柔軟で破れにくく、透明性も良好であるという特性を有しており、また剛直性を示すイソタクチック構造とシンジオタクチック構造の結晶性のブロック部分とエラストマー性を示すアタクチック構造の非晶性のブロック部分の割合をバランスさせることにより、本発明の目的を達成するのに適している。
【0012】
ここで、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在しているとは、結晶性のブロックと非晶性のブロック部分がランダム的及び/またはブロック的に存在していることを意味しており、また各ブロック部分の連鎖長は任意でかまわないが、組成物やフィルム・シートの透明性を重視するのであれば、その分布がランダム的である方が好ましい。
【0013】
ここで上記(mmmm+rrrr)が30%未満では、結晶性が低すぎて製膜性が極めて悪い他、常温ではシートが柔らかすぎたり強度が不足して実用上問題がある。また原料自体がブロッキングしやすくなり、ハンドリング性の面でも好ましくない。一方、70%を越えると、結晶性が高くなる為、本発明の目的である常温域における損失正接(tanδ)が低下し、十分な制振性や応力緩和性が発現し難くなり好ましくない。
【0014】
ここで、メソペンタッド分率(mmmm)やラセモペンタッド分率(rrrr)は、13C−NMR(核磁気共鳴)スペクトルの測定結果に基づき算出する。すなわち、13C−NMRスペクトルを測定し、メチル基の立体規則性によるケミカルシフトの違いにより、22.5ppm〜19.5ppm領域に現れる各***ピーク(mmmm〜mrrm)のシグナル強度比から求めた。上記mmmm(メソペンタッド分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して、側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味し、rrrr(ラセモペンタッド分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して、側鎖である5つのメチル基が交互に反対方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。なお、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules 8,687,(1975))によった。
【0015】
条件(2)として動的粘弾性測定により周波数100Hzで測定される損失正接(tanδ)の主分散のピーク値を示す温度が0℃以上であるものを用いる。このピーク値が0℃よりも低い温度にしかない場合には常温での十分な制振性能や応力緩和性能が得られない。
【0016】
条件(3)として示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が10〜50J/g、好適には15〜45J/gの範囲にあるものを用いる。結晶化熱量が10J/g未満では結晶性が低すぎて製膜性が極めて悪い他、常温ではシートが柔らかすぎたり強度が不足して実用上問題がある。また結晶化熱量が50J/gを超えるものでは、結晶性が高くなる為、常温域における損失正接(tanδ)が低下し、十分な制振性や応力緩和性が発現し難くなり好ましくない。
【0017】
条件(4)としてメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210、230℃、2.16kg荷重)が0.4〜40g/10分、好適には0.5〜20g/10分の範囲にあるものを用いる。メルトフローレートが0.4g/10分未満では、ポリマー自身の粘度が高すぎて押出等の成形が困難なり適さず、40g/10分を超えるとポリマー自身の粘度が低すぎて成形安定性がなくなったり、機械的強度が不足して実用上問題がある。
【0018】
このような軟質ポリプロピレン系樹脂としては、沸騰n−ヘプタンによるソックスレー抽出においては、その不溶解分が60重量%以下、冷キシレンによるソックスレー抽出においては、その不溶解分が95重量%以下、共重合組成中プロピレンに基づく単量体単位が少なくとも90モル%以上、好適には95モル%以上のものが好適に用いられる。
【0019】
ここでプロピレン以外の成分としては、エチレンまたは炭素数4〜12程度のα−オレフィンや4−メチルペンテン−1、環状オレフィン、スチレンなどが挙げられるが、エチレンが好適に使用される。また不飽和カルボン酸またはその無水物、或いはシラン系カップリング剤で変性されたものを用いることもできる。
【0020】
ここで沸騰n−ヘプタンによる不溶解分が60重量%を越えたり、冷キシレンによる不溶解分が95重量%を越えると、結晶性が高い為、本発明の目的である常温における損失正接(tanδ)が低下し、十分な制振性や応力緩和性が発現し難くなり好ましくない。
【0021】
また、プロピレンに基づく単量体単位が90モル%未満では、耐熱性が低下したり、立体規則性による結晶性の制御範囲が狭くなったり、α−オレフィンを共重合した場合にはガラス転移温度がポリプロピレン本来のガラス転移温度(−10℃前後)よりもかなり低下することにより常温域での損失正接(tanδ)が極めて小さくなり好ましくない。
【0022】
なお(A)成分は、本発明の目的に適合するものであれば2種類以上を混合して用いることもできる。またこのような軟質ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、安価なプロピレンモノマーを主成分とし、各種のメタロセン系触媒(シングルサイト触媒)や固体状チタン系触媒などを用い、成形加工性の良好な立体規則性を制御した軟質ポリプロピレン系樹脂を効率的、かつ低コストで重合する方法が提案されており、本発明の主旨を満足するものであれば特に限定されないが、具体的には、Huntsman Polymer Corporationの商品名「REXflex」が例示できる。
【0023】
本発明の樹脂組成物および該樹脂組成物からなるフィルムまたはシートに用いられる(B)成分は、ガラス転移温度が50〜100℃である石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体である。(B)成分はガラス転移温度が高く、非晶性樹脂であるため、混合樹脂層のガラス転移温度と損失正接(tanδ)の値を高めることができる。このことにより所望の温度域に損失正接(tanδ)のピーク温度をスライドさせ、十分な制振性や応力緩和性を発現させることができる。
【0024】
具体的には、石油樹脂としては、シクロペンタジエンまたはその二量体からの脂環式石油樹脂やC成分からの芳香族石油樹脂があり、テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が、また、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトールなどで変性したエステル化ロジン樹脂などが例示できる。上記(B)成分は前記(A)成分のようなポリプロピレン系樹脂に混合した場合に比較的良好な相溶性を示すことが知られているが、色調や熱安定性、相溶性といった面から水素添加誘導体を用いることが好ましい。
【0025】
なお、(B)成分は主に分子量により種々のガラス転移温度を有するものが得られるが、本発明にはガラス転移温度が50〜100℃のものが使用される。ガラス転移温度が50℃未満であると、前述の(A)成分と混合した場合に常温における高い制振性能を得るためには多量に含有させる必要があり、表面へのブリードや樹脂組成物のブロッキングを招きやすい。また、機械的強度が不足して脆く実用上問題になることがある。一方、ガラス転移温度が100℃を超えるものでは、(A)成分との相溶性が悪化し、経時的に表面にブリードし、ブロッキングを招くことがある。
【0026】
上記の理由から、(B)成分は後述の粘弾性特性を達成し得る範囲内で含有量は少ないほうが好ましい。この点では本発明に適用する立体規則性を制御されたポリプロピレン系樹脂は−10℃程度以上のガラス転移温度を有している為、従来普通に用いられてきたプロピレンにα−オレフィン等が多量に含有された低結晶性プロピレン系樹脂と比較して(B)成分の含有量が少量でも所望の粘弾性特性に調整するのに有効に作用する。
【0027】
次に本発明の樹脂組成物および該樹脂組成物からなるフィルムまたはシートの混合樹脂層は、(A)成分に(B)成分を次式及びIIを満足する範囲内で混合した樹脂組成物を主成分とする。
【0028】
5≦WT(B)≦40 …
5≦Tg(B)×WT(B)/100≦30 …II
上式で、Tg は示差走査熱量計を用いて測定される(B)成分のガラス転移温度(℃)、また、WT は樹脂組成物中の(B)成分の重量比(%)を表す。
【0029】
ここで式において、(B)成分の含有量が40重量%を越えると、機械的強度が低下し、脆くなりやすく、また(B)成分が経時的に表面にブリードし、巻き物とした場合にはフィルム同士がブロッキングしてしまうなどの問題が生じやすい。一方、(B)成分の含有量が5重量%未満では、(B)成分によるガラス転移温度を高める効果が少なく、所望の温度域における高い制振性能や応力緩和性能が得られにくい為好ましくない。
【0030】
またII式は、(A)成分の(B)成分によるガラス転移温度のシフト量の目安を表しているが、この値が5未満ではガラス転移温度を高める効果が少なく、所望の温度域における高い制振性能が得られにくい為好ましくない。一方、この値が30を超えるとガラス転移温度を高める効果は高く、40〜70℃の比較的高い温度域においては良好な損失正接(tanδ)を得ることができるもの、20〜30℃の日常の使用温度域における損失正接(tanδ)が低下してしまう傾向があり好ましくない。また、ガラス転移温度をあまり高めすぎると該組成物をフィルムやシートとした場合に衝撃強度が低下しやすく好ましくない。
【0031】
本発明によれば、常温域から比較的高温域における高い制振性能や応力緩和性能を有する樹脂組成物が得られ、これを単層でフィルムまたはシートとすることができるが、所望により他の樹脂層と積層することもできる。ただし、積層する場合にも、動的粘弾性測定により周波数100Hz、20〜70℃の温度範囲で測定した損失正接(tanδ)が0.15以上、好ましくは0.20以上にあることが必要である。
【0032】
ここで、20〜70℃の温度範囲でtanδが0.15未満であると所望の温度域における十分な制振性や応力緩和性が発現し難くなり好ましくない。
【0033】
積層材料としては、熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、ポリオレフィン系重合体が、層間の接着性や表面特性、経済性の付与等の面から好適であり、(A)成分である軟質ポリプロピレン系樹脂、プロピレン系エラストマー、ポリブテン、低密度ポリエチレン、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、エチレン−アルキルメタクリレート共重合体などを挙げることができる。
【0034】
また、鋼板等の基材や拘束層との接着性を改良する為には、不飽和カルボン酸またはその無水物、或いはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィン系樹脂を主成分とする接着層を積層することが効果的である。
【0035】
不飽和カルボン酸またはその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸あるいはこれらの誘導体のモノエポキシ化合物と上記酸とのエステル化合物、分子内にこれらの酸と反応し得る基を有する重合体と酸との反応生成物などが挙げられる。また、これらの金属塩も使用することができる。これらの内で無水マレイン酸が特に好ましい。
【0036】
また、シラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、メタクロイルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアセチルオキシシラン等を挙げることができる。
【0037】
不飽和カルボン酸またはその無水物、或いはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィン系樹脂を製造するには、各種の公知の方法が適用できる。例えば、あらかじめポリマーを重合する段階でこれらの変性モノマーを共重合させることもできるし、一旦重合したポリマーにこれらの変性モノマーをグラフト共重合させることもできる。また変性はこれらの変性モノマーを単独または複数併用し、その含有量が0.1〜5重量%のものが好適に使用される。この中でグラフト変性したものが好適に使用される。
【0038】
積層する手段としては、特に限定されず公知の各種の方法が適用できる。例えば、制振材層をあらかじめ単層でTダイを用いる押出キャスト法やインフレーション法などの公知の方法で作製しておき、その後所望の熱可塑性樹脂をドライラミネーションする方法や押出ラミネーションする方法、また多層ダイを使用して共押出する方法などを挙げることができる。実用的には多層ダイにより共押出するのが有利である。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は組成物の流動特性や製膜性等によって適宣調整されるが、概ね融点以上260℃以下、好ましくは180℃〜230℃の範囲が好適である。なお、制振材層の厚みは通常5mm以下、代表的には30μm〜1mm程度の範囲にある。
【0039】
また上述した各層には、その性質を損なわない程度に、ポリエチレン系樹脂や(A)成分以外のポリプロピレン系樹脂等、他の樹脂や添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、充填材などを適宣配合しても良い。
【0040】
次に本発明の樹脂組成物を用いた制振性積層体の製造方法について説明する。制振性積層体の製造方法としては、公知の各種の方法が適用でき特に限定されないが、例えば、(1)あらかじめ加熱した基材上に本発明フィルムを積層し、さらにその上に加熱した拘束層を圧着する方法、(2)あらかじめ本発明フィルムを基材及び拘束層の間に挿入したのちに、得られた積層体全体を加熱、圧着し溶融接着させる方法、(3)本発明フィルムと基材及び拘束層とを接着剤を使用して接着させる方法などを挙げることができる。ここで、基材及び拘束層としては、特に限定されないが、各種プラスチック類、合板類、セラミック類、金属、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス、銅、鉛、あるいはこれらを一成分とする合金類、さらには亜鉛、錫、クロム等でメッキされた金属材料、クロメート処理等の化成処理をされたものでもよく、単独で、また種々組み合わせて用いることもできる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
【0042】
(1)貯蔵弾性率(E′)、損失正接(tanδ)
岩本製作所(株)製粘弾性スペクトロメーターVES−F3を用い、引張法でフィルムの横方向について、振動周波数100Hz、昇温速度1℃/分で測定し、得られたデータから20℃におけるE′および20〜70℃の温度範囲におけるtanδの値を表示した。
【0043】
(2)ガラス転移温度(Tg)、結晶融解ピーク温度(Tm)
パーキンエルマー製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS K 7121に準じて、加熱速度10℃/分で昇温したときのサーモグラムから求めた。
【0044】
(3)結晶化温度(Tc)、結晶化熱量(ΔHc)
パーキンエルマー製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS K 7121、JIS K 7122に準じて、加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温したときのサーモグラムから求めた。
【0045】
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210に準じて、試験温度230℃、試験荷重2.16kgfの条件で測定した。
【0046】
(5)メソペンタッド分率(mmmm)、ラセモペンタッド分率(rrrr)
日本電子(株)社製のJNM−GSX−270(13C−核磁気共鳴周波数67.8MHz)を用い、次の条件で13C−NMRスペクトルを測定した。
【0047】
測定モード:H−完全デカップリング
パルス幅:8.6マイクロ秒
パルス繰り返し時間:30秒
積算回数:7200回
溶媒:オルトジクロロベンゼン/重ベンゼンの混合溶媒(80/20容量%)
試料濃度:100mg/1ミリリットル溶媒
測定温度:130℃
ここで各々のペンタッド分率は、13C−核磁気共鳴スペクトルのメチル基領域における***ピークの測定により求めた。また、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules 8,687,(1975))によった。
【0048】
(6)フィルム製膜性
フィルム製膜時に、外観が良好で問題なく製膜ができたものを(○印)、均一な膜にならず製膜が不安定であったものを(△印)、製膜が困難であったものを(×印)として評価した。
【0049】
(実施例1)
表1に示すように軟質ポリプロピレン系樹脂(I)〔プロピレン含量;100モル%、Tm;159℃、Huntsman Polymer Corporation製、REXflex W111〕を(A)成分として80重量%、(B)成分として軟化点140℃(Tg=89℃)のシクロペンタジエン系石油樹脂の水素添加誘導体を20重量%からなる樹脂組成物を、Tダイを備えた口径65mm、L/D25のニ軸押出機を用いて210℃で溶融混練後、キャストロールで冷却し、厚み100μmのフィルムを採取した。このフィルムの物性等の評価結果を表2に示した。
【0050】
なお、この軟質ポリプロピレン系樹脂(I)単体からなるフィルムを測定した特性は、表3の通りであった。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、(A)成分:70重量%、(B)成分:30重量%とした以外は同様にしてフィルムを採取した。このフィルムの物性等の評価結果を表2に示した。
【0052】
(実施例3)
実施例2で使用した樹脂組成物を中間層を構成する混合樹脂層として、口径65mm、L/D25のニ軸押出機を用いて210℃で溶融混練し、一方、両外層を構成する表面層として、軟質ポリプロピレン系樹脂(II)〔プロピレン含量;100モル%、Tm;158℃、Huntsman Polymer Corporation製、REXflex W110〕100重量%を、口径45mm、L/D25の単軸押出機を用いて220℃で溶融混練させ、三層Tダイ内で合流させたのち、表面層/混合樹脂層/表面層の3層構造からなる溶融体をキャストロールで冷却し、総厚み100μm(15μm/70μm/15μm)の3層フィルムを採取した。このフィルムの物性等の評価結果を表2に示した。
【0053】
なお、この軟質ポリプロピレン系樹脂(II)単体からなるフィルムを測定した特性は、表3の通りであった。
【0054】
(比較例1)
実施例1において、(A)成分:100重量%、(B)成分:0重量%とした以外は同様にしてフィルムを採取した。このフィルムの物性等の評価結果を表2に示した。
【0055】
(比較例2)
実施例1において、軟質ポリプロピレン系樹脂(III)〔プロピレン含量;100モル%、Tm;159℃、Huntsman Polymer Corporation製、REXflex W105〕を(A)成分:70重量%、(B)成分:30重量%とした以外は同様にしてフィルムを採取した。このフィルムの物性等の評価結果を表2に示した。
【0056】
なお、この軟質ポリプロピレン系樹脂(III)単体からなるフィルムを測定した特性は、表3の通りであった。
【0057】
(比較例3)
実施例1において、軟質ポリプロピレン系樹脂(III)を(A)成分:50重量%、(B)成分:50重量%とした以外は同様にしてフィルムを採取した。しかしながら、このフィルムはキャストロールに粘着気味で製膜が不安定であり、また、非常に脆く実用性に欠けるものであった。
【0058】
【表1】
Figure 0003842927
【0059】
【表2】
Figure 0003842927
【0060】
【表3】
Figure 0003842927
【0061】
表1、2から、本発明による実施例1〜3についてみると、特定の立体規則性を制御した軟質ポリプロピレン系樹脂を石油樹脂類とともに規定の部数使用することにより、常温域から比較的高温域における高い制振性や応力緩和性を有する樹脂組成物およびフィルムが得られることがわかる。
【0062】
一方、比較例1のように軟質ポリプロピレン系樹脂単体では、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が低い為、常温域における制振性や応力緩和性は比較的良好なものの、比較的高温域において制振性や応力緩和性が不十分となる。また、比較例2、3のように特定の軟質ポリプロピレン系樹脂以外のものを用いた場合には、結晶性が高いため石油樹脂類を添加しても十分な制振性を発現させることができなかったり(比較例2)、添加する石油樹脂類が規定の範囲よりも多い場合には、溶融粘度の低下によりフィルムの製膜性が低下するとともに機械的強度が低下する(比較例3)ことがわかる。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、制振性積層体や応力緩和性を要する各種フィルム等に有用な常温域から比較的高温域において高い制振性能あるいは応力緩和性を有する樹脂組成物および該樹脂組成物からなるフィルムまたはシートが提供できる。

Claims (3)

  1. 下記(A)成分に(B)成分を下式I及びIIを満足する範囲内で混合した樹脂組成物を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数100Hz、温度20〜70℃の範囲で測定した損失正接(tanδ)が0.15以上であることを特徴とするフィルムまたはシート。
    5≦WT(B)≦40 …I
    5≦Tg(B)×WT(B)/100≦30 …II
    ここで、Tg(B):(B)成分のガラス転移温度(℃)
    WT(B):樹脂組成物中の(B)成分の重量比(%)
    を表す
    (A)下記(1)〜(4)の条件を満足する軟質ポリプロピレン系樹脂
    (1) 13C−NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30〜70%
    (2) 動的粘弾性測定により周波数100Hzで測定される損失正接(tanδ)の主分散のピーク値を示す温度が0℃以上
    (3) 示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が10〜50J/g
    (4) メルトフローレート(MFR)(JIS K 7210、230℃、2.16kg荷重)が0.4〜40g/10分
    (B)ガラス転移温度が50〜100℃である石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体
  2. 請求項1記載の樹脂組成物を主成分とする混合樹脂層の両面に請求項1記載の(A)成分を主成分とする表裏層が積層されていることを特徴とする請求項記載のフィルムまたはシート。
  3. 請求項1記載の樹脂組成物を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、また両最外層には不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン系樹脂を主成分とする接着層が積層されたフィルムを中間層として用いたことを特徴とする拘束型制振性積層体。
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